説明

離解促進剤及びそれを使用した離解方法

【課題】優れた離解促進効果を有する離解促進剤、及びそれを使用した離解方法を提供する。
【解決手段】下記(A)成分と(B)成分とを含有し、かつ(A)成分と(B)成分との質量比が(A)/(B)=30/70〜98/2であることを特徴とする離解促進剤、及びそれを利用した離解方法。(A)成分:油類(B)成分:炭素数が6〜24であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有する乳化剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離解促進剤、及びそれを使用した離解方法に関し、更に詳しくは、パルプ原料の離解工程で添加した際に優れた離解促進効果を有する離解促進剤、及びそれを使用した離解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、公害防止の立場から古紙の再利用はますます活発化している。一般に回収古紙の再生は、パルパーと呼ばれる攪拌容器内で薬剤を加えた水に離解され、その後、洗浄、漂白などの工程を経てパルプ化される。しかしながら、この古紙原料のうち特に湿潤紙力増強紙を利用する場合に問題になるのは離解が困難な点である。
【0003】
すなわち、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等の湿潤紙力増強剤により湿潤時の湿潤紙力が高められた湿潤紙力増強紙はその特長が逆に、損紙あるいは古紙の回収再生に際して離解を著しく困難にしている。なお、本発明において離解とは、古紙あるいは損紙などを解きほぐして水性スラリーにすることをいう。
【0004】
湿潤紙力増強紙の損紙あるいは古紙を回収して再生するに際しては、一般的には機械的処理が行われてきた。また機械的処理の際に離解を促進させる目的で加熱処理を施す場合、あるいは薬剤すなわち、塩酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸などの酸類、苛性ソーダ、苛性カリなどのアルカリ類及び次亜塩素酸ソーダ、亜塩素酸ソーダ、次亜臭素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤を脱樹脂剤、樹脂分解剤として使用する場合がある(例えば特許文献1,2)。湿潤紙力増強紙の損紙あるいは古紙の離解に際して機械的処理だけでは、未離解物を含まない製紙用原料に適したパルプを回収することは非常に困難であり、回収コストも高くなるなどの問題がある。また、加熱処理あるいは薬剤を併用して離解する場合においても離解促進効果の点では十分満足がいくものではなく、さらにこれらの薬剤は排水に溶け込んで環境汚染の問題を引き起こすなどの困難な問題があった。
そこで、種々の離解に関する方法が提案されてきた。例えば、特許文献3,4には特定の界面活性剤を使用して背糊雑誌を含有する古紙原料を離解することと、パルプにプラスチックや金属フィルムが積層乃至は合体されたものからパルプを分離回収することが提案され、また、特許文献5,6には酵素処理をした後そのままあるいは公知の離解用薬剤を併用して離解する方法が、特許文献7には、りん系の化合物を用いる方法が、それぞれ提案されているが、これらの方法では、高い湿潤強度を有する紙を離解するには離解性能が不十分であるとの問題があった。
【0005】
【特許文献1】特公平3−66434号公報(特開昭59−021790号公報)
【特許文献2】特開平4−202875号公報
【特許文献3】特許第3256862号公報(特開平06−192985号公報)
【特許文献4】特開2001−279590号公報
【特許文献5】特開平5−279977号公報
【特許文献6】特許3254741号公報(特開平06−041886号公報)
【特許文献7】特開2005−281906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた離解促進効果を有する離解促進剤、及びそれを使用した離解方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、油類と特定の乳化剤とを予め、特定の混合比率で混合して成る混合物が優れた離解促進効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記課題を解決しようとする手段は、
(1) 下記(A)成分と(B)成分とを含有し、かつ(A)成分と(B)成分との質量比が(A)/(B)=30/70〜98/2であることを特徴とする離解促進剤である。
(A)成分:油類
(B)成分:炭素数が6〜24であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有する乳化剤
前記課題を解決しようとする手段は、更に具体的には、
(2)(A)成分が(A1)パラフィン系炭化水素を40質量%以上含む鉱物油及び/又は(A2)植物油を含む前記(1)の離解促進剤であり、
(3)B成分が下記一般式(1)で表される乳化剤を含有する前記(1)又は(2)の離解促進剤であり、
【化1】

(但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を、RとRとは(EO)(PO)H、炭素数1〜24のアルキル基、及び炭素数1〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、かつRとRとは同一又は相異していてもよく、Xは陰イオンであり、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、前記mとnとの合計は1〜60である。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
(4)B成分がアルキル基及び/又はアルケニル基を有するイミダゾリン環を含有する4級アンモニウム塩である前記(1)又は(2)の離解促進剤であり、
前記課題を解決しようとする他の手段は、
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つの離解促進剤を用いた離解方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、パルプ原料を離解する際に使用することで、優れた離解効果を発揮する本発明の(A)成分と(B)成分とを有する離解促進剤を提供することができる。更にこの離解促進剤を使用することにより、パルプ原料に対して優れた離解性を示す離解方法を提供することができる。
パルプ原料をほぐす離解工程では、パルパー等の強力な撹拌力を持つ離解機を使用するため多大なエネルギーを消費している。本発明に係る離解促進剤を使用することにより離解工程における処理時間の短縮や未離解物の量の減量が可能となり、したがって生産工程でのトータルエネルギーコストの低減に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用される(A)油類としては、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素、オレフィン系炭化水素等を含有する鉱物油、シリコン油等などの合成油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、紅花油、ナタネ油、ユーカリ油などの植物油、肝油、アザラシ油、イワシ油などの動物油を挙げることができる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。これらの中でも鉱物油と合成油と植物油とが好ましくい。また、鉱物油は、パラフィン系炭化水素を含有していることが好ましい。更に好ましい鉱物油は、パラフィン系炭化水素を40質量%以上75質量%以下の割合で含む鉱物油及び/又は植物油である。前記合成油の中でもシリコーンオイルが好ましい。前記植物油の中でも、大豆油及びナタネ油が好ましい。
【0011】
本発明における(B)乳化剤としては、炭素数が6〜24、好ましくは10〜20であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有する化合物を挙げることができる。この(B)乳化剤の中でも、炭素数が6〜24、好ましくは10〜20であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する化合物が好ましい。また(B)乳化剤は、炭素数が6〜24、好ましくは10〜20であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有していて乳化剤としての機能を有している限り、他の官能基を有していてもよく、例えば、アルキルアリール基のようなものもアルキル基の部分を有しているため(B)乳化剤に含まれる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。また、前記化合物のイオン性はノニオン性、カチオン性、アニオン性、両性のいずれであってもよいが、カチオン性が好ましい。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。
【0012】
前記ノニオン性乳化剤としては、例えば、炭素数が6〜24、好ましくは10〜20であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤(脂肪酸アルキレンオキサイドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル等)が挙げられる。
【0013】
前記カチオン性乳化剤としては、炭素数が6〜24、好ましくは10〜20であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有する第1級アミン類、第2級アミン類、第3級アミン類、及び第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。特に、第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0014】
前記第1級アミン類としては下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
−NH ・・・(2)
(但し、式中、Rは、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルキル基、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルケニル基から選ばれる1種を示す。)
前記第1級アミン類の具体例としては、オレイルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミンが挙げられる。
【0015】
前記第2級アミン類としては下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
−NH ・・・(3)
(但し、式中、Rは、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルキル基、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルケニル基から選ばれる1種を示し、Rは(EO)(PO)H、炭素数1〜24、好ましくは1〜5のアルキル基、炭素数1〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、mとnとの合計は1〜60である。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
【0016】
前記第2級アミン類の具体例としてはジオレイルアミン、モノオレイルモノメチルアミンが挙げられる。
【0017】
前記第3級アミン類としては、下記一般式(4)で表される化合物を挙げることができる。
N ・・・(4)
(但し、式中、Rは、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルキル基、炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルケニル基から選ばれる1種を示し、RとRとは(EO)(PO)H、炭素数1〜24、好ましくは1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、かつRとRとは同一であっても相違していてもよく、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、mとnとの合計は1〜60である。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
【0018】
この第3級アミン類の具体例としては、ポリオキシアルキレンジオレイルアミン、ポリオキシアルキレンエチレングリコールラウリルアミン、ジメチルモノオレイルアミン、モノメチルジオレイルアミンが挙げられる。
【0019】
第4級アンモニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(5)のイミダゾリン環を有する4級塩などが挙げられる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0020】
【化2】

(但し、式中、Rは炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルキル基又は炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルケニル基を、RとRとは(EO)(PO)H、炭素数1〜24、好ましくは1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、かつRとRとは同一又は相異していてもよく、Xは陰イオンであり、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、前記mとnとの合計は1〜60である。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
【0021】
上記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、具体的にはトリメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノセチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノパルミチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、トリメチルモノベヘニルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジセチルアンモニウムクロライド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジベヘニルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0022】
このなかでもトリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0023】
イミダゾリン環を有する4級アンモニウム塩としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。これらを単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0024】
【化3】

(但し、式中、R10は炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルキル基又は炭素数6〜24、好ましくは10〜20のアルケニル基を、R11は炭素数1〜24、好ましくは1〜5のアルキル基又は炭素数1〜24のアルケニル基を示し、Xは陰イオンである。)
【0025】
本発明において、(B)成分の疎水部がアルキル基及び/又はアルケニル基のときは炭素数が6未満であると十分な界面活性能が得られない場合があり、炭素数が24を超えると分散安定性が悪くなったりする場合がある。したがって、本発明の(B)成分の炭素数は6〜24の範囲であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(5)で表されるイミダゾリン環を有する4級アンモニウム塩としては、具体的な化合物としては1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリンエチル硫酸塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリンクロライド、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ラウリルイミダゾリンエチル硫酸塩などが挙げられる。
【0027】
上記以外の(B)成分としては、モノメチルエステル4級塩、ジメチルジエステル4級塩、トリメチルジエステル4級塩、エステルアミド型3級塩などが挙げられる。モノメチルエステル4級塩としては、トリエタノールアミンを、炭素数7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸、例えばステアリン酸で、ジエステル化し、ジメチル硫酸塩で4級化したものが挙げられ、ジメチルジエステル4級塩としては、N−メチルジエタノールアミンを炭素数7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸、例えばオレイン酸でジエステル化し、メチルクロライドで4級化したものが挙げられ、トリメチルジエステル4級塩としては、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールを、炭素数7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸、例えばオレイン酸で、ジエステル化し、メチルクロライドで4級化したものが挙げられ、エステルアミド型3級塩としては、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロパンジアミンを、炭素数7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸、例えばオレイン酸で、エステル化、アミド化し、塩酸で中和して3級アンモニウム塩としたものなどが挙げられる。
【0028】
前記アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアラルキルアリール硫酸エステル塩、アルキル─アリールスルホン酸塩及び各種スルホコハク酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
前記両性乳化剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩系界面活性剤等が挙げられる。
【0030】
本発明における(A)成分と(B)成分との質量比は、通常、(A)/(B)=30/70〜98/2であり、好ましくは、(A)/(B)=50/50〜98/2である。(A)成分の割合が30%未満では十分な離解効果が得られず、また(A)成分の割合が98%を超えた場合は、水への十分な分散性が確保できない場合がある。
【0031】
本発明の離解促進剤は、溶媒中又は無溶媒下に前記(A)成分及び前記(B)成分とを含有する。前記溶媒としては例えば水、イソプロピルアルコール等のアルコール等を挙げることができる。
【0032】
本発明の離解促進剤は前記の割合で(A)成分と(B)成分とを混合することにより、いっそう好ましい離解促進剤を得ることができる。本発明の離解促進剤は、離解工程において添加することにより、当該パルプ原料中の湿潤紙力増強紙の湿潤強度を低下させて、当該パルプ原料の離解を促進する離解方法である。
【0033】
本発明の離解工程は、特に限定されるものではなく、一般の製紙工業で行われている離解工程である。具体的には、湿潤紙力増強紙を含む古紙や損紙からなるパルプ原料を離解機に投入し、水、さらに必要に応じて離解促進剤、スケール抑制剤、漂白剤等を加え、苛性ソーダ等でpHを6〜12に調整し、水温40〜90℃にて離解処理が行われる。用いられる離解機としては、一般にパルパー、高濃度パルパー、地球釜、ハイドロミキサー等がある。
【0034】
離解工程において本発明の離解促進剤と併用される離解促進剤としては、酸化剤、アルカリ類、あるいは市販の離解促進剤が挙げられる。酸化剤としては次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩が挙げられ、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が挙げられ、アルカリ類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、市販の離解促進剤としては、OP−30(商品名、一方社油脂工業(株)製)、バスパース249(商品名、シンエー産業(株)製)、アクロン(商品名、大東薬品工業(株)製)、ハイパーP(商品名、大東薬品工業(株)製)、メルカットFLG(商品名、大和化学工業(株)製)、ニッカソルトRB−1(商品名、日華化学工業(株)製)、シントールW(商品名、(株)日新化学研究所製)、ハクエースPR−80(商品名、伯東化学(株)製)等が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0035】
本発明の離解促進剤を離解工程にて添加して使用する場合、その使用方法は特に制限はなく、工業水などでこの離解促進剤を希釈して添加することもでき、希釈しないでそのまま添加することもできる。いずれの場合も、本発明の離解促進剤を用いること以外は、一般的な離解方法と同様の方法を採用できる。
【0036】
本発明の離解促進剤は必要に応じて従来公知の方法で水等の溶媒に分散させることができる。従来公知の分散方法としては、転相乳化法、界面活性剤又は無機塩類を添加した後の転相乳化法、また機械的な方法により分散する機械的分散方法等が挙げられる。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的分散方法としては、ホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
【0037】
かくして、得られた本発明の離解促進剤は、離解工程において添加することにより、優れた離解促進効果を示す。
【0038】
本発明の離解促進剤を使用できるパルプ原料を構成する損紙や古紙として提供される紙としては、特に制限されるものでなく、各種の紙が挙げられ、板紙も含む。紙の種類としては、ティッシュペーパー、タオルペーパー、キッチンペーパーなどの家庭用薄葉紙、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、圧着紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、中芯、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。この中でも特に高いサイズ性や高い湿潤強度を有する紙に対して特に有用で、タオルペーパー、キッチンペーパー、耐水ライナー、耐水中芯、耐酸カップ原紙、牛乳パック原紙などが挙げられる。
【0039】
本発明の離解促進剤を使用できるパルプ原料としては、クラフトパルプ又はサルファイトパルプなどの晒又は未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ又はサーモメカニカルパルプなどの晒又は未晒高収率パルプ、及び新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙又は脱墨古紙などの古紙パルプ等を挙げることができる。また、本発明の離解促進剤を使用できるパルプ原料としては、上記パルプ原料と岩綿、石綿、あるいはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有しても良い。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
【0041】
(実施例1)
ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤(製品名、WS4020、星光PMC株式会社製)をカナディアン・スタンダード・フリーネス400ccに叩解したパルプ(LBKP)に、0.6%内添して得た湿潤紙力増強紙(坪量65g/m)を約1〜2cm四方の紙片に裁断して試験紙片を得た。次に、この試験紙片を市販のミキサーに入れ、そこに25℃のイオン交換水300ml、次いで、表1の実施例1に記載の(A)成分と(B)成分との配合比で調製した離解促進剤0.05gを添加した。5分間ミキサー処理を行った後、離解効果を試験紙片のほぐれ具合の程度により評価し、その結果を表1に示す。なお、前記湿潤紙力増強剤の添加率はパルプ絶乾質量に対する固形分質量比である。
【0042】
(離解効果)紙のほぐれ具合を次の5段階で目視評価した。
5: 完全にほぐれる
4: 大部分ほぐれる
3: 半分程度ほぐれる
2: 一部ほぐれる
1: ほとんどほぐれない
【0043】
(実施例2〜19)、(比較例1〜20)
実施例1で用いたのと同じ離解促進剤を、表1及び表2に示す(A)成分と(B)成分との比で調製したそれぞれの離解促進剤に代えた外は前記実施例1と同様に試験して、紙のほぐれ具合を評価した。比較例1は、離解促進剤を用いない外は前記実施例1と同様に試験して、紙のほぐれ具合を評価した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表中の説明
(*1) 表中記載の%は、離解促進剤中の割合(質量%)を示す。
(*2) 使用した鉱物油のパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素の含有量は下記の通りである。
鉱物油A:パラフィン系炭化水素70%、ナフテン系炭化水素30%
鉱物油B:パラフィン系炭化水素65%、ナフテン系炭化水素30%、芳香族炭化水素5%
鉱物油C:パラフィン系炭化水素42%、ナフテン系炭化水素45%、芳香族炭化水素13%
鉱物油D:パラフィン系炭化水素37%、ナフテン系炭化水素51%、芳香族炭化水素12%
(*3)はアルキル基が炭素数12〜18の混合物で、主成分はラウリル基である。
(*4)東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名SH3771Mを使用した。
表1及び表2の結果より、本発明の(A)成分と(B)成分よりなる離解促進剤の実施例1〜20は、離解促進剤に(A)成分に鉱物油100%使用して(B)成分を全く含有しない比較例2、14、15、16に対して、同じく(A)成分にナタネ油、大豆油、シリコーン油100%使用して(B)成分を含有しない比較例17、18、19に対して顕著に優れていることがわかる。同様に、離解促進剤に(A)成分を含有せずに(B)成分のみを含有する比較例3、4、5、6、7、8、9、10、11に対しても本発明の(A)成分と(B)成分を含有する離解促進剤の実施例1〜20は顕著に優れていることがわかる。
また、(A)成分と(B)成分を含有する離解促進剤であっても、本発明における(A)成分と(B)成分の比の範囲から外れる比較例12、13は実施例1、5と対比して離解効果が劣ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と(B)成分とを含有し、かつ(A)成分と(B)成分との重量比が(A)/(B)=30/70〜98/2であることを特徴とする離解促進剤。
(A)成分:油類
(B)成分:炭素数が6〜24であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有する官能基を有する乳化剤
【請求項2】
(A)成分が(A1)パラフィン系炭化水素を40質量%以上含む鉱物油及び/又は(A2)植物油を含むことを特徴とする前記請求項1に記載の離解促進剤。
【請求項3】
(B)成分が下記一般式(1)で表される乳化剤を含有することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の離解促進剤。
【化1】

(但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を、RとRとは(EO)(PO)H、炭素数1〜24のアルキル基、及び炭素数1〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、かつRとRとは同一又は相異していてもよく、Xは陰イオンであり、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、前記mとnとの合計は1〜60である。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
【請求項4】
(B)成分がアルキル基及び/又はアルケニル基を有するイミダゾリン環を含有する4級アンモニウム塩であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の離解促進剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の離解促進剤を用いた離解方法。

【公開番号】特開2010−7200(P2010−7200A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166779(P2008−166779)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】