電力伝送システム
【課題】シールドにより漏れ磁束が捕捉され車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない電力伝送システムを提供する。
【解決手段】電力伝送システムは、地面に固定された送電アンテナ105から、車両の底部に搭載された受電アンテナ201に対して電力を伝送する電力伝送システムであって、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナ105と前記受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナ201のシールド280の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含する。
【解決手段】電力伝送システムは、地面に固定された送電アンテナ105から、車両の底部に搭載された受電アンテナ201に対して電力を伝送する電力伝送システムであって、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナ105と前記受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナ201のシールド280の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とし高いQ値(100以上)のアンテナを用いることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムの好適な応用例としては、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に対する電力供給を挙げることできる。このような応用例については、例えば、特許文献2(特開2010−68657号公報)に開示がある。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−68657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような磁気共鳴方式の電力伝送システムを電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に対する電力供給に用いる場合における問題点について図8を参照して説明する。図8は、地中に埋設された送電アンテナから、車両本体部の底部に取り付けられた受電アンテナに電力伝送を行っている状態を略式的に示している。
【0006】
このような電力伝送システムでは、送電アンテナから、車両側の受電アンテナへ電力を伝送する際、それぞれのアンテナを構成するコイルの共振周波数を一致させることで、これを行うようにしている。
【0007】
ところで、受電アンテナは移動体である車両に搭載されているものであるので、受電アンテナが、常に、停車スペース側の送電アンテナに対して最も伝送効率が良い最適な位置にくるとは限らず、受電アンテナは最適な位置からずれていることが往々にしてある。このような受電アンテナがずれた状態で、電力伝送を行うと、漏れ磁束により、例えば車両本体部を形成する金属などが誘導加熱して温度が上昇する、という問題があった。なお、図8の例では、受電アンテナのシールドが配されていない、Hに示す部分の温度が上昇し
てしまうこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に係る発明は、地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであ
って、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、前記受電アンテナは、コイル体と第1のシールド体と第2のシールド体とからなり、前記第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記コイル体を包含する面積の関係を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電力伝送システムにおいて、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナの前記と第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電力伝送システムにおいては、受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、送電アンテナと受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段が、適正と判定するときにおける送電アンテナを必ず包含するので、受電アンテナが最適位置からずれた状態で電力伝送を行ったとしても、シールドにより漏れ磁束が捕捉されるので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いられる受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける判定処理のフローチャートを示す図である。
【図6】受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
【図7】受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
【図8】従来技術の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては受電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0014】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースで
ある当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して最も伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0015】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0016】
電力伝送システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この電圧調整部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0017】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0018】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオンとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0019】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0020】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0021】
送電アンテナ105は、誘導性リアクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0022】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを
保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0023】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され、また、主制御部110は所定情報を通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0024】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0025】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー204の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0026】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0027】
撮像部215は、車両の底部から地上に固定されている送電アンテナ105を撮像して、撮影した映像データを主制御部210に転送する。主制御部210では、映像データをもとに、実際に電力伝送を実行する上で、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する。
【0028】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。例えば、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正でないと判断された場合、このインターフェイス部230により、運転者に対して、車両を移動させて、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正となるように促すことができるようになっている。
【0029】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0030】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー204の残量を取得し、バッテリー204の充電に必要な電力量を算出する。
算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0031】
また、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であると判断された場合には、通信部220から、送電側のシステムの通信部120に対して、実際の電力伝送実行の依頼を行うことなどができる。
【0032】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0033】
図3は本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いられる受電アンテナ201の分解斜視図であり、図4は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図であり、図4における矢印は磁力線を模式的に示している。なお、以下の実施形態では、コイル体270として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのようなこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体270として円形平板状のものなども利用し得る。このようなコイル体270は、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。この「磁気共鳴アンテナ部」は、コイル体270のインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。また、明細書中でコイル体270としている発明特定事項は、特許請求の範囲においては、上記のようなキャパシタンス成分をも含むものとして「磁気共鳴アンテナ部」として表現されることがある。
【0034】
ケース体260は、受電アンテナ201の誘導性リアクタンス成分を有するコイル体270を収容するために用いられるものである。このケース体260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。ケース体260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、ケース体260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。ケース体260にパッケージされた受電アンテナ201はこの上方開口部263側で車両本体部に取り付けられる。ケース体260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0035】
コイル体270は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材271と、この基材271上に形成される渦巻き状の導電部272とから構成されている。渦巻き状をなす導電部272の内周側の第1端部273、及び外周側の第2端部274には不図示の導電線路が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体270はケース体260の矩形状の底板部216上に載置され、適当な固着手段によって底板部216上に固着される。
【0036】
磁性シールド体280は、平板状の磁性部材である。この磁性シールド体280を構成するためには、比抵抗が大きく、透磁率が大きく、磁気ヒステリシスが小さいものが望ましく、例えばフェライトなどの磁性材料を用いることができる。
【0037】
磁性シールド体280は、コイル体270の上方において、コイル体270との間であ
る程度の距離を空けて配されるようになっている。以下、磁性シールド体280を第1のシールド体と称することがある。
【0038】
また、ケース体260の上方開口部263においては、前記上方開口部263を覆うような矩形平板状の金属体290が、磁性シールド体280の上方に所定距離をおいて配されるようになっている。このような金属体290に用いる金属材料として任意のものを用いることとができるが、本実施形態においては、例えばアルミニウムを用いている。以下、金属体290を第2のシールド体と称することがある。
【0039】
本実施形態に係る受電アンテナ201においては、磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、コイル体270を必ず包含するような、面積関係となっている。より具体的には、磁性シールド体280及び金属体290が、コイル体270の四方側面全てにおいてはみ出す形で、磁性シールド体280及び金属体290の面積が、コイル体270の面積よりも大きくされる。
【0040】
このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、磁性シールド体280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0041】
上記のように構成された受電アンテナ201のQ値が100以上であった。なおアンテナのQ値はインピーダンスアナライザ等の計測機器を使って計測した。
【0042】
主制御部210では、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定手段とし機能する。これに対して、磁性シールド体280及び金属体290の平板状の面積としては、磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、当該判定手段が、適正と判定するときにおける送電アンテナ105を必ず包含するように設定されている。これにより、受電アンテナ201が最適位置からずれた状態で電力伝送を行ったとしても、磁性シールド体280により漏れ磁束が捕捉されるので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【0043】
以上のような判定手段と、磁性シールド体280及び金属体290の平板部の広さの関係についてより詳しく説明する。まず、受電側システムにおいて、主制御部210が送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定処理のアルゴリズムについて説明する。図5は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける判定処理のフローチャートを示す図である。このようなフローチャートは、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際に実行されるものである。
【0044】
図5において、ステップS100で、判定処理開始が開始されると、続いて、ステップS101では、車両の底部に設けられた撮像部215により、送電アンテナ105の映像を取得する。次のステップS102では、取得された映像データに基づいて、送電アンテナ105のずれが、最適な電力伝送を行い得る位置から、所定の範囲内であるか否かが判定される。この所定の範囲とは電力伝送の効率が任意の閾値(本実施形態では、例えば、75パーセント)以上を満足する範囲とされている。また、効率でなくても、結合係数で定義しても良い。
【0045】
ステップS102における判定がYESであるときには、ステップS103では、実際に電力伝送を実行することが可能であると判定し、ステップS104で、通信部220から送電側システムに対し実際の電力伝送を行うよう通知し、ステップS107で処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS102における判定がNOであるときには、ステップS105では、実際に電力伝送を実行することが不可能であると判定し、ステップS106で、インターフェイス部230を利用して、運転者に対して、車両を移動させて、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正となるように促すメッセージを報知し、ステップS107で処理を終了する。
【0047】
以上のような判定処理がなされる本発明に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の平板部の面積との関連性について説明する。
【0048】
図6及び図7は受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
図4に示した、受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係は、電力伝送を行う上で最適な位置関係である場合を示していたが、
図6及び図7では、受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置が、最適な電力伝送実行位置よりずれている場合を示している。
【0049】
図6は、その位置ずれが、許容範囲内であり、前記の判定処理で、電力伝送実行可能と判定される場合を図示している。電力伝送実行可能と判定が出される図6に示す位置関係にアンテナ同士があるときは、受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、送電アンテナ105を必ず包含するようになっている。
【0050】
このように、電力伝送を実行することが可能である場合には、磁性シールド体280及び金属体290の広さは、送電アンテナ105の励磁による漏れ磁束を確実に捕捉することが可能な程度のものとなっているので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【0051】
一方、図7は、位置ずれが、許容範囲外であり、前記の判定処理で、電力伝送実行不可能と判定される場合を図示している。電力伝送実行が不可能であると判定が出される図7に示す位置関係にアンテナ同士があるときは、受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影は、送電アンテナ105を必ずしも包含していない。これによれば、磁性シールド体280及び金属体290として、不必要に広いものを利用することがないので、材料費などのコストを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・電圧調整部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・バッテリー
210・・・主制御部
215・・・撮像部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
260・・・ケース体
216・・・底板部
262・・・側板部
263・・・(上方)開口部
270・・・コイル体
271・・・基材
272・・・導電部
273・・・第1端部
274・・・第2端部
280・・・磁性シールド体
290・・・金属体
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とし高いQ値(100以上)のアンテナを用いることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムの好適な応用例としては、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に対する電力供給を挙げることできる。このような応用例については、例えば、特許文献2(特開2010−68657号公報)に開示がある。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−68657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような磁気共鳴方式の電力伝送システムを電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に対する電力供給に用いる場合における問題点について図8を参照して説明する。図8は、地中に埋設された送電アンテナから、車両本体部の底部に取り付けられた受電アンテナに電力伝送を行っている状態を略式的に示している。
【0006】
このような電力伝送システムでは、送電アンテナから、車両側の受電アンテナへ電力を伝送する際、それぞれのアンテナを構成するコイルの共振周波数を一致させることで、これを行うようにしている。
【0007】
ところで、受電アンテナは移動体である車両に搭載されているものであるので、受電アンテナが、常に、停車スペース側の送電アンテナに対して最も伝送効率が良い最適な位置にくるとは限らず、受電アンテナは最適な位置からずれていることが往々にしてある。このような受電アンテナがずれた状態で、電力伝送を行うと、漏れ磁束により、例えば車両本体部を形成する金属などが誘導加熱して温度が上昇する、という問題があった。なお、図8の例では、受電アンテナのシールドが配されていない、Hに示す部分の温度が上昇し
てしまうこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に係る発明は、地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであ
って、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、前記受電アンテナは、コイル体と第1のシールド体と第2のシールド体とからなり、前記第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記コイル体を包含する面積の関係を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電力伝送システムにおいて、電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、前記受電アンテナの前記と第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電力伝送システムにおいては、受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、送電アンテナと受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段が、適正と判定するときにおける送電アンテナを必ず包含するので、受電アンテナが最適位置からずれた状態で電力伝送を行ったとしても、シールドにより漏れ磁束が捕捉されるので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いられる受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける判定処理のフローチャートを示す図である。
【図6】受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
【図7】受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
【図8】従来技術の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては受電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0014】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースで
ある当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して最も伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0015】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0016】
電力伝送システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この電圧調整部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0017】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0018】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオンとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0019】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0020】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0021】
送電アンテナ105は、誘導性リアクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0022】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを
保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0023】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され、また、主制御部110は所定情報を通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0024】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0025】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー204の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0026】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0027】
撮像部215は、車両の底部から地上に固定されている送電アンテナ105を撮像して、撮影した映像データを主制御部210に転送する。主制御部210では、映像データをもとに、実際に電力伝送を実行する上で、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する。
【0028】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。例えば、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正でないと判断された場合、このインターフェイス部230により、運転者に対して、車両を移動させて、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正となるように促すことができるようになっている。
【0029】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0030】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー204の残量を取得し、バッテリー204の充電に必要な電力量を算出する。
算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0031】
また、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であると判断された場合には、通信部220から、送電側のシステムの通信部120に対して、実際の電力伝送実行の依頼を行うことなどができる。
【0032】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0033】
図3は本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いられる受電アンテナ201の分解斜視図であり、図4は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図であり、図4における矢印は磁力線を模式的に示している。なお、以下の実施形態では、コイル体270として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのようなこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体270として円形平板状のものなども利用し得る。このようなコイル体270は、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。この「磁気共鳴アンテナ部」は、コイル体270のインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。また、明細書中でコイル体270としている発明特定事項は、特許請求の範囲においては、上記のようなキャパシタンス成分をも含むものとして「磁気共鳴アンテナ部」として表現されることがある。
【0034】
ケース体260は、受電アンテナ201の誘導性リアクタンス成分を有するコイル体270を収容するために用いられるものである。このケース体260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。ケース体260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、ケース体260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。ケース体260にパッケージされた受電アンテナ201はこの上方開口部263側で車両本体部に取り付けられる。ケース体260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0035】
コイル体270は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材271と、この基材271上に形成される渦巻き状の導電部272とから構成されている。渦巻き状をなす導電部272の内周側の第1端部273、及び外周側の第2端部274には不図示の導電線路が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体270はケース体260の矩形状の底板部216上に載置され、適当な固着手段によって底板部216上に固着される。
【0036】
磁性シールド体280は、平板状の磁性部材である。この磁性シールド体280を構成するためには、比抵抗が大きく、透磁率が大きく、磁気ヒステリシスが小さいものが望ましく、例えばフェライトなどの磁性材料を用いることができる。
【0037】
磁性シールド体280は、コイル体270の上方において、コイル体270との間であ
る程度の距離を空けて配されるようになっている。以下、磁性シールド体280を第1のシールド体と称することがある。
【0038】
また、ケース体260の上方開口部263においては、前記上方開口部263を覆うような矩形平板状の金属体290が、磁性シールド体280の上方に所定距離をおいて配されるようになっている。このような金属体290に用いる金属材料として任意のものを用いることとができるが、本実施形態においては、例えばアルミニウムを用いている。以下、金属体290を第2のシールド体と称することがある。
【0039】
本実施形態に係る受電アンテナ201においては、磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、コイル体270を必ず包含するような、面積関係となっている。より具体的には、磁性シールド体280及び金属体290が、コイル体270の四方側面全てにおいてはみ出す形で、磁性シールド体280及び金属体290の面積が、コイル体270の面積よりも大きくされる。
【0040】
このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、磁性シールド体280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0041】
上記のように構成された受電アンテナ201のQ値が100以上であった。なおアンテナのQ値はインピーダンスアナライザ等の計測機器を使って計測した。
【0042】
主制御部210では、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定手段とし機能する。これに対して、磁性シールド体280及び金属体290の平板状の面積としては、磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、当該判定手段が、適正と判定するときにおける送電アンテナ105を必ず包含するように設定されている。これにより、受電アンテナ201が最適位置からずれた状態で電力伝送を行ったとしても、磁性シールド体280により漏れ磁束が捕捉されるので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【0043】
以上のような判定手段と、磁性シールド体280及び金属体290の平板部の広さの関係についてより詳しく説明する。まず、受電側システムにおいて、主制御部210が送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正であるかを判定する判定処理のアルゴリズムについて説明する。図5は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける判定処理のフローチャートを示す図である。このようなフローチャートは、車両が充電を受けようとして、車両充電用のスペースに停止した際に実行されるものである。
【0044】
図5において、ステップS100で、判定処理開始が開始されると、続いて、ステップS101では、車両の底部に設けられた撮像部215により、送電アンテナ105の映像を取得する。次のステップS102では、取得された映像データに基づいて、送電アンテナ105のずれが、最適な電力伝送を行い得る位置から、所定の範囲内であるか否かが判定される。この所定の範囲とは電力伝送の効率が任意の閾値(本実施形態では、例えば、75パーセント)以上を満足する範囲とされている。また、効率でなくても、結合係数で定義しても良い。
【0045】
ステップS102における判定がYESであるときには、ステップS103では、実際に電力伝送を実行することが可能であると判定し、ステップS104で、通信部220から送電側システムに対し実際の電力伝送を行うよう通知し、ステップS107で処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS102における判定がNOであるときには、ステップS105では、実際に電力伝送を実行することが不可能であると判定し、ステップS106で、インターフェイス部230を利用して、運転者に対して、車両を移動させて、送電アンテナ105と受電アンテナ201との位置関係が適正となるように促すメッセージを報知し、ステップS107で処理を終了する。
【0047】
以上のような判定処理がなされる本発明に係る電力伝送システムにおける受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の平板部の面積との関連性について説明する。
【0048】
図6及び図7は受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係を説明する模式図である。
図4に示した、受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置関係は、電力伝送を行う上で最適な位置関係である場合を示していたが、
図6及び図7では、受電アンテナ201と送電アンテナ105との位置が、最適な電力伝送実行位置よりずれている場合を示している。
【0049】
図6は、その位置ずれが、許容範囲内であり、前記の判定処理で、電力伝送実行可能と判定される場合を図示している。電力伝送実行可能と判定が出される図6に示す位置関係にアンテナ同士があるときは、受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影が、送電アンテナ105を必ず包含するようになっている。
【0050】
このように、電力伝送を実行することが可能である場合には、磁性シールド体280及び金属体290の広さは、送電アンテナ105の励磁による漏れ磁束を確実に捕捉することが可能な程度のものとなっているので、車両本体部が誘導加熱で温度上昇することがない。
【0051】
一方、図7は、位置ずれが、許容範囲外であり、前記の判定処理で、電力伝送実行不可能と判定される場合を図示している。電力伝送実行が不可能であると判定が出される図7に示す位置関係にアンテナ同士があるときは、受電アンテナ201の磁性シールド体280及び金属体290の鉛直方向の投影は、送電アンテナ105を必ずしも包含していない。これによれば、磁性シールド体280及び金属体290として、不必要に広いものを利用することがないので、材料費などのコストを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・電圧調整部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・バッテリー
210・・・主制御部
215・・・撮像部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
260・・・ケース体
216・・・底板部
262・・・側板部
263・・・(上方)開口部
270・・・コイル体
271・・・基材
272・・・導電部
273・・・第1端部
274・・・第2端部
280・・・磁性シールド体
290・・・金属体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、
電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、
前記受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項2】
地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、
前記受電アンテナは、コイル体と第1のシールド体と第2のシールド体とからなり、前記第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記コイル体を包含する面積の関係を有することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項3】
電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、
前記受電アンテナの前記と第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項1】
地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、
電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、
前記受電アンテナのシールドの鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項2】
地面に固定された送電アンテナから、車両の底部に搭載された受電アンテナに対して電力を伝送する電力伝送システムであって、
前記受電アンテナは、コイル体と第1のシールド体と第2のシールド体とからなり、前記第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記コイル体を包含する面積の関係を有することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項3】
電力伝送を実行する上で、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの位置関係が適正であるかを判定する判定手段を有すると共に、
前記受電アンテナの前記と第1のシールド体及び前記第2のシールド体の鉛直方向の投影が、前記判定手段が適正と判定するときにおける前記送電アンテナを必ず包含することを特徴とする請求項2に記載の電力伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−38893(P2013−38893A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172526(P2011−172526)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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