離脱防止機能付きシール材および離脱防止管継手
【課題】管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、挿口を受口に挿入して管同士を接合させるときに、ロック体の爪部により挿口の外周面を傷つけることのない離脱防止機能付きシール材を提供する。
【解決手段】受口3のシール材収容溝6に配設されるシール材7が、弾性を有して圧縮可能なシール材本体9に、離脱防止用のロック体10が埋設された構成とされ、ロック体10に、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際に挿口5の外周面に食い込む爪部10a、10bが形成されており、当該シール材に、挿口5の挿入時に挿口5の外周面に当接して爪部10bが挿口5の外周面から離反する方向にロック体10を回転させる回転用弾性体11が設けられている。
【解決手段】受口3のシール材収容溝6に配設されるシール材7が、弾性を有して圧縮可能なシール材本体9に、離脱防止用のロック体10が埋設された構成とされ、ロック体10に、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際に挿口5の外周面に食い込む爪部10a、10bが形成されており、当該シール材に、挿口5の挿入時に挿口5の外周面に当接して爪部10bが挿口5の外周面から離反する方向にロック体10を回転させる回転用弾性体11が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続した管同士が離脱することを防止する離脱防止管継手に用いる離脱防止機能付きシール材、および離脱防止管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に敷設される水道管路などとして、ダクタイル鋳鉄管などの管を複数接続して管路を構成することは既に広く知られている。この種の管路において、曲管やT字管などの異形管を用いる場合には、この異形管の曲がり部分や分岐部分(すなわち、水の流れ方向が変更される箇所)で水圧によって管を移動させようとする力(不平均力)が作用するため、このような不平均力が作用しても管同士が互いに離脱することを防止する離脱防止機能を付加している。
【0003】
従来の管の離脱防止構造の1つとしては、図23に示すように、異形管(図23においては曲管)51と、この異形管51に接続された管52、53との接合部(継手部)54とにわたって、コンクリートブロック55で覆う構造(コンクリートブロック構造と称す)が用いられており、このように管52、53と異形管51とをコンクリートブロック55で一体化して、管52、53と異形管51との離脱を防止している。また、別の管の離脱防止構造として、図24、図25に示すように、管61、62の受口63の内周面と挿口64の外周面とに、ロックリング65を配設するロックリング収容溝66、67を形成し、これらの溝66、67にわたって周方向1つ割りのロックリング65を配設するとともに、管61、62の接合後に、ロックリング65を、受口63を管径方向に貫通するセットボルト68により管径方向内側に押圧して、ロックリング65の拡径を阻止し、これにより、ロックリング65を介して管61、62の離脱を防止する構造がある。
【0004】
しかし、図23に示すようなコンクリートブロック構造を用いる場合には、コンクリートブロック55を完全に硬化させてから、地中に配設しなければならないので、コンクリートが硬化するまでに多くの時間を要する。したがって、道路を早期に復旧させる必要がある場合には、図23に示すようなコンクリートブロック構造は採用されず、図25に示すようなロックリング65を用いた構造が採用される。
【0005】
ところが、図25に示すようなロックリング構造を用いた場合には、ロックリング65を縮径させながら受口61の溝64に嵌め込む際に、縮径用の治具や設備を必要として設備費などのコストの増加を招いたり、この嵌め込み作業に多くの時間を要したりする欠点を生じてしまう。
【0006】
このような欠点を改善可能な離脱防止管継手として、図26〜図30に示すような離脱防止機能を付与したシール材(以下、離脱防止機能付きシール材、或いは単にシール材と称す)70を離脱防止管継手に設けることが提案されている。すなわち、受口71の内周面に形成したシール材収容溝72に、弾性を有するシール材本体78を配設させているだけでなく、このシール材本体78に、内周部に爪部73a、73bが形成されたロック体73を埋設する。そして、前記不平均力などによって、図30に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとした際(つまり、受口71に対して、相対的に挿口75がc方向に移動しようとして、受口71から挿口75が離脱しようとした際)には、ロック体73が、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接しながらa方向に回転して、ロック体73の爪部73a、73bが挿口75の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止する(つまり、受口71から挿口75が離脱することを阻止する)よう構成されている。
【0007】
なお、ロック体73における外周部には、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接する湾曲溝部73cが窪んだ形状で形成されている。そして、挿口挿入時(管接合時)には、図28、図29に示すように、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73cが摺接し、かつ、ロック体73の爪部73bが挿口75の外周面に強く当接した状態で、挿口75が押し込まれる。そして、挿口75の挿入力によって、ロック体73の爪部73aが挿口75の外周面より外側に押し退けられるように、シール材本体78を変形させながらロック体73全体をd方向に回転させることで、ロック体73の内側への挿口75の挿入を許容するよう構成されている。
【0008】
この離脱防止管継手構造を用いることで、離脱防止のための必要な作業として、前記ロック体73を埋設した離脱防止機能付きシール材70を予め準備しておき、受口71内にシール材70を配設するだけで済む。したがって、縮径用の治具や設備などが不要となるとともに、ロックリングの縮径作業が不要であるので、この縮径作業を行う手間や時間を省くことができる。
【0009】
なお、図26〜図30に示す離脱防止管継手と類似した構造の離脱防止管継手が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−221478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図26〜図30に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、挿口75を受口71に挿入して管同士を接合させる際に、ロック体73の爪部73bが挿口75の外周面に比較的大きな押圧力をかけながら直接接触した状態で、挿口75からロック体73に大きな力を与えてロック体73を回転させる構造であるので、この際に挿口75の外周面に爪部73bとの接触部分で傷がつき、通水時などに、この傷がついたところから腐食するおそれがあるという課題がある。
【0012】
本発明は上記課題を解決するもので、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、挿口を受口に挿入して管同士を接合させるときに、ロック体の爪部により挿口の外周面を傷つけることのない離脱防止管継手および離脱防止機能付きシール材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の離脱防止機能付きシール材は、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、弾性を有して圧縮可能な環状のシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設されており、前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部が形成されており、当該シール材に、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して前記爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体が設けられていることを特徴とする。なお、ロック体において爪部を管軸心方向に対して複数形成し、受口開口端寄りの爪部近傍に、回転用弾性体を設けると好適である。
【0014】
上記構成により、管同士を接合すべく、一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口を挿入すると、当該シール材に設けた回転用弾性体が挿口の外周面に当接して、ロック体が、このロック体の爪部を挿口の外周面から離反する方向に回転する。したがって、挿口を受口に挿入して管同士を接合させるときに、ロック体の爪部が挿口の外周面から離反し、この結果、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できる。
【0015】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材の回転用弾性体は、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所において、管径方向内側に突出するように配設されていることを特徴とする。
【0016】
この構成により、回転用弾性体が配設されている箇所では爪部の少なくとも一部が除かれているので、爪部が設けられたまま(残されたまま)で回転用弾性体が配設されているような不具合を生じることが無く、挿口の挿入時にロック体を回転させて、爪部を挿口の外周面から離反させることができる。つまり、爪部が設けられたままで、この爪部や爪部の近傍に被せられるように回転用弾性体が配設されている場合には、挿口の挿入時に、爪部によって回転用弾性体が切断されてしまって、爪部が挿口の外周面に接触して傷が生じてしまったり、回転用弾性体が爪部と挿口の外周面との間から逃げてしまい、ロック体を良好に回転させることができなくなって、爪部が挿口の外周面に接触して傷が生じてしまったり、挿口の挿入時の力として極めて大きくなって、作業性の低下を招いたりする不具合を生じるが、本発明によればこのような不具合が生じない。
【0017】
回転用弾性体は、その断面形状がシール材本体の内周面部から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部と、この傾斜面部の管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部とを有するように構成してもよいが、好ましくは、回転用弾性体が、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部と、この湾曲傾斜面部の管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部とを有する形状とし、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設するとよい。
【0018】
このような離脱防止管継手では、挿口挿入時にシール材を変形させることによりロック体を回転させて挿口の挿入を許容させる構造であるため、挿口挿入時に比較的大きな力が必要となる。そして、回転用弾性体を設けたことで、挿口挿入時に、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口挿入時に挿口外周面に回転用弾性体が当接することでさらに大きな力を要することとなる。しかし、上記のように、回転用弾性体に、その断面形状が、シール材本体の内周面部から、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する湾曲傾斜面部を形成し、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設することにより、この際の挿口の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、回転用弾性体の湾曲傾斜面部の断面形状が湾曲形状であるので、挿口挿入時に挿口を挿入し続けると、回転用弾性体の突出量に応じてシール材を滑らかに変形させてロック体を良好に回転させ、最終的には、挿口が回転用弾性体の厚肉平面部に接触して、ロック体の爪部が外周面より離反され、爪部により挿口の外周面を傷つけることをより確実に防止できる。
【0019】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時に、回転用弾性体により回転されたロック体において、このロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材が配設されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成において、ロック体に回転用弾性体を設けただけであると、回転用弾性体によって挿口の挿入時に爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体が回転されたにもかかわらず、挿口外周面と受口との間の間隔が極めて小さいなどの理由により、挿口の挿入時に爪部が挿口外周面に接触して傷つく恐れがある場合があるが、上記のように、ロック体に保護材を設けることで、ロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させることができる。したがって、挿口の挿入時に爪部により挿口の外周面に傷がつくことを一層確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができる。
【0021】
なお、保護材としては、対応する爪部の管径方向内側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成させてもよいが、必要に応じて、保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部を設け、前記保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成してもよい。また、保護材を、対応する爪部との間に隙間を有する状態で形成してもよい。
【0022】
例えば、保護材を設けた爪部を尖らせて形成して、挿口が離脱しようとした際に爪部が挿口へ確実に係止するよう構成した場合などに、保護材として、対応する爪部の内側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成させただけであると、保護材による保護機能が不十分となって、爪部により挿口の外周面を傷つけることがある。これに対処すべく、保護材をほぼ一定厚みの厚肉状に形成すると、爪部により挿口の外周面を傷つけることは防止できるが、挿口挿入時に保護材が挿口外周面により強く当接して、さらに大きな力を要することとなる。これに対して、上記のように、保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域だけに形成すると、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できながら、厚肉部が比較的小さな力で変形し易くなるので、挿口挿入時での挿口の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、保護材を、対応する爪部の先端部や先端部近傍まで形成すると、場合によっては、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に、保護材が入り込み、保護材が切断される場合があり、このときには、挿口の挿入に大きな力が必要となることがある。これに対して、爪部と保護材との間に隙間を有するように保護材を形成することで、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に保護材が入り込むことを防止でき、挿口の挿入において必要な力を減少できる。
【0023】
なお、回転用弾性体や保護材の配置構成としては、回転用弾性体を、ロック体における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設し、保護材が設けられた爪部を、前記回転用弾性体の間に形成させたり、回転用弾性体を、ロック体における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する中央部に配設し、保護材が設けられた爪部を、ロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設したりすればよい。
【0024】
また、回転用弾性体として、シール材本体と同じ材料、またはシール材本体と同じ硬度の材料で形成することで、シール材本体と回転用弾性体とを一体形成することが可能となる。
【0025】
また、回転用弾性体として、回転用弾性体は、シール材本体と異なる材料、またはシール材本体と異なる硬度の材料で形成してもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体を設けたことにより、挿口の挿入時に、前記回転用弾性体によりロック体が回転して、ロック体の爪部が挿口の外周面から離反する方向に回転し、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できる。この結果、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができながら、挿口の外周面に傷がつかないので、このシール材を有する管継手を水道管路などとして用いた場合でも、通水時などにおける腐食の可能性を最小限に抑えることができて、良好な信頼性を維持できる。
【0027】
また、本発明によれば、回転用弾性体を、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所に配設することで、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止する機能を一層確実に得ることができる。
【0028】
また、回転用弾性体に、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する湾曲傾斜面部を形成し、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう構成することにより、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できると同時に、挿口挿入時での挿口の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。したがって、挿口挿入時での挿口の挿入力が極めて大きくなると、特殊な接合用治具が必要となることがあるが、上記のように構成することで、特殊な接合用治具を用いなくても済み、接合作業の作業性の向上や設備費の低減を図ることができる。
【0029】
また、本発明によれば、爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時にロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材を設けることで、挿口の挿入時に爪部により挿口の外周面に傷がつくことをさらに確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができて、信頼性をさらに向上させることができる。
【0030】
また、保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部を設け、前記保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成することにより、爪部により挿口の外周面を傷つけることをより確実に防止できながら、挿口挿入時での挿口の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、爪部と保護材との間に隙間を有するように保護材を形成することで、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に保護材が入り込むことを防止でき、挿口の挿入において必要な力を減少できて作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図である。
【図2】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の断面図で、ロック体が設けられていない箇所を示している。
【図3】(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図4】(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図3(b)におけるIVa-IVa線矢視断面図およびIVb-IVb線矢視断面図である。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図8】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【図9】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【図10】(a)〜(c)は、それぞれ、比較例としての同離脱防止管継手における離脱防止機能付きシール材のロック体および回転用弾性体の要部拡大断面図である。
【図11】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手の断面図で、受口と挿口との間の隙間が広い(大きい)場合を示す。
【図12】(a)および(b)は、本発明の他の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図13】(a)、(b)および(c)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図12(b)におけるXIIIa-XIIIa線矢視断面図、XIIIb-XIIIb線矢視断面図およびXIIIc-XIIIc線矢視断面図である。
【図14】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図15】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図16】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図17】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図18】(a)、(b)および(c)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図17(b)におけるXVIIIa-XVIIIa線矢視断面図、XVIIIb-XVIIIb線矢視断面図およびXVIIIc-XVIIIc線矢視断面図である。
【図19】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図20】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図21】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図22】図12から図16に示す離脱防止管継手において保護材が入り込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図23】従来の管の離脱防止構造を概略的に示す図である。
【図24】他の従来の離脱防止構造としての同離脱防止管継手の外観を示す図である。
【図25】同従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図26】さらに他の従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図27】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図28】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入しつつある状態を示す。
【図29】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図30】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を図面に基づき説明する。なお、図1、図5〜図8は、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図で、図5は挿口を挿入する直前の状態を示し、図6は挿口の先端部を挿入しつつある状態を示し、図7は挿口を挿入した状態を示し、図8は挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。また、図3(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図、図4(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図3(b)におけるIVa-IVa線矢視断面図およびIVb-IVb線矢視断面図である。
【0033】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1は、互いに接合される一方の管2の端部に形成された受口3の内部に、他方の管4の端部に形成された挿口5が挿入され、受口3の内周(詳しくは、受口3の管端面3aよりも奥側の部分の内周)に形成されたシール材収容溝6に環状のシール材7が配設され、受口3と挿口5との間でシール材7が圧縮されることで挿口受口間のシールが行われる。なお、図1における5aは挿口5の先端部外周に形成されて先端ほど細くなる挿口5の傾斜面である。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1に備えられているシール材7は、後述するように、互いに接続した管2、4同士が離脱することを防止する離脱防止機能を有している。なお、管2、4は例えばダクタイル鋳鉄製とされているが、これに限るものではない。
【0035】
以下、シール材(離脱防止機能付きシール材)7と、このシール材7が配設される受口3のシール材収容溝6の構造などについて詳しく説明する。図2などに示すように、シール材7は、シール材7をシール材収容溝6内の所定位置に保持させるヒール部(踵部)7aと、挿口受口間のシールを行うバルブ部7bとを一体化した形状とされ、バルブ部7bは、外力を受けていない状態では断面略円形(または断面略楕円形)とされている。また、これに対応して、シール材収容溝6にもシール材7のヒール部7aが嵌め込まれてシール材7を係止する嵌め込み溝6aと、シール材7のバルブ部7bが収容されるバルブ部収容溝6bとが形成されている。
【0036】
また、受口3のシール材収容溝6における嵌め込み溝6aとバルブ部収容溝6bとの間には、内側(管径方向内側)に突出する受口内面突部8が形成されており、シール材7にも受口内面突部8に摺接する湾曲溝部7cが形成されている。なお、この実施の形態では受口内面突部8の端部は断面略半円形状とされているが、この形状に限るものではない。
【0037】
図1〜図4などに示すように、シール材7は、弾性を有して圧縮可能なゴム製などからなる環状のシール材本体9に、金属片などの剛性の大きな材料で形成された離脱防止用のロック体10が、図9に示すように周方向に間隔をおいて複数埋設された構成とされている。なお、この実施の形態では、8つのロック体10が周方向に等間隔で配設されている場合を図示しているが、ロック体10の数を増減させたり、これに応じて配設する間隔を変更させたりしてもよい。
【0038】
ロック体10には、図8に示すように、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際、すなわち、管2、4同士が互いに離脱方向に移動しようとする際に、挿口5の外周面に食い込む爪部10a、10bと、図1および図5〜図7に示すように、挿口5が受口3に挿入されて管2、4同士が接合された際に、受口3のシール材収容溝6において受口内面突部8に摺接可能な湾曲溝部10cなどが形成されている。
【0039】
図3〜図7に示すように、爪部10a、10bは、ロック体10よりシール材7の内側、より詳しくは、受口3の奥側および管径方向内側に斜めに突出するように形成され、この実施の形態では、各ロック体10に管軸心方向に対して2つの爪部10a、10bが並ぶように形成されている場合を示している。なお、図示しないが、爪部10a、10bを管軸心方向に対して3つ以上並ぶように形成してもよい。
【0040】
ここで、図3、図4などに示すように、受口3の開口端より奥側である爪部(奥側爪部とも称す)10aは、ロック体10の全幅(なお、ロック体10の幅方向とは、受口3などが形成されている管の周方向に沿う方向である)にわたって形成されている。しかし、受口3の開口端寄りの爪部(開口寄り爪部とも称す)10bは、ロック体10における幅方向の中央部だけ残るように形成されており、ロック体10における幅方向の両端部寄り箇所では前記開口寄り爪部10bがそれぞれ切削加工などにより除かれており、この削り取られた削除部分に、例えば、ゴム製などからなるシール材本体9と同様な材料で同様な弾力性を有する回転用弾性体11がシール材本体9とともに一体形成されている。なお、回転用弾性体11を形成する手法はどのような方法でもよく、シール材本体9と別体に作成して、前記開口寄り爪部10bに貼り付けてもよい。
【0041】
この回転用弾性体11は、図5〜図7に示すように、挿口5の挿入時に挿口5の外周面に当接して、ロック体10を、その爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向に回転させる機能を有する。図3(a)、図4(a)などに示すように、回転用弾性体11は、開口寄り爪部10bよりも管径方向内側に突出する状態で設けられている。また、回転用弾性体11は、その形状が、外力が作用しない状態で、図3(a)に示すように、その断面形状がシール材本体9の内周面部9aから管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加して直線状に傾斜する傾斜面部11aと、この傾斜面部11aの管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部11bとを有する台形の断面形状に形成されている。なお、この実施の形態では、回転用弾性体11は上述したようにシール本体9と一体形成されているが、シール材本体9と合わせた厚みは、図4(a)などに示すように、ロック体10から管径方向内側に向けてほぼ同一厚みとなるように形成されている。
【0042】
さらに、図3(a),(b)、図4(b)などに示すように、ロック体10における開口寄り爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端側の面(管径方向内側に臨む面)には、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11により回転されたロック体10の開口寄り爪部10bが挿口5の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる一定厚みの薄肉(例えば、厚さ1mm)のゴム板などからなる保護材12がシール材本体9とともに一体形成されている。なお、保護材12を形成する手法はどのような方法でもよく、保護材12をシール材本体9とは別体に作成し、開口寄り爪部10bに貼り付けてもよい。
【0043】
上記構成において、管2、4同士がまだ接合されていない状態、すなわち、受口3に挿口5がまだ挿入されていない状態では、シール材7は、受口3のシール材収容溝6に装着されているだけの状態であるので、図2、図5に示すように、シール材7のバルブ部7bが管径方向の内側に大きく膨らんだ姿勢となっている。したがって、これに伴い、ロック体10も、後述する挿口5の挿入時と比べて、管径方向の内側(図2などにおける紙面の下方側)に寄った姿勢となって、爪部10a、10bが管径方向の内側に大きく突出している姿勢である。
【0044】
この状態から、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5を挿入させていくと、図6に示すように、まず、挿口5の傾斜面5aにシール材7の内側(管径方向の内側部分)が接触し、さらには、図7に示すように、挿口5の外周面にシール材7の内側が接触する。ここで、シール材7の内側では、ロック体10の爪部10a、10bが突出しているが、さらにロック体10の爪部(開口寄り爪部)10bには、この爪部10bよりも突出する回転用弾性体11が設けられているので、この回転用弾性体11が挿口5の傾斜面5aや外周面に接触し、さらなる挿口5の挿入動作に伴って回転用弾性体11も挿口5の挿入方向に力を受ける。これにより、シール材7のロック体10は、湾曲溝部10cが受口内面突部8に摺接した状態で、e方向、すなわち、爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向に回転する。この結果、挿口5の挿入時に、爪部10a、10bが挿口5の外周面に接触することを防止できて、爪部10a、10bにより挿口5の外周面が傷つくことを防止できる。なお、この挿口5の挿入時には、ロック体10が回転される際にシール材本体9を圧縮して変形させる必要があるので、挿口5の挿入時に、ある程度の挿入力が必要である。
【0045】
ただし、上記構成において、ロック体10に回転用弾性体11が設けられただけの構成である場合には、回転用弾性体11によって挿口5の挿入時に爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向にロック体10が回転されたにもかかわらず、挿口5の外周面と受口3との間の間隔が極めて小さい条件下であるなどの理由により、挿口5の挿入時に爪部10bが挿口5の外周面に接触する恐れがある。しかしながら、上記のように、ロック体10に回転用弾性体11を設けることに加えて、爪部10bの先端部に続く受口端部側の面に、薄板状の保護材12を設けたことにより、このような場合でも、挿口5の外周面には保護材12が接触し、これにより、ロック体10の爪部10a、10bが挿口5の外周面に当接することを阻止したり、あるいは当接する力を軽減させたりすることができる。したがって、挿口10の挿入時に爪部10a、10bによって挿口5の外周面に傷がつくことを一層確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができる。
【0046】
また、上記構成によれば、回転用弾性体11が配設されている箇所では爪部(開口寄り爪部)10bが除かれているので、爪部10bが設けられたまま(残されたまま)の状態で回転用弾性体11が配設されているような不具合を生じることが無く、挿口5の挿入時にロック体10を良好に回転させて、爪部10a、10bを挿口5の外周面から離反させることができる。
【0047】
つまり、図10(a)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、この爪部10bの先端部に回転用弾性体11を被せるように配設させると、挿口5の挿入時に、爪部10bによって回転用弾性体11が切断されてしまって爪部10bが露出し、これにより爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じてしまう。なお、爪部10bによって切断されることがないように回転用弾性体11として、厚いゴムなどの弾性体や硬い弾性体を用いると、挿口5が受口3から離脱する際に、爪部10bが挿口5の外周面に引っ掛からず、離脱防止機能が不良となる。
【0048】
また、図10(b)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、この爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端部側の面(管径方向内側に臨む面)に回転用弾性体11が被せられるように配設させると、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11が前記爪部10bの受口端部側の面に沿ってf方向(管径方向外側)に移動して(逃げて)しまい、ロック体10が回転せず、これにより爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じてしまう。
【0049】
さらに、図10(c)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、回転用弾性体11を、爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端部側の面(管径方向内側に臨む面)から爪部10bの先端部まで突出可能な姿勢で配設すると、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11が爪部10bと挿口5の外周面との間にくさび状に食い込んでいき、挿口5の挿入時に、挿口5を極めて大きな力を付加しなければ、挿入できなくなり、特有の治具を必要として別途に高額な設備費を要したり、作業時間が多大となるなど作業性が低下したりする不具合を生じる。
【0050】
このように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで回転用弾性体11を設けると、上述したような不具合を生じるが、本発明の実施の形態では、回転用弾性体11が配設されている箇所では爪部10bが除かれているので、上記不具合を生じることが無くなり、挿口5の挿入時にロック体10を良好に回転させて、爪部10a、10bを挿口5の外周面から離反させることができる。
【0051】
また、本実施の形態においては、図3、図4などに示すように、回転用弾性体11を、ロック体10の爪部(開口寄り爪部)10bに対応する箇所における管2、4の周方向に沿うロック体10の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設し、保護材12が設けられた爪部10bを、回転用弾性体11の間に形成させているので、挿口5の挿入時には、回転用弾性体11が爪部10bの両側方で挿口5の外周面に良好に接触してロック体10が回転し、爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じることを良好に防止できる。一方、管2、4同士が離脱方向に移動しようとして、受口3から挿口5が離脱しようとした際には、図8に示すように、挿口5に伴って、回転用弾性体11が受口開口端側へ移動することにより、ロック体10がg方向に回転して、ロック体10の爪部10bが挿口5の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止されて、受口3から挿口5が離脱することが阻止される。
【0052】
なお、受口3と挿口5との間の隙間が広い(大きい)場合には、図11(a)に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとして受口3から挿口5が離脱しようとした際には、図11(a)に示すように、挿口5に伴って回転用弾性体11が受口開口端側へ移動してロック体10がh方向に回転した際に、ロック体10の開口寄り爪部10bではなくて、奥側爪部10aが挿口5の外周面に食い込み、管2、4同士の離脱を阻止される。ここで、ロック体10において、奥側爪部10aに対応する箇所では回転用弾性体11や保護材12が設けられていないため、このように受口3と挿口5との間の隙間が広い(大きい)場合において、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5が挿入される際には、図11(b)に示すように、ロック体10の奥側爪部10aが挿口5の外周面に接触する。しかしながら、この際は、ロック体10のi方向への回転角度(回転量)が小さくて済むとともに、シール材7(シール材本体9)の圧縮量が小さいため、挿口5の外周面には傷はつかない。このように、挿口5の外周面への傷の発生を防止することについて考慮しなければならないのは、受口3と挿口5との間の隙間が狭い場合に挿口5の外周面に接触する可能性のある開口寄り爪部10bだけでよい(爪部が3つ以上ある場合も同様である)。
【0053】
また、上記実施の形態では、回転用弾性体11として、その断面でシール材本体9の内周面部9aから、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する(すなわち直線状に増加する)傾斜面部11aを有する場合を述べたが、これに限るものではない。図12(a)、(b)、図13(a)〜(c)は、他の実施の形態に係る回転用弾性体11を示すもので、この実施の形態では、回転用弾性体11を、図12(a)に示すように、その断面でシール材本体9の内周面部分から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する(すなわち、管軸方向開口側は突出量および突出増加量がわずかであるとともに、管軸方向奥側ほど突出量および突出増加量が大きくなった)ことにより湾曲形状(より詳しくは、中央部がロック体10に近接するように窪む形状で湾曲する湾曲形状)に傾斜する湾曲傾斜面部11cと、この湾曲傾斜面部11cの管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部11bとを有する略台形の断面形状に形成している。そして、図14(a)、図15(a)、図16(a)に示すように、挿口挿入時に挿口5の先端部がまず湾曲傾斜面部11cの薄肉突出部分(湾曲傾斜面部11cの外側寄り部分)に当接するよう構成されている。なお、回転用弾性体11はシール本体9と一体形成されているが、図13(a)に示すように、シール材本体9と合わせた厚みが、ロック体10から管径方向内側に向けて、湾曲傾斜面部11cの中央部分で最も薄肉となり、厚肉面部11bの箇所で厚肉となるように形成されている。
【0054】
ところで、この離脱防止管継手1では、挿口5の挿入時に、シール材7を変形させることによりロック体10を回転させて挿口5の挿入を許容させる構造であるため、挿口5の挿入時に比較的大きな力が必要となる。そして、回転用弾性体11を設けたことで、挿口挿入時に、爪部10a、10bにより挿口5の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口挿入時に挿口5の外周面に回転用弾性体11が当接することでさらに大きな力を要することとなる。すなわち、図4(a)などに示すように、回転用弾性体11として、その断面でシール材本体9の内周面部分から、管軸方向奥側ほど突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部11aを有する場合には、挿口5の先端部が回転用弾性体11の傾斜面部11aに当接したときの、回転用弾性体11の突出増加量が比較的大きいため、挿口挿入時での挿口5の挿入力として大きな力が必要となり、作業能率が低下したり、場合によっては、特殊な接合用治具が必要となったりすることがあった。
【0055】
これに対して、上記のように、回転用弾性体11における爪部(開口寄り爪部)10bの内側(管径方向内側)に位置する面に、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部11cを形成したことにより、図15(a)に示すように、挿口挿入時に挿口5の先端部がまず回転用弾性体11における湾曲傾斜面部11cの薄肉突出部分(湾曲傾斜面部11cの外側寄り部分)に当接するとともにこの箇所の突出量が少なく、その後滑らかに突出量が増加するため、この際の挿口5の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。したがって、挿口5を挿入する際の作業性を向上させることができるとともに、特殊な接合用治具を必要とせず、一般の接合用治具ですますことができるので設備費を低減することもできる。
【0056】
なお、回転用弾性体11における湾曲傾斜面部11cが設けられている箇所の断面形状が湾曲形状であり、この湾曲傾斜面部11cが厚肉面部11bに滑らかに続くように形成されているので、挿口挿入時に挿口5を挿入し続けると、滑らかに挿入できながら、最終的には、厚肉面部11bが挿口に接触して、爪部10a、10bにより挿口5の外周面を傷つけることをより確実に防止できる。
【0057】
また、図3〜図7に示す上記実施の形態では、保護材12として、対応する爪部(開口寄り爪部)10bの内側(管径方向内側)の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成した場合を述べたが、これに限るものではない。図12〜図16は、他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、保護材12における、この保護材12が配設されている爪部(開口寄り爪部)10bの先端部近傍箇所における内側(管径方向内側)の面に厚肉部12aを設け、この保護材12の厚肉部12aを、前記爪部10bよりも幅が狭く小さい領域(短い長さの寸法)だけに形成している。なお、この実施の形態では、保護材12における厚肉部12aと薄肉部12bとが滑らかに続くように形成した場合を示しているが、これに限るものではない。
【0058】
保護材12として単に一定厚みの薄肉状に形成させた構造のものを用いると、爪部10bの形状によっては、保護材12による保護機能が不十分となって、挿口挿入時に爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることがある。これに対処すべく、保護材12全体を厚肉状に形成すると、爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることは防止できるが、挿口挿入時に保護材12が挿口外周面により強く当接するため、極めて大きな力を要することとなる。これに対して、本実施の形態では、保護材12の厚肉部12aを、前記爪部10bよりも狭く小さい寸法で形成することにより、爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることを防止できるだけでなく、厚肉部12aを形成した領域が小さいので、厚肉部12aが比較的小さな力で変形し易くなり、挿口挿入時での挿口5の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。
【0059】
したがって、この構成によっても、挿口5を挿入する際の作業能率を向上させることができるとともに、特殊な接合用治具を必要とせず、一般の接合用治具ですますことができるので設備費を低減することができる。
【0060】
また、図1〜図9や図11〜図16に示す実施の形態では、保護材12が、爪部(開口寄り爪部)10bのほぼ先端部近傍まで設けられている場合を述べたが、これに限るものではない。図17〜図21は、さらに他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、爪部(開口寄り爪部)10bの先端部近傍箇所には、保護材12が設けられておらず、図17(c)などに示すように、保護材12は、爪部10bと保護材12との間に隙間を有する状態で形成されている。
【0061】
なお、図17〜図21では、保護材12の厚肉部12aに対応する箇所のみ、保護材12が設けられていない場合を示したが、これに限るものではなく、爪部10bが設けられている箇所の全幅の領域(すなわち、保護材12の厚肉部12aとこの厚肉部12aの両側方の薄肉部12bに対応する箇所)において、爪部10bの先端部近傍箇所に保護材12を設けずに、爪部10bと保護材12との間に隙間が形成されるように構成してもよい。
【0062】
図11〜図16に示す実施の形態のように、保護材12(図11〜図16に示す場合は保護材12の厚肉部12a)が爪部(開口寄り爪部)10bの先端部まで設けられていると、図22に示すように、場合によっては、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に、保護材12における爪部10bの先端部近傍部分12’が入り込み、保護材12の前記先端部近傍部分12’が切断される場合がある。このときには、保護材12により、爪部10bが挿口5の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に保護材12の前記先端部近傍部分12’が入り込んだ場合には、保護材12の前記先端部近傍部分12’を切断しようとする力が必要となるとともに、切断されつつある保護材12の挿口外周面との接触部分である前記先端部近傍部分12’が強く当接しながら引きずられるので、挿口5の挿入に大きな力が必要となることがある。
【0063】
これに対して、爪部10bと保護材12との間に隙間Sを有するように保護材12を形成することで、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に保護材12が入り込むことを防止でき、挿口5の挿入において必要な力を減少できて作業能率を向上させることができる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、回転用弾性体11を、ロック体10の幅方向両端部にそれぞれ配設し、保護材12が設けられた爪部(開口寄り爪部)10bを、これらの回転用弾性体11の間に形成させている場合を述べたが、これに限るものではなく、回転用弾性体11を、ロック体10における幅方向中央部に配設し、保護材12が設けられた爪部(開口寄り爪部)10bを、ロック体10の幅方向両端部にそれぞれ配設してもよい。
【0065】
また、回転用弾性体11や保護材12は、シール材本体9と同じ材料、またはシール材本体9と同じ硬度の材料で形成するように構成すると、シール材7を一体成形で形成することができる利点があり、シール材7の製作が容易となる。しかし、これに限るものではなく、回転用弾性体11や保護材12を、シール材本体9と異なる硬度のものや、異なる材料、例えば樹脂で形成してもよい。このように、回転用弾性体11や保護材12を、シール材本体9と異なる硬度のものや、異なる材料で形成する場合には、回転用弾性体11や保護材12の形状をより自由に決めることができて、最適設計が可能になる利点や、場合によっては、同一材料で形成する場合よりも安く生産できる利点もある。
【符号の説明】
【0066】
1 離脱防止管継手
2、4 管
3 受口
5 挿口
6 シール材収容溝
7 シール材
9 シール材本体
10 ロック体
10a 爪部(奥側爪部)
10b 爪部(開口寄り爪部)
11 回転用弾性体
11a 傾斜面部
11b 厚肉平面部
11c 湾曲傾斜面部
12 保護材
12a 厚肉部
12b 薄肉部
S 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続した管同士が離脱することを防止する離脱防止管継手に用いる離脱防止機能付きシール材、および離脱防止管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に敷設される水道管路などとして、ダクタイル鋳鉄管などの管を複数接続して管路を構成することは既に広く知られている。この種の管路において、曲管やT字管などの異形管を用いる場合には、この異形管の曲がり部分や分岐部分(すなわち、水の流れ方向が変更される箇所)で水圧によって管を移動させようとする力(不平均力)が作用するため、このような不平均力が作用しても管同士が互いに離脱することを防止する離脱防止機能を付加している。
【0003】
従来の管の離脱防止構造の1つとしては、図23に示すように、異形管(図23においては曲管)51と、この異形管51に接続された管52、53との接合部(継手部)54とにわたって、コンクリートブロック55で覆う構造(コンクリートブロック構造と称す)が用いられており、このように管52、53と異形管51とをコンクリートブロック55で一体化して、管52、53と異形管51との離脱を防止している。また、別の管の離脱防止構造として、図24、図25に示すように、管61、62の受口63の内周面と挿口64の外周面とに、ロックリング65を配設するロックリング収容溝66、67を形成し、これらの溝66、67にわたって周方向1つ割りのロックリング65を配設するとともに、管61、62の接合後に、ロックリング65を、受口63を管径方向に貫通するセットボルト68により管径方向内側に押圧して、ロックリング65の拡径を阻止し、これにより、ロックリング65を介して管61、62の離脱を防止する構造がある。
【0004】
しかし、図23に示すようなコンクリートブロック構造を用いる場合には、コンクリートブロック55を完全に硬化させてから、地中に配設しなければならないので、コンクリートが硬化するまでに多くの時間を要する。したがって、道路を早期に復旧させる必要がある場合には、図23に示すようなコンクリートブロック構造は採用されず、図25に示すようなロックリング65を用いた構造が採用される。
【0005】
ところが、図25に示すようなロックリング構造を用いた場合には、ロックリング65を縮径させながら受口61の溝64に嵌め込む際に、縮径用の治具や設備を必要として設備費などのコストの増加を招いたり、この嵌め込み作業に多くの時間を要したりする欠点を生じてしまう。
【0006】
このような欠点を改善可能な離脱防止管継手として、図26〜図30に示すような離脱防止機能を付与したシール材(以下、離脱防止機能付きシール材、或いは単にシール材と称す)70を離脱防止管継手に設けることが提案されている。すなわち、受口71の内周面に形成したシール材収容溝72に、弾性を有するシール材本体78を配設させているだけでなく、このシール材本体78に、内周部に爪部73a、73bが形成されたロック体73を埋設する。そして、前記不平均力などによって、図30に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとした際(つまり、受口71に対して、相対的に挿口75がc方向に移動しようとして、受口71から挿口75が離脱しようとした際)には、ロック体73が、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接しながらa方向に回転して、ロック体73の爪部73a、73bが挿口75の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止する(つまり、受口71から挿口75が離脱することを阻止する)よう構成されている。
【0007】
なお、ロック体73における外周部には、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接する湾曲溝部73cが窪んだ形状で形成されている。そして、挿口挿入時(管接合時)には、図28、図29に示すように、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73cが摺接し、かつ、ロック体73の爪部73bが挿口75の外周面に強く当接した状態で、挿口75が押し込まれる。そして、挿口75の挿入力によって、ロック体73の爪部73aが挿口75の外周面より外側に押し退けられるように、シール材本体78を変形させながらロック体73全体をd方向に回転させることで、ロック体73の内側への挿口75の挿入を許容するよう構成されている。
【0008】
この離脱防止管継手構造を用いることで、離脱防止のための必要な作業として、前記ロック体73を埋設した離脱防止機能付きシール材70を予め準備しておき、受口71内にシール材70を配設するだけで済む。したがって、縮径用の治具や設備などが不要となるとともに、ロックリングの縮径作業が不要であるので、この縮径作業を行う手間や時間を省くことができる。
【0009】
なお、図26〜図30に示す離脱防止管継手と類似した構造の離脱防止管継手が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−221478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図26〜図30に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、挿口75を受口71に挿入して管同士を接合させる際に、ロック体73の爪部73bが挿口75の外周面に比較的大きな押圧力をかけながら直接接触した状態で、挿口75からロック体73に大きな力を与えてロック体73を回転させる構造であるので、この際に挿口75の外周面に爪部73bとの接触部分で傷がつき、通水時などに、この傷がついたところから腐食するおそれがあるという課題がある。
【0012】
本発明は上記課題を解決するもので、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、挿口を受口に挿入して管同士を接合させるときに、ロック体の爪部により挿口の外周面を傷つけることのない離脱防止管継手および離脱防止機能付きシール材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の離脱防止機能付きシール材は、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、弾性を有して圧縮可能な環状のシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設されており、前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部が形成されており、当該シール材に、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して前記爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体が設けられていることを特徴とする。なお、ロック体において爪部を管軸心方向に対して複数形成し、受口開口端寄りの爪部近傍に、回転用弾性体を設けると好適である。
【0014】
上記構成により、管同士を接合すべく、一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口を挿入すると、当該シール材に設けた回転用弾性体が挿口の外周面に当接して、ロック体が、このロック体の爪部を挿口の外周面から離反する方向に回転する。したがって、挿口を受口に挿入して管同士を接合させるときに、ロック体の爪部が挿口の外周面から離反し、この結果、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できる。
【0015】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材の回転用弾性体は、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所において、管径方向内側に突出するように配設されていることを特徴とする。
【0016】
この構成により、回転用弾性体が配設されている箇所では爪部の少なくとも一部が除かれているので、爪部が設けられたまま(残されたまま)で回転用弾性体が配設されているような不具合を生じることが無く、挿口の挿入時にロック体を回転させて、爪部を挿口の外周面から離反させることができる。つまり、爪部が設けられたままで、この爪部や爪部の近傍に被せられるように回転用弾性体が配設されている場合には、挿口の挿入時に、爪部によって回転用弾性体が切断されてしまって、爪部が挿口の外周面に接触して傷が生じてしまったり、回転用弾性体が爪部と挿口の外周面との間から逃げてしまい、ロック体を良好に回転させることができなくなって、爪部が挿口の外周面に接触して傷が生じてしまったり、挿口の挿入時の力として極めて大きくなって、作業性の低下を招いたりする不具合を生じるが、本発明によればこのような不具合が生じない。
【0017】
回転用弾性体は、その断面形状がシール材本体の内周面部から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部と、この傾斜面部の管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部とを有するように構成してもよいが、好ましくは、回転用弾性体が、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部と、この湾曲傾斜面部の管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部とを有する形状とし、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設するとよい。
【0018】
このような離脱防止管継手では、挿口挿入時にシール材を変形させることによりロック体を回転させて挿口の挿入を許容させる構造であるため、挿口挿入時に比較的大きな力が必要となる。そして、回転用弾性体を設けたことで、挿口挿入時に、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口挿入時に挿口外周面に回転用弾性体が当接することでさらに大きな力を要することとなる。しかし、上記のように、回転用弾性体に、その断面形状が、シール材本体の内周面部から、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する湾曲傾斜面部を形成し、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設することにより、この際の挿口の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、回転用弾性体の湾曲傾斜面部の断面形状が湾曲形状であるので、挿口挿入時に挿口を挿入し続けると、回転用弾性体の突出量に応じてシール材を滑らかに変形させてロック体を良好に回転させ、最終的には、挿口が回転用弾性体の厚肉平面部に接触して、ロック体の爪部が外周面より離反され、爪部により挿口の外周面を傷つけることをより確実に防止できる。
【0019】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時に、回転用弾性体により回転されたロック体において、このロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材が配設されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成において、ロック体に回転用弾性体を設けただけであると、回転用弾性体によって挿口の挿入時に爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体が回転されたにもかかわらず、挿口外周面と受口との間の間隔が極めて小さいなどの理由により、挿口の挿入時に爪部が挿口外周面に接触して傷つく恐れがある場合があるが、上記のように、ロック体に保護材を設けることで、ロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させることができる。したがって、挿口の挿入時に爪部により挿口の外周面に傷がつくことを一層確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができる。
【0021】
なお、保護材としては、対応する爪部の管径方向内側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成させてもよいが、必要に応じて、保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部を設け、前記保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成してもよい。また、保護材を、対応する爪部との間に隙間を有する状態で形成してもよい。
【0022】
例えば、保護材を設けた爪部を尖らせて形成して、挿口が離脱しようとした際に爪部が挿口へ確実に係止するよう構成した場合などに、保護材として、対応する爪部の内側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成させただけであると、保護材による保護機能が不十分となって、爪部により挿口の外周面を傷つけることがある。これに対処すべく、保護材をほぼ一定厚みの厚肉状に形成すると、爪部により挿口の外周面を傷つけることは防止できるが、挿口挿入時に保護材が挿口外周面により強く当接して、さらに大きな力を要することとなる。これに対して、上記のように、保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域だけに形成すると、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できながら、厚肉部が比較的小さな力で変形し易くなるので、挿口挿入時での挿口の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、保護材を、対応する爪部の先端部や先端部近傍まで形成すると、場合によっては、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に、保護材が入り込み、保護材が切断される場合があり、このときには、挿口の挿入に大きな力が必要となることがある。これに対して、爪部と保護材との間に隙間を有するように保護材を形成することで、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に保護材が入り込むことを防止でき、挿口の挿入において必要な力を減少できる。
【0023】
なお、回転用弾性体や保護材の配置構成としては、回転用弾性体を、ロック体における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設し、保護材が設けられた爪部を、前記回転用弾性体の間に形成させたり、回転用弾性体を、ロック体における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する中央部に配設し、保護材が設けられた爪部を、ロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設したりすればよい。
【0024】
また、回転用弾性体として、シール材本体と同じ材料、またはシール材本体と同じ硬度の材料で形成することで、シール材本体と回転用弾性体とを一体形成することが可能となる。
【0025】
また、回転用弾性体として、回転用弾性体は、シール材本体と異なる材料、またはシール材本体と異なる硬度の材料で形成してもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体を設けたことにより、挿口の挿入時に、前記回転用弾性体によりロック体が回転して、ロック体の爪部が挿口の外周面から離反する方向に回転し、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できる。この結果、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができながら、挿口の外周面に傷がつかないので、このシール材を有する管継手を水道管路などとして用いた場合でも、通水時などにおける腐食の可能性を最小限に抑えることができて、良好な信頼性を維持できる。
【0027】
また、本発明によれば、回転用弾性体を、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所に配設することで、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止する機能を一層確実に得ることができる。
【0028】
また、回転用弾性体に、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する湾曲傾斜面部を形成し、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう構成することにより、爪部により挿口の外周面を傷つけることを防止できると同時に、挿口挿入時での挿口の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。したがって、挿口挿入時での挿口の挿入力が極めて大きくなると、特殊な接合用治具が必要となることがあるが、上記のように構成することで、特殊な接合用治具を用いなくても済み、接合作業の作業性の向上や設備費の低減を図ることができる。
【0029】
また、本発明によれば、爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時にロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材を設けることで、挿口の挿入時に爪部により挿口の外周面に傷がつくことをさらに確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができて、信頼性をさらに向上させることができる。
【0030】
また、保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部を設け、前記保護材の厚肉部を、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成することにより、爪部により挿口の外周面を傷つけることをより確実に防止できながら、挿口挿入時での挿口の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。また、爪部と保護材との間に隙間を有するように保護材を形成することで、挿口の挿入時に、爪部と挿口の外周面との間に保護材が入り込むことを防止でき、挿口の挿入において必要な力を減少できて作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図である。
【図2】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の断面図で、ロック体が設けられていない箇所を示している。
【図3】(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図4】(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図3(b)におけるIVa-IVa線矢視断面図およびIVb-IVb線矢視断面図である。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図8】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【図9】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【図10】(a)〜(c)は、それぞれ、比較例としての同離脱防止管継手における離脱防止機能付きシール材のロック体および回転用弾性体の要部拡大断面図である。
【図11】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手の断面図で、受口と挿口との間の隙間が広い(大きい)場合を示す。
【図12】(a)および(b)は、本発明の他の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図13】(a)、(b)および(c)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図12(b)におけるXIIIa-XIIIa線矢視断面図、XIIIb-XIIIb線矢視断面図およびXIIIc-XIIIc線矢視断面図である。
【図14】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図15】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図16】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図17】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図である。
【図18】(a)、(b)および(c)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図17(b)におけるXVIIIa-XVIIIa線矢視断面図、XVIIIb-XVIIIb線矢視断面図およびXVIIIc-XVIIIc線矢視断面図である。
【図19】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図20】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口の先端部を挿入しつつある状態を示す。
【図21】(a)、(b)および(c)は、それぞれ同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図22】図12から図16に示す離脱防止管継手において保護材が入り込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図23】従来の管の離脱防止構造を概略的に示す図である。
【図24】他の従来の離脱防止構造としての同離脱防止管継手の外観を示す図である。
【図25】同従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図26】さらに他の従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図27】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図28】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入しつつある状態を示す。
【図29】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口を挿入した状態を示す。
【図30】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を図面に基づき説明する。なお、図1、図5〜図8は、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図で、図5は挿口を挿入する直前の状態を示し、図6は挿口の先端部を挿入しつつある状態を示し、図7は挿口を挿入した状態を示し、図8は挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。また、図3(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材を、斜め下方から見た斜視図および下方から見た下面図、図4(a)および(b)は、同離脱防止機能付きシール材のロック体、回転用弾性体および保護材の、図3(b)におけるIVa-IVa線矢視断面図およびIVb-IVb線矢視断面図である。
【0033】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1は、互いに接合される一方の管2の端部に形成された受口3の内部に、他方の管4の端部に形成された挿口5が挿入され、受口3の内周(詳しくは、受口3の管端面3aよりも奥側の部分の内周)に形成されたシール材収容溝6に環状のシール材7が配設され、受口3と挿口5との間でシール材7が圧縮されることで挿口受口間のシールが行われる。なお、図1における5aは挿口5の先端部外周に形成されて先端ほど細くなる挿口5の傾斜面である。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1に備えられているシール材7は、後述するように、互いに接続した管2、4同士が離脱することを防止する離脱防止機能を有している。なお、管2、4は例えばダクタイル鋳鉄製とされているが、これに限るものではない。
【0035】
以下、シール材(離脱防止機能付きシール材)7と、このシール材7が配設される受口3のシール材収容溝6の構造などについて詳しく説明する。図2などに示すように、シール材7は、シール材7をシール材収容溝6内の所定位置に保持させるヒール部(踵部)7aと、挿口受口間のシールを行うバルブ部7bとを一体化した形状とされ、バルブ部7bは、外力を受けていない状態では断面略円形(または断面略楕円形)とされている。また、これに対応して、シール材収容溝6にもシール材7のヒール部7aが嵌め込まれてシール材7を係止する嵌め込み溝6aと、シール材7のバルブ部7bが収容されるバルブ部収容溝6bとが形成されている。
【0036】
また、受口3のシール材収容溝6における嵌め込み溝6aとバルブ部収容溝6bとの間には、内側(管径方向内側)に突出する受口内面突部8が形成されており、シール材7にも受口内面突部8に摺接する湾曲溝部7cが形成されている。なお、この実施の形態では受口内面突部8の端部は断面略半円形状とされているが、この形状に限るものではない。
【0037】
図1〜図4などに示すように、シール材7は、弾性を有して圧縮可能なゴム製などからなる環状のシール材本体9に、金属片などの剛性の大きな材料で形成された離脱防止用のロック体10が、図9に示すように周方向に間隔をおいて複数埋設された構成とされている。なお、この実施の形態では、8つのロック体10が周方向に等間隔で配設されている場合を図示しているが、ロック体10の数を増減させたり、これに応じて配設する間隔を変更させたりしてもよい。
【0038】
ロック体10には、図8に示すように、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際、すなわち、管2、4同士が互いに離脱方向に移動しようとする際に、挿口5の外周面に食い込む爪部10a、10bと、図1および図5〜図7に示すように、挿口5が受口3に挿入されて管2、4同士が接合された際に、受口3のシール材収容溝6において受口内面突部8に摺接可能な湾曲溝部10cなどが形成されている。
【0039】
図3〜図7に示すように、爪部10a、10bは、ロック体10よりシール材7の内側、より詳しくは、受口3の奥側および管径方向内側に斜めに突出するように形成され、この実施の形態では、各ロック体10に管軸心方向に対して2つの爪部10a、10bが並ぶように形成されている場合を示している。なお、図示しないが、爪部10a、10bを管軸心方向に対して3つ以上並ぶように形成してもよい。
【0040】
ここで、図3、図4などに示すように、受口3の開口端より奥側である爪部(奥側爪部とも称す)10aは、ロック体10の全幅(なお、ロック体10の幅方向とは、受口3などが形成されている管の周方向に沿う方向である)にわたって形成されている。しかし、受口3の開口端寄りの爪部(開口寄り爪部とも称す)10bは、ロック体10における幅方向の中央部だけ残るように形成されており、ロック体10における幅方向の両端部寄り箇所では前記開口寄り爪部10bがそれぞれ切削加工などにより除かれており、この削り取られた削除部分に、例えば、ゴム製などからなるシール材本体9と同様な材料で同様な弾力性を有する回転用弾性体11がシール材本体9とともに一体形成されている。なお、回転用弾性体11を形成する手法はどのような方法でもよく、シール材本体9と別体に作成して、前記開口寄り爪部10bに貼り付けてもよい。
【0041】
この回転用弾性体11は、図5〜図7に示すように、挿口5の挿入時に挿口5の外周面に当接して、ロック体10を、その爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向に回転させる機能を有する。図3(a)、図4(a)などに示すように、回転用弾性体11は、開口寄り爪部10bよりも管径方向内側に突出する状態で設けられている。また、回転用弾性体11は、その形状が、外力が作用しない状態で、図3(a)に示すように、その断面形状がシール材本体9の内周面部9aから管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加して直線状に傾斜する傾斜面部11aと、この傾斜面部11aの管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部11bとを有する台形の断面形状に形成されている。なお、この実施の形態では、回転用弾性体11は上述したようにシール本体9と一体形成されているが、シール材本体9と合わせた厚みは、図4(a)などに示すように、ロック体10から管径方向内側に向けてほぼ同一厚みとなるように形成されている。
【0042】
さらに、図3(a),(b)、図4(b)などに示すように、ロック体10における開口寄り爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端側の面(管径方向内側に臨む面)には、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11により回転されたロック体10の開口寄り爪部10bが挿口5の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる一定厚みの薄肉(例えば、厚さ1mm)のゴム板などからなる保護材12がシール材本体9とともに一体形成されている。なお、保護材12を形成する手法はどのような方法でもよく、保護材12をシール材本体9とは別体に作成し、開口寄り爪部10bに貼り付けてもよい。
【0043】
上記構成において、管2、4同士がまだ接合されていない状態、すなわち、受口3に挿口5がまだ挿入されていない状態では、シール材7は、受口3のシール材収容溝6に装着されているだけの状態であるので、図2、図5に示すように、シール材7のバルブ部7bが管径方向の内側に大きく膨らんだ姿勢となっている。したがって、これに伴い、ロック体10も、後述する挿口5の挿入時と比べて、管径方向の内側(図2などにおける紙面の下方側)に寄った姿勢となって、爪部10a、10bが管径方向の内側に大きく突出している姿勢である。
【0044】
この状態から、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5を挿入させていくと、図6に示すように、まず、挿口5の傾斜面5aにシール材7の内側(管径方向の内側部分)が接触し、さらには、図7に示すように、挿口5の外周面にシール材7の内側が接触する。ここで、シール材7の内側では、ロック体10の爪部10a、10bが突出しているが、さらにロック体10の爪部(開口寄り爪部)10bには、この爪部10bよりも突出する回転用弾性体11が設けられているので、この回転用弾性体11が挿口5の傾斜面5aや外周面に接触し、さらなる挿口5の挿入動作に伴って回転用弾性体11も挿口5の挿入方向に力を受ける。これにより、シール材7のロック体10は、湾曲溝部10cが受口内面突部8に摺接した状態で、e方向、すなわち、爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向に回転する。この結果、挿口5の挿入時に、爪部10a、10bが挿口5の外周面に接触することを防止できて、爪部10a、10bにより挿口5の外周面が傷つくことを防止できる。なお、この挿口5の挿入時には、ロック体10が回転される際にシール材本体9を圧縮して変形させる必要があるので、挿口5の挿入時に、ある程度の挿入力が必要である。
【0045】
ただし、上記構成において、ロック体10に回転用弾性体11が設けられただけの構成である場合には、回転用弾性体11によって挿口5の挿入時に爪部10a、10bが挿口5の外周面から離反する方向にロック体10が回転されたにもかかわらず、挿口5の外周面と受口3との間の間隔が極めて小さい条件下であるなどの理由により、挿口5の挿入時に爪部10bが挿口5の外周面に接触する恐れがある。しかしながら、上記のように、ロック体10に回転用弾性体11を設けることに加えて、爪部10bの先端部に続く受口端部側の面に、薄板状の保護材12を設けたことにより、このような場合でも、挿口5の外周面には保護材12が接触し、これにより、ロック体10の爪部10a、10bが挿口5の外周面に当接することを阻止したり、あるいは当接する力を軽減させたりすることができる。したがって、挿口10の挿入時に爪部10a、10bによって挿口5の外周面に傷がつくことを一層確実に防止したり、最小限に抑えたりすることができる。
【0046】
また、上記構成によれば、回転用弾性体11が配設されている箇所では爪部(開口寄り爪部)10bが除かれているので、爪部10bが設けられたまま(残されたまま)の状態で回転用弾性体11が配設されているような不具合を生じることが無く、挿口5の挿入時にロック体10を良好に回転させて、爪部10a、10bを挿口5の外周面から離反させることができる。
【0047】
つまり、図10(a)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、この爪部10bの先端部に回転用弾性体11を被せるように配設させると、挿口5の挿入時に、爪部10bによって回転用弾性体11が切断されてしまって爪部10bが露出し、これにより爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じてしまう。なお、爪部10bによって切断されることがないように回転用弾性体11として、厚いゴムなどの弾性体や硬い弾性体を用いると、挿口5が受口3から離脱する際に、爪部10bが挿口5の外周面に引っ掛からず、離脱防止機能が不良となる。
【0048】
また、図10(b)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、この爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端部側の面(管径方向内側に臨む面)に回転用弾性体11が被せられるように配設させると、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11が前記爪部10bの受口端部側の面に沿ってf方向(管径方向外側)に移動して(逃げて)しまい、ロック体10が回転せず、これにより爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じてしまう。
【0049】
さらに、図10(c)に示すように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで、回転用弾性体11を、爪部10bが形成されている箇所の先端部に続く受口端部側の面(管径方向内側に臨む面)から爪部10bの先端部まで突出可能な姿勢で配設すると、挿口5の挿入時に、回転用弾性体11が爪部10bと挿口5の外周面との間にくさび状に食い込んでいき、挿口5の挿入時に、挿口5を極めて大きな力を付加しなければ、挿入できなくなり、特有の治具を必要として別途に高額な設備費を要したり、作業時間が多大となるなど作業性が低下したりする不具合を生じる。
【0050】
このように、爪部(開口寄り爪部)10bが設けられたままで回転用弾性体11を設けると、上述したような不具合を生じるが、本発明の実施の形態では、回転用弾性体11が配設されている箇所では爪部10bが除かれているので、上記不具合を生じることが無くなり、挿口5の挿入時にロック体10を良好に回転させて、爪部10a、10bを挿口5の外周面から離反させることができる。
【0051】
また、本実施の形態においては、図3、図4などに示すように、回転用弾性体11を、ロック体10の爪部(開口寄り爪部)10bに対応する箇所における管2、4の周方向に沿うロック体10の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設し、保護材12が設けられた爪部10bを、回転用弾性体11の間に形成させているので、挿口5の挿入時には、回転用弾性体11が爪部10bの両側方で挿口5の外周面に良好に接触してロック体10が回転し、爪部10bが挿口5の外周面に接触して傷が生じることを良好に防止できる。一方、管2、4同士が離脱方向に移動しようとして、受口3から挿口5が離脱しようとした際には、図8に示すように、挿口5に伴って、回転用弾性体11が受口開口端側へ移動することにより、ロック体10がg方向に回転して、ロック体10の爪部10bが挿口5の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止されて、受口3から挿口5が離脱することが阻止される。
【0052】
なお、受口3と挿口5との間の隙間が広い(大きい)場合には、図11(a)に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとして受口3から挿口5が離脱しようとした際には、図11(a)に示すように、挿口5に伴って回転用弾性体11が受口開口端側へ移動してロック体10がh方向に回転した際に、ロック体10の開口寄り爪部10bではなくて、奥側爪部10aが挿口5の外周面に食い込み、管2、4同士の離脱を阻止される。ここで、ロック体10において、奥側爪部10aに対応する箇所では回転用弾性体11や保護材12が設けられていないため、このように受口3と挿口5との間の隙間が広い(大きい)場合において、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5が挿入される際には、図11(b)に示すように、ロック体10の奥側爪部10aが挿口5の外周面に接触する。しかしながら、この際は、ロック体10のi方向への回転角度(回転量)が小さくて済むとともに、シール材7(シール材本体9)の圧縮量が小さいため、挿口5の外周面には傷はつかない。このように、挿口5の外周面への傷の発生を防止することについて考慮しなければならないのは、受口3と挿口5との間の隙間が狭い場合に挿口5の外周面に接触する可能性のある開口寄り爪部10bだけでよい(爪部が3つ以上ある場合も同様である)。
【0053】
また、上記実施の形態では、回転用弾性体11として、その断面でシール材本体9の内周面部9aから、管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する(すなわち直線状に増加する)傾斜面部11aを有する場合を述べたが、これに限るものではない。図12(a)、(b)、図13(a)〜(c)は、他の実施の形態に係る回転用弾性体11を示すもので、この実施の形態では、回転用弾性体11を、図12(a)に示すように、その断面でシール材本体9の内周面部分から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加する(すなわち、管軸方向開口側は突出量および突出増加量がわずかであるとともに、管軸方向奥側ほど突出量および突出増加量が大きくなった)ことにより湾曲形状(より詳しくは、中央部がロック体10に近接するように窪む形状で湾曲する湾曲形状)に傾斜する湾曲傾斜面部11cと、この湾曲傾斜面部11cの管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部11bとを有する略台形の断面形状に形成している。そして、図14(a)、図15(a)、図16(a)に示すように、挿口挿入時に挿口5の先端部がまず湾曲傾斜面部11cの薄肉突出部分(湾曲傾斜面部11cの外側寄り部分)に当接するよう構成されている。なお、回転用弾性体11はシール本体9と一体形成されているが、図13(a)に示すように、シール材本体9と合わせた厚みが、ロック体10から管径方向内側に向けて、湾曲傾斜面部11cの中央部分で最も薄肉となり、厚肉面部11bの箇所で厚肉となるように形成されている。
【0054】
ところで、この離脱防止管継手1では、挿口5の挿入時に、シール材7を変形させることによりロック体10を回転させて挿口5の挿入を許容させる構造であるため、挿口5の挿入時に比較的大きな力が必要となる。そして、回転用弾性体11を設けたことで、挿口挿入時に、爪部10a、10bにより挿口5の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口挿入時に挿口5の外周面に回転用弾性体11が当接することでさらに大きな力を要することとなる。すなわち、図4(a)などに示すように、回転用弾性体11として、その断面でシール材本体9の内周面部分から、管軸方向奥側ほど突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部11aを有する場合には、挿口5の先端部が回転用弾性体11の傾斜面部11aに当接したときの、回転用弾性体11の突出増加量が比較的大きいため、挿口挿入時での挿口5の挿入力として大きな力が必要となり、作業能率が低下したり、場合によっては、特殊な接合用治具が必要となったりすることがあった。
【0055】
これに対して、上記のように、回転用弾性体11における爪部(開口寄り爪部)10bの内側(管径方向内側)に位置する面に、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部11cを形成したことにより、図15(a)に示すように、挿口挿入時に挿口5の先端部がまず回転用弾性体11における湾曲傾斜面部11cの薄肉突出部分(湾曲傾斜面部11cの外側寄り部分)に当接するとともにこの箇所の突出量が少なく、その後滑らかに突出量が増加するため、この際の挿口5の挿入力の増加を最小限に抑えることができる。したがって、挿口5を挿入する際の作業性を向上させることができるとともに、特殊な接合用治具を必要とせず、一般の接合用治具ですますことができるので設備費を低減することもできる。
【0056】
なお、回転用弾性体11における湾曲傾斜面部11cが設けられている箇所の断面形状が湾曲形状であり、この湾曲傾斜面部11cが厚肉面部11bに滑らかに続くように形成されているので、挿口挿入時に挿口5を挿入し続けると、滑らかに挿入できながら、最終的には、厚肉面部11bが挿口に接触して、爪部10a、10bにより挿口5の外周面を傷つけることをより確実に防止できる。
【0057】
また、図3〜図7に示す上記実施の形態では、保護材12として、対応する爪部(開口寄り爪部)10bの内側(管径方向内側)の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成した場合を述べたが、これに限るものではない。図12〜図16は、他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、保護材12における、この保護材12が配設されている爪部(開口寄り爪部)10bの先端部近傍箇所における内側(管径方向内側)の面に厚肉部12aを設け、この保護材12の厚肉部12aを、前記爪部10bよりも幅が狭く小さい領域(短い長さの寸法)だけに形成している。なお、この実施の形態では、保護材12における厚肉部12aと薄肉部12bとが滑らかに続くように形成した場合を示しているが、これに限るものではない。
【0058】
保護材12として単に一定厚みの薄肉状に形成させた構造のものを用いると、爪部10bの形状によっては、保護材12による保護機能が不十分となって、挿口挿入時に爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることがある。これに対処すべく、保護材12全体を厚肉状に形成すると、爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることは防止できるが、挿口挿入時に保護材12が挿口外周面により強く当接するため、極めて大きな力を要することとなる。これに対して、本実施の形態では、保護材12の厚肉部12aを、前記爪部10bよりも狭く小さい寸法で形成することにより、爪部10bにより挿口5の外周面を傷つけることを防止できるだけでなく、厚肉部12aを形成した領域が小さいので、厚肉部12aが比較的小さな力で変形し易くなり、挿口挿入時での挿口5の必要な挿入力の増加を最小限に抑えることができる。
【0059】
したがって、この構成によっても、挿口5を挿入する際の作業能率を向上させることができるとともに、特殊な接合用治具を必要とせず、一般の接合用治具ですますことができるので設備費を低減することができる。
【0060】
また、図1〜図9や図11〜図16に示す実施の形態では、保護材12が、爪部(開口寄り爪部)10bのほぼ先端部近傍まで設けられている場合を述べたが、これに限るものではない。図17〜図21は、さらに他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、爪部(開口寄り爪部)10bの先端部近傍箇所には、保護材12が設けられておらず、図17(c)などに示すように、保護材12は、爪部10bと保護材12との間に隙間を有する状態で形成されている。
【0061】
なお、図17〜図21では、保護材12の厚肉部12aに対応する箇所のみ、保護材12が設けられていない場合を示したが、これに限るものではなく、爪部10bが設けられている箇所の全幅の領域(すなわち、保護材12の厚肉部12aとこの厚肉部12aの両側方の薄肉部12bに対応する箇所)において、爪部10bの先端部近傍箇所に保護材12を設けずに、爪部10bと保護材12との間に隙間が形成されるように構成してもよい。
【0062】
図11〜図16に示す実施の形態のように、保護材12(図11〜図16に示す場合は保護材12の厚肉部12a)が爪部(開口寄り爪部)10bの先端部まで設けられていると、図22に示すように、場合によっては、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に、保護材12における爪部10bの先端部近傍部分12’が入り込み、保護材12の前記先端部近傍部分12’が切断される場合がある。このときには、保護材12により、爪部10bが挿口5の外周面を傷つけることを防止できるが、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に保護材12の前記先端部近傍部分12’が入り込んだ場合には、保護材12の前記先端部近傍部分12’を切断しようとする力が必要となるとともに、切断されつつある保護材12の挿口外周面との接触部分である前記先端部近傍部分12’が強く当接しながら引きずられるので、挿口5の挿入に大きな力が必要となることがある。
【0063】
これに対して、爪部10bと保護材12との間に隙間Sを有するように保護材12を形成することで、挿口5の挿入時に、爪部10bと挿口5の外周面との間に保護材12が入り込むことを防止でき、挿口5の挿入において必要な力を減少できて作業能率を向上させることができる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、回転用弾性体11を、ロック体10の幅方向両端部にそれぞれ配設し、保護材12が設けられた爪部(開口寄り爪部)10bを、これらの回転用弾性体11の間に形成させている場合を述べたが、これに限るものではなく、回転用弾性体11を、ロック体10における幅方向中央部に配設し、保護材12が設けられた爪部(開口寄り爪部)10bを、ロック体10の幅方向両端部にそれぞれ配設してもよい。
【0065】
また、回転用弾性体11や保護材12は、シール材本体9と同じ材料、またはシール材本体9と同じ硬度の材料で形成するように構成すると、シール材7を一体成形で形成することができる利点があり、シール材7の製作が容易となる。しかし、これに限るものではなく、回転用弾性体11や保護材12を、シール材本体9と異なる硬度のものや、異なる材料、例えば樹脂で形成してもよい。このように、回転用弾性体11や保護材12を、シール材本体9と異なる硬度のものや、異なる材料で形成する場合には、回転用弾性体11や保護材12の形状をより自由に決めることができて、最適設計が可能になる利点や、場合によっては、同一材料で形成する場合よりも安く生産できる利点もある。
【符号の説明】
【0066】
1 離脱防止管継手
2、4 管
3 受口
5 挿口
6 シール材収容溝
7 シール材
9 シール材本体
10 ロック体
10a 爪部(奥側爪部)
10b 爪部(開口寄り爪部)
11 回転用弾性体
11a 傾斜面部
11b 厚肉平面部
11c 湾曲傾斜面部
12 保護材
12a 厚肉部
12b 薄肉部
S 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、
弾性を有して圧縮可能な環状のシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設されており、
前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部が形成されており、
当該シール材に、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して前記爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体が設けられている
ことを特徴とする離脱防止機能付きシール材。
【請求項2】
ロック体において爪部が管軸心方向に対して複数形成され、受口開口端寄りの爪部近傍に、回転用弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項3】
回転用弾性体は、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所において管径方向内側に突出するように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項4】
回転用弾性体が、その断面形状がシール材本体の内周面部から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部と、この傾斜面部の管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部とを有することを特徴とする請求項3に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項5】
回転用弾性体が、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部と、この湾曲傾斜面部の管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部とを有する形状とされ、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設されていることを特徴とする請求項3に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項6】
爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時に、回転用弾性体により回転されたロック体において、このロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材が配設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項7】
保護材は、対応する爪部の受口端部側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項8】
保護材に、この保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部が設けられ、前記保護材の厚肉部が、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項9】
保護材は、対応する爪部との間に隙間を有する状態で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項10】
ロック体は、環状のシール材本体に対して、管の周方向に間隔をあけて複数配設され、回転用弾性体は、当該シール材における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する両端部対応箇所にそれぞれ配設され、保護材が設けられた爪部が、前記回転用弾性体の間に形成されていることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項11】
ロック体は、環状のシール材本体に対して、管の周方向に間隔をあけて複数配設され、回転用弾性体は、当該シール材における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する中央部対応箇所に配設され、保護材が設けられた爪部が、ロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項12】
回転用弾性体は、シール材本体と同じ材料、またはシール材本体と同じ硬度の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項13】
回転用弾性体は、シール材本体と異なる材料、またはシール材本体と異なる硬度の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材を備えていることを特徴とする離脱防止管継手。
【請求項1】
互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、
弾性を有して圧縮可能な環状のシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設されており、
前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部が形成されており、
当該シール材に、挿口の挿入時に挿口の外周面に当接して前記爪部が挿口の外周面から離反する方向にロック体を回転させる回転用弾性体が設けられている
ことを特徴とする離脱防止機能付きシール材。
【請求項2】
ロック体において爪部が管軸心方向に対して複数形成され、受口開口端寄りの爪部近傍に、回転用弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項3】
回転用弾性体は、ロック体における爪部の少なくとも一部が除かれた箇所において管径方向内側に突出するように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項4】
回転用弾性体が、その断面形状がシール材本体の内周面部から管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出量が一定量ずつ増加する傾斜面部と、この傾斜面部の管軸方向奥端側に厚肉平面形状となって続く厚肉平面部とを有することを特徴とする請求項3に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項5】
回転用弾性体が、その断面形状が管軸方向奥側ほど管径方向内側への突出増加量が大きくなるように増加して湾曲形状に傾斜する湾曲傾斜面部と、この湾曲傾斜面部の管軸方向奥側端部の厚肉部分に滑らかに続く厚肉平面部とを有する形状とされ、挿口挿入時に挿口先端部がまず湾曲傾斜面部の薄肉突出部分に当接するよう配設されていることを特徴とする請求項3に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項6】
爪部における先端部に続く受口端部側の面に、挿口の挿入時に、回転用弾性体により回転されたロック体において、このロック体の爪部が挿口の外周面に当接することを阻止または当接する力を軽減させる保護材が配設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項7】
保護材は、対応する爪部の受口端部側の面に、ほぼ一定厚みの薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項8】
保護材に、この保護材が配設されている爪部の先端部近傍箇所における管径方向内側の面に厚肉部が設けられ、前記保護材の厚肉部が、前記爪部よりも狭く小さい領域に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項9】
保護材は、対応する爪部との間に隙間を有する状態で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項10】
ロック体は、環状のシール材本体に対して、管の周方向に間隔をあけて複数配設され、回転用弾性体は、当該シール材における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する両端部対応箇所にそれぞれ配設され、保護材が設けられた爪部が、前記回転用弾性体の間に形成されていることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項11】
ロック体は、環状のシール材本体に対して、管の周方向に間隔をあけて複数配設され、回転用弾性体は、当該シール材における管の周方向に沿うロック体の幅方向に対する中央部対応箇所に配設され、保護材が設けられた爪部が、ロック体の幅方向に対する両端部にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項12】
回転用弾性体は、シール材本体と同じ材料、またはシール材本体と同じ硬度の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項13】
回転用弾性体は、シール材本体と異なる材料、またはシール材本体と異なる硬度の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材を備えていることを特徴とする離脱防止管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
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【図11】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−153704(P2011−153704A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101568(P2010−101568)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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