説明

離型紙用原紙およびそれを用いた離型紙

【課題】 特に産業用工程紙に使用される離型紙用原紙において、ポリエチレンラミネート紙並に剥離剤の目止め性に優れ、製紙原料として再生可能な離型紙用原紙を提供する。また、工程紙や剥離紙に好適な離型紙を提供する。
【解決手段】 基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含有する塗工層を設けてなる離型紙用原紙であって、前記顔料が、少なくとも体積分布平均粒子径が0.5〜3.0μmでありかつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状の顔料と、体積分布平均粒子径が0.5〜1.5μmでありかつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状以外の顔料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維プリプレグや合成皮革などの製造工程中にキャリアーとして使われる工程紙や、粘着ラベル、粘着シートなどに使用する剥離紙等の離型紙、及びこれに用いられる離型紙用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙などの基材に、シリコーン系樹脂やアルキド系樹脂などの剥離層を設けた離型紙は、炭素繊維プリプレグや塩ビレザーやポリウレタンレザーなどの合成皮革、セラミックシートなどの製造工程に使用される工程紙や粘着ラベルや粘着シート、粘着テープ等の剥離紙、食品分野ではベーキングペーパーやベーキングトレーなど様々な用途に使用されている。このような離型紙の基材に求められる品質としては、シリコーン系樹脂などの剥離剤の目止め性以外にも、耐溶剤性、耐熱性、寸法安定性などが求められる。
【0003】
工程紙用途の一つとして、繊維強化複合材料で炭素繊維プリプレグ用途が挙げられる。炭素繊維プリプレグは、テニスラケットやゴルフクラブ、釣竿のシャフトなどのスポーツレジャー関係から飛行機の尾翼などの航空機関連まで広く用いられている。炭素繊維プリプレグは炭素繊維シートにエポキシ系樹脂、ビスマレイミド系樹脂などの熱硬化性の樹脂を含浸して熱硬化したものであり、通常はその片面または両面が適度な剥離特性を有する剥離工程紙に支持された状態で提供される。この工程紙は炭素繊維プリプレグの製造工程において当初から用いられ、工程紙上で炭素繊維シートに樹脂を含浸して熱で半硬化させ、工程紙から剥がして柔軟性のある状態で成型した後、完全に硬化される。
また、塩化ビニルレザーやウレタンレザー等の合成皮革やセラミックシートの製造工程においては、ウレタンペーストや塩化ビニルペーストなどをキャスティングする際に工程紙を使用する。
【0004】
前述した離型紙の原紙としては、剥離剤の目止め性が良好で剥離性が優れ、良好な表面光沢、平滑性が得やすく、耐水性、耐溶剤性もよいことからポリエチレンラミネート紙が多く使用されている。しかし、近年環境問題が騒がれる中、ポリエチレンフィルムは疎水性であるため、この基材を再度回収し、製紙工程で再生利用することは困難であるので、廃棄処分されているのが現状である。また、両面ポリエチレンラミネートしたものは、炭素繊維プリプレグや合成皮革の工程紙として使用した場合、樹脂を硬化させる工程で熱にさらされた時、工程紙中の水分がラミネート層から蒸発しにくいためブリスター(火膨れ)が起こってしまう。
【0005】
一方、シリコーン樹脂等の剥離剤溶液の浸透の抑制はポリエチレンラミネート紙と比較するとやや劣るものの、高度に叩解したパルプを原料とすることにより剥離剤溶液の浸透を抑制させた、グラシン紙タイプの離型紙用原紙も日本で多く用いられている。しかし、グラシン紙は高度に叩解しているため寸法安定性が劣り、工程紙として使用した場合熱工程で収縮するため、炭素繊維プリプレグや合成皮革が工程紙から浮き上がってしまい、工程紙と炭素繊維プリプレグ等との間でボコツキが発生する。また、原料のパルプを極度に叩解して使用するため繊維間結合が強固になっており、離解再生利用しようとしても、水中で容易に分散しないという欠点を有している。例え機械的処理を強化し、あるいは化学的処理を導入することによって水中で分散できたとしても、叩解処理の強化により繊維が著しく損傷している上に、離解処理でさらに繊維の損傷が進行するので、一般の紙の原料として再利用することは困難である。
【0006】
再生性を有する離型紙用原紙としては、ポリビニルアルコール、デンプン等の水溶性高分子、あるいはスチレン・ブタジエンラテックス、アクリル・スチレン共重合体等の疎水性樹脂エマルジョンを、単独でまたは2種以上を混合して顔料と共に基紙表面に塗工する方法が報告されている(特許文献1)。また、特定の平板顔料と合成ラテックスを基紙表面に塗工した方法が報告されている(特許文献2)。さらに、アクリル樹脂を含浸させた基紙に、顔料及びゲル含量を規定したバインダーからなる目止め層を塗工する方法が報告されている(特許文献3)。
【0007】
一方、剥離剤としては、シリコーン樹脂と、オレフィン系、長鎖アルキル基含有ポリマー系、及びフッ素系に代表される非シリコーン樹脂とがあり、エマルジョンや溶剤型または無溶剤型として使用されている。実用上は、剥離性能や経時安定性に優れたシリコーン樹脂が大半を占めている。
日本では、これらシリコーン樹脂を溶剤で希釈した溶剤型シリコーンを剥離紙用基材に塗布するのが一般的である。その理由は、ユーザーの様々な剥離性能の要求に対応するため、剥離剤を塗布する際、溶剤で希釈することにより流動性を適宜調節し、基材表面に剥離剤被膜の均一な層を形成させ、剥離剤の性能を最大限に発揮させることが容易にできるという点にある。しかしながら、近年、PRTRやISO14001との関連もあり、安全面や公害面に対して配慮しなければならないだけでなく、作業者の健康保持の面からも剥離剤の無溶剤化が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−144198号公報
【特許文献2】特開2000−282397号公報
【特許文献3】特開2006−274483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された従来技術においては、塗工層に使用する顔料によっては、それだけでは十分な剥離剤の目止め性を得ることが出来ないため、さらに塗工層の上に剥離剤の目止め層を設ける必要が生じてくる。また、使用する顔料によっては塗料粘度が上昇し、基紙表面への塗工時にストリークスクラッチ等の塗工欠陥が発生するなど塗工適性に問題が出てくる。
さらに、10g/m程度の塗工量で基紙表面の被覆性は充分であるものの、特に塗工層中の顔料の含有率が90質量%を超えるものは、形成された塗工層に微小な空隙が形成され、剥離剤やそれを希釈する溶剤が塗工層、更には紙層に進入するので、使用する剥離剤量が増加し、コストアップの原因となる。
【0010】
また、無溶剤剥離剤を用いる場合は、濃度が100%の状態で塗工されるため、それを最小限の塗工量で基紙の表面に均一に塗工できるかどうかによって低コスト化の可否が決まる。従って、基材にはより高い平滑性が必要となるのである。また、基材に塗布される剥離剤は0.5〜2.0g/mと少ないため、基材と接触する塗工ロールに異物が存在すると、異物部分については基材に剥離剤が塗工されないことになる。このような離型紙を用いて粘着シートとした場合、粘着剤層を伴った表面基材を剥がすときの剥離力が極度に重くなり、品質面において極めて重大な欠点となる。
【0011】
塗工ロール上への異物の転写は、ポリエチレンラミネート紙では発生しにくいが、再生可能な従来のクレータイプ等の離型紙原紙においては確認されることが多い。この異物の転写は、剥離剤の浸透を抑えかつ塗工層表面の凹凸や微小な空隙が少なくなるよう塗工層中の結着剤の使用量を多くした為に、塗工層がべたつき、巻き取り保管されている状態で基紙の非塗工面から塗工面へ紙粉等が転移されることによって生じていると考えられる。
上記の理由から、安全面及び公害面で優れている無溶剤型剥離剤の浸透を少ないバインダー量で抑制し、基材表面に均一な薄膜を形成することのできる剥離紙用基材の開発が強く望まれている。さらに、森林資源保護の観点から再生利用可能な剥離紙が強く望まれているが、現状ではこれらの要件を充分満たし得る剥離紙は提供されていない。
【0012】
以上のような状況に鑑み、本発明の第1の目的は、特に産業用工程紙に使用される離型紙用原紙において、ポリエチレンラミネート紙並に剥離剤の目止め性に優れ、製紙原料として再生可能な離型紙用原紙を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、工程紙や剥離紙に好適な離型紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記の課題について鋭意研究を重ねた結果、原紙の少なくとも一方の面に、特定の顔料を含有する塗工層を目止め層として設けることによって本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含有する塗工層を設けてなる離型紙用原紙であって、前記顔料が、少なくとも体積分布平均粒子径が0.5〜3.0μmでありかつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状の顔料と、体積分布平均粒子径が0.5〜1.5μmであり、かつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状以外の顔料であることを特徴とする離型紙用原紙である。
【0015】
特に、前記板状形状の顔料と板状形状以外の顔料の質量比が50/50〜85/15であることが好ましい。
また、本発明は上述した離型紙用原紙の塗工層の上に、剥離剤からなる剥離層を直接設けてなる離型紙である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の離型紙用原紙は、剥離剤の目止め性及び耐溶剤性に優れるので、剥離剤を経済的に塗布することが出来る上、製紙原料として再生可能であるという利点を有する。また、本発明の離型紙用原紙を用いて得た離型紙は再生可能であるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用される基紙は、木材パルプ系繊維を主体とする。木材パルプ系繊維としては針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプ等を、適宜配合して得ることが出来る。また、必要に応じてケナフ、麻、竹等の非木材系のパルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等の、セルロース繊維以外の繊維材料を配合することも可能である。
【0018】
パルプ叩解度はカナダ標準ろ水度で300ml以上にすることが好ましい。カナダ標準ろ水度が300ml未満の場合、繊維間結合面積が多いため寸法安定性が悪く、また抄紙時のワイヤーパートにおいて脱水性が低下するので、抄紙速度が低下し生産性が悪化する。
【0019】
上記基紙の抄紙に際しては、サイズ剤、紙力増強剤、定着剤、歩留まり向上剤、染料等の内添薬品を添加したり、抄紙工程の途中で、デンプン、ポリビニルアルコール等の紙力向上剤、表面サイズ剤、及び染料等を、サイズプレス、ゲートロール等を用いて塗布する等、適宜表面処理を行うことも可能である。なお、内添填料については、紙粉として脱落する恐れがある上、無溶剤剥離紙を塗布する際に、塗工ロールへの混入異物の一つとなりうるため、配合を極力抑えるべきである。
【0020】
本発明において、塗工層とは、少なくとも顔料と結着剤とによって構成される層であり、これを紙基材の少なくとも一方の面に設けることにより離型紙用原紙が得られる。本発明に使用される顔料は、体積分布平均粒子径が0.5〜3.0μm、粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状の顔料と、体積分布平均粒子径が0.5〜1.5μm、粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下の板状形状以外の顔料からなる。このような顔料を用いることにより、剥離剤の目止め性を顕著に高めることが可能となる。板状形状の顔料及びそれ以外の顔料の体積分布平均粒子径が0.5μmより小さいと、原紙表面の繊維間の空隙を埋める効果は得られるものの、顔料間の接着に必要な接着剤が多量に必要となり、塗工層のベタツキが発生しやすくなるし、再生利用が困難になる。また結着剤の含有量を上記問題がない程度の量にする場合、微細な空隙が多くなり剥離剤の浸透を防ぐことが出来ない。板状形状の顔料及びそれ以外の顔料の体積分布平均粒子径がそれぞれ3.0μm、1.5μmより大きい場合、及び板状形状の顔料及びそれ以外の顔料の粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以上の場合、塗工面が粗となり剥離剤を最小限の塗工量で均一に塗工することが出来ない。
【0021】
また塗工層中の板状形状の顔料及びそれ以外の顔料の割合は、質量比で板状形状の顔料/板状形状以外の顔料=50/50〜85/15であることが好ましい。板状形状の顔料の配合量が少ない場合、剥離剤の目止め性が悪化したり、剥離剤を塗布したときの面感が悪くなったりする傾向にある。板状形状の顔料の配合量が多い場合は、塗料の粘度が上昇するため塗工適性が悪化する傾向にある。たとえば、ブレード塗工時はストリークスクラッチが発生しやすく、フィルムトランスファー塗工時はボイリングやミストが発生しやすくなる。
【0022】
板状形状の顔料は塗工の際に平面方向に配向するためシリコーンの浸透を防ぐ効果が高く、そのアスペクト比(顔料の配向面の長径/厚さ)が10以上であることが好ましい。アスペクト比が10未満では顔料粒子間に微細な隙間が多くなり、そこから剥離剤が浸透しやすくなるため剥離剤の目止め性が悪化する。板状形状の顔料としては、カオリン、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
板状形状以外の顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ホワイトカーボン、サチンホワイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏、水酸化アルミニウム(球状等)、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、亜硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどの無機顔料やプラスチックピグメントなどの有機顔料等を1種以上使用される。
【0023】
また本発明においては、結着剤として、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリルニトリルブタジエン系共重合体ラテックス、酢酸ビニル系共重合体ラテックスなどの各種ラテックスを用いることができる。
各種ラテックスのトルエンに対するゲル含量は80%以上であることが好ましい。ゲル含量が80%未満では、剥離剤中のトルエンやヘキサン等に対する原紙の耐溶剤性が不足するため、溶剤シリコーンなど溶剤系の剥離剤を塗布する際に、溶剤により塗工層が劣化し、剥離剤の目止め性が低下して剥離剤が基紙に浸透して剥離性が低下する。また、炭素繊維プリプレグや合成皮革の工程紙として使用した場合、炭素繊維プリプレグに含浸する樹脂および合成皮革に用いる合成樹脂はトルエンやジメチルホルムアルデヒドなどの溶剤で希釈してあるため、溶剤による塗工層の劣化により塗工層が剥離しやすくなり、繰り返し使用回数が減少し、塗工層の転移による炭素繊維プリプレグや合成皮革の外観不良となる。
同様の目的で、各種ラテックスを製造する際に、スチレン及びブタジエンに加えてアクリル系単量体を0.5質量部以上5質量部未満添加して共重合させることが好ましい。アクリル系単量体の種類は特に限定されることはないが、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等が特に好ましい。
【0024】
また、本発明のラテックスは、顔料100質量部に対して、10〜40質量部配合することが好ましく、より好ましくは15〜30質量部である。10質量部未満の場合、顔料と顔料の間にラテックス樹脂を充分に充填することができず微細な空隙が発生するので剥離剤が塗工層および基紙内部への浸透を抑制できない。従って、均一な剥離層を得るために高価な剥離剤の塗工量を増加させなければならないのでコストアップになる。また、40質量部を超える場合、造膜性の良い合成ラテックスの比率が高すぎるので、剥離紙として使用した後の再利用に際する、パルパーによる離解性が劣るため、製紙原料として再利用することが困難になる。また、ラテックスが多すぎると加工用原紙表面のベタツキをより助長するため、巻取保管時にブロッキングを起こす可能性があり好ましくない。
【0025】
本発明の離型紙用原紙において、基紙上に設ける塗工層の塗工量は7g/m以上15g/m以下の範囲であることが好ましい。7g/m未満であると基材表面のパルプ繊維間の空隙を完全に目留めすることが出来ないため、剥離剤の基材内部への浸透を抑えることが出来ない。また、塗工量が15g/mを越えても塗工量の増加に伴う品質の向上が期待できないので不経済である上、塗工面のベタツキや離解再生性の観点からも好ましくない。また、透気抵抗度も高くなるため、断紙が発生し易くなる。
【0026】
本発明塗工層に使用する結着剤としては、上記ラテックス以外に、耐溶剤性を損なわない範囲でカゼイン、大豆蛋白や合成蛋白、ポリビニルアルコール、酸化デンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体澱粉、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン等の中から適宜選択して使用することができ、1種以上を併用しても良い。
【0027】
本発明の塗工層は前述した顔料、結着剤等を含有する塗工液を基紙上に塗布して得られるが、この塗工液には、分散剤、離型剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、防腐剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を使用しても良い。離型剤としてはステアリン酸カルシウム等脂肪酸もしくは高級脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、高級アルコール、ワックスエマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、ノニオン系界面活性剤等を使用することができる。
原紙に塗工液を塗工する方式としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工機を用いた方法の中から適宜選択することができる。
【0028】
本発明の離型紙用原紙の坪量は、50g/m以上200g/m以下が好ましい。50g/m未満では、紙腰、強度が低下するため、使用時に断紙やシワが発生しやすくなる。200g/mを越えると抄紙時の乾燥負荷が増すため生産性が低下し好ましくない。
【0029】
本発明の離型紙用原紙の寸法安定性として、加熱後の伸び率が0.7%以下であることが好ましい。0.7%を越える場合、製造時の加熱工程で炭素繊維プリプレグや合成皮革が工程紙から浮き上がって工程紙とプリプレグ、合成皮革との間でボコツキが発生してしまう。
【0030】
本発明の離型紙用原紙の剥離剤目止め性として、王研式透気抵抗度が5000秒以上あることが好ましい。5000秒未満では、溶剤系の剥離剤を使用した際の目止め性が不足する。
【0031】
離型紙用原紙を離型紙に加工するために使用する剥離剤としては、シリコーン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂など既知の剥離剤を用いる事ができる。また、溶剤系、無溶剤系いずれも用いることができる。これらの剥離剤を離型紙用原紙に塗工する方法としては、マルチロールコーター、グラビアコーター等が使用される。この場合の塗工量は0.5〜2.0g/m程度、より好ましくは0.5〜1.5g/m程度の範囲で適宜調節される。なお、塗工量が0.5g/m未満では剥離層としての作用効果に劣り、2.0g/mを越えると経済的な面から実用性に乏しい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、これらによって本発明は何等制約を受けるものではない。なお、特に明記しない限り、例中の部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。また、塗布量、部数、混合割合等は全て固形分で表した。
【0033】
<顔料の平均粒子径及び粒度分布>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて粒子の体積粒度分布を測定し50%の粒径を平均粒子径とした。
【0034】
<剥離剤の目止め性>
油性マジックインキにより離型紙用原紙の塗工層を設けた面に印字し、非印字面へのマジックインキの裏抜けの程度を目視観察した。
評価基準
○:裏抜け無し、△:一部裏抜け、×:全面に裏抜け
【0035】
<塗工適性>
ブレード塗工時のストリークやスクラッチの発生度合いを評価した。
○:発生しない、△:若干発生する、×:多く発生する
【0036】
<剥離剤塗工後の面感>
カチオン重合紫外線硬化型シリコーン(UV9300、モメンティブジャパン製)100部と、光カチオン触媒(UV9380C、モメンティブジャパン製)3部とを混合したシリコーン樹脂液を、離型紙用原紙上にマルチロールコーターにて絶乾重量で1.0g/mとなるように塗工し、面感を目視評価した。
評価基準
○:塗布ムラ無く良好、△:若干ムラが有るが問題無く良好、×:塗布ムラ有り不良
【0037】
<実施例1>
カオリンA(アストラプラス、平均粒子径:0.7μm、2μm以下の含有率3.0%、イメリス社製)82部、炭酸カルシウムA(カービタル90、平均粒子径:0.7μm、2μm以下の含有率10.0%、イメリス社製)18部に対し、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(JSR0693、JSR社製)を20部、酸化澱粉を4部配合し、固形分60%の塗工液を調製した。この塗工液を用い、坪量85g/mの上質紙の片面に乾燥塗工量が10g/mになるように塗工液をブレードコーターで塗工して離型紙用原紙を製造した。この離型紙原紙について、剥離剤の目止め性、塗工適性、剥離剤塗工後の面感評価を行った。
【0038】
<実施例2>
カオリンAをカオリンB(ハイドラプリント、平均粒子径:2.8μm、2μm以下の含有率13.0%、日成共益社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0039】
<実施例3>
炭酸カルシウムAを炭酸カルシウムB(ソフトン2600、平均粒子径:1.3μm、2μm以下の含有率14.0%、備北粉化工業社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0040】
<実施例4>
カオリンAと炭酸カルシウムAの配合比率を53/47としたこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0041】
<実施例5>
カオリンAと炭酸カルシウムAの配合比率を95/5としたこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0042】
<実施例6>
カオリンAと炭酸カルシウムAの配合比率を47/53としたこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0043】
<比較例1>
カオリンAをカオリンC(アストラプレート、平均粒子径:3.6μm、2μm以下の含有率16.0%、イメリス社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0044】
<比較例2>
カオリンAをカオリンD(カピムNP、平均粒子径:2.7μm、2μm以下の含有率20.0%、イメリス社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0045】
<比較例3>
カオリンAをカオリンE(アストラシーン、平均粒子径:0.4μm、2μm以下の含有率1.0%、イメリス社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0046】
<比較例4>
炭酸カルシウムAを炭酸カルシウムC(カービタル97、平均粒子径:0.4μm、2μm以下の含有率3.0%、イメリス社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0047】
<比較例5>
炭酸カルシウムAを炭酸カルシウムD(ソフトン2200、平均粒子径:1.5μm、2μm以下の含有率24.0%、備北粉化工業社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0048】
<比較例6>
炭酸カルシウムAを炭酸カルシウムE(ソフトン1800、平均粒子径:2.3μm、2μm以下の含有率40.0%、備北粉化工業社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0049】
<比較例7>
カオリンAを100部、炭酸カルシウムAを0部に変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0050】
<比較例8>
カオリンAを0部、炭酸カルシウムAを100部にに変更したこと以外は実施例1と同様にして離型紙用原紙を得た。
【0051】
以上の実施例、比較例で得られた離型使用原紙を評価した結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、本発明に相当する実施例1〜6は、剥離剤の目止め性が優れ、塗工適性及び剥離剤塗工後の面感も優れる。一方、比較例1、2、5、6は剥離剤塗工後の面感が悪い。特に、比較例5、6は炭酸カルシウムの体積分布平均粒子径や粒径2μm以上の粒子の含有率が大きいため、剥離剤面感が劣るものであった。また、比較例3、4、8は剥離剤の目止め性及び剥離剤塗工後の面感が悪い。特に比較例3、4については、目止め性が悪く剥離剤が表面に残らないため、剥離剤面感が劣るものであった。また比較例7は塗工適性に劣り、剥離剤は均一に塗布されず剥離剤面感が劣るものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含有する塗工層を設けてなる離型紙用原紙であって、前記顔料が、少なくとも体積分布平均粒子径が0.5〜3.0μmでありかつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状の顔料と、体積分布平均粒子径が0.5〜1.5μmでありかつ粒径2μm以上の粒子の含有率が15%以下である板状形状以外の顔料であることを特徴とする離型紙用原紙。
【請求項2】
前記板状形状の顔料と板状形状以外の顔料の質量比が50/50〜85/15であることを特徴とする請求項1記載の離型紙用原紙。
【請求項3】
請求項1〜2の何れかに記載された離型紙用原紙の塗工層の上に、剥離剤からなる剥離層を直接設けてなる離型紙。

【公開番号】特開2011−214157(P2011−214157A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80205(P2010−80205)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】