説明

離型フィルム用ポリエテルフィルム

【課題】 偏光板のクロスニコル法による検査において、高度な精度を実現できる離型フィルム用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも片面にカチオンポリマーを含む塗布層を有する延伸ポリエステルフィルムであり、当該塗布層の表面固有抵抗値が1×1013Ω以下であり、ポリエステルフィルム中に存在する粒子の平均粒径(d50)が0.2〜1.5μmの範囲であり、その粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする離型フィルム用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム用ポリエテルフィルムに関するものであり、詳しくは、液晶ディスプレイ用の偏光板などの検査における欠点検出の点で高度な精度を実現できる離型フィルム用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは、携帯電話などの各種携帯通信端末、パソコンモニター、液晶テレビなどの表示装置として、数多く用いられている。特に薄型テレビとしての液晶ディスプレイは、37インチ以上の大画面への展開もあり、爆発的とも言える需要の高まりを見せている。
【0003】
特に薄型テレビとしての液晶ディスプレイでは、明るい部屋における視認性を向上させることが、プラズマディスプレイとの競合関係上で極めて重要な要求特性である。この要求特性を向上させるために、液晶ディスプレイでは表示画面の輝度をより高くする傾向にある。ところでこのようないわゆる高輝度タイプの液晶ディスプレイでは、存在する小さな輝点が問題となる場合が多く、ディスプレイ中に組み込まれる偏光板などの構成部材において、これまでの低輝度タイプの液晶ディスプレイでは問題にならなかったような微少なサイズの異物が問題となっている。このため、製造工程における異物の混入を防ぐ一方で、万一異物が混入した場合であっても欠陥として確実に認知できるような検査精度の重要性もよりいっそう高まっている。
【0004】
偏光板は、ヨウ素や二色性色素などの偏光素子をポリビニルアルコール系フィルムに吸着配向せしめた偏光フィルムの表裏を、三酢酸セルロースなどのフィルムで被覆したものをコアとして、これの片面に粘着剤層が設け、さらにそのセパレーターとしての離型フィルムが貼り合わされ、反対面には傷つき防止などの目的で表面保護フィルムが貼り合わされた構成であることが多い。また、粘着剤層のセパレーターとしての離型フィルムには、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムを基材として、シリコーン樹脂などの離型層を塗布したものが一般によく用いられる。離型フィルムは、検査終了後には粘着剤層から剥がされて、偏光板を液晶セルのガラスパネルに貼り合わされる。
【0005】
偏光板の欠陥検査としては、クロスニコル法による目視検査が一般的であり、さらに例えば40インチ以上の大型TV用途に使用する偏光板等では、クロスニコル法を利用した自動異物検査機による検査も実施されつつある。このクロスニコル法は2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて消光状態とし、偏光板に異物や欠陥があれば、そこが輝点として現れるので、これを利用して欠陥検査ができるという方法である。実際の検査では、基準となる偏光板に対して、検査すべき偏光板を用いて消光状態として、輝点の有無を評価する。偏光板の検査では、粘着剤層の検査も併せて行われるため、必然的に離型フィルムも貼り合わされたままでの検査となり、積層された粘着剤層と離型フィルムはクロスニコル中に存在することとなる。このときたとえば離型フィルム由来の異物が存在した場合にも、それは輝点となるため、偏光板の欠陥かどうかが判別できなくなり、偏光板検査の精度が低下する結果となる。
【0006】
離型フィルム由来の光学的欠陥になるものには様々なものがあるが、この中で離型フィルムの帯電により引きつけられる塵や埃、および基材として用いられているポリエステルフィルムを加熱した時に湧出するオリゴマーに関しては、ポリエステルフィルム上に設けられた塗布膜によって、フィルムの帯電を防いたり、湧出するオリゴマーを低減したりすることを本発明者らは既に提案している。
【0007】
ところで、離型フィルムの基材となるポリエステルフィルムは、滑り性や巻き特性を確保するために粒子を添加して、表面に微細な突起を形成させることが一般的に行われている。このとき、適切な粒径と配合量を満足しなければ、所望の滑り性を確保できなかったり、巻き特性が悪化したりする結果、生産性の悪化を招いてしまう。しかしながら、添加した粒子が原因で、これが輝点となり、異物検査工程で支障をきたすことが問題点として注目されている。
【特許文献1】特開2003−237005号公報
【特許文献2】特開2004−177718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、偏光板のクロスニコル法による検査において、高度な精度を実現できる離型フィルム用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、優れたフィルム特性を損なうことなく、離型フィルム用ポリエステルフィルムに特に好適であるポリエステルフィルムを提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも片面にカチオンポリマーを含む塗布層を有する延伸ポリエステルフィルムであり、当該塗布層の表面固有抵抗値が1×1013Ω以下であり、ポリエステルフィルム中に存在する粒子の平均粒径(d50)が0.2〜1.5μmの範囲であり、その粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする離型フィルム用ポリエステルフィルムに存する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で言う延伸ポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理を施したフィルムであり、好ましくは、長手方向および幅方向に二軸延伸した後、熱処理を施したフィルムである。
【0012】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。
【0013】
かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
上記のポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレートを構成成分としたもの、あるいはその共重合ポリエステルを用いたフィルムが、基材フィルムとしての特性とコストとのバランスの点で好適である。
【0015】
本発明で使用するポリエステルの固有粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45から0.80、さらに好ましくは0.50〜0.75の範囲である。固有粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向にあり、固有粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、溶融押出工程での負荷が大きく、生産性が低下する傾向にある。
【0016】
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、必要に応じてさらに加熱減圧下または窒素等不活性気流中にて固相重合を施してもよい。この際に得られるポリエステルの固有粘度は0.45〜0.90dl/gであることが好ましい。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムにおいては、通常のオリゴマー含有量のポリエステルからなる層の少なくとも片側の表面に、かかるオリゴマー含有量の少ないポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、かかる構造を有する場合、本発明で得られる離型フィルム用ポリエステルフィルムにおいて、オリゴマー析出による輝点を防止する効果が得られ、特に好ましい。
【0018】
本発明で得られるポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムは、滑り性や巻き特性を確保するために粒子添加して、フィルム表面に微細な突起を形成させる。かかる目的でポリエステルフィルム中に配合する粒子としては、たとえば酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化チタンなどの無機微粒子、あるいは架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの架橋高分子微粒子等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。そしてその含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.8重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面に形成する突起の数が不足して、フィルム製造工程における表面のキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれることがある。
【0020】
本発明においては、ポリエステルフィルム中に含有される粒子の平均粒径は、0.2〜1.5μmの範囲であることが必要であり、好ましくは0.3〜1.3μmの範囲である。平均粒径が0.2μm未満の場合には、フィルム表面に形成する突起高さが不十分になるため、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。平均粒径が1.5μmを超える場合には、偏光板離型用フィルムとして用いられた場合、輝点となり異物検査に支障を来す恐れがある。
【0021】
また、用いられる粒子の粒度分布はシャープであることが必要である。具体的には、粒度分布のシャープさを表す指標である粒度分布値が1.0〜2.0である必要があり、さらには1.1〜1.8のものが好ましい。なお、ここで粒度分布値とは、粒度分布値d25/d75(d25、d75は粒子群の積算体積を大粒子側から計算し、それぞれ総体積の25%、75%に相当する粒径(μm)を示す)により定義される値である。粒度分布値が2.0を超える場合、粗大粒子が輝点となり、同様に異物検査に支障を来す。
【0022】
一方、フィルムの透明性を向上させるため、2層以上の積層フィルムとして、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか一層であり、フィルムが3層以上の場合には表裏両層に粒子を配合することもできる。またこの場合、フィルム製膜工程における製品にならなかったフィルムの一部あるいは全部を中間層原料として再使用することも可能である。
【0023】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムは、主配向方向と幅方向とのなす角度を配向角とし、この変動が小さいことが好ましい。具体的には、フィルム面内における縦・横500mm間隔の測定点で配向角を測定し、これと縦・横の隣り合う測定点の配向角との差を特定範囲で調べ、最も大きい配向角の差を配向角の変動(角度/500mm)とする。この配向角の変動は、3度/500mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2度/500mm以下である。配向角の変動が3度/500mmを超える場合には、偏光板を検査する際に偏光板の位置により透過光強度が変動し、偏光板の安定した検査の障害となり、好ましくない。
【0025】
本発明におけるポリエステルフィルムは、主配向軸に対して、フィルム面内方向における直角方向の屈折率(nβ)が1.640以下であることが好ましく、1.630以下であることがさらに好ましい。1.640を超える場合には、フィルムの配向角の変動が大きくなる傾向にあり、偏光板の安定した検査の障害となるばかりか、粒子のボイド形成が顕著になり、偏光板検査の際に輝点となって見えやすく、検査の障害となる場合がある。
【0026】
本発明のフィルムの厚みは、延伸フィルムとして製膜可能な範囲で有れば特に限定されるものではないが、通常4〜100μm、好ましくは10〜75μmの範囲である。
【0027】
本発明におけるポリエステルフィルムは、少なくとも片面にカチオンポリマーを含む塗布層を有しており、当該塗布層の表面固有抵抗値が1×1013Ω以下であることが必要である。
【0028】
本発明においては、塗布層中に用いる帯電防止剤としてカチオンポリマーを用いる。低分子の帯電防止剤では、フィルムを巻き取った時に接触する面に帯電防止剤が転着し易い欠点があるため、好ましくない。また高分子帯電防止剤のなかでは、ノニオンポリマーは概して帯電防止性能が不足することが多く、好ましくない。アニオンポリマーの帯電防止剤では、例えばポリスチレンスルホン酸のように強い酸性であり、取り扱い性に難点があり、その中和塩の場合には、後述するインラインコート法による塗布・延伸時に、塗膜が白化し易い欠点があるため、やはり好ましくない。これに対してカチオンポリマーは、帯電防止性能に優れていて、しかも取り扱い性の点や延伸時の白化が少ない点で良好であるため、本発明では好ましく用いられる。
【0029】
本発明で用いる塗布層中のカチオンポリマーは、4級化された窒素を含むユニットを繰り返し単位として含有するポリマーであるが、特に(1)または(2)式で示される主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーであることが、優れた帯電防止性能が得られる点で好ましい。またこれらは、塗布層へのカチオンポリマーの配合量を減らしても、帯電防止性能の低下が少ないため、後述する架橋剤やポリビニルアルコールなどの他の成分の配合量を増やすことができる点で有利である。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
上記(1)式あるいは(2)式の構造において、R1、R2は通常炭素数が1〜4のアルキル基もしくは水素であり、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。またR1、R2のアルキル基は、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基で置換されていてもよい。さらに、R1とR2とが化学的に結合していて、環構造を有するものであってもよい。また(1)式あるいは(2)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンである。
【0033】
上述の、主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの中でも、特に(1)式の構造で、Xが塩素イオンである場合には、帯電防止性能が優れると同時に、帯電防止性能の湿度依存性が小さく、低湿度下でも帯電防止性能の低下が少なくなる点で好ましい。
【0034】
(1)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、次の(3)式で示されるジアリルアンモニウム塩を単量体として、水を主とする媒体中で、ラジカル重合で閉環させながら重合することで得られる。また、(2)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、(3)式の単量体を、二酸化硫黄を媒体とする系で環化重合させることにより得られる。
【0035】
【化3】

【0036】
また、(1)式または(2)式に示すユニットを繰り返し単位とするポリマーは、単一のユニットから構成されるホモポリマーである場合が、より良好な帯電防止性能を得ることができるが、後述するように、カチオンポリマーを含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布した後に、さらにポリエステルフィルムを延伸する場合に、塗布層の透明性を改善するために、(1)式または(2)式で示されるユニットの0.1〜50モル%が、共重合可能な他の成分で置き換えられてもよい。
【0037】
共重合成分として用いる単量体成分としては、(3)式のジアリルアンモニウム塩と共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を1種あるいは2種以上を選ぶことができる。
【0038】
これらは具体的には、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N, N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、マレイン酸およびその塩あるいは無水マレイン酸、フマル酸およびその塩あるいは無水フマル酸、モノアリルアミンおよびその4級化物、アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
塗布層中に含むカチオンポリマーは、上記(1)または(2)式で示される主鎖にピロリジニウム環を繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの他に、例えば(4)式または(5)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーであってもよい。
【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
(4)式あるいは(5)式の構造において、R3、R8はそれぞれ水素またはメチル基であり、R4、R9はそれぞれが通常炭素数が2〜6のアルキル基である。またR5、R6、R7、R10、R11、R12はメチル基あるいはヒドロキシエチル基もしくは水素であり、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。さらに(4)式あるいは(5)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンである。
【0043】
(4)式あるいは(5)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーは、例えば、それぞれのユニットが対応するアクリル酸モノマーまたはメタクリル酸モノマーを、水を主とする媒体中でラジカル重合することで得ることができるが、これに限定されるわけではない。
【0044】
本発明で用いる塗布層中のカチオンポリマーの平均分子量(数平均分子量)は、通常1000〜500000、さらには5000〜100000の範囲であることが好ましい。平均分子量が1000未満であると、フィルムを巻き取った時に重なり合う面にカチオンポリマーが転着したり、ブロッキングしたりするなどの原因となり、逆に平均分子量が500000を超えると、これを含む塗布液の粘度が高くなり、フィルム面に均一に塗布することが困難となる。
【0045】
本発明におけるポリエステルフィルムは、カチオンポリマーを含む塗布層中にバインダーポリマーを添加し、塗布層の耐久性や造膜性、接着性、あるいはオリゴマー封止性を付与することが好ましい。このバインダーポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ポリアクリレートなどが挙げられるが、これらの中でも、ポリビニルアルコールを用いた場合には、塗布層の造膜性やオリゴマー封止性が向上するため、特に好ましい。
【0046】
塗布層のオリゴマー封止性の特性としては、150℃で10分間の加熱処理後に、塗布層表面から抽出されるオリゴマー量が0.3mg/m以下であることが好ましい。
【0047】
この他に、カチオンポリマーを含む塗布層中には、塗布層の耐熱性接着性や耐溶剤性、耐ブロッキング性などの向上を目的として、架橋剤を添加することができる。この架橋剤には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物、尿素系化合物、アクリルアミド系化合物、あるいはエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、ジルコニウム化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが好ましい。
【0048】
上記の他に、カチオンポリマーを含む塗布層中に微粒子や界面活性剤を添加することもできる。添加する微粒子としては、塗布層表面の滑り性の付与や耐ブロッキング性の向上を目的として、酸化ケイ素、アルミナ、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などといった無機や有機の微粒子や、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物微粒子、アンチモン−スズ複合酸化物微粒子などの導電性微粒子から選ばれた少なくとも1種を含有させることができる。また界面活性剤には、塗布液のヌレ性の改善を目的に、アセチレグリコールのアルキレンオキサイド付加重合物などのノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができ、塗布層が延伸される工程での塗布層の透明性の維持を目的として、グリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物、あるいはポリグリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物などを好ましく用いることができる。
【0049】
本発明におけるポリエステルフィルムは、カチオンポリマーを含む塗布層を構成する組成、すなわちカチオンポリマー、バインダー、架橋剤、微粒子、界面活性剤の量比は、その選択される化合物によって最適値が異なるため特に規定するものではないが、塗布層表面に帯電防止性能を付与するために、カチオンポリマーの含有割合は、通常5%以上、好ましくは10〜80%の範囲とするのが好ましい。
【0050】
上記で説明したカチオンポリマーを含む塗布層の表面固有抵抗値は1×1013Ω以下であることが必要であり、好ましくは1×1012Ω以下、さらに好ましくは1×1011Ω以下、最も好ましくは1×1010以下であり、下限は特に限定されないが、通常1×10Ωである。表面固有抵抗値が1×1013Ωを超える場合には、塗布ムラの発生表面には発生する静電気を有効に防ぐことができず、フィルム表面が帯電し易いために塵や埃などの異物を引き寄せることとなるため、好ましくない。
【0051】
上記で説明したカチオンポリマーを含む塗布層は、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗布されるが、塗布液の安定性の向上、あるいは塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、通常10重量%以下の量で有機溶剤を加えることが可能である。この有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルエタノールアミン、トリメタノールアミン等のアミン類、N−メチルピロリドン等のアミド類等を例示することができる。これらは単独、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
【0052】
基材となるポリエステルフィルムへの塗布液の塗布方法としては、公知の任意の方法が適用できる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、バーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法、ダイコート法などを単独または組み合わせて適用することができる。
【0053】
本発明においては、前述したカチオンポリマーを含む塗布液をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布するが、このフィルムは結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムであって、塗布後さらに少なくとも一方向に延伸され、その後熱固定されることが好ましい。具体例としては、未延伸フィルムに水性塗布液を塗布した後に、縦方向・横方向に同時あるいは逐次に延伸し、次いで熱固定される場合、縦方向あるいは横方向に一軸延伸したフィルムに塗布した後、先の延伸と直行する方向に延伸し、次いで熱固定される場合、縦および横方向に二軸延伸したフィルムに塗布後、さらに縦あるいは横あるいは両方向に再度延伸し、次いで熱固定される場合、未延伸フィルムに塗布した後に、縦あるいは横方向に一軸延伸し、次いで熱固定される場合などを例示することができる。このようないわゆるインラインコート法を用いることで、塗布層はポリエステルフィルムと共に高温で熱固定されるため、塗布層とポリエステルフィルムとの密着性が向上する。
【0054】
本発明におけるポリエステルフィルムのカチオンポリマーを含む塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚みとして0.01〜0.5μm、さらには0.02〜0.3μmの範囲とするのが好ましい。塗布層の厚みが0.01μm未満では帯電防止性能や接着性が不十分となり、0.5μmを超える場合にはブロッキングが発生し易くなる。
【0055】
また、カチオンポリマーを含む塗布層は、フィルムの片面のみに塗設してもよいし、両面に塗設してもよい。さらにフィルムの片面にのみに塗設する場合には、上記で説明した塗布層とは異なる塗布層を当該塗布層の反対面に塗設することも可能である。
【0056】
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0057】
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールとでエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとでエステル交換反応を行い、その生成物を、重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
【0058】
次に例えば上記のようにして重合し、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを一軸あるいは二軸方向に延伸してフィルム化する。逐次二軸延伸フィルムの延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜5倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムとした。次いで、必要に応じてコロナ放電処理などの親水化処理を施した後、水性塗布液を一軸延伸フィルムに塗布する。このフィルムをテンター内で予熱・乾燥した後、横方向に90〜160℃で3〜6倍延伸を行う。このとき、縦延伸あるいは横延伸は、一段階の延伸でもよいが、二段階以上に延伸倍率を振分けて延伸してもよい。次に150〜240℃で1〜600秒間熱固定を行う。この際には、熱固定の最高温度ゾーンおよび/または熱固定出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に20%以下の範囲で弛緩または伸長することもできる。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0059】
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好となり、好ましい。
【0060】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型・無溶剤縮合型・無溶剤紫外線硬化型・無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、偏光板、位相差板等の異物検査に用いる、フィルムの輝点が極力少なく、異物検査精度を高めることができる離型フィルム用のポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0063】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0064】
(2)平均粒径(d50、μm)および粒径均一性(d25/d75)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP4L型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。また、大粒子側から積算して重量分率25%の点の直径と重量分率75%の点の直径の比d25/d75値を粒度分布値とした。
【0065】
(3)表面固有抵抗値(Ω)
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器 HP4339B、および測定電極 HP16008Bを使用し、23℃、50%RHの測定雰囲気下で、印加電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
【0066】
(4)埃付着性評価
23℃、50%RHの測定雰囲気でポリエステルフィルムを十分調湿後、塗布層を綿布で10往復こする。これを、細かく砕いた煙草の灰の上に静かに近づけ、灰の付着状況を以下の基準で評価した。
○:フィルムを灰に接触させても付着しない
△:フィルムを灰に接触させると少し付着する(許容範囲)
×:フィルムを灰に近づけただけで多量に付着する
【0067】
(5)フィルム内における配向角の変動(角度/500mm)
ポリエステルフィルムマスターロールの幅方向において、中心となる位置から幅方向に両端に向かって、500mm毎の位置のサンプルを切り出し、それぞれ王子計測器社製の自動複屈折率計(KOBRA−21ADH)を用いて主配向方向を測定し、これと幅方向とのなす角度を配向角として、フィルム幅方向の一列で500mm毎の配向角を求めた。続いてこの測定を、フィルム長手方向について500mm毎に7回繰り返して(長手方向に3m長の範囲となる)、縦・横の間隔が500mmとなる測定点での配向角を求めた。これらの各測定点での配向角を、縦・横の隣り合う測定点の値と比較して、その差を求めた。この配向角の差のなかで最も大きい値を配向角の変動(角度/500mm)とした。
【0068】
(6)フィルムの屈折率(nβ)
ポリエステルフィルムの幅方向において、中心となる位置から、幅方向に両端に向かって500mm毎の位置のサンプルを切り出し、アタゴ光学社製Abbe屈折計を用いてフィルム面内の主配向方向に対してフィルム面内の直角方向の屈折率を各位置について測定し、平均値を求めて、nβとした。主配向方向は上記(5)にて求めたものを用いた。
【0069】
(7)熱処理後の表面オリゴマー量(mg/m
ポリエステルフィルムを25cm角の大きさに切り取り、150℃に設定されたオーブン(タバイエスペック社製熱風循環炉)中で10分間加熱処理した。次に、熱処理後のポリエステルフィルムを塗布層面が内側になるように折って、上部が開放され、底面の面積が250cmとなる四角い箱を作成する。得られた箱の中にDMF10mlを入れ、室温で3分間放置後DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値をDMFに接触させたフィルム面積で除して、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とした。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量したDMFに溶解して作成した。なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
【0070】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学社製 MCI GEL ODS IHU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0071】
(8)クロスニコル下での目視検査性
ポリエステルフィルムの片面に、硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を塗工量が0.1g/mmになるように塗布して170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムを得た。離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より10人の検査員がそれぞれ目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたポリエステルフィルムのマスターロール端部から、フィルム幅方向に対して10、50、90%の位置に相当する箇所よりそれぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
<クロスニコル下での目視検査性 判定基準>
(検査性良好) ◎>○>△>×>×× (検査性不良)
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0072】
(9)異物認知性
上記(8)で作成した離型フィルムを用いて、離型フィルムの幅方向が偏光フィルムの配向軸と平行となるように、公知のアクリル系粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ離型フィルム付きの偏光板を作成した。ここで上記偏光板を作成する際、粘着剤と偏光フィルムとの間に50μm以上の大きさを持つ黒色の金属粉(異物)を50個/mとなるように混入させた。このようにして得られた異物を混入させた偏光板離型フィルム上に配向軸が離型フィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より10人の検査員がそれぞれ目視にて観察し、粘着剤と偏光フィルムとの間に混入させた異物を見いだせるかどうかを下記分類にて評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムのマスターロール中央部と両端部の計3箇所のフィルムを用いて評価し、目視検査性が最も良好であった箇所の結果を持って、そのフィルムの異物認知性とした。
<異物認知性 分類基準>
(異物認知性良好) ◎>○>△>× (異物認知性不良)
上記判定基準中、○以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0073】
実施例1〜4および比較例1〜4:
<ポリエステル(A)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。
4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。
一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(A)を得た。この、ポリエステルの極限粘度は0.63であった。
【0074】
<ポリエステル(B)の製造>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.8μm、粒径分布値1.6の合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は極限粘度0.63であった。
【0075】
<ポリエステル(C)の製造>
ポリエステル(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.4μm、粒径分布値1.7の合成炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は極限粘度0.63であった。
【0076】
<ポリエステル(D)の製造>
ポリエステル(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径1.4μm、粒径分布値1.9の合成炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(D)を得た。得られたポリエステル(D)は極限粘度0.63であった。
【0077】
<ポリエステル(E)の製造>
ポリエステル(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径2.5μm、粒径分布値1.3のシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を、0.6重量%にした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(E)を得た。得られたポリエステル(E)は極限粘度0.63であった。
【0078】
<ポリエステル(F)の製造>
ポリエステル(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.8μm、粒径分布値2.5の天然炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(F)を得た。得られたポリエステル(F)は極限粘度0.63であった。
【0079】
<ポリエステル(G)の製造>
ポリエステル(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.12μm、粒径分布値2.0のシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を、0.3重量%にした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(G)を得た。得られたポリエステル(G)は極限粘度0.63であった。
【0080】
<塗布層を構成する化合物>
・カチオンポリマー:(a1)
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー ((1)式のピロリジニウム環含有カチオンポリマー)
平均分子量約30000。
・カチオンポリマー:(a2)
ジアリルモノメチルアンモニウムメタンスルホン酸塩を用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー ((1)式のピロリジニウム環含有カチオンポリマー)
平均分子量約30000。
・カチオンポリマー:(a3)
ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)モノメチル硫酸塩のホモポリマー ((5)式のカチオンポリマー)
・バインダーポリマー:(b)
ポリビニルアルコール樹脂 (けん化度88モル%、重合度約500)
・架橋剤:(c)
アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(大日本インキ化学工業社製ベッカミン)
【0081】
<フィルムの製造>
上記ポリエステル(A)と、ポリエステル(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)とを、下記表1または2に示すとおりの割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A)チップ100%の原料をB層の原料として、180℃で4時間乾燥した後、2台の押出機に各々供給した。そしてA層を最外層(両表層)、B層を中間層として290℃で溶融押出しし、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで表1または2で示した延伸倍率、延伸温度で縦延伸を行って、一軸延伸フィルムとした。ここでフィルムの両面にコロナ放電処理を施した後、表1または2で示した固形分組成の塗布液を、乾燥・延伸後の厚みが0.06μmとなるように塗布した(比較例4は除く)。この後フィルムをテンターに導き、乾燥・予熱を行った後、表1または2に示した条件で横延伸および熱固定を行い、総厚み40μm、厚み構成が4μm/32μm/4μm(A/B/A)、幅3300mmのマスターロールを得た。これをスリッターにて、幅1000mm、長さ5000mのフィルムロールにスリットして、各3ロール採取した。
【0082】
なお、比較例4においてポリエステル(A)および(G)をフィルム表層に用いたフィルムは、表面形状が極端に平坦になり、滑り性が悪化したため、延伸、熱処理後のフィルムをロール状に巻き取る際に、うまく巻き取ることができず、製品とはなり得ないものであった。また、フィルム全面にキズが発生していたため、フィルムの目視検査性および異物認知性を評価することができなかった。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のフィルムは、例えば、偏光板のクロスニコル法による検査において、高度な精度を実現できる、離型フィルム用ポリエテルフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面にカチオンポリマーを含む塗布層を有する延伸ポリエステルフィルムであり、当該塗布層の表面固有抵抗値が1×1013Ω以下であり、ポリエステルフィルム中に存在する粒子の平均粒径(d50)が0.2〜1.5μmの範囲であり、その粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする離型フィルム用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−132618(P2008−132618A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318768(P2006−318768)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】