説明

電力増幅器の効率改善装置及び効率改善方法

【課題】増幅器パラメータの調整可能範囲について判断を行うことにより、最適な効率で増幅処理が行えるようにする。
【解決手段】 変調信号G1と、電力増幅器6から出力される送信信号G3の帰還信号G4とをサンプリングして、これを統計処理信号G5として出力する統計処理ユニット20と、効率改善ユニット30は、統計処理信号G5に基づき電力増幅器6のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号G7として出力する特性演算部31、帰還信号G4に基づき送信信号G3の品質を監視して、これを監視信号G9として出力する信号品質監視部33、予め設定された送信信号G3に対する信号仕様を示す変調情報信号G8、監視信号G9及び、特性信号G7に基づき電力増幅器6における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、電力増幅器6の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号G10として電力増幅器6に出力する効率改善制御部32、を含む効率改善ユニット30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器の効率改善装置及び効率改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TV用送信器や移動体通信等の大電力送信装置では、低いレベルの送信信号を生成し、電力増幅器(PA:PowerAmplifier)によって所要のレベルに電力増幅することが行われている。
このような電力増幅器に対しては、以下のことが要求される。
(1) 様々なチャネルに対応するために、電力増幅器は、広帯域の電力増幅器特性を持つ必要がある。
しかし、電力増幅器における増幅特性には、周波数に応じて異なる飽和点が存在する。
このことは、電力増幅器の利得特性やピーク特性等が、周波数により異なることを意味する。
従って、飽和点が最も低い周波数に対する要求を満たすように電力増幅器の増幅特性を設定すると、飽和点が高い周波数に対する増幅効率が低下する。
(2) 様々な送信器の出力に対応するためには、電力増幅器の出力電力が可変であることが望まれる。
例えば、電力増幅器を設計した定格電力以下で使用する場合には、電力増幅器のバックオフが必要以上に大きくなり、電力増幅器の効率が悪化する。
(3) 電力増幅器から出力される信号の相互変調歪み(IM:InterModulation)や変調誤差比(MER:ModulationErrorRatio)等の品質は、変調方式や送信機の出力電力によって異なる品質仕様が法律や規格で定められている。一般に品質を上げるには増幅器のバックオフを大きくする必要がある。電力増幅器は最も高い品質に合わせて設計する為、品質要件が低い条件で使用する場合には必要以上のバックオフとなり、電力増幅器の効率が悪化する。
【0003】
このような条件を満たすために、電力増幅器の増幅特性は、過剰に余裕を持った設計となることが多かった。即ち、電力増幅器は、オーバスペックに設計されることが多かった。
しかし、送信器における消費電力の多くは、電力増幅器で消費される。従って、オーバスペックに設計された電力増幅器においては、消費電力等の効率改善が困難である。従って、電力増幅器における効率化が要望されていた。
【0004】
このような要求に対して、特開2009−141411号公報においては、RF電力増幅トランジスタにより増幅されたRF信号の電力を検波する電力検波装置と、検波されたRF信号とRF電力増幅トランジスタを制御するための制御信号(ドレイン電圧信号)との入力タイミングのずれを検出する位相制御装置とを備える電力増幅器が開示されている。
そして、入力タイミングのずれの検出結果に応じて制御信号の位相を調整することで、変調信号(帯域信号)とバイアス変調信号との入力タイミングのずれが解消できるので、RF電力増幅トランジスタにおける高効率化と低歪み化が実現できる。
【0005】
また、特開2003−332923号公報においては、電力増幅器の歪みを補償する歪み係数を記憶する歪補償テーブルと、該電力増幅器の出力のフィードバック信号と入力信号との差から、歪み補償係数を更新する演算部と、送信電力制御信号を基に、最良の電力効率が得られるバイアス電圧を電力増幅器に加えるバイアス電圧制御部を備えた歪み補償機能を有する無線機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−141411号公報
【特許文献2】特開2003−332923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した各公報においては、電力増幅器における出力飽和電力レベルと信号の歪みと、に基づいて電力増幅器における増幅器パラメータの調整を行うが、このパラメータの調整の際に、調整が可能な範囲についての判断を行っていない。このため、パラメータ調整後における電力増幅器から出力される信号の品質が悪化する場合があった。
【0008】
そこで、本発明の主目的は、増幅器パラメータの調整可能範囲について判断を行うことにより、最適な効率とスペックを満足する信号品質で増幅処理が行える電力増幅器の効率改善装置及び効率改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる電力増幅器の効率改善装置は、変調信号と、電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理ユニットと、電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善ユニットと、を備え、効率改善ユニットは、統計処理信号に基づき電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算部と、帰還信号に基づき送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視部と、予め設定された送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、監視信号及び、特性信号に基づき電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として電力増幅器に出力する効率改善制御部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、電力増幅器の効率改善方法は、変調信号と、電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理手順と、電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善手順と、を含み、効率改善手順は、統計処理信号に基づき電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算手順と、帰還信号に基づき送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視手順と、予め設定された送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、監視信号及び、特性信号に基づき電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として電力増幅器に出力する効率改善制御手順と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、増幅器パラメータの調整可能範囲について判断を行うので、信号品質を保ちながら最適な効率で増幅処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる電力増幅器の効率改善装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる歪み補償処理を説明する信号特性を示した図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる電力増幅器の効率改善装置置における効率改善処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるテレビ送信器等に用いる電力増幅器の効率改善装置2のブロック図である。効率改善装置2は、歪み補償ユニット10、統計処理ユニット20、効率改善ユニット30を備える。また、歪み補償ユニット10は、歪み補償部11、補償係数演算部12を備え、効率改善ユニット30は、特性演算部31、効率改善制御部32、信号品質監視部33を備える。
【0014】
そして、歪み補償ユニット10は、変調器4からの変調信号G1に対して歪み補正を行い、これを補償済変調信号G2として電力増幅器6に出力する。電力増幅器6から出力される送信信号G3に対して要求する信号仕様に関する情報は、変調情報信号G8として送信器制御部8から効率改善ユニット30に入力している。
【0015】
そこで、効率改善ユニット30は、変調情報信号G8、出力信号検出部7からの送信信号G3のフィードバック信号(帰還信号)G4及び、統計処理ユニット20からの統計処理信号G5に基付き、電力増幅器6をフィードバック制御するための増幅器制御信号G10を電力増幅器6に出力する。電力増幅器6は、増幅器制御信号G10に基づき増幅器パラメータを調整し、調整された条件で補償済変調信号G2を増幅する。以下、各構成要素を詳細に説明する。
【0016】
変調器4は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号等の変調信号G1を生成して、効率改善装置2に出力する。
【0017】
電力増幅器6は、入力した信号の電力増幅を行い、これを送信信号G3として出力する。この電力増幅器6は、例えばMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)等のFETやバイポーラトランジスタを含んでいる。以下の説明においては、電力増幅器6はFETを含むものとする。このFETの増幅特性は、ゲート電圧値やドレイン電圧値に応じて変化する。このゲート電圧値やドレイン電圧値等がFETの増幅特性を決める設定値であり、本明細書では増幅器パラメータと記載する。電力増幅器6にバイポーラ等のトランジスタが用いられている場合は、エミッタ電圧値やコレクタ電圧値が増幅器パラメータとなる。
【0018】
出力信号検出部7は、電力増幅器6から出力された送信信号を検出する。出力信号検出部7は、例えば図示しない電力分配器により検出することが可能である。
【0019】
送信器制御部8は、送信信号G3に対して要求される信号仕様に関する情報を変調情報信号G8として、効率改善制御部32に出力する。
【0020】
統計処理ユニット20には、変調信号G1及び帰還信号G4が入力する。そして、統計処理ユニット20は、変調信号G1及び帰還信号G4を所定周期でサンプリングし、これを統計処理信号G5として補償係数演算部12及び特性演算部31に出力する。
【0021】
歪み補償ユニット10における補償係数演算部12は、統計処理信号G5に基づき電力増幅器6の歪み成分を演算する。即ち、統計処理信号G5は、ある時刻における変調信号G1と帰還信号G4とにより構成されている。理想的には、帰還信号G4は歪んでいないことが望まれる。しかし、飽和点近傍においては、電力増幅器6の増幅特性は非線形になるためAM−AM歪み、AM−PM歪み等の歪みが発生する。
【0022】
そこで、補償係数演算部12は、統計処理信号G5から変調信号G1と帰還信号G4との差分を演算して、演算結果に基づき補償係数を算出する。この補償係数は補償係数信号G6として歪み補償部11に出力される。歪み補償部11は、補償係数信号G6に基づき、変調信号G1に対して補償処理を行う。補償処理された変調信号G1は、補償済変調信号G2として電力増幅器6に出力される。
【0023】
図2は、このような歪み補償処理を説明する信号特性を示した図である。図2において、横軸は電力増幅器6に入力する入力信号、縦軸は電力増幅器6の出力信号を示している。なお、図2において、入力信号と出力信号の信号値(パワー)は、規格化して示している。
【0024】
曲線C2は理想的な(歪みのない)入力信号又は出力信号を示している。一方、曲線C1は、曲線C2が入力信号であったときに電力増幅器6で歪んで出力された出力信号を示している。また、曲線C3は、曲線C2に対して適正な歪み補償を行った電力増幅器6の入力信号を示している。
【0025】
即ち、曲線C2の信号を電力増幅器6に入力させるとC1曲線の歪んだ出力信号が出力される。従って、電力増幅器6における歪みを考慮して、曲線C2の信号に対して歪み補償を行うことにより、この歪み補償が行われた信号(曲線C3)が電力増幅器6に入力した場合には、電力増幅器6から曲線C2の信号が出力されることになる。
【0026】
統計処理ユニット20から出力される統計処理信号G5は、曲線C2に対応する変調信号G1と、曲線C1に対応する帰還信号G4とから構成されるので、補償係数演算部12は統計処理信号G5から変調信号G1と帰還信号G4との差分を演算して、歪み量を算出する。この歪み量が、補償係数信号G6として歪み補償部11に出力される。
【0027】
歪み補償部11は、効率改善ユニット30からの補償係数信号G6に基づき変調器4からの変調信号G1を補正する。即ち、図2における曲線C2を曲線C3に補正する。従って、送信信号G3には、歪みが含まれなくなり、又は、含まれる歪みが小さくなる。なお、このような歪み補償部11に関する構成は周知の構成が適用できるので、詳細な説明を省略する。
【0028】
効率改善ユニット30における特性演算部31は、統計処理ユニット20からの統計処理信号G5に基づき、電力増幅器6のバックオフ(back−off)量を演算して、この演算結果を特性信号G7として効率改善制御部32に出力する。バックオフ量は、図2に示すように飽和点(ピークパワ−)と平均パワーとの差を示している。
【0029】
信号品質監視部33は、電力増幅器6からの帰還信号G4に基づき送信信号G3におけるIM(Inter Modulation)、MER(Modulation Error Ratio)等により信号品質を監視する。監視結果は、監視信号G9として効率改善制御部32に出力する。なお、信号特性の品質監視には、IMやMERの他にビット誤り率(BAR:BitErrorRate)等を用いても良い。
【0030】
効率改善制御部32は、特性演算部31からの特性信号G7、信号品質監視部33からの監視信号G9及び送信器制御部8からの変調情報信号G8に基づき、電力増幅器における増幅器パラメータの調整自由度が有るか否かを判断して、自由度の範囲で電力増幅器6の効率を向上させるように増幅器制御信号G10を出力する。そして、効率改善制御部32は、監視信号G9に基づき電力増幅器6の出力特性を判断して、送信信号G3が変調情報信号G8により規定される信号仕様を下回らないように、増幅器パラメータを演算する。増幅器パラメータは、増幅器制御信号G10として電力増幅器6に出力される。なお、増幅器制御信号G10には、電力増幅器6におけるFETを停止させる情報が含まれることもある。従って、電力増幅器6における電力消費の抑制が可能になる。
【0031】
次に、電力増幅器の効率改善装置2における効率改善処理を、図3に示すフローチャートに従い説明する。
【0032】
ステップS1: 効率改善制御部32は、信号品質監視部33からの監視信号G9に基づき、送信出力G3の信号品質(IM、MER等)が、要求される信号仕様に対して余裕を持つか否かの判断を行う。なお、要求される送信信号G3の信号仕様は、送信器制御部8から変調情報信号G8として与えられる。
【0033】
電力増幅器6のバックオフを小さくするように制御すると、送信信号G3のIM、MER等の信号品質は劣化する傾向にある。そこで、効率改善制御部32は、効率改善制御を行っても信号仕様で規定される信号品質より悪くなるか否かの判断を行なう。そして、送信信号G3の信号品質が信号仕様に対して余裕がある場合は、ステップS2に進み、余裕がない場合は、ステップS5に進む。
【0034】
ステップS2: 効率改善制御部32は、電力増幅器6のバックオフと、電力増幅器6に要求されるバックオフとを比較し、電力増幅器6のバックオフを小さくする効率改善制御が行えるか否かを判断する。この判断により、電力増幅器6の効率改善制御を行っても送信信号G3に要求される信号仕様が満たされると判断した場合は、ステップS3に進み、信号仕様が満たされ得ないと判断した場合には、ステップS1に戻る。
【0035】
ステップS3: 電力増幅器6の効率改善制御を行っても信号仕様が満たされると判断した場合には、効率改善制御部32は、増幅器パラメータ値を演算して、これを増幅器制御信号G10として電力増幅器6に出力する。このとき、電力増幅器6が飽和領域付近で動作するように(バックオフを小さくするように)、増幅器パラメータ値が演算される。電力増幅器6は、増幅器制御信号G10に基づき増幅器パラメータを設定する。
【0036】
具体的には、電力増幅器6に用いられているFETのドレイン電圧値やゲート電圧値を示す増幅器制御信号G10が電力増幅器6に出力される。電力増幅器6は、増幅器制御信号G10に基づきドレイン電圧値やゲート電圧値を設定する。これにより電力増幅器6におけるバックオフが小さくなるように設定される。
【0037】
ステップS4: 次に、電力増幅器6の歪み補償が収束するまで所定時間待機する。これは、電力増幅器6のドレイン電圧値やゲート電圧値等の増幅器パラメータが変化すると、電力増幅器6のリニア特性(非線形特性)が変化し、その変化に歪み補償が追従する時間を待つ為である。このような、ステップS1〜S4の動作が繰り返し行われて、電力増幅器6の効率が改善される。
【0038】
ステップS5: 一方、ステップS1において信号品質が、信号仕様に対して余裕を持たないと判断した場合、電力増幅器6の効率改善制御が過剰制御状態であるか否かの判断を行う。例えば、ステップS1からステップS4と処理が進み、電力増幅器6の効率改善制御が行われた場合に、過剰制御となり、送信信号G3の信号品質が要求される信号仕様を下回ることが起こり得る。このような場合は、電力増幅器6が過剰制御状態であると判断する。そして、電力増幅器6が過剰制御状態であると判断した場合にはステップS6に進み、過剰制御状態でないと判断した場合にはステップS1に戻る。
【0039】
ステップS6: 電力増幅器6が過剰制御状態であると判断した場合、ステップS3と同様に、電力増幅器6における増幅器パラメータの設定が行われる。但し、この場合は、過剰制御状態であるので、電力増幅器6のバックオフを大きくするように増幅器パラメータを設定する。
【0040】
ステップS7: そして、ステップS4と同様に、歪み補償が変化に追従するまで、所定時間待機する。
【0041】
このようなステップS5〜ステップS7の処理を繰返し行うことにより、過剰制御となっても適正な制御に戻す事が可能になる。
【0042】
以上説明したように、歪み補償部において電力増幅器で発生する歪み量を演算して、電力増幅器6に入力する信号に対して補償を行うので、歪みが抑制された送信信号が利用可能になる。
【0043】
また、電力増幅器のバックオフを常に監視し、変調信号の情報(必要となるバックオフ)や送信信号の検出情報に基づき、送信信号の品質を保ちつつ、電力増幅器をできるだけ効率のよい状態で動作させることが可能になる。
【0044】
なお、所謂フィードバック制御は、出力値が指令値と一致するように、パラメータ設定を行う。従って、指令値が要求する信号品質を満たすか否かを問わない。しかし、本実施形態においては、上述したように、要求される信号品質を満たす範囲で、電力増幅器を制御する。従って、信号品質を保ちながら最良の効率が得られるようになる。
【0045】
また歪み補償ユニットにおける歪み補償処理においては統計処理ユニットからの統計処理信号が必須であることから、効率改善ユニットを付加するだけで、信号品質を保ちながら最良の効率が得られるようになる。従って、製造コストのコストアップが抑制できる。
【0046】
上述した本発明の特徴を纏めると、以下のようになる。
【0047】
[付記1]
電力増幅器の効率改善装置であって、
変調信号と、前記電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理ユニットと、
前記電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善ユニットと、を備え、
前記効率改善ユニットは、前記統計処理信号に基づき前記電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算部と、
前記帰還信号に基づき前記送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視部と、
予め設定された前記送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、前記監視信号及び、前記特性信号に基づき前記電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき前記電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として前記電力増幅器に出力する効率改善制御部と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0048】
[付記2]
付記1に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記統計処理信号に基づき、前記電力増幅器により生じる歪み量を演算して、この演算結果を補償係数として出力する補償係数演算部と、
前記補償係数に基づき前記変調信号に対して歪み補償処理を行う歪み補償部と、を備えることを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0049】
[付記3]
付記1又は2に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記監視信号とに基づき要求される信号仕様に対して前記送信信号の信号品質が所定の余裕を持つか否かを判断することを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0050】
[付記4]
付記1乃至3のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器におけるバックオフの変更が可能か否かを判断することを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0051】
[付記5]
付記1乃至4のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器の効率改善制御が過剰制御状態であるか否かの判断を行うことを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0052】
[付記6]
付記1乃至5のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記電力増幅器に前記増幅器制御信号を出力した後、所定時間経過するまで、制御を停止することを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【0053】
[付記7]
電力増幅器の効率改善方法であって、
変調信号と、前記電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理手順と、
前記電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善手順と、を含み、
前記効率改善手順は、前記統計処理信号に基づき前記電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算手順と、
前記帰還信号に基づき前記送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視手順と、
予め設定された前記送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、前記監視信号及び、前記特性信号に基づき前記電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき前記電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として前記電力増幅器に出力する効率改善制御手順と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【0054】
[付記8]
付記7に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記統計処理信号に基づき、前記電力増幅器により生じる歪み量を演算して、この演算結果を補償係数として出力する補償係数演算手順と、
前記補償係数に基づき前記変調信号に対して歪み補償処理を行う歪み補償手順と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【0055】
[付記9]
付記7又は8に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記監視信号とに基づき要求される信号仕様に対して前記送信信号の信号品質が所定の余裕を持つか否かを判断する手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【0056】
[付記10]
付記7乃至9のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器におけるバックオフの変更が可能か否かを判断する手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【0057】
[付記11]
付記7乃至10のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器の効率改善制御が過剰制御状態であるか否かの判断を行う手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【0058】
[付記12]
付記7乃至11のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記電力増幅器に前記増幅器制御信号を出力した後、所定時間経過するまで、制御を停止する手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【符号の説明】
【0059】
2 効率改善装置
4 変調器
6 電力増幅器
7 出力信号検出部
8 送信器制御部
10 補償ユニット
11 補償部
12 補償係数演算部
20 統計処理ユニット
30 効率改善ユニット
31 特性演算部
32 効率改善制御部
33 信号品質監視部
G1 変調信号
G2 補償済変調信号
G3 送信信号
G4 帰還信号
G5 統計処理信号
G6 補償係数信号
G7 特性信号
G8 変調情報信号
G9 監視信号
G10 増幅器制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の効率改善装置であって、
変調信号と、前記電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理ユニットと、
前記電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善ユニットと、を備え、
前記効率改善ユニットは、前記統計処理信号に基づき前記電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算部と、
前記帰還信号に基づき前記送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視部と、
予め設定された前記送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、前記監視信号及び、前記特性信号に基づき前記電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき前記電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として前記電力増幅器に出力する効率改善制御部と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記統計処理信号に基づき、前記電力増幅器により生じる歪み量を演算して、この演算結果を補償係数として出力する補償係数演算部と、
前記補償係数に基づき前記変調信号に対して歪み補償処理を行う歪み補償部と、を備えることを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記監視信号とに基づき要求される信号仕様に対して前記送信信号の信号品質が所定の余裕を持つか否かを判断することを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器におけるバックオフの変更が可能か否かを判断することを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善装置であって、
前記効率改善制御部は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器の効率改善制御が過剰制御状態であるか否かの判断を行うことを特徴とする電力増幅器の効率改善装置。
【請求項6】
電力増幅器の効率改善方法であって、
変調信号と、前記電力増幅器から出力される送信信号の帰還信号とをサンプリングして、これを統計処理信号として出力する統計処理手順と、
前記電力増幅器の増幅器パラメータを設定させる効率改善手順と、を含み、
前記効率改善手順は、前記統計処理信号に基づき前記電力増幅器のバックオフ量を演算して、この演算結果を特性信号として出力する特性演算手順と、
前記帰還信号に基づき前記送信信号の品質を監視して、これを監視信号として出力する信号品質監視手順と、
予め設定された前記送信信号に対する信号仕様を示す変調情報信号、前記監視信号及び、前記特性信号に基づき前記電力増幅器における増幅器パラメータの調整許容度を判断し、該判断結果に基づき前記電力増幅器の増幅器パラメータを演算して、この演算結果を増幅器制御信号として前記電力増幅器に出力する効率改善制御手順と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記統計処理信号に基づき、前記電力増幅器により生じる歪み量を演算して、この演算結果を補償係数として出力する補償係数演算手順と、
前記補償係数に基づき前記変調信号に対して歪み補償処理を行う歪み補償手順と、を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記監視信号とに基づき要求される信号仕様に対して前記送信信号の信号品質が所定の余裕を持つか否かを判断する手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器におけるバックオフの変更が可能か否かを判断する手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電力増幅器の効率改善方法であって、
前記効率改善制御手順は、前記変調情報信号と前記特性信号に基づき、前記電力増幅器の効率改善制御が過剰制御状態であるか否かの判断を行う手順を含むことを特徴とする電力増幅器の効率改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90133(P2012−90133A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236085(P2010−236085)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】