説明

難燃木材

【課題】簡単な手段によって十分な難燃性を有する木材を得ることをその目的とするものである。
【解決手段】リン窒素化合物の水溶液にリン酸エステル化合物を総重量に対して1重量%乃至30重量%に配合した難燃性溶液を木材に塗布することにより含浸させてなることを特徴とする難燃木材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材にリン酸化合物系の難燃剤を塗布することにより含浸させて該木材の難燃化を達成した難燃木材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より薬剤により難燃化を図った木材がある。また、具体的に特開平5−69414号公報に示すように、塩基性窒素化合物とリン酸との塩ないしは化合物を、木材への塗布乾燥後、熱圧処理をすることにより該木材に難燃性を付与したものがある。
【0003】
更に、特開昭62−144902号公報に示すように、木材を塩化カルシウム溶液に浸漬後、リン酸ナトリウム溶液に浸漬して該木材中に不燃性無機物を生成させた後、シリカゾルを含浸処理して難燃性を付与したものがある。
【特許文献1】特開平5−69414号公報
【特許文献2】特開昭62−144902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の難燃化を図った木材は、経年後に該薬剤により斑が生じることが多く、また、同時に該薬剤に含まれる成分が溶脱し、それが表面において結晶化して、白華現象を引き起こしたり、更に該薬剤の成分には表面側に結露を生じさせる要因となるものも多く、これらのことより仕上材としての使用は不向きであった。
【0005】
また、特開平5−69414号公報に示す難燃化手段は、二液拡散手段により処理をするため、木材の含水率やpHの調整に手間がかかるし、処理溶液を拡散させるのに時間を必要とし、更に、処理後においても残った未反応液を除去するのに手間がかかり、且つ副生成物が木材に悪影響を与えることも考えられる等の様々な問題点が生じていた。更に、熱圧処理を行なう必要があり、そのための特殊装置が必要となり、イニシャルコストが高かった。
【0006】
また、特開昭62−144902号公報のものは2段階処理する必要があり、手間がかかると同時に浸漬処理を行なう必要があり、この点からもコストアップとなっていた。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決したもので、十分な難燃性を有する木材を簡単な手段によって得ることをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その具体的な手段として、リン窒素化合物の水溶液にリン酸エステル化合物を配合した難燃性溶液を木材に塗布することにより該木材の難燃化を図ったものである。
【0009】
また、上記水溶液は水の総重量に対してリン窒素化合物を10重量%乃至50重量%にて配合してなる難燃木材を特徴とする。
【0010】
更に、厚さ3mm乃至15mmの難燃木材に石膏ボード等の不燃又は準不燃材料を組み合わせてなる難燃木材を特徴とする。
【0011】
また、上記木材は、その裏面側に幅1mm乃至6mm、部材厚の1/2乃至1/5の深さの溝を平行状に設けた難燃木材を特徴とする。
【0012】
上記難燃化の対象となる木材としては、塗布することにより難燃化を図れるので、ヒノキ、ヒバ、スギ、ブナ、ケヤキ、松、ツガ等の硬木又は軟木等或いは広葉樹、針葉樹の樹種を問わず全ての木材に適用することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の難燃性溶液は浸透性に優れているため、リン酸エステル化合物を添加したリン窒素化合物の水溶液を、ハケや吹き付け等の塗布手段により木材の表面側から塗布することにより、上記水溶液が該木材の表面側より内側に浸透し、該木材に対して十分な難燃性を付与することが可能となった。
【0014】
また、木材に浸透された難燃性溶液は難燃剤として木材と一体化された状態で安定化されるので、該木材は屋内或いは屋外のいずれの場所に使用されても長期間に亘りその難燃性を保持することが可能となった。
【0015】
更に、上記難燃化した木材を石膏ボードに代表されるような不燃又は準不燃材料を基材として組み合わせることにより、難燃化した状態で部材を厚くすることができ、火災時における形状保持を強化することが可能となった。このことにより、表面側が木材となるので仕上材として木の持つ風合いを損なうことなく、且つ安全性を確保できるようになった。
【0016】
また、木材の裏面側に溝を形成することにより難燃性溶液の浸透性を増幅することができると同時に木材の反り止めの効果を奏することができ、且つ上記のように他の部材との組み合わせ連結を強固にすることを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
リン窒素化合物の水溶液としては、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸と尿素の縮合物等の1種又はこれらの混合物の水溶液とする。混入割合としては水の総重量に対して10重量%乃至50重量%が好ましい。上記リン窒素化合物は木材に対し着火抑制効果を奏することができる。
【0018】
リン酸エステル類としては、油溶性のトリアリールリン酸エステル、アルキルアリールリン酸エステル、縮合リン酸エステル、水溶性のトリアルキルリン酸エステル(例えばトリエチルホスフェート等)、環式ホスホン酸エステル化合物(例えばメトキシカルボニルメチルホスホン酸ジメチル、エトキシカルボニルメチルホスホン酸ジメチル、2−エトキシカルボニルメチルホスホン酸ジメチル等があげられる。)等の1種又はこれらの混合物である。
【0019】
上記リン窒素化合物の水溶液にリン酸エステル化合物を総重量に対して1重量%乃至30重量%に配合して難燃性溶液とする。
【0020】
木材は、その含水率が約5%乃至30%程度になるまで乾燥する。また、上記難燃性溶液を吹き付け器具或いはハケ等により木材の表面側より塗布する。
【0021】
上記難燃性溶液は浸透性に優れているので、通常の温度下で木材に塗布するだけで該木材の表面部より該難燃性溶液を沁み込ませることができる。
【0022】
また、必要に応じて既存の装置である加圧手段による加圧処理によって難燃性溶液を早期に含浸させることもできる。この際、0.1kg/cm以下では難燃性溶液の含浸がスムーズに行かないし、30kg/cm以上では木材を破壊するおそれがあるので、0.1kg/cm〜30kg/cmの範囲内の圧力が望ましい。加圧と加圧解放とを繰り返すことにより難燃性溶液を浸透させることができる。
【実施例1】
【0023】
図1に示すように、裏面に3mmの深さの溝を加工した厚さ6mmのスギ材1を含水率が約15%程度となるように乾燥し、該スギ材1にリン酸アンモニウム系化合物を水の総重量に対して40重量%混合した水溶液中にリン酸エステル化合物を総重量の10重量%配合した難燃性溶液を15℃の環境下において通常の吹き付け器具により表面側より全体に行きわたるようにして吹き付ける。
吹き付け器具としては圧力30kg/cm乃至200kg/cm、水量10L/min乃至80L/min、ノズル径0.03inch乃至0.5inchのものが使用される。
【0024】
上記難燃化したスギ材1を電子着火式強力耐風バーナーの炎を連続して30秒間所定の5箇所に当てるバーナー試験を行なった。バーナーによる火源除去後に火が消え、自己消火性を有していることが確認できた。また、当該箇所の表面側には黒化現象が見られたが、スギ材1の内側への類焼は見受けられなかった。
【0025】
更に、上記同様に難燃性溶液を塗布して難燃化したスギ材を6箇月間屋外に曝露した状態とし、上記同様のバーナー試験を行なった。その結果、自己消火性と内側への類焼が発生しなかったことが確認できた。
【実施例2】
【0026】
図2に示すように、上記同様の裏面側に3mmの深さの溝を加工した厚さ6mmのスギ材1を含水率が約15%程度となるように乾燥し、該スギ材1を厚さ10mmの石膏ボード2に難燃性接合手段により貼り付けたものを、上記実施例1と同様の試験を行なった。難燃化したスギ材1の表面側からバーナー試験を行なったが、石膏ボード2側には何等の影響もなかった。また、バーナーの熱によりスギ材1が該石膏ボード2から分離することもなく、形状を保持したことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】裏面側に溝を形成したスギ材の斜視図。
【図2】裏面側に溝を形成したスギ材の該溝側に石膏ボードを貼着した状態の斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 スギ材
2 石膏ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン窒素化合物の水溶液にリン酸エステル化合物を総重量に対して1重量%乃至30重量%に配合した難燃性溶液を木材に塗布することにより含浸させてなることを特徴とする難燃木材。
【請求項2】
水溶液は水の総重量に対してリン窒素化合物を10重量%乃至50重量%にて配合してなることを特徴とする請求項1に記載の難燃木材。
【請求項3】
厚さ3mm乃至15mmの難燃木材に石膏ボード等の不燃又は準不燃材料を組み合わせてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃木材。
【請求項4】
木材は、その裏面側に幅1mm乃至6mm、部材厚の1/2乃至1/5の深さの溝を平行状に設けたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の難燃木材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216661(P2007−216661A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107110(P2006−107110)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願変更の表示】意願2006−1035(D2006−1035)の変更
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(506030491)株式会社Bb Wood Japan (1)
【Fターム(参考)】