説明

雨水槽支管

【課題】現場に於いて、雨水槽に管体を接続する一連の施工作業を簡易に且つ効率良く行えるようにして、作業者にかかる負担を大幅に軽減する。
【解決手段】雨水槽と管体とを接続するための雨水槽支管1であって、通孔2を有するフランジ部3と、前記管体を接続するために前記通孔2に連通させて前記フランジ部3に設けられる筒状部4と、前記雨水槽に係脱自在な係止手段を有し、前記フランジ部3に設けられる取付部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水が貯留等される雨水槽に、流入管や流出管等の各種管体を接続する場合に使用される雨水槽支管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の雨水槽に流入管等の管体を接続する場合は、例えば次のようにして行なわれる。先ず、予め組立てられた雨水槽を地中の設置孔に設置した後、その側面や上面に孔開け加工を行って、流入口や取水口を形成する。その後、流入口や取水口に管体が接続されることになる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような現場に於ける雨水槽の孔開け加工は非常に厄介なものであるために、相当の作業時間を要すると共に、作業者にかかる負担が大きくなるという問題点を有していた。
【0005】
それ故に、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現場に於いて、雨水槽に管体を接続する一連の施工作業を簡易に且つ効率良く行えるようにして、作業者にかかる負担を大幅に軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雨水槽支管は、雨水槽と管体との間に接続される雨水槽支管であって、通孔を有するフランジ部と、前記管体を接続するために前記通孔に連通させて前記フランジ部に設けられる筒状部と、前記雨水槽に係脱自在な係止手段を有し、前記フランジ部に設けられる取付部とを備えたものである。
【0007】
このような雨水槽支管にあっては、その取付部の係止手段を雨水槽に係止させた後に、筒状部に管体を接続すれば、雨水槽支管を介して雨水槽と管体とを接続することができる。従って、現場に於いて雨水槽に管体取付用の孔を加工していた従来のものと比較して、一連の施工作業を極めて簡易に且つ効率良く行うことができる。加えて、孔開け加工のために使用していた機械器具の現場への搬入等も不要となるために、作業者にかかる負担が大幅に軽減される。
【0008】
尚、雨水槽支管に接続される管体としては、例えば流入管、流出管、オーバーフロー管等を挙げることができる。これにより、流入管からの雨水等は雨水槽支管を介して雨水槽内に流入し、雨水槽内からの雨水等は雨水槽支管を介して流出管又はオーバーフロー管に流出されることになる。
【0009】
また、前記取付部を、フランジ部の左右の幅方向に所定間隔を有して取付けられる一対の取付部材で構成し、該取付部材への前記フランジ部の取付位置を上下に調整できるようにしてもよい。
【0010】
これによると、フランジ部の取付位置を適宜上下に調整することにより、筒状部を介して管体の取付け高さを柔軟に変更することができる。
【0011】
更に、前記係止手段は、上下方向に所定間隔を有して取付部に設けられ、前記雨水槽に多数形成された浸透孔に係止される一対の係止片で構成してもよい。
【0012】
このような、上下一対の係止片を雨水槽の浸透孔に係止させるという作業は極めて簡易に行えるために、作業者に負担をかけるようなことはない。また、このように上下一対の係止片が雨水槽の浸透孔に係止させることにより、雨水槽支管を雨水槽に確実且つ強固に取付けることができる。また、一般に浸透孔は雨水槽に予め形成されているものであるために、その有効利用を図ることができる。
【0013】
更に、前記係止手段は、係止片に代えて係止凸部で構成することもできる。
【0014】
この場合に於いても、係止片の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
また、前記通孔及び筒状部の中心は、前記フランジ部の中心よりも上方に位置ずれするようにしても構わない。
【0016】
これによると、通孔及び筒状部を雨水槽の上部側に配置することができるために、雨水槽の容量を最大限利用することが可能になる。
【0017】
更に、前記筒状部には、管体を接続するための受口構造を備えさせることも可能である。
【0018】
これによると、種々の機能を備えた受口構造を雨水槽支管に備えさせることが可能になる。例えば、可撓受口構造としての継手等を前記筒状部に設けることにより、外力が作用して雨水槽支管に生じる振動や変位等を良好に吸収できる耐震機能を備えさせることが可能になる。特に、雨水槽支管や管体等は地中に埋設されるものであるために、このような耐震機能を備えさせておくことは大変有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現場に於いて、雨水槽に管体を接続する一連の施工作業を簡易に且つ効率的に行うことが可能となり、作業者にかかる負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る雨水槽支管を示し、(a)は正面図で、(b)は一部断面を含む側面図である。
【図2】取付部の一実施形態を示し、(a)は正面図で、(b)は背面図で、(c)は縦断面図である。
【図3】複数の管体が接続された雨水槽を示し、(a)は正面図で、(b)は側面図である。
【図4】取付部の他の実施形態を示し、(a)は正面図で、(b)は背面図で、(c)は縦断面図で、(d)は横断面図である。
【図5】貯留材の上面に管体を接続する際に使用される雨水槽支管を示す、一部断面を含む正面図である。
【図6】他の係止手段を備えた取付部材を示し、(a)は正面図で、(b)は背面図で、(c)は縦断面図である。
【図7】(a)及び(b)は他の継手を備えた雨水槽支管を示す、一部断面を含む側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る雨水槽支管1は、通孔2が形成された平板状のフランジ部3と、通孔2に連通させてフランジ部3の前面に設けられた筒状部4と、左右の幅方向に所定間隔を有してフランジ部3の背面両側に設けられた、取付部としての一対の取付部材5とを備えている。筒状部4には、受口構造としての継手6が接続され、継手6は異径部6aを有している。
【0022】
通孔2及び筒状部4の中心Oは、フランジ部3の中心O‘よりも距離Lだけ上方に位置ずれしており、通孔2及び筒状部4はフランジ部3の上部側に配されている。但し、必ずしもこのように構成する必要はなく、通孔2及び筒状部4の中心Oは、フランジ部3の中心O‘と一致させたり、下方に位置ずれさせるようにしても構わない。フランジ部3の両側には、前記取付部材5を固定するための複数の円孔10が上下方向に形成されている。
【0023】
取付部材5は、図2(c)に示すように、上部側程後方に傾斜する取付部材本体20を備えている。取付部材本体20の前面には、外周面に雄ネジ部21を有する一対のネジ杆22が、上下方向に所定間隔を有して前向きに突設されている。図1に示すように、各ネジ杆22はフランジ部3の所定の円孔10に夫々挿通され、その雄ネジ21にはナット23が締着される。これにより、一対の取付部材5がフランジ部3に固定される。通常、雨水槽支管1は、このように組立てられた状態で施工現場に搬送され、施工作業が行われる。これによれば、雨水槽支管1の取扱いが非常に簡易なものとなるために、効率良く一連の作業を行うことができる。
【0024】
また、フランジ部3の円孔10は、上下方向に間隔を有して複数形成されているので、取付部材5に対するフランジ部3の取付位置を上下に調整することができる。これによると、例えば現場に於ける急な設計変更等に対しても柔軟に対応することが可能となり、極めて有用である。但し、円孔10は必ずしも形成する必要はなく、取付部材5をフランジ部3に一体的に設けた場合等は、省略することが可能である。また、円孔10に代えて長孔を上下方向に形成するようにしても構わない。これによると、フランジ部3の取付位置を更に細かく調整することが可能になる。
【0025】
前記取付部材本体20の背面側には、上下に所定間隔を有して一対の係止片24、25が形成されている。上側の係止片24は先端部が上向きに折曲形成されており、下側の係止片25の先端部は下向きに折曲形成されている。尚、各係止片24、25は後述する貯留材31の浸透孔30に係脱自在に係止される。また、取付部材本体20の前面側には、図2(a)及び(c)に示すように、補強用のリブ26が形成されている。このリブ26は、取付部材本体20の上下両端に夫々略水平に形成される端部水平リブ26aと、各端部水平リブ26aの中央部を、前記ネジ杆22を介して結ぶように略垂直に形成される中央垂直リブ26bと、各ネジ杆22の側部に略水平に形成される水平リブ26cとからなっている。
【0026】
本実施形態に係る雨水槽支管1は、以上のように構成されている。次に、雨水槽支管1を使用して雨水槽Aに流入管Bを接続する場合について説明する。尚、雨水槽Aは、雨水を貯留すると共に、これを地中に浸透させるために地中に埋設される。この雨水槽Aは、例えば図3に示すように、側面及び上面に多数の浸透孔30を有する中空状の貯留材31を上下に段積みすると共に、左右に連結して形成される。また、貯留材31の側面32の一部は、下端部側程外方に傾斜する傾斜面で構成されている。雨水槽Aの周囲は透水シート33で覆われ、雨水槽Aの内部に土砂等が流入しないようにされる。
【0027】
先ず、流入管Bを接続すべき位置を考慮しながら、貯留材31の所定の浸透孔30に、取付部材5の上側の係止片24を係止させた状態で、下側の係止片25を他の浸透孔30に係止させる。このようなワンタッチ操作により、雨水槽支管1を雨水槽Aに確実且つ強固に取付けることができる。また、前記浸透孔30は雨水槽Aに予め形成されているものであるために、その有効利用が図れるという利点もある。傾斜状の取付部材本体20は貯留材31の傾斜面に当接し、雨水槽支管1に接続した継手6は略水平に配されることになる。次に、雨水槽支管1を取付けた雨水槽Aの一側面を透水シート33で覆う。この透水シート33には、雨水槽支管1及び継手6が挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。その後、継手6に流入管Bを挿入して接続すれば、流入管Bの雨水層Aへの取付作業は完了する。以上で説明したように、一連の施工作業を極めて簡易に且つ効率良く行うことができるために、作業者にかかる負担が大幅に軽減されることになる。
【0028】
尚、流出管C及びオーバーフロー管Dについても同様にして、雨水槽Aに接続すればよい。図3に示すように、本実施形態では流出管Cを雨水槽Aの下部側に接続し、オーバーフロー管Dを上部側に接続している。
【0029】
上述したように、通孔2及び筒状部4の中心Oは、フランジ部3の中心O‘よりも距離Lだけ上方に位置ずれさせているので、これら両中心O、O’を一致等させた場合と比較して、オーバーフロー管D等の各管体を雨水槽の上部側に配置させることが可能になる。これにより、雨水槽Aを無駄なく、その容量を最大限利用できるようになる。
【0030】
尚、取付部材5は、必ずしも上記実施形態のように構成する必要はなく、例えば図4に示すように構成してもよい。この取付部材5は、平板状の取付部材本体20の外周にリブ26が形成され、両側部のリブ26dは上部側程後方に傾斜するように構成されている。また、取付部材本体20には、上下に所定間隔を有してボルト27が挿通される一対の円孔28が形成されており、その上下にはボルト27の頭部27aに係合する回り止め用のストッパー28が対向配置されている。これは、ネジ杆22に代えて別体のボルト27を用いたものである。
【0031】
また、本発明に係る雨水槽支管1は、流入管B等を貯留材31の平坦な上面に接続することもできる。この場合は、例えば図5に示すように、取付部材5を平板状に形成すればよい。その他の部分については上記実施形態と同様に構成されており、係止片24、25を貯留材31の上面に形成された浸透孔30に係止させて取付ける。
【0032】
更に、取付部材5に設けられる係止手段は、上記実施形態のような係止片24、25に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、上下に所定間隔を有して一対の係止凸部40を取付部材本体20に設けて係止手段とし、これを貯留材31の浸透孔30に係止させて取付けるようにしてもよい。この場合は、係止凸部40の先端部外周縁に離脱防止用の凸状部41を形成しておくのが好ましい。本発明に於ける係止手段は、係止対象となる雨水槽Aの構成に応じて任意な変更が可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、フランジ部3とは別体に形成された一対の取付部材5を取付部として構成しているが、取付部はフランジ部3と一体的に形成しても構わない。これによると、部品点数の削減及び組立作業の簡略化を図ることができる。
【0034】
更に、上記実施形態に於いては、雨水槽支管1の筒状部4に受口構造として別体の継手6を設けているが、これを省略して直接管体を筒状部4に接続することも可能である。即ち、筒状部4それ自体が受口構造を構成するようにしても構わない。但し、受口構造として継手6を介して管体を接続する場合は、次のような継手6を筒状部4に設けてもよい。図7(a)に示す継手6は、上記実施形態の継手6と同様の構成からなる第1継手6bと、これに接続される第2継手6cとを備えている。第2継手6cの内周面には、凹状球面部50が形成されており、これに球面摺動自在な凸状球面部51を外周面に有するリング52が嵌入されている。リング52に挿着された管体は、継手6を介して雨水槽Aに回動自在に接続されることになる。また、図7(b)に示す継手6は、上記のものと同様の第1継手6bと、これに接続される第2継手6cと、更にこれに接続されるゴム製の第3継手6dとを備えている。ゴム製の第3継手6dは可撓性を備えているために、これに挿着された管体は継手6を介して雨水槽Aに接続されることになる。このような継手6を雨水槽支管1に設けることにより、例えば外力が作用して雨水槽支管1に生じる振動や変位等を良好に吸収できる耐震機能を備えさせることが可能となる。特に、雨水槽支管1や管体等は地中に埋設されるものであるために、このような耐震機能を備えさせておくことは大変有効である。また、雨水槽支管1には、管軸方向に伸縮自在な継手6を設けても構わない。
【0035】
更に、この種の雨水槽Aや雨水槽支管1等の材質は、一般に塩化ビニルやその他の合成樹脂とされるが、本発明は決してこれに限定されない。
【0036】
その他、雨水槽A及び雨水槽支管1を構成する各部に形状や、一連の施工手順等の具体的な構成も本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0037】
1 雨水槽支管
2 通孔
3 フランジ部
4 筒状部
5 取付部材
24 係止片
25 係止片
30 浸透孔
40 係止凸部
A 雨水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水槽と管体とを接続するための雨水槽支管であって、
通孔を有するフランジ部と、
前記管体を接続するために前記通孔に連通させて前記フランジ部に設けられる筒状部と、
前記雨水槽に係脱自在な係止手段を有し、前記フランジ部に設けられる取付部と、を備えた雨水槽支管。
【請求項2】
前記取付部が、前記フランジ部の左右の幅方向に所定間隔を有して取付けられる一対の取付部材からなり、該取付部材への前記フランジ部の取付位置が上下に調整可能な請求項1記載の雨水槽支管。
【請求項3】
前記係止手段は、上下方向に所定間隔を有して前記取付部に設けられ、前記雨水槽に多数形成された浸透孔に係止される一対の係止片からなる請求項1又は2記載の雨水槽支管。
【請求項4】
前記係止手段は、上下方向に所定間隔を有して前記取付部に設けられ、前記雨水槽に多数形成された浸透孔に係止される一対の係止凸部からなる請求項1又は2記載の雨水槽支管。
【請求項5】
前記通孔及び筒状部の中心が、前記フランジ部の中心よりも上方に位置ずれしている請求項1〜4の何れか一つに記載の雨水槽支管。
【請求項6】
前記筒状部は、管体を接続するための受口構造を備えている請求項1〜5の何れか一つに記載の雨水槽支管。
【請求項7】
前記受口構造は、作用した外力による変動に追随できるように前記管体を接続可能な請求項6記載の雨水槽支管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−17212(P2011−17212A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163466(P2009−163466)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】