説明

障害ONU特定方法及び装置

【課題】
障害ONUを特定する。
【解決手段】
ONU(18−1〜n)がいずれも正常に動作している状態で、CPU(24)は、下り転送装置(22)を介して、ONU(18−1〜n)に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを送信する。光/電気変換器(30)はONU(18−1〜n)からの光信号を電気信号に変換し、波形計測装置(38)は光/電気変換器(30)の出力電気信号の包絡線波形を正常時波形として計測する。何れかのONUの論理リンクが断になると、CPU(24)は、即時応答要求コマンドをONU(18−1〜n)に向け送信し、波形計測装置(38)は、光/電気変換器(30)の出力電気信号の包絡線波形を障害時波形として計測する。波形比較装置(40)は正常時波形と障害時波形を比較し、CPU(24)は比較結果をONU管理情報(36a)に照合して、障害ONUを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害ONU特定方法及び装置に関し、より具体的には、PON(Passive Optical Network)システムのような、局側光終端装置OLT(Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置ONU(Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加入者へのアクセス回線に光ファイバを使用するFTTH(Fiber To The Home)サービスでは、PON(Passive Optical Network)システムが多く用いられている。PONシステムは、交換局等に1台の局側光終端装置OLT(Optical Line Terminal)を配置し、OLTに受動光伝送路を介して複数の加入者光終端装置ONU(Optical Network Unit)を収容する方式である。受動光伝送路は、OLTに接続する光ファイバ(共用光ファイバ)と、各加入者光終端装置ONUに接続する光ファイバ(分岐光ファイバ)と、共用光ファイバと分岐光ファイバとを接続する受動光素子である光カプラからなる。OLTと共用光ファイバの共有により、設備コストと光ファイバコストを低減することができる。
【0003】
上りに単一波長を使用するPONシステムでは、各ONUの上り光信号伝送にTDMA方式が採用される。すなわち、OLTは、各ONUに対し、上り光の送信タイミングを指示し、各ONUは、指示されたタイミング及び時間帯にのみ上り光信号を光ファイバに出力する。
【0004】
ONUの障害には、動作しないことを含めOLTからの制御又は指示を単に受け付けない場合と、許可された時間帯以外に光信号を送出する場合とがある。後者は、典型的には、上り光信号出力用のレーザダイオードが暴走している場合であり、制御障害等により、許可されていない時間帯に上り光信号を出力する場合もありうる。後者は、他のONUの上り信号伝送を妨害する点で、前者よりも悪質である。従って、このような、許可された時間帯を超えて光信号を送出する障害ONUを早期に特定する技術が必要となる。
【0005】
特許文献1には、各ONUに順に全帯域を与えて上り光信号を送出させてそのときの上り光パワーを測定し、帯域を与えなかった場合と同じ上り光パワーの上り光信号を出力するONUを障害ONUと特定する技術が記載されている。
【0006】
特許文献2には、OLTが、アイドルパターンを各ONUに送信してループバックさせ、受信したアイドルパターンとの相関関数を計算することによって、正常に動作するONU(以下、正常ONUという)を識別する方法が記載されている。このようなループバック応答をしないONUは、何らかの障害を抱えており、交換又は修理が必要となる。
【0007】
特許文献3には、ONUの光ファイバからの切り離しの際の挙動を監視してデータベース化し、妨害光の発生時には、当該データベースを参照して、妨害光を出力するONUを推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4020597号
【特許文献2】特開2003−158531号公報
【特許文献3】特開2006−303673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に記載の技術は、妨害光が発生した状況下でも正常ONUがOLTからの制御命令に応答できるという前提が成立する場合にのみ、利用可能である。すなわち、これらの技術は、上り光信号の伝送不能(OLTにおいて識別不能)により正常ONUの論理リンクが切れている状況では適用できない。
【0010】
特許文献3の技術は、利用者の不審な操作を前提としており、より一般的な、上り光信号出力用のレーザダイオードが暴走するケース等には、対応出来ない。
【0011】
そこで、本発明では、論理リンクが切れた状態でも障害ONU又は正常ONUを特定出来る障害ONU特定方法及び装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る障害ONU特定方法は、局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する方法であって、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態で、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する第1の即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する第1の即時応答要求コマンド送信ステップと、当該第1の即時応答要求コマンドに応じて当該複数の加入者光終端装置から返信され当該光伝送路を伝送する応答信号を含む光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を正常時波形として計測する第1の波形計測ステップと、当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、第2の即時応答要求コマンドを当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する第2の即時応答要求コマンド送信ステップと、当該第2の即時応答要求コマンド送信ステップに続けて、当該光伝送路からの光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を障害時波形として計測する第2の波形計測ステップと、当該正常時波形と当該障害時波形との比較から当該障害ONUを特定する特定ステップとを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る障害ONU特定方法は、局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する方法であって、当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信ステップと、当該即時応答要求コマンド送信ステップに続けて、当該光伝送路からの光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を障害時波形として計測する波形計測ステップと、当該局側光終端装置が保持する、各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を参照し、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態での、当該即時応答要求コマンドに対する応答信号の包絡線波形を正常時波形として生成する正常時波形生成ステップと、当該正常時波形と当該障害時波形との比較から当該障害ONUを特定する特定ステップとを具備することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る障害ONU特定装置は、局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する装置であって、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信手段と、当該複数の加入者光終端装置から出力され当該光伝送路を伝送する光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を計測する波形計測手段と、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態で、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を計測させ、計測した包絡線波形を正常時波形としてメモリに記憶し、当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を障害時波形として計測させる制御手段と、当該正常時波形と当該障害時波形の比較から当該障害ONUを特定する特定手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る障害ONU特定装置は、局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する装置であって、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信手段と、当該複数の加入者光終端装置から出力され当該光伝送路を伝送する光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を計測する波形計測手段と、当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を障害時波形として計測させる制御手段と、当該局側光終端装置が保持する、各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を参照し、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態での、当該即時応答要求コマンドに対する応答信号の包絡線波形を正常時波形として生成する正常時波形生成手段と、当該正常時波形と当該障害時波形の比較から当該障害ONUを特定する特定手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、仮に論理リンクが切れても、障害ONUの特定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。
【図2】ディスカバリー手順によるONUの新規登録手続きのシーケンスを示す。
【図3】ディスカバリー手順のDiscovery_GATEフレームのフレーム構造を示す。
【図4】即時応答要求コマンドに対する応答フレームの波形例を示す。
【図5】図4に示す波形例に対して、あるONUが常時、上り光信号を出力するようになった場合の波形例を示す。
【図6】図4に示す波形例に対して、あるONUがOLTの送信許可とは無関係に上り光信号を出力するようになった場合の波形例を示す。
【図7】ONU管理情報から生成した応答フレーム波形(推測波形)とその包絡線波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。図示した実施例は、IEEE802.3で規格化されたEPON(Ethernet Passive Optical Network)に準拠している。Ethernetは登録商標である。
【0020】
本実施例の構成と基本動作を簡単に説明する。センター局に配備されるOLT10は共用光ファイバ12を介して光カプラ14に接続し、光カプラ14は、個々の分岐光ファイバ16−1〜16−nを介して加入者宅のONU18−1〜18−nに接続する。光カプラ14は、共用光ファイバ12から入力する下り光信号をn分割し、分割された各下り光信号を分岐光ファイバ16−1〜16−nに供給し、分岐光ファイバ16−1〜16−nから入力する上り光信号を共用光ファイバ12に出力する受動光素子である。共用光ファイバ12、光カプラ14及び分岐光ファイバ16−1〜16−nが、OLT10とONU18−1〜18−nとを光学的に接続するPON光伝送路を構成する。
【0021】
OLT10はまた、そのネットワークネットワークインターフェース(NNI)20で上流ネットワークに接続する。NNI20は、上流ネットワークからの何れかのONU18−1〜18−nに向けた下り信号(下りデータフレーム)を下り転送装置22に供給する。下り転送装置22には更に、OLT10の全体を制御するCPU24から、OLT10が各ONU18−1〜18−nを管理するための制御信号又は制御フレームも入力する。この制御信号の詳細は、後述する。
【0022】
下り転送装置22は、NNI20からの下りデータフレームにCPU24からの制御フレームを時間軸上で多重し、所定のフレーム構成で電気/光変換器(E/O変換器)26に供給する。一般に、下り転送装置22は、下りデータフレームより制御フレームを優先してE/O変換器26に供給する。制御フレームには、帯域割当用のGateフレームや、Discovery_GATEフレームがある。
【0023】
E/O変換器26は、所定波長でレーザ発振するレーザダイオードからなり、下り転送装置22からの電気信号を光信号(下り光信号)に変換する。WDM(波長分割多重)光カプラ28は、E/O変換器26からの下り光信号を共用光ファイバ12に出力する。
【0024】
下り光信号は,共用光ファイバ12を伝送し,光カプラ14で分割され、分岐光ファイバ16−1〜16−nを伝送してONU18−1〜18−nに到達する。ONU18−1〜18−nは、対応する分岐光ファイバ16−1〜16−nから入力する下り光信号を電気信号に変換してから自己宛てか否かを判別し,自己宛ての場合に当該下り光信号で搬送される信号(下りデータ又はOLT10からの制御フレーム)を取り込む。
【0025】
各ONU18−1〜18−nは、正常である限り,OLT10により指定されたタイミング又は時間帯に上り光信号を、対応する分岐光ファイバ16−1〜16−nに送出する。上り光信号の波長は,下り光信号の波長とは異なる。この上り光信号は、分岐光ファイバ16−1〜16−nを伝送し,光カプラ14により光ファイバ12上に時間軸上で多重され、OLT10のWDM光カプラ28に入力する。
【0026】
WDM光カプラ28は共用光ファイバ12から入力する上り光信号を光/電気変換器(O/E変換器)30に供給する。O/E変換器30は受光素子からなり、WDM光カプラ28からの上り光信号を電気信号に変換する。増幅器32は、O/E変換器30の出力電気信号(上り信号)を増幅して、上り転送装置34に供給する。
【0027】
増幅器32から上り転送装置34に入力する上り信号は、OLT10に向けた制御フレーム(制御信号又は応答信号等)と、上流ネットワークに向けた上りデータフレーム又は上りデータ信号からなり、上り転送装置34は、前者をCPU24に供給し、後者をNNI20に供給する。前者には、帯域を要求するReportフレーム、並びに、ディスカバリー手順で用いられるRegister_REQフレーム及びRegister_ACKフレーム等がある。NNI20は、上り転送装置34からの上りデータフレームを所定の伝送フレーム構成及びプロトコルで上流ネットワークに出力する。
【0028】
OLT10は、ディスカバリー(Discovery)手順によりONU18−1〜18−nを認識し、認識した各ONU18−1〜18−nに論理リンクを付与する。ディスカバリー(Discovery)手順の詳細は後述する。OLT10は、各ONU18−1〜18−nを管理するためにメモリ36にONU管理情報36aを格納する。ONU管理情報36aは、各ONU18−1〜18−nについて、ONUを特定するレコード番号(例えば,シリアル番号)、ONUに設定する論理リンクの識別番号(LLID)、及び、距離情報としての往復遅延時間RTT(Round Trip Time)からなる。往復遅延時間は、各ONU18−1〜18−nが、TDMAにより互いに衝突せずに上り光信号を出力するタイミング及び期間を決定するのに必要となる。ONU18−1〜18−nが有する機能(例えば、VoIP(Voice over IP)、VoD(Video On Demand)及び一般のデータ通信等)毎に論理リンクを付与する場合には,1台のONUに複数の論理リンクを設定することもある。
【0029】
OLT10はまた、障害ONUの特定のために、O/E変換器30の出力電気信号の波形を計測する波形計測装置38を具備する。波形計測装置38の作用は、後述する。
【0030】
本実施例では,障害ONUの特定にディスカバリー手順における制御信号を流用するので、先ず,ディスカバリー手順の本来の利用法と動作を説明する。ディスカバリー手順は、PONシステムにおけるONUの自動新規登録手順として規定されている。図2は、ディスカバリー手順によるONUの新規登録手続きのシーケンスを示す。
【0031】
OLT10は、電源オンによる起動時、又は、その後の一定期間毎に、全ONU18−1〜18−nの内の未知(未登録)のONUに向けて、光ファイバ12を介してDiscovery_GATEフレームを送信する。図3は、ディスカバリー手順のDiscovery_GATEフレームのフレーム構造を示す。Discovery_GATEフレームは、OLT10のタイムスタンプ情報を送信先のONUに通知するとともに、ONUが登録要求フレームRegister_REQを返信可能な時刻と時間幅からなるディスカバリースロットサイズ(Discovery Slot Size)を指定する。OLT10は、未知のONUからの登録要求(Register_REQ)フレームがすべて、所定の時間内(Discovery Window内)にOLT10に到達するように、ディスカバリースロットサイズを設定する。
【0032】
Discovery_GATEを受信したONU18−1〜18−nは、Discovery_GATEを受信した後、所定の遅れ時間の経過を待って、Register_REQと呼ばれる登録要求フレームをOLT10に向けて送信する。各ONU18−1〜18−nは、OLT10から通知されるディスカバリースロットサイズ内で一様に分布するように、この遅れ時間をランダムに決定する。遅れ時間をランダムに決定することで、新規のONUが複数あったときに、それぞれが出力する登録要求フレーム(Register_REQ)が光伝送路上で衝突する確率を低減出来る。各ONU18−1〜18−nは、登録要求フレーム(Register_REQ)で、自身のMACアドレスをOLT10に通知する。
【0033】
OLT10は、登録要求フレーム(Register_REQ)を受信すると、送信元のONU18−1〜18−nに対し、論理リンクを設定するための、Registerと呼ばれる登録フレームを送信する。この登録フレームは、付与された論理リンクの識別番号(LLID)を通知するものである。登録(Register)フレームを受けたONU18−1〜18−nは、登録フレームに対応する登録承認(Register_ACK)フレームをOLT10に送信する。これにより、ディスカバリー手順が終了する。なお、登録(Register)フレームを受けた各ONU18−1〜18−nは、登録フレームで通知されたLLIDを記憶し,以後のデータ通信に使用する。
【0034】
次に,本実施例の特徴的な動作である障害ONUの検出方法を説明する。何れのONU18−1〜18−nも正常に動作している段階で、OLT10のCPU24は、下り転送装置22を介して各ONU18−1〜18−nに即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを送信する。CPU24は同時に、波形計測装置38に計測開始のトリガー信号を供給して、包絡線波形の計測を開始させる。各ONU18−1〜18−nは、即時応答要求コマンドを受信すると、即時に所定のデータ構造の返答信号を送信する。
【0035】
本実施例では、図2に示すDisovery_GATEフレームにおいて、ディスカバリースロットサイズ(ONUが登録要求フレームRegister_REQを返信可能な時間幅)をゼロにセットしたものを、即時応答要求コマンドとする。これにより、OLT10及びONU18−1〜18−nに特別の制御コマンド/応答フレームを設定する必要がなくなり、既存のPONシステムへの適用が容易になる。
【0036】
但し、既存のPONシステムでは、OLTとの間に論理リンクが確立しているONUは、Disovery_GATEフレームに対してRegister_REQを返信しない仕様になっている。従って、既存のONUを使用するPONシステムに適用する場合、OLT10は、全ONU18−1〜18−nに対して論理リンクを切断する必要がある。このような制約が無いPONシステムに適用する場合、又は、即時応答要求コマンドとしてディスカバリー手順を利用しない場合には、論理リンクを切断する必要は無い。
【0037】
即時応答要求コマンドとして、Disovery_GATEフレームを流用する場合でも、若干の仕様変更により、全ONUの論理リンクを切断する必要性を無くすことができる。例えば、図3に示すDiscovery_GATEフレーム構成において、Grants/Flags数、又はパッド/予約の中の1ビットをフラグとし、このフラグが立っている場合に、ONU18−1〜18−nは、論理リンクが確立していてもRegister_REQフレームを返送するようにする。これにより、全ONUの論理リンクの切断を不要にできる。
【0038】
Disovery_GATEフレームの構成を利用する即時応答要求コマンドに対して、各ONU18−1〜18−nは、Register_REQフレームに相当する構成及び内容の応答フレームを即時にOLT10に返信する。各ONU18−1〜18−nは応答フレームを即時に返信するので、これらの応答フレームは、時間軸上で重複してOLT10のO/E変換器30に入射する。各応答フレームで搬送されるデータ自体を解析する必要が無いので,時間軸上で重複しても問題ない。
【0039】
波形計測装置38は、各ONU18−1〜18−nからの応答フレームを含むO/E変換器30の出力を包絡線検波し、検波結果の包絡線検波波形データをCPU24に供給する。CPU24は、波形計測装置38からの包絡線検波波形データを正常時波形データとしてメモリ36の波形データ記憶域36bに格納する。なお、1G−EPON又は10G−EPONでも、ONUからの下り光信号のフレーム長は、約2μs又は約200nsであり、包絡線波形を計測するためのサンプリングレートとしては100MHz程度で十分である。
【0040】
正常時波形の計測は1回だけでなく、複数回、行ってもよい。後者の場合、計測した波形の平均値をメモリ36の波形データ記憶域36bに格納する。通常、Register_REQの受信によってディスカバリー手順が進行するが、本実施例では、OLT10を、所定回数まではRegister_REQを受信しても無視するようにするか、障害ONU検出手順中は、受信したRegister_REQを無視するようにすればよい。
【0041】
図4(A)〜(D)は、即時応答要求コマンドに対する応答フレームの波形例を示す。理解を容易にするために,4台のONU18−1〜18−4の場合を例示してある。図4(A)〜(D)に示す例では、分岐光ファイバ16−1,16−2,16−3,16−4は、この順に短いとする。ONU18−1〜18−4はそれぞれ、図4(A)〜(D)に相対的に示すタイミングで応答フレーム50−1〜50−4を分岐光ファイバ16−1〜16−4に出力する。これらの応答フレーム50−1〜50−4は分岐光ファイバ16−1〜16−4を伝送する間に減衰する。一般に、長距離伝送する応答フレームが、より多く減衰する。
【0042】
図4(E)は、共用光ファイバ12上での応答フレーム50−1〜50−4の重なり例を示す。図4(E)に示す例では、ONU18−1が最も近距離であることから応答フレーム50−1の減衰が最も小さく、ONU18−4が最も遠距離であることから、応答フレーム50−4の減衰が最も大きい。なお、伝送距離を考慮し、遠距離のONUほど、より光強度の大きな上り光信号を出力する場合もあり、その場合には、共用光ファイバ12上での応答フレームの光強度差は、より小さくなり得るし、距離と光強度との関係が逆になる場合もありうる。
【0043】
図4(F)は、図4(E)に示すような光強度及びタイミングでOLT10に入射する応答フレーム50−1〜50−4の包絡線を示す。波形計測装置38は、図4(F)に示すような包絡線波形を計測する。
【0044】
このように、正常時波形データをメモリ36に記憶した後、何れかのONUが障害により妨害光を常時出力するようになるか、又は、許可された時間帯以外の時間帯に上り光信号を出力するようになったとする。このような障害ONUが出現すると、複数のONUの論理リンクが同時に断となり、OLT10は、このような複数の論理リンクの断に応じて、以下に説明する障害ONU検出プロセスを起動する。論理リンクが断となると、各ONU18−1〜18−nは、論理リンクの未登録状態に戻る。上り光信号を常時出力するケースは、OLT10に光ファイバ12から入力する光信号の光パワーをモニタすることでも、検出可能であり、入射光パワーが所定閾値を超えた場合に、障害ONU検出プロセスを起動する。
【0045】
このような障害ONUの発生の可能性を検知すると、OLT10のCPU24は、下り転送装置22を介して各ONU18−1〜18−nに即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを送信する。CPU24は同時に、波形計測装置38に計測開始のトリガー信号を供給して、波形計測を開始させる。即時応答要求コマンドとしてDisovery_GATEフレームを利用する場合、正常時波形の計測時と同様に、必要により、事前に全ONUに対する論理リンクを切断する。
【0046】
正常に動作しているONUは、即時応答要求コマンドを受信すると、正常時波形の計測時と同様に、応答フレームを即時に返信する。障害ONUは、暴走ないしは、OLT10の送信制御下にないので、応答フレームを返信しない。電源オフになっているONUも応答フレームを返信しないが、OLT10は、電源オフのONUを別途、認識しているので、後述する波形比較の際に、電源オフのONUを除外する。
【0047】
波形計測装置38は、CPU24からのトリガー信号に応じて、O/E変換器30の出力電気信号の包絡線検波を開始する。波形計測装置38により計測された包絡線波形データは,障害時波形データとして、メモリ36の波形データ記憶域36bに格納される。
【0048】
図5は、図4に示す波形例に対して、ONU18−2が常時、上り光信号を出力するようになった場合の波形を示す。図5(A)は、共用光ファイバ12上の応答フレーム50−1,50−3,50−4と、ONU18ー2が常時出力する上り光信号52−2の波形例を示す。図5(B)は、図5(A)に示す応答フレーム50−1,50−3,50−4及び上り光信号52−2に対して波形計測装置38が計測する包絡線波形を示す。図5(C)は、正常時の包絡線波形を示す。図5(C)に示す波形は、図4(F)と同じである。
【0049】
CPU24の波形比較装置40は、メモリ36の波形データ記憶域36bに格納される障害時波形データと正常時波形データを比較し、変化部分を検出する。図5(D)は、障害時波形と正常時波形の差を示す。
【0050】
常時、何らかの上り光信号がOLT10に入力している場合、正常に応答するONU(この例では,ONU18−1,18−3,18−4)に対しては、図5(D)に示す波形差の振幅は、障害ONU(この例では,ONU18−2)の出力上り光信号の光強度に相当する有意な値となる。他方、障害ONU(この例では,ONU18−2)に対しては、図5(D)に示す波形差の振幅は、障害ONUの応答フレームのみが存在すべき期間(図5では、t1〜t2の期間)に、実施的にゼロになる。換言すると、正常時の波形から障害時の波形を減算したときには、波形差は、障害ONUの応答フレームのみが存在する期間(図5では、t1〜t2の期間)で、その他の期間とはレベルが異なる。
【0051】
CPU24は、波形比較装置40による波形比較で検出した変化期間(図5では、t1〜t2の期間)をメモリ36のONU管理情報36aのRTT情報に照合して,該当するONUを特定する。複数のONUが該当することも、可能性としてはありうるが、それらを個別に指定して即時応答要求コマンドを送信したり、特定の応答を要求することで、返信光から、実際の障害ONUを特定出来る。先に説明したように、CPU24は、波形比較の結果から障害ONUを特定する際に、電源オフのONUを除外する。
【0052】
図6は、図4に示す波形例に対して、ONU18−2がOLT10の送信許可とは無関係に上り光信号を出力するようになった場合の波形を示す。ONU18−2が障害ONUであり、即時応答要求コマンドに対して、即時でないタイミングで上り光信号54−2を出力している。図6(A)は、共用光ファイバ12上の応答フレーム50−1,50−3,50−4と、ONU18ー2が出力する上り光信号54−2の波形例を示す。図6(B)は、図6(A)に示す応答フレーム50−1,50−3,50−4及び上り光信号54−2に対して波形計測装置38が計測する包絡線波形を示す。図6(C)は、正常時の包絡線波形を示す。図6(C)に示す波形は、図4(F)と同じである。
【0053】
CPU24の波形比較装置40は、メモリ36の波形データ記憶域36bに格納される障害時波形データと正常時波形データを比較し、変化部分を検出する。図6(D)は、障害時波形と正常時波形の差を示す。
【0054】
何れかのONU(この例では,ONU18−2)がOLT10による上り送信制御から外れている場合、正常に応答するONU(この例では,ONU18−1,18−3,18−4)に対しては、図6(D)に示す波形差の振幅は、実質的にゼロとなる。他方、障害ONU(この例では,ONU18−2)に対しては、本来存在すべき期間に上り光信号が存在しないので、図6(D)に示すように、波形差の振幅が負になる期間(図6のt3〜t4の期間)と、正になる期間(図6のt5〜t6の期間)が発生する。負期間(図6のt3〜t4の期間)は、本来、応答フレームが存在すべき期間である。従って、この負期間(図6のt3〜t4の期間)をメモリ36のONU管理情報36aのRTT情報と照合することで、障害ONUを特定又は絞り込むことが出来る。もちろん、正期間(図6のt5〜t6の期間)は、本来の応答フレーム位置からのシフトを示すので、これも、障害ONUの特定又は絞り込みに利用出来る。
【0055】
すなわち、CPU24は、波形比較装置40による波形比較で検出した負期間(図6では、t3〜t4の期間)、及び必要により正期間(図6のt5〜t6の期間)をメモリ36のONU管理情報36aのRTT情報に照合して、該当するONUを特定する。該当するONUを発見出来ない場合、最も近いONUを障害ONUとする。
【0056】
何れかのONUがOLT10による上り送信制御から外れている場合でも、複数のONUが該当する可能性がある。しかし、それらを個別に指定して即時応答要求コマンドを送信したり、特定の応答を要求することで、これに対する返信光から、実際の障害ONUを特定出来る。
【0057】
図5及び図6の何れの場合も、CPU24は、上記のように特定した1又は複数の障害ONUをネットワークネットワークインターフェース(NNI)42を介して、監視ネットワークに接続するネットワーク監視装置(又はネットワーク管理者)に通知する。
【0058】
このように、本実施例では、全ONU18−1〜18−nが正常に動作している段階で、即時応答要求コマンドに対する応答フレームから正常時波形データを計測してメモリ36の波形データ記憶域36bに記憶しておく。そして、障害ONUの発生可能性を検出したときには、即時応答要求コマンドを送信して、各ONU18−1〜18−nからOLT10に入力する光信号の包絡線波形を計測し,正常時波形と比較することで、障害ONUを特定又は絞り込むことが出来る。本実施例では、ONU18−1〜18−nに追加すべき機能が不要か、必要にしても極く少しで済むので、安価に導入出来る。
【0059】
障害時波形は、原理的に、正常時波形の開始点と同じ開始点から計測可能である。この場合、障害時波形データは、メモリ36に記憶しなくても、波形差を検出出来ることは明らかである。正常時波形との比較結果によっては、障害時波形を複数回、計測し、その平均を正常時波形と比較しても良い。
【0060】
波形比較装置40が、正常時波形と障害時波形を比較したが,オペレータが正常時波形と障害時波形を比較し、その比較結果をONU管理情報36aに照合して、障害ONUを特定しても良い。この場合、NNI42を介して監視ネットワークに接続する監視センターに正常時波形データ、障害時波形データ及びONU管理情報を送信し、監視センターのオペレータが両波形の比較と、その結果に基づく障害ONUの特定を行えば良い。
【実施例2】
【0061】
上記実施例では,正常時波形を波形計測装置38で計測したが、本実施例では、計測せずに、ONU管理情報36aから正常時波形を擬似的に生成する。Disovery_GATEフレームの構成を利用する即時応答要求コマンドを送信する必要がないので、勿論、全ONUの論理リンクを切断する必要が無い。
【0062】
また、障害ONUの出現前に事前に正常時波形を生成しておく必要は無く、障害ONUの検出に応じて、その時点で論理リンクを確立しているONU、すなわち,活動しているONUに対して正常時波形を生成でき、その結果、より現実に即した正常時波形で障害ONUを特定出来るようになる。実施例1では、正常時波形の計測と障害時波形の計測との間で、1又は複数のONUが起動したり起動停止する可能性を否めず、その場合、正常時波形と障害時波形の比較で障害ONUを特定するのは困難になるが、この実施例では、そのような弊害が無い。
【0063】
正常時波形の生成手順を説明する。CPU24は、メモリ36のONU管理情報36aを参照し、論理リンクを設定されているONUのRTT情報を読み出す。RTT情報から、各ONUからの応答フレーム(Register_REQフレーム)の到達時間又は相対的な遅れ時間と、減衰量を算定出来る。
【0064】
例えば、OLT10とONU18−i(ただし、i=1〜n)との間の距離を10kmとする。光信号の光ファイバ中の伝送速度を約2.0×10m/sとする。この場合、OLT10が即時応答要求コマンドとしてのDiscovery_GATEフレームを送信してから応答フレームとしてのRegister_REQフレームを受信するまでの時間は100μsと概算できる。ONUでの処理遅延が分かっていれば、それを含めることで、より正確な値を得ることができることは明らかである。
【0065】
受信フレームの時間幅は、フレーム長から概算できる。Register_REQフレームは64Byteであるので、1Gbit/sのEPONでは、64×8=512bit=512nsとなる。厳密には、これに、シンクタイム、プリアンブル、レーザオンタイム及びレーザオフタイムを加算し、8B/10B変換によるオーバヘッドを加算することになるが、いずれも各PONシステムで既知であるので、精度上必要ならこれらを加算すればよい。代表的な合計値は、約2μsである。
【0066】
OLT10が受信するはずの応答フレームの光強度は、ONU18−iの(平均)光パワー、光ファイバ12,16−iの伝送損失、および光カプラ14の分岐損から概算できる。例えば、ONU18−iの出力パワーを0dBm、光ファイバ12,16−iの伝送損失を0.4dB/km、光カプラ14の分岐損を6dBとすると、OLT10は、OLT10から10km地点にあるONU18−iから送信されたRegister_REQを−10dBmのパワーで受信する。
【0067】
図7(A)は、ONU18−1〜18−4とOLT10との間の距離をそれぞれ10.0km、10.2km、10.8km、11.0kmとした場合の、OLT10に入射すると推測される応答フレーム波形(推測波形)を示し、同(B)は、その包絡線波形を示す。波形56−1〜56−4は、ONU18−1〜18−4の管理情報から生成した応答フレーム波形(推測波形)を示す。上記計算例では、波形56−1で示す応答フレームのパワーは、−10.00dBmである。波形56−2で示す応答フレームは、パワーが−10.08dBmであり、波形56−1に対して1μ秒だけ遅れる。波形56−3で示す応答フレームはパワーが−10.32dBmであり、波形56−1に対して4μ秒だけ遅れる。波形56−4で示す応答フレームはパワーが−10.40dBmであり、波形56−1に対して5μ秒だけ遅れる。
【0068】
CPU24は、このように計算した波形データを正常時波形データとして、メモリ36の波形データ記憶域36bに格納する。波形計測装置38が、実施例1と同様に、障害時波形を計測する。そして、実施例1と同様に、波形比較装置40が、正常時波形(推測波形)と障害時波形を比較し、障害ONUを特定する。障害時波形の計測の後に正常時波形を生成する場合、計測した障害時波形データをメモリ36の波形データ記憶域36bに格納し、波形比較装置40は、CPU24が生成する正常時波形データを、メモリ36の波形データ記憶域36bの障害時波形データと比較しても良い。
【0069】
光パワーの概算には以下のような誤差要因がある。すなわち、ONU18−1〜18−nの出力パワーの個体差、ONU18−1〜18−nの出力パワーの経時変化、及び光カプラ14の分岐損の不均一性である。OLT10は、ONU18−1〜18−n毎の受信光パワーを測定でき、この測定情報を用いることで、ONU18−1〜18−n毎の誤差要因を低減出来る。
【0070】
この実施例でも、オペレータが、擬似的に生成される正常時波形と、実際に計測された障害時波形とを比較し、その比較結果をONU管理情報36aに照合して、障害ONUを特定しても良い。この場合、NNI42を介して監視ネットワークに接続する監視センターに障害時波形データとONU管理情報を送信し、監視センターで正常時波形を生成し、監視センターのオペレータが両波形の比較と、その結果に基づく障害ONUの特定を行えば良い。
【0071】
上記実施例1、2では、障害ONUの発生の可能性を検知した場合に、障害時波形の計測、正常時波形との比較及び障害ONUの特定からなる障害ONU特定処理を起動するが、定期的にこの障害ONU特定処理を起動してもよい。
【0072】
前者のケースでは、論理リンクの断や強いノイズ光の入力といった重篤な障害の発生を検知する必要があり、軽微な障害を見逃しがちである。これに対し、定期的に障害ONU特定処理を起動するようにすれば、軽微な障害であっても、障害ONU特定処理で検出出来る可能性がある。しかも、障害ONU特定処理を起動する時間間隔程度の遅れで対応可能である。
【0073】
現在IEEE802.3avで標準化が進められている10G−EPONにも、本発明は適用可能である。10G−EPONでは、上り通信速度が1Gbit/sと10Gbit/sのONUが同じPONに接続されているケースが想定に入っている。この時、Discovery Windowの設定方法として、1つのDiscovery Windowで1G/10Gの双方のRegister_REQフレームを受けるケースと、1G用のDiscovery Windowと、10G用のDiscovery Windowを別々に設けるケースがあり、どちらのケースにも、本発明は適用可能である。
【0074】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10:OLT
12:共用光ファイバ
14:光カプラ
16−1〜16−n:分岐光ファイバ
18−1〜18−n:ONU
20:ネットワークネットワークインターフェース(NNI)
22:下り転送装置
24:CPU
26:電気/光変換器(E/O変換器)
28:WDM(波長分割多重)光カプラ
30:光/電気変換器(O/E変換器)
32:増幅器
34:上り転送装置
36:メモリ
36a:ONU管理情報
36b:波形データ記憶域
38:波形計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する方法であって、
当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態で、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する第1の即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する第1の即時応答要求コマンド送信ステップと、
当該第1の即時応答要求コマンドに応じて当該複数の加入者光終端装置から返信され当該光伝送路を伝送する応答信号を含む光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を正常時波形として計測する第1の波形計測ステップと、
当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、第2の即時応答要求コマンドを当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する第2の即時応答要求コマンド送信ステップと、
当該第2の即時応答要求コマンド送信ステップに続けて、当該光伝送路からの光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を障害時波形として計測する第2の波形計測ステップと、
当該正常時波形と当該障害時波形との比較から当該障害ONUを特定する特定ステップ
とを具備することを特徴とする障害ONU特定方法。
【請求項2】
当該局側光終端装置は、収容する各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を保持し、
当該特定ステップは、
当該正常時波形と当該障害時波形の差を検出する波形比較ステップと、
当該波形比較ステップで検出された差を当該ONU管理情報と照合して、当該障害ONUを特定するステップ
とを具備することを特徴とする請求項1に記載の障害ONU特定方法。
【請求項3】
当該第1及び第2の即時応答要求コマンドが、ディスカバリースロットサイズをゼロにセットしたDisovery_GATEフレームからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の障害ONU特定方法。
【請求項4】
局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する方法であって、
当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信ステップと、
当該即時応答要求コマンド送信ステップに続けて、当該光伝送路からの光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を障害時波形として計測する波形計測ステップと、
当該局側光終端装置が保持する、各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を参照し、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態での、当該即時応答要求コマンドに対する応答信号の包絡線波形を正常時波形として生成する正常時波形生成ステップと、
当該正常時波形と当該障害時波形との比較から当該障害ONUを特定する特定ステップ
とを具備することを特徴とする障害ONU特定方法。
【請求項5】
当該特定ステップは、
当該正常時波形と当該障害時波形の差を検出する波形比較ステップと、
当該波形比較ステップで検出された差を、当該ONU管理情報と照合して,当該障害ONUを特定するステップ
とを具備することを特徴とする請求項4に記載の障害ONU特定方法。
【請求項6】
当該即時応答要求コマンドが、ディスカバリースロットサイズをゼロにセットしたDisovery_GATEフレームからなることを特徴とする請求項4又は5に記載の障害ONU特定方法。
【請求項7】
局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する装置であって、
当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信手段と、
当該複数の加入者光終端装置から出力され当該光伝送路を伝送する光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を計測する波形計測手段と、
当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態で、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を計測させ、計測した包絡線波形を正常時波形としてメモリに記憶し、当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を障害時波形として計測させる制御手段と、
当該正常時波形と当該障害時波形の比較から当該障害ONUを特定する特定手段
とを具備することを特徴とする障害ONU特定装置。
【請求項8】
当該局側光終端装置は、収容する各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を保持し、
当該特定手段は、
当該正常時波形と当該障害時波形の差を検出する波形比較手段と、
当該波形比較手段で検出された差を当該ONU管理情報と照合して、当該障害ONUを特定する手段
とを具備することを特徴とする請求項7に記載の障害ONU特定装置。
【請求項9】
当該即時応答要求コマンドが、ディスカバリースロットサイズをゼロにセットしたDisovery_GATEフレームからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の障害ONU特定装置。
【請求項10】
局側光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の加入者光終端装置(ONU:Optical Network Unit)をこれらにより部分的に共用される光伝送路を介して収容する光伝送システムにおいて、妨害光を発するような障害ONUを特定する装置であって、
当該複数の加入者光終端装置に即時の応答を要求する即時応答要求コマンドを、当該光伝送路から当該複数の加入者光終端装置に向けて送信する即時応答要求コマンド送信手段と、
当該複数の加入者光終端装置から出力され当該光伝送路を伝送する光信号を電気信号に変換し、当該電気信号の包絡線波形を計測する波形計測手段と、
当該複数の加入者光終端装置の何れかが当該障害ONUとなった可能性の検出に応じてか、定期的かの何れかで、当該即時応答要求コマンド送信手段に当該即時応答要求コマンドを送信させると共に当該波形計測手段に当該包絡線波形を障害時波形として計測させる制御手段と、
当該局側光終端装置が保持する、各加入者光終端装置の距離情報を含むONU管理情報を参照し、当該複数の加入者光終端装置がいずれも正常に動作している状態での、当該即時応答要求コマンドに対する応答信号の包絡線波形を正常時波形として生成する正常時波形生成手段と、
当該正常時波形と当該障害時波形の比較から当該障害ONUを特定する特定手段
とを具備することを特徴とする障害ONU特定装置。
【請求項11】
当該特定手段は、
当該正常時波形と当該障害時波形の差を検出する波形比較手段と、
当該波形比較手段で検出された差を当該ONU管理情報と照合して,当該障害ONUを特定する手段
とを具備することを特徴とする請求項10に記載の障害ONU特定装置。
【請求項12】
当該即時応答要求コマンドが、ディスカバリースロットサイズをゼロにセットしたDisovery_GATEフレームからなることを特徴とする請求項10又は11に記載の障害ONU特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−35738(P2011−35738A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180976(P2009−180976)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】