説明

階層型文書管理システム、階層型文書管理方法および階層型文書管理プログラム

【課題】電子文書を格納するそれぞれのカテゴリの特徴に応じてこれらの整理整頓を自在に行える階層型文書管理システム、方法およびプログラムを得ること。
【解決手段】カテゴリデータベース11には、複数のカテゴリをツリー構造で配置して、管理対象となる電子文書をこれらのカテゴリに分配して格納している。カテゴリ間演算手段12は、カテゴリ同士の類似度を各カテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算する。類似度マップ格納手段13は、カテゴリ間演算手段12の演算結果を類似度マップとして格納する。類似度合い指定手段14は、カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定されると類似度マップを用いて複数のカテゴリから選別して視覚的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造を有する電子文書を管理する階層型文書管理システム、階層型文書管理方法および階層型文書管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば企業のような比較的大規模な組織では、コンピュータ等の情報処理装置を使用して毎日のように多くの電子的な文書が作成されている。このような電子的な文書を電子文書と呼ぶことにする。企業を例に採ると、ここで作成される電子文書は、階層構造を有する複数の容器としてのフォルダのいずれかに格納して体系化することができる。しかしながら、このような電子文書を格納するフォルダは年月を経るごとに数が増えてく傾向がある。このため、電子文書を管理する企業内文書管理システムでは、システムの運用期間が長くなればなるほど、電子文書全体を管理する階層構造が複雑になる傾向がある。
【0003】
したがって、企業内文書管理システムを用いて企業に蓄積している電子文書の中から所望のものを探し出そうとすると、目的とする電子文書に辿り着くにはそれぞれのユーザにかなりの労力を強いてしまう場合が多い。この傾向は、特に企業内文書管理システムの新規ユーザのように経験の浅いユーザに顕著となり、トータルのオペレーション回数の増大と操作時間の長大化を招く。
【0004】
以上説明した電子文書の検索処理だけでなく、ユーザが電子文書を作成した場合にこれを適正なフォルダに格納する処理についても、手間と時間が掛かる傾向がある。適正なフォルダを探し当てて電子文書を格納することなく、安易に新たなフォルダを作成して、これに電子文書を格納してしまうと、似たような電子文書を格納した多数のフォルダが散在することになる。反対に1つのフォルダに電子文書を整理することなく格納していくと、曖昧な性格のフォルダが存在することになる。これは、他のフォルダの内容と重複することにもなる。これらのフォルダは共に、電子文書の検索の負担を増大させる原因になる。
【0005】
そこで1つのカテゴリに属する電子文書の数が多すぎるときは、時系列的にこれを幾つかのカテゴリに分割することが本発明の第1の関連技術として提案されている(たとえば特許文献1参照)。ここでカテゴリとはフォルダと同様に電子文書をまとめて収容する容器としての意味を持つ。本明細書でも、以下の文章ではカテゴリという用語を使用する。
【0006】
この第1の関連技術では、1つのカテゴリに多くの電子文書が属するようになった場合に、これを適当なサイズに分割することができる。しかしながら、この提案では電子文書のグループを作成時期別のカテゴリに区分けするだけに過ぎない。すなわち、分割後の1つのカテゴリの中に全く異なった内容の電子文書が格納されるおそれが依然として残ることになる。しかも、カテゴリの数がこの分割処理によって機械的に増大していくので、これに伴って検索処理に時間を要する。また、それぞれのカテゴリの性格が曖昧なので、新たな電子文書は時間的に一番新しいカテゴリに格納するしかなく、新しいカテゴリ内の電子文書が増加していく。この結果、新しいカテゴリをまた作成時期別に分割するといった悪循環を招くことになる。
【0007】
そこで、文書群中の各語句の統計量と文書集合体全体における各語句の統計量を比較して、メタデータの特徴量を抽出し、フォルダあるいはカテゴリの階層構造を形成することが本発明の第2の関連技術として提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−007468号公報(第0007段落、図6)
【特許文献2】特開2008−134941号公報(第0062段落〜第0064段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらこの第2の関連技術では、特徴的な語句を抽出してメタデータ間の類似度を算出するための処理が複雑である。また、第2の関連技術では、予め定めた幾つかの特徴的な語句を用いてメタデータ間で類似度の大きい順に結合を行って階層化を行う。したがって、必ずしもユーザ側の視点に沿った階層化が行われるとは限らず、ユーザの使いやすい階層型文書管理システムが実現されるとは限らない。
【0010】
そこで本発明の目的は、電子文書を格納するそれぞれのカテゴリの特徴に応じてこれらの整理整頓を自在に行える階層型文書管理システム、階層型文書管理方法および階層型文書管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、(イ)電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して、管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースと、(ロ)このカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算手段と、(ハ)このカテゴリ間演算手段の演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして格納する類似度マップ格納手段と、(ニ)カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定手段と、(ホ)この類似度合い指定手段により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記した類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示手段とを階層型文書管理システムが具備する。
【0012】
また、本発明では、(イ)電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度を、それぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算ステップと、(ロ)このカテゴリ間演算ステップによる演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして類似度マップ格納手段に格納する類似度マップ格納ステップと、(ハ)カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定ステップと、(ニ)この類似度合い指定ステップで指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記した類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示ステップとを階層型文書管理方法が具備する。
【0013】
更に本発明では、電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースと、各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップを格納する類似度マップ格納手段を備えたコンピュータに、階層型文書管理プログラムとして、(イ)このカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算処理と、(ロ)このカテゴリ間演算処理による演算結果を前記した類似度マップ格納手段に格納する類似度マップ格納処理と、(ハ)カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定処理と、(ニ)この類似度合い指定処理により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記した類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示処理とを実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、ツリー構造をとった各カテゴリ間の類似度を算出し、ユーザがカテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定すると、これが視覚的に表示されるようになっている。したがって、たとえば類似の度合いの高い電子文書が格納されたカテゴリ同士を統合するといった処理がユーザの視点で行えるようになる。また、カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定したとき、対象となるカテゴリのみが表示されるので、この簡易な表示によって処理対象となるカテゴリを見つけやすい。したがって、作成した電子文書をどのカテゴリに格納すべきかも比較的容易に判断することができるようになり、作業効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の階層型文書管理システムのクレーム対応図である。
【図2】本発明の階層型文書管理方法のクレーム対応図である。
【図3】本発明の階層型文書管理プログラムのクレーム対応図である。
【図4】本発明の実施の形態による階層型文書管理システムの構成を表わしたシステム構成図である。
【図5】本実施の形態におけるウェブブラウザの使用時の第1のクライアント装置の表示部の平面図である。
【図6】本実施の形態における文書管理装置の認証データベースの内容を示した説明図である。
【図7】本実施の形態における文書管理装置の文書データベースについてその内容を示した説明図である。
【図8】本実施の形態における文書管理装置のカテゴリデータベースについてその内容を示した説明図である。
【図9】本実施の形態におけるカテゴリデータベースの一部として存在する類似度マップ情報を示した説明図である。
【図10】本実施の形態で文書管理装置にログインした第1のクライアント装置の処理を表わした流れ図である。
【図11】本実施の形態で第1のクライアント装置が文書管理装置にログインを行う処理を表わした流れ図である。
【図12】本実施の形態でユーザAが電子文書の作成を行う場合の第1のクライアント装置側の処理を表わした流れ図である。
【図13】本実施の形態で電子文書の作成を行う場合の文書管理装置側の処理を表わした流れ図である。
【図14】本実施の形態で電子文書の複製が実行された後の文書管理装置の文書データベースを表わす説明図である。
【図15】本実施の形態で電子文書の複製後の類似度マップ情報を示した説明図である。
【図16】図13のステップS265で示した類似度マップ情報124の更新処理を表わした流れ図である。
【図17】本実施の形態で新たな電子文書12311を作成後の階層型ツリー構造の要部説明図である。
【図18】本実施の形態で階層型ツリー構造の表示制御の様子を表わした流れ図である。
【図19】本実施の形態でカーソルを類似度コントロールバーの表示領域に重ねたときの表示画面の要部を示した平面図である。
【図20】本実施の形態でカーソルを類似度コントロールバーの類似度を示すマークに合わせた場合の表示画面の要部を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の階層型文書管理システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の階層型文書管理システム10は、カテゴリデータベース11と、カテゴリ間演算手段12と、類似度マップ格納手段13と、類似度合い指定手段14と、カテゴリ選別表示手段15とを備えている。ここで、カテゴリデータベース11は、電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して、管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納する。カテゴリ間演算手段12は、カテゴリデータベース11に格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算する。類似度マップ格納手段13は、カテゴリ間演算手段12の演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして格納する。類似度合い指定手段14は、カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する。カテゴリ選別表示手段15は、類似度合い指定手段14により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを類似度マップ格納手段13に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示する。
【0017】
図2は、本発明の階層型文書管理方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の階層型文書管理方法20は、カテゴリ間演算ステップ21と、類似度マップ格納ステップ22と、類似度合い指定ステップ23と、カテゴリ選別表示ステップ24を備えている。ここで、カテゴリ間演算ステップ21では、カテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度を、それぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算する。カテゴリデータベースとは、電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したものである。類似度マップ格納ステップ22では、カテゴリ間演算ステップ21による演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして類似度マップ格納手段に格納する。類似度合い指定ステップ23では、カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する。カテゴリ選別表示ステップ24では、類似度合い指定ステップ23で指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記した類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示する。
【0018】
図3は、本発明の階層型文書管理プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の階層型文書管理プログラム30は、コンピュータにカテゴリ間演算処理31と、類似度マップ格納処理32と、類似度合い指定処理33と、カテゴリ選別表示処理34とを実行させるようにしている。ここで、コンピュータは、カテゴリデータベースと、各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップを格納する類似度マップ格納手段を備えている。カテゴリデータベースは、電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納している。また、カテゴリ間演算処理31では、カテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算する。類似度マップ格納処理32では、カテゴリ間演算処理31による演算結果を前記した類似度マップ格納手段に格納する。類似度合い指定処理33では、カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する。カテゴリ選別表示処理34では、類似度合い指定処理33により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記した類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記した複数のカテゴリから選別して表示する。
【0019】
<発明の実施の形態>
【0020】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態による階層型文書管理システムの構成を表わしたものである。この階層型文書管理システム100は、文書管理装置101と、第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nとがネットワーク103によって接続された構成となっている。ここで数値「n」は、1以上の任意の整数である。このような階層型文書管理システム100は、たとえば企業で第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nを使用して、複数の文書を管理するために使用されるものである。ネットワーク103には、たとえばインターネットのようにTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を使用するものが一例として好適である。
【0022】
文書管理装置101は、パーソナルコンピュータ等の通常のコンピュータで構成されている。すなわち、文書管理装置101は、CPU(Central Processing Unit)111と、図示しないハードディスク等のデバイスからなる記憶装置112を備えている。記憶装置112には、コンピュータプログラム格納部113、文書データベース114、カテゴリデータベース115および認証データベース116が配置されている。
【0023】
ここでコンピュータプログラム格納部113には、CPU21が実行するコンピュータプログラムが格納されている。このコンピュータプログラム格納部113には、後に具体的に説明する文書管理部121とカテゴリ管理部122が備えられている。カテゴリ管理部122は、カテゴリを管理するようになっている。ここで「カテゴリ」とは、文書を格納する容器(箱)あるいはフォルダともいうべき存在である。文書データベース114には、電子文書123が格納されている。カテゴリデータベース115には、カテゴリ間の類似度を示す類似度マップ情報124が保存されている。
【0024】
第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nは、それぞれ図示しないCPUと、CPUが実行する制御プログラムを格納したメモリとを備えた通信端末で構成されている。これら第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nは、たとえばパーソナルコンピュータであってもよいし、携帯電話機等のその他の情報処理端末であってもよい。
【0025】
本実施の形態の階層型文書管理システム100で使用する第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nは、クライアント装置としての共通した機能を実現する構成となっている。そこで、第1のクライアント装置1021を例にとって、説明を具体的に行う。
【0026】
第1のクライアント装置1021は、CPU131、記憶装置132、通信制御部133、ユーザインターフェイス部134、操作部135および表示部136を備えている。ここで記憶装置132は、CPU131が実行する各種のプログラムを格納すると共に作業用のメモリ領域も備えている。通信制御部133は、ネットワーク103を介して他の装置と通信するようになっている。ユーザインターフェイス部134は、操作部135および表示部136を用いてユーザが第1のクライアント装置1021と情報を交換する手段である。
【0027】
第1のクライアント装置1021のユーザは、電子文書を作成、保存、更新あるいは閲覧するとき、ユーザインターフェイス部134を介して、操作部135を操作する。これにより、ユーザは、ネットワーク103を介して文書管理装置101にアクセスし、その文書データベース114を利用することができる。記憶装置132には、ウェブページを閲覧するウェブブラウザのアプリケーションソフトウェアが格納されている。ユーザはたとえばウェブブラウザを起動することで、文書データベース114の内容を表示部136に表示することができる。
【0028】
図5は、ウェブブラウザの使用時における第1のクライアント装置の表示部の画面表示の概要を表わしたものである。図4と共に説明する。
【0029】
第1のクライアント装置1021の表示画面141には、文書データベース114内の所望の情報を示すためのウィンドウ142が開設されている。この例でウィンドウ142には2つの表示領域が配置されている。図で左側の表示領域には、文書データベース114に格納される電子文書を階層的に表示する階層型ツリー部143が表示される。右側の表示領域には、ツリーの所定のノードの配下に保管されるオブジェクトの一覧を表示するオブジェクト一覧部144が表示される。ここでノードとは、階層型ツリー部143の分岐点(結び目)をそれぞれ示すものである。各ノードは、配下のカテゴリを表わしている。
【0030】
図6は、文書管理装置の認証データベースの内容を示したものである。図4と共に説明する。
【0031】
文書管理装置101の認証データベース116には、各ユーザについて、ユーザ名151、ユーザID(identifier)152およびパスワード153の各項目が保存されている。ここでユーザ名151とは、第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nの各利用者としてのユーザA、B、……である。ユーザID152とは、それぞれのユーザA、B、……について設定したIDである。パスワード153はそれぞれのユーザA、B、……を確認するための合言葉「11111111」、「22222222」、……である。ユーザID152とパスワード153は、文書管理装置101が第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nのそれぞれに対してログインを許可するか否かを判断するための認証用として使用するようになっている。
【0032】
図7は、文書管理装置の文書データベースについてその内容を示している。図4と共に説明する。
【0033】
文書データベース114は、M個(Mは正の整数)の電子文書1231〜123Mについて、これらの本文162と属性情報163を格納している。図7に示した時点では、電子文書1231〜123Mの数を示す数値Mが一例として「10」となっているものとする。文書データベース114に文書が追加されれば、数値Mはこれに応じて増加する。
【0034】
属性情報163は、電子文書1231〜12310の題名164、登録者165、更新者166、カテゴリ167、引用文書168および識別コード169の各項目から構成されている。題名164は、「○○」、「○○」、「○○」、「○○」、「○△」、「△△」、「□□」、「□□」、「□○」、「□△」といった文字列によって表示されているものとする。識別コード169は、各々の電子文書1231〜12310の本文162を識別するためのコード情報である。カテゴリ167は、保管先のカテゴリであり、「0001」「0002」といった識別コードで表わしている。また、カテゴリ「0001−1」のように「−」(ハイフン)で表わしているものについては、「−」の右側に示した数字の表わすカテゴリが、左側に示した数字の表わすカテゴリの1つ下であることを示す。たとえばこの図7にはないが、カテゴリ「0001−2−3」があったとする。この場合、カテゴリ「0001」がルート階層に直結する親のカテゴリであり、その後の「−」に続く「2」が子のカテゴリを示しており、更にその後の「−」に続く「3」が孫のカテゴリを示している。引用文書168は、本文162に引用した文書である。引用した文書は、その電子文書123の識別コード169で表示するようになっている。
【0035】
図8は、文書管理装置のカテゴリデータベースについてその内容を示している。図4と共に説明する。
【0036】
カテゴリデータベース115は、各カテゴリ1711〜17110ごとに「0001」等のカテゴリ識別コード172が割り当てられている。たとえばカテゴリ識別コードが「0003」のカテゴリ1713の属性情報173は、題名174が「○○」であり、登録者175が「A」となっている。更新者176は「C」である。
【0037】
図9は、カテゴリデータベースの一部として存在する類似度マップ情報を示したものである。類似度マップ情報124は、カテゴリ間の類似度を示すM個の類似度マップ(ただし、Mは「10」)1811〜18110で構成されている。このうち類似度マップ1811は、図8におけるカテゴリ1711とこれ以外のカテゴリ1712〜17110の類似度を定めたものである。以下の説明では、カテゴリ1711をカテゴリ「0001」と記述するものとする。他のカテゴリ1712〜17110についても、カテゴリ「0002」〜カテゴリ「0010」と記述する。
【0038】
カテゴリ「0001」の類似度マップ1811では、カテゴリ「0001」と全カテゴリ「0001」〜カテゴリ「0010」の間の電子文書123の類似度を、類似ポイントとして表わしている。類似ポイントは、最大値を「1」とし、最小値を「0」としている。カテゴリ「0001」同士の電子文書123についての類似度を考えてみる。これらの電子文書123の場合には、同一のカテゴリに含まれる電子文書を比較することになる。そこで、類似ポイントは最大値の「1」となる。これに対して、たとえばカテゴリ「0001」と残りのカテゴリ「0002」〜カテゴリ「0010」の間の類似ポイントは、同一ではないカテゴリ171間の類似度となる。そこで同一ではないカテゴリ171間の類似度は、たとえば「0.3」、「0.09」等のいずれも「1」未満の値となっている。
【0039】
このようなカテゴリ171間の類似度は、一般に次のような特徴がある。
(1)カテゴリ171の作成者が同一の場合には、これらのカテゴリ171間で類似度が高い傾向がある。カテゴリ171同士が内容的に兄弟のような関係となることが多いからである。
(2)カテゴリ171同士が上下に複数の階層を構成しているような場合にも、これらの間の類似度が高い傾向がある。一例としては、カテゴリ「0001」と、その下位のカテゴリ「0001−1」は階層が上下(親子)の関係にあるので、これらの間の類似度が高い傾向がある。
(3)カテゴリ「0001」内の文書を参照したユーザが、たとえば別のカテゴリ「0002」内の文書をよく参照するような場合、この例のカテゴリ「0001」とカテゴリ「0002」の類似度は高い傾向がある。同様に、カテゴリ「0003」内の文書を参照したユーザが、たとえばカテゴリ「0004」内の文書をよく更新するとする。このような場合、この例のカテゴリ「0003」とカテゴリ「0004」の類似度は高い傾向がある。
(4)複製の対象となる電子文書が存在するカテゴリ171とこの電子文書を複製して新たな電子文書として格納した別のカテゴリとは、情報を一部共有していることになる。したがって、これらのカテゴリ171同士は類似度が高い傾向がある。
(5)2つの対比するカテゴリ171同士で同一の題名の電子文書が存在する場合、共通のテーマを扱っている可能性がある。そこでこれらのカテゴリ171同士は類似度が高い傾向がある。
(6)2つの対比するカテゴリ171が(1)〜(5)で説明した条件を、より多く備えている場合、これらの間では類似度がより高くなる傾向がある。
【0040】
カテゴリ171間におけるこのような傾向を基にして、本実施の形態の階層型文書管理システム100の管理者は、カテゴリ「0001」〜カテゴリ「0010」の間の類似度を、類似ポイントとして規定するようになっている。このためには、ユーザが参照し、あるいは更新したカテゴリ171を把握することが必要とされる場合がある。このような場合には、図4における文書管理装置101が第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nのアクセスログを収集すればよい。階層型文書管理システム100の管理者は、各種のデータを基にして、類似度マップ1811〜18110を作成する。類似ポイントの算出の実際については、後に説明する。
【0041】
次に、図4に示す第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nのいずれかのユーザが文書管理装置101を使用して文書の複製を行う場合を例に採って、階層型文書管理システム100の実際の処理の様子を説明する。ここでは、第1のクライアント装置1021のユーザAが文書を複製する場合を例に採る。
【0042】
図10は、文書管理装置にログインする第1のクライアント装置の処理の様子を表わしたものである。また、図11は第1のクライアント装置1021がログインを行う際の文書管理装置の処理の様子を表わしたものである。図4と共に説明する。なお、第2〜第nのクライアント装置1022、……102nの文書管理装置101との間の各種処理は、第1のクライアント装置1021と文書管理装置101との間の処理と実質的に変わらない。そこで、これらの処理についての説明は省略する。
【0043】
ユーザAは第1のクライアント装置1021を操作して文書管理装置101にアクセスしてログイン要求を行う(図10ステップS201)。文書管理装置101はログイン要求を受信すると(図11ステップS221:Y)、要求を行った第1のクライアント装置1021に対してユーザ認証の要求を送信する(ステップS222)。そして、この要求に沿ったユーザIDとパスワードが受信されるのを待機する(ステップS223)。
【0044】
第1のクライアント装置1021は、文書管理装置101からユーザ認証の要求を受信すると(図10ステップS202:Y)、その表示部136にユーザ認証用の画面を表示する(ステップS203)。ここには、図示しないがユーザIDとパスワードの入力欄が配置されている。ユーザAは操作部135を操作して表示部136の指定箇所にユーザIDとパスワードを入力して、これらの送信を行うための図示しない送信ボタンを押す(ステップS204:Y)。具体的には、図6に示すようにユーザID「AAA」とパスワード「11111111」をユーザAが入力して、送信ボタンを押すことになる。これにより、これらユーザIDとパスワードが文書管理装置101に送信される(ステップS205)。これ以後、第1のクライアント装置1021は文書管理装置101からのログイン結果の受信待ちとなる(ステップS206)。
【0045】
文書管理装置101は、第1のクライアント装置1021からユーザIDとパスワードが送られてきたら(図11ステップS223:Y)、認証データベース116を用いて認証処理を行う(ステップS224)。具体的には、認証データベース116に、送出されてきたユーザIDとパスワードの組と一致する組み合わせが登録されているかどうかをチェックする。この例の場合、第1のクライアント装置1021から送られてきたユーザID「AAA」とパスワード「11111111」が、認証データベース116内のユーザID「AAA」とパスワード「11111111」に一致する(ステップS225:Y)。この例では認証が成功する。したがって、文書管理装置101はユーザAによるログインを許可する旨を第1のクライアント装置1021に送信して(ステップS226)、一連のログイン処理を終了する(エンド)。
【0046】
ユーザAから送られてきたユーザIDとパスワードの組と一致する組み合わせが認証データベース116に存在しない場合(ステップS225:N)、文書管理装置101はログイン拒否の旨を第1のクライアント装置1021に送信する(ステップS227)。そして、一連のログイン処理を終了することになる(エンド)
【0047】
第1のクライアント装置1021側では、ログイン結果を受信すると(ステップS206:Y)、ログインが成功したかを判別する(ステップS207)。この結果、ログインが拒否されたと判別した場合には(ステップS207:N)、所定のエラー処理を行って(ステップS208)、処理を終了する(エンド)。ログインが許可されたと判別した場合には(ステップS207:Y)、文書管理装置101との間で所定の処理が実行され(ステップS209)、終了する(エンド)。
【0048】
図12は、ユーザAがステップS209の処理の1つとして電子文書の作成を行う場合の第1のクライアント装置側の処理の流れを表わしたものであり、図13はこのときの文書管理装置側の処理の様子を表わしたものである。図4および図7と共に説明する。ここでは、ユーザAが図7に示す電子文書1237を複製して、これを基にして新たな電子文書12311を作成することを前提として話を進める。
【0049】
ユーザAは、第1のクライアント装置1021で文書管理装置101にログインした状態で電子文書の作成や編集を行うことができる(ステップS241)。このとき、ユーザAは第1のクライアント装置1021の操作部135を操作して表示部136に文書データベース114の内容を表示して、複製の対象となる電子文書123を探すことができる。その結果、ユーザAによって電子文書123のいずれかの複製を必要とする操作が行われたとする(ステップS242:Y)。この場合、第1のクライアント装置1021はその電子文書123の複製を文書管理装置101に対して要求する(ステップS243)。ここでは、ユーザAが電子文書1237の複製を要求したとする。第1のクライアント装置1021は文書管理装置101から電子文書1237の複製を取得したら(ステップS244:Y)、ステップS241に処理を戻す。ユーザAは、複製を取得した電子文書1237を基にして、このステップS241で新しい電子文書12311の作成を行うことになる。
【0050】
電子文書1237の複製を使用したステップS241の処理によって、最終的に電子文書12311の作成や編集が終了したものとする(ステップS242:N、ステップS245:Y)。この場合、ユーザAは第1のクライアント装置1021を用いて、該当する電子文書12311の本文と属性情報を文書管理装置101に送信して(ステップS246)、処理を終了する(エンド)。ユーザAは文書管理装置101に対してこれ以降の処理を行わない場合、図示しないが、ログオフの操作を行うことになる。
【0051】
一方、文書管理装置101は第1のクライアント装置1021のログイン時に、いずれかの電子文書123に対する複製要求があるか(ステップS261)と、電子文書の本文と属性情報が送られてくるか(ステップS262)を待機する。この待機状態で文書管理装置101が第1のクライアント装置1021から、図12のステップS243に基づいた電子文書1237の複製要求を受信したとする(ステップS261:Y)。この場合、文書管理装置101は受信した電子文書1237の複製を第1のクライアント装置1021に送出して(ステップS263)、処理を待機状態に戻す(リターン)。
【0052】
また、第1のクライアント装置1021から電子文書12311の本文と属性情報が送られてきた場合には(ステップS261:N、ステップS262:Y)、これらを文書データベース114に保存する(ステップS264)。そして、カテゴリ間における類似度マップ情報124の更新処理を実行して(ステップS265)、処理を待機状態に戻す(リターン)。これは、複製操作で新たな電子文書12311が作成されたので、これを格納するカテゴリとの関係で類似度マップ情報124の内容が変更されるからである。
【0053】
図14は、電子文書の複製が実行された後の文書管理装置の文書データベースの内容を表わしたものである。文書データベース114は、図12および図13で示した電子文書123の複製処理が開始する直前で図7に示す状態であったので、これと対比して説明する。図14で図7と同一部分には同一の符号を付している。
【0054】
図14に示した文書データベース114には、今まで存在した電子文書1231〜12310の他に、新たな電子文書12311が追加されている。電子文書12311の属性情報163における題名164は「○○〜」であり、登録者165は「A」(ユーザA)である。電子文書12311の更新を行っている訳ではないので、更新者166は存在せず「NULL(ヌル)」の状態となる。カテゴリ167については、ユーザAが電子文書12311の保存先としてカテゴリ「0002−2」を指定している。これは、カテゴリ「0002」の子供となるカテゴリである。引用文書168としては、複製の対象とした電子文書1237の識別コード「0007」が指定されている。電子文書12311自体の識別コード169は、「0011」が割り当てられている。
【0055】
図15は、以上説明した電子文書の複製後の類似度マップ情報を示したものである。また、図16は、図13のステップS265で示した類似度マップ情報124の更新処理の様子を表わしたものである。図4、図9、図13および図14と共に説明する。
【0056】
類似度マップ情報124の更新処理では、現在更新しようとしているカテゴリを表わす変数Jと、このカテゴリとの類似ポイントを算出する相手方のカテゴリを表わす変数Tとを、それぞれ初期値としての「1」に設定する(図16ステップS281)。そして、変数Jが「1」なので、比較を行おうとするカテゴリJがカテゴリ1711である、図13の類似度マップ1811の更新が最初に行われる。類似度マップ1811の更新では、カテゴリ1711とこのカテゴリ1711を含むすべてのカテゴリとの間の類似ポイントを算出し更新処理を行う。この更新処理では、変数Tの値が「1」なので、まずカテゴリ1711同士の類似ポイントの算出が行われる。これによって得られる類似ポイントの値は、次以降のステップS282〜ステップS293で示した各加算処理の合計値となる。
【0057】
最初はカテゴリJとカテゴリTが共にカテゴリ1711(カテゴリ識別コードが共に「0001」のカテゴリ)の類似ポイントの算出である。ここでは、同一カテゴリ同士の比較なので、ステップS292における同一カテゴリであるかの判別で肯定(Y)となる。したがって、ステップS282〜ステップS291の処理に係わらず合計値である類似ポイントが「1.0」となる(ステップS293)。次のステップS294では変数Tに残りがあるかを判別する。変数Tは現在「1」(カテゴリ識別コードの「0001」に対応。)なので、残りがある(Y)。そこで、変数Tを数値上で次の値に移動させる(ステップS295)。この例の場合、図14より、変数Tは「1.1」(カテゴリ識別コードの「0001−1」に対応。)となる。
【0058】
変数Tが「1.1」に切り替わったところで、処理が再びステップS282に戻る。ステップS282では、カテゴリJにカテゴリTのオリジナル文書が存在するかの判別が行われる。ここでオリジナル文書とは、複製の対象となる電子文書あるいは引用の対象となる電子文書をいう。オリジナル文書が存在すれば(Y)、実験値から求めた加算値として類似ポイントが「0」の値から「0.2」だけ加算される(ステップS283)。そしてステップS284に進む。オリジナル文書が存在しない場合には(ステップS282:N)、この加算が行われることなく、ステップS284に進むことになる。ステップS284では、カテゴリJとカテゴリTがカテゴリに関して親子関係にあるかの判別が行われる。
【0059】
図17は、図14に示した新たな電子文書12311を作成した後の階層型ツリー構造の要部を示したものである。この階層型ツリー構造の要部191では、ルート階層の1つ下の階層として4つのカテゴリ1711、1712、1713および1714が配置されている。このうち、カテゴリ1711には6つの電子文書1231、1235、1236、1238、1239および12310が格納される他、親子関係で子に相当するカテゴリ1711-1が格納されている。このカテゴリ1711-1には、電子文書1237が格納されている。
【0060】
新たに作成した電子文書12311は、これを作成した第1のクライアント装置1021のユーザによってカテゴリ1712-2に格納されている。このカテゴリ1712-2は、電子文書1232と共にカテゴリ1712に格納されている。また、電子文書1233はカテゴリ1713に、電子文書1234はカテゴリ1714に、それぞれ格納されている。
【0061】
図16に戻って説明を続ける。図17より、カテゴリJとしてのカテゴリ1711(カテゴリ識別コードの「0001」に対応。)と、カテゴリTとしてのカテゴリ1711-1(カテゴリ識別コードの「0001−1」に対応。)は親子関係にあることが分かる(Y)。そこで、ステップS285の処理では、実験値から求められた加算値として類似ポイントが現在の値に「0.2」だけ加算される。そして次のステップS286に進む。親子関係、すなわち階層の上下関係が存在しない場合には(ステップS284:N)、この加算が行われることなく、ステップS286に進むことになる。
【0062】
ステップS286では、カテゴリJとカテゴリTの間で題名が一致した電子文書123が存在するかの判別が行われる。題名が一致した電子文書123が存在する場合には(Y)、実験値から求めた加算値として類似ポイントが現在の値に「0.1」だけ加算される(ステップS287)。そしてステップS288に進む。題名が一致した電子文書123が存在しない場合には(ステップS286:N)、この加算が行われることなく、ステップS288に進むことになる。なお、題名が一致した電子文書123が複数存在する場合には、適宜加算値を増加させてもよい。
【0063】
ステップS288では、カテゴリJとカテゴリTの間で作成者が一致した電子文書123が存在するかの判別が行われる。作成者が一致した電子文書123が存在する場合には(Y)、実験値から求めた加算値として類似ポイントが現在の値に「0.05」だけ加算される(ステップS289)。そしてステップS290に進む。作成者が一致した電子文書123が存在しない場合には(ステップS288:N)、この加算が行われることなく、ステップS290に進むことになる。なお、作成者が一致した電子文書123が複数存在する場合には、適宜加算値を増加させてもよい。
【0064】
ステップS290では、カテゴリJとカテゴリTの登録者が別の電子文書123を持っているかの判別が行われる。別の電子文書123を持っている場合には(Y)、実験値から求めた加算値として類似ポイントが現在の値に「0.01」だけ加算される(ステップS291)。そしてステップS292に進む。これ以外の場合には(ステップS290:N)、この加算が行われることなく、ステップS292に進むことになる。ステップS292では、同一カテゴリ以外の場合(N)、ステップS294に進むことになる。
【0065】
このようにして、カテゴリJが「1」、カテゴリTが「1.1」の処理が終了したら、カテゴリTの残りがあるので(ステップS294:Y)、ステップS295に進んで、今度はカテゴリJが「1」、カテゴリTが「2」の処理に進むことになる。以下同様にして処理が進行していく。この結果、ステップS294でカテゴリTの残りがなくなったら(N)、この時点で類似度マップ1811の処理が終了する。そこで、ステップS296に進み、カテゴリJの残りが存在するかの判別が行われる。図15に示したように類似度マップ1811の次に類似度マップ1811-1が存在する(Y)。そこでカテゴリJの値「1」を次のカテゴリJの値「1.1」に移動し、カテゴリTを「1」に初期化する(ステップS297)。このようにしてステップS282に戻り、今度は類似度マップ1811-1を算出する処理に進む。
【0066】
以上のようにしてカテゴリJの値を順に増加させながら類似度マップ181の処理を行っていく。そして、最終的にカテゴリJの値の残りがなくなったら(ステップS296:N)、類似度マップ情報124の更新処理が終了する(エンド)。なお、今回の例では、電子文書12311が新たに作成され、これがカテゴリ1712-2に格納された。したがって、以上説明した類似度マップ情報124の更新処理は、すべての処理を逐一行う必要はない。カテゴリ1712-2に格納された電子文書12311によって類似ポイントが影響される箇所のみ演算処理を行えば足りる。
【0067】
このように本実施の形態では、カテゴリ171が新設されるたびに図4に示した文書管理装置101が類似度マップ情報124の更新を行う。これにより、文書管理装置101のカテゴリデータベース115は、すべてのカテゴリ171間の類似度を示す類似度マップ情報124を最新状態で保存することになる。そこで、第1〜第nのクライアント装置1021、1022、……102nの各ユーザは、文書管理装置101にアクセスして電子文書123を検索するとき、カテゴリ171間の類似度に関する情報を用いることで、検索範囲を絞り込むことができる。これについて次に説明する。
【0068】
図18は、図10のステップS209で行われる階層型ツリー構造の表示制御の様子を表わしたものである。図4および図5と共に説明する。
【0069】
文書管理装置101は、図10のステップS209による処理が行われる状態で第1のクライアント装置1021の表示画面141の階層型ツリー部143に階層型ツリー構造を表示させている。このときオブジェクト一覧部144には図示しないが類似度コントロールバーが半透明な状態で表示されている。この状態で、文書管理装置101は類似度コントロールバーの表示領域に、ユーザAが図示しないカーソルを重ねるのを監視している(ステップS301)。カーソルが類似度コントロールバーの表示領域外に存在している状態では(ステップS301:N)、階層型ツリー構造の全体を表示すると共に、類似度コントロールバーを半透明で表示する制御を行っている(ステップS302)。
【0070】
図19は、ユーザAがカーソルを類似度コントロールバーの表示領域に重ねたときの表示画面の要部を示したものである。ユーザAが表示画面の所定領域401の右側に寄った部位に表示された類似度コントロールバー411の表示領域にカーソル412を重ねると(ステップS301:Y)、半透明で表示されていた類似度コントロールバー411が明示される。ユーザAはこの状態で類似度コントロールバー411の+(プラス)ボタン413あるいは−(マイナス)ボタン414を適宜の時間あるいは回数だけ押下することで、類似度を指示する指示マーク415を上下させることができる。
【0071】
ユーザAがカーソル412を類似度コントロールバー411の表示領域の端の部位に重ね合わせた初期状態では、図19に示すように指示マーク415は「1.0」の目盛位置を指示している。このとき、階層型ツリー構造はルート階層から下がすべて表示されている。すなわち、類似度が「1.0」の状態では、階層の簡易化表示は行われない。
【0072】
図20は、ユーザAがカーソルを類似度コントロールバーの類似度を示すマークを所望の位置にずらした場合の表示の様子を表わしたものである。このように類似度コントロールバー411のマークを「1」以外の「n」の位置(ただし、nは「0」と「1」の間の値)に合わせたとする。すると、第1のクライアント装置1021から文書管理装置101に対してカテゴリ簡素化表示指示(命令)が発行される。この結果、文書管理装置101では類似ポイントが「n」よりも高い(類似している)ものが選別されて第1のクライアント装置1021に送出され、その表示画面の所定領域401に表示される(ステップS303)。図20に示した例では、図19と対比すると、カテゴリ簡素化表示指示が実行されることによって、一点鎖線の枠で示したカテゴリ1232-2が表示されなくなっている。
【0073】
なお、二重線の枠で示したカテゴリ1711-1は、実線と破線による枠で示した電子文書1232-2-1と電子文書1232-2-2の内容を吸い上げていることを示している。
【0074】
以上説明したように本実施の形態では、類似度コントロールバー411を上げ下げすることで、ユーザは、今までよりも少ないオペレーション回数あるいはオペレーションに要する時間で目的の電子文書123を探し出すことができる。また、階層またはカテゴリを跨る文書ファイルのソーティングを行うことができる。更に、カテゴリ171同士の関係が複雑になったような場合に、これらのカテゴリ171を整理整頓するときの参考材料を得ることができる。
【0075】
なお、以上説明した実施の形態では、類似度を連続的に変化して指定する手段として棒状の類似度コントロールバー411を使用したが、これに限るものではない。たとえば円筒状のボリュームを表示画面に表示して、図示しないポインティングデバイスで時計回りあるいはその逆に円形を描きながら類似度を変化させるようにしてもよい。
【0076】
更に実施の形態では電子文書123を追加するに伴ってカテゴリ171を新設したときに、各カテゴリ171の間の類似度をカテゴリ簡素化表示指示に基づいて表示するようにしたが、これに限定するものではない。たとえば、カテゴリ171や電子文書123を削除したようにツリー構造が変化したときに同様の表示を行うようにしてもよい。また、このようなツリー構造が変化した場合だけでなく、前記したようにカテゴリ171を整理整頓するような場合にも、ユーザが比較対象となるカテゴリ171や電子文書123を任意に指定することができる。
【0077】
また、条件では類似ポイントの加算のための実験値を示したが、企業等の実際の文書環境に応じてこれらの値を適宜変更できることは当然である。また、カテゴリ間で加算の対象となる特徴は適宜増減あるいは変更することが可能である。また、加算の順序も各種の変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、100 階層型文書管理システム
11、115 カテゴリデータベース
12 カテゴリ間演算手段
13 類似度マップ格納手段
14 類似度合い指定手段
15 カテゴリ選別表示手段
20 階層型文書管理方法
21 カテゴリ間演算ステップ
22 類似度マップ格納ステップ
23 類似度合い指定ステップ
24 カテゴリ選別表示ステップ
30 階層型文書管理プログラム
31 カテゴリ間演算処理
32 類似度マップ格納処理
33 類似度合い指定処理
34 カテゴリ選別表示処理
101 文書管理装置
102 クライアント装置
111、131 CPU
112、132 記憶装置
113 コンピュータプログラム格納部
114 文書データベース
121 文書管理部
122 カテゴリ管理部
123 電子文書
124 類似度マップ情報
136 表示部
141 表示画面
143 階層型ツリー部
144 オブジェクト一覧部
164 題名
165 登録者
166 更新者
168 引用文書
171 カテゴリ
181 類似度マップ
411 類似度コントロールバー
412 カーソル
415 指示マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して、管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースと、
このカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算手段と、
このカテゴリ間演算手段の演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして格納する類似度マップ格納手段と、
カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定手段と、
この類似度合い指定手段により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示手段
とを具備することを特徴とする階層型文書管理システム。
【請求項2】
前記カテゴリ間演算手段は前記電子文書や前記カテゴリの変更に伴って演算を行い、前記類似度マップ格納手段はこの演算結果を用いて前記類似度マップを更新することを特徴とする請求項1記載の階層型文書管理システム。
【請求項3】
前記類似度合い指定手段は、類似度の度合いを変化させて指定することのできる視覚的な指定手段を備え、前記カテゴリ選別表示手段はこの指定手段の指定内容の変化に応じてカテゴリの選別される範囲を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の階層型文書管理システム。
【請求項4】
前記カテゴリ間演算手段は、類似度を演算するカテゴリの一方に格納された電子文書が他方のカテゴリに格納された電子文書に引用されているとき、引用されていない場合よりも類似度を高める演算を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の階層型文書管理システム。
【請求項5】
前記カテゴリ間演算手段は、類似度を演算するカテゴリ同士が前記ツリー構造の上下関係にあるとき、上下関係にない場合よりも類似度を高める演算を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の階層型文書管理システム。
【請求項6】
前記カテゴリ間演算手段は、類似度を演算するカテゴリ同士に含まれる前記電子文書の作成者あるいは更新者が一致するものがあるとき、これらの一致するものがない場合よりも類似度を高める演算を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の階層型文書管理システム。
【請求項7】
電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度を、それぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算ステップと、
このカテゴリ間演算ステップによる演算結果を各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップとして類似度マップ格納手段に格納する類似度マップ格納ステップと、
カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定ステップと、
この類似度合い指定ステップで指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示ステップ
とを具備することを特徴とする階層型文書管理方法。
【請求項8】
電子的な文書としての電子文書を任意の数だけ格納する格納手段としての複数のカテゴリをツリー構造となるように配置して管理の対象となる電子文書のそれぞれをこれらのカテゴリに分配して格納したカテゴリデータベースと、各カテゴリ間の類似度を表わした類似度マップを格納する類似度マップ格納手段を備えたコンピュータに、
このカテゴリデータベースに格納されているカテゴリ同士の類似度をそれぞれのカテゴリに格納された電子文書の内容の類似の度合いに応じて演算するカテゴリ間演算処理と、
このカテゴリ間演算処理による演算結果を前記類似度マップ格納手段に格納する類似度マップ格納処理と、
カテゴリ同士の類似の度合いの範囲を指定する類似度合い指定処理と、
この類似度合い指定処理により指定した類似の度合いの範囲に該当するカテゴリを前記類似度マップ格納手段に格納された類似度マップを用いて前記複数のカテゴリから選別して表示するカテゴリ選別表示処理
とを実行させることを特徴とする階層型文書管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−238027(P2010−238027A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86256(P2009−86256)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】