説明

電力ケーブル用接続部およびその絶縁栓

【課題】 複数の異なる接続部に合う多くの種類の絶縁栓の在庫を減らし、それらの保管やメンテナンスの経費を削減することが可能な絶縁栓を備えた電力ケーブル用接続部およびその絶縁栓を提供することにある。
【解決手段】 複数の電力ケーブル1接続部を装着する複数の挿入孔44が形成された絶縁ユニット4と、その絶縁ユニット4の内部に埋込まれ挿入孔44と接触状態で連通する複数の接続穴42が形成された内部導体43と、その挿入孔44および接続穴42に電力ケーブル1の導体が接続されてなる電力ケーブル用接続部において、絶縁ユニット4の挿入孔口44aを閉塞するように形成された保護部材18と絶縁ユニット4の挿入孔44と内部導体43の接続穴42および保護部材18により形成された内部空間に充填された絶縁材料12とからなる絶縁栓10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル用接続部に関し、特に、プラスチック電力ケーブルや油入り電力ケーブル等を相互に電気的に接続するのに用いられる分岐接続部で、ケーブル線路の遮断を簡便に行える絶縁栓を備えた電力ケーブル用接続部とその絶縁栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル用分岐接続部、例えば、Y分岐接続部は、2本の送配線路の幹線電力ケーブルと1本の需要家への分配線路の分岐電力ケーブルを接続してケーブル線路の1線路を2線路に分岐するのに用いられる。
【0003】
このY分岐接続部において、分岐が不要であるか、又は1線路を使用せず遮断するような場合には、接続された分岐ケーブル1本を抜き取り、その部分に絶縁体からなる絶縁栓を取付けることで、Y分岐接続部としての絶縁性能が維持され、そのまま使用できる。
【0004】
図4は、従来の絶縁栓を備えた電力ケーブル用Y分岐接続部の概略構成図(一部断面)を示す。図5は、従来の絶縁栓および絶縁栓ユニット構造の概略構成図を示す。
【0005】
3本の電力ケーブル1を接続する電力ケーブル用Y分岐接続部100は、2本の幹線電力ケーブル1Aと1本の分岐電力ケーブル1B(図示せず)を接続させるためにそれらの導体を圧縮接続した導体接続管41を挿入・接触することで電気的な接続が行なえるように3つの接続穴42を設けたエポキシユニット埋込電極43(内部導体)を埋め込んだエポキシ樹脂製のエポキシユニット4、エポキシユニット4の外周に設置した金属ケース2、エポキシユニット埋込電極43の3つの接続穴42と接触状態で連通するエポキシユニット4の3つの挿入孔44の内周面に電力ケーブル1を接続した時の絶縁性能を維持できるようゴム製のプレモールド絶縁体5、押しパイプ7(プレモールド絶縁体圧縮装置)などを設けたものである。
【0006】
この1つの挿入孔44と接続穴42に分岐電力ケーブル1Bを接続せず、分岐電力ケーブル1Bに換えて設けたエポキシ絶縁体6、エポキシ絶縁体6に合わせたプレモールド絶縁体5とそれに合わせた押しパイプ7(プレモールド絶縁体圧縮装置)、保護金具8、および保護金具8の外周を覆うポリ塩化ビニル樹脂(PVC)カバー17からなる絶縁栓50を設けたものが図4、図5に示す絶縁栓を備えた電力ケーブル用Y分岐接続部100である。
【0007】
この従来のY分岐接続部100の絶縁栓50は、ゴム製のプレモールド絶縁体5、エポキシ絶縁体6(エポキシ製の絶縁棒)、押しパイプ7(プレモールド絶縁体圧縮装置)、保護金具8、およびPVCカバー17などから構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図4に示すとおり、1本の分岐電力ケーブル1を抜いたエポキシユニット4の挿入孔44とエポキシユニット埋込電極43の接続穴42にプレモールド絶縁体5およびエポキシ絶縁棒6を挿入し、押しパイプ7(プレモールド絶縁体圧縮装置)でプレモ―ルド絶縁体5およびエポキシ絶縁棒6をエポキシユニット4とエポキシユニット埋込電極43に押し付け、圧縮接続させて絶縁性能を維持し、それらの外周に保護金具8を被せた構造となっている。そして、保護金具8の外周は、PVCカバー17で覆われている。
【0009】
これらの電力ケーブル用Y分岐接続部を構成する絶縁栓は、Y分岐接続部全体の寸法に合わせた寸法のものであるため、寸法の異なるY分岐接続部には流用出来ない。また、複数の異なるY分岐接続部に合う異なる寸法の絶縁栓が必要になるため、多くの種類の絶縁栓を保管・管理しなければならなかった。
【特許文献1】特開平7−59243号公報(段落番号[0005]、[図3])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したとおり、従来の絶縁栓は寸法の異なるY分岐接続部には流用は出来ず、複数の異なる分岐接続部に合う絶縁栓が必要になることから、多くの種類の絶縁栓を保管・管理しなければならず、それらの保管場所の確保・維持やメンテナンスには多くの経費が掛かっていた。
【0011】
従って、本発明の目的は、複数の異なる接続部に合う多くの種類の絶縁栓の在庫を減らし、それらの保管やメンテナンスの経費を削減することが可能な絶縁栓を備えた電力ケーブル用接続部とその絶縁栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、複数の電力ケーブル接続部を装着する複数の挿入孔が形成された絶縁ユニットと、当該絶縁ユニットの内部に埋込まれ前記挿入孔と接触状態で連通する複数の接続穴が形成された内部導体とを有し、前記挿入孔および前記接続穴に電力ケーブルの導体が接続されてなる電力ケーブル用接続部において、前記絶縁ユニットの挿入孔口を閉塞するように形成された保護部材と、前記絶縁ユニットの前記挿入孔、前記内部導体の前記接続穴および前記保護部材により形成された内部空間に充填された絶縁材料とを含んで構成される絶縁栓を備えていることを特徴とする電力ケーブル用接続部を提供する。
【0013】
また、複数の電力ケーブル接続部を装着する複数の挿入孔が形成された絶縁ユニットと、当該絶縁ユニットの内部に埋込まれ前記挿入孔と接触状態で連通する複数の接続穴が形成された内部導体とを有し、前記挿入孔および前記接続穴に装着される電力ケーブル用接続部の絶縁栓において、前記絶縁ユニットの挿入孔口を閉塞するように形成された保護部材と前記絶縁ユニットの前記挿入孔と前記内部導体の前記接続穴および前記保護部材により形成された内部空間に充填された絶縁材料とを備えていることを特徴とする電力ケーブル用接続部の絶縁栓を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の異なる接続部に合う多くの種類の絶縁栓用構成部品の在庫を減らし、それらの保管やメンテナンス経費を削減することが可能な絶縁栓を備えた電力ケーブル用接続部およびその絶縁栓を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔本発明の第1の実施の形態〕
本実施の形態に係る電力ケーブル用接続部は、複数の電力ケーブル接続部を装着する複数の挿入孔が形成された絶縁ユニットと、当該絶縁ユニットの内部に埋込まれ前記挿入孔と接触状態で連通する複数の接続穴が形成された内部導体とを有し、前記挿入孔および前記接続穴に電力ケーブルの導体が接続されてなる電力ケーブル用接続部において、前記絶縁ユニットの挿入孔口を閉塞するように形成された保護部材と、前記絶縁ユニットの前記挿入孔、前記内部導体の前記接続穴および前記保護部材により形成された内部空間に充填された絶縁材料とを含んで構成される絶縁栓を備えていることを特徴とする。
【0016】
使用する絶縁材料は、液体としては入手性および信頼性を考慮すると、油入り電力ケーブルまたはプラスチック電力ケーブル等で使用されている絶縁油(OFケーブル油、合成油、シリコン油等)が最適であり、また気体としては絶縁強度が良く、遮断機などで使用されているSF6ガスが最適である。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る絶縁栓を備えた電力ケーブル用分岐接続部で、その絶縁栓と絶縁栓ユニットの概略構成図を示す。図2は、図1における主要部の拡大図を示す。
【0018】
本実施の形態に係る絶縁栓を備えた電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓10および絶縁栓ユニット19は、図1および図2に示すとおりである。
絶縁栓10は、エポキシユニット4の挿入孔口44aを閉塞するように形成された保護金具18とエポキシユニット4の挿入孔44とエポキシユニット埋込電極43の接続穴42が連通し接触状態で形成され、その挿入孔44、接続穴42および保護金具18により形成された内部空間に絶縁油12を充填し封入した構造であり、かつ、保護金具18をエポキシユニット4から延びた位置に配設させ、そのエポキシユニット4の外周を覆うように設けられる。そして、絶縁栓10は連通した挿入孔44と接続穴42および保護金具18の内部空間を形成するために、金属ケース2のフランジ3に保護金具18が取付けられ、更に、保護金具18に取付けたコネクター9から絶縁油12がエポキシユニット4の内面よりも同等以上の高い位置の油面となるまで内部空間に充填され封入される。保護金具18の外周は、PVCカバー17で覆われている。なお、内部空間に絶縁油12を充填し封入した構造を図示したが、絶縁ガスを充填し封入した構造等であってもよい。
【0019】
また、絶縁材料として絶縁油12を使用する場合、絶縁栓10の保護金具18に形成されたコネクター9と、絶縁油12が流通可能な給油管11を介してコネクター9に接続されるリザーバー13とからなる構成部品の絶縁栓ユニット19が取り付けられる。
【0020】
すなわち、絶縁油12を使用する場合、温度変化による絶縁油12の膨張収縮を考慮して、図1に示すような絶縁油リザーバー13等を設け、電界が加わるエポキシユニット4およびエポキシユニット埋込電極43に空隙が生じて絶縁性能を低下させないようにする。
【0021】
〔第1の実施の形態の効果〕
上記の本発明の第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)どのような形状寸法の分岐接続部にもフィットするような形状とし、かつ絶縁強度の優れた液体または気体の絶縁材料からなる絶縁栓であることから、従来の絶縁栓を構成するエポキシ製絶縁棒および固形のプレモールド絶縁体、プレモールド絶縁体圧縮装置などの絶縁栓構成部品が不要となり、絶縁材料と分岐接続部の仕様毎に異なる保護金具だけを準備しておけば良い。すなわち、その他の絶縁栓構成部品は不要であるか、若しくは共通に使用できることから、異なる分岐接続部に合う絶縁栓の在庫を減らすことができ、保管やメンテナンスの経費を削減することが可能な電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓を提供できる。
【0022】
(2)絶縁栓の一構成として絶縁油または絶縁ガスの絶縁材料を使用するため、従来の絶縁栓の絶縁ゴムまたはエポキシ樹脂等の絶縁固形材料を不要とし、かつ絶縁性能保持のための絶縁ゴムを圧縮密着させるスプリングを用いた圧縮装置等をも不要とした簡易な構造の電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓を提供できる。
【0023】
(3)従来の絶縁栓のプレモールド絶縁体やエポキシ絶縁棒は長期保管ができないのに対して、保護管は金属製のため長期保管が可能であり、また、絶縁油や絶縁ガスは入手が容易で保管の必要性がないため、緊急時であっても迅速な対応が可能である。
【0024】
〔本発明の第2の実施の形態〕
図3は、本発明の実施の形態に係る絶縁栓を備えた電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓の概略構成図であり、以下に、第2の実施の形態について第1の実施の形態と相違する部分を中心に説明する。
【0025】
本実施の形態に係る電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓20は、第1の実施の形態に係る電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓10と同様に、温度変化により膨張収縮する液体である絶縁油12を使用する場合の構造を例示するものである。
【0026】
図3に示すとおり、絶縁栓20には、エポキシユニット4から延びた位置に保護金具18Aが配設され、コネクター9のある保護金具18Aの部分に、絶縁油12の液面がエポキシユニット4の内面よりも同等以上の高い位置に存在できるようにエアチャンバ15が形成されている。
【0027】
すなわち、絶縁油12を使用する場合、温度変化による絶縁油12の膨張収縮を考慮して、電界の掛からない位置にエアチャンバ15を設けた絶縁栓構造とする(温度低下により絶縁油が収縮した場合でもエポキシユニット内面以上の絶縁油面となるようにする)。これにより、エアチャンバ15内の上部にのみ空隙14が存在するようにすることができる。
【0028】
〔第2の実施の形態の効果〕
上記の本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果のほかに下記の効果を奏する。
(1)電界の掛からない位置にエアチャンバ15を有する絶縁栓とした(温度低下により絶縁油が収縮した場合でもエポキシユニット内面以上の絶縁油面となるようにした)ことにより、エアチャンバ15内の上部にのみ空隙14が存在するようにすることができ、絶縁破壊の危険性も生じないような電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓を提供できる。
【0029】
〔本発明のその他の実施の形態〕
(1)上記実施の形態においては、液体である絶縁油12を絶縁材料として使用した例を説明したが、溶融したゴム等の流動性を有する固形物を絶縁材料として用いることもできる。
【0030】
(2)上記実施の形態においては、絶縁栓とその絶縁栓ユニットを備えた電力ケーブル用Y分岐接続部およびその絶縁栓を説明したが、そのほかの電力ケーブル用分岐接続部にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る絶縁栓を備えた電力ケーブル用分岐接続部で、その絶縁栓と絶縁栓ユニットの概略構成図を示す。
【図2】図1における主要部の拡大図を示す。
【図3】本発明の実施の形態に係る絶縁栓を備えた電力ケーブル用分岐接続部およびその絶縁栓の概略構成図である。
【図4】従来の絶縁栓を備えた電力ケーブル用Y分岐接続部の概略構成図(一部断面)を示す。
【図5】従来の絶縁栓構造の概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0032】
1:電力ケーブル(1A:幹線電力ケーブル)
2:金属ケース
3:フランジ
4:エポキシユニット
41:導体接続管
42:接続穴
43:エポキシユニット埋込電極
44:挿入孔
44a:挿入孔口
5:プレモールド絶縁体
6:エポキシ絶縁棒(エポキシ絶縁体)
7:押しパイプ(プレモールド絶縁体圧縮装置)
8,18,18A:保護金具
9:コネクター
10,20,50:絶縁栓
11:給油管
12:絶縁油
13:リザーバー
14:空隙部
15:エアチャンバ
17:PVCカバー
19:絶縁栓ユニット
100:電力ケーブル用Y分岐接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力ケーブル接続部を装着する複数の挿入孔が形成された絶縁ユニットと、当該絶縁ユニットの内部に埋込まれ前記挿入孔と接触状態で連通する複数の接続穴が形成された内部導体とを有し、前記挿入孔および前記接続穴に電力ケーブルの導体が接続されてなる電力ケーブル用接続部において、
前記絶縁ユニットの挿入孔口を閉塞するように形成された保護部材と、前記絶縁ユニットの前記挿入孔、前記内部導体の前記接続穴および前記保護部材により形成された内部空間に充填された絶縁材料とを含んで構成される絶縁栓を備えていることを特徴とする電力ケーブル用接続部。
【請求項2】
前記絶縁栓は、前記保護部材を前記絶縁ユニットの延設位置に配設させ、その絶縁ユニットの外周を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項3】
前記絶縁栓は、前記保護部材に形成されたコネクターと、前記絶縁材料が流通可能な接続管を介して前記コネクターに接続されるリザーバーとを含んで構成された絶縁栓ユニットを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項4】
前記絶縁栓は、前記絶縁ユニットの延設位置に配設させた前記保護部材の一部に、前記絶縁材料の界面が前記絶縁ユニットの内面よりも高い位置に存在できるように形成されたチャンバを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項5】
前記絶縁材料は、液体、気体または流動性を有する固形物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項6】
複数の電力ケーブル接続部を装着する複数の挿入孔が形成された絶縁ユニットと、当該絶縁ユニットの内部に埋込まれ前記挿入孔と接触状態で連通する複数の接続穴が形成された内部導体とを有し、前記挿入孔および前記接続穴に装着される電力ケーブル用接続部の絶縁栓において、
前記絶縁ユニットの挿入孔口を閉塞するように形成された保護部材と前記絶縁ユニットの前記挿入孔と前記内部導体の前記接続穴および前記保護部材により形成された内部空間に充填された絶縁材料とを備えていることを特徴とする電力ケーブル用接続部の絶縁栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−221909(P2007−221909A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39209(P2006−39209)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】