説明

離型剤及び離型シート

【課題】硬化性や離型性能を維持しつつ、セラミックスラリー等に対する濡れ性に優れた離型剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る離型剤は、アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位(構成単位(A))と、アルキル基の炭素原子数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位(構成単位(B))とを含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤とする。上記離型剤の架橋剤としては例えば、メラミン、イソシアネート、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、紫外線硬化型樹脂等を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いた離型剤、およびその離型剤を用いた離型シートに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:MLCC)等を製造する際に使用されるセラミックグリーンシートの製造工程用や、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)等を製造する際に使用される接着樹脂フィルムの製造工程用に、離型シートが使用される場合がある。これら用途において離型シートは、離型剤層の上にセラミックスラリーや接着樹脂が塗工されて使用されるため、離型剤にはセラミックスラリーや所定の接着樹脂に対する高い濡れ性が要求される。また、これら用途では、離型シートの剥離力としては中程度の剥離力が要求される。
【0003】
従来、離型シートに使用される離型剤としては、シリコーン系離型剤や、アルキド樹脂、メラミン樹脂、長鎖アルキル基を有するアクリル系離型剤等の非シリコーン系離型剤が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。シリコーン系離型剤は、表面張力が低いことから、セラミックスラリーや接着樹脂に対する濡れ性が低く、これらを離型剤層に塗工する際にハジキが発生することがある。また、シリコーン汚染により電子機器等の誤作動を誘引するおそれもある。さらに、シリコーン系離型剤の剥離力は低すぎる場合があるとともに、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の離型剤は、剥離力が高すぎ、上記用途には不適であるという問題がある。
【0004】
一方、長鎖アルキル基を有するアクリル系離型剤は、モノマーの種類・量を適宜調整することにより、剥離力や濡れ性の調整が可能であり、上記用途に比較的好適に使用される。しかし、長鎖アルキル基を有するアクリル系離型剤は、中剥離力程度にしようとすると、アルキル基の炭素数を比較的大きくしなければならず、アルキル基の結晶性により、離型剤の硬化性が低下するという問題がある。
【特許文献1】特開昭63−202685号公報
【特許文献2】特開2003−147327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上問題点に鑑みて成されたものであり、離型剤の硬化性を維持しつつセラミックスラリーや接着樹脂を離型剤層に塗布するときのハジキを防止し、さらにはこれらを塗布して得られたセラミックグリーンシートや接着樹脂フィルムから離型シートを剥離する際の剥離性能を良好に維持することが可能な離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る離型剤は、(A)アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、(B)アルキル基の炭素数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位とを含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤として含むことを特徴とする。
【0007】
上記構成単位(A)は、好ましくは下記一般式(1)で示される構成単位である。
【化3】


一般式(1)において、Rはアルキル基又はアリール基、Rは水素原子又はメチル基、aは2又は3、nは1〜100の整数を示す。
【0008】
上記構成単位(B)は、好ましくは下記一般式(2)で示される構成単位である。
【化4】


一般式(2)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0009】
構成単位(A)/(B)の質量比は、好ましくは100/1〜100/200である。
ポリ(メタ)アクリレートは、さらに反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位及びフッ素含有(メタ)アクリレート単位から成る群から選択される少なくとも1つを含んでいても良い。上記反応性官能基は、例えば水酸基又はカルボキシル基のいずれかである。
【0010】
本発明に係る離型剤は、メラミン、イソシアネート、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、及び紫外線硬化型樹脂から成る群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋されることが好ましい。主剤/架橋剤の質量比は例えば、100/1〜100/200である。本発明に係る離型剤は、セラミックグリーンシート製造工程用に使用されることが好ましい。本発明に係る離型剤は、シリコーン化合物を含有しないことが好ましい。
【0011】
本発明に係る離型シートは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられ、離型剤を含有する離型剤層とを備える離型シートにおいて、上記離型剤が(A)アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、(B)アルキル基の炭素数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位とを含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、離型剤の硬化性及び剥離性能を維持しつつ、離型剤表面の濡れ性を確保し、セラミックスラリーや接着樹脂を離型剤層に塗布するときの塗工性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態を用いて具体的に説明する。
本実施形態における離型剤は、(A)アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、(B)アルキル基の炭素数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位とを含有するポリ(メタ)アクリレート共重合体を主剤として含むものである。
【0014】
上記構成単位(A)は、具体的には下記一般式(1)で示される構成単位である。
【化5】


一般式(1)において、Rはアルキル基又はアリール基、Rは水素原子又はメチル基、aは2又は3、nは1〜100の整数を示す。
【0015】
一般式(1)においてRは、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基若しくはアルキル部分の炭素数が1〜10であるアルキルフェニル基等の炭素数6〜16のアリール基である。Rのアルキル部分が大きくなりすぎると構成単位(A)の柔軟性が失われ、離型剤の被膜表面の濡れ性が十分に確保できなくなるため、Rのアルキル部分の炭素数は小さいほうが良い。従って、一般式(1)においてRは、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基若しくはアルキル部分の炭素数が1〜5であるアルキルフェニル基等の炭素数6〜11のアリール基である。特に好ましくはRはメチル基又はフェニル基である。
【0016】
アルキレングリコール部分の繰り返し単位、すなわち一般式(1)におけるnは、大きすぎると重合性が低下するとともにモノマー成分の取り扱い性が低下するので、好ましくは1〜20、特に好ましくは2〜10である。構成単位(A)におけるモノ又はポリアルキレングリコール部分は、エチレングリコール部分及び/又はプロピレングリコール部分を有するが、エチレングリコール部分及びプロピレングリコール部分がランダム若しくは交互に連なっていても良いし、エチレングリコール部分のブロックとプロピレングリコール部分のブロックとが連なっていても良い。ただし、aは2であって、ポリアルキレングリコール部分はエチレングリコール部分が連なって構成されることが好ましい。構成単位(A)の具体的な例は、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート等である。
【0017】
上記構成単位(B)は、具体的には下記一般式(2)で示される構成単位である。
【化6】


一般式(2)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0018】
上記一般式(2)において、Rは、炭素数が大きくなりすぎると硬化性が悪くなり、小さくなりすぎると離型剤被膜の良好な剥離性能を確保することが難しくなるため、好ましくは炭素数10〜20のアルキル基であって、具体的には例えばラウリル基、ステアリル基等の直鎖のアルキル基等である。構成単位(B)の具体的な例は、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等である。
【0019】
主剤を構成するポリ(メタ)アクリレート共重合体において、構成単位(A)/(B)の質量比は例えば100/1〜100/200、好ましくは100/10〜100/100である。また、ポリ(メタ)アクリレート共重合体のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によって測定された重量平均分子量は、特に限定されるわけでないが、塗工性等の観点から1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜1,000,000程度である。
【0020】
離型剤の主剤であるポリ(メタ)アクリレート共重合体には、上記構成単位(A)(B)以外に、後述する架橋剤と反応・結合して硬化性を向上できるように、反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位を含んでいても良い。反応性官能基は例えば、水酸基、カルボキシル基等である。反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位の具体的な例は、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸等である。反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位は例えば、主剤を基準(100%)として、0.1〜50%程度の質量比率でポリ(メタ)アクリレート共重合体に含有される。また、主剤を構成するポリ(メタ)アクリレート共重合体には、上記構成単位(A)(B)以外に、離型剤被膜の剥離性能を調整するために、フッ素含有(メタ)アクリレート単位を含んでいても良い。フッ素含有(メタ)アクリレート単位の具体的な例は、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルアクリレート、パーフルオロエチルメチルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート等である。
【0021】
ポリ(メタ)アクリレート共重合体は例えば、上記構成単位(A)(B)の成分(モノマー)が、又は構成単位(A)(B)の成分(モノマー)及び構成単位(A)(B)以外の任意の(メタ)アクリレート単位の成分(モノマー)が、ラジカル重合等により重合反応させられて得られるものである。重合反応は例えば、これら(メタ)アクリレート単位成分(モノマー)の混合物に、溶媒、重合開始剤等が添加された後、適宜加熱等されて行われる。
【0022】
共重合されたポリ(メタ)アクリレート共重合体は、架橋剤によって架橋される。架橋剤としては、メラミン、イソシアネート、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、紫外線硬化型樹脂、又はこれら2以上の混合物等が使用される。主剤/架橋剤の質量比は、例えば、100/1〜100/200、好ましくは100/10〜100/100である。
【0023】
本実施形態に係る離型シートは、基材と、基材の一方の面又は両面に積層され、離型剤で形成された離型剤層とからなるものである。本実施形態において離型剤層は、例えば共重合されたポリ(メタ)アクリレート共重合体(主剤)に、架橋剤及び所望により溶媒、触媒等が添加された後、基材に塗布・乾燥されることにより硬化被膜されて形成される。離型シートにおいて、離型剤層の厚さは、0.01〜10μm程度である。基材としては、公知の基材から適宜選択して使用され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリイミド等によって形成された樹脂フィルムが使用される。なお、離型シートにおいて、基材と離型剤層との間には所望により別の層が積層されていても良い。電子機器等へのシリコーン汚染を防止するために、離型剤はシリコーン化合物を含有しておらず、また離型シートの各構成部材(離型剤層等)も、実質的にシリコーン化合物を含有しないことが好ましい。
【0024】
離型シートは例えば、MLCC等の製造工程で使用されるセラミックグリーンシートの製造工程用に用いられる。セラミックグリーンシートは具体的には、離型シートの離型剤層の上にセラミックスラリーが塗工された後、適宜乾燥等されて作製されるものである。また、離型シートは例えば、FPC等の製造工程で使用される接着樹脂フィルムの製造工程用に用いられる。接着樹脂フィルムは具体的には、離型シートの離型剤層の上に、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の所定の樹脂液が塗布され、適宜硬化等されて作製されるものである。なお、離型シートは、MLCC又はFPC等の製造工程で、セラミックグリーンシート又は接着樹脂フィルムから剥離されるものである。
【0025】
離型シートにおいて、離型剤層表面の純水に対する接触角は、上述したセラミックスラリーや接着樹脂液に対する十分な濡れ性を確保するために、108°以下、好ましくは28〜108°である。また、離型シートの後述する測定方法によって測定された剥離力は、上述したセラミックグリーンシートや接着樹脂フィルムから離型シートを良好に剥離できるように300〜1000mN/20mmであることが好ましく、500〜800mN/20mmであることがより好ましい。
【0026】
本実施形態においては、離型剤の主剤の一部に柔軟性のあるアルキレングリコール骨格を含有させることにより、アルキル(メタ)アクリレート単位のアルキル基の結晶性を崩すことができ、離型剤の硬化性を向上させることができる。また、離型剤の被膜表面の表面張力が高くなり、その濡れ性が改善される。したがって、樹脂液やセラミックスラリーを離型剤被膜の上に塗布するような場合であっても、はじきや塗工ムラ等の発生が防止される。さらに、離型剤の主剤の構成単位の一部に、アルキル(メタ)アクリレート単位を含有させることにより、離型シートの剥離力を中剥離力程度とすることができる。したがって、離型シートの離型性能をセラミックグリーンシート製造工程用又は接着樹脂シート製造工程用に適したものとすることができる。
【実施例】
【0027】
本発明について、以下実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるわけではない。
【0028】
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、構成単位(A)のモノマーとしてメトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「V−MTG」)50g、構成単位(B)のモノマーとしてラウリルアクリレート50g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.359g、及び溶媒として酢酸エチル200gを添加し、窒素気流下、70℃で2時間重合反応を行うことにより、共重合体1を得た。得られた共重合体1のGPCによる重量平均分子量は101,000であった。100gの共重合体1に、架橋剤としてメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名「サイメル303」)10g、及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを添加し、固形分が1質量%となるように、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比3:7)で希釈し、塗工液を得た。この塗工液を厚さ38μmのPETフィルムにマイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗布して、145℃で1分乾燥させて離型シートを得た。
【0029】
[実施例2]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、構成単位(A)のモノマーとして、エチレングリコール部分の平均繰り返し単位が9個であるメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油(株)製、商品名「PME−400」)50g、構成単位(B)のモノマーとしてステアリルアクリレート50g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.209g、並びに溶媒として酢酸エチル100g及びトルエン100gを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより、共重合体2を得た。得られた共重合体2のGPCによる重量平均分子量は50,000であった。この共重合体2を用いて実施例1と同様の方法により離型シートを得た。
【0030】
[実施例3]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、構成単位(A)のモノマーとしてメトキシトリエチレングリコールアクリレート45g、構成単位(B)のモノマーとしてラウリルアクリレート50g、反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位のモノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート5g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.375g、及び溶媒として酢酸エチル200gを添加し、窒素気流下、70℃で2時間重合反応を行うことにより、共重合体3を得た。得られた共重合体3のGPCによる重量平均分子量は95,000であった。100gの共重合体3に、架橋剤としてTMP−HDI(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」)5gを添加し、固形分が1質量%となるように、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比3:7)で希釈し、塗工液を得た。この塗工液を厚さ38μmのPETフィルムにマイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗布して、100℃で1分乾燥させて離型シートを得た。
【0031】
[実施例4]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、構成単位(A)のモノマーとしてエチレングリコール部分の平均繰り返し単位が2個であるフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油(株)製、商品名「PAE−100」)50g、構成単位(B)のモノマーとしてラウリルアクリレート50g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.335g、及び溶媒として酢酸エチル200gを添加し、窒素気流下、70℃で2時間重合反応を行うことにより、共重合体4を得た。得られた共重合体4のGPCによる重量平均分子量は85,000であった。この共重合体4を用いて実施例1と同様の方法により離型シートを得た。
【0032】
[実施例5]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、構成単位(A)のモノマーとしてメトキシトリエチレングリコールアクリレート45g、構成単位(B)のモノマーとしてラウリルアクリレート50g、フッ素含有(メタ)アクリレート単位のモノマーとして2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート5g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.348g、及び溶媒として酢酸エチル200gを添加し、窒素気流下、70℃で2時間重合反応を行うことにより、共重合体5を得た。得られた共重合体5のGPCによる重量平均分子量は92,000であった。この共重合体5を用いて実施例1と同様の方法により離型シートを得た。
【0033】
[比較例1]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、ステアリルアクリレート100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.253g、及び溶媒としてトルエン200gを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより重合体6を得た。得られた重合体6のGPCによる重量平均分子量は60,000であった。この重合体6を用いて実施例1と同様の方法により離型シートを得た。
【0034】
[比較例2]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1リットルのフラスコに、ステアリルアクリレート50g、メチルメタクリレート50g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.072g、並びに溶媒として酢酸エチル100g及びトルエン100gを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより、共重合体7を得た。得られた共重合体7のGPCによる重量平均分子量は39,000であった。この共重合体7を用いて実施例1と同様の方法により離型シートを得た。
【0035】
[評価方法]
離型シートを以下の方法により評価した。
(1)剥離力測定
ポリエステル製の粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「No.31B」)を2kgローラを1往復させて、離型シートの離型剤層が設けられた面に貼り合せて、温度23℃、50%RHの条件下で30分放置した。その後、この粘着テープが貼り合わされた離型シートを幅20mm、長さ150mmにして、温度23℃、50%RHの条件下、剥離角度180°で、0.3m/分の速度で粘着テープ側を引っ張って剥離し、そのときの剥離力を測定した。
【0036】
(2)硬化性評価
離型シートの離型剤層が設けられた面を、指で10回擦り、曇り(スミア)があるかを目視にて確認した。また擦った部分に上記粘着テープを貼り、上記剥離力測定により剥離力を測定し、擦る前後の剥離力変化により、塗工膜の脱落(ラブオフ)の有無を確認し、以下の評価基準により評価した。
〔スミアの評価基準〕
○:スミアは全く確認されないか又は僅かに確認されても実用範囲内である。
△:スミアが若干確認される(実用上問題が生じる場合がある)。
×:スミアが顕著に確認される。
〔ラブオフの評価基準〕
○:ラブオフは全く確認されないか又は僅かに確認されても実用範囲内である。
△:ラブオフが若干確認される(実用上問題が生じる場合がある)。
×:ラブオフが顕著に確認される。
【0037】
(3)濡れ性
離型シートの離型剤層が設けられた面の純水に対する接触角を接触角計(協和界面科学(株)製、型式「CA−X」)を用いて液滴法により、温度23℃、50%RHの条件下で測定し、離型剤層表面の濡れ性を評価した。
【0038】
(4)塗工性評価
チタン酸バリウム(BaTiO)粉体100質量部、ポリビニルブチラール8質量部、ジオクチルフタレート4質量部に、トルエンとエタノールとの混合液(質量比1:1)80質量部を加え、ボールミルにて混合、分散させて、セラミックスラリーを調製した。このスラリーを、上記各実施例および各比較例で得られた離型シートの離型剤層が設けられた面に乾燥後の厚さが5μmとなるようにドクターブレード法により均一に塗工し、乾燥処理してセラミックグリーンシートを作製した。得られたセラミックグリーンシートの塗工面を長さ10mにわたって目視確認し、はじきによるピンホール、表面のユズ肌を以下の判断基準に従って評価した。
○:ピンホール、ユズ肌の発生は殆ど無し。
△:若干ユズ肌が確認され、わずかにピンホールの発生が確認される。
×:ピンホール、ユズ肌が顕著に見られる。
【0039】
【表1】

【0040】
以上のように実施例1〜5では、主剤がアルキレングリコール骨格を含むことにより、剥離性能を好適なものにしつつ、離型剤の硬化性を良好にし、かつ離型剤層へのスラリーの塗工性を良好にすることができた。一方、比較例1においては、アルキレングリコール骨格を有しないため、離型剤の硬化性や、スラリーの塗工性を良好にすることができなかった。また、比較例2においては、主剤が炭素数の少ないメタクリレートを含むことにより離型剤の硬化性や、スラリーの塗工性を良好にすることができたが、剥離力が高すぎて、セラミックグリーンシート製造工程用又は接着樹脂シート製造工程用に適した剥離性能を有していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、
(B)アルキル基の炭素数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位と
を含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤として含む離型剤。
【請求項2】
前記構成単位(A)が下記一般式(1)で示される構成単位であることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【化1】


一般式(1)において、Rはアルキル基又はアリール基、Rは水素原子又はメチル基、aは2又は3、nは1〜100の整数を示す。
【請求項3】
前記構成単位(B)が下記式(2)で示される構成単位であることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【化2】


一般式(2)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【請求項4】
構成単位(A)/(B)の質量比が100/1〜100/200であることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレートは、さらに反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位及びフッ素含有(メタ)アクリレート単位から成る群から選択される少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【請求項6】
前記反応性官能基は、水酸基又はカルボキシル基のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の離型剤。
【請求項7】
メラミン、イソシアネート、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、及び紫外線硬化型樹脂から成る群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋されることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【請求項8】
主剤/架橋剤の質量比が、100/1〜100/200であることを特徴とする請求項7に記載の離型剤。
【請求項9】
セラミックグリーンシート製造工程用に使用されることを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【請求項10】
シリコーン化合物を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の離型剤。
【請求項11】
基材と、その基材の少なくとも一方の面に設けられ、離型剤から形成される離型剤層とを備える離型シートにおいて、
前記離型剤が、
(A)アルキル基又はアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、
(B)アルキル基の炭素数が1〜30のアルキル(メタ)アクリレート単位と
を含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤として含むことを特徴とする離型シート。

【公開番号】特開2010−144046(P2010−144046A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322749(P2008−322749)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】