説明

電力ケーブル用接続部

【課題】地中に布設された電力ケーブルの接続部を改修するに際し、既設ケーブルを活用して新たなケーブル布設作業を行うことなく、改修作業の容易化及び効率化を図ることができる電力ケーブル用接続部を提供することである。
【解決手段】2本の電力ケーブル11,12のケーブル導体11a,12a端部を接続するケーブル導体接続管2と、ケーブル端末部11A,12A及びケーブル導体接続管2の外周を覆い囲繞するゴムブロック絶縁体3との電力ケーブル用接続部1であり、ケーブル導体接続管2は両端部で各導体端部を圧縮して接続する圧縮部2b,2cと各圧縮部の間の中央部に設けられ、ケーブルの軸線方向における長さが圧縮部の長さよりも長い非圧縮部2aとで形成され、ゴムブロック絶縁体3の内部半導電層3aの長さはケーブル導体接続管2の非圧縮部2aの長さに対応する寸法により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル用接続部に関し、特に地中送電用の電力ケーブル同士を接続する場合に、ケーブル同士の再接続やケーブルオフセット部の再構築などの改修作業を容易に行うことができる電力ケーブル用接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に布設された既設電力ケーブルの中間接続部においては、経年により絶縁性能が低下した場合、接続部材を修理あるいは新品に取り替えるなど必要に応じて改修作業が行われる。また、絶縁破壊事故が発生した場合には、ケーブル端末部を含めてその接続部材の絶縁破壊箇所を除去し、新規に中間接続部を接続する等の改修作業を行い早期に送電線路を復旧する必要がある。
【0003】
また、電力ケーブルの既設線路には、布設されているケーブル全体の伸縮挙動を吸収することができるようにケーブルをスネーク状にしている(滑らかに蛇行された態様にした)余長部のケーブルオフセット部が線路全体のマンホール内に設けられている。このようなケーブルオフセット部では、ケーブルの経年布設によって伸縮作用が働き、管路間でのケーブルの長手方向の移動等によりケーブルオフセット部がなくなってケーブル全体が直線状にピーンと緊張してしまった場合には、ケーブルオフセット部を再構築する必要がある。
【0004】
2本の電力ケーブル同士を接続する中間接続部の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたケーブル接続部がある。図3は、この従来のケーブル109,110のケーブル用接続部111において、ケーブル導体109a,110aの端部同士を接続するケーブル導体接続管20とゴムブロック絶縁体30との構造を示す断面図である(ケーブル中心軸線の下半分を図示略)。この従来のケーブル用接続部111によると、ケーブル導体接続管20は、中央部の非圧縮部20aと、非圧縮部20aの両端部でケーブル導体110aを嵌挿させる圧縮部20bとを備えて構成され、接続方向(ケーブルの軸線方向)における非圧縮部20aの長さは、圧縮部20bよりも短く形成されている。具体的な寸法としては、圧縮部20bの長さが40〜60mmであるのに対し、非圧縮部20aの長さが8mmと短い。また、ゴムブロック絶縁体30は、ケーブル導体接続管20とケーブル109,110のケーブル端末部109A,110Aとの外周を覆いながら囲繞するように形成されている。さらに、図示しない保護管は、ゴムブロック絶縁体3及びケーブル端末部109A,110Aのケーブル109,100側両端部の外周を覆いながら、これらを収容するように形成されており、2分割の構造に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−10464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の非圧縮部20aの長さの短い寸法のケーブル導体接続管20からなる電力ケーブル用の中間接続部111では、絶縁性能が低下した接続部の改修、または絶縁破壊事故が発生した接続部を改修するときは、既設のケーブル端末部109A,110Aの部分を切断して、除去されるが、そのときケーブル端末部109A,110Aは多少長めに切断される。そして切断したケーブル端末部109A,110Aを補充する手段として、上記で述べたような長さの制限されたスネーク形状のケーブルオフセット部を用いたり、または管路内に移動した部分を利用するために管路からケーブルを引き出して用いたり、あるいはケーブルオフセット部と引き出したケーブルとの両方を用いたりすることが考えられるが、管路からケーブルを引き出すことは、通常不可能である。
【0007】
しかるに、上記ケーブル端末部109A,110Aの切断された部分の長さをケーブルオフセット部の長さによって補充できる場合はよいが、その切断された部分の寸法の方がケーブルオフセット部の寸法よりも常に長くなってしまう。そのためケーブルオフセット部での吸収は不可能となり、さらにこの不足分をケーブル導体接続管20で補おうとするとケーブル導体接続管20が元々短い寸法であることから不足分全体をカバーすることができず再接続による改修はできなかった。
【0008】
また、中間接続部を再接続するのに必要な長さのケーブルオフセット部に余裕がなくてそのまま使用し、管路内に移動した部分が少なくケーブル109,110を管路内からマンホール内に引き出すことができない場合には、布設されていた管路内の既設ケーブル109,110を取り除いて撤去し、新規ケーブルに張り替えなければならない工事を伴うという問題もある
【0009】
さらに、従来の電力ケーブル用中間接続部の保護管は2分割構造であるため、狭いマンホール内でケーブル109,110の再接続作業または再接続作業とケーブルオフセット部の再構築作業を同時にする場合において、その接続部の組み立て工程は、初めにゴムブロック絶縁体30とそのゴムブロック絶縁体30の外周に設ける保護管とをケーブル109,110に挿入後、一旦ケーブルオフセット部手前の直線部まで退避させる。そして、ケーブル導体109a,110a同士を接続してケーブル導体接続管20を形成する。さらにケーブルオフセット部手前の直線部まで退避していたゴムブロック絶縁体30と保護管とをケーブル導体接続管20の真ん中にくるように戻し、その外周にゴムブロック絶縁体30と保護管とを設けます。上記工程のケーブルオフセット部へ一時退避させる保護管は、2分割であるがゆえに、1つの構成部材が長尺となるため、ケーブルオフセット部より後方に保護管を逃がす必要がある場合、保護管がケーブルオフセット部の曲がり部に当たってしまうことになり、ケーブルオフセット部より後方に逃がせなく、接続部の再接続作業を阻害し効率よく行えないという問題があった。
【0010】
さらに、既設ケーブル109,110の切断、除去した分の不足分の長さを補うために、短い新規ケーブルを布設した場合、既設中間接続部の他に、もう一箇所中間接続部を割り入れる割入れ作業が必要となり、改修作業に非常に時間が掛かるという問題もある。また、マンホールの大きさの制約から、短いケーブルを割りいれることができない場合が大半である。
【0011】
従って、本発明の目的は、地中に布設された電力ケーブル用接続部を改修するに際し、既設ケーブルを活用して新たなケーブル布設作業を行うことなく、改修作業の容易化及び効率化を図ることができる電力ケーブル用接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、2本のケーブル端末部の導体端部を両端部で接続するケーブル導体接続管と、前記ケーブル端末部及び前記ケーブル導体接続管の外周を覆いながら囲繞するゴムブロック絶縁体とを、備える電力ケーブル接続部であって、前記ケーブル導体接続管は、前記各導体端部を圧縮して接続する圧縮部と、前記各圧縮部の間の中央部に設けられ、ケーブルの軸線方向における長さが前記圧縮部の長さよりも長い非圧縮部とで形成され、前記ゴムブロック絶縁体の内部半導電層の長さは、前記ケーブル導体接続管の非圧縮部の長さに対応する寸法により形成されていることを特徴とする電力ケーブル接続部を提供する。
【0013】
[2]また、前記ケーブル導体接続管と前記ゴムブロック絶縁体とを覆いながら収容する保護管を備え、当該保護管は、3分割以上の多分割構造を有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、既設中間接続部を改修する際に、既設ケーブルを活用して新たなケーブル布設作業を行うことなく、改修作業の容易化及び効率化を図ることができる。また、ケーブルオフセット部の再構築を効率よく実施でき、改修作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部を示す一部断面図である。
【図2】図1の本発明に係る電力ケーブル用接続部を構成するケーブル導体接続管、ゴムブロック絶縁体の部分を中心に拡大して示す断面図である。
【図3】従来技術によるケーブル接続部のケーブル導体接続管、ゴムブロック絶縁体の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態による電力ケーブル用接続部1の一部断面図であり、ケーブル中心軸線から上半分のみの断面内部構造を示している。また、図2は、図1におけるケーブル導体接続管とゴムブロック絶縁体の部分を中心に拡大して示す断面図である。なお、図2においては、ケーブル中心軸線から上半分の断面のみが示され、その下半分が省略されている。
【0018】
送電線路内に布設される2本の電力ケーブル11,12同士をマンホール内で中間接続する電力ケーブル用接続部1は、ケーブル導体接続管2と、ゴムブロック絶縁体3と、防水コンパウンド4と、保護管5(5a〜5d)とを備えて概ね構成されている。電力ケーブル11,12のケーブル端末部11A,12Bは、中心部のケーブル導体11a,12aを、ケーブル絶縁体11b,12b、ケーブル外部半導電層11c,12c及びケーブル遮蔽層11d,12dの各端部が順次段剥ぎ露出され、これらの構成からなる。
【0019】
(ケーブル導体接続管2の構成)
ケーブル導体接続管2は、図2に示されるように、細長い円柱状の導電金属部材からなり、両端部にケーブル導体11a,12aを嵌挿させる有底の嵌挿孔2d,2eが形成されている。この嵌挿孔2d,2eが形成された両端部分が圧縮部2b,2cとなっており、両圧縮部2b,2cの間の中央部である導体部分が非圧縮部2aとなっている。電力ケーブル11,12のケーブル導体11a,12aの端部は、嵌挿孔2d,2eにそれぞれ嵌挿、非圧縮部2aに当接される。さらにその圧縮部2b,2cを外部から圧縮することにより、ケーブル導体接続管2に圧着されている。
【0020】
本発明の実施の形態では、ケーブル導体接続管2の非圧縮部2aの接続方向(ケーブルの軸線方向)における長さLcを圧縮部2bの接続方向の長さLtよりも長く、全長を従来の導体接続管よりも250mm〜350mm程度長くしている。たとえば、導体サイズが400mmのケーブルに用いる場合、非圧縮部2aの長さLcを288mm、圧縮前の圧縮部2b,2cの長さLtを41mmとし、導体サイズが600mmのケーブルの場合には、非圧縮部2aの長さLcを328mm、圧縮前の圧縮部2b,2cの長さLtを54mmとしている。
【0021】
(ゴムブロック絶縁体3の構成)
ゴムブロック絶縁体3は、中空円筒状を有しており、内側から内部半導電層3a、絶縁性のゴムからなるゴム絶縁層3b、外部半導電層3cが順に績層して形成されている。ゴムブロック絶縁体3は、ケーブル導体11a,12aを接続したケーブル導体接続管2及びケーブル端末部11A,12Bとの外周を覆いながら、それら全体を囲繞するように形成されている。そして、図示しない拡径治具を用いて拡径され、ケーブル導体接続管2とケーブル端末部11A,12Bが差し込み装着される。
【0022】
また、ケーブル導体接続管2の外周面には、ケーブル絶縁体11b,12bの外径と同じ寸法になるように図示しない半導電性テープが巻回され、ゴムブロック絶縁体3の内部半導電層3aと密接に接触している。さらに、ケーブル外部半導電層11c,12cにゴムブロック絶縁体3の外部半導電層3cが常に密接に接触するように形成される。
【0023】
また、ケーブル導体接続管2は、その非圧縮部2aの長さを従来のものよりも長い寸法となるように形成したことに伴い、ゴムブロック絶縁体3も全体が従来よりも250mm〜350mm程度長く形成される。すなわち、ケーブルの軸線方向に延伸化されたケーブル導体接続管2の非圧縮部2aの長さに応じるようにゴムブロック絶縁体3はその構成する1つの層の長さを一致させるものである。そして、一致させるゴムブロック絶縁体3の1つの層は、内側にあって中央部に位置する内部半導電層3aであり、ケーブル導体接続管2の非圧縮部2aに対応する長さで概ね同じ寸法長く形成される。このため、ゴムブロック絶縁体3の全長に対して、内部半導電層3aの全長が占める割合は、従来の約40%に比べて、約60%と大きくなっている。
【0024】
(保護管5の構成)
保護管5は、金属層と防食層からなる2層構造の筒体によって形成されており、ゴムブロック絶縁体3及びケーブル端末部11A,12Bの電力ケーブル11側両端部の外周を取り囲むように覆いながら、これらを収容するように設けられる。保護管5(5a〜5d)は、図1に示されるように4分割構造となっており、それぞれ分割された構成部材が保護管接続用のビス6a,6b,6cで接続されている。保護管5とゴムブロック絶縁体3との間には、水密性を維持するための防水コンパウンド4が充填されている。
【0025】
ケーブル導体接続管2及びゴムブロック絶縁体3を従来のものよりも長く形成したのに伴い、保護管5も従来よりも長く形成されている。また、保護管5(5a〜5d)を4分割の多分割構造としたことも本発明の実施の形態の特徴としてある。
【0026】
(実施の形態による効果)
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0027】
(1)地中に布設された電力ケーブル11、12用接続部1を改修するに際し、既設のケーブル11,12を活用することが可能となり、新たなケーブル布設作業を行わなくてもよい。これにより、狭いマンホール内でのケーブルの引き回し作業、ケーブルオフセット部の再構築作業、及び接続部の再接続作業などの各種作業または新規ケーブルの張り替工事が不要となり、改修作業の容易化及び効率化を図ることができる、
【0028】
(2)また、既設の電力ケーブル11、12のケーブルオフセット部の再構築を効率よく実施でき、各ケーブル間に設けられる電力ケーブル用接続部1の改修作業時間を短縮することができる。
【0029】
(3)また、ケーブル導体接続管2全体を従来のものよりも250mm〜350mm程度、寸法を長くしたことにより、既設の電力ケーブル用接続部1を改修する際に必要となる、ケーブル再処理寸法を確保することができる。また、ケーブル導体接続管2においては、非圧縮部2aのみの寸法を従来品よりも長くし、圧縮部2c,2cの寸法や構造等には変更を加えないことにより、圧縮作業における施工性や機械的強度(引張強度等)が従来と同等程度に維持される。
【0030】
(4)また、ゴムブロック絶縁体3においては、内部半導電層3aのみをケーブル導体接続管2の非圧縮部2aに対応して250mm〜350mm程度寸法を長くし、電界が集中する外部半導電層3c及びゴム絶縁層3bの寸法や構造等には変更を加えないことにより、従来品と同等の電気的性能が維持される。
【0031】
(5)また、保護管5を従来の2分割構造から4分割の多分割構造としたことにより、1つの構成部材の長さが逆に短くなり、電力ケーブル用接続部1の組み立て時において、保護管5をケーブルオフセット部の曲がり部より後方まで退避させることができる。よって、その接続部の再接続作業を効率よく行うことができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、保護管を4分割としたが、3分割あるいは5分割以上でもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…電力ケーブル用接続部、2…ケーブル導体接続管、2a…非圧縮部、2b,2c…圧縮部、2d,2e…嵌挿孔、3…ゴムブロック絶縁体、3a…内部半導電層、3b…ゴム絶縁層、3c…外部半導電層、4…防水コンパウンド、5,5a〜5d…保護管、6a〜6c…ビス、11,12…電力ケーブル、11a,12a…ケーブル導体、11b,12b…ケーブル絶縁体、11c,12c…ケーブル外部半導電層、11d,12d…ケーブル遮蔽層、ケーブル端末部11A,12B、20…ケーブル導体接続管、20a…非圧縮部、20b…圧縮部、30…ゴムブロック絶縁体、111…ケーブル用接続部、109,110…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のケーブル端末部の導体端部を両端部で接続するケーブル導体接続管と、前記ケーブル端末部及び前記ケーブル導体接続管の外周を覆いながら囲繞するゴムブロック絶縁体とを、備える電力ケーブル接続部であって、
前記ケーブル導体接続管は、前記各導体端部を圧縮して接続する圧縮部と、
前記各圧縮部の間の中央部に設けられ、ケーブルの軸線方向における長さが前記圧縮部の長さよりも長い非圧縮部とで形成され、
前記ゴムブロック絶縁体の内部半導電層の長さは、前記ケーブル導体接続管の非圧縮部の長さに対応する寸法により形成されていることを特徴とする電力ケーブル用接続部。
【請求項2】
前記ケーブル導体接続管と前記ゴムブロック絶縁体とを覆いながら収容する保護管を備え、当該保護管は、3分割以上の多分割構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル用接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55040(P2012−55040A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193811(P2010−193811)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】