説明

雌コネクタとコネクタ接続構造

【課題】コンタクトの配列方向の幅を細幅として狭ピッチで配列するコンタクトであっても、雄コネクタの固定接触部に充分な接触圧で弾性接触し、接続が安定する雌コネクタとコネクタ接続構造を提供する。
【解決手段】コンタクトの固定梁部の両端を絶縁ハウジングに固定し、固定梁部の挿入凹部に臨む可動接触部を、挿入凹部に挿入される雄コネクタのインサート板部の対向部位に形成された固定接触部に弾性接触させ、細幅のコンタクトであっても、両端を固定させた固定接触部による充分大きい接触圧で接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭ピッチで固定接触部が形成された雄コネクタに接続する雌コネクタと、狭ピッチに配列された雄コネクタの固定接触部と雌コネクタの可動接触部が接続するコネクタ接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多極化と小型化が望まれるコネクタでは、絶縁ハウジングに取り付けられる複数のコンタクトの配列方向のピッチを狭ピッチ化するために、導電性金属板を細幅に打ち抜いて形成した各コンタクトを絶縁ハウジングに片持ち支持し、打ち抜き方向にコンタクトを撓ませて雄コネクタの固定接触部へ弾性接触させている。しかしながら、打ち抜き幅が1mm未満の細幅のコンタクトとなると、弾性接触する際の撓み量に対して所定の弾性が得られず、充分な接触圧が得られないことから、接続が不安定になるものであった。
【0003】
そこで、従来、狭ピッチで多数のコンタクトを配列する必要のある雌コネクタでは、導電性金属板を打ち抜いて形成したコンタクトを、打ち抜き方向と直交する方向へ撓むように絶縁ハウジングへ支持し、撓み方向についての断面二次モーメントを増加させ、より大きい曲げ応力を発生させ、充分な接触圧で雄コネクタの固定接触部と弾性接触させている(特許文献1)。
【0004】
この従来の雌コネクタ100を、図9で説明すると、雌コネクタ100は、プリント配線基板101上に実装される絶縁ハウジング102と、この絶縁ハウジング102内に鉛直面(紙面と平行な面)に沿って位置決め固定される複数のコンタクト103と、絶縁ハウジング102に着脱自在に取り付けられるスライダー104とから構成されている。
【0005】
各コンタクト103は、導電性金属板を打ち抜き、絶縁ハウジング102の挿入凹部102aに臨む可動接触部103aと、プリント配線基板103上の回路パターンに半田接続される脚部103bとを一体に形成している。複数のコンタクト103は、挿入凹部102aに挿入されるフレキシブルフラットケーブル(以下、FPCという)110の端末リード部(固定接触部)に合わせて、互いに平行で、紙面と直交する配列方向に沿って絶縁ハウジング102に固定される。
【0006】
このように、各コンタクト103は、打ち抜いた導電性金属板を曲げ加工せずにそのまま残して、打ち抜き方向と直交する方向で弾性変形するように絶縁ハウジング102内に支持されるので、可動接触部103aは、挿入凹部102aに挿入されるFPC110の端末リード部に大きな接触圧で弾性接触する。また、各コンタクト103の配列方向の幅は、導電性金属板の厚みであるので、狭ピッチで配列されるFPC110の端末リード部に一致させて、絶縁ハウジング102に狭ピッチで配列させることができる。
【0007】
一方、このように個々のコンタクト103の接触圧を増加させた雌コネクタ100の挿入凹部102aへ、雄コネクタに相当するFPC110やフレキシブルプリント回路基板(以下、FFCという)を挿入して接続する場合には、多数のコンタクト103から接触圧を受けるので、挿入力が大きく、可撓性のFPC110やFFCをそのまま挿入して接続することができない。そこで、FPC110やFFC等の可撓性の雄コネクタと接続する雌コネクタ100では、雄コネクタを挿入凹部102aへ挿入させる際に、スライダー104を挿入凹部102aから後退させて所定の隙間をあけ、挿入後にスライダー104を挿入凹部102aへ前進させて、所定の接触圧で接続させるZIF(ゼロインサートフォース)構造を採用している。
【0008】
【特許文献1】特開2000−223190号公報(明細書の項目0009、項目0016乃至0017、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年のプラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルを表示駆動させる為の電極は、電極間のピッチが0.2mmピッチ前後と超狭ピッチであり、これらの電極を固定接触部として接続し、若しくはこれらの電極から引き出されるFPCの端末リード部に接続する雌コネクタ側のコンタクトも同様に超狭ピッチで配列する必要が生じた。
【0010】
従来の雌コネクタ100の構成によれば、コンタクト103の配列方向幅を導電性金属板の厚さをとすることができるので、ある程度の狭ピッチ化が可能であるが、上記0.2mmピッチ前後でコンタクトを配列させようとして、コンタクトを0.1mm前後の薄肉導電性金属板から打ち抜いて形成すると、雄コネクタを挿入して接続する際に、コンタクトの板状の平面が湾曲して平面方向以外に塑性変形し、弾性接触するコンタクトとして機能しなくなる恐れがあった。
【0011】
また、導電性金属板を細幅に打ち抜き、打ち抜き方向に撓ませるコンタクトを形成する場合にも、導電性金属板の厚みに対して打ち抜くことが可能な幅に限界があるので、超狭ピッチ化して配列する0.1mm前後の微小幅のコンタクトは、薄肉の導電性金属板から打ち抜くこととなり、上述のように、充分な接触圧が得られないものであった。従って、従来のいずれの方法で形成したコンタクトも、超狭ピッチで配列するコンタクトには適せず、ディスプレイパネルなどから引き出される超狭ピッチで配列された電極との接続は、一度電極のピッチを拡大させてから雌コネクタに接続させる必要があった。
【0012】
また、可撓性のFPC110やFFC等の端末リード部にコンタクトを接続する雌コネクタでは、絶縁ハウジング102に対して可動するスライダー104を設けたZIF構造とする必要があり、接続にスライダー104を操作する余分な工程が必要になるとともに、構造が複雑で、コネクタ全体も大型化する問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、絶縁ハウジングに狭ピッチで配列するために、各コンタクトの配列方向の幅を細幅としても、雄コネクタの固定接触部に充分な接触圧で弾性接触し、接続が安定する雌コネクタとコネクタ接続構造を提供することを目的とする。
【0014】
また、ZIF構造を採用せずに、可撓性のFFCやFFCと接続するコネクタ接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1の雌コネクタは、絶縁ハウジングと、絶縁ハウジングに固定され、絶縁ハウジングとの間に雄コネクタのインサート板部を挿入する挿入凹部が形成されるシェルと、それぞれが細長帯状に形成され、細長帯状の中間の可動接触部を挿入凹部に臨ませて、雄コネクタの挿入方向と平行に絶縁ハウジングに取り付けられる複数のコンタクトとを備え、各コンタクトの可動接触部が、シェルとの間に挟持されるインサート板部の対向部位に形成された固定接触部に弾性接触し、雄コネクタの固定接触部とコンタクトが電気接続する雌コネクタであって、
各コンタクトは、長手方向の異なる2カ所の第1固定部及び第2固定部を絶縁ハウジングに固着して取り付けられ、第1固定部と第2固定部で両端が固定された固定梁部は、挿入凹部側に屈曲し、固定梁部の挿入凹部に臨む部位が可動接触部となっていることを特徴とする。
【0016】
挿入凹部に雄コネクタのインサート板部を挿入すると、インサート板部の固定接触部が対向する部位で挿入凹部に臨む可動接触部に当接し、挿入凹部側に屈曲する固定梁部を、屈曲方向と逆方向へ撓ませる。固定梁部の両端は、第1固定部及び第2固定部で絶縁ハウジングに固定されているので、固定梁部内には曲げ応力とともに軸方向応力が発生し、横断面積が小さいコンタクトであっても、インサート板部に対して大きな反力が生じる。従って、狭ピッチ化するために、薄肉の導電性金属板を細幅に打ち抜いて横断面積を小さくしたコンタクトを用いても、コンタクトの可動接触部は、インサート板部の固定接触部と充分な接触圧で接触する。
【0017】
請求項2の雌コネクタは、挿入凹部に挿入されるインサート板部が当接する可動接触部の当接部位は、雄コネクタの挿入方向に対して緩やかに傾斜するように、固定梁部が屈曲していることを特徴とする。
【0018】
挿入凹部に挿入されるインサート板部は、挿入方向に対して緩やかに傾斜する可動接触部に当接するので、コンタクトの固定梁部に発生する曲げ応力が小さく、曲げ方向の撓み量が小さいので、塑性変形することがなく、疲労しにくい。
【0019】
請求項3のコネクタ接続構造は、表面に狭ピッチで複数の固定接触部が形成されたセラミック基板を備えた雄コネクタと、絶縁ハウジングと、絶縁ハウジングに固定され、絶縁ハウジングとの間に雄コネクタのセラミック基板を挿入する挿入凹部が形成されるシェルと、それぞれが細長帯状に形成され、細長帯状の中間の可動接触部を挿入凹部に臨ませて、雄コネクタの挿入方向と平行に絶縁ハウジングに取り付けられる複数のコンタクトとを備えた雌コネクタとからなり、雄コネクタのセラミック基板を雌コネクタの挿入凹部へ挿入した際に、各コンタクトの可動接触部が、シェルとの間に挟持されるセラミック基板の対向部位に形成された固定接触部に弾性接触し、雄コネクタの固定接触部と雌コネクタのコンタクトが電気接続するコネクタ接続構造であって、
雌コネクタの各コンタクトは、長手方向の異なる2カ所の第1固定部及び第2固定部を絶縁ハウジングに固着して取り付けられ、第1固定部と第2固定部で両端が固定された固定梁部は、挿入凹部側に屈曲し、固定梁部の挿入凹部に臨む部位が雄コネクタの固定接触部に弾性接触する可動接触部となっていることを特徴とする。
【0020】
挿入凹部に雄コネクタのセラミック基板を挿入すると、セラミック基板の固定接触部が対向する部位で挿入凹部に臨む可動接触部に当接し、挿入凹部側に屈曲する固定梁部を、屈曲方向と逆方向へ撓ませる。固定梁部の両端は、第1固定部及び第2固定部で絶縁ハウジングに固定されているので、固定梁部内には曲げ応力とともに軸方向応力が発生し、横断面積が小さいコンタクトであっても、セラミック基板に対して大きな反力が生じる。従って、狭ピッチ化するために、薄肉の導電性金属板を細幅に打ち抜いて横断面積を小さくしたコンタクトを用いても、コンタクトの可動接触部は、セラミック基板の固定接触部に所定の接触圧で接触する。
【0021】
請求項4のコネクタ接続構造は、雄コネクタは、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末に接続するプラグであり、セラミック基板の表面上に各固定接触部から引き出される複数の導電パターンに、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末リード部がそれぞれ電気接続していることを特徴とする。
【0022】
挿入凹部に挿入され、複数のコンタクトに弾性接触するセラミック基板は、硬質の基板であるので、ZIF構造を設けずに、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルを雌コネクタに接続できる。
【0023】
請求項5のコネクタ接続構造は、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末リード部とセラミック基板の表面に形成された導電パターンとが、異方性導電接着剤により電気接続されることを特徴とする。
【0024】
セラミック基板の表面に形成される導電パターンと端末リード部が対向するように位置決めし、異方性導電接着剤を介して加熱、加圧する工程で、両者が電気接続される。セラミック基板は、耐熱性に優れ、熱膨張係数も小さいので、熱圧着工程において、セラミック基板は変形せず、導電パターンと端末リード部の位置ずれが生じることもない。
【0025】
請求項6のコネクタ接続構造は、前記挿入凹部に挿入される前記セラミック基板が当接する前記可動接触部の当接部位は、雄コネクタの挿入方向に対して緩やかに傾斜するように、固定梁部が屈曲していることを特徴とする。
【0026】
挿入凹部に挿入されるセラミック基板は、挿入方向に対して緩やかに傾斜する可動接触部に当接するので、コンタクトの固定梁部に発生する曲げ応力が小さく、曲げ方向の撓み量が小さいので、塑性変形することがなく、疲労しにくい。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明によれば、絶縁ハウジングに超狭ピッチでコンタクトを配列するために、コンタクトを薄肉の導電性金属板から細幅に打ち抜いて形成しても、コンタクトは、雄コネクタの固定接触部と充分に大きい接触圧で弾性接触するので、接触抵抗が低く、確実に電気接続する。
【0028】
従って、インサート板部に0.1mm程度の超狭ピッチで固定接触部が形成された雄コネクタに、固定接触部のピッチを拡大することなく、雌コネクタを接続して各コンタクトを電気接続させることができる。
【0029】
請求項2と請求項6の発明によれば、コンタクトが塑性変形することがなく、インサート板部やセラミック基板の挿抜を繰り返しても、コンタクトが疲労しにくく、耐久性を有するコンタクトとすることができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、絶縁ハウジングに超狭ピッチでコンタクトを配列するために、コンタクトを薄肉の導電性金属板から細幅に打ち抜いて形成しても、コンタクトは、雄コネクタの固定接触部と充分に大きい接触圧で弾性接触するので、接触抵抗が低く、確実に電気接続する。
【0031】
従って、セラミック基板上に超狭ピッチで固定接触部が形成された雄コネクタに対しても、そのピッチを拡大させることなく、雌コネクタを直接接続し、各コンタクトを固定接触部に確実に電気接続させることができる。
【0032】
請求項4の発明によれば、絶縁ハウジングに対して可動するスライダーを用いたZIF構造を採用することなく、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルを雌コネクタに接続できるので、雌コネクタの構造が小型、簡略化する。
【0033】
請求項5の発明によれば、狭ピッチで形成される固定接触部から導電パターンも狭ピッチで引き出される場合であっても、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末リード部をそれぞれ位置決めし、異方性導電接着剤を介して加熱、加圧する工程だけで、隣り合う導電パターンが短絡することなく、確実に全ての導電パターンを対向する端末リード部へ電気接続させることができる。
【0034】
また、セラミック基板は、耐熱性に優れ、熱膨張係数が小さいので、導電パターンと端末リード部との接続に、加熱工程を要する異方性導電接着剤を用いることができる。更に、導電パターンと端末リード部との接続部を再加熱して、不要となったフレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルを取り除くことができるので、雌コネクタとの接続に適合するセラミック基板を交換することなく、他のレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルに交換することかできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係るソケット1と、ソケット1にFPC110の端末に接続したプラグ2を接続するコネクタ接続構造とを、図2において上下方向を上下方向と、右方を前方と、左方を後方として、図1乃至図8を用いて説明する。
【0036】
本実施の形態において、雌コネクタに相当するソケット1は、絶縁ハウジング3と、絶縁ハウジング3の平面側(上面側)を覆うシェル4と、絶縁ハウジング3に一体に支持される複数のコンタクト8、9とからなっている。絶縁ハウジング3は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性のある絶縁プラスチック材料を用いて、長方形枠体31と長方形枠体31の長手方向両側に立設される一対の側壁32、32とを一体に成型してなるもので、長方形枠体31により囲われる直方体状の中空空間は、コンタクト8、9の後述する固定梁部81、91を可動自在に収容するコンタクト収容室5となっている。側壁32の高さは、プラグ2の後述するセラミック基板21の高さよりわずかに高く、一対の側壁32、32間の間隔は、セラミック基板21の長手方向幅よりわずかに長く、これにより側壁32、32間に架け渡されるシェル4と長方形枠体31との間に、セラミック基板21を遊嵌させる挿入凹部6が形成される。
【0037】
シェル4は、導電性金属板を細長帯状に打ち抜いて形成され、その長手方向の両側が絶縁ハウジング3の側壁32、32に沿って下向きU字状に折り返され、絶縁ハウジング3に固定されている。前述したように、絶縁ハウジング3に固定された状態で、挿入凹部6の上方を覆うシェル4の押圧板部41と長方形枠体31との隙間は、プラグ2のセラミック基板21の厚みとほぼ同一であるので、セラミック基板21上に固着されるFPC110の端末接続部110aとの干渉を避けるため、シェル4の押圧板部41の後方側は、長手方向に沿った長方形状に切り欠かれている。また、押圧板部41の前端は、挿入凹部6の開口する前面を覆うように、下方に向けて直角に折り曲げられ、挿入凹部6の前面側を覆っている。
【0038】
複数のコンタクト8、9は、絶縁ハウジング3の成型の際に、長方形枠体31に一体に成型することにより、絶縁ハウジング3に固定される。ここでは、コンタクト8、9を絶縁ハウジング3の長手方向に沿って0.1mmピッチで配列するために、それぞれ0.2mmピッチで配列させたコンタクト8とコンタクト9が千鳥状に配列され、図2、図4に示すように、各コンタクト8の脚部84が絶縁ハウジング3から後方に、各コンタクト9の脚部94が絶縁ハウジング3から前方に突出した状態で固定されている。
【0039】
各コンタクト8は、燐青銅などバネ性のある導電性金属板で厚さ0.1mm以下の薄肉の金属板を数100μmの細幅に打ち抜き、複数のコンタクト8をフープ材で一体に連結したまま、図2に示すように、先端の第1固定部82と中間の第2固定部83とを曲げ加工を行わずに同一平面上に残した状態で、その間の固定梁部81を上方に山形に折り曲げ、更に、第2固定部83、93の基端側を下方にクランク状に折り曲げて、脚部84としている。
【0040】
また、各コンタクト9も、同じ導電性金属板をコンタクト8と同幅に打ち抜いて、それぞれ複数のコンタクト9をフープ材で一体に連結したまま、コンタクト8と同様の曲げ加工を行い、先端側から第1固定部92、山形の固定梁部91、第2固定部93、及びクランク状の脚部94を形成している。
【0041】
このようにプレス曲げ加工された各コンタクト8、9は、それぞれ基端側(脚部84、94側)をフープ材に一体に連結させた状態で、第1固定部82、92の先端が切断され、絶縁ハウジング3の成型の際に、長方形枠体31の後方側枠部にコンタクト8の第2固定部83とコンタクト9の第1固定部92とが、前方側枠部にコンタクト8の第1固定部82とコンタクト9の第2固定部93とがインサート成型される。従って、各コンタクト8、9の固定梁部81、91は、両端が拘束された状態で打ちぬき方向に撓むように絶縁ハウジング3に支持される。
【0042】
絶縁ハウジング3に一体に固定された複数のコンタクト8と複数のコンタクト9は、図2に示すように、隣り合うコンタクト8、9間の絶縁距離を確保する為に、コンタクト8の第1固定部82と第2固定部83が、コンタクト9の第1固定部92と第2固定部93より下方の位置で長方形枠体31に固定されている。しかしながら、折り曲げ加工した固定梁部81と固定梁部91の前後方向に対する勾配を変えることによって、挿入凹部6内に臨む各可動接触部85、95の頂点Pを同一高さとしている。
【0043】
つまり、下方側に配置されるコンタクト8の固定梁部81の前後方向に対する傾斜はコンタクト9の固定梁部91より急となるが、第2固定部83から頂点Pに向かう固定梁部81の傾斜は、前後方向に対して少なくとも30度以下の緩やかな傾斜となるように曲げ加工される。このように挿入凹部6に挿入されるプラグ2のセラミック基板21が当接する山形の固定梁部81、91の部位の傾斜を、緩やかな傾斜とすることによって、前方に挿入されるセラミック基板21から固定梁部81、91が受ける曲げ方向(軸方向と直交する方向)の撓み量は小さく、その結果、塑性変形が発生することがなく、曲げ方向の小さい撓み量であっても、両端が固定されていることから大きな反力を発生させる。一方、固定梁部81、91の傾斜を、前後方向に対して30度以上の急傾斜とすると、セラミック基板21の挿入力から受ける固定梁部81、91の曲げ方向の分力が大きくなり、摩擦力が増大するとともに、曲げ方向の撓み量が大きく、例えば、山形に屈曲された固定梁部81、91が更に曲げ方向に撓み、塑性変形する恐れが生じ、プラグとの接続を繰り返すコンタクトとして機能しなくなる。
【0044】
フープ材に一体に連結させた状態で、絶縁ハウジング3に一体成形されたコンタクト8、9は、後方から突出する各コンタクト8の脚部84と、前方から突出する各コンタクト9の脚部94の各端部で、それぞれ一体に連結されたフープ材を切断し、コンタクト8、9の絶縁ハウジング3への取り付けが完了する。
【0045】
このようにして構成されたソケット1は、各コンタクト8、9の脚部84、94と、絶縁ハウジング3の側壁32、32に沿って下方に折り返されたシェル4の端部を、それぞれプリント配線基板30の表面で対応部位に露出するランドパターンへ半田接続し、各コンタクト8、9が対応する回路パターンに電気接続されるとともに、絶縁ハウジング3が位置決め固定された状態でプリント配線基板30上に実装される。
【0046】
雄コネクタとなるプラグ2は、ガラス系セラミック材、アルミナ系セラミック材等から図7、図8に示すように細長板状に形成されたセラミック基板21と、その底面に銅、銀などの導体で前後方向に沿って形成された複数の固定接触部22と、固定接触部22と同一の導電材料で、各固定接触部22の後方からセラミック基板21の表面側に引き出された複数の導電パターン23とで構成される。
【0047】
セラミック基板21のやや肉厚となった前部は、ソケット1の挿入凹部6へ挿入するインサート板部21aであり、挿入凹部6へ遊嵌する外形となっているが、長手方向幅は、絶縁ハウジング3の側壁32、32間の幅に少なくとも0.05mm未満の精度で一致し、固定接触部22とコンタクト8、9が位置ずれすることなく、正確に接触するようになっている。
【0048】
また、セラミック基板21の後部の平面側には、FPC110の端末接続部110aを配置する凹部21bが形成され、その凹部21bに複数の導電パターン23が配線される。セラミック基板21の後端で両側に張り出した突部は、プラグ2を手に持つ為の把持部24である。
【0049】
複数の固定接触部22は、ソケット1の長手方向に沿って0.1mmピッチで配置される複数のコンタクト8、9に各固定接触部22が対向して接触するようにセラミック基板21の長手方向に沿って、0.1mmピッチで形成される。本実施の形態では、固定接触部22と導電パターン23を同一の導電材料で同幅に形成するので、セラミック基板21の底面から平面の凹部21bにかけて、0.1mmピッチで多数の細幅導電路を形成しておき、そのうち、底面側に露出する部位を固定接触部22と、平面の凹部21bまで引き出される部位を導電パターン23として、同一工程で形成している。
【0050】
従って、セラミック基板21の凹部21bにも、長手方向で0.1mmピッチの導電パターン23が露出し、この凹部21b上に露出する複数の導電パターン23へ、同ピッチで配線されたFPC110の端末リード部110bをそれぞれ電気接続する。両者の接続は、光学的治具を用いて、各導電パターン23と端末リード部110bとが対向するようにパターン合わせを行った後、端末リード部110bが露出するFPC110の端末接続部110aとセラミック基板21の凹部21b間を、異方性導電接着剤を介して、加熱、加圧する熱圧着工程で行う。この接続工程によって、FPC110の端末接続部110aにプラグ2が接続され、複数の端末リード部110bが個々に導電パターン23を介して固定接触部22に電気接続する。
【0051】
上述のように構成されたプラグ2をソケット1へ接続する際には、図2に示すように、プラグ2の一対の把持部24を指で挟みながら、インサート板部21aをソケット1の挿入凹部6内へ挿入する。挿入凹部6内に挿入されるインサート板部21aは、挿入凹部6内に突出するコンタクト8、9の可動接触部85、95に当接し、前方への挿入に伴って可動接触部85、95をコンタクト収容室5の方向へ押し込む。
【0052】
プラグ2のインサート板部21aをソケット1の挿入凹部6へ完全に挿入させた図3に示す状態で、コンタクト収容室5の方向へ押し込まれる可動接触部85、95の撓み量はわずかであるが、両端が第1固定部82、92と第2固定部83、93で絶縁ハウジング3に固着されているので、プラグ2の複数の導電パターン23と、対向するコンタクト8、9の可動接触部85、95と高い接触圧で接触し、FPC110の各端末リード部110bと対応するコンタクト8、9が電気接続する。
【0053】
FPC110は、可撓性材料で形成されるが、硬質のセラミック基板21を介して多数のコンタクト8、9に接続するので、ZIF構造を採用しないソケット1に対してFPC110の端末を接続できる。また、導電パターン23は耐熱性に優れたセラミック基板21上に配線されているので、0.1mmピッチの狭ピッチで配線される導電パターン23と端末リード部110b間の接続に、熱圧着工程を要する異方性導電接着剤を用いることができる。更に、ソケット1とプラグ2の接続構造を変えることなく、セラミック基板2とFPC110の端末接続部110aを加熱してFPC110を取り外し、他のFPCやFFCへ交換することもできる。
【0054】
上述の実施の形態では、金属板からなるシェル4を絶縁ハウジング3に一体に固定し、挿入凹部6を形成しているのが、シェル4を絶縁ハウジング3と一体に成形し、絶縁ハウジング6自体で挿入凹部6を形成してもよい。
【0055】
また、セラミック基板21を有するプラグ2は、FPC110以外にレキシブルフラットケーブル(FFC)の端末に接続するものでもよく、更に、セラミック基板21を、チップ部品を搭載したり、導電パターン23をリードフレームとしてワイヤボンディングなどで接続する半導体のベアチップを搭載するセラミック基板とし、ソケット1に対して接続するプラグ2としてもよい。
【0056】
更に、上述の実施の形態では、ソケット1に2種類のコンタクト8、9を取り付けているが、1種類のコンタクトを狭ピッチで取り付けるソケットであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、狭ピッチで固定接触部が配線されるプラグと接続するソケットに適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態に係るソケット1とプラグ2のコネクタ接続構造を示す斜視図である。
【図2】プラグ2をソケット1へ接続する状態を示す縦断面図である。
【図3】プラグ2をソケット1へ接続した状態を示す縦断面図である。
【図4】ソケット1の平面図である。
【図5】ソケット1の背面側斜視図である。
【図6】ソケット1の底面側斜視図である。
【図7】プラグ2の平面図である。
【図8】プラグ2の底面側斜視図である。
【図9】従来の雌コネクタ100へFPC110を接続する状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ソケット(雌コネクタ)
2 プラグ(雄コネクタ)
3 絶縁ハウジング
4 シェル
6 挿入凹部
85 可動接触部
95 可動接触部
8 コンタクト
81 固定梁部
82 第1固定部
83 第2固定部
9 コンタクト
91 固定梁部
92 第1固定部
93 第2固定部
21 セラミック基板
21a インサート板部
22 固定接触部
23 導電パターン
110 フレキシブルプリント回路基板(FPC)
110b 端末リード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ハウジングと、
前記絶縁ハウジングに固定され、絶縁ハウジングとの間に雄コネクタのインサート板部を挿入する挿入凹部が形成されるシェルと、
それぞれが細長帯状に形成され、細長帯状の中間の可動接触部を挿入凹部に臨ませて、雄コネクタの挿入方向と平行に前記絶縁ハウジングに取り付けられる複数のコンタクトとを備え、
各コンタクトの前記可動接触部が、シェルとの間に挟持される前記インサート板部の対向部位に形成された固定接触部に弾性接触し、雄コネクタの固定接触部とコンタクトが電気接続する雌コネクタであって、
各コンタクトは、長手方向の異なる2カ所の第1固定部及び第2固定部を前記絶縁ハウジングに固着して取り付けられ、
第1固定部と第2固定部で両端が固定された固定梁部は、挿入凹部側に屈曲し、固定梁部の挿入凹部に臨む部位が可動接触部となっていることを特徴とする雌コネクタ。
【請求項2】
前記挿入凹部に挿入される前記インサート板部が当接する前記可動接触部の当接部位は、雄コネクタの挿入方向に対して緩やかに傾斜するように、固定梁部が屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の雌コネクタ。
【請求項3】
表面に狭ピッチで複数の固定接触部が形成されたセラミック基板を備えた雄コネクタと、
絶縁ハウジングと、
前記絶縁ハウジングに固定され、絶縁ハウジングとの間に雄コネクタのセラミック基板を挿入する挿入凹部が形成されるシェルと、
それぞれが細長帯状に形成され、細長帯状の中間の可動接触部を挿入凹部に臨ませて、雄コネクタの挿入方向と平行に前記絶縁ハウジングに取り付けられる複数のコンタクトとを備えた雌コネクタとからなり、
雄コネクタのセラミック基板を雌コネクタの挿入凹部へ挿入した際に、各コンタクトの前記可動接触部が、シェルとの間に挟持される前記セラミック基板の対向部位に形成された固定接触部に弾性接触し、雄コネクタの固定接触部と雌コネクタのコンタクトが電気接続するコネクタ接続構造であって、
前記雌コネクタの各コンタクトは、長手方向の異なる2カ所の第1固定部及び第2固定部を前記絶縁ハウジングに固着して取り付けられ、
第1固定部と第2固定部で両端が固定された固定梁部は、挿入凹部側に屈曲し、固定梁部の挿入凹部に臨む部位が雄コネクタの固定接触部に弾性接触する可動接触部となっていることを特徴とするコネクタ接続構造。
【請求項4】
雄コネクタは、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末に接続するプラグであり、セラミック基板の表面上に各固定接触部から引き出される複数の導電パターンに、フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末リード部がそれぞれ電気接続していることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ接続構造。
【請求項5】
フレキシブルプリント回路基板若しくはフレキシブルフラットケーブルの端末リード部とセラミック基板の表面に形成された導電パターンとが、異方性導電接着剤により電気接続されることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ接続構造。
【請求項6】
前記挿入凹部に挿入される前記セラミック基板が当接する前記可動接触部の当接部位は、雄コネクタの挿入方向に対して緩やかに傾斜するように、固定梁部が屈曲していることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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