説明

難固結性高炉水砕スラグの製造方法

【課題】 安定的にかつ確実に固結を防止することができる難固結性高炉水砕スラグの製造方法を提供すること。
【解決手段】 二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を溶融スラグに噴射して冷却凝固させて難固結性とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難固結性高炉水砕スラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉水砕スラグは、製銑工程において副産する高炉スラグに、加圧水を噴射して急冷、粒状化したもので、年間2000万t以上生産されている。
高炉水砕スラグは、水硬性を持つため、微粉砕し、セメント用原料に使われてきた。また、近年、天然砂が枯渇しつつあるなかで、資源保護の観点から、天然砂の代替として、土木工事用材料や、コンクリート用細骨材として、高炉水砕スラグそのもの、あるいは粉砕して粒度調整した粒度調製物として使用する機会が増えてきている。
【0003】
ところで、高炉水砕スラグは、そのまま用いられる場合も粒度調製物として用いられる場合も、出荷待ち、あるいは使用待ちのため野積み状態または貯槽内で長時間貯蔵されることが多く、さらに船舶等により長期間をかけて輸送される場合もある。高炉水砕スラグの水硬性は、セメント原料として使用する際には必要不可欠な性質であるが、使用前の長期間の貯蔵中あるいは輸送中に水和反応を起こすと、セメント用原料としての性能が劣化し、十分な強度を持つコンクリートにならない。さらに、スラグ粒子同士が水和生成物を媒体に強固に固結し塊状になると、もはや細骨材として使えなくなり、その結合強度も高いことから、もとの粒子状に破砕、整粒するのに極めて労力を要する。
【0004】
また、高炉水砕スラグを土木工事用材料として使用する場合、強固な地盤を形成させるという目的には水硬性が有利に働くが、軟弱地盤の表層処理工法のサンドマット材等に使用するには、経過日数によっては施工中に固結するため、次に、このサンドマット材にペーパードレインあるいはプラスチックドレイン等の垂直ドレイン材を打設、貫通させようとしても極めて困難になる。土木用途としては、盛土材、埋め戻し材、裏込め材などとして使用されることもあるが、この場合も、施工をした後に、数日から数年後に、その部分を掘り起こし新たに埋設物を埋める工事をしたり、植裁を施したり、さらに数十年が経過した後に再度掘り起こしたりするケースもある。これらの場合、水砕スラグの固結は、掘り起こし作業に大きな力を必要とし、さらに、配管工事などでは、既埋設物の破損を引き起こす危険性もある。したがって、従来は、この種の用途への高炉水砕スラグの使用が制約されてきた。
【0005】
かかる固結現象は、気温の高い夏季に特に顕著であり、以下のような機構で進行すると考えられる。まず、高炉水砕スラグの水和反応は、ガラス質からのカルシウムの溶出とpH上昇から始まり、このアルカリ刺激によりシリコンやアルミニウム等の成分が溶出する。溶出した成分によって、高炉水砕スラグ粒子近傍の液相中のカルシウム、シリコン、アルミニウム等の成分濃度が、各種水和生成物の析出条件まで上昇すると水和物の生成が始まり、エトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)や、珪酸カルシウム水和物(C−S−H)等の水和物を生成し、次第に層厚を増し、粒子同士の固結へ至る。また、この水和物生成反応は、液相においてのみならず、高炉水砕スラグの表面近傍の粒子内部でも生じる。
【0006】
高炉水砕スラグまたはその粒度調製物の水和反応および固結を防止するための技術として、特許文献1には、高炉水砕スラグの製造工程中において、炭酸ガスでバブリングした水で吹製するか、水砕攪拌層中で炭酸ガスをバブリングする方法が開示されており、特許文献2には、冷却された高炉水砕スラグを炭酸水溶液に浸漬する方法が開示されている。また、特許文献3には、高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布する方法が開示されている。
【0007】
これらの技術においては、二酸化炭素を含有するガスでバブリングすることにより炭酸水溶液を製造しているが、通常のバブリングではミリバブルと呼ばれる比較的大きい径の気泡しか得られず、このような気泡は水面への浮上速度が大きいため水中での滞留時間が短く不安定であること、周囲の水との接触界面の面積が小さくなることから、特に水温が高いときに炭酸ガスの溶解度を十分に上げることができず、水砕スラグ表面への炭酸カルシウムの皮膜の形成が不安定になる場合があり、その結果充分な固結防止効果を得られないおそれがある。
【特許文献1】特開昭54−53138号公報
【特許文献2】特開平10−95644号公報
【特許文献3】特開2002−179441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、安定的にかつ確実に固結を防止することができる難固結性高炉水砕スラグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を溶融スラグに噴射して冷却凝固させて難固結性とすることを特徴とする難固結性高炉水砕スラグの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明の第2の観点では、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させて難固結性とすることを特徴とする難固結性高炉水砕スラグの製造方法を提供する。
【0011】
本発明においては、炭酸水溶液として、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させたマイクロバブル含有水を用いる。マイクロバブルは数μm〜十数μmの径を有する気泡と定義される。このような数μm〜十数μmという非常に微細な径を有する気泡を多量に水中に存在させると、長時間安定に水中に滞留するため、二酸化炭素の溶解度が高くなる。また、高濃度の炭酸(イオン)を含み、水中に存在する微細なマイクロバブル自身も直接水砕スラグと反応する。したがって、このようなマイクロバブル含有水を用いることにより、高炉水砕スラグの炭酸化の反応速度を向上させることができ、かつ炭酸化反応を確実に進行させて、水砕スラグ表面への炭酸カルシウムの皮膜を安定かつ確実に形成することができる。
【0012】
上記第2の観点において、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグに散布することによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることができる。また、マイクロバブル含有水に高炉水砕スラグを浸漬させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることができる。さらに、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に通流させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることができる。さらにまた、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に循環させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることができる。
【0013】
上記第1および第2の観点において、二酸化炭素を含有する雰囲気中で水を高圧噴射させることにより、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とすることができる。また、加圧溶解ポンプに水とともに二酸化炭素を含有する気体を吸引させることにより、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とすることができる。この場合に、前記加圧溶解ポンプとして、渦流ポンプを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶融スラグを冷却して凝固させて高炉水砕スラグを得る際に溶融スラグに二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させたマイクロバブル含有水を噴射するか、または得られた高炉水砕スラグにそのようなマイクロバブル含有水を接触させるので、高炉水砕スラグの炭酸化の反応速度を向上することができ、かつ炭酸化反応を確実に進行させて、水砕スラグ表面への炭酸カルシウムの皮膜を安定かつ確実に形成することができる。したがって、安定的にかつ確実に固結が防止された難固結性高炉水砕スラグを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態においては、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を溶融スラグに噴射して冷却凝固させて難固結性とする。
【0016】
高炉水砕スラグの固結防止作用は、高炉スラグに含まれるCaOと、マイクロバブル含有水中の炭酸(HCO)とを反応させ、高炉水砕スラグの粒子表面に難溶性の炭酸カルシウム皮膜を形成することにより得られる。この処理では、炭酸カルシウムを生成せずに、スラグ粒子表面に吸着する炭酸イオンも存在するが、この表面に吸着した炭酸イオンもその効果は小さいが固結を防止する。
【0017】
二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させて得られるマイクロバブル含有水は、数μm〜十数μmという非常に微細な径を有する気泡を多量に含んでおり、この非常に微細な気泡は長時間安定に水中に滞留するため、二酸化炭素の溶解度が高くなる。また、高濃度の炭酸(イオン)を含み、水中に存在する微細なマイクロバブル自身も直接水砕スラグと反応する。したがって、このようなマイクロバブル含有水を溶融スラグに噴射することにより、冷却されて得られる高炉水砕スラグの炭酸化の反応速度を向上することができ、かつ炭酸化反応を確実に進行させて、表面に炭酸カルシウムの皮膜が安定かつ確実に形成された、難固結性高炉水砕スラグを得ることができる。
【0018】
マイクロバブル含有水は、二酸化炭素を含有する雰囲気中で水を高圧噴射することにより得られる。また、高圧ポンプによって圧送される水に二酸化炭素ガスを混合させて、二酸化炭素ガスの気泡径を微細化するマイクロバブル発生装置によって得ることもできる。
【0019】
マイクロバブル発生装置は、例えば、図1に示すように、加圧溶解ポンプ(キャビテーションポンプ)1に水を供給する配管2に二酸化炭素を含有する気体を供給する配管3を接続し、加圧溶解ポンプ1に二酸化炭素ガスを水とともに吸い込ませ、水と二酸化炭素を混合し、加圧溶解ポンプ1の吐出口に取り付けられた旋回加速器4で安定した混合比率で送り出し、旋回加速器4の出口側に設けられた分散器5のせん断力で水に混合されている二酸化炭素をマイクロバブル化し、マイクロバブル含有水を噴出させることができる。
【0020】
また、加圧溶解ポンプとして渦流ポンプを用いることにより、より容易にマイクロバブル含有水を得ることができる。図2に示すように、渦流ポンプ11は、円筒状の金属製のハウジング本体32とこのハウジング本体32に収納された羽根車37とを有している。ハウジング本体32は、水吸込口12と吐出口17とを有している。羽根車37は、ハウジング本体32の中央に設けられた駆動軸40に回転可能に固定され、その外周部には複数の羽根38と羽根の間の羽根溝39が形成されている。羽根車37の外周とハウジング本体32の内周壁の間には、環状の昇圧通路33が形成されている。この昇圧通路33は水吸込口12側に入口部34が位置しており、吐出口17側に出口部35が位置している。水吸込口12の上壁部からは、二酸化炭素を含有する気体を導入する気体吸込ノズル16が羽根車37に近接する位置まで挿入されている。なお、水吸込口12と吐出口17との間には隔壁36が設けられている。
【0021】
このような渦流ポンプ11においては、まず、水を吸込口12から吸引する。吸い込まれた水は、羽根車37とともに昇圧通路33をほぼ一周し、その間、水は、羽根車37の各羽根溝39内の昇圧通路33との間で渦流となり、これが各羽根溝39で同時に行われながら、昇圧通路33内を進み、昇圧通路33を進むにつれて昇圧されて吐出口17から排出される。このとき、気体吸込ノズル16を経て二酸化炭素を含有する気体も吸引される。このため、水吸込口12から昇圧通路33に水が吸込まれる際に、二酸化炭素を含有する気体も同時に吸い込まれ、水と二酸化炭素を含有する気体とが一緒に羽根車37と昇圧通路33との間で生じる渦流によって混合攪拌され、水中に二酸化炭素を含有するマイクロバブルが形成されマイクロバブル含有水が形成される。このマイクロバブル含有水は吐出口17から吐出される。
【0022】
本実施形態では、例えば、図3に示すように、樋55から落下する溶融スラグ51に向けて、上述のようにして得られたマイクロバブル含有水52をノズル55から案内部材57に沿って水平に噴射する。これにより、溶融スラグ51が急冷されて水砕されるとともに、マイクロバブル含有水52により水砕されたスラグの表面に炭酸カルシウムの皮膜が速やかにかつ安定的に形成され、難固結性高炉水砕スラグ53となる。このようにして形成された難固結性高炉水砕スラグ53は、マイクロバブル含有水52の噴射にともなって、案内部材57に連続して設けられた攪拌槽54内に導かれ、その中で図示しない攪拌装置により攪拌される。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
ここでは、通常の工程で得られた高炉水砕スラグに、上述のようにして水と二酸化炭素含有ガスとを混合して製造されたマイクロバブル含有水を接触させて難固結性高炉水砕スラグとする。
【0024】
本実施形態の場合にも、数μm〜十数μmという非常に微細な径を有する気泡を多量に含み、反応に寄与する二酸化炭素の溶解度が高く、かつ二酸化炭素のマイクロバブル自体も反応性が高いマイクロバブル含有水を用い、これを高炉水砕スラグに接触させるので、高炉水砕スラグの炭酸化の反応速度を向上することができ、かつ炭酸化反応を確実に進行させて、表面に炭酸カルシウムの皮膜が安定かつ確実に形成された、難固結性高炉水砕スラグを得ることができる。
【0025】
マイクロバブル含有水と高炉水砕スラグとを接触させる手法は特に限定されるものではないが、具体的には、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグに散布する方法、マイクロバブル含有水に高炉水砕スラグを浸漬させる方法を挙げることができる。ただし、浸漬させる場合には高炉水砕スラグを浸漬させるのに足りるだけの大量のマイクロバブル含有水を調整する必要があるが、散布する場合には浸漬の場合よりもより少ない水溶液で高い固結防止効果を得ることができるので、散布することがより好ましい。
【0026】
また、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に通流させる方法、マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に循環させる方法を採用することもできる。このように高炉水砕スラグが貯留された槽に、上記マイクロバブル含有水を通流させる、または循環させることにより、マイクロバブル含有水が高炉水砕スラグの粒子間を通過するので、高炉水砕スラグ粒子の全体へ均一に炭酸イオンが供給され、高炉水砕スラグ粒子の表面に均一な炭酸カルシウム皮膜を形成することができる。したがって、より確実に固結防止効果を得ることができる。また、マイクロバブル含有水を循環させる場合には、単に通流させる場合よりもマイクロバブル含有水の使用量を少なくすることができる。
【0027】
高炉水砕スラグへマイクロバブル含有水を散布する具体的な方法としては、例えば図4に示すように、高炉水砕スラグの貯槽61の高炉水砕スラグ出側から高炉水砕スラグ65を高炉スラグ貯蔵ヤード63に搬送するコンベア62の上方に、マイクロバブル含有水散布機構64を設け、このマイクロバブル含有水散布機構64からコンベア62上を搬送される途中の高炉水砕スラグ65にマイクロバブル含有水66を散布する。このようにすることで、高炉水砕スラグ65にマイクロバブル含有水を均一にむらなく散布することができ、容易かつ確実に難固結性高炉水砕スラグ67を得ることができる。また、山状に積み付けられた高炉水砕スラグや、貯槽に貯蔵された高炉水砕スラグ等の上方からマイクロバブル含有水を散布するようにしてもよい。さらに、散布後の高炉水砕スラグを混合すると、マイクロバブル含有水の分布がより均一になり、一層の固結防止効果を得ることができる。
【0028】
マイクロバブル含有水に高炉水砕スラグを浸漬する具体的な方法としては、例えば図5に示すように、高炉水砕スラグの貯槽71の出口からコンベア72によりマイクロバブル含有水73が貯留された浸漬槽74へ高炉水砕スラグ76を順次搬送し、スクリューコンベア75で浸漬槽74から外部に順次搬送する方法を採用することができる。
【0029】
マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に通流させる方法としては、例えば図6に示すように、上部に開口82を有し、底部に多数の孔が形成された底板83を有するホッパー型の貯留槽81に高炉水砕スラグ84を貯留し、その状態で貯留槽81の上方に配置された配管85から貯留槽81内にマイクロバブル含有水87を供給して底板83から排出して通流させた後、貯留槽81の底板83から排出されたマイクロバブル含有水87を容器86に受け、容器86に接続された循環ライン88を通って配管85に戻し、マイクロバブル含有水87を渦流ポンプ89により循環させる。このとき渦流ポンプ89に二酸化炭素を供給可能とすることにより、マイクロバブル含有水87のマイクロバブルの含有量を一定量に制御することができる。なお、配管85には配管90が接続されており、この配管90には渦流ポンプ92が設けられていて、この渦流ポンプ92に二酸化炭素を供給することにより配管90を通流している水がマイクロバブル含有水87となる。そして、製造初期段階およびマイクロバブル含有水の交換時には循環ライン88のバルブ88aを閉じ配管90のバルブ90aを開けて配管85を介してマイクロバブル含有水87を貯留槽81に供給し、定常状態になった時点でバルブ90aを閉じバルブ88aを開けてマイクロバブル含有水87の循環を開始する。また、容器86の底部には排液ライン91が接続されておりマイクロバブル含有水を交換する場合には、排液ライン91のバルブ91aを開けてマイクロバブル含有水87を排液する。
【0030】
この場合に、貯留槽81の上方から高炉水砕スラグ84に供給されたマイクロバブル含有水87は、高炉水砕スラグ84の粒子間を通過し、これにより高炉水砕スラグ粒子へ炭酸イオンが供給される。
【0031】
また、以上のように貯留槽81の上方からマイクロバブル含有水87を供給する代わりに、図7では、上部に開口82を有し、底部に配管97が接続された底板83′を有し、さらに、底板83′の直上に多数の孔を有する分散板96を有するホッパー型の貯留槽81′に高炉水砕スラグ84を貯留し、配管97を介して貯留槽81′の底部からその内部へマイクロバブル含有水87を供給して貯留槽81′の上部に設けられたオーバーフロー容器98にオーバーフローさせ。そして、オーバーフロー容器98から循環ライン88′を通って配管97に戻し、マイクロバブル含有水87を渦流ポンプ89により循環させるようになっている。そして、渦流ポンプ89に二酸化炭素を供給可能とすることにより、マイクロバブル含有水87のマイクロバブルの含有量を一定量に制御することができる。なお、配管97には配管90′が接続されており、この配管90′には渦流ポンプ95が設けられていて、この渦流ポンプ95に二酸化炭素を供給することにより配管90′を通流している水がマイクロバブル含有水87となる。そして、初期段階および炭酸水溶液の交換時には配管90′のバルブ90a′を開けて配管97を介してマイクロバブル含有水87を貯留槽81′に供給し、定常状態になった時点でバルブ90a′を閉じてマイクロバブル含有水87の循環を開始する。また、底板83′には排液ライン91′が接続されており炭酸水溶液を交換する場合には、排液ライン91′のバルブ91a′を開けて炭酸水溶液を排液する。また、オーバーフロー容器98にも排液ライン99が設けられている。
【0032】
この際に配管97を介して底部より高炉水砕スラグ84に供給されたマイクロバブル含有水87は、高炉水砕スラグ84の粒子間を通過し、これにより高炉水砕スラグ粒子へ炭酸イオンが供給される。
【0033】
なお、本実施形態では高炉水砕スラグをそのまま処理する場合について説明したが、粉砕して粒度調整した高炉水砕スラグを処理するようにしてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について説明する。
図3に示す設備を用いて、溶融スラグを5ton/分の流量で流し、この溶融スラグに、それぞれ70℃に保持した未処理水(比較例1)、炭酸水(比較例2)、マイクロバブル含有水(実施例1)を35m/分の流量で吹き付けて高炉水砕スラグを吹製した。比較例2の炭酸水は、濃度20%の炭酸ガスをガス圧力0.4MPa(4kg/cm)(ゲージ圧)で水に吹き込んで製造した。また、実施例1のマイクロバブル含有水は、濃度20%の炭酸ガスを図2に示した構造の渦流ポンプで水を送給しながら濃度20%の炭酸ガスを渦流ポンプに供給することにより製造した。
【0035】
これら比較例1、2および実施例1の高炉水砕スラグを、内径100mm、高さ127mm(内容積1リットル)の容器に充填し、容器ごと80℃の恒温水槽中に浸漬し、所定期間養生後の固結状態を観察した(室内規模評価)。また、深さ1.5m、幅4m、1区画の長さ10mの溝に各水砕スラグを約100ton装入し、水を張って固結状態を観察した(実施規模評価)。
【0036】
その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1の未処理水で吹製した高炉水砕スラグでは、室内規模評価で1ヶ月以内に、常温の実施規模評価でも3ヶ月以内に固結が始まった。比較例2の炭酸水で吹製した高炉水砕スラグでは、室内規模評価で1〜2ヶ月の間に固結が始まり、実施規模評価では3〜6ヶ月の間で固結が始まった。これに対して、実施例1のマイクロバブル含有水で吹製した高炉水砕スラグでは、室内規模評価で6ヶ月、実施規模評価で2年間固結しなかった。
【0037】
【表1】

【0038】
次に、未処理水を用いて高炉水砕スラグを製造した後、その高炉水砕スラグを処理した結果について説明する。ここでは、上記図6の設備を用い、高炉水砕スラグ100tonを貯留した貯留槽の上方から処理液としてマイクロバブル含有水を33m/時間の速度で供給しながら、貯留槽の下方から同一速度で排水し、循環させ、その際に貯留槽から排出されたマイクロバブル含有水に、渦流ポンプに二酸化炭素ガスを供給することによってマイクロバブルを補給し、マイクロバブル含有水の炭酸イオン濃度を初期濃度に戻した(実施例2)。また、比較のため、同様の設備を用い、高炉水砕スラグ100tonを貯留した貯留槽の上方から処理液として炭酸水溶液を33m/時間の速度で供給しながら、貯留槽の下方から同一速度で排水し、循環させ、その際に貯留槽から排出された炭酸水溶液に二酸化炭素ガスを補給して炭酸水溶液中の炭酸イオン濃度を初期濃度に戻した(比較例3)。これらの処理液の循環時間を変えて処理した結果、実施例2の場合には、循環時間が1時間で、上記室内規模評価で6ヶ月、上記実施規模評価で2年間固結しなかった。一方、比較例3の場合には、循環時間が1時間では、室内規模評価で6ヶ月の間に固結が始まり、実施規模評価では2年間の間で固結が始まり、室内規模評価で6ヶ月、実施規模評価で2年間固結しないためには、循環時間が3時間必要であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マイクロバブル含有水を製造するための装置の一例を示す概略構成図。
【図2】マイクロバブル含有水を製造するための装置の他の例を示す断面図。
【図3】マイクロバブル含有水を溶融スラグに供給して難固結性高炉水砕スラグを製造するための装置の概略構成を示す図。
【図4】高炉水砕スラグへマイクロバブル含有水を散布する方法の一例を説明するための図。
【図5】マイクロバブル含有水に高炉水砕スラグを浸漬する方法の一例を説明するための図。
【図6】マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に通流させる方法の一例を説明するための図。
【図7】マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に循環させる方法の一例を説明するための図。
【符号の説明】
【0040】
1;加圧溶解ポンプ
2;水を供給する配管
3;二酸化炭素を含有する気体を供給する配管
4;旋回加速器
5;分散器
11;渦流ポンプ
12;水吸込口
16;気体吸込ノズル
17;吐出口
51;溶融スラグ
52;マイクロバブル含有水
53;難固結性高炉水砕スラグ
54;攪拌槽
64;マイクロバブル含有水散布機構
65;高炉水砕スラグ
66;マイクロバブル含有水
67;難固結性高炉水砕スラグ
71;貯槽
73;マイクロバブル含有水
74;浸漬槽
76;高炉水砕スラグ
81;貯留槽
83;底板
84;高炉水砕スラグ
85;配管
87;マイクロバブル含有水
88;循環ライン
89;渦流ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を溶融スラグに噴射して冷却凝固させて難固結性とすることを特徴とする難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とし、そのマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させて難固結性とすることを特徴とする難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項3】
マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグに散布することによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることを特徴とする請求項2に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項4】
マイクロバブル含有水に高炉水砕スラグを浸漬させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることを特徴とする請求項2に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項5】
マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に通流させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることを特徴とする請求項2に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項6】
マイクロバブル含有水を高炉水砕スラグが貯留された槽に循環させることによりマイクロバブル含有水を高炉水砕スラグと接触させることを特徴とする請求項2に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項7】
二酸化炭素を含有する雰囲気中で水を高圧噴射させることにより、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項8】
加圧溶解ポンプに水とともに二酸化炭素を含有する気体を吸引させることにより、二酸化炭素を含有する気体を水中にマイクロバブルとして分散させてマイクロバブル含有水とすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。
【請求項9】
前記加圧溶解ポンプが、渦流ポンプであることを特徴とする請求項8に記載の難固結性高炉水砕スラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−186364(P2007−186364A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4075(P2006−4075)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【Fターム(参考)】