説明

難燃性ポリマー発泡体

少なくとも1つのハロゲン化ポリマー、例えば、40〜80重量%の範囲内の臭素含有量を有する臭素化ポリスチレンもしくは臭素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、またはテトラブロモビスフェノールA化合物(TBBPA)を難燃剤として含む難燃性ポリマー発泡体、これらの製造方法、およびまた、難燃性発泡性スチレンポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤として少なくとも1つのハロゲン化ポリマーを含む難燃性ポリマー発泡体、これらの製造方法、およびまた難燃性の発泡性スチレンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー発泡体に対して難燃剤を提供することは、多種多様の用途にとって重要であり、その例は、建造物を防護するための、発泡性ポリスチレン(EPS)または押出ポリスチレン発泡体シート(XPS)から製造された成形ポリスチレン発泡体である。ここでホモポリスチレンおよびコポリスチレンに対して従来より使用されている化合物は、主に、ハロゲンを含む有機化合物、特に、臭素化された有機化合物である。しかしながら、これらの低分子量の臭素化物質の多く、特にヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は、環境および健康に対してそれらが引き起こし得る損害に関する議論の主題である。
【0003】
ハロゲン含有難燃剤と同じ難燃性作用を達成するために使用する必要があるハロゲン不含難燃剤の量は、一般に、著しく多い。ゆえに、ポリスチレンなどの熱可塑性ポリマーと共に使用することができるハロゲン含有難燃剤は、発泡プロセスを妨害するか、またはポリマー発泡体の力学的特性および熱的特性に影響するので、それらをポリマー発泡体と共に使用することができない場合が多い。大量の難燃剤は、発泡性ポリスチレンが懸濁重合によって生成されるときの懸濁液の安定性をさらに低下させることがある。
【0004】
国際公開第2007/058736号には、スチレンポリマーおよび押出ポリスチレン発泡体シート(XPS)における、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)に対する代替難燃剤として、耐熱性の臭素化ブタジエン−スチレン共重合体が記載されている。
【0005】
特開2007−238926号公報には、安定した難燃性をもたらす臭素系難燃剤を用いて提供される高い耐熱性を備えた熱可塑性発泡体が記載されており、ここで、熱重量分析におけるこれらの重量減少は、270℃を超える温度において5%である。
【0006】
燃焼挙動のばらつきおよび燃焼試験のばらつきを理由に、熱可塑性ポリマーと共に使用される難燃剤がポリマー発泡体においてどのように挙動するかを予測することは不可能であることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/058736号
【特許文献2】特開2007−238926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、発泡プロセスまたは力学的特性に対していかなる実質的な影響も有さず、環境または健康にとって有害でなく、かつ、特に少量で使用されるときにポリマー発泡体に適切な難燃性を与えることができる、ポリマー発泡体用、特に、発泡性ポリスチレン(EPS)用または押出ポリスチレン発泡体シート(XPS)用の難燃剤を提供することが本発明の目的である。その難燃剤は、押出プロセスでの組み込みのために高い熱安定性を有するべきであり、懸濁重合プロセスにおいて制御剤および開始剤に対してそれぞれほとんど影響を示さないべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その結果、冒頭において述べられた難燃性ポリマー発泡体が見つけ出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態は、下位クレームに与えられている。
【0011】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される、難燃剤として使用されるハロゲン化ポリマーの平均分子量は、好ましくは、5000〜300,000、特に、30,000〜150,000の範囲内である。
【0012】
熱重量分析(TGA)におけるハロゲン化ポリマーの重量減少は、250℃以上、好ましくは、270〜370℃の範囲内の温度において5重量%である。
【0013】
好ましいハロゲン化ポリマーの臭素含有量は、0〜80重量パーセント、好ましくは、10〜75重量パーセントの範囲内であり、その塩素含有量は、ハロゲン化ポリマーに基づいて0〜50重量パーセント、好ましくは、1〜25重量パーセントの範囲内である。
【0014】
難燃剤として好ましいハロゲン化ポリマーは、40〜80重量%の範囲内の臭素含有量を有する臭素化ポリスチレンまたは臭素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体である。
【0015】
難燃剤として好ましい他のハロゲン化ポリマーは、テトラブロモビスフェノールA単位を有するポリマー(TBBPA)、例えば、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル化合物(CAS番号68928−70−1または135229−48−0)である。
【0016】
本発明の難燃性ポリマー発泡体は、通常、ポリマー発泡体に基づいて、0.2〜25重量%の範囲内、好ましくは、1〜15重量%の範囲内の量のハロゲン化ポリマーを含む。ポリマー発泡体に基づく5〜10重量%の量は、特に、発泡性ポリスチレンから製造された発泡体に対して、適切な難燃性を保証する。
【0017】
上記ハロゲン化ポリマーの有効性は、好適な難燃相乗剤を加えることによってなおもさらに改善することができ、その例は、熱フリーラジカル発生剤である、過酸化ジクミル、ジ−tert−ブチルペルオキシドまたはジクミルである。亜鉛化合物または三酸化アンチモンは、好適な難燃相乗剤である。この場合、難燃相乗剤の使用量は、通常、ハロゲン化ポリマーに加えて0.05〜5重量部である。
【0018】
他の難燃剤も使用することができ、その例は、メラミン、シアヌル酸メラミン、金属酸化物、金属水酸化物、ホスフェート、ホスフィネートまたは発泡性グラファイトである。好適な追加のハロゲン不含難燃剤は、Exolit OP 930、Exolit OP 1312、DOPO、HCA−HQ、M−Ester Cyagard RF−1241、Cy−agard RF−1243、Fyrol PMP、AIPi、Melapur 200、Melapur MC、APPとして商業的に入手可能である。
【0019】
上記難燃性ポリマー発泡体の密度は、好ましくは、5〜200kg/mの範囲内、特に好ましくは、10〜50kg/mの範囲内であり、これらの発泡体における独立気泡の割合は、好ましくは、80%超、特に好ましくは、95〜100%である。
【0020】
上記難燃性ポリマー発泡体のポリマーマトリックスが、熱可塑性ポリマーまたはポリマー混合物、特に、スチレンポリマーからなることが好ましい。
【0021】
本発明の難燃性の発泡性スチレンポリマー(EPS)および押出スチレンポリマー発泡体(XPS)は、発泡剤およびハロゲン化ポリマーをポリマー溶融物に組み込むために混合し、続いて、加圧下で押出してペレット化することによって加工されて発泡性ペレット(EPS)を得ることができるか、または適切な形状のダイを使用して押出および減圧することによって加工されて発泡体シート(XPS)もしくは発泡体ストランドを得ることができる。
【0022】
発泡性スチレンポリマー(EPS)は、発泡剤を含むスチレンポリマーである。EPSビーズのサイズは、好ましくは、0.2〜2mmの範囲内である。成形スチレンポリマー発泡体は、適切な発泡性スチレンポリマー(EPS)の予備発泡および焼結によって得ることができる。その成形スチレンポリマー発泡体は、好ましくは、2〜15セル/mmを有する。
【0023】
上記発泡性スチレンポリマーの平均モル質量M(ポリスチレン標準に対する屈折率検出(RI)を備えたゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される)は、好ましくは、120,000〜400,000g/molの範囲内、特に好ましくは、180,000〜300,000g/molの範囲内である。押出プロセスにおける発泡性ポリスチレンのモル質量は、ずれおよび/または熱によって引き起こされるモル質量の分解を理由に、通常、使用されるポリスチレンのモル質量よりも約10,000g/mol小さい。
【0024】
使用されるスチレンポリマーは、好ましくは、透明ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合ポリスチレンもしくは耐衝撃性ポリスチレン(AIPS)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS)、スチレン−アクリロニトリルポリマー(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、スチレンアクリレート、例えば、スチレン−メチルアクリレート(SMA)およびスチレン−メチルメタアクリレート(SMMA)、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、メチルメタアクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)ポリマー、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体(SPMI)、またはそれらの混合物もしくは上述のスチレンポリマーとポリオレフィン、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン、およびポリフェニレンエーテル(PPE)との混合物を含む。
【0025】
上述のスチレンポリマーは、力学的特性または耐熱性を改善するために、必要に応じて相溶化剤を使用して、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルスルフィド(PES)、またはそれらの混合物と、通常、ポリマー溶融物に基づいて多くても30重量%まで、好ましくは、1〜10重量%の範囲内の総割合で混合することができる。上述の範囲内の量の混合物は、例えば、疎水的に改質されたもしくは官能化されたポリマーもしくはオリゴマー、ゴム、例えば、ポリアクリレートもしくはポリジエン、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、または生分解性の脂肪族もしくは脂肪族/芳香族コポリエステルとも可能である。
【0026】
好適な相溶化剤の例は、無水マレイン酸で改質されたスチレン共重合体、およびエポキシ基を含むオルガノシランまたはポリマーである。
【0027】
上述の熱可塑性ポリマー、特にスチレンポリマー、および発泡性スチレンポリマー(EPS)から得られるポリマーリサイクル材はまた、生成プロセスにおいてスチレンポリマーと混合することができ、その量は、その特性を有意に損なわない量、一般に多くても50重量%、特に1〜20重量%である。
【0028】
耐熱発泡体の場合、SMAおよびSANから製造された混合物、ならびにSANおよびSPMIのそれぞれを使用することが好ましい。その割合は、所望の耐熱性にとって適切であるように選択される。SANにおけるアクリロニトリルの含有量は、好ましくは、25〜33重量%である。SMAにおけるメタアクリレートの割合は、好ましくは、25〜30重量%である。
【0029】
特に好ましい難燃性ポリマー発泡体は、ポリマーマトリックスとしてSANおよびSMAから製造された混合物、難燃剤としてTBBPA化合物、および難燃相乗剤として三酸化アンチモンを含む。
【0030】
発泡剤を含むスチレンポリマー溶融物は、通常、発泡剤を含むスチレンポリマー溶融物に基づいて、2〜10重量%、好ましくは、3〜7重量%の総割合の、均一に分布した1種以上の発泡剤を含む。好適な発泡剤は、EPSにおいて通常使用される物理的発泡剤、例えば、2〜7個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテルまたはハロゲン化炭化水素である。イソブタン、n−ブタン、イソペンタンまたはn−ペンタンを使用することが好ましい。XPSの場合、CO、またはアルコールもしくはケトンとの混合物を使用することが好ましい。
【0031】
起泡性を改善するために、細かく分布した内部水の液滴をスチレンポリマーマトリックスに導入することができる。これは、例として、溶融スチレンポリマーマトリックスに水を加えることによって達成することができる。水の添加は、発泡剤を供給する位置の上流、発泡剤を供給する位置と同一の位置、または発泡剤を供給する位置の下流で行うことができる。その水の均一な分布は、ダイナミックミキサーまたはスタティックミキサーを用いて達成することができる。適切な水の量は、通常、スチレンポリマーに基づいて0〜2重量%、好ましくは、0.05〜1.5重量%である。
【0032】
0.5〜15μmの範囲内の直径を有する内部水の液滴の形態で少なくとも90%の内部水を有する発泡性スチレンポリマー(EPS)が発泡されるとき、それらは、適切なセル数および均一な発泡体構造を有する発泡体をもたらす。
【0033】
加えられる発泡剤および水の量は、発泡プロセス前の嵩密度/発泡プロセス後の嵩密度として定義される発泡性スチレンポリマー(EPS)の発泡性αが、高くても125、好ましくは、25〜100であるように選択される。
【0034】
本発明の発泡性スチレンポリマーペレット(EPS)の嵩密度は、通常、高くても700g/l、好ましくは、590〜660g/lの範囲内である。充填剤が使用されるとき、590〜1200g/lの範囲内の嵩密度が、充填剤のタイプおよび量に応じて生じ得る。
【0035】
上記スチレンポリマーは、通常かつ公知の補助剤および添加剤を含むことができ、それらの例は、難燃剤、充填剤、造核剤、UV安定剤、連鎖移動剤、発泡剤、可塑剤、酸化防止剤、可溶性および不溶性の無機および/または有機の染料および色素、例えば、赤外(IR)吸収体、例えば、カーボンブラック、グラファイトまたはアルミニウム末である。加えられる染料および色素の量は、通常、0.01〜30重量%の範囲内、好ましくは、1〜5重量%の範囲内である。特に、極性色素の場合、スチレンポリマー内での色素の均一かつミクロ分散の分布を達成するために、分散剤、例えば、エポキシ基を含むオルガノシラン、ポリマー、または無水マレイン酸移植スチレンポリマーを使用することが有益である場合がある。好ましい可塑剤は、鉱油およびフタレートであり、これらの使用できる量は、スチレンポリマーに基づいて0.05〜10重量%である。
【0036】
使用されるIR吸収体の量は、それらの性質および作用に依存する。成形スチレンポリマー発泡体は、好ましくは、0.5〜5重量%、特に、1〜4重量%のIR吸収体を含む。好ましいIR吸収体は、1〜50μmの範囲内の平均粒径を有するグラファイト、カーボンブラックまたはアルミニウムである。
【0037】
好ましく使用されるグラファイトの平均粒径は、好ましくは、1〜50μm、特に、2.5〜12μmであり、その嵩密度は、100〜500g/lであり、その比表面積は、5〜20m/gである。天然のグラファイトまたは土壌合成グラファイトを使用することができる。スチレンポリマー内に含められるグラファイト粒子の量は、好ましくは、0.05〜8重量%、特に、0.1〜5重量%である。
【0038】
グラファイト粒子の使用上の問題は、グラファイト粒子を含む成形ポリスチレン発泡体の高可燃性にある。建設業での用途に求められる燃焼試験(DIN4102に従ったB1およびB2)に合格するために、本発明では発泡性スチレンポリマーに上述の難燃剤を加える。驚くべきことに、前記難燃剤は、カーボンブラックまたはグラファイトを含む成形ポリスチレン発泡体の力学的特性のいかなる種類の障害も引き起こさない。
【0039】
IR吸収体を含む成形スチレンポリマー発泡体の熱伝導率λ(DIN52612に従って10℃において測定される)が、7〜20g/lの範囲内、好ましくは、10〜16g/lの範囲内の密度の場合であっても、32mW/mK未満、好ましくは、27〜31mW/mKの範囲内、特に好ましくは、28〜30mW/mKの範囲内であることが好ましい。
【0040】
この低熱伝導率は、通常、発泡剤が本質的にセルから外に拡散しているとき、すなわち、セルが、少なくとも90体積%、好ましくは、95〜99体積%の無機気体、特に大気からなる気体で満たされているときでさえも、達成される。
【0041】
様々な方法を用いることにより、特に好ましい発泡性スチレンポリマー(EPS)を製造することができる。
【0042】
1つの実施形態において、不透熱性粒子および非イオン性界面活性剤が、スチレンポリマーの溶融物と、好ましくは押出機において混合される。ここで、その溶融物に発泡剤が同時に供給される。発泡剤を含むスチレンポリマーの溶融物に不透熱性粒子を組み込むことも可能であり、ここでは、懸濁重合法において製造され、発泡剤を含むポリスチレンビーズから、ある範囲のビーズをふるい分けることによって採収された残留画分を使用することが有益である。発泡剤および不透熱性粒子を含むポリスチレン溶融物が、押し出され、細かく砕かれることにより、発泡剤を含むペレットが得られる。不透熱性粒子は、強い造核作用を有することがあるので、発泡を回避するために、その材料は、押出後速やかに加圧下で冷却されるべきである。ゆえに、加圧下の閉鎖系において水中ペレット化を行うことが有益である。
【0043】
不透熱性粒子を含むスチレンポリマーに発泡剤を加えるための別個の工程を用いることも可能である。そして、ここでは、水性懸濁液中のペレットが発泡剤に含浸されていることが好ましい。
【0044】
3つすべての場合において、微粉化された不透熱性粒子および非イオン性界面活性剤を、ポリスチレン溶融物に直接加えることができる。しかしながら、ポリスチレンにおける濃縮物の形態で不透熱性粒子をその溶融物に加えることも可能である。しかしながら、ポリスチレンペレットおよび不透熱性粒子を共に押出機に加えること、およびポリスチレンを溶融して不透熱性粒子と混合することが好ましい。
【0045】
原則としては、不透熱性粒子および非イオン性界面活性剤が、懸濁媒質として一般に使用される水に対して十分に不活性である限り、それらを懸濁重合プロセス中に組み込むことも可能である。このプロセスでは、それらを懸濁前に単量体スチレンに加えることができるか、またはそれらを重合サイクル中、好ましくは、重合サイクルの前半において反応混合物に加えることができる。発泡剤は、好ましくは、重合プロセス中に加えられるが、後でスチレンポリマーに組み込まれることもできる。本明細書中において懸濁液の安定性にとって有益であると見出された因子は、スチレン(または、それぞれスチレンとコモノマーとの混合物)中のポリスチレン(またはそれぞれ適切なスチレン共重合体)の溶液が懸濁重合プロセスの開始時に存在することである。スチレン中の0.5〜30重量%、特に、5〜20重量%の強度のポリスチレンの溶液から開始することが本明細書では好ましい。本明細書では新しいポリスチレンをモノマーに溶解することが可能であるが、残留画分として知られるものを使用することが有益であり、ここで、これらは、発泡性ポリスチレンの生成中に生成される上記範囲のビーズの分離においてふるいにかけることによって除去された過度に大きいかまたは過度に小さいビーズである。これらの使用に適さない残留画分の直径は、実際には、それぞれ2.0mmより大きいもの、および0.2mmより小さいものである。ポリスチレンリサイクル材および発泡体ポリスチレンリサイクル材もまた使用することができる。別の可能性は、バルクでのスチレンの予備重合(0.5〜70%までの変換)、およびそのプレポリマーを不透熱性粒子とともに水相に懸濁すること、および重合し終えることにある。
【0046】
発泡性スチレンポリマー(EPS)は、特に好ましくは、水性懸濁液中でのスチレンの重合および必要に応じて共重合性モノマーの重合、ならびに発泡剤での含浸によって生成され、ここで、その重合プロセスは、スチレンポリマーに基づいて0.1〜5重量%のグラファイト粒子、および非イオン性界面活性剤の存在下において行われる。
【0047】
好適な非イオン性界面活性剤の例は、無水マレイン酸共重合体(MA)(例えば、無水マレイン酸とC20−24−1−オレフィンとから製造されたもの)、ポリイソブチレン−無水コハク酸(PIBSA)、またはこれらと、ヒドロキシポリエチレングリコールエステルもしくはジエチルアミノエタノールもしくはアミン(例えば、トリデシルアミン、オクチルアミンまたはポリエーテルアミン、テトラエチレンペンタミンまたはそれらの混合物)との反応産物である。非イオン性界面活性剤のモル質量は、好ましくは、500〜3000g/molの範囲内である。その使用量は、通常、スチレンポリマーに基づいて0.01〜2重量%の範囲内である。
【0048】
不透熱性粒子を含む発泡性スチレンポリマーを加工することにより、5〜35g/l、好ましくは、8〜25g/l、特に、10〜15g/lの密度のポリスチレン発泡体を得ることができる。
【0049】
このために、発泡性ビーズが予備発泡される。これは、たいてい、予備発泡機として知られるものにおいて水蒸気を用いてそのビーズを加熱することによって達成される。
【0050】
次いで、結果として生じた予備発泡ビーズを融解することにより、成形物が得られる。このために、予備発泡ビーズを、閉鎖されたときに気密性でない型に入れ、水蒸気で処理する。冷却後に、成形物を取り出すことができる。
【0051】
本発明の発泡性スチレンポリマーから生成される発泡体は、優れた断熱性を特徴とする。この効果は、特に、低密度において明白に明らかである。
【0052】
同一の熱伝導率に対して成形スチレンポリマー発泡体の密度を著しく低下させることが可能であると、材料を節約することができる。従来の発泡性スチレンポリマーと比較すると、実質的に低い嵩密度で同一の断熱性を達成することができるので、本発明において生成される発泡性ポリスチレンビーズを用いることにより、結果として省スペースをもたらすより薄い発泡体シートを使用することが可能である。
【0053】
上記発泡体は、建造物および建造物の一部の断熱性のために、機械類および住宅設備の断熱性のために、ならびにまた包装材料として、使用することができる。
【0054】
上記発泡性スチレンポリマーを生成するために、発泡剤は、ポリマー溶融物に混合することによって組み込むことができる。1つの可能性のあるプロセスは、a)溶融物の生成、b)混合、c)冷却、d)運搬、およびe)ペレット化の段階を含む。これらの段階の各々は、プラスチック加工から公知の装置または装置の組み合わせを使用することによって実行されてもよい。混合による組み込みのプロセスに適した装置は、スタティックミキサーまたはダイナミックミキサー、例えば、押出機である。ポリマー溶融物は、重合反応器から直接取り出すことができるか、またはポリマーペレットの溶融によって混合押出機もしくは別個の溶融押出機において直接生成することができる。溶融物の冷却は、混合アセンブリにおいて行われてもよいし、別個の冷却器において行われてもよい。使用され得るペレッタイザーの例は、加圧水中ペレッタイザー、回転ナイフおよび温度制御液のスプレーミストによる冷却装置を備えたペレッタイザー、または噴霧化装置を備えたペレッタイザーである。そのプロセスを行うための装置の好適な配置の例は:
a)重合反応器−スタティックミキサー/冷却器−ペレッタイザー
b)重合反応器−押出機−ペレッタイザー
c)押出機−スタティックミキサー−ペレッタイザー
d)押出機−ペレッタイザー
である。
【0055】
その配置は、添加剤、例えば、固体または感熱性の添加剤を導入するための補助押出機も有してもよい。
【0056】
発泡剤を含むスチレンポリマー溶融物がダイプレートを通過するときの温度は、通常、140〜300℃の範囲内、好ましくは、160〜240℃の範囲内である。ガラス転移温度の領域への冷却は、必要でない。
【0057】
上記ダイプレートは、少なくとも、発泡剤を含むポリスチレン溶融物の温度にまで加熱される。そのダイプレートの温度は、好ましくは、発泡剤を含むポリスチレン溶融物の温度よりも20〜100℃高い。これにより、そのダイにおけるポリマーの堆積が回避され、問題のないペレット化が保証される。
【0058】
市場性の高いペレットサイズを得るために、ダイの排出口におけるダイホールの直径(D)は、0.2〜1.5mmの範囲内、好ましくは、0.3〜1.2mmの範囲内、特に好ましくは、0.3〜0.8mmの範囲内であるべきである。ダイスウェルの後であっても、これによって、2mm未満、特に、0.4〜1.4mmの範囲内のペレットサイズの設定制御が可能である。
【0059】
難燃性の発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法が特に好ましく、その方法は、
a)混合のために少なくとも150℃の温度においてスタティックミキサーまたはダイナミックミキサーを使用して、有機発泡剤および1〜25重量%の本発明において使用されるハロゲン化ポリマーをポリマー溶融物に組み込む工程、
b)発泡剤を含むそのスチレンポリマー溶融物を120°〜200℃の温度に冷却する工程、
c)ホールを有するダイプレート(そのダイの排出口の直径は大きくても1.5mmである)を通して流出する工程、および
d)発泡剤を含む溶融物を、1〜20barの範囲内の水圧下でダイプレートの下流において直接ペレット化する工程
を含む。
【0060】
懸濁重合を使用して本発明の発泡性スチレンポリマー(EPS)を生成することも可能である。
【0061】
懸濁重合プロセスにおいて、使用されるモノマーは、好ましくは、スチレンだけを含む。しかしながら、最大20%の重量のスチレンを他のエチレン不飽和モノマー、例えば、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、1,1−ジフェニルエーテルまたはα−メチルスチレンによって置き換えることも可能である。
【0062】
通常の補助剤は、懸濁重合プロセス中に加えることができ、その例は、ペルオキシド開始剤、懸濁安定剤、発泡剤、連鎖移動剤、発泡助剤、造核剤および可塑剤である。重合プロセス中に加えられる本発明の環式または非環式のハロゲン化ポリマーの量は、0.5〜25重量%、好ましくは、5〜15重量%である。加えられる発泡剤の量は、モノマーに基づいて3〜10重量%である。それらは、重合プロセス前、重合プロセス中、または重合プロセス後に懸濁液に加えることができる。好適な発泡剤は、4〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素である。懸濁安定剤として無機Pickering分散剤を使用することが有益であり、その例は、ピロリン酸マグネシウムまたはリン酸カルシウムである。
【0063】
その懸濁重合プロセスによって、0.2〜2mmの範囲内の平均直径を有する、本質的には球形のビーズの形状の粒子が生成される。
【0064】
加工性を改善するために、完成した発泡性スチレンポリマーペレットを、通常かつ公知のコーティング剤でコーティングすることができ、その例は、ステアリン酸金属塩、グリセロールエステルおよび微粉化されたシリケート、帯電防止剤、またはアンチケーキング剤である。
【0065】
EPSペレットは、モノステアリン酸グリセロールGMS(典型的には0.25%)、トリステアリン酸グリセリン(典型的には0.25%)、微粉化されたAerosil R972シリカ(典型的には0.12%)およびステアリン酸Zn(典型的には0.15%)ならびにまた帯電防止剤でコーティングすることができる。
【0066】
第1工程において、本発明の発泡性スチレンポリマーペレットを、熱風または水蒸気を使用することによって予備発泡して8〜200kg/m、特に、10〜50kg/mの範囲内の密度の発泡体ビーズを得ることができ、第2工程において、それらを閉鎖された型において融解して、成形された発泡体を得ることができる。
【0067】
発泡性ポリスチレンビーズは、8〜200kg/m、好ましくは、10〜50kg/mの密度のポリスチレン発泡体を得るために加工することができる。このために、発泡性ビーズが予備発泡される。これは、たいてい、予備発泡機として知られるものにおいて水蒸気を用いてそのビーズを加熱することによって達成される。次いで、結果として生じた予備発泡ビーズを融解することにより、成形物が得られる。このために、予備発泡ビーズを、閉鎖されたときに気密性でない型に入れ、水蒸気で処理する。冷却後に、成形物を取り出すことができる。
【実施例】
【0068】
使用される難燃剤:
FRT1 約66重量%の臭素含有量および195℃のガラス転移温度を有する臭素化ポリスチレン(Albemarle Corporation製のPYRO−CHEK(登録商標)68PB)
FRT2 国際公開第2007/058736号の実施例8におけるように生成される臭素化スチレン−ブタジエンジブロック共重合体(Mw56,000、スチレンブロック37%、1,2−ビニル含有量72%、238℃におけるTGA重量減少5%)
HBCD ヘキサブロモシクロドデカン(比較)
固有粘度IV(25℃のトルエン中で0.5%の強度)を、DIN53726に従って測定した。
【0069】
発泡体シートの燃焼挙動を、DIN4102に従って発泡体密度15kg/mにおいて測定した。
【0070】
実施例1〜4および比較例C1〜C4:
150部の脱塩水、0.1部のピロリン酸ナトリウム、100部のスチレン、0.45部の2−エチルペルオキシヘキサン酸tert−ブチル、0.2部の過安息香酸tert−ブチル、5部のKropfmuhl UFT 99,5グラファイト粉末、およびまた、3部の表に示されるそれぞれの難燃剤から製造された混合物を、耐圧撹拌タンクにおいて、撹拌しながら90℃に加熱した。これらの実施例にいくつかでは、難燃剤とともに、0.2重量部のジクミルおよび過酸化ジクミルもそれぞれ難燃相乗剤として加えた。
【0071】
90℃において2時間後、4部のポリビニルピロリドン10%強度水溶液を加えた。次いで、その混合物をさらに2時間、90℃で撹拌し、80%のn−ペンタンおよび20%のイソペンタンから製造された7部の混合物を加えた。次いで、その混合物を110℃で2時間撹拌し、最後に140℃で2時間撹拌した。
【0072】
結果として生じた発泡性ポリスチレンビーズを脱塩水で洗浄し、0.7〜1.0mmに設定されたふるい抽出に供し、次いで、温風(30℃)で乾燥した。
【0073】
そのビーズを水蒸気流に曝露することによって予備発泡し、12時間保管した後、閉鎖された型においてさらに水蒸気で処理することによって融解することにより、15kg/mの密度の発泡体スラブを得た。
【0074】
固有粘度IV(25℃のトルエン中の0.5%強度)をDIN53726に従って測定した。
【0075】
発泡体シートの燃焼挙動を、DIN4102に従って15kg/mの発泡体密度において測定した。
【0076】
下記の表1に結果を整理する:
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤として少なくとも1つのハロゲン化ポリマーを含む、難燃性ポリマー発泡体。
【請求項2】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される前記ハロゲン化ポリマーの平均分子量が、5000〜300,000の範囲内である、請求項1に記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項3】
熱重量分析(TGA)における前記ハロゲン化ポリマーの重量減少が、250℃以上の温度において5重量%である、請求項1または2に記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項4】
前記ハロゲン化ポリマーの臭素含有量が、10〜80重量パーセントの範囲内であり、その塩素含有量が、1〜25重量パーセントの範囲内である、請求項1から3のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項5】
使用される難燃剤が、40〜80重量%の範囲内の臭素含有量を有する、臭素化ポリスチレンまたは臭素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む、請求項1から3のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項6】
テトラブロモビスフェノールA単位を有するポリマーを難燃剤として含む、請求項1から3のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項7】
前記ポリマー発泡体に基づいて0.2〜25重量%の範囲内の量の前記ハロゲン化ポリマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項8】
三酸化アンチモン、ジクミルまたは過酸化ジクミルを難燃相乗剤として含む、請求項1から7のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項9】
前記ポリマー発泡体に基づいて1〜10重量パーセントの赤外吸収体を含む、請求項1から4のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項10】
ポリスチレン、スチレン−メチル(メタ)アクリレート(SMA)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)もしくはスチレン−N−フェニルマレイミド共重合体(SPMI)またはそれらの混合物から製造されたポリマーマトリックスを含む、請求項1から9のいずれかに記載の難燃性ポリマー発泡体。
【請求項11】
ハロゲンを含まない方法によって難燃性にされた発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法、又は難燃性の押出スチレンポリマー発泡体(XPS)の製造方法であって、
請求項3〜6の何れかに記載のハロゲン化ポリマーを難燃剤として用いることを含む方法。
【請求項12】
以下の工程
a)スタティックミキサー又はダイナミックミキサーを用いて、有機発泡剤及び1〜25質量%の請求項1から10の何れかに記載のハロゲン化ポリマーをスチレンポリマー溶融物に組み込むために少なくとも150℃の温度で混合する工程、
b)発泡剤を含む該スチレンポリマー溶融物を少なくとも120℃の温度に冷却する工程、
c)ホールを有するダイプレートを通して流出させる工程であって、該ダイの排出口の直径は大きくても1.5mmである工程、及び
d)発泡剤を含む該溶融物を、0.1〜2MPa(1〜20bar)の範囲内の水圧下でダイプレートの下流において直接ペレット化する工程
を含む、難燃性の発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法。
【請求項13】
有機発泡剤及び難燃剤の存在する水性懸濁液中でのスチレンの重合を介した難燃性の発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法であって、
請求項1から10のいずれかに記載のハロゲン化ポリマーを難燃剤として使用することを含む製造方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに従って入手可能な難燃性の発泡性スチレンポリマー(EPS)。
【請求項15】
難燃性の成形ポリスチレン発泡体の製造方法であって、
第1工程において熱風又は水蒸気を使用して請求項14に記載の発泡性スチレンポリマーを予備発泡させることにより、8〜200g/lの範囲の密度の発泡体ビーズを得る工程、及び
第2工程においてこれらを閉鎖された型において融解する工程
を含む製造方法。

【公表番号】特表2013−514397(P2013−514397A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543659(P2012−543659)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069528
【国際公開番号】WO2011/073141
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】