説明

難燃化された硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム用シリコーン安定剤

【課題】 難燃化された硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム用シリコーン安定剤を提供する。
【解決手段】 本発明は、一般式(I):R−Si(CH−O−[−Si(CH−O−]−[−Si(CH)R−O−]−Si(CH−R(式中、Rは−(CH−O−(CH−CHR’−O)−R”である)の気泡安定剤を用いて、ウレタンおよび/またはイソシアヌレート触媒、水、場合によりさらなる発泡剤、場合により難燃剤、および場合によりさらなる添加剤(例えば、フィラー、乳化剤、純粋な有機系の安定剤および界面活性剤、減粘剤、染料、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤)の存在下に、イソシアネートをポリオールと反応させることによる、硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い熱伝導率や良好な表面品質等の特に有利な使用性を提供する硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの開発に加えて、これらのベースとなる処方の開発にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンおよびポリイソシアヌレートフォームの製造においては、欠陥が少なく、したがって硬質フォームの使用性、特に断熱性に非常によい影響を与える、微細セルを有する均質なフォーム構造を確保する気泡安定剤が利用されている。ポリエーテル変性シロキサンをベースとする界面活性剤は特に効果が高く、したがって、好ましい気泡安定剤の代表的な種類である。
【0003】
硬質フォーム処方には様々な用途向けに多くの異なる種類があり、個々の要件を満たす気泡安定剤が必要なことから、構造の異なるポリエーテルシロキサンが使用されている。気泡安定剤の選択基準の一つが、硬質フォーム処方中に存在する発泡剤である。
【0004】
硬質フォーム用ポリエーテルシロキサン気泡安定剤に関する様々な刊行物が過去に発行されている。(特許文献1)には、(CHSiO[SiO(CH[SiO(CH)R]Si(CH(このR基は、SiC結合を介してシロキサンに結合しているポリエチレンオキシドを含み、分子鎖の他端がC〜Cアシル基で末端封止されている)の構造を有するポリエーテルシロキサンが記載されている。この気泡安定剤は、有機系発泡剤、特にCFC−11等のクロロフルオロカーボンが使用される硬質ポリウレタンフォームの製造に好適である。
【0005】
クロロフルオロカーボンの次の世代の発泡剤がHCFC−123等のハイドロクロロフルオロカーボンである。硬質ポリウレタンフォームの製造にこれらの発泡剤を使用する場合は、(特許文献2)によれば、(CHSiO[SiO(CH[SiO(CH)R]Si(CH型の構造を有するポリエーテルシロキサンが好適である。この場合のR基は、SiCで結合したポリアルキレンオキシド(プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドから構成される)を含み、分子鎖の末端にヒドロキシ、メトキシ、またはアシルオキシ基を有していてもよい。このポリエーテル中のエチレンオキシドの最小比率は25質量%である。
【0006】
(特許文献3)には類似の構造が記載されているが、この製造法の場合は、分子量が比較的高い点と、シロキサン鎖上に2種類のポリエーテル置換基が組み合わせられている点とが最初に挙げた気泡安定剤と異なっている。
【0007】
フレオン(Freon)等のフルオロカーボンのみを発泡剤として用いる硬質ポリウレタンフォームの製造においては、(特許文献4)によれば、異なる安定剤の混合物、例えば純粋な有機系の界面活性剤をポリエーテルシロキサンと併用することも可能である。
【0008】
硬質ポリウレタンフォームの製造における比較的最近の進展は、発泡剤としてのハロゲン化炭化水素が一切不要になったことと、これに替えてペンタン等の炭化水素が使用されるようになったことである。これにより、(特許文献5)には、炭化水素発泡剤と、周知の構造である(CHSiO[SiO(CH[SiO(CH)R]Si(CHを有し、このシロキサンの最短鎖長が60モノマー単位であり、異なるポリエーテル置換基R(その混合物の分子量は450〜1000g/molであり、エチレンオキシドの比率は70〜100mol%である)を有するポリエーテルシロキサンとを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造が記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの文献に記載されている気泡安定剤は様々な種類の硬質フォームの全範囲に対応するものではない。また、硬質フォームの使用性、特に、熱伝導率、フォームの表面欠陥、およびフォームの燃焼挙動をさらに最適化するべく、従来技術による気泡安定剤を改善することが多くの用途において望まれている。
【0010】
硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの重要な用途は、家屋やビルの建築において断熱に使用される、可撓性被覆層(例えばアルミ被覆紙(aluminum−coated paper))を有する断熱板である。それ以外にも、硬質フォームの芯材および堅固な金属被覆層(例えば鋼板)を備えた複合要素があり、これも同様に建築分野における建築要素として使用することができる。
【0011】
どちらの用途も、防火に関する法的要求事項が存在する建築材料の分野に含まれている。本明細書における建築材料および構成要素の燃焼挙動の記述には、DIN 4102またはDIN EN 13501−1等の一連の基準に基づく分類概念を用いる。
【0012】
ここに定められている燃焼試験によって、防火用語に具体的な基準が与えられるとともに、建築材料を様々な燃焼性クラスに分類することができる。したがって、DIN 4102に準拠し、それぞれの燃焼試験に合格した建築材料を、クラスA(不燃性)およびB(可燃性)(サブクラスB1(低引火性)、B2(中引火性)、またはB3(高引火性)がある)に割り当てることができる。
【0013】
可撓性または金属被覆層を有する断熱板は、このようにしてDIN 4102に記載の小型バーナー試験の試験基準を満たした場合は燃焼性クラスB2に適合するが、それと同時に、クラスB1に分類するためのブラントシャハト(Brandschacht)試験に合格する必要がある。
【0014】
通常、クラスB2を達成するためには、難燃剤を添加することによって硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを難燃性にすることが必要である。硬質フォームに特に有用な難燃剤は、液状の有機リン酸エステルおよびホスホン酸エステル、例えば、リン酸トリス(1−クロロ−2−プロピル)(TCPP)、リン酸トリエチル(TEP)、エタンホスホン酸ジエチル(DEEP)、またはプロパンホスホン酸ジメチル(DMPP)である。しかしながら、これらの難燃剤の含有量が特に高い場合は、フォームの物理的性質、特に熱伝導率および圧縮強さに悪影響が及ぼされる。
【0015】
したがって、本発明の目的は、要求される燃焼特性を非常に少量の難燃剤を用いて達成することにある。
【0016】
意外なことに、気泡安定剤も燃焼挙動に重大な影響を及ぼす。処方中に含まれる難燃剤の割合を一定に維持しながら安定剤を変えていくと、DIN 4102に準ずる小型バーナー試験における炎の高さが何センチも異なる場合がある。特定の燃焼性クラスを達成するためには、このことに対応して、難燃剤の量を使用される安定剤に応じて変化させることが必要である。(非特許文献1)には、DIN 4102に準ずる試験において良好な結果を達成することができるシリコーン気泡安定剤が開発されたことが記載されている。
【0017】
燃焼挙動に好ましい影響を与える代表的なシリコーン気泡安定剤の典型的な例が、エアー・プロダクツ(Air Products)のDC193またはゴールドシュミットGmbH(Goldschmidt GmbH)のテゴスタブ(Tegostab)(登録商標)B8450およびテゴスタブ(登録商標)B8486である。
【0018】
従来技術においては、難燃性硬質フォームの製造にこれらの製品が使用されている。
【0019】
しかしながら、燃焼挙動に関する最適化が施されたこれらの製品は、気泡安定剤としての作用に関しては古典的なシリコーン気泡安定剤に劣る、すなわち、硬質フォームの熱伝導率は古典的な製品を用いた場合よりも高い値を示し、また、例えば表面皮膜を有する金属板にフォームを適用する場合などの厳しい条件下においては、フォーム表面のボイドや高密度領域といったフォーム欠陥の発生が増加する。
【0020】
特定の燃焼性クラスに適合する硬質フォームを製造する際には、2種類の選択肢を選択することが可能である。活性の高い古典的な気泡安定剤を使用する(そうすると難燃剤の含有量をより高くすることが必要となり、このことは、商業上の欠点とは別に、所望のフォーム特性を幾分低下させる結果を招く)か、あるいは燃焼挙動が最適化された安定剤を選択する(しかし、活性はより低く、したがって、フォーム特性を最適化することはやはり可能でない)。
【0021】
【特許文献1】欧州特許第0570174B1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0533202A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0877045B1号明細書
【特許文献4】欧州特許第0293125B1号明細書
【特許文献5】EP1544235号明細書
【非特許文献1】ビュルクハルト・G(Burkhart,G.)ら、UTECH1996会議予稿集(Proceedings of the UTECH 1996 Conference)、論文番号58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、低い熱伝導率や良好な表面品質等の特に有利な使用性を提供する硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの開発に加えて、これらのベースとなる処方を開発することにあった。さらなる目的は、比較的少量の難燃剤を用いて所要の燃焼性クラス(例えばB2)を達成する耐炎性硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを開発することにあった。特に、硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームにおいて良好な使用性と防炎性とを両立させることに照準を合わせた。
【0023】
さらなる目的は、申し分のない防炎性を提供すると同時に低い熱伝導率や良好な表面品質等の有利な使用性を提供する、特に金属素材を組み合わせた硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム複合要素を開発することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
意外なことに、α,ω−置換(シロキサン鎖末端にポリエーテル置換基を有する)を重要な特徴とする特定の種類の構造のポリエーテルシロキサン気泡安定剤が、このような高活性および難燃性の向上という相容れない性能目標を両立させるだけでなく、選択された難燃剤と併用することによる相乗効果さえ示すことがここに見出された。
【0025】
したがって、本発明は、気泡安定剤、ウレタンおよび/またはイソシアヌレート触媒、水、場合によりさらなる発泡剤、場合により難燃剤、および場合によりさらなる添加剤(例えば、フィラー、乳化剤、純粋な有機系の安定剤および界面活性剤、減粘剤、染料、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤)の存在下にイソシアネートをポリオールと反応させることによって硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するプロセスであって、気泡安定剤として、1種またはそれ以上の一般式(I)、
R−Si(CH−O−[−Si(CH−O−]−[−Si(CH)R−O−]−Si(CH−R
(式中、置換基および添数は以下の意味を有する:
R、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ−(CH−O−(CH−CHR’−O)−R”であり、
n+m+2は、10〜45、好ましくは10〜40であり、
mは、0〜4、好ましくは0〜2であり、
xは、3〜10、好ましくは3であり、
yは、1〜19、好ましくは5〜19であり、
R’は、H、−CH、−CHCH、フェニルであり、好ましくは、R’基の少なくとも50%がHであり、特に好ましくは、R’基の少なくとも90%がHであり、
R”は、H、アルキル、アシル、好ましくは、H、CH、COCHであり、特に好ましくは、R”はHである)の化合物を使用する方法を提供する。
【0026】
本発明の目的のためには、本発明によるポリエーテルシロキサン気泡安定剤のシロキサン鎖の両端にポリエーテル置換基が存在すること(α,ω−置換)が重要である。それ以外にも、シロキサン鎖の内側のケイ素原子上に限られた数のポリエーテル置換基が存在してもよい。
【0027】
さらに本発明は、この化合物の、硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための処方における気泡安定剤としての使用を提供する。
【0028】
さらに本発明は、気泡安定剤、ウレタンおよび/またはイソシアヌレート触媒、水、リン含有難燃剤、場合によりさらなる発泡剤、および場合によりさらなる添加剤の存在下にイソシアネートをポリオールと反応させることによって硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための発泡処方であって、気泡安定剤として1種またはそれ以上の一般式(I)の化合物が使用される処方を提供する。
【0029】
さらに本発明は、この発泡処方の、耐炎性硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための使用を提供する。
【0030】
さらに本発明は、この発泡処方の、耐炎性硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム複合体を製造するための使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明による気泡安定剤を、α,ω−置換されていない類似のポリエーテルシロキサン(シロキサン鎖長が同じであり、ポリエーテル置換基数が同じであり、ポリエーテルの種類が同じであるが、ポリエーテル置換基がシロキサン鎖の内側のケイ素原子上にしか存在しない)と比較すると、本発明による安定剤は、これを用いて得られる硬質フォームの熱伝導率および表面品質に関する使用性が有利である。
【0032】
さらに、本発明によるポリエーテルシロキサンにより、α,ω−置換されていない類似のポリエーテルシロキサンと比較して、系の溶解性(すなわち、ポリオール配合物、触媒、ポリエーテルシロキサン、および発泡剤の溶解性)が向上する。
【0033】
α,ω−置換を用いることにより、燃焼挙動およびセルの安定化に関する特性を従来技術よりも上首尾に両立させる、すなわち、良好な燃焼挙動のみを提供したり高活性のみを提供するのではなく、この2つの特性を互いに両立させる耐炎性硬質フォーム用気泡安定剤を得ることが可能となる。
【0034】
本発明による安定剤は、2個以上のイソシアネート基を有する1種またはそれ以上の有機イソシアネート、イソシアネートと反応性を有する基を2個以上有する1種またはそれ以上のポリオール、イソシアネート−ポリオールおよび/またはイソシアネート−水および/またはイソシアネート三量化反応用触媒、以下にさらに構造を詳述するポリエーテルシロキサン気泡安定剤、水、場合により物理発泡剤、場合により難燃剤、ならびに場合によりさらなる添加剤を含む、硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための慣用の処方に使用することができる。
【0035】
本発明の目的に好適なイソシアネートはいずれも多官能性有機イソシアネート、例えば、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。「ポリメリックMDI」(「クルードMDI」)として周知の、MDIおよびより縮合度の高い平均官能基数が2〜4の類似体の混合物が特に有用である。
【0036】
本発明の目的に好適なポリオールはいずれも、イソシアネートと反応性を有する複数の基を有する有機物質に加えてその配合物である。好ましいポリオールはいずれも、硬質フォームの製造に慣用されるポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールである。ポリエーテルポリオールは、多官能性アルコールまたはアミンをアルキレンオキシドと反応させることによって得られる。ポリエステルポリオールは、多塩基性カルボン酸(通常は、フタル酸またはテレフタル酸)と多価アルコール(通常はグリコール)とのエステルをベースとするものである。
【0037】
処方のインデックスで表されるイソシアネートおよびポリオールの好適な比率は、80〜500、好ましくは100〜350の範囲にある。
【0038】
本発明の目的に好適な触媒は、樹脂化反応(イソシアネート−ポリオール)、泡化反応(イソシアネート−水)、またはイソシアネートの二量化もしくは三量化を触媒する物質である。典型的な例としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等のアミン、ジブチルスズジラウレート等のスズ化合物、および酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカリウム塩が挙げられる。
【0039】
好適な使用量は触媒の種類に依存し、通常は、カリウム塩の場合、0.05〜5pphp(ポリオール100重量部当たりの重量部)または0.1〜10pphpの範囲にある。
【0040】
本発明に従い使用される一般式(I)、
R−Si(CH−O−[−Si(CH−O−]−[−Si(CH)R−O−]−Si(CH−R
(式中、R、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ−(CH−O−(CH−CHR’−O)−R”である)のポリエーテルシロキサン気泡安定剤はコポリマーであり、調製の結果として多分散性を有する化合物となっているため、パラメータn、m、x、およびyは平均値のみを与えることができる。
【0041】
本発明によるポリエーテルシロキサンは、平均シロキサン鎖長すなわちn+m+2が10〜45、好ましくは10〜40(内側のポリエーテル置換基数であるmは0〜4、好ましくは0〜2である)であり、xが3〜10(好ましくは3)であるメチレン基の形態の「結合基」およびyの数が1〜19、好ましくは5〜19であるアルキレンオキシド単位を含むポリエーテル置換基を有する。
【0042】
これらのアルキレンオキシド単位は、エチレンオキシド、場合によりプロピレンオキシド、場合によりブチレンオキシド、および場合によりスチレンオキシド(順序は任意)であり、エチレンオキシドのモル分率は、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも90%である。ポリエーテルの末端基は、遊離のOH基、アルキル(好ましくはメチル)エーテル基、またはこのOH基を任意の所望のカルボン酸(好ましくは酢酸)でエステル化することにより形成されたエステルのいずれかである。遊離のOH官能基を有するポリエーテルが特に好ましい。
【0043】
分子内のポリエーテルは、混合ポリエーテルの構成要素がすべて上述の定義を満たしている限り、同一であっても異なっていてもよい。さらに、様々なポリエーテルシロキサンの混合物の場合も同様に、この混合物の平均値が上述の範囲にあるかまたは構成要素が上述の定義に対応するかのいずれかである限り包含される。
【0044】
使用可能なポリエーテルシロキサン気泡安定剤の量は、0.5〜5pphp、好ましくは1〜3pphpの範囲にある。
【0045】
本発明の目的に好適な含水量は、水以外に物理発泡剤が使用されるか否かに依存する。水のみで発泡させたフォームの場合、この値は、典型的には1〜20pphpの範囲にあるが、他の発泡剤をさらに使用した場合は、使用される水の量は、通常、0.1〜5pphpに低減される。
【0046】
本発明の目的に好適な物理発泡剤は、気体、例えば、液化CO、および揮発性液体、例えば4〜5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくは、シクロペンタン、イソペンタン、およびn−ペンタン、ハイドロフルオロカーボン、好ましくは、HFC 245fa、HFC 134a、およびHFC 365mfc、クロロフルオロカーボン、好ましくはHCFC 141b、ギ酸メチル、ジメトキシメタン等の含酸素化合物、または塩化炭化水素、好ましくは1,2−ジクロロエタンである。
【0047】
水および物理発泡剤(適切な場合)とは別に、イソシアネートと反応して気体を発生する他の化学発泡剤、例えばギ酸を使用することも可能である。
【0048】
本発明の目的に好適な難燃剤は、好ましくは、ハロゲンフリーの有機リン酸エステル(例えばリン酸トリエチル(TEP))、ハロゲン化されたリン酸エステル(例えば、リン酸トリス(1−クロロ−2−プロピル)(TCPP)およびリン酸トリス(2−クロロエチル)(TCEP))、有機ホスホン酸エステル(例えば、メタンホスホン酸ジメチル(DMMP)、プロパンホスホン酸ジメチル(DMPP))等の液状有機リン化合物またはポリリン酸アンモニウム(APP)、赤リン等の固体である。さらに、ハロゲン化化合物、例えばハロゲン化ポリオールに加えて、膨張性黒鉛、メラミン等の固体も同様に難燃剤として好適である。
【0049】
本発明による典型的な硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム処方により、フォーム密度は20〜50kg/mとなるであろう。また、その組成は、以下に示すものであろう。
【0050】
【表1】

【0051】
硬質フォームを製造するための本発明の処方の処理は、当業者に周知のあらゆる方法により、例えばハンドミキシング法または好ましくは高圧発泡機を用いて実施することができる。金属複合要素の場合は、回分式またはダブルベルト法による連続式のいずれかで実施することができる。
【0052】
本発明によるポリエーテルシロキサン気泡安定剤を調製するための通常の方法は、遷移金属触媒の存在下にオレフィン性不飽和ポリエーテルをSiH官能基を有するシロキサンでヒドロシリル化することを含み、これは周知の従来技術である。
【実施例】
【0053】
実施例:ポリエーテルシロキサンI(PES I)
精密ガラス撹拌棒(precision glass stirrer)、環流冷却器、および内部温度計を備えた500mlの4頚フラスコ内で、平均分子量が644g/molであり、プロピレンオキシド比率が8%であるアリルポリオキシアルキレノール243.4gを、水素原子含有量が2.7eq/kgであるα,ω−ジメチルハイドロジェンポリ(メチルハイドロジェン)ジメチルシロキサンコポリマー100gと一緒に撹拌しながら70℃に加熱する。白金触媒(カルステッド(Karstedt)触媒)5ppmを加える。気体の体積を測定することによって決定される転化率は2時間後に定量的となる。
【0054】
実施例:PES II
精密ガラス撹拌棒、環流冷却器、および内部温度計を備えた500mlの4頚フラスコ内で、平均分子量が644g/molであり、プロピレンオキシド比率が8%であるアリルポリオキシアルキレノール198.4gを、水素原子含有量が2.2eq/kgであるα,ω−ジメチルハイドロジェンポリ(メチルハイドロジェン)ジメチルシロキサンコポリマー100gと一緒に撹拌しながら70℃に加熱する。白金触媒(カルステッド触媒)5ppmを加える。気体の体積を測定することによって決定される転化率は2時間後に定量的となる。
【0055】
実施例:PES III
精密ガラス撹拌棒、環流冷却器、および内部温度計を備えた500mlの4頚フラスコ内で、平均分子量が663g/molであり、プロピレンオキシド比率が18%であるアリルポリオキシアルキレノール148.5gを、水素原子含有量が1.6eq/kgであるα,ω−ジメチルハイドロジェンポリ(メチルハイドロジェン)ジメチルシロキサンコポリマー100gと一緒に撹拌しながら70℃に加熱する。白金触媒(カルステッド触媒)5ppmを加える。気体の体積を測定することによって決定される転化率は2時間後に定量的となる。
【0056】
比較例(本発明によらない):PES IV
精密ガラス撹拌棒、環流冷却器、および内部温度計を備えた500mlの4頚フラスコ内で、平均分子量が663g/molであり、プロピレンオキシド比率が18%であるアリルポリオキシアルキレノール148.5gを、水素原子含有量が1.6eq/kgであるポリ(メチルハイドロジェン)ジメチルシロキサンコポリマー100gと一緒に撹拌しながら70℃に加熱する。白金触媒(カルステッド触媒)5ppmを加える。気体の体積を測定することによって決定される転化率は2時間後に定量的となる。
【0057】
本発明による気泡安定剤の硬質フォーム処方中における使用を可能にする、従来技術と比較した使用上の利点を、使用例を用いて以下に示す。
【0058】
使用例
ハンドミキシング法を用いて比較発泡実験を実施した。このために、ポリオール、難燃剤、触媒、水、従来の気泡安定剤または本発明による気泡安定剤、および発泡剤をビーカーに計量し、円板型撹拌機(disk stirrer)(直径6cm)を用いて1000rpmで30秒間混合した。再度計量を行った後、混合手順の際に蒸発した発泡剤の量を決定して補充した。ここでMDIを添加し、反応混合物を上述の撹拌機を用いて3000rpmで5秒間撹拌した後、ポリエチレンフィルムを内張りした50cm×25cm×5cmのアルミニウムモールドに素早く移し、温度を50℃に維持した。フォーム処方は、モールドの充填に必要な最小量を10%上回るように計量して使用した。
【0059】
発泡から1日後、フォームの分析を行った。表面および内部欠陥について主観的に1〜10段階(10はフォームに欠陥がないことを表し、1はフォームに非常に欠陥が多いことを表す)で評価した。切断面の細孔構造(1cm当たりの平均セル数)を、比較用フォームと比較することにより目視で評価した。ヘスト・ラムダ・コントロール(Hesto λ Control)装置を用いて、2.5cm厚の円板について、試料下面および上面の温度を10℃および36℃として熱伝導率を測定した。マイクロメリティクス(Micromeritics)からのアキュピック(AccuPyc)1330装置を用いて独泡の体積百分率を測定した。DIN 53421に準じて、1辺の長さが5cmの立方体形状のフォーム試験片について10%圧縮時の圧縮強さを測定した(報告した数値は、この測定範囲で得られた圧縮強さの最大値である)。使用した多数の試験片は、いずれの場合もフォームの発泡方向に装填した。フォームの燃焼挙動は、DIN 4102に基づく適切な小型バーナー試験で調査した。報告した数値はいずれも、複数の試験片について接炎後15秒以内に観察された炎の高さの測定値の最大値である。
【0060】
使用した気泡安定剤をすべて表2aおよび2bに示す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
1.金属複合要素用の燃焼性クラスB2の硬質PURフォーム系
この用途に適合する3種の異なる処方を使用した(表3参照)。
【0064】
【表4】

【0065】
結果を表4に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
処方Aのデータは、非常に活性の高い従来のテゴスタブB8512やテゴスタブB8522等の安定剤によって、熱伝導率という観点ではやや有利になるものの、燃焼性試験における挙動が非常に劣ることを示している。これらの安定剤を使用すると燃焼性クラスB2への分類が達成されないか、あるいは難燃剤の含有量を極端に増加させて処方を修正することが必要であろう。処方Aにおいて、防炎性に関する最適化が施された本発明によらない安定剤であるテゴスタブB8450、テゴスタブB8486、およびDC193ならびに本発明による安定剤であるPESIおよびPESIIを使用すると、いずれの場合も燃焼性クラスB2への分類が達成され、本発明による安定剤によって低い熱伝導率および燃焼性試験における良好な結果が最もバランスよく両立される。本発明の安定剤による利点は、処方BおよびCにおいて一層明瞭になる。本発明による安定剤を用いて製造されたフォームは、防炎性に関し最適化された本発明によらない製品を使用した場合と比較して、DIN 4102に準ずる燃焼性試験において同等またはそれ以上に良好な結果を示すとともに、はるかに優れた熱伝導率を示す。
【0068】
金属複合要素の製造における大きな課題は、表面皮膜を有する金属板の発泡において金属板とフォーム芯材との間の下側の界面に形成されるボイド形態のフォーム欠陥である。これらの欠陥は、複合要素の表面に現れる可能性があり、したがって、クレームの原因となる。
【0069】
一般に認められている見解によれば、表面皮膜用添加剤、特にレベリング剤および脱気剤がこれらの表面欠陥の原因となる。これらの表面皮膜添加剤は、発泡の最中に表面皮膜の表面から新たに適用されたPUR処方中に拡散し、ここで消泡剤として作用するため、表面皮膜とPURフォームとの界面でフォームの局所的な崩壊が起こり得る。
【0070】
消泡性の混入物に対するフォーム処方の反応性は、その組成、特に気泡安定剤に依存する。この反応性は、規定量の消泡剤を処方中に混ぜ入れたものを用いて製造されたフォームの構造を評価することによって最も簡単に比較することができる。
【0071】
図1に、処方Cに表面皮膜用レベリング剤を1部添加し、この混合物を本発明によらない安定剤DC193および本発明による安定剤PESIIを用いて発泡させた実験を示す。本発明による構造の安定化に対する高い潜在性が欠陥のないフォームによって示される一方で、DC193を使用した場合の重大なフォーム欠陥は、消泡剤に対する反応性が高いことを示唆している。
【0072】
2.連続的に製造される断熱板用硬質PIRフォーム系
この用途に適合する2種の異なる処方を使用し(表5参照)、本発明によらない4種の気泡安定剤および本発明による1種の気泡安定剤を用いて発泡させた。
【0073】
【表6】

【0074】
結果を表6に示す。
【0075】
【表7】

【0076】
このデータは、本発明による気泡安定剤PESIIによって、低い熱伝導率と燃焼性試験における良好な結果とが最もバランス良く両立されることを示している。
【0077】
3.冷却設備の断熱用硬質PURフォーム系
この用途に適合する処方を使用し(表7参照)、本発明によらない3種の気泡安定剤および本発明による1種の気泡安定剤を用いて発泡させた。前述の手順との違いとして、この場合は、FPL−HP 14ミキシングヘッドを備えたキャノン(Cannon)からの高圧発泡機を使用した(混合室圧138bar、処理量20kg/min)。この発泡機を用いて45℃に温度維持された200cm×20cm×5cmのアルミニウムモールドに処方を導入した。フォーム処方は、モールドの充填に必要な最小量を10%上回るように計量して使用した。
【0078】
【表8】

【0079】
表8に示す結果は、本発明による気泡安定剤が耐炎性硬質フォームに採用できるだけでなく、冷却設備の断熱材として使用される難燃剤を含まない系においても利点を発揮できることを示している。
【0080】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】表面皮膜用添加剤を1部混合した処方C(左は安定剤DC193、右はPES IIを用いたもの)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡安定剤、ウレタンおよび/またはイソシアヌレート触媒、水、場合によりさらなる発泡剤、場合により難燃剤、および場合によりさらなる添加剤の存在下にイソシアネートをポリオールと反応させることによる硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法であって、気泡安定剤として、1種またはそれ以上の一般式(I)、
R−Si(CH−O−[−Si(CH−O−]−[−Si(CH)R−O−]−Si(CH−R
(式中、置換基および添数は以下の意味を有する:
R、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ−(CH−O−(CH−CHR’−O)−R”であり、
R’は、H、−CH、−CHCH、フェニルであり、
R”は、H、アルキル、アシルであり、
n+m+2は、10〜45であり、
mは、0〜4であり、
xは、3〜10であり、
yは、1〜19である)の化合物が使用される、方法。
【請求項2】
前記R’基の少なくとも50%がHである、請求項1に記載の硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項3】
R”がHである、請求項1または2に記載の硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項4】
mが0〜2である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項5】
n+m+2が10〜40である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項6】
xが3であり、かつyが5〜19である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項7】
硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための処方中における気泡安定剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
気泡安定剤、ウレタンおよび/またはイソシアヌレート触媒、水、リン含有難燃剤、場合によりさらなる発泡剤、および場合によりさらなる添加剤の存在下にイソシアネートをポリオールと反応させることによって硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための発泡処方であって、気泡安定剤として、1種またはそれ以上の一般式(I)の化合物が使用される、処方。
【請求項9】
耐炎性硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造するための、請求項8に記載の発泡処方の使用。
【請求項10】
耐炎性硬質ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォーム複合体を製造するための、請求項8に記載の発泡処方の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2008−13763(P2008−13763A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166620(P2007−166620)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(500442021)ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】