説明

電力切換装置、電力切換方法及びレーダ装置

【課題】既存の部材を用いても大電力の入力の切り換え動作ができるようにして、製造を容易にする。
【解決手段】入力された電力を分配するとともに、分配された電力を出力可能な複数の分配出力路30a〜30nを有した分配部30と、分配部30の分配出力路30a〜30nが個別に接続されるとともに、分配出力路30a〜30nを介して入力された電力を切り換えて出力可能な切換出力路31a〜31mを有した複数のスイッチ部31と、各スイッチ部31の切換出力路31a〜31mが接続され、切換出力路31a〜31mを介して入力された電力を合成して出力する合成部C1,C2とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電力に増幅された信号などの入力を切り換えて出力する電力切換装置、電力切換方法及び電力切換装置を用いたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、レーダ装置において、電力増幅させた信号を電磁波として送信するときに、パルスヒット毎に、水平偏波、垂直偏波、位相差等を切り換えることが行なわれている。
【0003】
従来、このようなレーダ装置としては、例えば、図5に示すものがあげられる。
本図に示すレーダ装置は、第一の信号発生部100と、第一の信号発生部100からの信号が入力される第一の電力増幅部101と、第一の電力増幅部101で電力が増幅された信号が入力される第一の空中線装置102とを備えている。また、第二の信号発生部103と、第二の信号発生部103からの信号が入力される第二の電力増幅部104と、第二の電力増幅部104で電力が増幅された信号が入力される第二の空中線装置105とを備えている。
【0004】
第一の空中線装置102は、例えば、水平偏波の電磁波を放射し、第二の空中線装置105は、例えば、水平偏波の電磁波を放射する。
そして、各信号発生部100,103において、パルス信号を交互に発生して、各空中線装置から水平偏波の電磁波、垂直偏波の電磁波をそれぞれ放射する。
このようなレーダ装置においては、二系統の独立した空中線装置102,105を備えているので、各空中線装置102,105から放射する電磁波の特性を安定させるには、第一及び第二の電力増幅部101,104の双方の信号の増幅特性を一致させる必要があった。このため、レーダ装置の製造が難しくなり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、このようなレーダ装置の問題を解決する技術として、例えば、特許文献1に記載のようなレーダ装置が提案されている。
図6に示すように、特許文献1記載のレーダ装置は、信号発生部100aと、信号発生部100aからの信号が入力される電力増幅部101aと、第一及び第二の空中線装置102a,105aと、電力増幅部101aと各空中線装置102a,105aの間に設けられ、電力増幅部101aからの信号を第一又は第二の空中線装置102a,105aに切り換えて出力可能な電力切換部106を備えている。
電力切換部106は、例えば、ダイオードスイッチなどが用いられる。
第一及び第二の空中線装置102a,105aは、上記のものと同様に構成されている。
【0006】
そして、水平偏波の電磁波を出力するときは、電力切換部106を第一の空中線装置102a側に切り換えて、信号発生部100aでパルス信号を発生させる。また、垂直偏波の電磁波を出力するときは、電力切換部106を第二の空中線装置側105aに切り換えて、信号発生部100aでパルス信号を発生させる。
このレーダ装置は、電力増幅部101aから出力された信号を電力切換部106で切り換えて、第一及び第二の空中線装置102a,105a双方に送るので、各空中線装置102a,105aから放射される電磁波の特性が安定する。
【0007】
【特許文献1】特開2003−156559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のレーダ装置において、電力増幅部101aで信号を大電力に増幅する場合には、電力切換部106に用いられるスイッチが、この電力に対して十分の耐電力性能を備える必要があった。
そのため、このようなスイッチは、電力増幅部101aに応じた仕様に適合するように、新たに試作設計して対応しなければならなくなるので、製造が難しいという問題があった。
特に、レーダ装置では、空中線装置102a,105aから放射する電磁波を強くして測定範囲を大きくするなどのために、電力増幅部101aで非常に大きな電力に増幅することもあり、レーダ装置の電力切換部106に用いる電力切換装置の製造が極めて難しかった。そのため、最悪の場合には、試作結果から電力切換装置の耐電力性能が不足して、レーザ装置が製造できないこともあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、既存の部材を用いても大電力の入力の切り換え動作ができるようにして、製造を容易にした電力切換装置,電力切換方法及びこの電力切換装置を用いたレーダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の電力切換装置は、入力の電力を分配するとともに、該分配された入力を出力可能な複数の分配出力路を有した分配部と、該分配部の分配出力路が個別に接続されるとともに、該分配部の分配出力路を介した入力を切り換えて出力可能な切換出力路を有した複数のスイッチ部と、該各スイッチ部の切換出力路が接続され、該出力路を介した入力の電力を合成して出力する合成部とを備えている。
【0011】
また、本発明の電力切換方法は、入力の電力を分配して複数を出力する分配ステップと、該分配ステップの複数の出力を個別に切り換えて出力する切換ステップと、該各スイッチ部の出力の電力を合成して出力する合成ステップとを備えている。
【0012】
また、本発明のレーダ装置は、電磁波を放射可能なレーダ装置であって、所定の送信信号を発生して出力可能な信号発生部と、該信号発生部から出力された送信信号が入力され、該送信信号を、その電力を増幅して出力可能な電力増幅部と、該電力増幅部から出力された送信信号が入力されるとともに、該送信信号を切り換えて出力可能な電力切換部と、該電力切換部から出力された送信信号が入力され、該送信信号に基づく電磁波を放射可能な空中線装置とを備え、前記電力切換部が、該電力切換部に入力された送信信号の電力を分配するとともに、該分配された送信信号を出力可能な複数の分配出力路を有した分配部と、該分配部の分配出力路が個別に接続されるとともに、該分配部の分配出力路を介して入力された送信信号を切り換えて出力可能な切換出力路を有した複数のスイッチ部と、該各スイッチ部の切換出力路が接続され、該切換出力路を介して入力された送信信号の電力を合成して出力する合成部とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電力切換装置、電力切換方法及びレーダ装置によれば、既存の部材を用いても大電力の入力の切り換え動作ができるようになるので、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電力切換装置及びこの電力切換装置を用いたレーダ装置の好ましい実施形態について、図1を参照しつつ説明する。なお、本発明の電力切換方法は、電力切換装置により実現されるので、レーダ装置の動作の部分で説明する。
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係るレーダ装置のブロック図を示している。
このレーダ装置は、電磁波を放射し、これが対象物で反射してなる反射波から対象物を測定するものである。
このレーダ装置の具体的構成は、所定の送信信号を発生して出力可能な信号発生部1と、信号発生部1から出力された送信信号が入力され、送信信号を、その電力を増幅して出力可能な電力増幅部2と、電力増幅部2から出力された送信信号が入力されるとともに、送信信号を切り換えて出力可能な電力切換部3と、電力切換部3から出力された送信信号が入力され、送信信号に基づく電磁波を放射可能な空中線装置K1,K2とを備えている。
また、本発明の実施形態に係る電力切換装置は、このレーダ装置の電力切換部3として用いられている。
【0016】
信号発生部1は、所定の波形のパルス信号からなるRF信号を発生し、これを送信信号として出力する。
電力増幅部2は、信号発生部1からの送信信号が入力され、これの電力を増幅して出力する。
また、電力増幅部2は、例えば、アンプ及びクライストロンを備えており、送信信号を大電力に増幅する。
【0017】
電力切換部3は、この電力切換部3に入力された送信信号の電力を分配するとともに、分配された送信信号を出力可能な複数の分配出力路30a〜30nを有した分配部30と、分配部30の分配出力路30a〜30nが個別に接続されるとともに、分配部30の分配出力路30a〜30nを介して入力された送信信号を切り換えて出力可能な切換出力路31a,31bを有した複数のスイッチ部31と、各スイッチ部31の切換出力路31a,31bが接続され、切換出力路31a,31bを介して入力された送信信号の電力を合成して出力する合成部C1,C2とを備えている。
【0018】
分配部30は、一つの入力300と、n(nは、2以上の自然数)個の分配出力路30a〜30nを備えている。
また、分配部30は、各分配出力路30a〜30nに、分配部30に入力された送信信号の電力をほぼ等しく分配する構成としている。すなわち、各分配出力路30a〜30nを介して出力される送信信号の電力pと、電力切換部3に入力された送信信号の電力Pとの関係が、p≒P/nとなる。
また、分配部30は、例えば、一つの入力及びn個の出力を備える既存の電力分配・合成器を使用してもよい。この電力分配・合成器には、高周波信号の電力の分配に適したものを用いることが好ましい。
【0019】
スイッチ部31は、n個あり、それぞれ、分配出力路30a〜30nのいずれかが接続される一つの入力310と、第一及び第二の切換出力路31a,31bとを備えている。
そして、スイッチ部31は、入力310に入力される送信信号を、第一及び第二の切換出力路31a,31bのいずれかに切り換えて出力する。
この各スイッチ部31は、例えば、既存のダイオードスイッチで構成されており、全て同様の構成としてもよい。
スイッチ部31は、その耐電力Tと各分配出力路30a〜30nを介して出力される送信信号の電力pとの関係において、T≧p(≒P/n)の関係を満たす構成となっている。
【0020】
合成部C1,C2は、二つ設けられており、それぞれ、n個の入力と、このn個の入力から入力された送信信号の電力を合成して出力する一つの出力35a,35bを備えている。
このうち、一方の第一の合成部C1には、各スイッチ部31の第一の切換出力路31aが接続されている。また、他方の第二の合成部C2には、各スイッチ部31の第二の切換出力路31bが接続されている。
また、各合成部C1,C2には、n個の入力及び一つの出力を備える既存の電力分配・合成器を使用してもよい。この電力分配・合成器には、高周波信号の電力の分配に適したものを用いることが好ましい。
また、第一及び第二の合成部C1,C2の出力35a,35bは、電力切換部3の出力として、空中線装置K1,K2側に接続されている。
【0021】
また、レーダ装置は、空中線装置K1,K2が、合成部の出力に対応して複数備えられている(本実施形態では二つ)。
この二つの空中線装置K1,K2のうち、第一の空中線装置K1には、電力切換部3の出力35aが接続されている。
また、第一の空中線装置K1は、電力切換部3の出力35aを介して送信信号が入力されると、送信信号に基づく水平偏波の電磁波を放射する。
また、第二の空中線装置K2には、電力切換部3の出力35bが接続されている。
また、第二の空中線装置K2は、電力切換部3の出力35bを介して、送信信号が入力されると、送信信号に基づく垂直偏波の電磁波を放射する。
【0022】
また、このレーダ装置は、信号発生部1及び電力切換部3を制御する制御部4を備えている。
制御部4は、第一又は第二の空中線装置K1,K2から電磁波を放射させるときに、信号発生部1にRF信号を発生させる信号を出力する。
また、制御部4は、n個のスイッチ部31のそれぞれに、所定の切換信号を出力して、これらのスイッチ部31を同期して第一及び第二の切換出力路31a,31bのいずれかに切り換えさせる。
【0023】
また、このレーダ装置は、第一及び第二の空中線装置K1,K2が受けた電磁波を、解析する受信装置8と、各空中線装置側K1,K2から電力切換部3側又は受信装置8側に接続を切り換える送受信切換部7を備えている。
受信装置8は、信号発生部1で発生したRF信号が入力され、これに基づいて周囲の対象物の形状、距離などを測定する。
送受信切換部7は、電力切換部3と第一及び第二の空中線装置K1,K2の間に設けられている。
また、この送受信切換部7は、例えば、各電力切換部の出力35a,35bごとに設けられるサーキュレータで構成されている。
【0024】
次に、以上のような構成からなる本実施形態のレーダ装置の動作を、図2に示す制御部4のフローチャートにしたがって説明する。
【0025】
次に、第一の空中線装置K1から水平偏波の電磁波を放射するときは(C1−1a)、制御部4が、各スイッチ部31を第一の切換出力路31aに切換させる信号を出力する(C1−2)。
この状態で、制御部4が、信号発生部1にRF信号を発生させる(C1−3)。
信号発生部1で発生させたRF信号は、送信信号として信号発生部1から出力され、電力増幅部2に入力される。
電力増幅部2においては、入力された送信信号の電力が増幅される。
【0026】
次に、電力増幅部2で増幅された送信信号が電力切換部3に入力される。電力切換部3に入力された送信信号は、分配部30でその電力が分配される。
分配部30で電力が分配された送信信号は、分配部30の分配出力路30a〜30nから出力されて、それぞれスイッチ部31に入力される。
【0027】
各スイッチ部31においては、制御部4により、第一の切換出力路31a側に切り換えられているので、第一の切換出力路31aから出力される。この各スイッチ部31から出力された送信信号は、第一の合成部C1に入力される。
【0028】
第一の合成部C1は、入力された各送信信号の電力を合成する。
第一の合成部C1で電力が合成された送信信号は、電力切換部3に入力された送信信号とほぼ同等のものとなる。
次に、第一の合成部C1から出力された送信信号は、電力切換部3の出力35aとして出力され、第一の空中線装置K1に入力される。
【0029】
そして、第一の空中線装置K1からは、水平偏波の電磁波が放射される。
また、第一の空中線装置K1は、電磁波を受信してこれを受信信号に変換するとともに、この受信信号を送受信切換部7を介して受信装置8側に出力する。
【0030】
また、第二の空中線装置K2から垂直偏波の電磁波を放射するときは(C1−1b)、制御部4が、各スイッチ部31を第二の切換出力路31bに切換させる切換信号を出力する(C1−4)。
この状態で、制御部4は、上記と同様にして、信号発生部1にRF信号を発生させ(C1−3)、送信信号として出力させる。
また、電力増幅部2は、入力された送信信号の電力を増幅して出力し、これを電力切換部3に入力する。
【0031】
電力増幅部2で増幅された送信信号が電力切換部3に入力される。電力切換部3に入力された送信信号は、分配部30でその電力が分配される。
分配部30で電力が分配された送信信号は、分配部30から出力されて、それぞれスイッチ部31に入力される。
【0032】
スイッチ部31においては、制御部4により、第二の出力31b側に切り換えられているので、第二の切換出力路31bから出力される。この各スイッチ部31から出力された送信信号は、第二の合成部C2に入力される。
第二の合成部C2は、各スイッチ部31からの送信信号の電力を合成する。
第二の合成部C2で電力が合成された送信信号は、電力切換部3に入力された送信信号とほぼ同等のものとなる。
【0033】
次に、第二の合成部C2から出力された送信信号は、電力切換部3の出力35bとして出力され、第二の空中線装置K2に入力される。
そして、第二の空中線装置K2からは、垂直偏波の電磁波が放射される。
また、第二の空中線装置K2は、電磁波を受信してこれを受信信号に変換するとともに、この受信信号を送受信切換部7を介して受信装置8側に出力する。
【0034】
そして、上述したように、レーダ装置は、第一及び第二の空中線装置K1,K2から水平偏波及び垂直偏波の電磁波を繰り返し放射させて、受信装置8において、この受信信号に含まれる反射波を解析し、これらに基づいて周囲の対象物の位置、形状などを測定する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る電力切換装置(電力切換部3)によれば、分配部30で、n個の出力に電力を分配し、これらが個別にスイッチ部31に入力されるので、各スイッチ部31に入力される送信信号の電力は、1/nとなる。
そのため、各スイッチ部31においては、電力切換部3に入力された送信信号の電力Pに耐えうる耐電力が必要なくなるので、スイッチ部に既存のものを用いることもできる。
これにより、電力切換部3は、既存の部材を用いても大電力の切り換え動作を行なうことができるようになるので、この電力切換部3の製造を容易に行うことができる。また、電力切換部3の製造コストも低減することもできる。
【0036】
また、制御部4が、スイッチ部31の切換方向を同期して切り換えさせるとともに、各スイッチ部31で、切り換えられたあとに合成部で合成されるので、電力切換部3に入力された送信信号と、電力切換部3から出力される送信信号とをほぼ同等の電力にすることができる。
【0037】
また、本実施形態に係るレーダ装置は、上記の電力切換装置を電力切換部3として用いているので、レーダ装置自体も容易に製造することができる。また、製造コストも安価にすることができる。
【0038】
また、電力切換部3に大きな電力の送信信号が入力されても、電力切換部3が、この送信信号を、確実に、第一又は第二の空中線装置K1,K2側に切り換えて出力することができる。
また、レーダ装置は、一つの電力増幅部2からの送信信号を電力切換部3で切り換えて、各空中線装置K1,K2に出力するので、これらから放射される電磁波の特性を安定させることができる。
【0039】
また、分配部30が、各分配出力路30a〜30nに、分配部に入力される送信信号の電力をほぼ等しく分配するので、各スイッチ部31に同じものを用いることができる。これにより、構造が簡単になるので、容易に製造することができる。
【0040】
さらに、スイッチ部31は、その耐電力Tと各分配出力路30a〜30nを介して出力される送信信号の電力pとの関係において、T≧p(≒P/n)の関係を満たす構成なので、各スイッチ部31にかかる電力が、各スイッチ部31の耐電力よりも低くなる。
そのため、電力切換部3が、壊れることなく、送信信号を、第一又は第二の空中線装置K1,K2側に切り換えて出力することができる。
【0041】
なお、上述の電力切換装置において、分配部30を合成部に、合成部K1,K2を分配部に反転させて用いることもできる。すなわち、このようにすると、複数の電力を、対応する複数の各分配部(図1で示す合成部C1,C2)に入力し、スイッチ部を介して一の合成部(図1で示す分配部30)から出力させることができ、例えば、別途設けた予備の信号発生部及び電力増幅部への切換に用いることができる。
【0042】
次に、本発明の別の実施形態に係る電力切換装置及びこの電力切換装置を用いたレーダ装置について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である。
図4は、本実施形態に係るレーダ装置の電力切換部3を示すブロック図である。
【0043】
これらの図に示す本実施形態に係るレーダ装置は、送信信号をm個(mは、3≦mとなる自然数)の出力(35a〜35m)のいずれかに切り換えて出力する電力切換部3と、電力切換部3からのm個の出力35a〜35mが個別に入力されるとともに、この入力に基づく電磁波を放射可能なm個の空中線装置K1〜Kmとを備える点で上述の電力切換部3と異なっている。
【0044】
また、電力切換部3において、スイッチ部32は、分配部30で出力されたn個の分配出力路30a〜30nが接続される一つの入力320と、この入力320を第1〜第m(mは、3≦mとなる自然数)の切換出力路32a〜32mを備えている。
このスイッチ部32は、入力320に入力された送信信号を、第1〜第mの切換出力路32a〜32mのいずれかに切り換えて出力する。
【0045】
また、電力切換部3は、各スイッチ部32の第1〜第mの切換出力路32a〜32mが個別に接続され、この第1〜第mの切換出力路32a〜32mを介して入力された送信信号の電力を合成して出力する第1〜第mの合成部C1〜Cmを備えている。
第1〜第mの合成部C1〜Cmの出力35a〜35mは、電力切換部3のm個の出力として出力される。
【0046】
m個の空中線装置K1〜Kmには、例えば、上記実施形態の空中線装置と同様に、対応する電力切換部3の出力35a〜35mが接続されている。
また、制御部4は、スイッチ部32の切換方向を同期して切り換える。
その他の構成部分は、上記第一実施形態と同様となっており、同様の構成部分については、図中で第一実施形態と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0047】
このレーダ装置において、第1の合成部C1の出力35aに接続された空中線装置K1から電磁波を放射するときは、制御部4が所定の切換信号を各スイッチ部32に出力し、これらのスイッチ部32の切換方向を、第1の出力に切り換える。
そして、制御部4が、信号発生部1に、送信信号を発生させて、この送信信号を空中線装置K1に供給する。
【0048】
次に、第2の合成部C2〜第mの合成部Cmに接続された空中線装置K2〜Kmから電磁波を放射するときは、上記と同様にして、制御部4が所定の切換信号を各スイッチ部32に出力する。そして、制御部4が、各スイッチ部32の切換方向を対応する第2〜第mの出力に切り換える。
このようにして、一つの電力増幅部2から電力切換部3で切り換えて、各空中線装置K1〜Kmのそれぞれに送信信号を出力するので、これらから放射される電磁波の特性を安定させることができる。
【0049】
このようにすると、電力増幅部2で増幅された電力の大きい送信信号を、電力切換部3が3以上の空中線装置K1〜Kmに切り換えて供給することができる。
なお、本実施形態の電力切換装置においても、上記第一実施形態と同様に、分配部30を合成部に、合成部K1〜Kmを分配部にそれぞれ反転させて用いることもできる。
【0050】
以上、本発明の装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る電力切換装置及びレーダ装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、電力増幅部は、アンプ及びクライストロンで構成したが、これに限定されるものでなく、例えば、マグネトロンやTWTなどの各種大電力増幅源を備えていてもよく適宜設計変更して差し支えない。
【0051】
また、電力切換装置は、レーダ装置のみに用いられることに限定されず、例えば、通信装置などの各種電波応用機器など、大きな電力を切り換えて供給する種々のシステムに用いてよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーダ装置の制御部のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係るレーダ装置の電力切換部を示すブロック図である。
【図5】従来のレーダ装置の一例を示す図である。
【図6】従来のレーダ装置の別の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 信号発生部
2 電力増幅部
3 電力切換部(電力切換装置)
30 分配部
30a〜30n 分配出力路
31,32 スイッチ部
31a,31b,32a〜32m 切換出力路
C1〜Cm 合成部
4 制御部
K1〜Km 空中線装置
7 送受信切換部
8 受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電力を分配するとともに、該分配された電力を出力可能な複数の分配出力路を有した分配部と、
該分配部の分配出力路が個別に接続されるとともに、該分配出力路を介して入力された電力を切り換えて出力可能な切換出力路を有した複数のスイッチ部と、
該各スイッチ部の切換出力路が接続され、該切換出力路を介して入力された電力を合成して出力する合成部とを備えることを特徴とする電力切換装置。
【請求項2】
前記スイッチ部が、前記切換出力路を複数備え、これらのいずれかから該スイッチ部に入力された電力を出力し、
前記合成部が、前記スイッチ部の切換出力路に対応して複数備えられるとともに、前記各スイッチ部の複数の出力路が個別に接続されることを特徴とする請求項1記載の電力切換装置。
【請求項3】
前記各スイッチ部の切換方向を同期して切り換えさせる制御部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電力切換装置。
【請求項4】
前記分配部が、前記各分配出力路に、前記分配部に入力された電力をほぼ等しく分配する構成とすることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の電力切換装置。
【請求項5】
入力された電力を分配して複数の電力を出力する分配ステップと、該分配ステップで出力された複数の電力を個別に切り換えて出力する切換ステップと、該切換ステップで出力される電力を合成して出力する合成ステップとを備えることを特徴とする電力切換方法。
【請求項6】
前記切換ステップにおいて、前記分配ステップの複数の出力を個別に、複数の出力に切り換えて出力し、
前記合成ステップにおいて、前記切換ステップの複数の出力を個別に合成することを特徴とする請求項5記載の電力切換方法。
【請求項7】
電磁波を放射可能なレーダ装置であって、
所定の送信信号を発生して出力可能な信号発生部と、該信号発生部から出力された送信信号が入力され、該送信信号を、その電力を増幅して出力可能な電力増幅部と、該電力増幅部から出力された送信信号が入力されるとともに、該送信信号を切り換えて出力可能な電力切換部と、該電力切換部から出力された送信信号が入力され、該送信信号に基づく電磁波を放射可能な空中線装置とを備え、
前記電力切換部が、該電力切換部に入力された送信信号の電力を分配するとともに、該分配された送信信号を出力可能な複数の分配出力路を有した分配部と、該分配部の分配出力路が個別に接続されるとともに、該分配部の分配出力路を介して入力された送信信号を切り換えて出力可能な切換出力路を有した複数のスイッチ部と、該各スイッチ部の切換出力路が接続され、該切換出力路を介して入力された送信信号の電力を合成して出力する合成部とを備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
前記スイッチ部が、前記切換出力路を複数備え、これらのいずれかから該スイッチ部に入力された送信信号を出力し、
前記合成部が、前記スイッチ部の切換出力路に対応して複数備えられるとともに、前記各スイッチ部の複数の出力路が個別に接続される構成とし、
前記空中線装置が、前記合成部の出力に対応して複数備えられることを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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