説明

離型剤再生システム

【課題】廃液から再利用可能な離型剤を得るまでの時間の短縮化を図ることができる離型剤再生システムを提供すること
【解決手段】離型剤再生システムは、廃液を回収する使用済み離型剤回収タンク(廃液回収手段)21、22、‥‥、2nと、回収された廃液中から比較的大きな固形物を除去する多層フィルタ51を有し、多層フィルタ51を通過した廃液を使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物とに遠心分離する遠心分離機5と、使用済み離型剤と離型剤原液と水とからなる再生離型剤7を貯蔵する再生離型剤貯蔵タンク6と、再生離型剤7の濃度を測定する超音波濃度計8と、再生離型剤7の濃度を所定範囲に維持すべく、超音波濃度計8からの濃度検出信号に基づいて離型剤原液及び水の補給量を制御するシーケンサ10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤再生システム、詳しくは、アルミダイカスト鋳造などの金型に噴射したシリコン系離型剤など離型剤を回収し、再生して離型剤として再度利用可能にする離型剤再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、アルミダイカスト鋳造などの金型から鋳造物を離型し易くすることを主目的として、シリコン系離型剤など離型剤を金型に噴射(噴霧を含む。)するようにしている。
【0003】
ここで、金型に噴射された離型剤がそのまま廃液として処分されることはリサイクルや環境問題などの視点から好ましくないため、使用後の離型剤を再度離型剤として利用することが望ましい。
【0004】
しかし、使用後の離型剤を回収した廃液中には、離型剤の他にバリや潤滑油、塵などの異物も含まれているため、廃液中の離型剤を再度離型剤として利用するためには、廃液中から異物を除去する必要がある。
【0005】
従来一般に、廃液中から異物を除去する方法として、離型剤各成分の比重差を利用した沈殿法が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、沈殿法には、廃液を各成分ごとに分離するのに比較的長時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点にかんがみ、廃液から再利用可能な離型剤を得るまでの時間の短縮化を図ることができる離型剤再生システムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、廃液中から離型剤を分離し、そのまま離型剤として再利用するのではなく、分離した離型剤つまり再生離型剤に離型剤の原液及び水を補充することにより、離型剤としての性能を向上させて再利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の離型剤再生システムは、金型へ噴射された後の使用済み離型剤を含む廃液を回収する廃液回収手段と、前記廃液回収手段により回収された前記廃液中から比較的大きな固形物を除去する多層フィルタを有し、かつ該多層フィルタを通過した前記廃液を前記使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物とに遠心分離する遠心分離機と、前記遠心分離機により分離された前記使用済み離型剤を貯蔵すると共に離型剤原液及び水が補給され、前記使用済み離型剤と前記離型剤原液と前記水とからなる再生離型剤を貯蔵する再生離型剤貯蔵タンクと、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の濃度を測定する濃度測定手段と、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の濃度を所定範囲に維持すべく、前記濃度測定手段からの濃度検出信号に基づいて前記離型剤原液及び前記水の補給量を制御するシーケンサとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、遠心分離機を用いて使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物を遠心分離するようにしたため、使用済み離型剤のみを比較的短時間で精度良く分離させることが可能となる。また、使用済み離型剤は、通常、金型への噴射により性能が低下するため、使用済み離型剤をそのまま用いて再度金型へ噴射させると離型性能が低下することになるが、上記のように再生離型剤貯蔵タンク内の再生離型剤の濃度に基づき離型剤原液及び水の補給量を制御して離型剤原液及び水を補給することにより使用済み離型剤と比べて離型性能が向上する。
【0010】
ここで、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤を撹拌する撹拌機を設けると、再生離型剤貯蔵タンク内における再生離型剤の濃度の均一化を図ることができ、再生離型剤の濃度の測定精度が向上する。
【0011】
また、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の液面レベルを検出し、液面レベル検出信号を前記シーケンサに入力する液面検出手段を備え、前記シーケンサは、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の液面レベルを所定範囲に維持すべく、前記液面検出手段からの前記液面レベル検出信号に基づいて前記離型剤原液及び前記水の補給量を制御するようにすると、再生離型剤貯蔵タンク内の再生離型剤が枯渇したり、再生離型剤貯蔵タンクから再生離型剤がオーバーフローする不具合の発生を防止でき、再生離型剤貯蔵タンク内の再生離型剤をダイカスト鋳造機に連続的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る離型剤再生システムの全体構成図、図2は、再生離型剤貯蔵タンク周りの制御システムの構成図、図3は、遠心分離機の基本構成図をそれぞれ示す。
【0014】
図1において、離型剤再生システムは、複数のダイカスト鋳造機つまり第1ダイカスト鋳造機11、第2ダイカスト鋳造機12、‥‥第n(n≧2)ダイカスト鋳造機1nに対応させたシステムであり、各々のダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nに1対1に対応して使用済み離型剤回収タンク(廃液回収手段)21、22、‥‥、2nを備える。使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nは、金型(図示せず。)に対向配置された噴射ノズル(図示せず。)の吐出口から金型のキャビティに向けて噴射された後の離型剤つまり使用済み離型剤を下方で受け止めて回収する。ここで、使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nに回収される回収物(本願では廃液という。)には、使用済み離型剤の他に、ダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nの潤滑油や、アルミ鋳造時に金型の型合せ面などに発生するバリ、ダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nの磨耗粉、塵などの異物が含まれる。使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nは、網目状のフィルタ(図示せず。)を備えており、このフィルタによって主にバリのなかでも体積が比較的大きなバリが除去される。
【0015】
各ダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nの近辺には、噴射ノズルに、後述する再生離型剤を供給する離型剤ポンプ31、32、‥‥、3nが配置される。各離型剤ポンプ31、32、‥‥、3nの吸入側には、開閉動作をするバルブ41、42、‥‥、4nが配置され、バルブ41、42、‥‥、4nの開放時に、再生離型剤が離型剤ポンプ31、32、‥‥、3nに対して供給可能とされる。
【0016】
各使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nの出口側には、共通する1つの遠心分離機5が配置される。遠心分離機5は、前段部に多層フィルタ51を備え、この多層フィルタ51は、各使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nから送給されてくる廃液中から比較的大きな固形物を除去する。
【0017】
遠心分離機5の後段部は、多層フィルタ51を通過した廃液を取入れ、使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物とに遠心分離するよう構成される。
【0018】
この遠心分離機5の後段部は、図3に示すような基本構成を有する。図3において、遠心分離機5は、電動モータ52を動力源として高速回転する回転筒53を有し、この回転筒53の回転軸線に相当する部位に、回転筒53と共に高速回転するスリーウイング54が配される。回転筒53の下端部には、遠心分離の対象物としての廃液を回転筒53内に流入させる廃液入口55が設けられている。回転筒53の内周面には、この内周面に沿って集塵用のシート56が配されている。回転筒53の上端部には、同心円状に、内側に潤滑油出口57、外側に使用済み離型剤出口58が設けられている。
【0019】
遠心分離機5の運転時には、廃液中の成分の比重差に基づき、最も比重の大きな比較的小さな固形物Aが回転筒53の内周面に沈降分離し、この沈降分離した固形物Aの内側に液体層Bが形成される。液体層Bは、2層に沈降分離され、外側の層B1は、潤滑油よりも比重の大きな使用済み離型剤によって形成され、内側の層B2は、使用済み離型剤よりも比重の小さな潤滑油によって形成される。そして、使用済み離型剤は使用済み離型剤出口58から外部に流出し、一方、潤滑油は潤滑油出口57から外部に流出する。
【0020】
使用済み離型剤出口58には、再生離型剤貯蔵タンク6が連通している。
【0021】
再生離型剤貯蔵タンク6には、遠心分離機5の使用済み離型剤出口58から使用済み離型剤が流入すると共に、離型剤原液及び水(希釈液)が補給される。
【0022】
図2に示すように、再生離型剤貯蔵タンク6の近くには、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度を測定する超音波濃度計(濃度測定手段)8が設けられる。超音波濃度計8のプローブ8aは、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7中に配置され、超音波濃度計8の本体部8bは、再生離型剤貯蔵タンク6の外部に配置され、A/D変換器9を介してシーケンサ10と電気的に接続される。
【0023】
また、再生離型剤貯蔵タンク6の近くには、再生離型剤7を撹拌する撹拌機(撹拌手段)11が設けられる。撹拌機11の先端部11aは、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7中に配され、撹拌機11の本体部11bは、再生離型剤貯蔵タンク6の外部に配置され、シーケンサ10と電気的に接続される。
【0024】
また、再生離型剤貯蔵タンク6の近くには、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の液面レベルを検出する液面検出装置(液面検出手段)12が配置される。液面検出装置12の検出部12aは、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7中に水没可能な位置に配置され、液面検出装置12の本体部12bは、シーケンサ10と電気的に接続される。液面検出装置12は、少なくとも、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7が枯渇状態になったとき、及び、満タン状態になったときを検出し得るように構成される。
【0025】
また、再生離型剤貯蔵タンク6の近くには、離型剤原液を再生離型剤貯蔵タンク6内に補給する離型剤原液供給口13、及び、水(希釈液)を再生離型剤貯蔵タンク6内に補給する水供給口14が設けられる。そして、離型剤原液供給口13に連通する原液供給路15には、シーケンサ10によって開閉制御される原液用バルブ16が配置され、また、水供給口14に連通する水供給路17には、シーケンサ10によって開閉制御される水用バルブ18が配置される。
【0026】
また、再生離型剤貯蔵タンク6には、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7を各ダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nに送給するための再生離型剤出口19が設けられている。そして、再生離型剤出口19の近くに、再生離型剤7の使用量を計測するための流量計20が配置される。
【0027】
シーケンサ10は、超音波濃度計8からの濃度検出信号を入力し、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度に応じて原液用バルブ16及び水用バルブ18の開閉を制御し、換言すると、離型剤原液及び水の補給量を制御し、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度を予め定めた所定範囲内に維持する。
【0028】
また、シーケンサ10は、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7が枯渇状態になったときを除いて撹拌機11を運転状態に保つ。
【0029】
また、シーケンサ10は、液面検出装置12からの液面レベル検出信号を入力し、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7が枯渇状態になったとき、及び満タン状態になったときに、原液用バルブ16及び水用バルブ18の開閉を制御し、換言すると、離型剤原液及び水の補給量を制御し、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の液面レベルを予め定めた所定範囲内に維持する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の離型剤再生システムは、金型へ噴射された後の使用済み離型剤を含む廃液を回収する使用済み離型剤回収タンク(廃液回収手段)21、22、‥‥、2nと、使用済み離型剤回収タンク21、22、‥‥、2nにより回収された廃液中から比較的大きな固形物を除去する多層フィルタ51を有し、かつ多層フィルタ51を通過した廃液を使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物とに遠心分離する遠心分離機5と、遠心分離機5により分離された使用済み離型剤を貯蔵すると共に離型剤原液及び水が補給され、使用済み離型剤と離型剤原液と水とからなる再生離型剤7を貯蔵する再生離型剤貯蔵タンク6と、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度を測定する超音波濃度計(濃度測定手段)8と、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度を所定範囲に維持すべく、超音波濃度計8からの濃度検出信号に基づいて離型剤原液及び水の補給量を制御するシーケンサ10とを備える。
【0031】
本実施形態によると、遠心分離機5を用いて使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物を遠心分離するようにしたため、使用済み離型剤のみを比較的短時間で精度良く分離させることが可能となる。また、使用済み離型剤は、通常、金型への噴射により性能が低下するため、使用済み離型剤をそのまま用いて再度金型へ噴射させると離型性能が低下することになるが、上記のように再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の濃度に基づき離型剤原液及び水の補給量を制御して離型剤原液及び水を補給することにより使用済み離型剤と比べて離型性能が向上する。
【0032】
また、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7を撹拌する撹拌機11を備えているため、再生離型剤貯蔵タンク6内における再生離型剤7の濃度の均一化を図ることができ、再生離型剤7の濃度の測定精度が向上する。
【0033】
また、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の液面レベルを検出し、液面レベル検出信号をシーケンサ10に入力する液面検出装置(液面検出手段)12を備え、シーケンサ10は、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7の液面レベルを所定範囲に維持すべく、液面検出装置12からの液面レベル検出信号に基づいて離型剤原液及び水の補給量を制御するようにしたため、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7が枯渇したり、再生離型剤貯蔵タンク6から再生離型剤7がオーバーフローする不具合の発生を防止でき、再生離型剤貯蔵タンク6内の再生離型剤7をダイカスト鋳造機11、12、‥‥、1nに連続的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る離型剤再生システムの全体構成図である。
【図2】貯蔵タンク周りの制御システムの構成図である。
【図3】遠心分離機の基本構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1、22、‥‥、2n 使用済み離型剤回収タンク(廃液回収手段)
5 遠心分離機
51 多層フィルタ
6 再生離型剤貯蔵タンク
7 再生離型剤
8 超音波濃度計(濃度測定手段)
10 シーケンサ
11 撹拌機
12 液面検出装置(液面検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型へ噴射された後の使用済み離型剤を含む廃液を回収する廃液回収手段と、
前記廃液回収手段により回収された前記廃液中から比較的大きな固形物を除去する多層フィルタを有し、かつ該多層フィルタを通過した前記廃液を前記使用済み離型剤と潤滑油と比較的小さな固形物とに遠心分離する遠心分離機と、
前記遠心分離機により分離された前記使用済み離型剤を貯蔵すると共に離型剤原液及び水が補給され、前記使用済み離型剤と前記離型剤原液と前記水とからなる再生離型剤を貯蔵する再生離型剤貯蔵タンクと、
前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の濃度を所定範囲に維持すべく、前記濃度測定手段からの濃度検出信号に基づいて前記離型剤原液及び前記水の補給量を制御するシーケンサと
を備えることを特徴とする離型剤再生システム。
【請求項2】
前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤を撹拌する撹拌機を備えることを特徴とする請求項1に記載の離型剤再生システム。
【請求項3】
前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の液面レベルを検出し、液面レベル検出信号を前記シーケンサに入力する液面検出手段を備え、前記シーケンサは、前記再生離型剤貯蔵タンク内の前記再生離型剤の液面レベルを所定範囲に維持すべく、前記液面検出手段からの前記液面レベル検出信号に基づいて前記離型剤原液及び前記水の補給量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の離型剤再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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