説明

隠蔽性ガスバリアフィルム

【課題】優れたガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性等を有する食品、医薬品、医療品等の包装に用いられる包装材料、もしくは光学材料や太陽電池部材などの産業用材料を、生産性に優れ、安価に提供することを目的とする。
【解決手段】全光線反射率が70%以上の白色高分子フィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物の薄膜層を施すこと、更には、前記無機酸化物の薄膜層の上に少なくとも一種以上の金属アルコキシド或いはその加水分解物からなる保護層を設けることを特徴とする隠蔽性ガスバリアフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、医療品、光学材料等の包装分野で用いられ、優れたガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性等を兼ね備えた包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、医療品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質、特に食品分野においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、味覚や鮮度を保持するために、又医薬品分野においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、あるいは光学材料分野においては光による劣化等を防止するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気あるいは光による影響を防止する必要があり、優れたガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性等が求められており、あるいは店頭での陳列効果を高めるために、設けた白色層の高白濃度性などが要求されており、通常は積層構成中にバリア材としてアルミニウムなどの金属箔を積層した包装材料が用いられてきた。しかし、金属箔を積層した積層構成の包装材料は、廃棄され、焼却された時に金属の塊などが残る等の問題があった。
【0003】
上記課題を解決するため、包装材料としては、例えば、アルミニウム箔代替として透明蒸着バリアフィルムを用い、隠蔽製を出すために白色インキをコーティングするという方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、光学材料や太陽電池部材などの産業用包装材料では、例えば、太陽電池の保護部材では、水分の浸入によるモジュールの劣化を守るために、アルミニウム箔の両面をポリフッ化ビニルフィルムで積層した保護部材シートが用いられていた。この場合、アルミニウム箔はガスバリア性は非常に良好ではあるが、太陽電池モジュール作製時の熱プレス工程で、ポリフッ化ビニルフィルムが軟化し、太陽電池素子とアルミニウム箔が接触して、電池特性に悪影響を及ぼすことが問題であった。
【0005】
上記問題を解決するため、太陽電池の保護部材としては、例えば、アルミニウム箔代替として透明蒸着バリアフィルムを用い、またさらにポリフッ化ビニルフィルムの代替としてポリエステルフィルムを用い、特に反射率向上のためには白色ポリエステルフィルムを積層し、絶縁性と反射率を両立させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に提案されている方法は、優れたガスバリア性を付与するために、アルミニウム箔代替として透明蒸着バリアフィルムを用いているが、どちらの方法も、高遮光性、高隠蔽性を付与するために、白色顔料からなる白色インキをコーティングするか、もしくは白色顔料を分散したフィルムを積層する工程を経ることになり、工数が多く生産性やコスト面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−169772
【特許文献2】特開2007−109696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を鑑み、優れたガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性等を有する包装材料もしくは産業用材料を、生産性に優れ、安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、全光線反射率が70%以上の白色高分子フィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物の薄膜層を施してなることを特徴とする隠蔽性ガスバリアフィルムである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記無機酸化物層の上層に少なくとも一種以上の金属アルコキシド或いはその加水分解物からなる保護層を設けることを特徴とする請求項1に記載の隠蔽性ガスバリアフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の隠蔽性ガスバリアフィルムは、優れたガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性等の作用があるので、食品、医薬品、医療品等の包装に用いられる包装材料分野では、内容物の酸化、変質を抑制し、味覚や鮮度を保持するという多大な効果を持ち、また光学材料や太陽電池部材などの産業用材料分野では、耐久性や耐候性に優れる長期信頼性という多大な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のガスバリアフィルムの一実施形態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の隠蔽性ガスバリアフィルムの実施の形態について、図1に基づいて以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の隠蔽性ガスバリアフィルム(1)の代表的な構成は、図1に示す如く、白色高分子フィルム(2)を基材として、少なくとも片面に無機酸化物(3)が薄膜層として施されてなり、必要に応じては、該薄膜層の上に更に金属アルコキシド或いはその加水分解物からなる保護層(4)を施してなる。
【0015】
前記白色高分子フィルム(2)のマトリックス樹脂はポリエステル樹脂に代表され、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とジオール(グリコール)および/またはそのエステル形成性誘導体から成るものをいう。
【0016】
前記ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、などに例示される飽和脂肪族カルボン酸、またはこれらのエステル形成誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4‘−ビフェニルエーテルジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0017】
また、前記グリコールとしてはエチレングリコール、1 ,2−プロピレングリコール、1 ,3−ロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1 、2−ブチレングリコール、1 ,3 −ブチレングリコール、2、3−ブチレングリコール、1 ,4 −ブチレングリコール、1 ,5 −ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1 , 6−ヘキサンジオール、1 ,2−シクロヘキサンジオール、1 ,3−シクロヘキサンジオール、1,4 −シクロヘキサンジオール、1 , 2 −シクロヘキサンジメタノール、1 , 3−シクロヘキサンジメタノール、1 ,4−シクロヘキサンジメタノール、1 ,4 −シクロヘキサンジエタノール、1 ,1 0−デカメチレングリコール、1 ,1 2−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4 ,4 ’ −ジヒドロキシビスフェノール、1 , 4 −ビス( β ―ヒドロキシエトキシ) ベンゼン、1 , 4 −ビス( β ―ヒドロキシエトキシフェニル) スルホン、ビス( p−ヒドロキシフェニル) エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル) スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1 ,2 −ビス(p−ヒドロキシフェニル)
エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC 、2 ,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0018】
その中でも本発明の白色高分子フィルム(2)のマトリックス樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が望ましい。
【0019】
また、前記白色高分子フィルム(2)の白色化には、白色顔料として汎用の無機酸化物を用いることができる。該無機酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0020】
さらに前記白色高分子フィルム(2)には、フィルムの製膜加工および後加工に必要な特性を付与することを目的とした、滑剤や紫外線吸収剤などの添加剤を加えてもよいし、また、表面にコロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理等を行ってもよい。
【0021】
前記白色高分子フィルム(2)の厚みは、6μm〜100μm程度が望ましい。該厚みが6μm以下ではコンバーティングのハンドリング性に問題が生じ、また、100μm以上ではコストが高くなる。
【0022】
また、前記白色高分子フィルム(2)には、真空成膜層を緻密にすることを目的に、平滑性を持たせるためのコーティング層を施してもよい。前記コーティングは、ポリエステルフィルムの成膜時にインラインで成膜してもよいが、オフラインでコーティングしてもよい。塗工方式としては公知の方法を用いることができる。具体的にはグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等が挙げられる。
【0023】
上記コーティングのコーティング材料としては、アクリル構造、ウレタン構造、エステル構造またはシリカマトリックス構造のいずれかを含むことが望ましい。アクリル構造から成る場合は具体的な架橋方法としてカルボキシル基含有アクリルポリマーとイソシアネート、メラミン、尿素、エポキシ、多価金属などを用いた架橋や、分子内カルボキシル基の反応を用いた架橋、メチロール基含有アクリルポリマーを用いた酸触媒や水酸基反応、エポキシ基による自己架橋、水酸基含有アクリルポリマーとイソシアネートを用いた架橋や、光重合開始剤を用いたラジカル重合反応が挙げられる。ウレタン構造としては水酸基含有アクリルポリマーとイソシアネートの反応や、ポリエーテルポリオールとイソシアネートの反応、ポリエステルポリオールとイソシアネートの反応を用いた架橋方法が挙げられる。シリカマトリックス構造としては、ポリシラザンやシロキサンを用いた樹脂を用いた膜や、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのようなシラン樹脂を用いたゾルゲル反応が挙げられる。これらの樹脂は水または有機溶媒に溶解または分散させ固形分を1〜80重量%、より好ましくは1〜30重量%に調整し基材上に塗工することができる。
なお、上記固形分が1重量%以下では造膜できないし、80重量%以上では粘度が高過ぎて塗工ができないなどの問題がある。
【0024】
前記コーティング材料には、ブロッキング防止や硬度付与、帯電防止性能付与、またはレベリング性向上の目的で添加剤を加えてもよい。また、さらなるバリア性向上のために、ポリビニルアルコールなども加えてもよい。硬化方式により光重合開始剤やエポキシ、イソシアネート硬化剤などを加えてもよい。
【0025】
前記無機酸化物(3)の薄膜を形成することで高防湿性を得ることができる。無機酸化物(3)の薄膜形成方法としては、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などが挙げられる。上記のスパッタリング以降の項目ではプラズマを用いているが、DC(Direct Current)方式、RF(Radio Frequency)方式、MF(Middle Frequency)方式、DCパルス方式、RFパルス方式、DC+RF重畳方式などプラズマの生成法が挙げられるが、特に真空蒸着法やスパッタリング法が望ましい。
【0026】
前記無機酸化物(3)には、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化珪素(SiO)、インジウムとスズの複合酸化物(ITO)、インジウムとセリウムの複合酸化物(ICO)、スズを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOSn)、チタンを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOTi)、スズおよびチタンを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOSnTi)が望ましく、その中でも、SiOやITOは透明性、防湿性に優れ、より好ましい。
【0027】
前記無機酸化物(3)の膜厚は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。さらには、10nm以上80nm以下であることが好ましい。硬化膜厚が5nm未満であると、十分なバリア性能を得ることができない。また、硬化膜厚が100nmより大きいと、収縮の増加によりクラックが発生し、防湿性が低下する。さらに、材料使用量の増加、膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し、経済的観点からも好ましくない。
【0028】
前記無機酸化物(3)の上層に形成される保護層(4)に用いられる金属アルコキシドの金属原子としては、Si、Ti、Al、Zr等を挙げることができる。
【0029】
前記金属原子(M)がSiである金属アルコキシド或いはその加水分解物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0030】
また、前記金属原子(M)がZrである金属アルコキシド或いはその加水分解物は、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等を挙げることができる。
【0031】
また、前記金属原子(M)がTiである金属アルコキシド或いはその加水分解物は、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム等を挙げることができる。
【0032】
さらに、前記金属原子(M)がAlである金属アルコキシド或いはその加水分解物は、
テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
【0033】
上記金属アルコキシド或いはその加水分解物は、少なくとも一種以上を用いることができ、その膜厚は0.05〜1μm程度が望ましい。薄すぎると無機酸化物が完全に被覆できなくなり、厚すぎると硬化収縮で割れてしまう。
【0034】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。太陽電池バックシートの性能は,下記の方法に従って評価した。
水蒸気透過度…JIS−Z0208に準じ測定を行った。
全光線反射率…JIS−K7105に準じ測定を行った。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の具体的実施例を説明する。
【0036】
<実施例1>
厚みが50μmの白色PETフィルム(東レ製、商品名 E20、全光線反射率;82%)に、アクリルポリオールとイソシアネートから成るアクリル−ウレタン硬化膜層を0.1μm施し、その後真空蒸着法により膜厚50nmのSiOx層の薄膜を形成した。次に、その上層にテトラエトキシシランの加水分解物を施し、膜厚0.1μmの保護層を得た。このフィルムの水蒸気透過率は0.3g/m・dayだった。
【0037】
<実施例2>
厚みが50μmの白色PETフィルム(東レ製、商品名 E20、全光線反射率;82%)に、アクリルポリオールとイソシアネートから成るアクリル−ウレタン硬化膜層を0.1μm施し、その後真空蒸着法により膜厚50nmのAlOx層の薄膜を形成した。その上層にテトラエトキシシランの加水分解物を施し、膜厚0.1μmの保護層を得た。このフィルムの水蒸気透過率は0.2g/m・dayだった。
【0038】
<比較例1>
厚みが50μmの透明PETフィルム(東レ製、商品名 S10、全光線反射率;7%)に、アクリルポリオールとイソシアネートから成るアクリル−ウレタン硬化膜層を0.1μm施し、その後真空蒸着法により膜厚50nmのSiOx層の薄膜を形成した。その上層にテトラエトキシシランの加水分解物を施し、膜厚0.1μmの保護層を得た。このフィルムの水蒸気透過率は0.3g/m・dayだった。
【0039】
<比較例2>
厚みが50μmの白色PETフィルム(東レ製、商品名 E20、全光線反射率;82%)に、アクリルポリオールとイソシアネートから成るアクリル−ウレタン硬化膜層を0.1μm施し、その後真空蒸着法により膜厚50nmのAlOx層の薄膜を形成した。このフィルムの水蒸気透過率は1.5g/m・dayだった。
【0040】
上記実施例1,2および比較例1,2の評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
<比較結果>
上記実施例1および実施例2による本発明品は、上記比較例1および比較例2による比較品に比べて、水蒸気透過率および隠蔽性の両方を満たす良好な結果を示した。
【符号の説明】
【0043】
1 隠蔽性ガスバリアフィルム
2 白色高分子フィルム
3 無機酸化物
4 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線反射率が70%以上の白色高分子フィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物の薄膜層を施してなることを特徴とする隠蔽性ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物の薄膜層上に、少なくとも一種以上の金属アルコキシド或いはその加水分解物からなる保護層を設けることを特徴とする請求項1に記載の隠蔽性ガスバリアフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−56271(P2012−56271A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204009(P2010−204009)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】