説明

難燃化不織布およびそれからなるフィルター

【課題】フィルター材として好適に用いることのできる非ハロゲン化、非りん化の難燃化不織布およびそれからなるフィルターの提供。
【解決手段】不織布に20〜80重量%の硫酸アンモニウムと80〜20重量%のスルファミン酸グアニジンとの混合物を含む難燃剤を付着させてなる難燃化不織布であって、
難燃剤の付着量は、不織布100重量部に対して、30〜150重量部であることを特徴とする難燃化不織布、或いは、難燃剤は、後加工処理により、不織布に実質的に被覆又は含浸固着されることを特徴とする難燃化不織布、又は、難燃剤には、さらに、難燃助剤を含むことを特徴とする難燃化不織布などを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃化不織布およびそれからなるフィルターに関し、特に非ハロゲン、非りん系の難燃剤を用いた難燃化不織布およびそれからなるフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種不織布は、安全性の観点から難燃性の付与の要望が高く、特になかでもフィルターについて難燃性の要望が高い。更に、難燃剤については、ハロゲン系難燃剤は、燃焼時に発生する臭化水素、塩化水素などの酸性ガスだけでなく、最近はダイオキシンの発生についても問題視されており、非ハロゲン系難燃剤に関して種々の検討が実施されている。
また、非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、無機難燃剤等が用いられているが、使用量が多いリン系難燃剤(リン酸エステル、ハロゲン含有リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩及び赤リン)は、河川の富栄養化の原因となる等の公害防止及び環境保全に対する不適性が指摘されている。
【0003】
一方、フィルター材を構成する不織布の構成繊維としても非ハロゲン系材料の使用、及び不織布を構成する繊維の相互間を結合するバインダー樹脂の非ハロゲン化樹脂の使用が検討されている。例えば、実質的にハロゲン元素を含有しない重合体で形成された構成繊維群相互間を、実質的にハロゲン元素を含有しない結合剤を含むバインダー樹脂で結合した不織布よりなり、該バインダー樹脂中には、粉末状リン系難燃剤が含有されていることを特徴とする非ハロゲン化難燃性フィルター材(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、リン系難燃剤の問題は解決されておらず、また、セルロース系繊維とポリビニルアルコール系繊維のハロゲンを含まない繊維からなる繊維ウエブに含リン化合物、含リン窒素系化合物を加えた難燃加工剤と非ハロゲン熱可塑性樹脂よりなるバインダーで結合し構成してなることを特徴とする非ハロゲン難燃性不織布(例えば、特許文献2参照。)が提案されているが、リン系難燃剤の使用を除くまでには至っていない。
【0004】
また、最近の非ハロゲン系の難燃剤を用いた難燃性不織布としては、例えば、生分解性及び難燃性に優れる不織布、及びこの不織布からなるフィルターを提供するために、非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを用いて生分解性の繊維または不織布を難燃処理してなる生分解性難燃性不織布であって、不織布構成繊維100重量部に対して非ハロゲンリン酸エステル化合物を15〜50重量部使用して難燃処理されたものである生分解性難燃性不織布(特許文献3参照。)や、風合い、触感、視感などの意匠性を損なうことなく、長時間の炎にも耐え得る難燃性を兼ね備えた難燃性不織布を提供するために、珪酸含有セルロース系繊維およびポリエステル系繊維を混合した難燃性不織布(特許文献4参照。)、或いはポリエステルからなる長繊維を少なくとも一部の構成繊維とする不織布であって、前記ポリエステルは特定の式で表される有機リン化合物を共重合したポリエステルAを含有し、前記不織布は前記有機リン化合物をリン原子の質量で少なくとも1000ppm含有することを特徴とする難燃性長繊維不織布(特許文献5参照。)などが提案されている。
しかし、上記のように未だリン系難燃剤を用いたものが多く、非ハロゲン化、非りん化の難燃化不織布が要望されている。
【0005】
また、非環境適応型の難燃剤の中でも、熱可塑性樹脂の難燃化に適するものとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、ほう酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の無機難燃剤が挙げられているが、これらの無機難燃剤は、可塑化機能を有しないので、無機充填材混入の熱可塑性樹脂について生ずるのと同様の問題である、無機難燃剤の充填量を多くすると、成形加工性の低下、成形品の機械的物性等の問題があり、フィルター等に用いる不織布等の成形には問題があった。
【特許文献1】特開2000−126523号公報
【特許文献2】特開2000−328418号公報
【特許文献3】特開2006−063473号公報
【特許文献4】特開2005−330611号公報
【特許文献5】特開2003−041473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、フィルター材として好適に用いることのできる非ハロゲン化、非りん化の難燃化不織布およびそれからなるフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、不織布に特定の2種類の特定混合割合の難燃剤を、特定量付着処理させると、フィルター用途に好適に用いることのできる難燃化不織布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、不織布に20〜80重量%の硫酸アンモニウムと80〜20重量%のスルファミン酸グアニジンとの混合物を含む難燃剤を付着させてなる難燃化不織布であって、難燃剤の付着量は、不織布100重量部に対して、30〜150重量部であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0009】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、難燃剤は、後加工処理により、不織布に実質的に被覆又は含浸固着されることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、難燃剤には、さらに、難燃助剤を含むことを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、難燃助剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メラミンシアヌレート又はケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第3又は4の発明において、難燃助剤の含有量は、難燃剤全量に対して、10〜50重量%であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係る難燃化不織布から構成されることを特徴とするフィルターが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、空気清浄用フィルターまたは内燃機関用エアーフィルターであることを特徴とするフィルターが提供される
【発明の効果】
【0012】
本発明の難燃化不織布は、上述のような構成、すなわち、不織布に特定の難燃剤を特定量付着させてなる難燃化不織布であるので、非ハロゲン化、非りん化であって、難燃性に優れた難燃化不織布であり、その結果、フィルター材として好適に用いることのできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の難燃化不織布は、不織布に特定の難燃剤を付着させた、難燃性に優れた難燃化不織布である。以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の難燃化不織布で用いる不織布に使用される繊維は、不織布に用いられるものであれば、特に限定されないが、ポリエステル系繊維を主成分とすると、好適である。例えば、ポリエステル繊維、ポリエステル系低融点バインダー繊維などがあげられる。
【0015】
ポリエステル繊維の具体的な例としては、代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル、あるいはブロック共重合ポリエステル、およびそれらのいずれかを基本骨格の一分とする共重合ポリマーなどが挙げられる。
また、上記のポリエステル系樹脂は、一般に異物の発生が少ないためフィルター関連用途への市場に特に好適である。
【0016】
また、本発明の難燃化不織布において、実施の態様として、例えば、ポリエステル系繊維を主成分とする繊維に、従成分として、不織布に用いられる他の繊維を用いることができる。
そのような他の繊維としては、例えば、親水性樹脂繊維が挙げられ、親水性樹脂繊維としては、レーヨン繊維、セルロース繊維、架橋ポリビニルアルコール繊維、パルプや綿等の天然繊維等などが用いられる。
さらに、親水性樹脂繊維以外の繊維としては、フィルター等の用途に用いられる樹脂繊維であれば、特に制限なく用いることができるが、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維などを挙げることができる。
【0017】
不織布は、スパンレース法、ニードルパンチ法等により製造でき、公知のパラレルカード機、クロスレイドカード機、ランダムカード機などで形成することができ、特に、構造や製造方法として、熱融着によって不織布とするサーマルボンド法不織布、あるいは接着剤を使用するケミカルボンド法不織布あるいは水流によって繊維を交絡させたスパンレース法不織布やスパンボンド不織布、SMS、SMMS不織布、メルトブロー不織布、また、各種短繊維からなるエアレイド法不織布あるいは湿式法不織布を適用することができる。
また、不織布には、公知の樹脂加工剤を塗布したり、公知のアンカー剤を塗布するなどのプライマー処理をすることができる。
【0018】
本発明の難燃化不織布では、非ハロゲン、非リン系の難燃剤として、20〜80重量%の硫酸アンモニウムと80〜20重量%のスルファミン酸グアニジンとの混合物を含むことに特徴がある。
【0019】
従来、可燃性重合体の難燃剤として、硫酸アンモニウムが有効であることは、知られている。しかし、硫酸アンモニウムは、自己凝集性(ケーキングもしくは固結性)が強く、微粉末化しにくく、たとえ微粉末化できても保存中に凝集を起こすという欠点がある。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の合成樹脂に混練もしくは添加すると、混合時の剪断作用によって凝集を起こすことが知られている。これらのことが理由となって、難燃剤として有効であるにもかかわらず、硫酸アンモニウムの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の合成樹脂への使用は大幅に制限されてきていた。
【0020】
本発明においては、20〜80重量%の硫酸アンモニウムと80〜20重量%のスルファミン酸グアニジンとの混合物を、難燃剤として用いることにより、優れた難燃性を不織布に付与できる。一方の成分が80重量%を超えると、すなわち、他方の成分が20重量%未満になると、難燃効果が低下し、難燃性が劣るようになる。
尚、本発明においては、スルファミン酸グアニジンと同等の性能、効果を有するグアニジン塩を、スルファミン酸グアニジンの代替物として、用いることもできる。そのようなグアニジン塩としては、硫酸グアニジン、ホウ酸グアニジン等が挙げられる。
【0021】
また、本発明の難燃化不織布では、不織布に付着させる上記難燃剤の付着量は、不織布100重量部に対して、30〜150重量部、好ましくは50〜150重量部であることを特徴とする。難燃剤の付着量が30重量部未満では、難燃効果が十分でなく、一方、150重量部を超えると、難燃効果が飽和すると共に難燃剤が繊維表面で微粉末化して脱落したりして、経済的でない。
【0022】
また、本発明においては、上記難燃剤には、主難燃剤の使用量を抑え、難燃性を向上させるために、さらに、難燃助剤を含むことができる。
上記難燃助剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メラミンシアヌレート又はケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種類の化合物が挙げられる。
【0023】
上記難燃助剤の含有量は、難燃剤全量に対して、10〜50重量%である。難燃助剤の含有量が10重量%未満では、難燃助剤の効果が十分でなく、一方、50重量%を超えると、難燃効果は飽和し、経済的でない。
【0024】
本発明の難燃化不織布において、不織布への難燃剤の付着方法としては、後加工処理により、すなわち、不織布表面にハケ、ロールコーター、スプレー等により難燃剤を塗布するか又は含浸処理する方法が挙げられる。これらの中では、不織布を難燃剤液に含浸処理する方法が好ましい。含浸処理する方法としては、難燃剤の液中に不織布基材を含浸させて、これをマングルロール機に通すことにより、付着量を調整し、乾燥機で乾燥させ、固着させるのが一般的である。具体的には、濃度5〜30%の難燃剤水溶液に不織布を含浸させ、マングルで付着量を調整し150℃で乾燥させ、固着させる方法が好ましい。
【0025】
なお、本発明で用いる難燃剤は、基本的には水溶性であるため、製品の耐吸湿性、耐水性に影響を及ぼす可能性もあり、このため撥水剤、あるいは、アクリル、SBRなどの繊維バインダーを少量加え、皮膜を形成することもできる。
上記撥水剤としては、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤等を挙げることができ、特にフッ素系撥水剤は、添加量が少なくて効果が大きく、難燃性を阻害しないで用いることができる。撥水剤を用いる場合は、その添加量は、難燃剤の有効成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、より好ましくは2〜20重量部である。撥水剤の添加量が1重量部未満では、不織布基材に撥水性が出ず、水に濡れた場合、難燃剤が溶け出し効果が低下し、30重量部を超えると、撥水剤が難燃効果を阻害する。
【0026】
本発明の難燃化不織布は、他の不織布と積層した複合不織布として、フィルター等に用いても良い。
本発明の難燃化不織布に積層する不織布としては、特に制限されないが、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブロー複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド複合不織布、メルトブロー不織布などと貼り合わせたることができる。
【0027】
貼り合わせに用いる不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル等が好ましい。それらの中では、ポリプロピレン系樹脂の不織布を用いるのが好ましい。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、或いは過半重合割合のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体である。また、ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、10〜2000g/10分のものが好ましい。これらプロピレンは、得られた不織布が上記物性を有する範囲であれば、単独でも、或いは複数種類の重合体の混合物としても使用することもできるし、ポリプロピレンを主成分としてなる樹脂でもよい。
なお、本発明で用いる複合不織布においては、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布を構成する樹脂材料は、同一であることが好ましく、特にポリプロピレン製であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の難燃化不織布に積層する不織布としては、微粒子を捕集する機能を向上させるために、エレクトレット化処理したものを用いてもよい。エレクトレット化不織布を用いるのは、静電気力によって微細な粉塵を効率良く捕集することができるためであり、このエレクトレット化は、不織布をアースされた電極上を走行させ、この上から針電極又はワイヤー電極に高電圧を印加することによってコロナ放電を行い達成される。このエレクトレット化の程度は、不織布の表面電荷密度を2×10−10クーロン/cm以上の電荷密度とするのが好ましい。この表面電荷密度が2×10−10クーロン/cm未満であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が劣るようになるため好ましくない。表面電荷密度が5×10−10クーロン/cm以上であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が著しく高まるため好ましく用いられる。
【0029】
本発明の難燃化不織布は、前述のように非ハロゲン、非りんの不織布であり、さらにホルムアルデヒドを発生する材料を用いていないため、環境保全に優れた空気清浄用フィルター、自動車キャビンフィルター、内燃機関用エアーフィルター、掃除機用フィルター等の材料として用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた試験方法は以下の通りである。
【0031】
(1)不織布の目付重量:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりに換算して求めた。
(2)難燃性試験:JIS L1091(繊維製品の燃焼試験方法 a−1法(45° ミクロバーナ法)に準拠して行なった。すなわち、約350mm×250mmの不織布試験片を燃焼試験箱に取り付け、1分間過熱し、残炎時間(秒)及び残じん時間(秒)を測定する。次に試験片を支持枠から外し、プラニメータなどを用いて燃焼面積(cm)を整数単位まで測定する。また、1分間の間に加熱中に着炎するものについては、別の試験片について、着炎後3秒で、炎をのぞく試験を行い、同様の試験を行なう。ただし、この場合は、加熱時間を付記する。
ここで、「残炎時間」は、着火源を取り去った後の材料が炎を発生し続ける時間の長さ(秒)を表し、炎の持続時間ともいう。「残じん時間」は、着火源を取り去った後、又は炎が消えた後の材料の赤熱が持続する時間の長さ(秒)を表し、残じんの持続時間ともいう。「残炎時間+残じん時間」は加熱終了時から試験片の赤熱が停止するまでの時間をいう。「燃焼面積、長さ」は、燃焼又は熱分解によって破壊された材料の損傷範囲又は長さをいう。それぞれの項目において、1〜3の評価区分があり、難燃性の判定では、実質上有効なのは総合評価で2以上、好ましくは3以上であり、1は難燃効果が安定して認められないものと判断される。
【0032】
[実施例1〜3]
3.3dt×51mmのポリエステル繊維A 50重量%と、6.6dt×51mmのポリエステル繊維B 30重量%と、5.6dt×51mmのレーヨン繊維20重量%から、ケミカルボンド法で目付45g/mの不織布を製造した。得られた不織布100重量部に、硫酸アンモニウム(東亞合成株式会社製を使用した。以下の実施例/比較例でも同社製を使用した。)50重量%とスルファミン酸グアニジン(三和ケミカル社製、以下の実施例/比較例でも同社製を使用)50重量%とを混合した難燃剤を、表1に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量100重量部に対して、実施例1では56重量部、実施例2では78重量部、実施例3では100重量部を付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0033】
[実施例4〜6]
3.3dt×51mmのポリエステル繊維Aから、サーマルボンド法で目付50g/mの不織布を製造した。得られた不織布100重量部に、硫酸アンモニウム50重量%とスルファミン酸グアニジン50重量%とを混合した難燃剤を、表1に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して、実施例4では50重量部、実施例5では70重量部、実施例6では90重量部を付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1〜4]
比較例1では、実施例1で得られた不織布100重量部に、実施例1の難燃剤を、表1に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量100重量部に対して、22重量部付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
比較例2、3では、6.6dt×51mmのポリエステル繊維B 30重量%と、1.7dt×51mmのビニロン繊維A 40重量%と、7.8dt×64mmのビニロン繊維B 30重量%から、ケミカルボンド法で目付79g/mの不織布(F/B=60/40、バインダーとしてアクリル樹脂使用)を製造した。得られたポリエステル繊維の割合が少ない不織布100重量部に、硫酸アンモニウム50重量%とスルファミン酸グアニジン50重量%とを混合した難燃剤を、表1に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して、比較例2では13重量部、比較例3では26重量部を付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
比較例4では、実施例4で得られた不織布に、実施例1(実施例4)の難燃剤を、表1に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して、20重量部付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた比較例1〜4の難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例6、7及び比較例5、6]
実施例1で得られた不織布100重量部に、実施例6では、硫酸アンモニウム80重量%とスルファミン酸グアニジン20重量%とを混合した難燃剤を、実施例7では、硫酸アンモニウム20重量%とスルファミン酸グアニジン80重量%とを混合した難燃剤を、比較例5では、硫酸アンモニウム90重量%とスルファミン酸グアニジン10重量%とを混合した難燃剤を、比較例6では、硫酸アンモニウム10重量%とスルファミン酸グアニジン90重量%とを混合した難燃剤を、表2に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量100重量部に対して、いずれも78重量部付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0037】
[実施例8、9及び比較例7、8]
実施例4で得られた不織布100重量部に、実施例8では、硫酸アンモニウム80重量%とスルファミン酸グアニジン20重量%とを混合した難燃剤を、実施例9では、硫酸アンモニウム20重量%とスルファミン酸グアニジン80重量%とを混合した難燃剤を、比較例7では、硫酸アンモニウム90重量%とスルファミン酸グアニジン10重量%とを混合した難燃剤を、比較例8では、硫酸アンモニウム10重量%とスルファミン酸グアニジン90重量%とを混合した難燃剤を、表2に示す量を塗布し、マングル加工機を使用して、難燃剤を不織布の構成繊維重量100重量部に対して、いずれも78重量部付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
[実施例10〜23]
実施例1で得られた不織布100重量部に、又は実施例4で得られた不織布100重量部に、難燃剤として、硫酸アンモニウムとスルファミン酸グアニジン、難燃助剤として、水酸化マグネシウム(神島化学工業社製)、水酸化アルミニウム(巴工業社製)、メラミンシアヌレート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、ケイ酸ナトリウム(ダイソーケミカル社製)を、表3に示す割合で塗布し、マングル加工機を使用して、難燃助剤を含む難燃剤を不織布の構成繊維重量100重量部に対して、いずれも78重量部付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表1〜3から明らかなように、例えば、ポリエステル系繊維を主成分とする繊維からなる不織布に、特定の2種類の特定混合割合の難燃剤を、或いは、さらに、特定の難燃助剤を特定量含有させた難燃剤を、特定量付着処理させることにより、優れた難燃効果が得られた(実施例1〜23)。一方、不織布への難燃剤の付着量が本発明で規定した量より少ない場合は、難燃効果が発揮されず(比較例1〜4)、また、例えば、ポリエステル系繊維を主成分とする繊維からなる不織布に、特定の2種類の難燃剤の混合割合をどちらか一方に偏ると、難燃効果が発揮されなかった(比較例5〜8)。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の難燃化不織布は、非ハロゲン化、非りん化の特定の難燃剤混合物と、好ましくはポリエステル系繊維を主成分とする繊維からなり、難燃性に優れた難燃化不織布であって、フィルター材として好適に用いることができ、特に環境保全に優れた空気清浄用フィルター、自動車キャビンフィルター、内燃機関用エアーフィルター、掃除機用フィルター等の材料として用いることができる。また、本発明の難燃化不織布は、難燃性に優れているので、フィルター材としての用途以外に、自動車の天井材、自動車床材、カーペット、各種シート類などにも、用いることができ、さらに、例えば、塩化ビニル樹脂代替用途にも、用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布に20〜80重量%の硫酸アンモニウムと80〜20重量%のスルファミン酸グアニジンとの混合物を含む難燃剤を付着させてなる難燃化不織布であって、
難燃剤の付着量は、不織布100重量部に対して、30〜150重量部であることを特徴とする難燃化不織布。
【請求項2】
難燃剤は、後加工処理により、不織布に実質的に被覆又は含浸固着されることを特徴とする請求項1に記載の難燃化不織布。
【請求項3】
難燃剤には、さらに、難燃助剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃化不織布。
【請求項4】
難燃助剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メラミンシアヌレート又はケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の難燃化不織布。
【請求項5】
難燃助剤の含有量は、難燃剤全量に対して、10〜50重量%であることを特徴とする請求項3又は4に記載の難燃化不織布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の難燃化不織布から構成されることを特徴とするフィルター。
【請求項7】
空気清浄用フィルターまたは内燃機関用エアーフィルターであることを特徴とする請求項6に記載のフィルター。

【公開番号】特開2008−13858(P2008−13858A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183222(P2006−183222)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】