説明

難燃性樹脂組成物及び成形体

【課題】石油依存度が低く、植物度が高いことで、環境負荷が低く、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物及び成形体の提供。
【解決手段】少なくとも、熱可塑性樹脂と難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤が、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなるリン含有多糖類である難燃性樹脂組成物とする。該リン含有多糖類のリン含有率が1質量%以上20質量%以下であり、熱可塑性樹脂(A)と前記リン含有多糖類(B)の質量比率(A:B)が、50:50〜90:10である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備え、複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などの部品に使用可能な難燃性樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザープリンター等の電子写真技術、印刷技術又はインクジェット技術を用いた画像出力機器に使用される部品や、家電製品などの電気電子機器や自動車の内装部品には樹脂部品(成形体)が数多く利用されているが、これらの部品には延焼を防止する樹脂材料として難燃性が求められている。
特に複写機においては、内部に高温になる定着ユニットがあり、該定着ユニット付近にも樹脂材料が使用されている。また、帯電ユニットのような高電圧を発生させるユニットや、電源ユニットは100Vの交流電源ユニットがあり、これらの最大消費電力は数100W〜1500Wであり、100V、15A電源系統を利用するユニットで構成されている。このような複写機、主にマルチファンクションプリンターに代表される複合機は据え置き式の電気電子機器であり、製品機器の安全性規格の一つである樹脂材料の難燃性に関する国際規格(IEC60950)においては、発火源もしくは発火の恐れがある部分をUL94規格(Underwriters Laboratories Inc.,standard)の難燃性「5V」のエンクロージャー部品で覆うことが求められている。UL94規格の「5V」に関する試験方法については、国際規格IEC60695−11−20(ASTM D5048)に「500W試験炎による燃焼試験」として定義されている。複写機本体に構成させる部品はエンクロージャー部品以外においても、エンクロージャー内の内部部品に関してはUL94規格の「V−2」以上が求められている。
【0003】
ここで、難燃剤にはいくつかの種類があり、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、及び無機系難燃剤が一般的である。これら難燃剤の難燃機構については、幾つかの文献で既に公知であり、ここでは、特に多用される3種類の難燃機構を簡単に紹介する。
【0004】
第1は、臭素系難燃剤に代表されるハロゲン系化合物である。燃焼した炎に対し、ハロゲン系化合物を酸化反応負触媒として働かせることなどにより燃焼速度を低下させる。
第2は、リン系難燃剤、又はシリコーン系難燃剤である。燃焼中に樹脂の表面にシリコーン系難燃剤をブリードさせたり、リン酸系難燃剤を樹脂内で脱水反応を起こさせたりすることにより、表面に炭化物(チャー)を生成させて断熱皮膜の形成などにより燃焼を止める。
第3は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤である。樹脂の燃焼によってこれらの化合物が分解するときの吸熱反応や、生成した水の持つ蒸発潜熱などにより、樹脂全体を冷却させるなどして燃焼を止める。
【0005】
一方、従来の樹脂材料は、石油を原料とするプラスチック材料で作られているが、近年、植物などを原材料にしたバイオマス由来樹脂が注目されている。ここで、バイオマス資源とは、植物や動物などの生物を資源にしているという意味であり、木材やトウモロコシ、大豆や動物から取れる油脂、生ゴミなどを示すものである。バイオマス由来樹脂はそれらのバイオマス資源を原料として作られている。一般には生分解性樹脂というものもあるが、生分解とは温度・湿度などのある一定環境下において、微生物などにより分解される機能のことをいう。なお、生分解性樹脂として、バイオマス由来樹脂ではなく、石油由来樹脂であって生分解する機能を持つ樹脂もある。バイオマス由来樹脂には、ジャガイモ、サトウキビ、トウモロコシなどの糖質を醗酵した乳酸をモノマーとし、化学重合により作られるポリ乳酸:PLA(Poly Lactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産するポリエステルである微生物産生樹脂:PHA(Poly Hydoroxy Alkanoate)、醗酵法で得られる1.3プロパンジオールと石油由来のテレフタル酸を原料とするPTT(Poly Trimethylene Terephtalate)などがある。
【0006】
現在は石油由来原料が用いられているが、将来はバイオマス由来樹脂へ移行するように研究が進められている。例えばPBS(Poly Butylene Succinate)の主原料の一つであるコハク酸を植物由来で製造することなどが行われている。
このようなバイオマス由来樹脂のうち、融点が180℃前後と高く、成形加工性に優れ、かつ市場への供給量も安定しているポリ乳酸を応用した製品が実現し始めている。しかし、前記ポリ乳酸はガラス転移点が56℃と低く、このため、熱変形温度は55℃前後であって耐熱性が低い。合わせて結晶性樹脂であることから、耐衝撃性も低くアイゾッド衝撃強度は1〜2kJ/mであり、電気・電子機器製品のような耐久部材への採用は困難であるという課題がある。その対策として、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイなどによって物性向上を図っている。しかし、石油系樹脂の含有割合が高くなり、バイオマス由来樹脂の含有割合が50%前後になってしまい、その結果、地球温暖化対策などの環境負荷削減のための化石使用量削減や二酸化炭素排出量削減に対する効果は半減してしまうという問題がある。
【0007】
例えば特許文献1では、(A)ポリ乳酸樹脂95質量%〜5質量%、(B)芳香族ポリカーボネート樹脂5質量%〜95質量%、並びに(A)及び(B)の合計100質量部に対して、(C)アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物0.1質量部〜50質量部、及び(D)難燃剤0.1質量部〜50質量部を配合してなる樹脂組成物が提案されている。この提案では、前記(D)難燃剤が、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤及び無機系難燃剤から選択される1種以上からなる。
この提案では、地球温暖化対策のためにバイオマス材料に置き換えると言っても、その効果は半減されてしまう。また、難燃性を付与するために、樹脂100質量部に対して、リン系難燃剤15質量部乃至20質量部の添加が必要であり、使用されているリン系難燃剤も化石資源を原料としているため、更にバイオマス度が低下してしまう。
【0008】
また、特許文献2では、植物資源由来の樹脂100質量部に対して、天然由来の有機充填剤1質量部〜350質量部を配合してなる樹脂組成物を成形してなる電気・電子部品であり、植物資源由来の樹脂がポリ乳酸樹脂であり、天然由来の有機充填剤が紙粉及び木粉から選ばれる少なくとも一種であり、紙粉の50質量%以上が古紙粉末である電気・電子部品が提案されている。
この提案では、ポリ乳酸に紙紛等の天然由来の有機充填材を添加することにより、樹脂の機械的強度等を向上させている。しかし、難燃性については、ポリ乳酸100質量部に対して、リン系難燃剤等の化石資源を原料とした難燃剤を23質量部〜29質量部添加することが必要であり、これでは環境負荷削減のためにベースになる樹脂材料をバイオマス材料に変えたとしても、その効果が下がってしまう。
【0009】
また、特許文献3では、少なくとも1種の生分解性を示す有機高分子化合物と、リン含有化合物を含有する難燃系添加剤と、少なくとも1種の上記有機高分子化合物の加水分解を抑制する加水分解抑制剤とを含有する樹脂組成物が提案されている。
しかし、この提案では、ポリ乳酸等の生分解性を示す有機高分子化合物を難燃化するために、有機高分子化合物140質量部に対して、リン含有化合物を含有する難燃系添加剤30質量部乃至60質量部の添加が必要であり、該リン含有化合物を含有する難燃系添加剤が化石資源を原料としているため、バイオマス度の低下を招いてしまう。
【0010】
このように、樹脂の難燃化には、その効果を得るために難燃剤を多量に添加することが必要であり、通常、樹脂100質量部に対して、10質量部〜30質量部、多いものでは50質量部にもなることがある。このように多量の難燃剤を添加すると、バイオマス度が低下するばかりではなく、樹脂の機械的強度も低下し、もともと衝撃強度の低いポリ乳酸では、そのままでは耐久消費材に使用することが難しくなってしまうという課題がある。
【0011】
バイオマスを原料とした樹脂材料を難燃化する技術としては、例えば特許文献4には、従来の石油材料を用いた難燃性材料は環境負荷が高いという課題に対して、アセチルセルロース(A)と、該アセチルセルロース(A)100質量部に対しアルコキシシラン化合物(B)を0.1質量部〜150質量部までの間で配合し均一分散させた後、アセチル基を部分的に又は完全に脱離させるとともに、アルコキシシラン化合物を加水分解及び縮合させる有機無機ハイブリッド難燃性セルロース材料の製造方法が提案されている。
しかし、この提案の方法で得られた有機無機ハイブリッド難燃性セルロース材料は、アセチルセルロースとアルコキシシラン化合物を単に混練させた態様であり、UL94燃焼試験に準ずる方法による試験結果において、試験片の燃焼時間は長くなるものの、試験片は完全に燃え尽きており、難燃性能は不十分なものであった。また、成形性に関しても成形加工が可能になるとの記載はあるが、具体的な実施例については開示されていない。
【0012】
また、従来、難燃材料はダイオキシン等の毒性ガスの発生がなく、かつ難燃性能を発現させ、かつバイオマス原料を利用する課題に対して、特許文献5には、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む、高分子組成物が提案されている。詳細には、前記難燃剤は窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体であり、重合体のモノマーの一部に核酸塩基等の生物起源の物質が使用されている。
しかし、この提案の難燃剤は、高分子材料に難燃可能なヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する態様であるが、元となる高分子材料がバイオマス材料ではなく、かつ添加量も多く環境負荷が小さいものではない。
このような従来技術は、熱可塑性樹脂に難燃剤を混練している技術である。この方法では、難燃性は発現するものの成形加工して成形品として使用することを考慮した場合、熱可塑性樹脂と難燃剤との親和性の低下により、樹脂の流動性が低下し成形性が悪くなるという問題があり、また物性も低下してしまうことがある。
【0013】
また、強度などの物性と難燃性を両立するためには石油系製品への依存度が高くなるという課題に対し、特許文献6では、天然物由来の生分解性ポリエステル樹脂(A)50質量%〜80質量%と、有機リン化合物が共重合された熱可塑性ポリエステル樹脂(B)50質量%〜20質量%とからなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。詳細には、有機リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンサクシネート(PBS)と、ポリ乳酸をブレンドしている。しかし、この提案のポリエチレンテレフタレートは石油由来の原料からなり、ポリブチレンサクシネートの原料であるコハク酸、ブタンジオールも現在は石油由来の原料からなるため、バイオマス度の点では、従来の難燃剤と大差ないものになってしまう。この従来技術は、熱可塑性ポリエステル樹脂の構造に有機リン化合物が共重合された態様であり、熱可塑性ポリエステル樹脂の主鎖に有機リン化合物が導入されることになる。そして、有機リン化合物による難燃性発現の特長上、リンが脱離することにより難燃性を発現するが、主鎖に導入されていることにより脱離しづらくなる。仮に脱離したとしても、主鎖が切れることになるため、分子量の低下が起こりドリップし易くなってしまい難燃性の確保が困難になる。その結果、低い石油依存へ移行するために、有機リン化合物が共重合されたバイオマス由来の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたとしても、物性と難燃性の全てを満たすという課題は解決できていない。
【0014】
また、非特許文献1では、セルロースにリン酸エステルを化学修飾して導入している事例が報告されているが、セルロースアセテートにジエチルリン酸エステルを導入した物質の示唆のみであり、物質の性能評価、特に難燃性能に関わる評価結果がなく、更に、熱可塑性樹脂との混練や重合などの記載もない。
【0015】
したがって石油依存度が低く、植物度が高く、環境負荷も低いと共に、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物としては、未だ十分満足できる性能を有するものは得られておらず、更なる改良、開発が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、石油依存度が低く、植物度が高いことで、環境負荷が低く、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、バイオマス材料のセルロース誘導体に着目し、該セルロース誘導体の側鎖にチオリン酸基を導入したリン含有セルロース誘導体を難燃剤として使用することにより、石油依存度が低く、また、ポリ乳酸等のバイオマス材料を原料にしたプラスチックに添加することにより、植物度が高いことで、環境負荷が低く、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物が得られることを知見した。
【0018】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも、熱可塑性樹脂と難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であって、
前記難燃剤が、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなるリン含有多糖類であることを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
該<1>に記載の難燃性樹脂組成物においては、耐熱性や機械的強度等の諸物性が高く、バイオマスを原料とした難燃性を有するリン含有多糖類を添加することにより、バイオマス度を高めた、環境に配慮した難燃性樹脂組成物が提供できる。しかも、難燃性を有するリン含有多糖類が高分子材料であるため、熱可塑性樹脂の耐熱性や機械的強度等の諸物性の低下が少ない難燃性樹脂組成物が提供できる。
<2> リン含有多糖類のリン含有率が1質量%以上20質量%以下であり、
熱可塑性樹脂(A)と前記リン含有多糖類(B)の質量比率(A:B)が、50:50〜90:10である前記<1>に記載の難燃性樹脂組成物である。
該<2>に記載の難燃性樹脂組成物においては、リン含有多糖類のリン含有率が1質量%以上であるために確実な難燃効果を得ることができると共に、耐熱性や機械的強度等の諸物性が高く、バイオマスを原料とした難燃性を有するリン含有多糖類を添加することにより、バイオマス度を高めた、環境に配慮した難燃性樹脂組成物が提供できる。しかも、難燃性を有するリン含有多糖類が高分子材料であるため、熱可塑性樹脂の耐熱性や機械的強度等の諸物性の低下が少ない難燃性樹脂組成物が提供できる。
<3> リン含有多糖類が、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなり、該天然多糖類がセルロース及びセルロース誘導体のいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<3>に記載の難燃性樹脂組成物においては、地球環境に配慮した再生可能資源であるセルロース又はセルロース誘導体などの天然多糖類を原料とし、バイオマス度が高く、環境に配慮した難燃性樹脂組成物を安価に提供できる。
<4> セルロース誘導体が、セルロースプロピオネートである前記<3>に記載の難燃性樹脂組成物である。
該<4>に記載の難燃性樹脂組成物においては、セルロース誘導体の溶媒溶解性の高さや化学反応性の高さから、容易にセルロース誘導体の側鎖に、チオリン酸エステルを付加することができ、リン含有率を高めた難燃性能の高い樹脂組成物が提供できる。
<5> チオリン酸エステルが、セルロース誘導体における2位、3位、及び6位のそれぞれの水酸基又はアルキル基に付加されてチオリン酸エステル構造を構成する前記<1>から<4>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<5>に記載の難燃性樹脂組成物においては、セルロース誘導体の置換度に応じて、チオリン酸エステルが、2位、3位、及び6位のそれぞれの水酸基又はアルキル基に付加されることにより、リン含有率の高く難燃性能が高い樹脂組成物が提供できる。
<6> チオリン酸エステルが、ジメチルチオリン酸及びジエチルチオリン酸のいずれかである前記<1>から<5>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<6>に記載の難燃性樹脂組成物においては、安価な試薬として入手可能であり、天然多糖類又はその誘導体の側鎖に、ジメチルチオリン酸又はジエチルチオリン酸を付加する際に、立体障害が少なく反応性を損なうことがないため、容易にリン含有多糖類を作製することができる。
<7> 熱可塑性樹脂が、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用している熱可塑性樹脂である前記<1>から<6>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<7>に記載の難燃性樹脂組成物においては、更にバイオマス度を高めた、環境に配慮した難燃性樹脂組成物が提供できる。
<8> 熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、該脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート、及び微生物産生のポリヒドロキシアルカノエートから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<8>に記載の難燃性樹脂組成物においては、バイオマスを原料とし、耐熱性や機械的強度等の諸物性の高い難燃性樹脂組成物が提供できる。
<9> 熱可塑性樹脂が、石油原料由来の熱可塑性樹脂を更に含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<9>に記載の難燃性樹脂組成物においては、少量の石油原料由来の熱可塑性樹脂を添加で、更に耐熱性や機械的強度等の諸物性の高い難燃性樹脂組成物が提供できる。
<10> リン含有多糖類の数平均分子量が10,000以上1,000,000以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物である。
該<10>に記載の難燃性樹脂組成物においては、リン含有多糖類が熱可塑性樹脂の性質を有するため、容易に熱可塑性樹脂とアロイ化することができ、耐熱性や機械的強度等の諸物性の高い難燃性樹脂組成物を提供することができる。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。
該<11>に記載の成形体においては、本発明の前記難燃性樹脂組成物を、成形することにより、複雑形状の難燃性樹脂部品を安価に作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、石油依存度が低く、植物度が高いことで、環境負荷が低く、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物及び成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、リン含有多糖類の含有率と成形温度190℃におけるMFRとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(難燃性樹脂組成物)
本発明の難燃性樹脂組成物は、少なくとも、熱可塑性樹脂と難燃剤とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0022】
−熱可塑性樹脂−
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、石油原料由来及びバイオマス原料由来のどちらの樹脂でも、目的に応じて適宜選択して使用することができるが、環境負荷の低いバイオマス原料由来の樹脂がより好ましい。
前記バイオマス原料由来の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば脂肪族ポリエステルなどが挙げられる。該脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート、微生物産生のポリヒドロキシアルカノエート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(1)市場における生産量、流通量が多く、安価に入手できる点、(2)射出成形が可能で流動性が良い材料である点、(3)引張強度、曲げ強度が高い剛直な材料である点、(4)結晶性を制御することにより耐熱性の向上が可能になる点、(5)他の石油由来樹脂との混練により目的に応じた物性の確保が可能になる点、(6)製造プロセスの成熟度の高さから製造時のエネルギー投入量が少なく環境負荷が小さい点、からポリ乳酸が特に好ましい。
なお、ポリ乳酸以外の樹脂(脂肪族ポリエステル)も同様の理由から適宜選択して使用することができる。
【0023】
前記ポリ乳酸としては、例えば、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリ−D−乳酸(PDLA)、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体、L−乳酸とD−乳酸とのステレオコンプレックスなどが挙げられ、更に必要に応じてその他の共重合成分を含んでいてもよい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸を用いることが好ましく、ポリ乳酸の総乳酸成分のうち、L体が80%以上含まれるか、あるいはD体が80%以上含まれることが好ましい。
このようなポリ乳酸としては、適宜合成されたものでもよいし、市販品を用いることもできる。該市販品としては、例えばテラマック(登録商標)TE−2000(ユニチカ株式会社製)、レイシア(登録商標)H−100J(三井化学株式会社製)、バイロエコール(登録商標)BE−400(東洋紡績株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性樹脂としては、少なくとも原料の一部がバイオマス材料からなる芳香族ポリエステル樹脂であっても構わない。該芳香族ポリエステル樹脂としては原料の一部である1.3プロパンジオールをバイオマス材料で合成したポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、バイオマス原料由来の熱可塑性樹脂に、石油原料由来の熱可塑性樹脂を更に含むものを用いることができる。この場合、前記バイオマス原料由来の熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記石油原料由来の熱可塑性樹脂を10質量部〜300質量部添加することが好ましい。
前記石油原料由来の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、メタアクリレートスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、SABIC Innovative Plastics Holding BV社製のレキサン101、などが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、「三井PETJ120」(三井化学株式会社製)、クラペット KS750RC(株式会社クラレ製)、PET TR−8550(帝人化成株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
前記熱可塑性樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算値で50,000〜5,000,000が好ましく、100,000〜2,000,000がより好ましい。
【0026】
−難燃剤−
前記難燃剤としては、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなるリン含有多糖類が用いられる。
前記リン含有多糖類は、天然多糖類を原料とし、該天然多糖類としては、セルロース、キチン、キトサン、デンプン、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、将来の食糧問題を考えると、原料としては食料又は食料残渣物以外で、食料の流通過程に依存しないものが望ましい点からセルロースが特に好ましい。
前記セルロースは、溶媒溶解性が乏しいため、誘導体化して溶媒溶解性を向上させたセルロース誘導体を用いることが好ましい。
前記セルロース誘導体としては、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、セルロースプロピオネート・ブチレートなどが挙げられる。これらの中でも、良好な熱可塑性を示す点からセルロースプロピオネートが特に好ましい。
【0027】
前記リン含有多糖類は、チオリン酸エステルが、セルロース誘導体における2位、3位、及び6位のそれぞれの水酸基又はアルキル基に付加されてチオリン酸エステル構造を構成することが、リン含有率を高めることができ、難燃効果が高くなる点で好ましい。セルロース誘導体は下記一般式(1)に示すように、2位、3位、及び6位に水酸基又はアルキル基を持つが、チオリン酸エステルを付加させようとすると、その立体障害の影響から6位>3位>2位の順に付加されやすく、2位にはほとんどチオリン酸エステルが付加されない。このため、チオリン酸エステルを付加させる前に、6位をトリチル基(−C(C)で保護した後、2位、3位にチオリン酸エステルを付加して、次いで、有機溶媒中、酸性条件化で6位のトリチル基を脱保護して、6位にチオリン酸エステルを付加することによって、2位、3位、6位のすべてにチオリン酸エステルが導入できる。トリチル基を脱保護する時の有機溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンなどの溶媒が使用できる。また、脱保護試薬としては、塩酸、p−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素などの酸が使用できる。保護基に使用できるのはトリチル基に限るものではなく、p−メトキシフェニルジフェニルメチル基のようなヒドロキシ基の保護基に使用できるものであればよい。
【化1】

ただし、式中、nは重合数を表す。
【0028】
前記天然多糖類又はその誘導体(例えばセルロース又はその誘導体)の側鎖に導入するチオリン酸エステルとしては、例えばメチルチオリン酸、エチルチオリン酸、ジメチルチオリン酸、ジエチルチオリン酸、などが挙げられる。これらの中でも、天然多糖類又はその誘導体の側鎖に、チオリン酸エステルを付加する際に、立体障害が少なく、反応性を損うことがないため、また、容易にリン含有多糖類を作製することができ、高い難燃性を示す点からジメチルチオリン酸又はジエチルチオリン酸が特に好ましい。
【0029】
前記リン含有多糖類は、その数平均分子量が10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、50,000〜300,000がより好ましい。該数値範囲において、難燃性と耐衝撃性の改良に加えて成形性の向上が可能となる。前記数平均分子量が、10,000未満であると、耐衝撃性が低下することがあり、1,000,000を超えると、成形加工時に溶融樹脂の流動性が低下し、ヒケ等の成形不良の原因となることがある。
【0030】
前記リン含有多糖類中におけるリン含有率は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。この好ましい数値範囲において、難燃性の効果が安定的に発現される。前記リン含有率が、3質量%より小さくなると、UL94難燃規格の「V−2」を満足できるが、燃焼時間や残炎時間が長くなる現象が発生し、更に1質量%未満になると、難燃効果が低下し、UL94規格である5本1セットの試燃焼試験のうち、1もしくは2本の試験片が規定の時間以上の燃焼継続が発生するか、5本の合計時間が規定以上になることがあり、UL94規格の難燃性「V−2」を満足できなくなることがある。以上の理由により、前記リン含有率は1質量%以上であることが有効である。
一方、上記一般式(1)で表されるセルロース骨格中3ヶ所(2位、3位、6位)のRについて、導入される置換度の特性から、前記リン含有率が、10質量%程度までは合成条件の設定により安定して導入することは可能であるが、10質量%より多く導入しようとする際には、全てのRを脱離できる出発物質を精製し、かつ選択的に全ての箇所にチオリン酸基が導入できるような合成条件の設定が必要になる。最適な出発物質、合成条件のもと合成されるリン含有多糖類のリン含有率の20質量%は、以下に説明するようにリン含有率の上限値である。以上の理由により、前記リン含有率は20質量%以下であることが有効である。
例えば上記一般式(1)で表されるセルロース骨格中のRに、チオリン酸エステルが最大3ヶ所(2位、3位、6位)に付いた場合のリン含有率の一例を示す。
メチルチオリン酸化(R=PS(OH)(OCH)):リン含有率18.9質量%
エチルチオリン酸化(R=PS(OH)(OCHCH)):リン含有率17.4質量%
ジメチルチオリン酸化(R=PS(OCH)):リン含有率17.4質量%
ジエチルチオリン酸化(R=PS(OCHCH)):リン含有率15.0質量%
【0031】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記リン含有多糖類(B)の質量比率(A:B)は、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20がより好ましい。前記リン含有多糖類の含有量が、50質量%を超えると、熱可塑性の性質が低下し、成形加工時に溶融樹脂の流動性が低下し、ヒケ等の成形不良の原因になることがあり、10質量%未満であると、難燃性の効果が低下することがある。
前記リン含有多糖類の含有量が、50質量%を超えると、成形温度190℃におけるMFR(g/10min)が、2g/10min以下となり、熱可塑性の性質が低下し、成形加工時に溶融樹脂の流動性が低下し、ヒケ等の成形不良の原因になる(図1参照)。一方、前記リン含有多糖類の含有量が、10質量%未満であると、難燃性の効果が低下し、UL94規格の難燃性「V−2」を満足できなくなることがある。
【0032】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、樹脂組成物に使用される公知の添加剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン含有多糖類以外の難燃剤、難燃助剤、相溶化剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、加水分解抑制剤、結晶化核剤などが挙げられる。
これらは、本発明の効果を害しない範囲内で適宜選択した量を使用することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記加水分解抑制剤としては、例えばカルボジイミド変性イソシアネート、有機ホスファイト金属塩化合物、テトライソシアネートシラン、モノメチルイソシアネートシラン、アルコキシシラン、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体、2,2−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、などが挙げられる。
前記結晶化核剤としては、例えばタルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好適に挙げられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いても問題は無い。
【0033】
前記リン含有多糖類以外の難燃剤としては、例えば石油系リン酸エステル難燃剤、などが挙げられる。前記石油系リン酸エステル難燃剤としては、例えば芳香族リン酸エステル難燃剤、芳香族縮合リン酸エステル難燃剤などが挙げられる。前記芳香族リン酸エステル難燃剤としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、などが挙げられる。前記芳香族縮合リン酸エステル難燃剤としては、例えば1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジ2,6−キシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、などが挙げられる。
前記難燃助剤としては、ドリップ防止剤としてポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン樹脂、フッ素系樹脂、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩などを用いることができる。
【0034】
本発明の難燃性樹脂組成物は、成形性に優れ、各種分野において好適に使用することができ、各種形状、構造、大きさの成形体とすることができ、以下の本発明の成形体に特に好適に使用することができる。
【0035】
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の前記難燃性樹脂組成物を成形してなること以外には、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。これらの中でも、成形体を複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などとして使用する場合には、フィルム成形、押出成形、及び射出成形から選択されるいずれかが好ましく、射出成形が特に好ましい。
例えば複写機の外装カバー等の筐体部品の成形には、350トンの電動射出成形機を用いて水温度調節器で温度設定が可能な金型を用いて、金型温度40℃、射出圧力90MPa、射出速度10mm/sec、の成形条件で成形することにより、外観、寸法を満足する成形品を得ることが可能になる。
【0037】
−成形体中のリン含有多糖類の含有の有無の分析方法−
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸を、リン含有多糖類としてジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネートをブレンドし、得られた難燃性樹脂組成物で作製された成形体中におけるリン含有多糖類の含有の有無を確認する方法としては、例えば成形体の一部をクロロホルムに溶解し、不溶物を濾過して回収し、メタノールで洗浄、乾燥し、赤外分光光度計(Shimazu製、FT−IR8600CPs、KBr法、積算100回、分解能4[1/cm])で測定する。また、前記不溶物をピリジンに溶解して、核磁気共鳴装置(NMR Varian社製、INOVA300)を用いてP−NMRを測定することで、容易に分析することができる。
なお、熱可塑性樹脂とリン含有多糖類の組み合せにより、適宜使用される溶媒の種類を変えることで、前記測定方法で分析することが可能である。
【0038】
−用途−
本発明の成形体は、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えており、例えば複写機、レーザープリンター等の電子写真技術、印刷技術又はインクジェット技術を用いた画像出力機器に使用される部品、家電製品等の電気電子機器、自動車の内装部品などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例において、「熱可塑性樹脂の数平均分子量」、「リン含有多糖類中のリン含有率」、「難燃性樹脂組成物の植物度」、及び「リン含有多糖類の数平均分子量」は、以下のようにして測定した。
【0040】
<熱可塑性樹脂の数平均分子量の測定>
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、東ソー株式会社製HLC8220GPCを用いて0.1質量%濃度でテトラヒドロフラン(THF)溶媒に樹脂を溶解させ、ゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0041】
<リン含有多糖類中のリン含有率の測定>
核磁気共鳴装置(NMR Varian社製、INOVA300)を用いてP−NMRを測定することで、リン含有多糖類中のリン含有率を特定した。
【0042】
<難燃性樹脂組成物の植物度の測定>
リン含有多糖類は、その原料の一部に天然多糖類を使用し、誘導体化するための原料に石油原料由来の化合物を使用している。原料に使用した多糖類誘導体の置換度、及びリン含有多糖類(B)中のリン含有率から、リン含有多糖類(B)中に含まれる天然多糖類の割合を算出することができる。この割合をリン含有多糖類(B)の植物度と定義する。
以下に植物度の算出方法の一例を示す。
例えば、熱可塑性樹脂(A)としてポリ乳酸90質量部、リン含有多糖類(B)としてジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート10質量部をブレンドし、得られた難燃性樹脂組成物において、その植物度は、ポリ乳酸の植物度を100%として、ジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネートの植物度は、原料に使用した下記一般式で表されるセルロースプロピオネートの置換度2.42、得られたジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート中のリン含有率4.3質量%から植物度42質量%が算出され、次式より難燃性樹脂組成物の植物度は94.2質量%となる。
難燃性樹脂組成物の植物度=(ポリ乳酸の植物度)×0.9+(ジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネートの植物度)×0.1
=100×0.9+42×0.1=94.2質量%
【化2】

ただし、nは重合数を表す。セルロースプロピオネートの場合はRがH、又はCOCHCH、プロピオネート置換度2.42である。
【0043】
<リン含有多糖類の数平均分子量の測定>
リン含有多糖類をクロロホルム又はジメチルホルムアミド(DMF)に規定濃度となるように溶解し、GPC(Gel Permeation Chromatography)法により、リン含有多糖類の数平均分子量を測定した。
【0044】
(実施例1)
<リン含有多糖類(B)の作製>
−ジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)の合成−
出発物質としてScientific Polymer Products,INC.製のセルロースプロピオネートを精製してから用いた。
攻撃試薬としてジエチルチオリン酸クロライド(SIGMA-ALDRICH corp.製)を用い、溶媒としてピリジン(ナカライテスク株式会社製)を用いた。
ピリジン100mlにセルロースプロピオネート5gを加えて、フラスコ中で攪拌して溶解させた。40℃に調節した水浴中にフラスコを沈め、乾燥窒素気流化にて等量のクロロホルム(CHCl)と混合した攻撃試薬12eq/AGU(Anhydroglucose unit)をゆっくりと滴下し、反応を開始した。24時間経過後、過剰の蒸留水に滴下し、再沈殿させ、反応を終了した。プロパノールによる洗浄を繰り返した後、アセトンを加えて攪拌し、再溶解させた。次いで、溶液ろ過を行って不純物を取り除いた後、攪拌しながら蒸留水をゆっくりと滴下し、得られた溶液を減圧濃縮してアセトンを取り除いた後、凍結乾燥を行って、ジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)を合成した。
得られたジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネートのリン含有率は4.3質量%、置換度はプロピオニル基2.1、水酸基0.5、チオリン酸基0.4であり、数平均分子量Mnは85,000、重量平均分子量Mwは232,000、分散値Mw/Mnは2.73であった。
【0045】
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)を用意し、該ポリ乳酸90質量部と、前記作製したジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)10質量部をドライブレンドした後、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の成形用ペレット(P1)を作製した。
【0046】
(実施例2)
<リン含有多糖類(B)の作製>
−ジメチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B2)の合成−
出発物質としてScientific Polymer Products,INC.製のセルロースプロピオネートを精製してから用いた。
また、攻撃試薬としてジメチルチオリン酸クロライド(SIGMA-ALDRICH corp.製)を用い、溶媒としてはピリジン(ナカライテスク株式会社製)を用いて、実施例1と同様の方法でジメチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B2)を合成した。
得られたジメチルチオリン酸化セルロースプロピオネートのリン含有率は3.7質量%、数平均分子量Mnは83,000、重量平均分子量Mwは220,000、分散値Mw/Mnは2.65であった。
【0047】
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)90質量部と、前記作製したジメチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B2)10質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P2)を作製した。
【0048】
(実施例3)
<リン含有多糖類(B)の作製>
−ジエチルチオリン酸化セルロースアセテート(B3)の合成−
出発物質としてScientific Polymer Products,INC.製のセルロースアセテートを精製してから用いた。また、攻撃試薬としてジエチルチオリン酸クロライド(SIGMA-ALDRICH corp.製)を用い、溶媒としてピリジン(ナカライテスク株式会社製)を用いて、実施例1と同様の方法でジエチルチオリン酸化セルロースアセテート(B3)を合成した。
得られたジエチルチオリン酸化セルロースアセテートのリン含有率は4.8質量%、数平均分子量Mnは54,000、重量平均分子量Mwは145,000、分散値Mw/Mnは2.68であった。
【0049】
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)90質量部と、前記作製したジエチルチオリン酸化セルロースアセテート(B3)10質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P3)を作製した。
【0050】
(実施例4)
<リン含有多糖類(B)の作製>
−ジメチルチオリン酸化セルロースアセテート(B4)の合成−
出発物質としてScientific Polymer Products,INC.製のセルロースアセテートを精製してから用いた。
また、攻撃試薬としてジメチルチオリン酸クロライド(SIGMA-ALDRICH corp.製)を用い、溶媒としてピリジン(ナカライテスク株式会社製)を用いて、実施例1と同様の方法でジメチルチオリン酸化セルロースアセテート(B4)を合成した。
得られたジメチルチオリン酸化セルロースアセテートのリン含有率は4.1質量%、数平均分子量Mnは51,000、重量平均分子量Mwは128,000、分散値Mw/Mnは2.51であった。
【0051】
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)90質量部と、前記作製したジメチルチオリン酸化セルロースアセテート(B4)10質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P4)を作製した。
【0052】
(実施例5)
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)50質量部と、実施例1で作製したジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)50質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P5)を作製した。
【0053】
(実施例6)
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)45質量部と、熱可塑性樹脂(A2)としてポリカーボネート樹脂(SABIC Innovative Plastics Holding BV社製、レキサン101、数平均分子量21,400)45質量部と、実施例1で作製したジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)10質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P6)を作製した。
【0054】
(実施例7)
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(A3)90質量部、リン含有多糖類(B)として実施例1で合成したジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)10質量部とを合わせた100質量部をドライブレンドした後に、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P7)を作製した。
ここで、熱可塑性樹脂(A)に用いたポリエチレンテレフタレート樹脂(A3)には、三井化学株式会社製の三井PETJ120、数平均分子量38,300を用いた。
【0055】
(比較例1)
−樹脂組成物の作製−
実施例1において、熱可塑性樹脂(A)としてポリ乳酸樹脂(A1)100質量部のみを用いて、成形用ペレット(P8)を作製した。
【0056】
(比較例2)
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)80質量部に、リン酸エステル難燃剤(C1)20質量部を添加し、2軸混練押出機で180℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレット(P9)を作製した。
ここで、リン酸エステル難燃剤として大八化学工業株式会社製の芳香族縮合リン酸エステル難燃剤PX−200を用いた。
【0057】
(比較例3)
−難燃性樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)40質量部と、実施例1で作製したジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B1)60質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、3mm角程度の成形用ペレット(P10)を作製した。
【0058】
(比較例4)
<リン含有多糖類(B)の作製>
−ジエチルチオリン酸化セルロースアセテート(B5)の合成−
出発物質としてScientific Polymer Products,INC.製のセルロースプロピオネートを精製してから用いた。
また、攻撃試薬としてジエチルチオリン酸クロライド(SIGMA-ALDRICH corp.製)を2eq/AGU(Anhydroglucose unit)用い、溶媒としてピリジン(ナカライテスク株式会社製)を用いて、実施例1と同様の方法でジエチルチオリン酸化セルロースアセテート(B5)を合成した。
得られたジエチルチオリン酸化セルロースアセテートのリン含有率は0.7質量%、数平均分子量Mnは49,800、重量平均分子量Mwは140,000、分散値Mw/Mnは2.81であった。
であった。
【0059】
−樹脂組成物の作製−
熱可塑性樹脂(A1)としてポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH−100J、数平均分子量52,200)90質量部と、リン含有多糖類(B)としてジエチルチオリン酸化セルロースプロピオネート(B5)10質量部とを合わせた100質量部をドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の成形用ペレット(P11)を作製した。
【0060】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜4について、以下のようにして、UL94垂直燃焼試験、アイゾッド衝撃試験、及び成形性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
<UL94垂直燃焼試験>
−UL94垂直燃焼試験片の作製−
作製した各ペレットを、棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥し、型締力50トン電動式射出成形機を使用して、金型温度40℃、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/sec、射出圧力100MPa、冷却時間60secの設定で、UL94垂直燃焼試験用の短冊試験片を作製した。上記条件での射出成形を行うことにより作製した短冊試験片のサイズは、幅13mm、長さ125mm、厚さ1.6mmであった。
−UL94垂直燃焼試験方法−
前記作製した試験片を50℃で72時間エージングした後、湿度20%RHとし、UL944規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。
試験方法は、試験片の上端部をクランプし、垂直に保持し、試験片の下端部から300±10mm下に脱脂綿(0.8g以下、50mm角)を置き、落下溶融物が脱脂綿上に落下することを確認した。試験片の下端部よりバーナーで1回目の接炎を10±1秒間行い、約300mm/秒の速度でバーナーをサンプルから離し、燃焼が消えたら直ちにバーナーをサンプルの下端部に戻し、2回目の接炎を10±1秒間行った。
5本1セットの試験片について、合計10回の接炎を行い、試験片の燃焼時間を記録した。燃焼時間とは、離炎後の燃焼継続時間であり、1回目の燃焼時間をt1、2回目の燃焼時間をt2、3回目の燃焼後火種継続時間をt3とした。
−UL94垂直燃焼試験の判定方法−
UL94規格に基づく垂直燃焼試験の判定方法は下記の通りである。
(1)各試験片の離炎後の燃焼継続がt1又はt2が10秒以下なら「V−0」、30秒以下なら「V−1」もしくは「V−2」
(2)5本試験片の全ての燃焼継続時間t1+t2が50秒以下なら「V−0」、250秒以下なら「V−1」もしくは「V−2」
(3)2回目接炎後の燃焼継続時間と火種継続時間の合計t2+t3が30秒以下なら「V−0」、60秒以下なら「V−1」もしくは「V−2」
(4)クランプまで燃える燃焼がないこと
(5)燃焼物や落下物による脱脂綿の発火について発火なしなら「V−0」もしくは「V−1」、発火ありなら「V−2」
上記(1)〜(5)のそれぞれ「V−0」、「V−1」、「V−2」の条件を全て満たすものが判定される。
【0062】
<アイゾット衝撃試験用試験>
−アイゾット衝撃試験用試験片の作製−
作製した各ペレットを、棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥した後、型締力50トンの電動式射出成形機を使用して、金型温度40℃、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、冷却時間60secの設定で、アイゾット衝撃試験用試験片を作製した。上記条件での射出成形を行うことにより作製した試験片サイズは、長さ64mm、幅12.7mm、厚さ12.7mmで、A切欠きを入れた2号A試験片であった。
−アイゾット衝撃試験−
JIS K7110に準拠したアイゾット衝撃試験を行った。
〔評価基準〕
○:アイゾット衝撃強度が4.0kJ/m以上
△:アイゾット衝撃強度が2.5kJ/m以上4.0kJ/m未満
×:アイゾット衝撃強度が2.5kJ/m未満
【0063】
<成形性>
各樹脂組成物を射出成形時の流動性、金型からの離型性、金型転写による外観から、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
(1)成形体を目視観察して、ヒケがないこと
(2)成形体を目視観察して、端部のショート(未充填部)がないこと
(3)成形体を目視観察して、シボ面の転写不良がないこと
(4)成形加工時に、成形体の離型不良がないこと
〔判定基準〕
○:上記4項目をすべて満足する場合
×:上記4項目のうち1項目でも満足しない場合
【0064】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0065】
表1の結果から、実施例1〜7では、高い植物度で耐衝撃性を有し、難燃性「V−2」以上を確保できることが確認できた。
実施例6では、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とポリ乳酸とのポリマーアロイ材料に対しても難燃性「V−2」以上を確保し、かつアイゾット衝撃強度が向上することを確認できた。
実施例2のセルロースプロピオネートを出発物質としたチオリン酸エステル化セルロースプロピオネートは、実施例3及び4のチオリン酸エステル化セルロースアセテートより燃焼時間が短く、セルロースプロピオネートの方が難燃性が高い結果となった。
これに対し、比較例1は、植物度が100%であるが、難燃性が発現せず、耐衝撃性も低かった。
また、比較例2は、難燃性は確保されるものの、植物度が80%と低下し、耐衝撃性も低かった。
また、比較例3は、難燃性は確保されるが、流動性が低く、金型にランナーが取られるなどの金型からの離型性に問題があり、成形性が劣る評価であった。
また、比較例4は、リン含有多糖類中のリン含有率が0.7質量%と低いため、難燃性が発現しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の難燃性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、及び難燃性を兼ね備えているので、例えば複写機、レーザープリンター等の電子写真技術、印刷技術又はインクジェット技術を用いた画像出力機器に使用される部品、家電製品等の電気電子機器、自動車の内装部品などとして幅広く用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2007−56247号公報
【特許文献2】特開2005−23260号公報
【特許文献3】特開2005−162872号公報
【特許文献4】特開2002−356579号公報
【特許文献5】国際公開第2003/082987号パンフレット
【特許文献6】特開2004−256809号公報
【非特許文献】
【0068】
【非特許文献1】C.S.Marvel et al.,J.Polym.Sci.,6,351(1951)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、熱可塑性樹脂と難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であって、
前記難燃剤が、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなるリン含有多糖類であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
リン含有多糖類のリン含有率が1質量%以上20質量%以下であり、
熱可塑性樹脂(A)と前記リン含有多糖類(B)の質量比率(A:B)が、50:50〜90:10である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
リン含有多糖類が、天然多糖類の側鎖にチオリン酸エステルを付加してなり、該天然多糖類がセルロース及びセルロース誘導体のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
セルロース誘導体が、セルロースプロピオネートである請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
チオリン酸エステルが、セルロース誘導体における2位、3位、及び6位のそれぞれの水酸基又はアルキル基に付加されてチオリン酸エステル構造を構成する請求項1から4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
チオリン酸エステルが、ジメチルチオリン酸及びジエチルチオリン酸のいずれかである請求項1から5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用している熱可塑性樹脂である請求項1から6のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、該脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート、及び微生物産生のポリヒドロキシアルカノエートから選択される少なくとも1種を含む請求項1から7のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
熱可塑性樹脂が、石油原料由来の熱可塑性樹脂を更に含む請求項1から8のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
リン含有多糖類の数平均分子量が10,000以上1,000,000以下である請求項1から9のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−31229(P2010−31229A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49701(P2009−49701)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】