説明

集合包装用発泡緩衝材

【課題】表面が平滑で皺などがなく、発泡粒子間の融着が十分で機械強度にすぐれ、収縮が小さく、そのため内倒れ等の歪みがなく、各収納空間の寸法が同一である、という特性を併有する集合包装用緩衝材を提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂発泡粒子として次の発泡粒子を使用することを特徴とする集合包装用緩衝材。
分子量600以下の親水性物質を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒とともに耐圧容器内に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られる発泡粒子であり、水が発泡剤となり発泡直後の発泡粒子中の含水率が0.7重量%以上10重量%以下であり発泡倍率が20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡合成樹脂体よりなる、包装用緩衝材に関するものであり、更に詳しくは、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、又は、コンパクトディスク・リードオンリーメモリー等のドライブユニット等の箱状の電子機器、又はガラス基板などの板状の電子部品、等の物品を、同時に多数包装するための、集合包装用緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、フレキシブルディスク(以下「FD」と略称する)、ハードディスク(以下「HD」と略称する)、又は、コンパクトディスク・リードオンリーメモリー(以下「CD−ROM」と略称する)等のドライブユニット等の箱状の電子機器、又はガラス基板などの板状の電子部品、等の物品を、同時に多数包装するための集合包装用緩衝材としては、一般に、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂体を使用し、その構造は、図1に例示するように、相対向する二組の側壁4、4、9、9で形成される枠体3内に、一組の側壁4、4の長さ方向にそって、箱状または板状の物品を保持するための物品毎の収納空間8を複数並設するように設計される。そして、図示しないFDやHDのドライブユニット等の電子機器類等が、各収納空間8に嵌め込まれ、多数の物品を並列状態とし、この枠体3を、更にダンボール紙等で作成した外箱20内に内装して、同じく発泡合成樹脂で作成した蓋形状の緩衝材22を充てがったうえで包装される。
【0003】
発泡合成樹脂のなかで発泡ポリプロピレンは耐熱性があり機械強度が大きいため、重量が大きい物品の包装等によく使用される。発泡ポリプロピレンよりなる集合包装用緩衝材は通常、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を集合包装緩衝材成形用金型内に充填し、水蒸気等で加熱して発泡粒子を発泡させ粒子同士を融着させる型内発泡成形法により得られる。
【0004】
型内発泡成形によって得られたポリプロピレン製の集合包装用緩衝材に求められる特性として(1)型内発泡成形体の表面の平滑性が優れていること、(2)型内発泡成形体における個々の発泡粒子間の融着性が良好であること、及び(3)型内発泡成形体の寸法の金型寸法に対する収縮率が小さいこと、があげられる。
【0005】
このうち、型内発泡成形体の表面の平滑性(以下、表面性ともいう)は、型内発泡成形体表面において発泡粒子の輪郭全てが隣り合った粒子と融着しているかどうかを一つの指標に評価される。表面が平滑であると各収納空間に収納すべき物品の収納や取り出しが容易であるためである。型内発泡成形体の表面の平滑性に影響する要因の一つは発泡粒子の成形時における発泡性(二次発泡能力)であるといわれている。
【0006】
また、融着性は型内発泡成形体内部において隣り合う発泡粒子が互いに表面において融着している程度である。型内発泡成形体を破断したとき破断面において破壊している発泡粒子が多いほど融着性が優れる。融着性が優れると型内発泡成形体の強度が大きくなり、重量が大きい物品を収納することができるためである。
【0007】
さらに、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られる型内発泡成形体は成形後、金型から取り出したとき収縮するのが通常である。収縮した型内発泡成形体は時間の経過と共に大きさを回復するが金型の大きさに回復しない。特に、高発泡倍率の型内発泡成形体は気泡膜が薄いため、大きい収縮を生じる傾向が強い。箱形状や枠形状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において収縮が生じると、全体が均一に収縮せず、型内発泡成形体が直方体でなく、例えば図10に示すように、各側面の中央部付近が内側に湾曲した形状になる。特に箱形状の場合、このような湾曲は内倒れと呼ばれている。
【0008】
図2、8、9に示すような集合包装用緩衝材の場合、このような湾曲が生じると各収納空間の寸法が同一でなくなり、収納すべき物品を収納できなくなったり、物品と緩衝材の間の隙間が広くなったりする。型内発泡成形された緩衝材を50℃〜100℃の雰囲気中において一定時間養生することにより収縮はある程度回復するが、通常、金型の大きさまで回復しない。
【0009】
従って、箱形状や枠形状の型内発泡成形体における側面の湾曲を防止するため、型内発泡成形体の収縮が出来るだけ小さいことが求められる。また、養生時間を短縮させるためにも型内発泡成形体の収縮が出来るだけ小さいことが望ましい。
【0010】
以上のように、集合包装緩衝材には、(1)表面が平滑で皺などがなく、(2)発泡粒子間の融着が十分で機械強度にすぐれる、(3)収縮が小さく、そのため内倒れ等の歪みがなく、各収納空間の寸法が同一である、という特性が求められる。
【0011】
特許文献1には重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が小さいポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いた発泡粒子は二次発泡能力に優れ、得られる型内発泡成形体は表面や内部の粒子間間隙が少なく(発泡粒子の輪郭全てが隣り合った粒子と融着している粒子が多い)優れた外観を有することが開示されている。また、特許文献1にはMw/Mnが小さいポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いた発泡粒子から得られる発泡成形体は収縮率が小さいことも開示されている。
【0012】
一方、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造においては、発泡剤としてフッ素系ガスやブタンガスが使用されていた。しかし、環境保護や製造時の安全性確保の観点から発泡剤として水を使用する方法が提案されている。例えば特許文献2には水を発泡剤として使用して発泡粒子を製造する際に、エチレンが共重合されたポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として用いれば、高発泡倍率の発泡粒子を得る方法が開示されている。また、特許文献3〜6には水を発泡剤として使用して発泡粒子を製造する際に、樹脂中の含浸水分量を増加させるため親水性重合体や親水性低分子化合物などの親水性物質が添加されたポリプロピレン樹脂を原料樹脂として使用する方法が開示されている。
【0013】
以上のことから、エチレンが共重合されたポリプロピレン系樹脂であり重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が小さいポリプロピレン系樹脂であって親水性物質が添加された樹脂を原料樹脂として使用し、水を発泡剤として発泡粒子を製造する場合、高発泡倍率の発泡粒子を得ることができる。しかしながら、Mw/Mnが小さいポリプロピレン系樹脂を使用しているにもかかわらず、親水性物質の種類によっては、表面の平滑性が劣り、融着性が劣り収縮率が大きい発泡成形体を与える発泡粒子が生成する場合があることが判明した。
【特許文献1】特開平3−152136号公報
【特許文献2】特開昭60−221440号公報
【特許文献3】国際公開WO97/38048号公報
【特許文献4】特開平10−306179号公報
【特許文献5】特開平11−92599号公報
【特許文献6】特開2004−67768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、(1)表面が平滑で皺などがなく、(2)発泡粒子間の融着が十分で機械強度にすぐれ、(3)収縮が小さく、そのため内倒れ等の歪みがなく、各収納空間の寸法が同一である、という集合包装用緩衝材に必要な特性を併有する新規な集合包装用緩衝材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子として、分子量600以下の親水性物質を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子から得られる発泡粒子を使用することにより上記課題が解決されることを見いだした。すなわち本発明は次の集合包装用緩衝材である。
【0016】
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内成形発泡体よりなり、相対向する二組の側壁によって形成される枠体内に、一組の側壁の長さ方向に沿って、箱状または板状の物品を保持するための物品毎の収納空間が複数並設された集合包装用緩衝材において、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子として次の発泡粒子を使用することを特徴とする集合包装用緩衝材。
耐圧容器内に分子量600以下の親水性物質を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られる発泡粒子であり、水が発泡剤となり発泡直後の発泡粒子中の含水率が0.7重量%以上10重量%以下であり発泡倍率が20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(2)分子量600以下の親水性物質がポリエチレングリコールである(1)に記載の集合包装用緩衝材。
(3)ポリエチレングリコールの分子量が200以上600以下である(2)に記載の集合包装用緩衝材。
(4)発泡剤として炭酸ガスを併用する(1)〜(3)何れかに記載の集合包装用緩衝材。
(5)ポリプロピレン系樹脂が、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂である(1)〜(4)何れかに記載の集合包装用緩衝材。
(6)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が50μm以上800μm以下の平均気泡径を有し、示差走査熱量測定において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有する(1)〜(5)何れかに記載の集合包装用緩衝材。
材。
【発明の効果】
【0017】
本発明の集合包装用緩衝材は、成形原料であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子として、分子量600以下の親水性物質を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子から得られる発泡粒子を使用しているので、(1)表面が平滑で皺などがなく、(2)発泡粒子間の融着が十分で機械強度にすぐれており、(3)収縮が小さく、そのため内倒れ等の歪みがなく、各収納空間の寸法が同一である、という集合包装用緩衝材に必要な特性を併有する。このため、本発明の集合包装用緩衝材は収納すべき物品を収納しやすく、物品と緩衝材の間の隙間がなく、優れた機械強度を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図7は、本発明に係る集合包装用緩衝材の一例を示すものである。図1は、集合包装用緩衝材1の使用状態の説明用斜視図であり、図2は集合包装用緩衝材1の斜視図、図3は集合包装用緩衝材1の平面図、図4は同側面図、図5は同正面図である。また、図6は図3におけるA−A断面図、図7は図3におけるB−B断面図である。また、図8は、他の集合包装用緩衝材の斜視図、図9は、さらに他の集合包装用緩衝材の斜視図であり、図10は、図9に示す集合包装用緩衝材において内倒れが生じた状態を示す斜視図である。尚、図8および9については、図2に示す集合包装用緩衝材1と同等の機能を有するものであり、図2乃至7に示す構造に対応する部分に同等の符号を付し、説明を省略する。
【0019】
本発明に係る集合包装用緩衝材1は、本発明に係る所定条件を満たす発泡ポリプロピレンにて作製されており、底壁2の上面に平面視略矩形状の枠体3が一体に形成されている。この枠体3の長辺側の一対の側壁4、4間には中間壁5が形成されており、左右の側壁4、4内面と、中間壁5の両側面には、互いに対応する複数対のリブ6、7が形成されている。これらのリブ6、7により、中間壁5の左右に、FD、HD、CD−ROMのドライブユニット等の電子機器、又はガラス基板などの板状の電子部品、等の箱状又は板状の物品Mを、立てた状態で収納するための複数の収納空間8が、互いに重畳状態で収納空間8に収納される物品M(図3にのみ図示)の面が、枠体3の前後に位置する他の一対の側壁9、9に対面するように形成されている。
【0020】
尚、図1〜7に例示のものでは、前後の側壁9、9の外面には、その上端部に横方向のリブ10が形成され、更にこの横リブ10から下方に縦方向のリブ11が形成されており、これらのリブ10、11が側壁9の外面を構成している。また、左右の側壁4、4の外面には横方向のリブ13と、この横リブ13から下方に複数の縦方向のリブ14が形成されている。前記横方向のリブ13は、側壁4の上端より下方に下がった位置に形成されている。これらのリブにより落下したときの衝撃が緩衝される。
【0021】
また、特開平8−104368号公報に開示されているように、前記各収納空間8は、これに収納される物品Mが対面する前後の側壁9、9の外面に対する角度が、例えば約15°となるように斜めに設けてもよい。これにより、特に側面落下時の衝撃が包装された物品に斜めに作用するため、包装される物品を、落下等に伴う衝撃から保護することができる。
【0022】
更に、特開平8−104368号公報に開示されているように、枠体3の左右の側壁4、4の内面には、これらの側壁4、4の長さ方向にそって並設された各収納空間8のそれぞれに対応して、収納空間8内に開口する平面視半円状の縦方向の凹溝(図示していない)を形成してもよい。側面落下等により側面から衝撃を受けると、このような凹溝により枠体の全体がアコーディオンのように歪むことで、各収納空間における衝撃のバラツキが抑制され、各収納空間に収納された物品を均一に保護することができる。
【0023】
尚、この緩衝材1の四隅の角部には、隣接する側壁4、9に対して平面視で傾斜したテーパー面15が形成されており、又、枠体3の底壁2下面には、枠体3の長さ方向にそって、四条のリブ16が形成されている。
【0024】
この集合包装用緩衝材1は、枠体3に形成された、複数の収納空間8のそれぞれに、FD、HDもしくはCD−ROM等のドライブユニット、又はガラス基板等の物品を、立てた状態で嵌め込んで収納し、これを更に図1に示すように、ダンボール箱等の外箱20に内装し、その上から集合包装用緩衝材1と同じく発泡合成樹脂体で作成した蓋形状の緩衝材22を充てがい、蓋21、23を閉じ、包装される。
【0025】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、単量体成分として、プロピレンを含んでいれば特に限定はなく、たとえば、プロピレンホモポリマー、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。特に、α−オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。好ましいエチレン含量は1重量%以上10重量%以下、さらには1重量%以上7重量%以下、さらには2重量%以上7重量%以下、さらには3重量%以上7重量%以下、さらには3.5重量%以上6重量%以下、特には3.5重量%以上5重量%以下である。なお、ポリプロピレン系樹脂中のエチレンに基づく共重合単量体成分の含有量は13C−NMRを用いて測定することができる。
【0026】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂はエチレン以外の単量体を共重合成分として含んでいてもよい。また、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂がエチレン以外の単量体を共重合単量体成分として含んでいてもよい。エチレン以外の共重合単量体成分としては、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数4〜12のα−オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられ、これらを一種または二種以上使用することが出来る。
【0027】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のどちらでも用いることができる。特に汎用性の高い、エチレン−プロピレンランダムコポリマーあるいはエチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーを用いることが好ましい。エチレン含量が1重量%以上7重量%以下、さらには、3重量%以上7重量%以下、さらには3.5重量%以上6重量%以下、特には3.5重量%以上5重量%以下であるエチレン−プロピレンランダムコポリマー、あるいは、エチレン−プロピレン−ブテンランダムターポリマーが好ましい。
【0028】
また、ポリプロピレン系樹脂以外に、他の熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等をポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用してポリプロピレン系樹脂粒子としても良い。
【0029】
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと表記する場合がある)と数平均分子量(以下、Mnと表記する場合がある)の比(Mw/Mn)は5.0以下である。Mw/Mnは4.5以下が好ましく、4.0以下がさらに好ましく、特には1.5以上4.0以下が好ましい。Mw/Mnが5.0を越える場合、型内発泡成形体の表面性や低収縮性が損なわれる。
【0030】
Mn及びMwは以下の条件において測定される。
測定機器 :Waters社製Alliance GPC 2000型 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
カラム :TSKgel GMH6−HT 2本、
TSKgel GMH6−HTL 2本(それぞれ、内径7.5mm×長さ300mm、東ソー社製)
移動相 :o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
カラム温度:140℃
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :0.15%(W/V)−o−ジクロロベンゼン
注入量 :500μL
分子量較正:ポリスチレン換算(標準ポリスチレンによる較正)
【0031】
本発明に使用するポリプロピレン系樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂を有機過酸化物で酸化分解(減成処理)して製造することができる。所望のMw/Mnを有するポリプロピレン系樹脂は、元になるポリプロピレン系樹脂の種類、有機過酸化物の種類や量及び酸化分解温度や時間を調整して得ることができる。有機過酸化物の使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂を酸化分解するには、例えば、有機過酸化物を添加したポリプロピレン系樹脂を押出機内で加熱溶融により行うことができる。
【0032】
使用しうる有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
【0033】
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等の触媒を用いて、重合条件を調整することで得ることもできる。汎用のポリプロピレン系樹脂を有機過酸化物で酸化分解する方法を用いると所望の分子量やメルトインデックス等の特性を有するポリプロピレン系樹脂を容易に得ることができるため好ましい。メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等の触媒を用いて得られたポリプロピレン系樹脂をさらに有機過酸化物で酸化分解する方法を用いることもできる。
【0034】
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は無架橋の状態が好ましいが、有機過酸化物や放射線等で処理することにより架橋を行っても良い。また、2以上のポリプロピレン系樹脂を混合しても良い。
【0035】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂粒子の融点は、130℃以上165℃以下であることが好ましく、更には135℃以上155℃以下のものが好ましい。融点が130℃未満の場合、耐熱性、機械的強度が十分でない傾向がある。また、融点が165℃を超える場合、型内発泡成形時の融着を確保することが難しくなる傾向がある。ここで、前記融点とは、示差走査熱量計によってポリプロピレン系樹脂1〜10mgを40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における吸熱ピークのピーク温度をいう。
【0036】
本発明で用いることが出来るポリプロピレン系樹脂粒子のメルトインデックス(以下、MI値)は、0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、更には2g/10分以上20g/10分以下のものが好ましい。MI値が0.5g/10分未満の場合、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られにくい場合があり、30g/10分を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破泡し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率が高くなる傾向にある。なお、MI値はJIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定する。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂は通常、発泡粒子を製造するために、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等の樹脂粒子形状に加工する。必要に応じて添加される他の樹脂や添加剤もこの工程で添加することができる。ポリプロピレン系樹脂粒子の大きさは、一粒の重量が0.1mg以上30mg以下であることが好ましく、0.3mg以上10mg以下がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の重量は、ポリプロピレン系樹脂粒子をランダム選んだ100粒から得られる平均樹脂粒子重量であり、以下、mg/粒で表示する。
【0038】
本発明においては、分子量600以下の親水性物質を含んでなるポリプロピレン系樹脂粒子を使用する。なお、親水性物質が無機塩などの場合は分子量に代えて式量を使用する。本発明で用いる親水性物質は必ずしも室温で親水性である必要はない。発泡直後の発泡粒子が一定量以上の水を含有するようにできる物質であればよい。親水性物質の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の無機物、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物等の有機物、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、ポリエーテルのポリプロピレン等への付加物やこれらのアロイ、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩及びポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の親水性重合体が挙げられる。国際公開WO97/38048号公報、特開平10−306179号公報、特開平11−92599号公報、特開2004−67768号公報には親水性物質が詳細に記載されている。これら、無機物、有機物や親水性重合体を2種以上併用してもよい。
【0039】
親水性物質の分子量が600を越えると、分子量が600以下の親水性物質を使用する場合に比較し、同じ発泡倍率の発泡粒子を得るためには多量の親水性物質が必要になり、さらに、得られる発泡成形体の低収縮性、表面性あるいは融着性が低下する。親水性物質が重合体の場合、その平均分子量は、たとえば、サーモフィッシャーサイエンティフィック製LCQアドバンテージなどの液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し測定できる。これらの親水性物質のなかでは、ポリエチレングリコール等の有機重合体、メラミン等の有機物あるいは硼酸亜鉛が好ましく、有機重合体や有機物が特に好ましい。
【0040】
親水性物質の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.005重量部以上1重量部以下、更に好ましくは0.01重量部以上0.5重量部以下である。ここで親水性物質の添加量とは、吸水していない状態での親水性物質の重量を指す。親水性物質の添加量が0.005重量部より少ないと、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を向上させることができなかったり、気泡の均一化効果が低減する傾向がある。添加量が2重量部を超えると、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の収縮が生じ易くなったり、ポリプロピレン系樹脂中への親水性物質の分散が不十分となる傾向がある。なお、親水性物質が親水性重合体の場合、100重量部に対して0.1重量部以上0.5重量部以下使用するのが好ましい。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂には親水性物質の他に発泡核剤(セル造核剤)を添加してもよい。発泡核剤は、発泡の時に気泡核の形成を促す物質である。発泡核剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機物質が挙げられる。また、親水性物質、特に無機物質、のなかには発泡核剤として作用する物質がある。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウムがポリプロピレン系樹脂中への分散性が良好で均一な気泡を有する発泡粒子を得易くなるため好ましい。発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0042】
発泡核剤の添加量は使用する発泡核剤によって異なり、一概には決めることが出来ないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上1重量部以下であることがより好ましい。発泡核剤の添加量が0.005重量部より少ない場合は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を大きくすることができなかったり、気泡の均一性が低下してしまう場合がある。発泡核剤の添加量が2重量部より多い場合はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が小さくなり過ぎ、型内発泡成形性が不良となる傾向にある。
【0043】
また、たとえば発泡核剤としてタルクを使用する場合、添加量はポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上1重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01重量部以上0.5重量部以下、より好ましくは0.02重量部以上0.2重量部以下である。
【0044】
更に、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、ポリプロピレン系樹脂の特性を損なわない範囲内で添加することができる。樹脂に親水性物質、発泡核剤或いは他の添加剤を加える場合、上記ポリプロピレン系樹脂粒子の製造前にブレンダー等を用いポリプロピレン系樹脂と混合することが好ましい。また、溶融したポリプロピレン系樹脂中に添加剤を添加してもよい。
【0045】
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、耐圧容器内において水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出することで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子とすることが出来る。ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度はJIS K 2207に従って測定できる。通常、軟化温度は融点よりも低い。
【0046】
本発明においては、発泡剤として水を使用する。発泡剤として水が作用しているかどうかは後述する含水率を測定することにより判別することが出来る。また他の方法として、発泡直後の発泡粒子をポリマー用水分計、あるいはカールフィッシャー水分計などで測定することも可能である。
【0047】
水を発泡剤として使用していれば、他の物理発泡剤を併用してもよい。他の物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガスが挙げられる。中でも特に環境負荷が小さく、燃焼危険性も無いことから、炭酸ガスを併用することが望ましい。水と炭酸ガスを併用することで、発泡力を大きくし易いことから、高発泡倍率を得る際においても、発泡核剤の添加量を少なくすることができ、結果として平均気泡径が大きい発泡粒子が得られ、2次発泡性も良好なものとなる傾向がある。
【0048】
更に具体的には以下の方法で、ポリプロピレン系樹脂粒子をポリプロピレン系樹脂発泡粒子とすることができる。
【0049】
ポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内で水系分散媒に分散させ、必要に応じ他の物理発泡剤を添加する。次にポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上、好ましくはポリプロピレン系樹脂の融点−25℃以上でポリプロピレン系樹脂の融点+25℃以下、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂の融点−15℃以上でポリプロピレン系樹脂の融点+15℃以下の範囲の温度に加熱し、加圧して、ポリプロピレン系樹脂粒子内に発泡剤である水、必要に応じ他の発泡剤、を含浸させる。この後、耐圧容器の一端を開放してポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる耐圧容器には特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0051】
前記水系分散媒としては水が好ましい。メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も水系分散媒として使用できる。
【0052】
水系分散媒中、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。
【0053】
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。また、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などの多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
【0054】
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらには、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を用いるのが好ましく、アルキルスルホン酸塩を使用することがより好ましく、疎水基として炭素数10〜18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、発泡粒子に付着する分散剤を低減できるため特に好ましい。
【0055】
これらの中でも、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンから選ばれる一種以上と、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが好ましい。
【0056】
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水系分散媒100重量部に対して、分散剤0.2重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
【0057】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法の例は次のとおりである。ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、分子量600以下の親水性物質0.05重量部以上2重量部以下、および発泡核剤を含有させたポリプロピレン系樹脂粒子を、耐圧容器内の水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧して発泡剤である水をポリプロピレン系樹脂粒子内に含浸させる。さらに窒素もしくは空気を圧入することで耐圧容器内の内圧を高めた後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する。低圧域に放出する前に窒素もしくは空気を圧入して、耐圧容器内の内圧を高めることにより、発泡時の圧力開放速度を調節し、発泡倍率や平均気泡径の調整を行うことができる。
【0058】
また炭酸ガスなどの常温で気体の物理発泡剤を併用する場合は、ポリプロピレン系樹脂粒子と水系分散媒を耐圧容器に投入したのち、炭酸ガスなどの物理発泡剤を耐圧容器内に導入すれば良い。具体的には、例えば以下の手順で行うことが出来る。
【0059】
耐圧容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、分散剤等を仕込んだ後、耐圧容器内を真空引きした後、1〜2MPa程度の炭酸ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱する。加熱することによって耐圧容器内の圧力が約1.5MPa〜3MPa程度まで上がる。発泡させる温度付近にてさらに炭酸ガスを追加して所望の発泡させる圧力に調整、さらに温度調整を行った後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る。或いは、耐圧容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて耐圧容器内を真空引きした後、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱しながら炭酸ガスを導入してもよい。
【0060】
本発明においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出した直後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の含水率は0.7重量%以上10重量%以下である。好ましい含水率は1重量%以上8重量%以下、より好ましい含水率は1重量%以上5重量%以下である。含水率が0.7重量%未満の場合、発泡倍率が低いものしか得られず、10重量%を越える場合においては発泡後の発泡粒子内が低内圧となるために発泡粒子が収縮し易く、発泡後にオーブン養生させても収縮が残ってしまうことがある。
【0061】
含水率は、以下のようにして測定する。得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着した水を、空気気流で脱水させたのち、その重量(W1)を測定する。さらにその発泡粒子を80℃のオーブン中で12時間乾燥させた時の重量(W2)を測定する。含水率は次式により算出する。
含水率(%)=(W1−W2)/W2×100
【0062】
また、水及び窒素以外の発泡剤を併用した場合は、水及び窒素のみを発泡剤とし発泡温度や発泡圧力などの条件は水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合と同一になるようにして発泡粒子を製造し、同様に測定する。
【0063】
上述の方法によって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内にて空気等の無機ガスにて加圧し、内圧を付与させたのち、加熱することでさらに発泡させ、さらに高発泡倍率化してもよい。なお、ポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内の水系分散媒に分散させ、高温、高圧下にて発泡剤を含浸させ、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出させて発泡させることを「一段発泡」と称し、一段発泡により得られる発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。さらに、一段発泡粒子を耐圧容器内にて空気等の無機ガスにて加圧し、内圧を付与させたのち、加熱することでさらに発泡させることを「二段発泡」と称し、二段発泡によって得られた発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0064】
本発明においては、最終的に得られる発泡粒子の発泡倍率は20倍以上、好ましくは30倍以上、さらに好ましくは32倍以上である。最終的に得られる発泡粒子の発泡倍率は45倍以下が好ましい。発泡倍率が20倍未満の場合は、軽量化のメリットが得られず、また得られる型内発泡成形体の柔軟性、緩衝特性などが不充分となる傾向があり、45倍を越える場合は得られる型内発泡成形体の寸法精度、機械的強度、耐熱性などが不充分となる傾向がある。発泡倍率20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子とするためには、二段発泡により得ることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率の測定法は後記する。
【0065】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は50μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上600μm以下、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。平均気泡径が50μm未満の場合、得られる型内発泡成形体の形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合があり、800μmを越える場合、得られる型内発泡成形体の緩衝特性が低下する場合がある。平均気泡径は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の切断面について、表層部を除く部分についてASTM D3576に従い測定する。
【0066】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率は0〜12%であることが好ましく、より好ましくは0〜8%、さらに好ましくは0〜5%である。連泡率が12%を超えると、型内成形時に蒸気加熱による発泡性に劣り、得られた型内発泡成形体が収縮してしまう傾向にある。
【0067】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有することが好ましい。2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の場合、型内発泡成形性が良く、機械的強度や耐熱性の良好な型内発泡成形体が得られる傾向にある。ここで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線とは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子1〜10mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線のことである。このDSC曲線において、現れる融解ピークの示す温度が融点である。
【0068】
前記のごとく2つ以上の融点を示す結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、発泡時の耐圧容器内温度を適切な値に設定することにより容易に得られる。基材となるポリプロピレン系樹脂の融点以上、好ましくは融点+3℃以上、融解終了温度未満、好ましくは融解終了温度−2℃以下の温度から選定される。ここで、前記融解終了温度とは、示差走査熱量計によってポリオレフィン系樹脂1〜10mgを40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られる融解ピーク曲線が高温側でベースラインの位置に戻ったときの温度である。
【0069】
以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形により本発明の集合包装用緩衝材を製造する場合には次のような従来既知の方法が使用しうる。イ)そのまま用いる方法、ロ)あらかじめポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与する方法、ハ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し成形する方法。
【0070】
これらの中でも、あらかじめポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与するロ)の方法が好適である。具体的には次の型内発泡成形法によって型内発泡成形体を得ることが出来る。
1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気を圧入することにより発泡能を付与する。
2)得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を2つの金型からなる、閉鎖しうるが密閉し得ない成形空間内に充填する。
3)水蒸気などを加熱媒体として0.2〜0.4MPa(G)程度のスチーム圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を融着させる。
4)金型を水冷する。
5)金型を開いて、型内発泡成形体を取り出す。
【0071】
得られる集合包装用緩衝材の発泡倍率は、特に限定されないが、30倍以上60倍以下、さらに35倍以上55倍以下、さらに35倍以上50倍以下、さらに40倍以上50倍以下の発泡倍率を有する場合、有用である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価は、つぎの方法により行なった。
【0073】
(発泡倍率)
3〜10gの発泡粒子を60℃で6時間乾燥したのち重量w(g)を測定後、水没法にて体積v(cm3)を測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρrとの比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。
【0074】
(連泡率)
空気比較式比重計(東京サイエンス(株)製、1000型)を用い、えられた発泡粒子の独立気泡体積を求め、これを別途水没法により求めた見かけの体積で除してえられた独立気泡率(%)を、100から引くことにより求めた。
【0075】
(気泡の均一性、平均気泡径)
気泡膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子をほぼ中央で切断し、その切断面をマイクロスコープで拡大し、発泡粒子の表面から発泡粒子の直径の5%に相当する厚さの表層部を除く部分(A)に関して次の測定をおこなった。ある任意の方向をx方向とし、それに直交する方向をy方向とした時に、ある1個のセルのx、y方向のフェレ径dx、dyを測定し、次式によりその1個の気泡径diを求める。
i=(dx+dy)/(2×0.785)
【0076】
部分(A)内で半径方向に偏りのない様に、連続して隣り合う40個以上の気泡についてdiを測定する。1個の発泡粒子の平均気泡径d、及び気泡径の変動係数uを次式により算出する。但し、nはdiを測定した気泡の個数、σは気泡径の標準偏差である。
d=Σ(di)/n
u=σ/d×100
3個以上の発泡粒子についてuを求め、その平均をUとする。気泡の均一性を次の基準により評価した。
◎:Uが30以下
〇:Uが30を越えて35以下
×:Uが35超
【0077】
(含水率)
水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合は、水及び窒素のみを発泡剤とし発泡温度や発泡圧力などの条件は水及び窒素以外の発泡剤を使用した場合と同一になるようにして発泡粒子を製造する。得られた粒子の表面に付着した水を、空気気流で脱水させたのち、その重量(W1)を測定する。さらにその発泡粒子を80℃のオーブン中で12時間乾燥させた時の重量(W2)を測定する。含水率は次式により算出する。
含水率(%)=(W1−W2)/W2×100
【0078】
(成形体の表面性)
表面性、融着性及び低収縮性の評価は集合包装用緩衝材でなく、評価しやすい設計外形寸法が400mm×300mm×20mmである直方体成形用金型を用いて得られた型内発泡成形体を用いて行った。表面性の評価は成形後、23℃で2時間静置し、つぎに65℃で6時間養生したのち、23℃の室内に4時間放置して得られた型内発泡成形体の表面について以下の基準で評価した。融着性及び低収縮性の評価もこの型内発泡成形体を用いて行った。
◎:しわ、粒間少なく、美麗
〇:僅かなしわ、粒間あるが良好
×:しわ、ヒケがあり外観不良
【0079】
(成形体の融着性)
型内発泡成形体の表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れたのち、このクラックに沿って型内発泡成形体を割り、破断面を観察し、破断面の全粒子数に対する破壊粒子数の割合を求め、成形体融着率とした。
【0080】
(成形体の低収縮性)
成形後、23℃で2時間静置し、つぎに65℃で6時間養生したのち、23℃の室内に4時間放置して得られた型内発泡成形体の長手寸法を測定し、対応する金型寸法に対する、金型寸法と型内発泡成形体の寸法との差の割合を対金型寸法収縮率とし、以下の基準で評価した。
◎:対金型寸法収縮率が4%以下
〇:対金型寸法収縮率が4%を超えて7%以下
×:対金型寸法収縮率が7%より大きい
【0081】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体:エチレン含有率3.0重量%、Mw/Mn=4.7、MI=6g/10分、融点143℃、ダイスエル比1.087)100重量部に対し、ポリエチレングリコール(平均分子量300、ライオン(株)製)を0.5重量部プリブレンドし、次に発泡核剤としてタルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.05重量部を加えブレンドした。50mm単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0082】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入したのち、脱気し、攪拌しながら炭酸ガス6重量部を耐圧容器内に入れ、148℃に加熱した。このときの圧力は3MPaであった。すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒を含んでなる水分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出して発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は耐圧容器内の圧力が低下しないように、炭酸ガスで圧力を保持した。
【0083】
得られた一段発泡粒子は示差走査熱量計測定において、138℃と157℃に2つの融点を示し、発泡倍率、連泡率、平均気泡径を測定した結果、発泡倍率19倍、連泡率0.6%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径340μmであった。含水率は、耐圧容器内温度を上記と同じ148℃にし、耐圧容器内圧力を窒素にて3MPaとし水発泡させて測定したところ3.3重量%であった。
【0084】
炭酸ガスを併用して発泡させた一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を約0.4MPaにしたのち、約0.08MPaGの蒸気と接触させることで二段発泡させ、発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.3%、平均気泡径435μmで気泡の均一性に優れていた。二段発泡させた発泡粒子表面を電子顕微鏡にて観察した結果、表面部分の気泡径が均一で、かつ表面の粗れがなく、発泡粒子表面膜の厚みが薄い部分も少ない発泡粒子であった。次に、二段発泡させた発泡粒子を再度、耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.19MPaの空気内圧とし、型内発泡成形を行った。得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0085】
二段発泡させた発泡粒子を耐圧容器内にて空気で加圧し、内圧を付与し、型内発泡成形を行って図9に示す集合包装用緩衝材を製造した。得られた集合包装用緩衝材は、表面平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、内倒れがない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0086】
【表1】

【0087】
(実施例2)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.2重量部、タルクを0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、二段発泡、型内成形した。一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率15倍、連泡率0.7%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径270μmであった。含水率は2.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率0.8%、平均気泡径375μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0088】
(実施例3)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、二段発泡、型内成形した。一段発泡にて得られた一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率11倍、連泡率0.7%、気泡の均一性に優れ、平均気泡径275μmであった。含水率は1.3重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率0.8%、平均気泡径420μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0089】
(実施例4)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量300)を0.5重量部、タルク0.1重量部とし、発泡剤の炭酸ガスは使用せず、窒素ガスを導入し、151℃に加熱した。その他は実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率12倍、連泡率1.1%、平均気泡径235μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は3.3重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.3%、平均気泡径355μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0090】
(実施例5)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量600)を0.5重量部とした他は、実施例4と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率10倍、連泡率1.2%、平均気泡径225μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は3.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.5%、平均気泡径345μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形した。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0091】
(実施例6)
ポリエチレングリコール0.5重量部に代えて粉砕して微細化したメラミンを0.1重量部、タルク0.05重量部に代えて0.03重量部、使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率15倍、連泡率0.9%、平均気泡径240μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は2.4重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.0%、平均気泡径350μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0092】
(実施例7)
ポリエチレングリコール0.5重量部に代えて硼酸亜鉛を0.1重量部使用し、タルク使用しなかった他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形評価した。一段発泡の耐圧容器内圧は3.0MPaとした。一段発泡にて得られた発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率13倍、連泡率1.1%、平均気泡径235μmであった。気泡はほぼ均一であった。含水率は2.0重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の2段発泡粒子を得た。2段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率1.0%、平均気泡径350μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、粒子どうしの融着に優れ、寸法収縮が小さく、歪が少ない、美麗な型内発泡成形体であった。
【0093】
(比較例1)
ポリエチレングリコールを使用せず、表に示す条件にて実施例1と同様に発泡させた。発泡倍率6倍と低い倍率しか得られず、平均気泡径150μmと小さいものであった。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしが付着した、いわゆるスティックの発生が多数見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形したところ得られた型内発泡成形体はしわの発生が見られ、寸法収縮率が大きく、外観の劣るものであった。
【0094】
(比較例2)
ポリエチレングリコールの代わりに架橋ポリアルキレンオキサイドを1重量部使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形を行った。得られた型内発泡成形体は粒子どうしの融着が劣り、寸法収縮が大きかった。
【0095】
(比較例3)
添加剤のポリエチレングリコール(平均分子量6000)を1.0重量部、タルク0.1重量部とした他は実施例1と同様に発泡、2段発泡、型内成形した。一段発泡にて得られた一段発泡粒子は2つの融点を示し、発泡倍率12倍、連泡率1.3%、平均気泡径260μmであった。気泡の均一性は実施例1〜3に比較するとやや劣るもののほぼ均一であった。含水率は2.2重量%であった。次に、実施例1と同様に発泡倍率30倍の二段発泡粒子を得た。二段発泡粒子は、示差走査熱量計測定において2つの融点を示し、連泡率2.0%、平均気泡径390μmで気泡の均一性に優れていた。型内成形評価の結果、得られた型内発泡成形体の表面は平滑性に優れ、しわの発生も無く、寸法収縮が小さく、歪が少なくい美麗な成形体であった。粒子どうしの融着は実施例1から3と比較すると僅かに未融着部分が見られた。ポリエチレングリコールを多量に添加しているにもかかわらず、得られた発泡粒子の発泡倍率は比較的小さかった。
【0096】
(比較例4)
ポリエチレングリコールの代わりにポリアクリル酸ナトリウムを0.5重量部使用した他は、実施例1と同様に1段発泡、2段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は大気泡と小気泡が混在しており、均一性に劣った。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、表面にしわの発生が見られ、粒子どうしの融着に関しても劣るものであり、成形体の寸法収縮も大きかった。
【0097】
(比較例5)
ポリエチレングリコールの代わりにカルボキシメチルセルロースナトリウム0.3重量部を使用し、タルクを0.1重量部とした他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は大気泡と小気泡が混在しており、均一性に劣った。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、表面にしわの発生が見られ、粒子どうしの融着に関しても劣るものであり、成形体の寸法収縮も大きかった。
【0098】
(比較例6)
ポリエチレングリコールの代わりにゼオライトA型1.0重量部を使用し、タルクは使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。一段発泡粒子の気泡は粗大な気泡と小気泡が混在するもので均一性に劣った。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしの付着が少し見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形体を得たところ、表面にしわの発生が顕著なものであり、成形体の寸法収縮が大きかった。
【0099】
(比較例7)
ポリエチレングリコールの代わりにポリプロピレングリコール(平均分子量2000)0.2重量部、タルク0.1重量部を使用した他は、実施例1と同様に一段発泡、二段発泡、型内成形を行った。発泡倍率9倍と低い倍率しか得られず、平均気泡径100μmと小さいものであった。二段発泡においては、発泡倍率30倍にするには高い蒸気圧が必要となり、発泡粒子どうしが付着するスティックの発生が多数見られた。その二段発泡粒子を使用し、型内発泡成形したところ、しわの発生が見られ、成形体の寸法収縮率が大きく、外観の劣るものであった。
【0100】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例の発泡成形体は(1)表面が平滑で皺などがなく、(2)発泡粒子間の融着が十分で機械強度にすぐれ、(3)収縮が小さい、という集合包装緩衝材に必要な特性を併有する。このため、本発明に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られた集合包装用発泡緩衝材は、表面性、融着性に優れ、優れた機械強度を有し、内倒れ等の歪みがなく、各収納空間の寸法が同一であり、収納すべき物品を収納しやすく、物品と緩衝材の間の隙間がない優れた緩衝材となる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】集合包装用緩衝材、蓋形状の緩衝材および外箱の使用状態を示す斜視図である。
【図2】集合包装用緩衝材の斜視図である。
【図3】図2に示す集合包装用緩衝材の平面図である。
【図4】図2に示す集合包装用緩衝材の側面図である。
【図5】図2に示す集合包装用緩衝材の正面図である。
【図6】図3におけるA−A断面図である。
【図7】図3におけるB−B断面図である。
【図8】本発明の実施例で製造した集合包装用緩衝材の斜視図である。
【図9】本発明の実施例で製造した他の集合包装用緩衝材の斜視図である。
【図10】図9に示す集合包装用緩衝材において、内倒れが発生した際の斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
1、1'、1" 集合包装用緩衝材
2、2" 底壁
3、3'、3" 枠体
4、4'、4" 側壁
5、5' 中間壁
6、6'、6" リブ
7、7' リブ
8、8'、8" 収納空間
9、9'、9" 側壁
10 横リブ
11、11' 縦リブ
13 横リブ
14、14' 縦リブ
15、15" テーパー面
16、16' リブ
20 外箱
21 蓋
22 蓋形状の緩衝材
23 蓋
M 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内成形発泡体よりなり、相対向する二組の側壁によって形成される枠体内に、一組の側壁の長さ方向に沿って、箱状または板状の物品を保持するための物品毎の収納空間が複数並設された集合包装用緩衝材において、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子として次の発泡粒子を使用することを特徴とする集合包装用緩衝材。
耐圧容器内に分子量600以下の親水性物質を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.0以下であるポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られる発泡粒子であり、水が発泡剤となり発泡直後の発泡粒子中の含水率が0.7重量%以上10重量%以下であり発泡倍率が20倍以上のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
分子量600以下の親水性物質がポリエチレングリコールである請求項1に記載の集合包装用緩衝材。
【請求項3】
ポリエチレングリコールの分子量が200以上600以下である請求項2に記載の集合包装用緩衝材。
【請求項4】
発泡剤として炭酸ガスを併用する請求項1〜3何れか一項に記載の集合包装用緩衝材。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂が、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂である請求項1〜4何れか一項に記載の集合包装用緩衝材。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が50μm以上800μm以下の平均気泡径を有し、示差走査熱量測定において、2つ以上の融点を示す結晶構造を有する請求項1〜5何れか一項に記載の集合包装用緩衝材。
材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−100313(P2010−100313A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273348(P2008−273348)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】