説明

電力供給装置及び供給電力制御方法

【課題】外部から供給を受ける電力を抑えつつ、吊下機構を動作させるのに充分な電力を供給する。
【解決手段】シーケンサ150は、二次電池130が出力する電流の電流値と予め設定された閾値とを比較し、AC/DCコンバータ110が供給する電力の引き上げを行うか否かを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電力を供給する電力供給装置、並びに負荷及び二次電池に接続された母線に供給する電力を制御する供給電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾などのコンテナヤードには、コンテナを運ぶためのタイヤ式クレーン(RTG:Rubber Tired Gantry crane)が配置される。タイヤ式クレーンは、コンテナが載置されたレーンを跨ぐように設置される。タイヤ式クレーンは、レーン内を走行するトレーラやAGV(Automatic Guided Vehicle)とのコンテナの受け渡し及びレーン内へのコンテナの載置を行う。
【0003】
従来タイヤ式クレーンは、タイヤ式クレーンに搭載されたエンジン発電機にて発電を行い、走行用モータや荷役用モータに発電した電力を供給することで動作している。また、近年の環境負荷低減の要請から、エンジン発電機に加えて二次電池を搭載したハイブリッド電源方式のタイヤ式クレーンが開発されている。また、地上に設けられた商用電源の電源装置からケーブルを介してタイヤ式クレーンに電力を供給し、エンジン発電機が発電する電力に代えて、当該ケーブルから供給される電力によってRTGを動作させるケーブルリール式給電方式のRTGも開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−070338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、タイヤ式クレーンを動作させる充分な電力を確保した上で、ケーブルに流れる電力を小さくするため、商用電源とタイヤ式クレーンとを高圧コネクタで接続する必要がある。そのため、特許文献1に記載の方法を実際に使用する場合、コネクタの着脱や電源設備の管理を、電気工事士などの資格を有する者が行う必要があった。そのため、商用電源とRTGとの間を低圧コネクタで接続できることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、外部から供給を受ける電力を抑えつつ、負荷を動作させるのに充分な電力を供給する電力供給装置及び充放電制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、負荷に電力を供給する電力供給装置であって、負荷に接続される母線に対して電力を充放電可能な二次電池と、前記二次電池から流れる電流の大きさが、当該二次電池の許容最大電流値未満の値である引き上げ閾値に達するまで、外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御する供給部と、前記二次電池から供給される電力に関連する信号の大きさが、前記負荷に要求される信号の大きさ以上になるように前記二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、前記二次電池から流れる電流の大きさが前記引き上げ閾値に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値より大きい第2の値となるように前記母線に供給する電力を制御させる指示を、前記供給部に出力する判定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明においては、前記電力に関連する信号は、電力値を示すことが好ましい。
【0009】
また、本発明においては、前記判定部は、前記供給部が前記外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが前記第2の値である場合において、前記二次電池から流れる電流の大きさが所定の引き下げ閾値を下回ったときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御させる指示を、前記供給部に出力することが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記判定部は、所定の制御周期ごとに前記供給部に対する指示を出力するか否かを判定し、前記引き下げ閾値は、前記判定部の制御周期の間における前記二次電池から流れる電流の変動に伴う前記信号の大きさの変動が、前記二次電池に接続される電子部品の入力仕様によって決まる所定の規定値以内となる値であることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記供給部は、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第2の値となるようにする制御を開始してからの経過時間が所定の上昇継続時間に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御することが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記上昇継続時間は、前記負荷によるピーク運転の継続時間以上の値であることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記上昇継続時間は、前記供給部及び前記外部電源と前記供給部との間に接続される電子部品の熱負荷が時間定格を超えない時間であることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記第2の値は、前記供給部が、前記信号の大きさが当該値となるような電力を前記母線に供給した場合に流れる電流の電流値が、前記供給部及び前記外部電源と前記供給部との間に接続される電子部品の瞬時許容電流未満となる値であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、電力を充放電可能な二次電池及び負荷に接続された母線に供給する電力を制御する供給電力制御方法であって、前記二次電池から流れる電流の大きさが、当該二次電池の許容最大電流値未満の値である引き上げ閾値に達するまで、外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御するステップと、前記二次電池から供給される電力に関連する信号の大きさが、前記負荷に要求される信号の大きさ以上になるように前記二次電池の充放電を制御するステップと、前記二次電池から流れる電流の大きさが前記引き上げ閾値に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値より大きい第2の値となるように前記母線に供給する電力を制御するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力供給装置は、外部電源から供給される電力に加えて、母線にかかる電力に関連する信号の値が前記負荷に要求される大きさ以上になるように二次電池からの電力を負荷に供給する。これにより、外部電源から供給される電力を低減させることができる。また、電力供給装置は、二次電池から流れる電流の電流値が引き上げ閾値を超える場合に、外部電源から供給される電力に関連する信号の値を大きくする。これにより、負荷の動作に要する電力が一時的に大きくなったときに、二次電池に無理をかけずに負荷へ電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態による電力供給装置を搭載したタイヤ式クレーンの全体図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電力供給装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による電力供給装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態による二次電池の電流値の時間変化とAC/DCコンバータの出力電力の電力値の時間変化とを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による電力供給装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による電力供給装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態による二次電池の電流値の時間変化とAC/DCコンバータの出力電力の電力値の時間変化とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による電力供給装置10を搭載したタイヤ式クレーン1の全体図である。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ式クレーン1は、外部電源2からの給電を受けて、走行車両としてタイヤ6aによる走行手段6によって走行レーンL上を自走しつつ、コンテナCの積み下ろしを行うものである。なお、外部電源2は、コンテナヤードY内の路面R上に設置された走行レーンLに設けられている。
より具体的には、タイヤ式クレーン1は、タイヤ6aにより路面R上を走行するクレーン本体3と、該クレーン本体3から延び外部電源2に接続されるケーブルである走行給電ケーブル4と、クレーン本体3に設けられて走行給電ケーブル4の巻き取り及び巻き出しを行うケーブルリール5と、クレーン本体3に電力を供給する電力供給装置10とを備える。
【0019】
クレーン本体3は、タイヤ式の上記走行手段6と、互いに略平行に立設されて走行手段6によりそれぞれ走行可能な一対の脚部7と、該脚部7間に上部で架設された梁部8と、該梁部8に吊設された吊下機構9とを備えている。走行手段6は、各走行レーンLに沿って配設された地上ガイドラインGとのズレ量を検出し、タイヤ6aの方向を切り替えることで、該地上ガイドラインGに沿うように、走行レーンLに沿うレーン内走行方向L1に横走行する。
【0020】
また、図1に示すように、一対の脚部7は、梁部8及び吊下機構9を支持している。梁部8は、吊下機構9を吊り下げるように支持している。そして、梁部8には、該梁部8の長手方向に沿って吊下機構9が走行可能なように、ガイドレール8aが設けられている。吊下機構9は、電力供給装置10より受電することにより、コンテナCを積み降ろしするように作動する。より具体的に、吊下機構9は、梁部8のガイドレール8aに沿って走行可能トロリ9aと、コンテナCを把持するスプレッダー9bと、トロリ9aからスプレッダー9bを吊り下げている吊下ロープ9cと、該吊下ロープ9cの巻上げ及び巻出しを行う巻上機9dと、トロリ9a、スプレッダー9b及び巻上機9dの作動を制御する吊下機構制御部(図示せず)とを備えている。
【0021】
また、走行給電ケーブル4は、先端に受電側コネクタ4aが設けられて、外部電源2の給電側コネクタ2aと接続されており、これにより外部電源2からの給電を行うことが可能となっている。なお、受電側コネクタ4a及び給電側コネクタ2aは、低圧コネクタである。図1に示すように、走行給電ケーブル4を収容するケーブルリール5は、一方の脚部7の外側面に設けられている。ケーブルリール5は、略水平な軸心を有して回転可能で走行給電ケーブル4が巻回されたドラム5aと、出力軸が減速機(図示せず)を介してドラム5aに接続され、該ドラム5aを回転させるモータ(図示せず)とを有している。また、走行給電ケーブル4における受電側コネクタ4aの反対側の端は、電力供給装置10に接続されており、これにより外部電源2からの電力を電力供給装置10に供給する。
【0022】
次に、タイヤ式クレーン1が備える電力供給装置10について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による電力供給装置10の構成を示す概略ブロック図である。なお、図2において実線は電気配線を示し、破線は通信回線を示す。
電力供給装置10は、AC/DCコンバータ110(供給部)、母線120、二次電池130、充放電制御装置140、シーケンサ150を備える。
【0023】
AC/DCコンバータ110は、走行給電ケーブル4を介して外部電源2から受電した交流電力を、所定の電力値の直流電力に変化させ、母線120を介して吊下機構9(負荷)に供給する。なお、走行給電ケーブル4は、低圧コネクタによって外部電源2と接続されるため、AC/DCコンバータ110は、外部電源2から供給される電力を制限する。そのため、吊下機構9で消費される電力の不足分は、二次電池130から供給される。また、AC/DCコンバータ110は、シーケンサ150からの指示に従って出力電力の電力値を変化させる。なお、通常運転時においてAC/DCコンバータ110は、出力電力の電力値が第1の電力値(第1の値)となるよう制御する。第1の電力値は、吊下機構9の通常運転時において、AC/DCコンバータ110が当該電力値で電力を供給するときに、二次電池130から流れる電流の電流値が二次電池130の許容最大電流値未満となるような電力値である。つまり、第1の電力値は、吊下機構9の通常運転時に要する仕事量によって決まる値である。
なお、AC/DCコンバータ110による電力制御は、例えば出力電力及び出力電圧をモニタし、また内部で電流値と電圧とに基づいて電力値を算出することで、電力の制御を行う。
【0024】
二次電池130は、母線120に対して電力を充放電可能に接続される。
充放電制御装置140は、シーケンサ150からの指示に従って二次電池130の充放電の切り替え動作を行う。具体的には、吊下機構9がコンテナCを持ち上げる際には、AC/DCコンバータ110が出力する電力の不足分を二次電池130から供給させ、吊下機構9がコンテナCを下ろす際には、回生により発生する電力を二次電池130に充電させる。
シーケンサ150は、母線120に供給される電力及び二次電池130から流れる電流の電流値に基づいてAC/DCコンバータ110及び充放電制御装置140に対する制御指示を出力する。シーケンサ150は、PLC(Programmable Logic Controller)やリレーによって構成される。なお、シーケンサ150は所定のクロック周期(制御周期)で動作しており、当該クロック周期毎に母線120に供給される電力及び二次電池130の電流値の比較判定処理を実行する。
【0025】
シーケンサ150は、母線電力検出部151、電流検出部152、充放電制御部153、判定部154を備える。
母線電力検出部151は、母線120に供給される電力の電力値(電力に関連する信号)を検出し、当該電力値を充放電制御部153に通知する。
電流検出部152は、二次電池130から流れる電流の電流値を検出し、当該電流値を判定部154に通知する。
【0026】
充放電制御部153は、母線電力検出部151が検出した電力値に基づいて、吊下機構9に要求される電力を満たすように、二次電池130の充放電を制御する制御指示を充放電制御装置140に出力する。
【0027】
判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が所定の引き上げ閾値以上になったときに、AC/DCコンバータ110に出力電力を上昇させる上昇指示を出力する。ここで、引き上げ閾値とは、二次電池の許容最大電流値から、制御によりオーバーシュートする分の電流値などの所定のマージンを差し引いた値である。なお、AC/DCコンバータ110は、上昇指示を受け付けると、第1の電力値より高い第2の電力値(第2の値)での電力供給を開始する。第2の電力値は、吊下機構9のピーク運転時において、AC/DCコンバータ110が当該電力値で電力を供給するときに、二次電池130から流れる電流の電流値が許容最大電流値未満となるような電力値である。つまり、第2の電力値は、吊下機構9のピーク運転時に要する仕事量によって決まる値である。また、第2の電力値は、AC/DCコンバータ110が当該電力値の電力を母線120に供給した場合に流れる電流の電流値が、AC/DCコンバータ110及び外部電源2とAC/DCコンバータ110との間に接続される各電子部品の瞬時許容電流未満となる値である。なお、本実施形態において外部電源2とAC/DCコンバータ110との間に接続される各電子部品とは、給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、及び走行給電ケーブル4のことである。
【0028】
また、判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が所定の引き下げ閾値を下回ったときに、AC/DCコンバータ110に出力電力を下降させる下降指示を出力する。なお、二次電池130の電流変動周期は、シーケンサ150のクロック周期より長いため、当該引き下げ閾値を用いた判断により、二次電池130から流れる電流の変動に伴う電力値の変動は、吊下機構9や充放電制御装置140の電力値の入力仕様を満たすこととなる。なお、二次電池130の電流変動周期とは、二次電池130の電流が引き上げ閾値に達したときから、AC/DCコンバータ110の出力電力の変動によって二次電池130の電流が再び引き上げ閾値に達するまでの周期である。
【0029】
次に、本実施形態による電力供給装置10の動作について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による電力供給装置10の動作を示すフローチャートである。
電力供給装置10が起動すると、AC/DCコンバータ110は外部電源2からの電力を母線120に供給する(ステップS1)。以降、シーケンサ150の母線電力検出部151は、随時母線120に供給される電力の電力値を検出する。また、電流検出部152は、随時二次電池130から流れる電流の電流値を特定する。
また、充放電制御部153は、母線電力検出部151が検出した電力値に基づいて、吊下機構9に要求される電力値を満たすように、二次電池130の充放電を制御する制御信号を、充放電制御装置140に出力する。これにより、母線120には吊下機構9の動作に充分な電力が供給されることとなる。
【0030】
次に、判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が引き上げ閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。判定部154は、二次電池130の電流値が引き上げ閾値以上であると判定した場合(ステップS2:YES)、出力電力の電力値を第2の電力値に上昇させる上昇指示をAC/DCコンバータ110に出力する(ステップS3)。これにより、AC/DCコンバータ110からの出力電力が高まるため、AC/DCコンバータ110に並列に接続される二次電池130から流れる電流が減少する。つまり本動作によって二次電池130から流れる電流を引き上げ閾値未満に下げることができる。なお、上述したように第2の電力値は、AC/DCコンバータ110が当該電力値の電力を母線120に供給した場合に流れる電流の電流値が、給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、走行給電ケーブル4、及びAC/DCコンバータ110の瞬時許容電流未満となる値である。そのため、AC/DCコンバータ110は、給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、走行給電ケーブル4、及びAC/DCコンバータ110を故障させることなく、母線120への電力供給を行うことができる。
【0031】
次に、判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が引き下げ閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が引き下げ閾値以上であると判定した場合(ステップS4:YES)、ステップS4に戻り、AC/DCコンバータ110の出力電力の電力値を第2の電力値としたまま、電流値の監視を継続する。他方、判定部154は、電流検出部152が取得した電流値が引き下げ閾値未満であると判定した場合(ステップS4:NO)、出力電力の電力値を第1の電力値に下降させる下降指示をAC/DCコンバータ110に出力する(ステップS5)。
【0032】
なお、上述したように、シーケンサ150のクロック周期は二次電池130の電流変動周期よりも短くなるように設定されているため、シーケンサ150による次の判定時までに二次電池130から流れる電流が許容最大電流量を超えることはない。また、引き下げ閾値は、二次電池130から流れる電流の変動に伴う電力値の変動が、吊下機構9や充放電制御装置140の電力値の入力仕様を満たすような値であるため、吊下機構9や充放電制御装置140を故障させることなく、吊下機構9を動作させることができる。
【0033】
ステップS2で、判定部154が二次電池の電流値が引き上げ閾値未満であると判定した場合(ステップS2:NO)、またはステップS5で下降指示を出力した場合、シーケンサ150は、管理者などによる操作や割り込み処理などにより、外部から処理の終了要求を入力したか否かを判定する(ステップS6)。シーケンサ150は、外部から終了要求を入力していないと判定した場合(ステップS6:NO)、ステップS2に戻り、制御処理を継続する。他方、シーケンサ150は、外部から終了要求を入力したと判定した場合(ステップS6:YES)、処理を終了する。
【0034】
次に、本実施形態による電力供給装置10が充放電処理を行った場合の具体例を示す。
図4は、本発明の第1の実施形態による二次電池130の電流値の時間変化とAC/DCコンバータ110の出力電力の電力値の時間変化とを示す図である。
上述した処理により、電力供給装置10が動作すると、時刻t0から時刻t1までの間、二次電池130の電流値が引き上げ閾値未満であるため、AC/DCコンバータ110は、第1の電力値で母線120に電力を供給する。なお、時刻t0から時刻t1までの間に、吊下機構9がピーク運転を開始するため、ピーク運転の開始に伴い二次電池130から流れる電流が増加している。
【0035】
次に、時刻t1になると、二次電池130の電流値が充電停止閾値に達するため、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS3により、母線120に供給する電力の電力値を第2の電力値に上昇させる。これに伴い、二次電池130から流れる電流は減少していく。そして、時刻t2になると、二次電池130の電流値が充電停止閾値に到達するため、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS5により、母線120に供給する電力の電力値を第1の電力値に下降させる。これに伴い、二次電池130から流れる電流は増加していく。
【0036】
そして、時刻t3になると、二次電池130の電流値は、再び充電停止閾値に到達する。つまり、時刻t1から時刻t3までの周期が、二次電池130の電流変動周期である。二次電池130の電流値が充電停止閾値を超えたため、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS3により、母線120に供給する電力の電力値を第2の電力値に上昇させる。これに伴い、二次電池130から流れる電流は減少していく。そして、時刻t3を過ぎたところで、吊下機構9はピーク運転を終了し通常運転を開始する。
【0037】
時刻t4になると、二次電池130の電流値が充電停止閾値に到達するため、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS5により、母線120に供給する電力の電力値を第1の電力値に下降させる。このとき、吊下機構9はピーク運転を終了しているため、二次電池130から流れる電流は増加しなくなる。
このように、本実施形態によれば、シーケンサ150は、二次電池130の電流値が許容最大電流を超えないように、AC/DCコンバータ110による電力供給を制御することができる。また、本実施形態によれば、頻度の少ないピーク電力へ対応するためだけに二次電池130の電池容量を増やすことなく、必要となる電力を供給することができる。
【0038】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態は、二次電池130の電流値に基づいてAC/DCコンバータ110に下降指示を出力する実施形態であったが、第2の実施形態は、AC/DCコンバータ110に上昇指示を出力した時刻からの経過時間に基づいて下降指示を出力する実施形態である。
【0039】
図5は、本発明の第2の実施形態による電力供給装置10の構成を示す概略ブロック図である。第2の実施形態による電力供給装置10は、第1の実施形態による電力供給装置10の構成に加えて計時部155をさらに備え、判定部154の動作が異なるものである。
計時部155は、判定部154がAC/DCコンバータ110に上昇指示を出力した時刻からの経過時間の計時を行う。
判定部154は、計時部155が計時する経過時間が所定の上昇継続時間に達したときに、AC/DCコンバータ110に下降指示を出力する。なお、上昇継続時間は、吊下機構9によるピーク運転の継続時間以上の時間であり、かつ給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、走行給電ケーブル4、及びAC/DCコンバータ110の熱負荷が時間定格を超えないような時間である。なお、タイヤ式クレーン1の運転パターンは決まっているため、予めピーク電力の継続時間は分かっている。
【0040】
次に、本実施形態による電力供給装置10の動作について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態による電力供給装置10の動作を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と同じ動作をするステップについては、同じ符号を用いて説明する。
電力供給装置10が起動すると、AC/DCコンバータ110は外部電源2からの電力を母線120に供給する(ステップS1)。以降、シーケンサ150の母線電力検出部151は、随時母線120に供給される電力の電力値を検出する。また、電流検出部152は、随時二次電池130から流れる電流の電流値を特定する。
また、充放電制御部153は、母線電力検出部151が検出した電力に基づいて、吊下機構9に要求される電力を満たすように、二次電池130の充放電を制御する制御信号を、充放電制御装置140に出力する。
【0041】
次に、判定部154は、電流検出部152が検出した電流値が引き上げ閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。判定部154は、二次電池130の電流値が引き上げ閾値以上であると判定した場合(ステップS2:YES)、出力電力の電力値を第2の電力値に上昇させる上昇指示をAC/DCコンバータ110に出力する(ステップS3)。このとき、計時部155は、現在時刻からの経過時間の計時を開始する(ステップS7)。
【0042】
次に、判定部154は、計時部155が計時している経過時間が上昇継続時間以上であるか否かを判定する(ステップS8)。判定部154は、計時部155が計時している経過時間が上昇継続時間未満であると判定した場合(ステップS8:NO)、ステップS8に戻り、AC/DCコンバータ110の出力電力の電力値を第2の電力値としたまま、経過時間の判定を継続する。他方、判定部154は、計時部155が計時している経過時間が上昇継続時間以上になったと判定した場合(ステップS8:YES)、出力電力の電力値を第1の電力値に下降させる下降指示をAC/DCコンバータ110に出力する(ステップS5)。そして、計時部155は、経過時間の計時を終了する(ステップS9)。
【0043】
なお、上述したように、上昇制御時間は、吊下機構9によるピーク運転の継続時間以上の時間であるため、吊下機構9がピーク運転を行っている間にAC/DCコンバータ110の下降が始まることはない。また、上昇制御時間は、給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、走行給電ケーブル4、及びAC/DCコンバータ110の熱負荷が時間定格を超えないような時間である。そのため、AC/DCコンバータ110は、給電側コネクタ2a、受電側コネクタ4a、走行給電ケーブル4、及びAC/DCコンバータ110を故障させることなく、母線120への電力供給を行うことができる。
【0044】
ステップS2で、判定部154が二次電池の電流値が引き上げ閾値未満であると判定した場合(ステップS2:NO)、またはステップS9で計時部155が計時を終了した場合、シーケンサ150は、管理者などによる操作や割り込み処理などにより、外部から処理の終了要求を入力したか否かを判定する(ステップS6)。シーケンサ150は、外部から終了要求を入力していないと判定した場合(ステップS6:NO)、ステップS2に戻り、制御処理を継続する。他方、シーケンサ150は、外部から終了要求を入力したと判定した場合(ステップS6:YES)、処理を終了する。
【0045】
次に、本実施形態による電力供給装置10が充放電処理を行った場合の具体例を示す。
図7は、本発明の第2の実施形態による二次電池130の電流値の時間変化とAC/DCコンバータ110の出力電力の電力値の時間変化とを示す図である。
上述した処理により、電力供給装置10が動作すると、時刻t5から時刻t6までの間、二次電池130の電流値が引き上げ閾値未満であるため、AC/DCコンバータ110は、第1の電力値で母線120に電力を供給する。なお、時刻t5から時刻t6までの間に、吊下機構9がピーク運転を開始するため、ピーク運転の開始に伴い二次電池130から流れる電流値が増加している。
【0046】
次に、時刻t6になると、二次電池130の電流値が充電停止閾値に到達するため、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS3により、母線120に供給する電力の電力値を第2の電力値に上昇させる。これに伴い、二次電池130から流れる電流は減少していく。以降、AC/DCコンバータ110は、時刻t6から上昇継続時間後の時刻である時刻t7まで、第2の電力値での電力供給を行う。なお、上述したように、上昇制御時間は、吊下機構9によるピーク運転の継続時間以上の時間であるため、時刻t7になる前に、吊下機構9のピーク運転が終了する。
【0047】
そして、時刻t7になると、AC/DCコンバータ110は、上述したステップS5により、母線120に供給する電力の電力値を第1の電力値に下降させる。このとき、すでに吊下機構9はピーク運転を終了しているため、二次電池130から流れる電流は増加しない。
【0048】
このように、本実施形態によれば、シーケンサ150は、二次電池130の電流値が許容最大電流を超えないように、AC/DCコンバータ110による電力供給を制御することができる。また、本実施形態によれば、頻度の少ないピーク電力へ対応するためだけに二次電池130の電池容量を増やすことなく、必要となる電力を供給することができる。
また、第1の実施形態と比較して、調整を必要とする引き下げ閾値の設定が不要となるため、電力供給の制御が容易になるという利点がある。
【0049】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、電力に関連する信号として電力値を用いて、外部電源から供給される電力の制御を行う場合を説明したが、これに限られない。例えば、電力に関連する信号として電圧を用いて電力の制御を行っても良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、AC/DCコンバータ110が供給部として電力の制御を行う場合を示したが、これに限られない。例えば、電力制御機能を有しない一般のAC/DCコンバータ110に、本発明の供給部としての機能を有する電力制御装置を接続することでも、同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、電力供給装置10をタイヤ式クレーン1に搭載する場合について説明したが、これに限られず、例えば架線レス電車など、他の装置に搭載しても良い。
【0052】
なお、上述のシーケンサ150は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0053】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
9…吊下機構 10…電力供給装置 110…AC/DCコンバータ 120…母線 130…二次電池 140…充放電制御装置 150…シーケンサ 151…母線電力検出部 152…電流検出部 153…充放電制御部 154…判定部 155…計時部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
負荷に接続される母線に対して電力を充放電可能な二次電池と、
前記二次電池から流れる電流の大きさが、当該二次電池の許容最大電流値未満の値である引き上げ閾値に達するまで、外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御する供給部と、
前記二次電池から供給される電力に関連する信号の大きさが、前記負荷に要求される信号の大きさ以上になるように前記二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、
前記二次電池から流れる電流の大きさが前記引き上げ閾値に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値より大きい第2の値となるように前記母線に供給する電力を制御させる指示を、前記供給部に出力する判定部と
を備えることを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記電力に関連する信号は、電力値を示すことを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記供給部が前記外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが前記第2の値である場合において、前記二次電池から流れる電流の大きさが所定の引き下げ閾値を下回ったときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御させる指示を、前記供給部に出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記判定部は、所定の制御周期ごとに前記供給部に対する指示を出力するか否かを判定し、
前記引き下げ閾値は、前記判定部の制御周期の間における前記二次電池から流れる電流の変動に伴う前記信号の大きさの変動が、前記二次電池に接続される電子部品の入力仕様によって決まる所定の規定値以内となる値である
ことを特徴とする請求項3に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第2の値となるようにする制御を開始してからの経過時間が所定の上昇継続時間に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記上昇継続時間は、前記負荷によるピーク運転の継続時間以上の値であることを特徴とする請求項5に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記上昇継続時間は、前記供給部及び前記外部電源と前記供給部との間に接続される電子部品の熱負荷が時間定格を超えない時間であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記第2の値は、前記供給部が、前記信号の大きさが当該値となるような電力を前記母線に供給した場合に流れる電流の電流値が、前記供給部及び前記外部電源と前記供給部との間に接続される電子部品の瞬時許容電流未満となる値である
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の電力供給装置。
【請求項9】
電力を充放電可能な二次電池及び負荷に接続された母線に供給する電力を制御する供給電力制御方法であって、
前記二次電池から流れる電流の大きさが、当該二次電池の許容最大電流値未満の値である引き上げ閾値に達するまで、外部電源から供給される電力に関連する信号の大きさが第1の値となるように前記母線に供給する電力を制御するステップと、
前記二次電池から供給される電力に関連する信号の大きさが、前記負荷に要求される信号の大きさ以上になるように前記二次電池の充放電を制御するステップと、
前記二次電池から流れる電流の大きさが前記引き上げ閾値に達したときに、前記外部電源から供給される電力に関する信号の大きさが前記第1の値より大きい第2の値となるように前記母線に供給する電力を制御するステップと
を備えることを特徴とする供給電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110783(P2013−110783A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251535(P2011−251535)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(312005957)三菱重工マシナリーテクノロジー株式会社 (11)
【Fターム(参考)】