説明

集水管

【課題】集水管の目詰まりを防止しつつ、集水管の全長に亘って水を漏出させずに移送すること。
【解決手段】軸芯と平行にスリットを形成した管本体と、該管本体のスリットの両側縁から管本体の内側へ向けて延出した一対の起立隔壁とを具備し、前記一対の起立隔壁の間に管本体の内部空間と管外とを連通する向心路を形成し、前記各起立隔壁と管本体との周面間に、前記向心路と連通した側方水路を画成して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤改良や湧水地帯の排水に用いる集水管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、以下のような各種の集水管が提案されているが、それぞれ解決すべき問題点がある。
(1)周面に多数の透孔を形成した集水管の目詰まり防止を図るために、集水管の周囲を各種のフィルタ材で被覆することが知られている。
フィルタ材を外装した集水管にあっては、時間の経過に伴いフィルタ材の目詰まりが進行して集水管の集水性能が徐々に低下していく。
【0003】
(2)フィルタ材を用いない目詰まり防止手段としては、単位面積当たりの透孔の開口率を特定範囲に限定した集水管(特許文献1)や、管体の軸芯に対して透孔の軸線を傾斜させた集水管(特許文献2)が知られている。
これら特許文献1,2に記載の集水管は管体の全周面に亘って透孔が形成してあるため、管体の全方向から水を取水できるものの、移送中に水が管底部の透孔を通じて漏出してしまい、集水管の全長に亘って水を移送することができない。
【0004】
(3)図7に示すように、管体aの上半外周に面状の集水溝bと複数の透孔cを形成するとともに、管体aの下半部に無孔構造の水路dを形成した集水管が提案されている。
この集水管は面状の集水溝bを通じて捕らえた水を、函体aの側面の透孔cへ誘導して管内へ取り込み、管体aの下半の水路dを通じて下流側へ移送する。
この集水管は管体aの上半部と下半部の外周形状が異なるため製作コストが嵩む問題と、管体aの上半部の躯体厚が集水溝bの形成分だけ下半部より薄くなるため、強度的な弱点となり易いという問題がある。
さらに管体aの下半部を通じた取水が不能であり、集水方向が管体aの上半部に限定されるから、全周面に透孔を有する集水管と比べて集水効率が低いといった問題もある。
【0005】
(4)コストを優先して集水管に塩ビ管を用いると、塩ビ管は鋼管等と比較して強度が小さいため、載荷重により破損したり、経年劣化を起こし易い。
耐久性を優先して集水管に鋼やコンクリート等の高強度素材を用いると、塩ビ管等の低強度素材と比べて、重量増加、コスト高といった問題がある。
このように従来の集水管は耐久性とコストの両立を図ることが技術的に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−232028公報
【特許文献2】特開2008−157016公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、つぎの少なくとも一つの集水管を提供することにある。
(1)集水管の目詰まりを防止しつつ、集水管の全長に亘って水を漏出させずに移送すること。
(2)集水管の強度アップおよび低コスト化の両立を図ること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸芯と平行にスリットを形成した管本体と、該管本体のスリットの両側縁から管本体の内側へ向けて延出した一対の起立隔壁とを具備し、前記一対の起立隔壁の間に管本体の内部空間と管外とを連通する向心路を形成し、前記各起立隔壁と管本体との周面間に、前記向心路と連通した側方水路を画成して構成する集水管を提供する。
前記一対の起立隔壁は管本体の全長に亘って形成する。
さらに前記向心路の入口にフィルタ機能と補強機能を有する有孔蓋を設置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明はつぎの顕著な効果を奏する。
(1)一対の起立隔壁の間に形成した向心路を通じて水を上昇させてから側方水路へ貯留する過程において、水に混入した異物の進入を向心路の入口で阻止するとともに、異物の自重により側方水路への進入を阻止することができる。
さらに集水した水を集水管内に形成された側方水路を経て下流へ排水できる。
したがって、従来のようにフィルタ材を使用せずに、集水管の目詰まりを防止しつつ、集水管の全長に亘って水を漏出させずに移送することが可能となる。
(2)管本体に一体に設けた一対の起立隔壁が集水管の強度を高めるとともに、集水管の断面形状が簡易であるため、集水管の製作が簡単容易である。
したがって、集水管の強度アップと低コスト化の両立を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る集水管の斜視図
【図2】地中に埋設した集水管の集水作用を説明するためのモデル図
【図3】集水管の集水作用を説明するためのモデル図
【図4】本発明の実施例2に係る集水管の底部の拡大断面図
【図5】一部を省略した有孔蓋の斜視図
【図6】本発明の実施例3に係る集水管の断面図
【図7】従来の集水管の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
[構成]
【0013】
(1)集水管
図1,2に本発明の実施例1に係る集水管10の一例を示す。
集水管10は軸芯と平行に一つのスリット21を形成した管本体20と、該管本体20のスリット21の両側縁から管本体20の内側へ向けて延出した一対の起立隔壁22,22とを具備する。
【0014】
相対向する一対の起立隔壁22,22の間には、管本体20の内部空間と管外とを連通する向心路23を形成している。
集水管10は向心路23を中心として左右対称形であり、しかも躯体の厚さも一定であるから、押出成形に適していて集水管10の製作が簡単容易である。
【0015】
集水管10は、例えば樹脂、鋼、鋳鉄、コンクリート等の公知の素材で製作する。
【0016】
(2)管本体
管本体20は断面形状がC字形を呈する無孔の筒体であり、その周面の一部に軸芯と平行なスリット21を形成している。
スリット21を除いた管本体20の断面形状は、図示した円形の他に楕円形や角形、或いはこれらの組み合わせた形状であってもよい。
【0017】
(3)起立隔壁
一対の起立隔壁22,22は管本体20内の下半空間を複数に区画する機能と、管本体20を補強する機能を有していて、所定の間隔を隔てて相対向して管本体20の全長に亘って連続して形成される。
【0018】
各起立隔壁22と管本体20との周面間には、側方水路24,24を画成するための空間が形成されている。
すなわち、管本体20内の下半には、その中央に向心路23を形成し、さらに起立隔壁22を間に挟み向心路23の左右両側に側方水路24,24を形成している。各側方水路24,24は向心路23を通じて管外と連通している。
向心路23から側方水路24へ水が流入する位置(高さ)は、起立隔壁22の向心方向の長さ(突出長)によって求められるから、集水量等に応じて起立隔壁22の長さを適宜選択する。
【0019】
また、管本体20と一体に設けた一対の起立隔壁22,22は、補強リブとしての機能を発揮するから、管本体20の曲げ強度や引張強度を高めて集水管10の増強に役立つ。
【0020】
尚、本例では一対の起立隔壁22,22を平板状に形成した場合について示すが、内向き又は外向きに湾曲させて形成してもよく、さらに一対の起立隔壁22,22の対向距離が変化するように非平行に形成してもよい。
【0021】
(4)向心路
向心路23は管本体20の軸芯に沿って形成した通水機能と異物のろ過機能を有する帯状の空間である。
本発明に係る集水管10は、後述するように向心路23を管本体20の底部に位置させ、向心路23を通じて地下水を上昇させて管内に集水するようにした。
【0022】
本発明が向心路23を通じて集水するようにしたのは、向心路23の溝幅以上の大きさの異物の進入を入口で阻止するためと、水の上昇過程において異物の自重を利用して重たい異物を篩い分けて異物の通過を阻止するためである。
したがって、向心路23の長さ(高さ)が長くなるほど、重たい異物の篩い分けがし易くなる。
【0023】
また向心路23は水の進入路としての機能に加えて、両側の側方水路24と同様に集水した水を貯えて集水管10の下流側へ移送するはたらきもする。
【0024】
(5)側方水路
管本体20の内側に形成した側方水路24,24は、向心路23を通じて管内に取り込んだ水を貯留して排水するための水路で、管本体20の全長に亘って形成されている。
【0025】
[作用]
【0026】
つぎに図2に基づいて集水管10の作用について説明する。
【0027】
(1)集水作用
開削工法、又は推進工法により横方向に向けて集水管10を地中の所定深度にに埋設する。このとき、集水管10の向心路23を真下に位置させることが肝要である。
集水管10の周囲に存在する地下水Wは、例えば水頭差Hにより集水管10の底部の向心路23を通じて緩やかに上昇する。向心路23の頂部へ達した水は最終的に左右へ振り分けられて各側方水路24,24に貯留される。
【0028】
本例では水頭差Hを利用して自然集水する場合について説明するが、地中に圧気をかけたり、或いは地表に載荷重を加えて強制的に集水する場合もある。
【0029】
(2)異物のろ過作用
向心路23の底部から地下水Wが進入する際、一対の起立隔壁22,22がフィルタ機能を発揮して向心路23の溝幅以上の大きさの土粒等の異物の進入を阻止する。
【0030】
向心路23の溝幅より小さな異物は向心路23を通じて上昇しようとするが、水の上昇流が緩やかなため、異物の自重により降下したり、向心路23内で浮遊したりして、一対の起立隔壁22,22を乗り越えることができない。
そのため、異物を取り除いた水だけが起立隔壁22,22の上部を乗り越えることとなりる。
【0031】
このように本発明に係る集水管10は従来の集水管のようにフィルタ材を用いたり、或いは透孔の開口寸法を選択したりせずに、簡単に異物をろ過して水だけを側方水路24,24へ集めることができる。
【0032】
(3)水の排水作用
集水管10内に集めた水は、側方水路24,24を通じて下流側へ移送されて排水される。
このとき、向心路23内に位置する水にも集水管10の下流側へ向けて緩やかな流れを生じるため、向心路23も排水路として機能する。
【0033】
前記した向心路23のろ過作用により、向心路23の直下にろ過して分離した土粒等の異物が蓄積することが予想されるが、向心路23が排水路としても機能するため、ろ過した異物は下流側へ流されて蓄積されることがない。
そのため、集水管10は向心路23のろ過作用を半永久的に持続できる。
【0034】
(4)大量排水
図3は大量の水を含んだ湧水地帯に集水管10を埋設した場合や、埋設後に豪雨等で地下水位が急激に上昇した場合を示す。
ろ過作用を有する向心路23を通じて管内に水が取り込まれることは既述したとおりである。
本発明に係る集水管10は全周面に透孔が存在せずに遮水構造になっている。
そのため、集水管10内に側方水路24の水位を超えて大量の水が取水された場合でも、集水管10の管外へ漏出することなく、大量の水を短時間に排水することが可能となる。最大で、集水管10の全断面が排水路として機能する。
【実施例2】
【0035】
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0036】
図4,5に向心路23の下端の入口にフィルタ機能と補強機能を有する有孔蓋30を設置した他の実施例を示す。
【0037】
図5に例示した有孔蓋30について説明すると、有孔蓋30は互いに平行な一対の基材31,31と、基材31,31の横断方向に向けて等間隔に設けた複数の補強材32とよりなり、全体として梯子状の剛性構造体に形成されている。
隣り合う補強材32と補強材32の間に開口33を形成していて、開口33の寸法を選択することでろ過する異物のサイズを任意に設定することができる。
また図示を省略するが、開口33にメッシュ状のフィルタを付設してもよい。
有孔蓋30はその基材31,31を向心路23の下端両側に凹設した溝に収容可能になっている。
【0038】
本実施例にあっては、向心路23の下端の入口に有孔蓋30を設置するだけで、向心路23の溝幅より小さいサイズの異物の進入を阻止できるだけでなく、有孔蓋30が管本体20のスリット21を閉鎖して補強するので、集水管10全体の強度アップを図ることができるという利点が得られる。
【実施例3】
【0039】
図6に一対の起立隔壁22a,22bの延出長を互いに異ならせてた他の実施例を示す。
本実施例のように一対の起立隔壁22a,22bの延出長を変えると、各起立隔壁22a,22bで画成される各側方水路24a,24bの貯留量が異なるだけでなく、向心路23を通じて集水される水量に応じて、各側方水路24a,24bへ段階的に水を振り分けることができる。
【0040】
すなわち、向心路23を通じて上昇してくる水を延出長の短い起立隔壁22a側(図面の右方)の側方水路24aに優先的に貯留し、側方水路24aが満水を越えて大量の水が上昇したときにはじめて延出長の長い起立隔壁22b側(図面の左方)の側方水路24bへ水を貯留することができる。
【実施例4】
【0041】
以上は地中に埋設した集水管10を使用して、地中の水を集水して外部へ排水する場合について説明したが、反対に外部から集水管10内へ供給した水を地中へ浸透する用途に使用することも可能である。
集水管10から地中へ浸透させるときの水の流れは、既述した実施例1の逆方向となるだけであるから、その詳しい説明を省略する。
【符号の説明】
【0042】
10・・・集水管
20・・・管本体
22・・・起立隔壁
23・・・向心路
24・・・側方水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯と平行にスリットを形成した管本体と、
該管本体のスリットの両側縁から管本体の内側へ向けて延出した一対の起立隔壁とを具備し、
前記一対の起立隔壁の間に管本体の内部空間と管外とを連通する帯状の向心路を形成し、
前記各起立隔壁と管本体との周面間に、前記向心路と連通した側方水路を画成して構成する、
集水管。
【請求項2】
請求項1において、前記一対の起立隔壁を管本体の全長に亘って形成した、集水管。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記向心路の入口にフィルタ機能と補強機能を有する有孔蓋を設置した、集水管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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