説明

難燃剤、樹脂組成物および樹脂成形体

【課題】本構成を有しない場合に比べ、成形体に含有させたとき、燃焼時の熱量が少ない難燃剤を提供する。
【解決手段】難燃剤は、エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤、樹脂組成物および樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品や電子・電気機器の部品には、ポリスチレン、ポリスチレン−ABS樹脂共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール等の高分子材料が、耐熱性、機械強度、特に、電子・電気機器の部品の場合には、環境変動に対する機械強度の維持性に優れることから用いられている。
【0003】
また近年、電気製品や電子・電気機器の部品において、難燃性が要求されることから、電気製品や電子・電気機器の部品に用いられる樹脂組成物には、難燃剤が混合されている。難燃剤として、一般に、ハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物、水和金属化合物、無機系化合物などが知られている。
【0004】
更に、難燃性樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、下記(A)から(D)までの合計を100重量%として、(A)シランカップリング剤0.3〜5重量%、(B)ポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウム12〜25重量%、(C)ポリプロピレン樹脂に混合された場合にポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウムとの組み合わせにより、熱分解によって非引火性ガス生成物および炭素質残査を与え得る窒素含有有機化合物の1種または2種以上の混合物(以下、窒素含有有機化合物という)5〜10重量%、(D)残りポリプロピレン樹脂である難燃性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、各成分の合計を100重量%として(A)ポリエチレン樹脂5〜30重量%、(B)シランカップリング剤0.3〜5重量%、(C)ポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウム12〜25重量%、(D)ポリプロピレン樹脂に混合された場合にポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウムとの組み合わせにより、熱分解によって非引火性ガス生成物および炭素質残査を与え得る窒素含有有機化合物の1種または2種以上の混合物(以下、窒素含有有機化合物という)5〜10重量%、(E)架橋助剤1.0〜15重量%、(F)特定の式で表わされるもののなかから選ばれた1種以上のチオホスファイト(以下、チオ ホスファイトという。)0.05〜5重量%、(G)残りポリプロピレン樹脂である難燃性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【0006】
難燃性樹脂組成物として、特許文献3には、下記(A)から(E)までの合計を100重量%として、(A)ポリエチレン樹脂5〜25重量%、(B)シランカップリング剤0.3〜5重量%、(C)ポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウム12〜25重量%、(D)ポリプロピレン樹脂に混合された場合にポリ燐酸アンモニウムまたはメラミン変性ポリ燐酸アンモニウムとの組合せにより、熱分解によって非引火性ガス生成物および炭素質残渣を与え得る窒素含有有機化合物の1種または2種以上の混合物5〜10重量%、(E)残りがポリプロピレン樹脂である難燃性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【0007】
一方、特許文献4には、(A):リン原子と窒素原子との両方を含有する化合物よりなる群の中から選択されたガス発生剤またはリン含有化合物と窒素含有化合物との混合物からなるガス発生剤と、(B):(i)(R(ORSiO(4−a−b)/2・・・式(1)(R1はアルキル基、R2はアルキル基、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3、0.9<a+b≦4)で示される有機ケイ素化合物と、(ii)RNR−SiRn(OR3−n・・・式(2)(R、Rは水素原子、アルキル基またはアミノアルキル基、Rは2価炭化水素基、Rはアルキル基、nは0または1)で示されるアミノ基含有アルコキシシランまたはその部分加水分解物とを有機酸または無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物からなる難燃性添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−6655号公報
【特許文献2】特公平6−4735号公報
【特許文献3】特公平6−18944号公報
【特許文献4】特開2006−111844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、本構成を有しない場合に比べ、成形体に含有させたとき、燃焼時の熱量が少ない難燃剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の難燃剤、樹脂組成物および樹脂成形体は、以下の特徴を有する。
【0011】
(1)エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを含む難燃剤である。
【0012】
(2)前記エポキシ含有シリコーン化合物の数平均分子量が、1000以上、6000以下である上記(1)に記載の難燃剤である。
【0013】
(3)前記エポキシ含有シリコーン化合物の熱分解点が、250℃以上、350℃以下である上記(1)または(2)に記載の難燃剤である。
【0014】
(4)前記エポキシ含有シリコーン化合物のシリコーンに対するエポキシ当量が、500以上、5000未満である上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の難燃剤である。
【0015】
(5)樹脂と、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の難燃剤と、を含む樹脂組成物である。
【0016】
(6)前記樹脂が、ポリ乳酸である上記(5)に記載の樹脂組成物である。
【0017】
(7)上記(5)または(6)に記載の樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、成形体に含有させたとき、燃焼時の熱量が少ない難燃剤が提供される。
【0019】
請求項2,3に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、成形体に含有させたとき、燃焼時の熱量が少ない樹脂組成物が提供される。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、燃焼時の熱量が少ない樹脂成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明における難燃剤、樹脂組成物および樹脂成形体の実施の形態を説明する。なお、本実施形態は本発明を実施するための一例であり、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[難燃剤]
本実施の形態における難燃剤は、エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを含む。更に、前記エポキシ含有シリコーン化合物の数平均分子量(Mn)は、1000以上、8000以下であることが好ましい。前記エポキシ含有シリコーン化合物の数平均分子量が、1000未満の場合、熱分解が容易であり、その分解物が電子機器部材の接触不良の原因になる場合があり、一方、8000を超えると、粘度の増加により分散性が不良になる場合がある。
【0023】
また、前記エポキシ含有シリコーン化合物の熱分解点は、250℃以上、350℃以下であることが好ましい。前記エポキシ含有シリコーン化合物の熱分解が、250℃未満の場合、成形加工中に分解して発泡してしまう場合があり、一方、350℃を超えると、難燃性が低下する場合がある。
【0024】
また、前記エポキシ含有シリコーン化合物のエポキシ当量は、500以上、5000未満であることが好ましい。前記エポキシ含有シリコーン化合物のエポキシ当量が、500未満の場合、反応基が多いため硬化しやすく、耐衝撃性が不良になる場合があり、一方、5000以上の場合には、反応基が少ないため難燃剤を十分被覆できず、その結果耐湿熱性が低下する場合がある。
【0025】
本実施の形態におけるエポキシ含有シリコーン化合物としては、例えば、「SF8413」(商品名、東レ・ダウコーニング(株)社製)が好適である。
【0026】
本実施の形態におけるポリリン酸アンモニウムは、如何なるものでもよいが、例えば、「EXOLIT422」(商品名、クラリアントジャパン(株)社製)が好適である。
【0027】
本実施の形態の難燃剤の製造方法は、ポリリン酸アンモニウムを、エポキシ基を含有するシリコーン化合物で被覆する際に、溶液中での分散処理や、エポキシ基を含有するシリコーン化合物のスプレードライ処理でもよいが、加熱ミキサー、2軸押出機を用いて製造することが好ましい。
【0028】
本実施の形態における難燃剤として、更に、ポリリン酸アンモニウムにメラミンコートされた複合体に、エポキシ含有シリコーン化合物を被覆したものを用いてもよい。
【0029】
[樹脂組成物]
本実施の形態における樹脂組成物は、少なくとも、樹脂と、上述した難燃剤とを含む。
【0030】
<樹脂>
本実施の形態における樹脂組成物に用いられる樹脂としては特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メチルペンテン、熱可塑性加硫エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリシリコーン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリロニトリル、ポリメトキシアセタール、ポリイソブチレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブタジエンスチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ−n−ブチルメタクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリブタジエンアクリルニトリル、ポリブテン−1、ポリアリルスルホン、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリエステルアルキド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアミド、天然ゴム、ニトリルゴム、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体、イソプレンゴム、アイオノマー、ブチルゴム、フラン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、プロピオン酸セルロース、ヒドリンゴム、カルボキシメチルセルロース、クレゾール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、ビスマレイミドトリアジン、シス1・4ポリブタジエン合成ゴム、アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、アクリル酸エステルゴム、ポリ乳酸等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0031】
本実施の形態における樹脂として、ポリ乳酸が好適である。ポリ乳酸は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCOの排出量削減、石油使用量の削減効果がある。ポリ乳酸としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸(以下「PLLA」ともいう)であっても、ポリ−D−乳酸(以下「PDLA」ともいう)であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよく、さらに、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合したものであり、これらのらせん構造がうまく噛み合った耐熱性の高い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸(以下「SC−PLA」ともいう)であってもよい。また、ポリ乳酸は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製の「テラマックTE4000」、「テラマックTE2000」、「テラマックTE7000」、三井化学(株)製の「レイシアH100」等が挙げられる。また、ポリ乳酸は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態において、ポリ乳酸は樹脂組成物の主成分として含まれる。ここで「主成分」とは、樹脂組成物全量に対して50質量%を超えることを意味する。
【0032】
ポリ乳酸の分子量は、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、ポリ乳酸の重量平均分子量は、8,000以上、200,000以下であり、15,000以上、120,000以下が好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量が8,000未満の場合、樹脂組成物の燃焼速度が速くなり、低温機械強度が低下する傾向があり、一方、ポリ乳酸の重量平均分子量が200,000を超える場合には、柔軟性が低下し、樹脂組成物のドリップ自消性が低下し、いずれの場合も難燃性が低下する傾向にある。なお、「ドリップ自消性」とは、樹脂組成物が熱によりたれて消失することを意味する。
【0033】
樹脂組成物中におけるポリ乳酸の重量平均分子量は、樹脂組成物を液体窒素雰囲気下で冷却してその表面から測定用試料を削り取り、測定用試料を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、ゲルパーミッションクロマトグラフにて、分離されたポリ乳酸について測定した重量平均分子量を意味する。また、測定には、ゲルパーミッションクロマトグラフとして、東ソー社製「HLC−8220GPC」が用いられる。
【0034】
<その他成分>
本実施の形態における樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、強化剤、相溶化剤、耐候剤、強化剤、加水分解防止剤等の添加剤、触媒などをさらに含有してもよい。これらの添加剤及び触媒の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ5質量%以下であることが好ましい。
【0035】
<樹脂組成物の製法>
本実施の形態における樹脂組成物は、例えば、樹脂と、エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを含む難燃剤とを、混練して作製される。
【0036】
前記混練は、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダー(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行う。ここで、混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、150℃以上、250℃以下が好ましく、160℃以上、240℃以下がより好ましい。これにより、混練時にリン酸塩がポリ乳酸中に溶け込んでしまうことが抑制され、耐熱性、難燃性、及び耐衝撃性が共に優れた成形体が得られ易くなる。
【0037】
[樹脂成形体]
本実施の形態における樹脂成形体は、例えば、上述した本実施の形態における樹脂組成物を成形することにより得ることができる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により成形して、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。本実施形態においては、成形体における成分(例えばガラス繊維やリン酸塩)の分散性の理由から、本実施形態の樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
【0038】
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製「NEX150」、日精樹脂工業製「NEX70000」、東芝機械製「SE50D」等の市販の装置を用いて行う。この際、シリンダ温度としては、ポリ乳酸の分解抑制などの観点から、150℃以上、190℃以下とすることが好ましく、160℃以上、190℃以下とすることがより好ましい。また、金型温度としては、結晶化等の観点から、30℃以上、120℃以下とすることが好ましく、50℃以上、120℃以下とすることがより好ましい。
【0039】
<電子・電気機器の部品>
前述の本実施の形態における樹脂成形体は、難燃性に優れたものになり得るため、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。電子・電気機器の部品は、複雑な形状を有しているものが多く、また重量物であるので、重量物でないものに比べて高い耐衝撃強度及び面衝撃強度が要求されるが、本実施形態の樹脂成形体によれば、このような要求特性を十分満足させることができる。本実施の形態における樹脂成形体は、特に、画像形成装置や複写機などの筐体に適している。
【実施例】
【0040】
以下実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[難燃剤の製造]
表1に示す、表4に示すB1のポリリン酸アンモニウムと、C1からC6に示す組成からなる成分を、加熱ミキサー(東洋精機製作所社製、「ラボプラストミル」)にて、170℃で、3分間混練して、各難燃剤D1からD13を製造した。なお、B8として、エポキシ含有シリコーン化合物である「SF8413」(商品名、東レ・ダウコーニング(株)社製、数平均分子量:7800、熱分解点:350℃、シリコーンに対するエポキシ当量:3800)を用いた。
【0042】
実施例1から実施例14:
表2に示す実施例1から実施例14に示す組成を、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、シリンダ温度190℃で混練し、樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを射出成形機(日精樹脂工業製、NEX150)にて、シリンダ温度180℃、金型温度110℃で、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応)(試験部厚さ4mm、幅10mm)を成形した。
【0043】
比較例1から比較例15:
表3に示す比較例1から比較例15に示す組成を、実施例と同様に樹脂組成物ペレットを得て、射出成形、特性評価を実施した。結果を表2に示す。
【0044】
また、表1から表3に示す各成分の略称について、表4に商品名、メーカー名を示す。
【0045】
<測定・評価>
得られた試験片を用いて、下記各測定・評価を行った。表1,2に結果を示す。
【0046】
(UL−燃焼熱量測定)
UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ1.6mm)を用い、「マルチカロリーメータ MCM−2」(東洋精機製作所製)を行い、総燃焼発熱量を測定した(単位:kJ)。
【0047】
(シャルピー試験方法)
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、JIS K7111に準拠して、デジタル衝撃試験機(東洋精機製、DG−5)により、持ち上げ角度150度、使用ハンマー2.0J、測定数n=10の条件で、MD方向にシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度は、数値が大きい程、耐衝撃性に優れていることを示す(単位:J/cm)。
【0048】
(耐湿熱性の試験方法)
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを、温度60℃湿度85%の条件下に放置し、500時間後に、示差熱走査熱量測定装置「セイコーII」(セイコーインスツル(株)製)を用い、樹脂の250℃におけるホールド性を評価した。ホールド性100%とは、質量の減少が全くない状態をいい、ホールド性0%とは、全て分解し質量がなくなる状態をいう。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表2,3より、エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを難燃剤として添加することで、本構成を有しない場合に比べ、所定基準並の難燃性、耐衝撃性、湿熱性が向上した。例えば、比較例13のエポキシ樹脂処理のリン酸アンモニウムをポリ乳酸に配合した場合のUL−燃焼熱量は、32(kJ)であり、難燃剤をなにも配合していない比較例1の13(kJ)と比較して、燃焼熱量が大きくなり、かえって燃えやすい傾向にある。ところが、実施例10のエポキシ基をもつシリコーン処理のリン酸アンモニウムをポリ乳酸に配合した場合のUL−燃焼熱量は、1(kJ)であり、燃焼熱量が極めて少ないことから難燃性が向上している。
【0054】
[付記]
本実施の形態の難燃剤の製造方法の好ましい態様として、ポリリン酸アンモニウムを、エポキシ基を含有するシリコーン化合物で被覆する際に、加熱ミキサー、2軸押出機を用いる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の活用例として、難燃性を有する樹脂成形体への適用がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ含有シリコーン化合物により被覆されたポリリン酸アンモニウムを含むことを特徴とする難燃剤。
【請求項2】
樹脂と、請求項1に記載の難燃剤と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする樹脂成形体。

【公開番号】特開2011−184534(P2011−184534A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50205(P2010−50205)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】