説明

集塊状ゼオライト吸着剤、その製造方法及びその使用

【課題】吸着量に優れた集塊状吸着剤を提供する。
【解決手段】1.15<Si/Al≦1.5のSi/Al比を有するゼオライトX及び粘土鉱物系結合剤を主成分とする集塊状ゼオライト吸着剤であって、ゼオライトXと前記結合剤の集塊物をアルカリ処理することにより結合剤部分をもゼオライト化し、さらにゼオライトの交換可能なカチオンサイトの少なくとも90%をバリウムイオン単独またはバリウムイオンとカリウムイオンで交換した、Dubinin法による細孔容量が0.240cm/g以上である吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、バリウムで交換したゼオライトXを主成分とするかまたはバリウムとカリウムで交換したゼオライトXを主成分とする集塊状ゼオライト吸着剤の分野である。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
従来技術で、バリウム、カリウムまたはストロンチウムのようなイオンを単独でもしくは組合わせて用いて交換したゼオライトXまたはYからなる吸着剤が少なくとも1種の他のC芳香族異性体を含む混合物中のp−キシレンを選択的に吸着させるのに有効であることは認識されている。米国特許第3,558,730号明細書、同第3,558,732号明細書、同第3,626,020号明細書及び同第3,663,638号明細書は、バリウムとカリウムで交換したアルミノシリケートからなり、C芳香族異性体の混合物からp−キシレンを効率的に分離する吸着剤を開示している。
【0003】
米国特許第3,878,127号明細書は、キシレンを分離するための吸着剤の製造方法を開示しており、その方法はゼオライトの交換可能カチオン(例えば、プロトンまたはIIA族のカチオン)をバリウムまたはバリウム+カリウムで交換する前にナトリウムで置換するために、NaO/Al比が厳密に0.7未満である集塊物(ゼオライトX+結合剤)を水酸化ナトリウム溶液中で熱処理することを含み、ナトリウムでの予備交換により大量のバリウムまたはバリウム+カリウムをゼオライト構造に付加することができる。
【0004】
上記吸着剤は、米国特許第2,985,589号明細書に記載されている方法と類似の液相方法、好ましくは模擬向流タイプの液相方法において吸着剤として使用され得、例えば気相方法でのベンゼンのジアルキル化方法から生ずるC芳香族留分に対して特に使用される。
【0005】
バリウム交換したゼオライトXは吸着剤として他の多くの用途を有し、その用途としては糖の分離(例えば、欧州特許出願公開第115,631号明細書または同115,068号明細書参照);多価アルコールの分離(欧州特許出願公開第137,063号明細書);置換トルエン異性体の分離(米国特許第4,642,397号明細書(ニトロトルエン)、米国特許第4,940,548号明細書(ジエチルトルエン)または米国特許第4,633,018号明細書(トルエンジアミン));クレゾールの分離(米国特許第5,149,887号明細書)が挙げられ得る。
【0006】
上掲した文献では、ゼオライト吸着剤は粉末形態、または主にゼオライト及び少なくとも15〜20重量%の不活性結合剤から構成され、真空下300℃で16時間脱ガス後に77゜Kでの窒素吸着により測定したDubinin容量が0.230cm/gより低い集塊物の形態で提供されている。
【0007】
ゼオライトXは主にシリコアルミネートゲルの核形成及び結晶化により合成されるので、得られる粉末を工業的規模で使用することは非常に困難であり(粉末を取り扱うときに圧力が大きく低下する)、顆粒状集塊形態が好ましい。ブロック、ボールまたは押出物の形態であれ、前記集塊物は通常、活性成分をなすゼオライト粉末及び結晶を粒子の形態で粘着させるための結合剤から構成されている。この結合剤は吸着性をもたず、その機能は粒子に対して多種多様な使用中に被る振動及び運動に耐えるのに十分な機械的強度を与えることである。集塊物は、ゼオライト粉末を該ゼオライト粉末80〜85%に対して結合剤20〜15%の割合のクレーペーストで凝集し、ボール、ブロックまたは押出物として成形し、その後高温で加熱処理して、クレーを焼成し、ゼオライトを再活性化させることにより製造され、ゼオライト粉末を結合剤で凝集する前またはその後にバリウムによる交換を実施することが可能である。こうして、数mmの粒径を有するゼオライト体が得られる。結合剤を選択し、造粒を当業界のルールに従って実施したなら、得られるゼオライト体は満足な諸特性、特に多孔性、機械的強度及び耐摩耗性を示す。しかしながら、活性粉末およびその不活性凝集結合剤に対する前記粉末の比で吸着性が明らかに低下する。
【0008】
結合剤が吸着剤性能に関して不活性であるという上記欠点を解消するために、結合剤の全部または部分的ゼオライトへの変換を含めて各種手段が提案されてきた。この操作は通常、500〜700℃の温度に予めか焼したカオリナイト系結合剤を使用して実施される。或いは、カオリン粒子を成形し、該粒子をゼオライトに変換させる。この原理は、D.W.Breck,「ゼオライトモレキュラーシーブ(Zeolite Molecular Sieves)」,ニューヨークに所在のJohn Wiley and Sons発行に記載されている。この技術は、ゼオライトを最高95重量%含み、残部が未変換結合剤からなるゼオライトAまたはX粒子を製造するためにうまく応用されている(これについては、米国特許第3,119,660号明細書参照)。ゼオライトXを得たいときにはシリカ源を添加することが推奨されている(Breckの「ゼオライトモレキュラーシーブ(Zeolite Molecular Sieves)」,p.320)。
【0009】
Flankらは、米国特許第4,818,508号明細書において(少なくとも50重量%が1.5〜15μmの粒径の粒子形態で存在する未反応クレー、例えばハロイサイトまたはカオリナイトを好ましくは孔形成剤の存在下で加熱処理して得られる)反応性クレー予備成形物をアルカリ金属酸化物で消化することによりゼオライトA、XまたはYを主成分とする集塊物を製造することが可能であることを示している。ゼオライトXを主成分とする集塊物の合成に関する実施例はシリカ源を添加する必要があることを示し、シリカ源の添加はゼオライトAを主成分とする集塊物を製造するときには必要でない。
【0010】
日本特開平5−163015号公報(東ソー株式会社)は、Si/Al比が1.25のゼオライトLSX粉末をカオリン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースと混合して低Si/Al比を有するゼオライトX粒子を形成することが可能であることを教示している。押出成形している。こうして得た粒子を乾燥し、600℃で2時間か焼し、その後水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム溶液中に40℃で2日間浸漬させる。
【0011】
上掲した2つの文献から、機械的に強い固体を製造することが可能であることが教示される。しかしながら、その製造方法はやっかいで、長い反応時間かまたは多数のステップを要する。更に、成形ステップ後に日本特開平5−163015号公報に記載されている熱処理しても、粒子は非晶質化されない恐れがあり、その後の苛性消化の目的は粒子を再結晶することにあり、このために方法に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,558,730号明細書
【特許文献2】米国特許第3,558,732号明細書
【特許文献3】米国特許第3,626,020号明細書
【特許文献4】米国特許第3,663,638号明細書
【特許文献5】米国特許第3,878,127号明細書
【特許文献6】米国特許第2,985,589号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第115,631号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第115,068号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第137,063号明細書
【特許文献10】米国特許第4,642,397号明細書
【特許文献11】米国特許第4,940,548号明細書
【特許文献12】米国特許第4,633,018号明細書
【特許文献13】米国特許第5,149,887号明細書
【特許文献14】米国特許第3,119,660号明細書
【特許文献15】米国特許第4,818,508号明細書
【特許文献16】特開平5−163015号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】D.W.Breck,「ゼオライトモレキュラーシーブ(Zeolite Molecular Sieves)」,ニューヨークに所在のJohn Wiley and Sons発行
【発明の概要】
【0014】
(発明の説明)
本発明の主題は、1.15<Si/Al≦1.5のSi/Al比を有するゼオライトX及び不活性結合剤を主成分とする集塊状ゼオライト吸着剤であり、前記ゼオライトXの交換可能なカチオンサイトの少なくとも90%がバリウムイオン単独またはバリウムイオンとカリウムイオンで占められており、カリウムで占められる交換可能サイトはバリウム+カリウムで占められる交換可能サイトのせいぜい1/3であり(残部は通常バリウム(及びカリウム)以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属により与えられ得る)、真空下300℃で16時間脱ガス後に77゜Kでの窒素吸着により測定した前記吸着剤のDubinin容量が0.240cm/g以上、好ましくは0.245cm/g以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の主題はまた、
a)ゼオライトX粉末を、ゼオライトに変換され得るクレーを少なくとも80重量%含む結合剤で凝集し、成形し、乾燥し、か焼するステップ、
b)前記結合剤をアルカリ溶液の作用によりゼオライト化するステップ、
c)ゼオライトXの交換可能サイトの少なくとも90%をバリウムで置換した後、こうして処理した生成物を洗浄し、乾燥するステップ、
d)任意に、ゼオライトXの交換可能サイトの多くとも33%をカリウムで置換した後、こうして処理した生成物を洗浄し、乾燥するステップ、
e)活性化するステップ
を含むことを特徴とする前記集塊物の製造方法である。
【0016】
凝集及び成形(ステップa))は、当業者に公知の方法、例えば押出、圧縮またはアグロメレーションにより実施され得る。ステップa)で使用される凝集結合剤は、ゼオライトに変換され得るクレーを少なくとも80重量%含み、他の無機結合剤(例えば、ベントナイトまたはアタパルジャイト)やアグロメレーションを促進し、形成された集塊物の硬化を改善する目的の添加剤をも含み得る。
【0017】
ゼオライトに変換され得るクレーは、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライトまたはディッカイト類に属する。通常、カオリンを使用する。乾燥後のか焼は通常500〜600℃の温度で実施する。
【0018】
結合剤のゼオライト化(ステップb))は、集塊物をアルカリ液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化ナトリウム溶液と水酸化カリウム溶液の混合物)中に浸漬することにより実施する。アルカリ液の濃度は0.5M以上が好ましい。ゼオライト化は、好ましくは熱条件下で実施し、周囲温度よりも高い温度、典型的には80〜100℃のオーダーの温度で処理し、こうして方法の反応速度が向上し、浸漬時間が短縮される。このようにして、結合剤の少なくとも50%のゼオライト化が簡単に得られる。その後、水洗し、乾燥する。
【0019】
ゼオライトカチオンのバリウムによる交換(ステップc))は、ステップb)(またはd))から得た集塊物をバリウム塩(例えば、BaCl)水溶液と周囲温度〜100℃、好ましくは80〜100℃の温度で接触させることにより実施される。迅速に高い(すなわち、90%以上の)バリウム交換率を達成するためには、典型的にはBaO/Al比が10〜12のオーダーであるようにゼオライトの交換したいカチオンに対して大過剰のバリウムを用いて交換することが好ましく、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の最低目標交換率を達成するために逐次交換を実施する。明細書中、交換度はモル濃度ではなく当量で計算する。
【0020】
任意のカリウムによる交換(ステップd))は、バリウムによる交換(ステップc))の前またはその後に実施し得る。既にカリウムイオンを含むゼオライトX粉末を凝集することも可能である。
【0021】
活性化(ステップe))は、本発明の吸着剤の製造における最終ステップである。活性化の目的は、吸着剤の含水量を最適範囲内に固定すること、より単純には強熱減量を最適範囲内に固定することにある。活性化は通常熱活性化により実施され、この熱活性化は好ましくは200〜300℃で実施される。
【0022】
本発明はまた、上記したゼオライト吸着剤の、バリウムで交換したゼオライトXを主成分とするかまたはバリウムとカリウムで交換したゼオライトXを主成分とする文献記載の吸着剤の代わりに有利に使用することができる吸着剤としての使用に関し、特にC芳香族異性体、特にキシレンの分離;糖の分離;多価アルコールの分離;ニトロトルエン、ジエチルトルエンやトルエンジアミンのような置換トルエン異性体の分離;クレゾールの分離における使用に関する。
【0023】
本発明は特に、C芳香族異性体留分からのp−キシレンの回収方法の改善に関し、その方法はp−キシレンに対する吸着剤として本発明のゼオライト吸着剤を液相方法及び気相方法で使用することを特徴とする。
【0024】
こうして、所望生成物は、(バッチ)分取吸着液体クロマトグラフィーにより、有利には模擬(simulated)移動床で、すなわち模擬向流条件、模擬並流条件、特に模擬向流条件で分離され得る。
【0025】
模擬向流タイプの工業的吸着ユニットの操作条件は、通常次の通りである:
ベッド数 6〜30、
ゾーン数 少なくとも4、
温度 100〜250℃、好ましくは150〜190℃、
圧力 0.2〜3MPa、
脱着剤/供給材料流速比 1〜2.5
(例えば、単一吸着ユニット(スタンドのみ)の場合には1.4〜1.8であり、吸着ユニットに結晶化ユニットを組合せた場合には1.1〜1.4である)、
リサイクル度 3.5〜12、好ましくは4〜6。
【0026】
米国特許第2,985,589号明細書、同第5,284,992号明細書及び同第5,629,467号明細書を参照し得る。
【0027】
模擬並流タイプの工業的吸着ユニットの操作条件は、通常リサイクル度を除いて模擬向流条件での操作と同じである。この場合、リサイクル度は0.8〜7である。米国特許第4,402,832号明細書及び同第4,498,991号明細書を参照し得る。
【0028】
脱着溶媒は供給材料よりも低い沸点を有する吸着剤、例えばトルエンであり得るが、供給材料よりも高い沸点を有する脱着剤、例えばp−ジエチルベンゼン(PDEB)であってもよい。
【0029】
芳香族留分中に存在するp−キシレンの吸着に対する本発明の吸着剤の選択率は、900℃で測定した強熱減量が通常4.0〜7.7%、好ましくは5.2〜7.7%のときに最適である。水及び少量の二酸化炭素が強熱減量に含まれる。
【0030】
下記実施例により本発明を説明する。
【0031】
(実施例)
下記実施例では、本発明の吸着剤の幾つかの量的特性を測定または評価する。
【0032】
吸着剤のp−キシレンの分離方法に対する選択率を評価するために、p−キシレン(PX)とそのC芳香族異性体(MX、OX)の間、数種の留分はエチルベンゼンを多く含むが他のC異性体を多く含まないことがあるので重要であるp−キシレンとエチルベンゼン(EB)の間、また脱着が効率的な条件である低いPX/脱着剤選択率を利用しなければならないときに重要であるp−キシレンと脱着剤の間の分離能を測定することができる試験を実施する。
【0033】
前記試験は、芳香族類を2,2,4−トリメチルペンタン中に溶解させた混合物(80g)に前もって熱活性化し、空気を排除しながら冷却した吸着剤(17g)を浸漬させることを含む。
【0034】
混合物の正確な組成は、
PX 2%
MX 2%
OX 2%
EB 2%
トルエン(脱着剤) 2%
2,2,4−トリメチルペンタン 残部
である。
【0035】
前記混合物をオートクレーブにおいて150℃で吸着平衡を与えるのに十分な時間である4時間加熱する。次いで、液体の一部を抜取り、−30℃で凝縮し、ガスクロマトグラフィーにより分析する。次いで、吸着相及び非吸着相で濃縮を実施すること、並びにp−キシレンの吸着量及び他の芳香族類及び脱着剤に対するp−キシレンの選択率を測定することが可能である。2,2,4−トリメチルペンタンは上記結果を妨げず、殆ど吸着されない。下記実施例1及び2で使用した脱着剤はトルエンである。
【0036】
こうして製造した吸着剤の選択率を下記する試験に従って測定する:
化合物(A)に対する化合物(B)についての吸着剤の選択率Sel(B/A)は、吸着相中の両化合物の濃度の比を平衡状態の非吸着相中の両化合物の濃度の比で割った値と定義される。
【0037】
選択率の式は、
Sel(B/A)=[(B)z/(A)z]/[(B)s/(A)s]
である。ここで、(B)z及び(B)sはそれぞれゼオライト中及び溶液中のBの濃度を表し、(A)z及び(A)sはそれぞれゼオライト中及び溶液中のAの濃度を表す。
【0038】
実施例1(対照吸着剤)
Si/Al比が1.25であり、Na/Al比が1である工業用ゼオライトNaXを、(か焼当量として表して)850gのゼオライトX粉末、(か焼当量として表して)150gのCharentesカオリナイト及び6gの(押出操作中水を保持するための保持助剤の)カルボキシメチルセルロースを押出するのに適量の水と共に均密に混合して凝集する。押出物を乾燥し、粉砕して0.7mmに等しい相当径を有する粒子を回収し、その後窒素流下550℃で2時間か焼させる。25℃、0.5の分圧で測定したトルエン吸着能は20.2%である。ミクロ細孔容量は20.2/0.86=0.235cm/gと解釈される(孔容積の計算において、液相の相対密度は吸収されたトルエンの相対密度と同一、すなわち0.86と見做す)。
【0039】
この粒子を4ステップで95℃で0.5M塩化バリウム溶液を用いて交換する。各ステップで、溶液容量/固体質量の比は20ml/gであり、交換は各回4時間継続させる。各交換の間、固体を数回洗浄して過剰の塩を除去する。その後、窒素流下250℃の温度で2時間活性化する。
【0040】
バリウムによる交換率は97%である。トルエン吸着能は14.8%であり、これは0.17cm/gのミクロ細孔容量に等しい。吸着剤上に存在する残留水の推定値を与えるので重要な指標である強熱減量も測定する。ここでは、強熱減量は4.5%と記録される。真空下300℃で16時間脱ガス後に77゜Kでの窒素吸着によるDubinin法に従って測定したミクロ細孔容量は0.22cm/gである。
【0041】
上記した選択率試験から以下の結果を得た。
【0042】
【表1】

p−キシレンの吸着量は0.054cm/gに等しい。
【0043】
実施例2(本発明の吸着剤)
Si/Al比が1.25であり、Na/Al比が1である工業用ゼオライトNaXを、(か焼当量として表して)800gのゼオライトX粉末、(か焼当量として表して)150gのカオリン、56gのCecasol(登録商標)30の商標でCECA社から販売されている(30重量%のSiO及び0.5重量%のNaOからなる)コロイドシリカ及び6gのカルボキシメチルセルロースを押出するのに適量の水と共に均密に混合して凝集する。押出物を乾燥し、粉砕して0.7mmに等しい相当径を有する粒子を回収し、その後窒素流下で550℃で2時間か焼させる。この粒子を25℃、0.5の分圧で測定したトルエン吸着能は19.8%である。液相トルエンについての値から推定される吸着トルエンの相対密度から、ミクロ細孔容量は0.23cm/gに相当すると解釈される。
【0044】
こうして得た顆粒200gを、100±1℃の温度で調節されているジャケット付きガラス反応器に入れる。次いで、濃度100g/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを添加し、反応混合物を撹拌しながら3時間放置する。次いで、顆粒を水で3回連続洗浄し、反応器を空にする。洗浄の有効性は、水性洗浄液の最終pHを測定することにより確認する。水性洗浄液の最終pHは10〜10.5でなければならない。
【0045】
こうして得た顆粒のトルエン吸着能を、実施例1に記載と同一の条件で測定すると22.5%である。これは、ミクロ細孔容量0.26cm/gに相当し、結晶化度が実施例1の顆粒に比して約13%増加している。
【0046】
次いで、バリウム交換を実施例1と同一の操作条件下で実施する。但し、BaCl溶液の濃度を0.6Mとし、洗浄後80℃で2時間乾燥し、最後に窒素流下250℃で2時間活性化する。
【0047】
この吸着剤のバリウム交換率は97.4%である。そのトルエン吸着能は16.2%であり、その強熱減量は5.2%である。真空下300℃で16時間脱ガス後に77゜Kでの窒素吸着によるDubinin法に従って測定したミクロ細孔容量は0.244cm/gである。
【0048】
上記した選択率試験から、実施例1の対照吸着剤と同等の結果を得る。p−キシレン吸着量は0.06cm/gに等しい。
【0049】
実施例3(比較)
長さ1m、直径1cmのカラム24本を直列に並べ、24番目のカラムと1番目のカラムの間を循環ポンプを用いて循環させて連続液体クロマトグラフィーパイロットユニットを作製した。前記カラムの各々に実施例1で製造した吸着剤を充填し、ユニット全体(カラム+配管+分配弁)を150℃のオーブンに置く。
【0050】
模擬向流クロマトグラフィーの原理に従って、溶媒の注入、抽出物の抜取り、供給材料の注入及び抽残液の抜取りを液体の循環に対して向流的に6分ごとに3つのカラムにより実施する。6カラム(2ベッド)を溶媒の注入と抽出物の抜取りの間に存在させる。9カラム(3ベッド)を抽出物の抜取りと供給材料の注入の間に存在させる。3カラム(1ベッド)を供給材料の注入と抽残液の抜取りの間に存在させる。最後の6カラムを抽残液の抜取りと溶媒の注入の間に存在させる。
【0051】
(周囲条件下で)トルエンを7.3cm/分、21重量%のp−キシレン、17重量%のエチルベンゼン、44%のm−キシレン及び18%のo−キシレンから構成される供給材料を5cm/分で連続注入する。
抽出物を5.4cm/分、抽残液を6.74cm/分で連続的に抜き取る。
【0052】
サイクルの最初の2期間中、循環ポンプは(周囲温度で)38.7cm/分送出する。第3期間中は45.5cm/分送出する。その後の3期間中は40.5cm/分送出し、最後の2期間中は45.9cm/分送出する。純度92.2%のp−キシレンが得られ、回収率は98.1%である。温度は150℃、圧力は30バールから5バールに低下する。吸着剤の生産量は吸着p−キシレン0.034m/吸着剤m/時と算出される。
【0053】
実施例4(本発明)
実施例3に記載のパイロットユニットを実施例2で製造した吸着剤を用いて操作する。パイロットユニットに導入させる供給材料の流速を最高5.5cm/分まで増加(すなわち、10%増加)させながら同一純度のp−キシレンを得ることができることが分かる。
【0054】
この供給材料の流速では、導入させる脱着剤の量は7.92cm/分に相当し、交換時間は5.4分であり、吸着剤の生産性は吸着p−キシレン0.0374m/吸着剤m/時である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.15<Si/Al≦1.5のSi/Al比を有するゼオライトX及び不活性結合剤を主成分とする集塊状ゼオライト吸着剤であって、前記ゼオライトXの交換可能なカチオンサイトの少なくとも90%がバリウムイオン単独またはバリウムイオンとカリウムイオンで占められており、カリウムで占められる交換可能サイトはバリウム+カリウムで占められる交換可能サイトの最高1/3であり(残部は通常アルカリ金属またはバリウム以外のアルカリ土類金属により与えられ得る)、真空下300℃で16時間脱ガス後に77゜Kでの窒素吸着により測定した前記吸着剤のDubinin容量が0.240cm/g以上であることを特徴とする前記吸着剤。
【請求項2】
Dubinin容量が0.245cm/g以上であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の吸着剤。
【請求項3】
バリウム単独またはバリウム+カリウムでの全交換率が95%以上であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の吸着剤。
【請求項4】
900℃で測定した強熱減量が4.0〜7.7%、好ましくは5.2〜7.7%であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項5】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤の製造方法であって、
a)ゼオライトX粉末を、ゼオライトに変換され得るクレーを少なくとも80重量%含む結合剤で凝集し、成形し、乾燥し、か焼するステップ、
b)前記結合剤をアルカリ溶液の作用によりゼオライト化するステップ、
c)ゼオライトXの交換可能サイトの少なくとも90%をバリウムで置換した後、こうして処理した生成物を洗浄し、乾燥するステップ、
d)任意に、ゼオライトXの交換可能サイトの多くとも33%をカリウムで置換した後、こうして処理した生成物を洗浄し、乾燥するステップ、
e)活性化するステップ
を含み、任意のカリウムによる交換(ステップd))をバリウムによる交換(ステップc))の前または後に実施し得ることを特徴とする前記方法。
【請求項6】
ステップe)の活性化が200〜300℃の温度で実施する熱活性化であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の吸着剤の製造方法。
【請求項7】
ステップb)のアルカリ溶液の濃度が少なくとも0.5Mであることを特徴とする請求の範囲第5項または第6項に記載のゼオライトに変換され得る結合剤を含む吸着剤の製造方法。
【請求項8】
脱着剤の存在下で請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いてp−キシレンを吸着させることを特徴とする液相でのC芳香族異性体留分からのp−キシレンの回収方法。
【請求項9】
模擬移動床タイプであることを特徴とする請求の範囲第8項に記載のp−キシレンの回収方法。
【請求項10】
模擬向流タイプであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のp−キシレンの回収方法。
【請求項11】
模擬並流タイプであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のp−キシレンの回収方法。
【請求項12】
脱着剤の存在下で請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いてp−キシレンを吸着することを特徴とする気相でのC芳香族異性体留分からのp−キシレンの回収方法。
【請求項13】
脱着剤がトルエンまたはp−ジエチルベンゼンであることを特徴とする請求の範囲第8項〜第12項のいずれか1項に記載のp−キシレンの回収方法。
【請求項14】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いることを特徴とする糖の分離方法。
【請求項15】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いることを特徴とする多価アルコールの分離方法。
【請求項16】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いることを特徴とするニトロトルエン、ジエチルトルエンまたはトルエンジアミンのような置換トルエン異性体の分離方法。
【請求項17】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の吸着剤を用いることを特徴とするクレゾールの分離方法。

【公開番号】特開2012−143757(P2012−143757A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−49037(P2012−49037)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2000−600771(P2000−600771)の分割
【原出願日】平成12年2月16日(2000.2.16)
【出願人】(500092608)
【出願人】(500069954)
【Fターム(参考)】