説明

電力変換装置及びその製造方法

【課題】収容ケースにおける液状ガスケットのはみ出しを抑制することができる電力変換装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】第1ケース体21と第2ケース体22とを組み合わせてなる収容ケース2を備えた電力変換装置1。第1ケース体21及び第2ケース体22は、第1フランジ部31及び第2フランジ部32を備えている。第1フランジ部31における第1接合面41と、第2フランジ部32における第2接合面42とは、互いの間に液状ガスケット5を挟持した状態で対向配置されている。第1フランジ部31と第2フランジ部32との接合部26における周方向の少なくとも一部である特定領域261においては、第1接合面41が幅広接合面411を有し、第2フランジ部32に切欠段部321が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケース体を組み合わせてなる収容ケースを備えた電力変換装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されるインバータやコンバータ等の電力変換装置は、スイッチング素子等の電子部品や冷却器などの構成部品を、アルミニウム等からなる収容ケースの内部に収容してなる。収容ケースは、複数のケース体(例えばケース本体と蓋体)を組み合わせて構成してなる。
【0003】
複数のケース体の接合部には、両者の間からの水分の浸入を阻止するために、シール材を配設してある。かかるシール材として、液状ガスケットが用いられる。すなわち、一方のケース体のフランジ部における接合面に、液状ガスケットを塗布し、その上から他方のケース体のフランジ部の接合面を重ね合わせて、収容ケースを組み立てる。
【0004】
ところが、液状ガスケットを塗布した後、一対のケース体のフランジ部によって液状ガスケットが圧縮されるため、図12に示すごとく、液状ガスケット5が、一対のフランジ部931、932の間から、収容ケースの内側及び外側へはみ出すことがある。生産性の観点から、一対のケース体を接合した後、通常は、液状ガスケット5が硬化する前に次の工程へ進む。そうすると、その後の工程において、外側にはみ出た液状ガスケット5に、他の部品、治具、作業者の手等が触れると、液状ガスケット5がちぎれるおそれがある。液状ガスケット5がちぎれる際には、一対のフランジ部931、932の接合面941、942の間に配置されている液状ガスケット5にも引き剥しの力が及び、液状ガスケット5によるシール性能に影響を与えるおそれがある。
【0005】
また、ちぎれた液状ガスケット5の破片がフランジ部931、932周辺に落下するなどして、品質に影響を与えるおそれがある。例えば、工程内の検査時に、電力変換装置のコネクタ部に外部コネクタ6を差し込んだり、抜いたりすることがあるが、このような作業時に、外部コネクタ6が液状ガスケット5に触れて、液状ガスケット5がちぎれるとともにコネクタ部に落下することも考えられる。この場合、導通不良等の問題を招くおそれもある。
【0006】
なお、特許文献1に記載の構成のように、上側の接合面の幅を下側の接合面の幅よりも大きくすることで、液状ガスケットが、上側の接合面よりも外側へ大きくはみ出ることを防ぐことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−36979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のような構成をとると、外側へはみ出た液状ガスケットは、下方へ垂れ落ちるおそれがある。また、下側のケースのフランジ部よりも外側へ液状ガスケットがはみ出ることは阻止できないため、上記と同様に、液状ガスケットのちぎれによる不具合を解消することができない。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、収容ケースにおける液状ガスケットのはみ出しを抑制することができる電力変換装置及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、少なくとも第1ケース体と第2ケース体とを組み合わせてなる収容ケースを備え、該収容ケースの内側に構成部品を収容してなる電力変換装置であって、
上記第1ケース体及び上記第2ケース体は、それぞれの開口端の全周に第1フランジ部及び第2フランジ部を備え、
上記第1フランジ部における第1接合面と、上記第2フランジ部における第2接合面とは、互いの間に液状ガスケットを挟持した状態で対向配置され、
上記第1フランジ部と上記第2フランジ部との接合部における周方向の少なくとも一部である特定領域においては、上記第1接合面が上記第2接合面よりも幅が大きくかつ外側へ突出した幅広接合面を有すると共に、上記第2フランジ部の外側面から内側へ後退すると共に上記幅広接合面に対向配置された切欠段部が形成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明にかかる電力変換装置を製造する方法であって、上記第1ケース体と上記第2ケース体とを、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とにおいて接合するにあたり、
上記第2接合面が上向きとなるように上記第2ケース体を配置し、
次いで、上記第2接合面に液状ガスケットを塗布し、
次いで、上記第1接合面が下向きとなるように上記第1ケース体を上記第2ケース体の上方に配置し、
次いで、上記第1接合面を上記第2接合面に対向配置させると共に両者の間に上記液状ガスケットを挟んだ状態で、上記第1ケース体と上記第2ケース体とを接合することを特徴とする電力変換装置の製造方法にある(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明にかかる電力変換装置において、上記特定領域においては、上記第1接合面が上記幅広接合面を有すると共に、上記第2フランジ部に上記切欠段部が形成されている。これにより、少なくとも上記特定領域においては、上記液状ガスケットが第1フランジ部の外側面と上記第2フランジ部の外側面よりも外側へはみ出ることを抑制することができる。
【0013】
すなわち、上記第1接合面が第2接合面よりも幅が大きくかつ外側へ突出した上記幅広接合面を有することにより、第1接合面と第2接合面との間に配された液状ガスケットが両者の間から外側へ突出したとしても、第1接合面(幅広接合面)よりも外側へはみ出ることを抑制することができる。
また、上記第2フランジ部に、外側面から内側へ後退すると共に幅広接合面に対向配置された切欠段部が形成されているため、第1接合面と第2接合面との間に配された液状ガスケットが両者の間から外側へ突出したとしても、この突出部分が上記切欠段部に配されることとなる。
【0014】
その結果、第1フランジ部及び上記第2フランジ部の外側面から液状ガスケットがはみ出ることを抑制することができる。
それゆえ、例えば、電力変換装置の生産工程において、外側にはみ出た液状ガスケットに、他の部品、治具、作業者の手等が触れて液状ガスケットがちぎれるなどといった不具合を抑制することができ、液状ガスケットのシール性能に影響を与えることを防ぐことができる。また、ちぎれた液状ガスケットの破片がフランジ部周辺に落下するなどして、電力変換装置の品質に影響を与えることも防ぐことができる。
【0015】
第2の発明にかかる電力変換装置の製造方法においては、上記第2接合面が上向きとなるように上記第2ケース体を配置して、該第2接合面に液状ガスケットを塗布する。ここで、上記特定領域においては、第2接合面は第1接合面(幅広接合面)よりも幅が狭い。そして、第1接合面が第2接合面よりも外側に突出している。それゆえ、第2接合面に液状ガスケットを塗布した後に第1接合面を重ね合わせたときに、液状ガスケットが外側へ突出しても、第1接合面よりも外側へ突出することを抑制することができる。また、突出した液状ガスケットが第2接合面から外側へ垂れても、切欠段部に垂れ落ちることとなり、第2フランジ部の外側面に垂れ落ちることを防ぐことができる。
その結果、第1フランジ部及び上記第2フランジ部の外側面から液状ガスケットがはみ出ることを効果的に抑制することができる。これにより、液状ガスケットのちぎれなどの不具合を防ぐことができる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、収容ケースにおける液状ガスケットのはみ出しを抑制することができる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、収容ケースの断面図。
【図2】実施例1における、収容ケース(電力変換装置)の斜視図。
【図3】実施例1における、第1ケース体(蓋体)を組み付ける前の電力変換装置の平面説明図。
【図4】実施例1における、特定領域の接合部の断面図。
【図5】実施例1における、(A)第2フランジ部の断面図、(B)第2接合面に液状ガスケットを塗布した後の第2フランジ部の断面図。
【図6】第1接合面を上に向けた場合の接合部の断面図。
【図7】実施例2における、特定領域の接合部の断面図。
【図8】実施例3における、特定領域の接合部の断面図。
【図9】実施例4における、収容ケースの断面図。
【図10】比較例1における、接合部の断面図。
【図11】比較例2における、接合部の断面図。
【図12】背景技術における、接合部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記電力変換装置において、上記特定領域は、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部との接合部の全域にわたって形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
また、上記収容ケースは、上記第1ケース体と上記第2ケース体との2つのケース体からなるものであってもよいし、さらに他のケース体との組み合わせによって構成されていてもよい。
【0019】
また、上記液状ガスケットは、少なくとも塗布時において液状であるガスケットであり、例えば、塗布後の乾燥等によって硬化するものを用いることができる。そして、硬化した後の液状とはいえない状態となった液状ガスケットも「液状ガスケット」に含まれるものとする。
また、上記第1接合面の幅、あるいは、上記第2接合面の幅とは、収容ケースの内外方向の寸法を意味する。
また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されるインバータやコンバータ等とすることができる。
【0020】
また、上記第2フランジ部は、上記特定領域においては、内側面を略平坦面としていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記第2フランジ部付近における収容ケース内のスペースを大きく確保しやすい。すなわち、例えば、上記第2フランジ部の外側面に設けた上記切欠段部と同じような段部を第2フランジ部の内側面にも設けると、この段部を設けるために第2フランジ部の厚みを大きく確保する必要が生じる。その分、第2フランジ部の内側における収容ケースの内部空間が狭くなることとなる。その一方で、内側に突出した液状ガスケットには、液状ガスケットの塗布後の工程において、部品、治具、作業者の手等が接触することが少ない。それゆえ、第2フランジ部の内側には、上記切欠段部のような段部がなくても、液状ガスケットがちぎれるなどして不具合を招くおそれがない。それゆえ、内側面を略平坦面として、収容ケースの内部空間をできるだけ広く確保することが好ましい。
【0021】
また、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とは、互いをボルトによって締結固定するためのボルト座部を備え、該ボルト座部が形成された領域以外の領域に上記特定領域を設けていることが好ましい(請求項3)。この場合には、第1フランジ部のボルト座部と第2フランジ部のボルト座部との合わせ面の幅を一致させることが可能となるため、双方のボルト座部を効率的に形成することができる。また、上記ボルト座部が形成されている部分においては、液状ガスケットが外側へはみ出し難いため、上記特定領域のような構成を適用する必要性が少ない。
【0022】
また、上記第2ケース体には、外部機器との電気的接続を図るためのコネクタ部が形成されており、該コネクタ部の開口方向が上記第2ケース体の開口方向と略一致しており、上記第2ケース体の開口方向から見たとき、上記コネクタ部と上記特定領域とが隣接していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記コネクタ部に接続する外部コネクタ等と上記液状ガスケットとの干渉を効果的に防ぐことができる。すなわち、上記コネクタ部に対して外部コネクタを着脱する作業が、第1ケース体と第2ケース体との接合工程の後に存在することがある。例えば、検査工程において、外部コネクタを上記コネクタ部に着脱することがある。かかる場合において、コネクタ部が、第2ケース体の開口方向(外部コネクタの抜き差し方向)から見て接合部に隣接していると、外部コネクタ等が接合部付近を通過することとなる。ここで、仮に接合部から液状ガスケットがはみ出していると、はみ出した液状ガスケットに外部コネクタが干渉するおそれがある。その結果、液状ガスケットがちぎれてコネクタ部に落下するおそれがある。そうすると、コネクタ部と外部コネクタとの間の導通不良を招くおそれもある。そこで、第2ケース体の開口方向から見たとき、上記コネクタ部に上記特定領域が隣接していることにより、上記のような不具合を防ぐことができる。すなわち、上記特定領域の構成による作用効果を特に有効に発揮することができる。
【0023】
また、上記液状ガスケットは、上記特定領域においては、上記第2接合面の全面に密着していることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記第1フランジ部と上記第2フランジとの間のシール性を高めやすい。そして、この場合には、液状ガスケットが第2接合面の外側へ突出しやすいところ、上記特定領域の構成によって、液状ガスケットが外側へはみ出ることを効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置及びその製造方法につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図3に示すごとく、収容ケース2の内側に構成部品を収容してなる。収容ケース2は、図1、図2に示すごとく、第1ケース体21と第2ケース体22とを組み合わせてなる。
第1ケース体21及び第2ケース体22は、それぞれの開口端の全周に第1フランジ部31及び第2フランジ部32を備えている。第1フランジ部31における第1接合面41と、第2フランジ部32における第2接合面42とは、互いの間に液状ガスケット5を挟持した状態で対向配置されている。
【0025】
第1フランジ部31と第2フランジ部32との接合部26における周方向の一部である特定領域261は、図4に示すような構造を有する。すなわち特定領域261においては、第1接合面41が第2接合面42よりも幅が大きくかつ外側へ突出した幅広接合面411を有する。つまり、特定領域261においては、第1接合面41の幅W1が、第2接合面42の幅W2よりも大きい。また、特定領域261においては、第2フランジ部32の外側面322から内側へ後退すると共に幅広接合面411に対向配置された切欠段部321が形成されている。
【0026】
電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、例えばインバータとコンバータとを一体化した電力変換装置とすることができる。すなわち、電力変換装置1は、車両に搭載された直流バッテリーと、車両を駆動する交流回転電機との間において電力変換を行うよう構成されている。
【0027】
収容ケース2は、図2に示すごとく、全体形状が略直方体形状を有する。本例において、第2ケース体22はケース本体であって、第1ケース体21はケース本体の開口端を塞ぐ蓋体である。第2ケース体22は、底部とその外周縁から立設した壁部とからなり、壁部の立設側端部に第2フランジ部32を有する。第2フランジ部32は、特に壁部における他の部分との形状的な区別はないが、第1ケース体21と接合される壁部の立設側端部を第2フランジ部32とする。
【0028】
また、第1ケース体21は、第2ケース体22の底部に対向する天井板と、その外周縁から第2ケース体22側へ立設する壁部とからなる。そして、壁部の立設側端部に第1フランジ部31を有する。第1フランジ部31は、壁部における他の部分よりも厚みが大きくなっている。
【0029】
図1、図4に示すごとく、第2フランジ部32は、特定領域261も含めて、内側面323を略平坦面としている。第1フランジ部31も、同様に、内側面313を略平坦面としている。また、第1フランジ部31と第2フランジ部32とは、互いの内側面313、323同士が略同一平面上に配置されるように、接合されている。
また、第1フランジ部32の外側面322と第2フランジ部32の外側面322とも、互いに略同一平面上に配置されている。
【0030】
図4に示すごとく、第2フランジ部32に形成された切欠段部321は、第2接合面42と平行であって第1接合面41と対向する段部底面325と、第2フランジ部32の外側面322と平行な段部側面326とによって形成されている。
【0031】
図2に示すごとく、第1フランジ部31と第2フランジ部32とは、互いをボルト15によって締結固定するためのボルト座部314、324を備えている。ボルト座部314、324が形成された領域以外の領域に、特定領域261が設けてある。
ボルト座部314、324は、図2、図3に示すごとく、収容ケース2における長方形状の接合部26の4つの角部と、一対の長辺の中央部との6箇所に形成されている。そして、収容ケース2における長方形状の接合部26の一対の短辺のうち、下記のコネクタ部25が形成された側の短辺に、上記特定領域261が形成されている。
【0032】
図1〜図3に示すごとく、第2ケース体22には、外部機器との電気的接続を図るためのコネクタ部25が形成されている。コネクタ部25の開口方向は第2ケース体22の開口方向と略一致している。そして、図3に示すごとく、第2ケース体22の開口方向から見たとき、コネクタ部25と特定領域261とが隣接している。
【0033】
図2に示すごとく、収容ケース2内には、電力変換装置1の構成部品が収容されている。具体的には、収容ケース2内において、電力変換回路の一部を構成する半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール11と、該半導体モジュール11を冷却するための冷却媒体を流通させる冷却管12とが積層配置されている。
半導体モジュール11と冷却管12とは交互に積層され、積層方向の一端には、半導体モジュール11と冷却管12との積層体14を積層方向に加圧する加圧部材13が配設されている。加圧部材13は板バネからなり、第2ケース体22の壁部と積層体14との間に介設されている。
【0034】
複数の冷却管12は、その長手方向の両端部付近において互いに連結されて、冷却器を構成している。そして、加圧部材13が配設された側と反対側の端部に配された冷却管12から、冷却器内に冷却媒体を導入するための冷媒導入管121と、冷却器から冷却媒体を排出するための冷媒排出管122とが取り付けてある。そして、冷媒導入管121及び冷媒排出管122は、収容ケース2から突出している。
【0035】
第2ケース体22における加圧部材13が配設された側の壁部の外側には、コネクタ部25が形成されている。コネクタ部25は、半導体モジュール11を制御する制御回路基板(図示略)に、ケーブル(図示略)によって接続されている。制御回路基板は、収容ケース2内において、積層体14の第1ケース体21側に配置されている。
このコネクタ部25には、ECU(エンジンコントロールユニット)に接続された外部コネクタを接続できるよう構成されている。
【0036】
次に、本例の電力変換装置1の製造方法につき説明する。
第1ケース体21と第2ケース体22とを接合する前に、第2ケース体22の内側に、複数の半導体モジュール11と複数の冷却管12との積層体をはじめ、電力変換装置1の構成部品を配置する(図3参照)。
【0037】
第1ケース体21と第2ケース体22とを、第1フランジ部31と第2フランジ部32とにおいて接合するにあたっては、まず、図5(A)に示すごとく、第2接合面42が上向きとなるように第2ケース体22を配置する。
次いで、図5(B)に示すごとく、第2接合面42に液状ガスケット5を塗布する。ここで、液状ガスケット5は、第2接合面42の中央部付近に、例えば断面略楕円状の状態で配置される。
【0038】
次いで、第1接合面41が下向きとなるように第1ケース体21を第2ケース体22の上方に配置する。
次いで、図4に示すごとく、第1接合面41を第2接合面42に対向配置させると共に両者の間に液状ガスケット5を挟んだ状態で、第1ケース体21と第2ケース体22とを接合する。このとき、液状ガスケット5は、第2接合面42と第1接合面41とによって押しつぶされて、第2接合面42の全面に広がる。そして、液状ガスケット5の一部が、接合部26の内側及び外側へ押し出されることがある。
【0039】
そして、図2に示すごとく、互いに重なりあった6組のボルト座部314、324において、ボルト15を締結する。これにより、第1ケース体21と第2ケース体22とを接合して、内部に電力変換装置1の構成部品を収容した収容ケース2を形成する。
この状態において、液状ガスケット5は、特定領域261においては、第2接合面42の全面に密着している。
また、液状ガスケット5は、少なくとも塗布時において液状であり、第1ケース体21と第2ケース体22との接合後、乾燥等によって硬化する。
【0040】
次に、本例の作用効果につき説明する。
電力変換装置1において、上記特定領域261においては、第1接合面41が幅広接合面411を有すると共に、第2フランジ部32に切欠段部321が形成されている。これにより、少なくとも特定領域261においては、液状ガスケット5が第1フランジ部31の外側面312と第2フランジ部32の外側面322よりも外側へはみ出ることを抑制することができる。
【0041】
すなわち、第1接合面41が第2接合面42よりも幅が大きくかつ外側へ突出した幅広接合面411を有することにより、第1接合面41と第2接合面42との間に配された液状ガスケット5が両者の間から外側へ突出したとしても、第1接合面41(幅広接合面411)よりも外側へはみ出ることを抑制することができる。
また、第2フランジ部32に、外側面322から内側へ後退すると共に幅広接合面411に対向配置された切欠段部321が形成されているため、図4に示すごとく、第1接合面41と第2接合面42との間に配された液状ガスケット5が両者の間から外側へ突出したとしても、この突出部分が切欠段部321に配されることとなる。
【0042】
その結果、第1フランジ部31及び第2フランジ部32の外側面312、322から液状ガスケット5がはみ出ることを抑制することができる。
それゆえ、例えば、電力変換装置1の生産工程において、外側にはみ出た液状ガスケット5に、他の部品、治具、作業者の手等が触れて液状ガスケット5がちぎれるなどといった不具合を抑制することができ、液状ガスケット5のシール性能に影響を与えることを防ぐことができる。また、ちぎれた液状ガスケット5の破片がフランジ部周辺に落下するなどして、電力変換装置1の品質に影響を与えることも防ぐことができる。
【0043】
また、第1ケース体21と第2ケース体22とを接合する際には、図5に示すごとく、第2接合面42が上向きとなるように第2ケース体22を配置して、第2接合面42に液状ガスケット5を塗布する。ここで、特定領域261においては、第2接合面42は第1接合面41(幅広接合面411)よりも幅が狭い。そして、第1接合面41が第2接合面42よりも外側に突出している。それゆえ、図4に示すごとく、第2接合面42に液状ガスケット5を塗布した後に第1接合面41を重ね合わせたときに、液状ガスケット5が外側へ突出しても、第1接合面41よりも外側へ突出することを抑制することができる。また、突出した液状ガスケット5が第2接合面42から外側へ垂れても、切欠段部321に垂れ落ちることとなり、第2フランジ部32の外側面322に垂れ落ちることを防ぐことができる。
その結果、第1フランジ部31及び第2フランジ部32の外側面312、322から液状ガスケット5がはみ出ることを効果的に抑制することができる。これにより、液状ガスケット5のちぎれなどの不具合を防ぐことができる。
【0044】
なお、図6に示すごとく、幅広接合面411を備えた第1接合面41が上を向くようにして第1フランジ部31を配置し、第1接合面41に液状ガスケット5を塗布し、その上から第2接合面42を重ね合わせる方法も考えられる。つまり、例えば、ケース本体を第1ケース体21とし、蓋体を第2ケース体22とした場合などにおいて、上記のような配置が考えられる。しかし、この場合には、間に液状ガスケット5を挟むように第1フランジ部31と第2フランジ部32とを重ね合わせたとき、液状ガスケット5が第1接合面41から外側へ押し出されると、液状ガスケット5が第1フランジ部31及び第2フランジ部32の外側面312、322よりも外側にはみ出ることとなる。
また、第2接合面42の外側へ液状ガスケット5がはみ出ると、第2フランジ部32の外側から下方へ液状ガスケット5が垂れ落ちるおそれもある。
【0045】
それゆえ、上記のように、第2接合面42を上向きにして、そこに液状ガスケット5を塗布したうえで、第1接合面41を重ね合わせる方法をとることが好ましい。これにより、液状ガスケット5の塗布量を容易に制御することができると共に、液状ガスケット5が第1フランジ部31及び第2フランジ部32の外側面312、322よりも外側にはみ出ることを防止することができる。
【0046】
また、第2フランジ部32は、特定領域261においては、内側面323を略平坦面としている。これにより、第2フランジ部32付近における収容ケース2内のスペースを大きく確保しやすい。すなわち、例えば、第2フランジ部32の外側面322に設けた切欠段部321と同じような段部を第2フランジ部32の内側面323にも設けると、この段部を設けるために第2フランジ部32の厚みを大きく確保する必要が生じる。その分、第2フランジ部32の内側における収容ケース2の内部空間が狭くなることとなる。その一方で、内側に突出した液状ガスケット5には、液状ガスケット5の塗布後の工程において、部品、治具、作業者の手等が接触することが少ない。それゆえ、第2フランジ部32の内側には、切欠段部321のような段部がなくても、液状ガスケット5がちぎれるなどして不具合を招くおそれがない。それゆえ、内側面323を略平坦面として、収容ケース5の内部空間をできるだけ広く確保している。
【0047】
また、特定領域261は、ボルト座部314、324が形成された領域以外の領域に設けている。これにより、第1フランジ部31のボルト座部314と第2フランジ部32のボルト座部324との合わせ面の幅を一致させることが可能となるため、双方のボルト座部314、324を効率的に形成することができる。また、ボルト座部314、324が形成されている部分においては、液状ガスケット5が外側へはみ出し難いため、特定領域261のような構成を適用する必要性が少ない。
【0048】
また、第2ケース体22の開口方向から見たとき、コネクタ部25と特定領域261とが隣接している。これにより、コネクタ部25に接続する外部コネクタ6と液状ガスケット5との干渉を効果的に防ぐことができる。すなわち、コネクタ部25に対して外部コネクタ6を着脱する作業が、第1ケース体21と第2ケース体22との接合工程の後に存在することがある。例えば、検査工程において、外部コネクタ6をコネクタ部25に着脱することがある。かかる場合において、コネクタ部25が、第2ケース体22の開口方向(外部コネクタ6の抜き差し方向)から見て接合部26に隣接していると、外部コネクタ6が接合部26付近を通過することとなる。ここで、仮に、図12に示すごとく、接合部26から液状ガスケット5がはみ出していると、はみ出した液状ガスケット5に外部コネクタ6が干渉するおそれがある。その結果、液状ガスケット5がちぎれてコネクタ部25に落下するおそれがある。そうすると、コネクタ部25と外部コネクタ6との間の導通不良を招くおそれもある。そこで、第2ケース体22の開口方向から見たとき、コネクタ部25に特定領域261が隣接していることにより、上記のような不具合を防ぐことができる。すなわち、特定領域261の構成による作用効果を特に有効に発揮することができる。
【0049】
また、液状ガスケット5は、特定領域261においては、第2接合面42の全面に密着している。それゆえ、第1フランジ部31と第2フランジ32との間のシール性を高めやすい。そして、この場合には、液状ガスケット5が第2接合面42の外側へ突出しやすいところ、特定領域261の構成によって、液状ガスケット5が外側へはみ出ることを効果的に抑制することができる。
【0050】
以上のごとく、本例によれば、収容ケースにおける液状ガスケットのはみ出しを抑制することができる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【0051】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、特定領域261における第1接合面41(幅広接合面411)を、第2接合面42の内側からも突出するように配置した例である。
つまり、第1フランジ部31の内側面313を、第2フランジ部32の内側面323よりも内側にオフセットさせている。
その他は、実施例1と同様である。
【0052】
本例の場合には、第2フランジ部32に対して、第1フランジ部31が多少外側へずれた状態で接合されても、第2接合面42の全幅において、第1接合面41と対向させることができる。それゆえ、多少の組み付け誤差があった場合にも、両者の接合部26の幅を一定に確保し、シールに寄与する液状ガスケット5の幅を一定に確保することができる。その結果、接合部26におけるシール性能のばらつきを容易に防ぐことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、切欠段部321の形状を変更した例である。
すなわち、切欠段部321を構成する段部底面325と段部側面326との間の角部を曲面に形成し、また、段部底面325と第2フランジ部32の外側面322との間の角部も曲面に形成している。
【0054】
ただし、段部側面326と第2接合面42との間の角部には、積極的に曲面を形成しない。これは、第2接合面42の幅W2を制御し難くなり、液状ガスケット5の塗布量を制御し難くなるためである。
その他は、実施例2と同様の構成、作用効果を有する。
なお、切欠段部321の形状は、種々変更することができ、例えば、段部底面325を第2接合面42に対して傾斜させるなどしてもよい。
【0055】
(実施例4)
本例は、図9に示すごとく、収容ケース2を3個のケース体を組み合わせて構成した例である。
すなわち、収容ケース2は、第1ケース体21と第2ケース体22とに加え、第2ケース体23を備えている。つまり、第2ケース体22は、第1ケース体21側と反対側の面も開放面とした枠形状を有する。そして、第1ケース体21側と反対側の開放面を覆うように、第3ケース体23が配設されている。
【0056】
第2ケース体22と第3ケース体23との間の接合部260にも、液状ガスケット5が介在している。この接合部260には、上記特定領域261は形成されていない。ただし、この接合部260にも特定領域261を形成してもよい。
その他は、実施例2と同様の構成を有し、同様の作用効果を有する。
【0057】
(比較例1)
本例は、図10に示すごとく、第2フランジ部32に、切欠段部321の代わりにテーパ面39を設けた例である。
テーパ面39は、第2フランジ部32における外側面322と第2接合面42との間に、両者に対して傾斜する平坦面として形成されている。
その他は、実施例2と同様である。
【0058】
本例の場合には、テーパ面39を充分に大きく形成すれば、第1接合面41と第2接合面42との間から液状ガスケット5が外側へ押し出されても、その突出した液状ガスケット5をテーパ面39と第1接合面41との間に配置することはできる。しかし、テーパ面39を形成すると、第2接合面42の幅W2の制御が困難となり、液状ガスケット5の塗布量を制御し難くなる。その結果、接合部26におけるシール性能のばらつきを防ぐことが困難となる。
【0059】
これに対して、実施例1〜4のように、第2フランジ部32に切欠段部321を設けた場合には、第2接合面42に対して切欠段部321の段部側面326が略直交するように形成されている(図4等参照)。そのため、第2接合面42の幅W2を正確に確保しやすく、液状ガスケット5の塗布量のばらつきを容易に防ぐことができる。
【0060】
(比較例2)
本例は、図11に示すごとく、第1接合面41の幅W1を第2接合面42の幅W2よりも小さくした例である。
この場合、図11(A)に示すごとく、第1フランジ部31の内側面313を第2フランジ部32の内側面323と同一面上に配置すると、第2フランジ部32の切欠段部321に第1接合面41が対向しなくなる。そうすると、液状ガスケット5が接合部26から押し出されたとき、液状ガスケット5が第1フランジ部31の外側面312よりも大きくはみ出るおそれがある。
【0061】
また、図11(B)に示すごとく、第1接合面41を第2フランジ部32の切欠段部321に対向させるように、第1フランジ部31を配置すると、第2接合面42が第1接合面41よりも内側に突出する。すなわち、第2フランジ部32の内側面323が第1フランジ31の内側面313よりも内側にオフセットされる。
【0062】
この場合には、第1接合面41と第2接合面42との対向部分の幅が小さくなる一方で、第2フランジ部32が内側へ張り出すこととなる。それゆえ、第1フランジ部31と第2フランジ部32との接合部26のシール性能においても、収容ケース2内のスペースにおいても、不利となりやすい。
また、接合部26に配される液状ガスケット5の幅もばらつきやすく、シール性能のばらつきを招きやすい。
【0063】
これに対し、実施例1〜4のように、第1接合面41の幅W1を第2接合面42の幅W2よりも大きくすることにより、接合部26のシール性能及び収容ケース2内のスペースを確保しつつ、液状ガスケット5の外側へのはみ出しを抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電力変換装置
2 収容ケース
21 第1ケース体
22 第2ケース体
26 接合部
261 特定領域
31 第1フランジ部
32 第2フランジ部
321 切欠段部
322 (第2フランジ部の)外側面
41 第1接合面
411 幅広接合面
42 第2接合面
5 液状ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1ケース体と第2ケース体とを組み合わせてなる収容ケースを備え、該収容ケースの内側に構成部品を収容してなる電力変換装置であって、
上記第1ケース体及び上記第2ケース体は、それぞれの開口端の全周に第1フランジ部及び第2フランジ部を備え、
上記第1フランジ部における第1接合面と、上記第2フランジ部における第2接合面とは、互いの間に液状ガスケットを挟持した状態で対向配置され、
上記第1フランジ部と上記第2フランジ部との接合部における周方向の少なくとも一部である特定領域においては、上記第1接合面が上記第2接合面よりも幅が大きくかつ外側へ突出した幅広接合面を有すると共に、上記第2フランジ部の外側面から内側へ後退すると共に上記幅広接合面に対向配置された切欠段部が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記第2フランジ部は、上記特定領域においては、内側面を略平坦面としていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とは、互いをボルトによって締結固定するためのボルト座部を備え、該ボルト座部が形成された領域以外の領域に上記特定領域を設けていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記第2ケース体には、外部機器との電気的接続を図るためのコネクタ部が形成されており、該コネクタ部の開口方向が上記第2ケース体の開口方向と略一致しており、上記第2ケース体の開口方向から見たとき、上記コネクタ部と上記特定領域とが隣接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記液状ガスケットは、上記特定領域においては、上記第2接合面の全面に密着していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電力変換装置を製造する方法であって、上記第1ケース体と上記第2ケース体とを、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とにおいて接合するにあたり、
上記第2接合面が上向きとなるように上記第2ケース体を配置し、
次いで、上記第2接合面に液状ガスケットを塗布し、
次いで、上記第1接合面が下向きとなるように上記第1ケース体を上記第2ケース体の上方に配置し、
次いで、上記第1接合面を上記第2接合面に対向配置させると共に両者の間に上記液状ガスケットを挟んだ状態で、上記第1ケース体と上記第2ケース体とを接合することを特徴とする電力変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−233497(P2012−233497A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100560(P2011−100560)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】