説明

難燃フィルタ用基布

【課題】ホルムアルデヒドの発生が問題となる用途に利用可能で、環境の空気へのホルムアルデヒドの放出量が低く、難燃性が要求されている、特に空調用のフィルタ用基布に好適な基布を提供する。
【解決手段】通気度が200cc/sec/cm以上で、ガーレ法による剛軟度が縦5.0mN以上、難燃剤の含有率が1〜10質量%、放出されるホルムアルデヒドの量が0.50μg/500cm以下である難燃フィルタ用基布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィラメントと、該フィラメントを互いに固定させるバインダー成分とで構成され、空調フィルタ、家電、半導体工場のクリーンルーム等に使用されるエレクトレット不織布、メルトブロー不織布やポリテトラフルオロエチレン膜等の基布に好適なフィルタ用基布に関するものであり、さらに詳しくは、空調用に使用されるメルトブロー不織布の基布に好適なフィルタ用基布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長繊維不織布において繊維間を接着し固定する方法として、バインダーを用いる方法が広く採用され、 バインダーとしては、エマルジョンタイプの接着用樹脂を使用する方法が最も一般的であり、自己架橋性樹脂を架橋させることや反応性基含有樹脂と架橋剤を併用することが幅広く用いられている。これらの架橋成分は、メチロール基であり、ホルムアルデヒド発生の原因となる。
【0003】
近年、 環境の空気質とアレルギー等の各種疾患との関連に社会の関心が高まってきており、住宅に於ける室内空気汚染問題はシックハウス症候群、シックビルディング症候群等の症例として取り上げられているが、室内空気汚染物質としてホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)等が問題となっている。
【0004】
特にホルムアルデヒドに関しては、1997年に厚生省(当時)から住宅におけるガイドライン値が発表されるなど、明確に問題視されてきており、その発生源は、住宅建築材料である木材、合板、内装材に使われる接着剤、防腐剤、防蟻剤、 生活空間内の家具・調度品、生活用品、および業務用事務機器等あらゆる分野に渡っている。
ホルムアルデヒド対策として、ホルムアルデヒド吸着剤を具備させる方法(特許文献1など)やホルムアルデヒド吸着剤をコーティングする方法(特許文献2など)などが知られているが、十分な対策にはなっていない。
【0005】
また、近年ダイオキシン発生によるオゾン層破壊の問題が、社会問題となっている。ダイオキシンについては、廃棄物焼却時にハロゲン元素が含まれる化学物質から発生するものと考えられている。
ハロゲン元素は難燃剤に使用される主剤であり、効果も大きく過去より使用されてきた。
しかしながら上記に理由によってフィルタにおいても廃棄焼却時にダイオキシンの元凶になるものは使用するにはいかず脱ハロゲンの難燃剤が要望されていた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−046965号公報
【特許文献2】特開2000−287819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、環境の空気質への影響を考慮せざるを得なくなった現在の情勢に合致すべく、生活用品、産業資材、建築材料、土木資材等のさまざまな分野において、将来規制されるであろうホルムアルデヒド環境基準に適合させる用途に利用可能な、環境の空気へのホルムアルデヒドの放出量が低く、特に空調用のフィルタ用基布に好適な長繊維不織布材料を提供しようとするものである。
またフィルタ材を難燃化するためにハロゲン類を使用せずに環境負荷の少ない非ハロゲン材の難燃剤を使用したフィルタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
1.通気度が200cc/sec/cm以上で、ガーレ法による剛軟度が縦5.0mN以上、難燃剤の含有率が1〜10質量%、放出されるホルムアルデヒドの量が0.50μg/500cm以下であるフィルタ用基布。
2.フィルタ用基布が合成樹脂フィラメントと、該フィラメントを互いに固定させるバインダーとで構成され、合成樹脂フィラメントの繊度が1.5〜30dtex、バインダーの含有率が10〜30質量%である上記1に記載のフィルタ用基布。
3.目付が50〜100g/mである上記1又は2に記載のフィルタ用基布。
4.使用されるバインダーがポリエステル系樹脂である上記1〜3のいずれかに記載のフィルタ用基布。
5.バインダーに含有されるリン原子の含有量が100〜50000ppmである上記1〜4のいずれかに記載のフィルタ用基布。
6.バインダーに含有される難燃剤がリン窒素系の難燃剤である上記1〜5のいずれかに記載のフィルタ用基布。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば環境へのホルムアルデヒドの放出量が低く、かつ難燃性に優れたフィルタ用基布を提供でき、この基布は、特に空調用のフィルタ用基布に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるフィルタ用基布は長繊維不織布を使用することが好ましい。該長繊維不織布は、スパンボンド法等の従来公知の製造方法によって得られる長繊維不織布であり、多数のノズル孔をもつ紡糸口金からの溶融紡糸されたフィラメントを主たる構成材料とするものである。
本発明におけるフィラメントを形成する合成樹脂とは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの公知の合成繊維材料を用いることができるが、リサイクルのしやすさ、耐熱性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のホモポリエステルやこれらの成分以外に共重合成分を有する公知の共重合ポリエステルなどの一般的なポリエステルが好ましい。
これらの合成樹脂材料には安定剤、紫外線吸収剤、吸湿剤、滑剤、顔料等が含まれても良いが、これらにホルムアルデヒドの発生源を有することは好ましくない。
【0011】
フィルタ用基布の通気度は200cc/sec/cm以上であることが好ましい。通気度が200cc/sec・cm以下になるとフィルタ圧損が高くなり寿命が短くなるため好ましくない。より好ましくは250cc/sec・cm以上、更に好ましくは300cc/sec・cm以上である。通気度の上限は特にはないが、通常1000cc/sec・cm以下であることが多い。
【0012】
フィルタ用基布のガーレ法による剛軟度は縦5.0mN以上である。縦5.0mN未満になると、ろ材を貼り合せたフィルタ材のプリーツ加工性が悪化するため好ましくない。また、ダスト保持した状態で、ろ材の腰折れが発生してしまうため好ましくない。好ましくは縦5.0mN以上、より好ましくは縦6.0mN以上である。剛軟度の上限は特にはないが、通常縦10mN以下であることが多い。
【0013】
フィルタ用基布の難燃剤含有率は1〜10質量%であることが好ましい。1質量%未満になると難燃性が低下して最終製品のフィルタとして難燃性基準に合格できなくなるため好ましくない。反対に10質量%を超えると難燃剤中成分のブリード現象が発現する可能性があり、フィルタ側の機器等に悪い影響を与えてしまうため好ましくない。好ましくは3〜10質量%、より好ましくは5〜10質量%である。
【0014】
フィルタ用基布を構成する合成樹脂フィラメントの繊度は1.5〜30.0dtexであることが好ましい。繊度が1.5dtexより小さい場合は基布製造時に糸切れを引き起こし、操業性の悪化要因となる。また、フィルタ用基布の剛性が低下してろ過材の貼り合わせた後のフィルタがプリーツ加工できなくなるため好ましくない。さらに、通気度が低くなりフィルタ寿命が短くなるため好ましくない。反対に繊度が30.0dtexより大きいと、ろ過材との接着性が低下して基布のとの剥離現象が発生してしまうため好ましくない。また繊維の絡み及び接点が減少し強度が低下するため好ましくない。
【0015】
紡出された合成樹脂フィラメントはコンベアネットなどで捕集されてウエブを形成し、該ウエブのフィラメントは、必要によりエンボスカレンダーなどによる加熱、圧着処理、ニードルパンチなどによる絡合処理、バインダー樹脂処理などの種々の接合手段によって接合される。
バインダー処理する前のシートの目付は40〜90g/m、好ましくは60〜80g/mである。シートの目付量が40g/m未満の場合には、フィルタ用基布としての剛性が低下して、ろ材貼り合せ後のフィルタのプリーツ性が悪くなり好ましくない。反対に90g/mを超えるとフィルタ圧損が高くなりフィルタ寿命が短くなってしまうため好ましくない。
【0016】
バインダー処理は、バインダー樹脂を噴霧、浸漬、コーティングなどの方法を適宜選択できるが、上記のエンボスカレンダー処理やニードルパンチング処理されたウエブをバインダー樹脂処理浴中に浸漬後、絞るパッド・ニップ法が好ましい。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂水系エマルジョンなどでホルマリンや有機溶剤などのVOCの発生源にならないものが好ましい。エマルジョンタイプの樹脂に、触媒、PH調整剤、浸透剤、消泡剤、分散剤等の助剤を併用することができるが、これらにホルムアルデヒドの発生源にならないものが好ましい。
リン系難燃剤と相乗効果を考慮するとポリエステル樹脂水系エマルジョンの使用がより好ましい。
【0017】
バインダー樹脂液が付与された後は、通常80〜130℃程度の温度で乾燥し、次いで130〜200℃で1〜10分間、好ましくは150〜180℃で1〜5分間のベーキング処理をする。ベーキング処理することで、VOCを著しく低減させることができる。
バインダー樹脂の固形分付与量は、全基布質量に対して3〜30質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。バインダー樹脂の固形分付与量が3質量%未満の場合には、製品の剛性が不足し、30質量%を超えた場合は、繊維間の目を塞いでフィルタの圧損が高くなり寿命が短くなるため好ましくない。
【0018】
バインダー樹脂加工後に、さらにカレンダーローラー等の熱及び圧力を作用させて、フィラメント間の固定をより強固にしたり、シート表面のバインダー樹脂を平滑化したり、エンボスパターンを付与することができる。
【0019】
フィルタ用基布としての目付は、好ましくは50〜100g/mである。フィルタ用基布の目付量が50g/m未満の場合には、剛性が低下して、ろ材貼り合せ後のフィルタのプリーツ性が悪くなり好ましくない。反対に100g/mを超えるとフィルタ圧損が高くなりフィルタ寿命が短くなってしまうため好ましくない。
【0020】
フィルタ用基布から放出されるホルムアルデヒドの量は0.50μg/500cm以下であることが好ましい。
なお、本発明における放出されるホルムアルデヒドの量とは、以下の方法で測定されるものである。
一時間あたりの通気量12リットルの温度70℃の窒素ガス流雰囲気下において面積500cmの基布から窒素ガス12リットル中に放出されるホルムルデヒドの量である。すなわち、測定試料の一定質量に対してではなく、一定面積からのホルムアルデヒド発生量を測定するものであり、使用空間に面する壁、床、天井、その他物品の特定面積からの室内空気汚染の影響を受ける使用者の現実の利用状況にできるだけ近い形で評価するものである。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明を実施例によって説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<ホルムアルデヒド発生量>
基布5cm×10cm×10片を採取容器にとる。
採取容器内温度70℃で高純度窒素ガスを0.2ml/minの速度で流入させ、市販のDNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)カートリッジに1時間12リットル通し、発生したホルムアルデヒドをDNPH誘導体化し固相吸着させる。 カートリッジからアセトニトリル5mlでホルムアルデヒドDNPH誘導体を抽出し、試料溶液を作成する。
試料溶液を高速液体クロマトグラフ(HPLC)Hewlett−Packard社製HP1100に導入し分析する。
その他のHPLC分析条件は、カラム:Waters社製μBondapak C18 10μm 125Å 3.9mm×150mm、移動相:水/アセトニトリル=45/55、流速=0.8ml/min、検出:UV 360nm。
以上より、一時間あたりの通気量12リットルの温度70℃の窒素ガス流雰囲気下において面積500cmの基布から窒素ガス12リットル中に放出されるホルムアルデヒドの量を求める。
<フラジール通気度>
JIS L−1096に準ずる。
<剛軟度(ガーレ式)>
JIS L−1096に準ずる。
<難燃性能>
空気清浄装置用ろ材燃焼試験(JACA NO11A)
クラス3基準
・5個の試験片のうち4個以上の残炎時間が2s以下
・全ての試験片の残炎時間が10s以下
・全ての試験片が、溶融滴下により、試験片が175±25mm下に置いた標識用綿を発火させない
・全ての試験片の残じん時間が30s以下
合格:上記条件を全て満たすもの
不合格:上記条件の全てを満たせないもの
<プリーツ性能>
レシプロ製プリーツ機を使用して5cmピッチでプリーツ加工を実施した。
合格:規則的プリーツ山を形成
不合格:プリーツ山を形成できない
<ブリードアウト性>
問題無:ほとんどブリードアウトしない
問題有:ブリードアウトが発生し潮解等の現象がでる。
<濾材との接着性>
パウダーラミやカーテンスプレー法等のラミネート加工方法によってメルトブロー不織布等(以下MB)の濾材と基材を接着した後、その接着が妥当かどうかを判断する目安として、剥離させたときにMBの材料破壊が半分以上起こるかどうかという基準がある。これを合格すればプリーツ加工や実際のユニットととして使用されたときの耐久性があると判断できる。
合格:剥離時MBが半分以上材破する
不合格:剥離時MBが1/3以上材破しない
【0022】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比 80/20)した調合液にパッド・ニップして乾燥後、ベーキングし目付71g/mでバインダー成分の付与量が25質量%の基布を得た。この基布を前述の方法でホルムルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.1μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は5.1mNであった。
【0023】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を2.2dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比 70/30)した調合液をパッドして、パッド・ニップ・ベーキング方式で固定化処理した後、さらにカレンダーローラーで熱(205℃)し、目付93g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.30μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は7.1mNであった。
【0024】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を30dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比 70/30)した調合液をパッドして、パッド・ニップ・ベーキング方式で固定化処理した後、さらにカレンダーローラーで熱(205℃)し、目付71g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.30μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は5.1mNであった。
【0025】
[実施例4]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を11dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比 70/30)した調合液をパッドして、パッド・ニップ・ベーキング方式で固定化処理した後、さらにカレンダーローラーで熱(205℃)し、目付71g/mでバインダー成分の付与量が10%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.10μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は5.2mNであった。
【0026】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を1.1dtexのフィラメントでウエブを形成した以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付83g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.30μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は4.5mNであった。
【0027】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、一般的な架橋反応性をもつアクリル樹脂および架橋剤としてメラミン樹脂、触媒として3級アミンからなる調合液にて実施例1と同様にパッド・ニップ・ベーキング方式で固定化処理した後、目付71g/mでバインダー成分の付与量が22%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は9.17μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は6.5mNであった。
【0028】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を40dtexのフィラメントでウエブを形成した以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付71g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.20μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は7.1mNであった。
【0029】
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比94/6)した調合液をパッドした以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付71g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.10μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は5.1mNであった。
【0030】
[比較例5]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成した以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付40g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.10μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は3.5mNであった。
【0031】
[比較例6]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比60/40)した調合液をパッドした以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付71g/mでバインダー成分の付与量が25%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.10μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は5.1mNであった。
【0032】
[比較例7]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、スパンボンド法により単糸繊度を4.4dtexのフィラメントでウエブを形成し、ニードルパンチ加工を施した後、日華化学社製ポリエステル系樹脂ES−7とリン窒素系難燃剤を混合(固形分比20/80)した調合液をパッドした以外は、実施例1と同様に加工した結果、目付71g/mでバインダー成分の付与量が5%の基布を得た。
この基布を前述の方法でホルムアルデヒド発生量を測定した結果、ホルムアルデヒド発生量は0.10μg/500cmであった。またガーレ式剛軟度は3.5mNであった。
【0033】
実施例で得られた基布の特性を表1のまとめる。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば環境へのホルムアルデヒドの放出量が低く、かつ難燃性に優れたフィルタ用基布を提供でき、この基布は、特に空調用のフィルタ用基布に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気度が200cc/sec/cm以上で、ガーレ法による剛軟度が縦5.0mN以上、難燃剤の含有率が1〜10質量%、放出されるホルムアルデヒドの量が0.50μg/500cm以下であるフィルタ用基布。
【請求項2】
フィルタ用基布が合成樹脂フィラメントと、該フィラメントを互いに固定させるバインダーとで構成され、合成樹脂フィラメントの繊度が1.5〜30dtex、バインダーの含有率が10〜30質量%である請求項1に記載のフィルタ用基布。
【請求項3】
目付が50〜100g/mである請求項1又は2に記載のフィルタ用基布。
【請求項4】
使用されるバインダーがポリエステル系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルタ用基布。
【請求項5】
バインダーに含有されるリン原子の含有量が100〜50000ppmである請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタ用基布。
【請求項6】
バインダーに含有される難燃剤がリン窒素系の難燃剤である請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタ用基布。


【公開番号】特開2008−196072(P2008−196072A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31842(P2007−31842)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】