説明

隔壁蒸留塔を使用する方法

隔壁蒸留塔を使用する炭化水素化合物の分離法が説明される。隔壁蒸留塔は、塔頂の流れおよび塔底の流れに加えて、1つまたは複数の側面引き抜き流を隔壁蒸留塔から除去させることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する関係】
【0001】
適用できない。
【技術分野】
【0002】
本開示はプロセスの流れからの不純物の除去または化合物の分離を達成するための蒸留の使用に関する。より具体的には、本開示は、アルキル化工程からの化合物(例えば、エチルベンゼン(EB)およびポリエチルベンゼン(PEB))の分離、スチレンまたはポリスチレン生成工程からの化合物(例えばエチルベンゼン(EB)、キシレンおよびスチレン)の分離並びに混合されたBTXの流れからのベンゼン、トルエンおよびキシレンの分離を達成するための蒸留の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ビニルベンゼンとしても知られるスチレンは、工業的量で生産することができる芳香族化合物である。スチレン生産のもっとも一般的な方法は、スチレン、EBおよびPEBを含む生成物の流れを形成するEBの脱水素化を含んでなる。ポリスチレン生成物中のEBおよびPEBの量を減少させることが望ましい。
【0004】
ポリスチレンはスチレン単量体から生成される芳香族重合体である。ポリスチレンは絶縁体、包装材、使い捨てナイフ・ホークにおいて、そして飲用コップに対するような発泡適用物に認められる、広く使用される重合体である。ポリスチレンの製造中に、EBを含む不純物が新鮮なスチレン供給物とともに、または再循環物の流れから流入する可能性がある。EBはパージ流として、またはポリスチレン生成物の組成中で工程から排出することができる。ポリスチレン生成物中のEB量を減少させることが望ましい可能性がある。
【0005】
粗スチレン生成物からの、またはポリスチレンプロセスのパージ流中のEBの分離は、EBとスチレンの類似した沸点により、困難な可能性がある。複数の蒸留塔の使用が、成分の分離の典型的な方法である。
【0006】
ベンゼンをアルキル化してエチルベンゼンを生成する方法は、スチレンの生産に含まれる一般的な営業的反応である。このような反応の生成物の分離は典型的には、一連の蒸留段階により実施される。同様に、生成物の流れ、例えばBTX、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物、の分離もまた、典型的には一連の蒸留段階により達成される。
【0007】
複数の蒸留塔を取り入れている工程スキームの使用は高価で、非効率的である可能性がある。従って、より経済的に可能な方法により、減少された数の蒸留塔を使用して成分の分離を達成することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0008】
要約
本明細書には、炭化水素化合物を含んでなる第1の流れを得、そして第1の流れの少なくとも一部分を、隔壁を含んでなる隔壁蒸留塔に送る工程を含む、炭化水素化合物の分離法が開示される。塔頂の流れおよび塔底の流れは側面引き抜き流と一緒に隔壁蒸留塔から除去される。第1の流れは、側面引き抜き流の反対側で隔壁蒸留塔に流入し、そして第1の流れの流入口と側面引き抜き流の流出口は隔壁により分離されている。第1の流れは、側面引き抜き流が取り出される部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給されることができる。第2の側面引き抜き流は、側面引き抜き流より低い地点で、そしてこれも第1の流れと反対側上で隔壁蒸留塔から除去されることができる。
【0009】
第1の流れは第1の反応区域から生成することができる。塔頂の流れ、側面引き抜き流または塔底の流れの少なくとも一部は第1の反応区域に対する供給物として再循環させることができる。第1の流れは、そこで側面引き抜き流がポリスチレン反応区域に再循環され得るスチレンを含んでなる、ポリスチレン反応区域からの反応器流出物の流れであることができる。第1の流れの少なくとも一部はポリスチレン反応区域に再循環させることができる。塔頂の流れはエチルベンゼンを含んでなることができる。
【0010】
第1の反応区域は、スチレンを含んでなる第1の流れを生成することができ、エチルベンゼンの脱水素反応区域であることができる。
【0011】
第1の反応区域は、エチルベンゼンを含んでなる第1の流れを形成する、ベンゼンのアルキル化反応区域であることができ、そこで塔頂の流れがベンゼンを含んでなり、側面引き抜き流がエチルベンゼンを含んでなり、そして塔底の流れがポリエチルベンゼンを含んでなる。塔底の流れはアルキル交換反応区域に供給されることができ、そして塔底の流れより低いポリエチルベンゼン含量を有する第2の流れを形成することができる。第2の生成物の流れの一部は隔壁蒸留塔に供給されることができる。
【0012】
第2の側面引き抜き流は、側面引き抜き流より低い地点で隔壁蒸留塔から除去されることができる。第2の側面引き抜き流はポリエチルベンゼンを含んでなり、アルキル交換反応区域に供給されて、第2の側面引き抜き流より低いポリエチルベンゼン含量を有する第2の流れを生成することができる。第2の生成物の流れのすべてまたは一部は隔壁蒸留塔に供給されることができる。
【0013】
一つの態様において、第1の流れはベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンの少なくとも2種を含んでなり、そして隔壁蒸留塔は、ベンゼンを含んでなる塔頂の流れ、トルエンを含んでなる側面引き抜き流およびキシレンを含んでなる塔底の流れを生成することができる。ポリエチルベンゼンを含んでなる、隔壁蒸留塔からの第2の側面引き抜き流は、側面引き抜き流より低い地点で除去されることができる。
【0014】
本発明の他の態様は、スチレンを含んでなる流れを、そこでポリスチレンを含んでなる流れが除去され、反応器流出物の流れが除去される、ポリスチレン反応区域に供給する工程によるポリスチレンの製法である。反応器流出物の流れの少なくとも一部は隔壁蒸留塔に送られ、そこで塔頂の流れ、塔底の流れおよび側面引き抜き流が隔壁蒸留塔から除去され、側面引き抜き流はスチレンを含んでなる。供給物の流れはポリスチレン反応区域に流入する前に溶媒と混合されたスチレンを含んでなることができ、該溶媒は135℃〜150℃の範囲で沸騰するパラフィンを含んでなる。反応器流出物は、側面引き抜き流が取り出される部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給される。側面引き抜き流はポリスチレン反応区域に再循環されることができる。反応器流出物の流れの一部はポリスチレン反応区域に再循環されることができる。反応器流出物の流れはスチレンおよびエチルベンゼンを含むことができる。塔頂の流れはエチルベンゼンを含むことができる。
【0015】
更に他の態様は、スチレン反応区域から第1の生成物の流れを得、そして第1の生成物の流れの少なくとも一部を隔壁蒸留塔に送る工程を含むスチレンの製法である。塔頂の流れ、塔底の流れおよび側面引き抜き流は隔壁蒸留塔から除去される。第1の生成物の流れは、側面引き抜き流が取り出される部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給されることができる。側面引き抜き流はスチレンを含むことができ、塔頂の流れはエチルベンゼンを含むことができる。塔頂の流れの少なくとも一部はスチレン反応区域に再循環することができる。
【0016】
更に他の態様は、アルキル化反応区域から第1の生成物の流れを得、そして第1の生成物の流れの少なくとも一部を隔壁蒸留塔に送る工程を含むエチルベンゼンの製法である。塔頂の流れ、塔底の流れおよび側面引き抜き流は隔壁蒸留塔から除去される。第1の生成物の流れは、側面引き抜き流が取り出される部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給されることができる。側面引き抜き流はエチルベンゼンを含むことができ、塔頂の流れはベンゼンを含むことができる。塔頂の流れの少なくとも一部はアルキル化反応区域に再循環することができる。塔底の流れはポリエチルベンゼンを含むことができ、塔底の流れの少なくとも一部はアルキル交換反応区域に供給されて、塔底の流れより減少したポリエチルベンゼン含量を有する第2の生成物の流れを生成することができる。第2の生成物の流れの少なくとも一部は隔壁蒸留塔に供給されることができる。
【0017】
本明細書には、隔壁蒸留塔が反応器流出物からの不純物の除去およびスチレン回収のために使用されるポリスチレンの製法が開示される。より具体的には、本明細書には、ポリスチレン反応器流出物が隔壁蒸留塔に送られ、そこで隔壁蒸留塔が軽質留分の流れ、重質留分の流れおよびスチレンを含む再循環物の流れを生成するポリスチレンの製法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は側面引き抜きをもたない複数の蒸留塔をもつ、先行技術の蒸留分離法を示す。
【図2】図2は側面引き抜きをもたない複数蒸留塔を使用して分離される、パージ流をもつポリスチレン分離法を示す。
【図3】図3は側面引き抜きをもつ隔壁蒸留塔を使用して分離される、パージ流をもつポリスチレン分離法を示す。
【図4】図4は2つの側面引き抜き(一方の側面引き抜きは再循環物の流れである)をもつ隔壁蒸留塔を取り入れている製法を示す。
【図5】図5は2つの側面引き抜き(一方の側面引き抜きは第2の別の反応区域をもつ再循環物の流れである)をもつ隔壁蒸留塔を取り入れている製法を示す。
【図6】図6は塔頂および塔底の流出口の流れと一緒に2つの側面引き抜きをもつ隔壁蒸留塔のスキーム図である。
【0019】
詳細な説明
本明細書には、隔壁を含んでなる隔壁蒸留塔を含む、炭化水素化合物の分離法が開示される。隔壁は蒸留塔の内部の一部を垂直に二分するが、塔の頂上または塔底の部分までは延伸せず、従って従来の塔と同様に、塔を、還流そして再沸騰されることを可能にさせる。隔壁は、塔の内部を分離する流体非透過性バッフルを提供する。塔への流入口は隔壁の片側上に配置され、他方、反対側には1つまたは複数の側面引き抜きが配置されている。隔壁は、流入口をもたない塔の側を、流入物の流速、状態または組成の変動からの最少の影響を伴って、より安定な方法で機能させる。この増加された安定度が、塔頂の流れまたは塔底の流れのいずれかからの異なる組成物を有する塔から、1つまたは複数の側面引き抜き流が除去される方法で、塔がデザインされそして操作されることを可能にする。
【0020】
1本の塔から3本以上の生成物の流れを形成する能力は、より少数の蒸留塔および恐らく減少した資本経費を伴う成分の分離を可能にすることができる。隔壁蒸留塔は、単一の蒸留塔として使用することができるか、または直列または並列のいずれかに配置された複
数の隔壁蒸留塔を使用することができる。隔壁蒸留塔はまた、1本または複数の従来の蒸留塔と一緒に使用することができる。本発明の態様は、塔に対する最適な供給物の位置が最適な側面引き抜きの位置の上方にある時に特に適用可能であることができる。供給物の位置が従来の蒸留塔における側面引き抜きの位置の上方にある場合は、塔内の液体供給物の下向の流れが側面引き抜き物の組成に著しい効果をもつであろう。供給物の流量、供給物の流れの状態または組成の変化は、側面引き抜き物の組成を変え、そして安定な側面引き抜き流の形成達成を非常に困難にさせるであろう。
【0021】
本明細書には、ポリスチレン反応器が、ポリスチレンを含んでなる一本の流れおよび反応器流出物の第2の流れを形成し、反応器流出物が隔壁蒸留塔に送られ、隔壁蒸留塔が軽質留分、重質留分およびスチレン再循環物の流れを形成することができる、ポリスチレンの製法が開示される。
【0022】
ポリスチレン反応器へのスチレン供給物はエチル−ベンゼンを含む汚染物を含む可能性がある。他の芳香族化合物のみならずまた、エチル−ベンゼンは典型的には、反応に対する希釈剤を形成するために工程中で形成を許される。希釈剤は、反応の熱を吸収し、そしてそれにより重合反応速度を制御し、そして暴走反応を防止するために使用することができる。他の芳香族の不純物はオルソ−キシレン、メタ−キシレン、クメン、n−プロピルベンゼンおよびMPETおよび本明細書で他の芳香族不純物と呼ばれる群を含むことができる。
【0023】
ポリスチレン生成物中のエチル−ベンゼン含量を減少することは有益であることができる。ポリスチレンペレット内に含有されるエチル−ベンゼンの量は反応器中のエチル−ベンゼンの量に比例し、反応器内に残留するエチル−ベンゼン1,000ポンド当り約1ポンドのエチル−ベンゼンがペレット内に残留する。
【0024】
スチレン供給物はまた、溶媒、例えばIsane 130を含むことができる。説明的例において、スチレン供給物は75〜99.5重量パーセントのスチレン、0〜20重量パーセントのIsane 130および10ppm〜5000ppmのエチル−ベンゼンを含んでなることができる。更なる例として、スチレン供給物は85〜95重量パーセントのスチレン、7〜12重量パーセントのIsane 130および100ppm〜1000ppmのエチル−ベンゼンを含んでなることができる。
【0025】
溶媒のIsane 130はTOTAL Petrochemicals USA,Inc.により販売される溶媒の商品名である。該溶媒は摂氏約135〜約150度の間の沸点範囲をもつパラフィンからなる。ASTM D86により決定されるIsane 130の組成は以下の表1に示される。
【0026】
【表1】

【0027】
Isane 130は、大半の溶媒がスチレンとエチル−ベンゼン間で沸騰し、従ってスチレンとエチル−ベンゼン間で相対的揮発性を増加するために、ポリスチレン工程のための優れた溶媒であることができる。従って、スチレン供給組成物中へのIsane 130溶媒の添加はスチレンとエチル−ベンゼンの分離の作業を容易にさせることができる。
【0028】
ポリスチレン反応区域はポリスチレンおよび流出物の流れを形成する。流出物の流れの一部は、工程中のスチレン以外の芳香族化合物の組成を維持するためにパージの流れとして取り入れることができる。流出物の流れはポリスチレン反応区域の流入口に再循環され、そして/または新鮮なスチレン供給物とともに反応器に添加することができる。
【0029】
本発明の一つの態様に従うと、反応器の流出物の少なくとも一部は不純物の除去のために蒸留塔に送ることができる。本発明の一つの態様に従うと、0.01〜99.99重量パーセントがポリスチレン反応区域に再循環され、他方、残りの部分が蒸留塔に送られる。本発明の他の態様に従うと、50〜95重量パーセントの流出物が再循環され、他方、残りの部分が蒸留塔に送られる。更に他の態様に従うと、75〜95重量パーセントがポリスチレン反応区域に再循環され、他方、残りの部分が蒸留塔に送られる。
【0030】
本発明の他の態様に従うと、すべての反応器の流出物が蒸留塔に送られる。
【0031】
本発明に従うと、蒸留塔は内部隔壁を含んでなり、そして隔壁蒸留塔と呼ぶことができる。この態様においては、供給物トレイと側面引き抜きトレイは隔壁の反対側上にある。この隔壁塔の配列において、隔壁は流入する供給物が側面引き抜き流の組成に影響を与えることを妨げるためのバリヤーとして働く。この配列は供給物トレイが側面引き抜きトレイの上方の位置にあることを可能にする。従って、この隔壁塔の配列は、側面引き抜きを、供給物の流れが流入する同一の塔から取り出されることを可能にする。
【0032】
本発明の一つの態様に従うと、隔壁回収塔は20〜100の間の平衡段階またはトレイ
を含んでなる。他の態様に従うと、隔壁回収塔は30〜90個の間のトレイを含んでなる。更に他の態様に従うと、隔壁回収塔は40〜80個の間のトレイを含んでなる。塔はあらゆる適当なタイプのパッキングまたはトレイ、例えば、ふるいもしくはバブルトレイの限定されない例、を含むことができる。
【0033】
該態様に従うと、供給物トレイは側面引き抜きトレイと、隔壁の反対側に配置される。一つの態様に従うと、供給物トレイは側面引き抜きトレイの場所にまたはその上方に配置される。他の態様に従うと、供給物トレイは側面引き抜きトレイより下方に配置される。
【0034】
本明細書に開示される本発明は、エチル−ベンゼンをスチレンから分離するために使用することができる。このスチレン分離法の態様に従うと、スチレンとエチル−ベンゼンの混合物が隔壁蒸留塔に供給される。隔壁蒸留塔はスチレンとエチル−ベンゼンの混合物を4本までの別々の流れに分離する。これらの4本の別々の流れは、エチル−ベンゼンを含んでなる塔頂生成物、スチレン生成物を含んでなる側面引き抜き生成物、ポリエチルベンゼンを含んでなる下方の側面引き抜き流および塔底の残留物の流れ、を含んでなる。
【0035】
該態様に従うと、隔壁蒸留塔に供給されるスチレンとエチル−ベンゼンの混合物はスチレン生成法の生成物の流れから得られる。一つの態様において、スチレンの反応器生成物はスチレンの回収のために隔壁蒸留塔に直接送られる。
【0036】
本明細書に開示される本発明は、芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンの混合物、を分離するために使用することができる。この芳香族分離法の態様に従うと、芳香族の混合物は隔壁蒸留塔に供給される。隔壁蒸留塔はそれらの成分を4本までの別々の流れに分離する。これらの4本の別々の流れは、ベンゼンを含んでなる塔頂の生成物、トルエンを含んでなる側面引き抜き生成物並びにキシレンおよびエチルベンゼンの塔底の流れを含んでなることができる。代わりの芳香族分離法はBTX(ベンゼン−トルエン−キシレン)の流れの、ベンゼンを含んでなる塔頂の生成物、トルエンを含んでなる側面引き抜き生成物およびキシレンの塔底の流れへの分離であることができる。
【0037】
本明細書に開示される本発明はアルキル化反応、例えばベンゼンのエチルベンゼンへのアルキル化、からの生成物を分離するために使用することができる。生成物はベンゼン、エチルベンゼンおよびポリエチルベンゼンを含むことができる。隔壁蒸留塔は成分を4本までの別々の流れに分離する。これらの4本の別々の流れは、ベンゼンを含んでなる塔頂の生成物、エチルベンゼンを含んでなる上方の側面引き抜き生成物、ポリエチルベンゼンを含んでなる下方の側面引き抜き生成物および、より重質の成分、例えばテトラエチルベンゼンの塔底の流れを含んでなることができる。
【0038】
図面の詳細な説明
図1は、先行技術に従う、成分の分離のための2本の蒸留塔を使用する分離法を表す。第1の蒸留塔(130)は流入口の流れ(111)を塔頂の流れ(131)およびスチレンを含んでなるであろう塔底の流れ(134)に分離する。塔頂の流れ(131)はコンデンサー(132)中で濃厚化されて、流れ(133)をもたらす。濃厚化された流れ(133)の一部は第1の蒸留塔(130)に還流されることができる。塔底の流れ(134)の一部は再沸騰装置(135)を経て塔に送り返され、他方、残りの塔底の流れはライン(136)中に引き取られる。
【0039】
塔底の流れ(136)は、第2の蒸留塔(140)に送られ、それが塔頂の流れ(141)および塔底の流れ(144)を形成する。塔頂の流れ(141)は濃縮装置(142)中で濃厚化されて、流れ(143)をもたらし、その一部は第2の蒸留塔(140)に
還流されることができる。塔底の流れ(144)の一部は再沸騰装置(145)を経て塔に送り返され、他方、残りの塔底の流れはライン(146)中に引かれる。
【0040】
図2は、先行技術に従う、反応流出物の流れの処理のために2本の蒸留塔を使用するポリスチレン工程を表す。スチレン供給物(102)はスチレン再循環物の流れ(118)と混合され、混合ポリスチレン反応器供給物(104)をもたらす。
【0041】
ポリスチレン反応器(107)はポリスチレン生成物(106)および流出物の流れ(109)を形成する。
【0042】
流出物の流れ(109)の一部は流れ(110)中にパージされるか、または混合ポリスチレン反応器供給物(104)に再循環して戻すことができる。パージまたは再循環されない残りの流出物の流れ(111)は第1の蒸留塔(130)に送られる。第1の蒸留塔(130)は流出物の流れ(111)を塔頂の流れ(131)および、スチレンを含んでなるであろう塔底の流れ(134)に分離する。塔頂の流れ(131)は濃縮装置(132)中で濃厚化され、流れ(133)をもたらす。塔底の流れ(134)の一部は再沸騰装置(135)を経て塔に送り返され、他方、残りの塔底の流れはライン(136)中に引かれる。
【0043】
塔底の流れ(136)は第2の蒸留塔(140)に送られ、それが、スチレンを含んでなる塔頂の流れ(141)および塔底の流れ(144)を形成する。塔頂の流れ(141)は濃縮装置(142)中で濃厚化されて、再循環物の流れ(143)をもたらす。塔底の流れ(144)の一部は再沸騰装置(145)を経て塔中に送り返され、他方、残りの塔底の流れはライン(146)中に引かれる。
【0044】
スチレンを含んでなる再循環物の流れ(143)は熱交換器(117)に送られて、液体スチレンの流れ(118)を得ることができ、次にスチレン供給物(102)と混合される。
【0045】
図3は1本の隔壁回収塔がポリスチレン工程に適用される本発明の一つの態様を表す。スチレン供給物(102)がIsane溶媒(103)、流出再循環物の流れ(110)およびスチレン再循環物の流れ(118)と混合されて、混合ポリスチレン反応器供給物(104)をもたらす。
【0046】
ポリスチレン反応器(107)はポリスチレン生成物(106)および流出物の流れ(109)を形成する。
【0047】
次に、反応器流出物の流れ(109)の一部は場合により、パージまたは再循環物の流れ(110)に送られる。パージまたは再循環されない残りの流出物の流れ(111)は隔壁蒸留塔(112)に送られる。隔壁蒸留塔(112)は流出物の流れ(111)を塔頂の流れ(113)、スチレン再循環物の流れ(116)および塔底の流れ(119)に分離する。塔頂の流れ(113)は濃縮装置(114)中で濃厚化されて、流れ(115)をもたらす。スチレンを含んでなる再循環物の流れ(116)は熱交換器(117)に送られて、液体スチレンの流れ(118)を得ることができ、次にそれがスチレン供給物(102)およびIsane溶媒(103)と混合される。塔底の流れ(119)の一部は再沸騰装置(120)を経て塔中に送り返され、他方、残りの塔底の流れはライン(121)中に引かれる。
【0048】
図4は、隔壁蒸留塔が2本の側面引き抜き流を形成するために使用される本発明の一つの態様を表す。供給物(202)は再循環物の流れ(218)と混合されて、混合反応器
供給物(204)をもたらし、それが反応器(208)に供給される。反応器(208)は生成物の流れ(209)を形成する。
【0049】
次に生成物の流れ(209)は隔壁蒸留塔(212)に送られ、それが生成物の流れ(209)を塔頂の流れ(213)、上方の側面引き抜き流(222)、下方の側面引き抜き再循環流(216)および塔底の残留物の流れ(219)に分離する。塔頂の流れ(213)は濃縮装置(214)中で濃厚化されて、流れ(215)をもたらす。再循環物の流れ(216)は熱交換器(217)に送られて再循環物の流れ(218)を得ることができ、次にそれは供給物(202)と混合される。塔底の残留物の流れ(219)の一部は再沸騰装置(220)を経て塔に送り返され、他方、残りの塔底の残留物はライン(221)中に引かれる。場合により、いずれかの流れ(215、222、216または221)を、分離される特定の成分および生成される特定の生成物に応じて、再循環物の流れとして使用することができる。
【0050】
図5は、隔壁蒸留塔が2本の側面引き抜き流を形成するために使用される、エチルベンゼンを生成するためのアルキル化反応の本発明の態様を表す。ベンゼンおよびエチレンを含んでなる供給物(302)がアルキル化反応器(308)に供給される。反応器(308)はベンゼン、エチルベンゼンおよびポリエチルベンゼンを含んでなる生成物の流れ(309)を形成する。
【0051】
次に生成物の流れ(309)は隔壁蒸留塔(312)に送られ、それが生成物の流れ(309)を、塔頂の流れ(313)、エチルベンゼン生成物を含んでなる上方の側面引き抜き流(322)、ポリエチルベンゼンを含んでなる下方の側面引き抜き再循環物の流れ(316)および塔底残留物の流れ(319)に分離する。塔頂の流れ(313)は濃縮装置(314)中で濃厚化されて、ベンゼンおよびより軽質成分を含む流れ(315)をもたらす。流れ(315)は供給物の流れ(302)に再循環して戻すことができる(図示されていない)。ポリエチルベンゼンを含んでなる下方の側面引き抜き流(316)はアルキル交換反応器(330)に送られて、下方の側面引き抜き流(316)より低いポリエチルベンゼン含量を有する再循環物の流れ(332)を得る再循環物の流れであることができ、それは次に生成物の流れ(309)と混合されて、隔壁蒸留塔(312)に送られる。塔底残留物の流れ(319)の一部は再沸騰装置(320)を経て塔に送り返され、他方、テトラエチルベンゼンのような、より重質成分を含む残りの塔底の残留物はライン(321)中に引かれる。
【0052】
図6は、混合された流れ(402)を塔頂の流れ(413)、上方の側面引き抜き流(422)、下方の側面引き抜き流(416)および塔底の流れ(419)に分離する隔壁蒸留塔(412)を表す。混合された流れ(402)は側面引き抜き流(422)(416)から、垂直に配置された隔壁の相反する側の隔壁蒸留塔(412)に供給される。塔頂の流れ(413)は濃縮装置(414)中で濃厚化されて、流れ(415)をもたらし、その一部は典型的には、隔壁蒸留塔(412)に対する還流物の流れとして使用されるであろう。塔底残留物の流れ(419)の一部は再沸騰装置(420)を経て塔に送り返され、他方、残りの塔底残留物の流れはライン(421)中に引かれる。
【0053】
請求項のあらゆる要素に関する用語「場合により」の使用は、主題要素が必要であるか、あるいはまた必要でないことを意味することが意図される。両方の場合が請求項の範囲内にあることが意図される。含んでなる(comprises)、含む(includes)、有する(having)、等のようなより広義の用語の使用は、よりなる(consisting of)、本質的によりなる(consisting essentially of)、実質的にそれからなる(comprised substantially of)、等のような、より狭義の用語に対する土台(support)を提供する
ものと理解しなければならない。
【0054】
本明細書で使用される「平行な」または「平行な配列」は、構成部品が直列に配列されておらず、そして各構成部品が流れの一部を別々に処理することを意味すると定義される。従って、構成部品は相互に対して真の物理的な平行状態に配列されるとは限らない。
【0055】
本明細書における、すべての「発明」に対する言及は、文脈に応じて、場合により、ある特定の態様のみを表すことができる。他の場合には、それは1件または複数の、しかし必ずしもすべてではない請求項中に引用された主題事項を表すことができる。以上は、本特許中の情報が利用可能な情報および技術と組合わされる時に、本発明を当業者に製造し、使用させることができるように含まれている本発明の態様、バージョンおよび実施例に関するが、本発明はこれらの特定の態様、バージョンおよび実施例にのみ限定はされない。本発明の他の、そして更なる態様、バージョンおよび実施例は、その基礎的範囲から逸脱せずに考案されることができ、そしてそれらの範囲は以下の請求項によって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素化合物を含んでなる第1の流れを得、
第1の流れの少なくとも一部を、隔壁を含んでなる隔壁蒸留塔に送り、
隔壁蒸留塔から塔頂の流れおよび塔底の流れを除去し、そして
隔壁蒸留塔から側面引き抜き流を除去する工程;
を含んでなる炭化水素化合物の分離法であって、
第1の流れが、隔壁により分離された側面引き抜き流と反対側で隔壁蒸留塔に流入する、
炭化水素化合物の分離法。
【請求項2】
第1の流れが、側面引き抜き流が取り去られる部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給される、請求項1の方法。
【請求項3】
隔壁蒸留塔が20〜100の間の平衡段階を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項4】
第1の流れが第1の反応区域から形成される、請求項1の方法。
【請求項5】
塔頂の流れの少なくとも一部が第1の反応区域に対する供給物として再循環される、請求項4の方法。
【請求項6】
側面引き抜き流の少なくとも一部が、第1の反応区域に対する供給物として再循環される、請求項4の方法。
【請求項7】
塔底の流れの少なくとも一部が、第1の反応区域に対する供給物として再循環される、請求項4の方法。
【請求項8】
第1の流れがポリスチレン反応区域からの反応器流出物の流れである、請求項1の方法。
【請求項9】
側面引き抜き流がスチレンを含んでなる、請求項8の方法。
【請求項10】
側面引き抜き流がポリスチレン反応区域に再循環される、請求項9の方法。
【請求項11】
第1の流れの少なくとも一部がポリスチレン反応区域に再循環される、請求項8の方法。
【請求項12】
塔頂の流れがエチルベンゼンを含んでなる、請求項8の方法。
【請求項13】
第1の反応区域がスチレンを含んでなる第1の流れを形成する、請求項4の方法。
【請求項14】
第1の反応区域がエチルベンゼン脱水素反応区域である、請求項13の方法。
【請求項15】
第1の反応区域が、エチルベンゼンを含んでなる第1の流れを形成するベンゼンのアルキル化反応区域である、請求項4の方法。
【請求項16】
塔頂の流れがベンゼンを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項17】
側面引き抜き流がエチルベンゼンを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項18】
塔底の流れがポリエチルベンゼンを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項19】
塔底の流れがアルキル交換反応区域に供給され、そして塔底の流れより低いポリエチルベンゼン含量を有する第2の流れを形成する、請求項18の方法。
【請求項20】
第2の生成物の流れの少なくとも一部が隔壁蒸留塔に供給される、請求項19の方法。
【請求項21】
更に、ポリエチルベンゼンを含んでなる第2の側面引き抜き流を、側面引き抜き流より低い地点で、隔壁蒸留塔から除去する工程を含んでなる、請求項15の方法。
【請求項22】
第2の側面引き抜き流が、アルキル交換反応区域に供給され、そして第2の側面引き抜き流より低いポリエチルベンゼン含量を有する第2の流れを形成する、請求項21の方法。
【請求項23】
第2の生成物の流れの少なくとも一部が隔壁蒸留塔に供給される、請求項22の方法。
【請求項24】
第1の流れがベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンの少なくとも2種を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項25】
塔頂の流れがベンゼンを含んでなる、請求項24の方法。
【請求項26】
側面引き抜き流がトルエンを含んでなる、請求項24の方法。
【請求項27】
塔底の流れがキシレンを含んでなる、請求項24の方法。
【請求項28】
ポリエチルベンゼンを含んでなる第2の側面引き抜き流を、側面引き抜き流より低い地点で隔壁蒸留塔から除去する工程を更に含んでなる、請求項24の方法。
【請求項29】
第2の側面引き抜き流を、側面引き抜き流より低い地点で、そして第1の流れと反対側上で隔壁蒸留塔から除去する工程を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項30】
ポリスチレンを含んでなる流れが除去され、そして反応器流出物の流れが除去されるポリスチレン反応区域に、スチレンを含んでなる流れを供給し、
反応器流出物の流れの少なくとも一部を隔壁蒸留塔に送り、
塔頂の流れおよび塔底の流れを隔壁蒸留塔から除去し、そして
スチレンを含んでなる側面引き抜き流を隔壁蒸留塔から除去する工程、
を含んでなる、ポリスチレンの生成法。
【請求項31】
スチレンを含んでなる供給物の流れがポリスチレン反応区域に流入する前に溶媒と混合される、請求項30の方法。
【請求項32】
溶媒が135℃〜150℃の範囲で沸騰するパラフィンを含んでなる、請求項31の方法。
【請求項33】
反応器の流出物が、側面引き抜き流が取り去られる部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給される、請求項30の方法。
【請求項34】
側面引き抜き流がポリスチレン反応区域に再循環される、請求項30の方法。
【請求項35】
反応器流出物の流れの少なくとも一部がポリスチレン反応区域に再循環される、請求項
30の方法。
【請求項36】
反応器流出物の流れがスチレンおよびエチルベンゼンを含んでなる、請求項30の方法。
【請求項37】
塔頂の流れがエチルベンゼンを含んでなる、請求項30の方法。
【請求項38】
第1の生成物の流れをスチレン反応区域から得、
第1の生成物の流れの少なくとも一部を隔壁蒸留塔に送り、
塔頂の流れおよび塔底の流れを隔壁蒸留塔から除去し、そして
側面引き抜き流を隔壁蒸留塔から除去する工程、
を含んでなる、スチレンの製法。
【請求項39】
第1の生成物の流れが、側面引き抜き流が取り去られる部分より上の位置で隔壁蒸留塔に供給される、請求項38の方法。
【請求項40】
側面引き抜き流がスチレンを含んでなる、請求項38の方法。
【請求項41】
塔頂の流れがエチルベンゼンを含んでなる、請求項38の方法。
【請求項42】
塔頂の流れの少なくとも一部がスチレン反応区域に再循環される、請求項38の方法。
【請求項43】
第1の生成物の流れをアルキル化反応区域から得、
第1の生成物の流れの少なくとも一部を隔壁蒸留塔に送り、
塔頂の流れおよび塔底の流れを隔壁蒸留塔から除去し、そして
側面引き抜き流を隔壁蒸留塔から除去する工程、
を含んでなる、エチルベンゼンの製法。
【請求項44】
第1の生成物の流れが、側面引き抜き流が取り去られる部分より上の位置で、隔壁蒸留塔に供給される、請求項43の方法。
【請求項45】
側面引き抜き流がエチルベンゼンを含んでなる、請求項43の方法。
【請求項46】
塔頂の流れがベンゼンを含んでなる、請求項43の方法。
【請求項47】
塔頂の流れの少なくとも一部がアルキル化反応区域に再循環される、請求項43の方法。
【請求項48】
塔底の流れがポリエチルベンゼンを含んでなる、請求項43の方法。
【請求項49】
塔底の流れの少なくとも一部がアルキル交換反応区域に供給されて、塔底の流れより減少したポリエチルベンゼン含量を有する第2の生成物の流れを形成する、請求項48の方法。
【請求項50】
第2の生成物の流れの少なくとも一部が隔壁蒸留塔に供給される、請求項49の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513999(P2012−513999A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543607(P2011−543607)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068900
【国際公開番号】WO2010/078098
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】