説明

電力変換装置

【課題】列盤に分けて収納した平滑コンデンサユニットとインバータユニットとの間に配線する主母線に関して、母線の低インピーダンス化と併せて、その配線スペースを縮小して配電盤の薄形化が図れるように配線構造を改良する。
【解決手段】列盤構造になる自立形配電盤1にインバータを含む主回路機器を収納した電力変換装置で、直流中間回路に接続した平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6を隣接する電源盤2,インバータ盤3に分けて収納配置し、その列盤の内側に布設した水平母線を介して配線したものにおいて、その母線を幅広,薄厚な帯状導体の母線7P,7Nと、その母線導体の両面に絶縁バリア板9,10,11を重ねて一体化した母線組立体7で構成し、この母線組立体7を列盤の背面側支柱2b,3bに穿孔した長穴2c,3cに嵌挿して配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列盤構造になる自立形配電盤にインバータを含む主回路機器を収納した電力変換装置に関し、詳しくは列盤に分けて収納した直流中間回路の平滑コンデンサユニットとインバータユニットとの間を接続する水平母線の配線構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記の電力変換装置は、列盤構造になる自立形配電盤の盤内にコンバータ,平滑コンデンサ,インバータの主回路機器を収納して構築したもので、その構成例を図3(a)〜(c)に示す。
図3において、1は左右に並ぶ電源盤2とインバータ盤3で構築した自立形配電盤、2a,3aは電源盤,インバータ盤の前面扉である。ここで、電源盤2にはスナバ回生ユニット4を含む主回路の電源機器(回路遮断器など)、およびコンバータ/インバータ間の直流中間回路に接続した平滑コンデンサユニット(電解コンデンサ)5が収納され、インバータ盤3にはGTO素子,IGBT素子などの半導体素子で構成した複数のインバータユニット6が上下段(図示例では3段)に並べて収納されており、次記のように電源盤2,インバータ盤3の盤内に布設した水平母線を介して平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6との間が配線されている。
次に、前記の平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6との間を接続するよう盤内に布設した直流中間回路の母線について、従来例の配線構造を図4(a)〜(c)に示す。すなわち、電源盤2,インバータ盤3にまたがって盤内の背面側には各インバータユニット6と個々に対応するP極,N極の母線7P,7Nが上下段に並べて布設され、該母線から分岐した分岐接続導体8を介して平滑コンデンサユニット5とインバータユニット7との間が配線されている。
【0003】
ここで、従来の配線構造では、前記の母線7P,7Nが裸の平角導体(バー導体)であり、盤内に収納した平滑コンデンサユニット5,インバータユニット6の背後側を迂回する配線経路に沿って布設されている。また、この母線7Pと7Nの相互間、母線7P,7Nと平滑コンデンサユニット5,インバータユニット6の主回路機器(充電部)との間、および母線7P,7Nと配電盤1(接地側の非充電金属構造体)との間には規格で定められた空間絶縁距離を確保するように設定している。
一方、前記の主回路母線7P,7Nに関しては、その配線インピーダンスが大きいと半導体素子のスイッチング動作で発生するサージ電圧が大きくなる問題があることから、その配線インピーダンスの低減化対策として母線7P,7Nを表皮効果の大きな幅広,薄厚の平板状導体で構成し、両導体の間に絶縁板を挟んで平行に布設した配線構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−143757号公報(段落[0003]〜[0006],図6,図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記の電力変換装置は、主回路母線の配線インピーダンス低減化のほかに、盤内における母線の配線スペースをできるだけ小さく抑えて配線距離の短縮化,および配電盤の小形,コンパクト化を図ることが要望されている。
かかる点、図4に示した従来の配線構造では、主回路機器を迂回して盤内の背面側に引き回し配線した母線7Pと7Nの相互間、該母線7P,7Nと主回路機器および盤構造物との間には主回路電圧に相応した絶縁空間距離を確保する必要があり、しかも電源盤2,インバータ盤3の四隅コーナーには盤の内側に向けて支柱2b,3b(接地側の非充電金属構造体)が立設されていることから、この支柱2b,3bを避けて母線7P,7Nとの間に絶縁空間距離を確保する必要があるために、電源盤2,インバータ盤3の奥行き寸法Dが必然的に大きくなって装置全体が大形化する。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、列盤の間にまたがって平滑コンデンサユニットとインバータユニットとの間に配線する水平母線の低インピーダンス化と併せて、その配線スペースを縮小して配電盤の薄形,コンパクト化が推進できるように配線構造を改良した電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によれば、列盤構造になる自立形配電盤にインバータを含む主回路機器を収納した電力変換装置で、直流中間回路に接続した平滑コンデンサユニットとインバータユニットを隣接する列盤に分けて収納配置し、その列盤の内側に布設した水平母線を介して平滑コンデンサユニットとインバータユニットとの間を配線したものにおいて、
前記水平母線を幅広,薄厚な帯状導体とし、かつその導体の両面に絶縁バリア板を重ねて異極の導体を一体に積層した上で、その母線組立体を列盤間の支柱に穿孔した長穴に嵌挿して配線する(請求項1)。
また、前記構成において、水平母線の導体表面を絶縁材でコーティング処理して絶縁性を強化する(請求項2)。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、母線を表皮効果が大きい幅広,薄厚な帯状導体とし、かつその導体の両面に絶縁バリア板を重ねて異極の導体を積層することにより、その配線インピーダンスの低減化が図れるほか、絶縁被覆電線と同等な絶縁性を確保して主回路機器に近づけて配線できる。そして、この母線組立体を左右に並ぶ列盤の支柱に穿孔した長穴を通る配線経路に沿って盤内に布設することにより、母線を裸バー導体としてその相互間、および該バー導体と主回路機器、盤構造物との間に絶縁空間距離を確保した従来の配線構造と比べて、平滑コンデンサユニットとインバータユニットの間の配線距離,配線スペースを縮小し、さらに配電盤の奥行き方向で前記母線組立体と盤の外郭との間の間隔を縮めて盤自身を薄形,コンパクトに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図1,図2に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1(a)〜(c)は図4(従来構造)に対応する本発明実施例の配線構造図、図2(a)〜(c)は母線組立体の詳細構造図であり、図3,図4に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、図示実施例では平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6との間に配線する主母線を、従来の裸バー導体に代えて図2(a)〜(c)で示すように扁平な帯状導体の母線7P,7Nに3枚の絶縁バリア板9〜11を重ねて一体化した母線組立体7で構成し、この母線組立体7を図1で示すように電源盤2とインバータ盤3にまたがって盤内の背面側に布設して平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6との間を接続するようにしている。
ここで、P極,N極の母線7P,7Nは表皮効果の大きな幅広,薄厚(例えば幅100mm,厚さ2mm)な帯状導体であり、その両端および中間の分岐端子部を除いて導体の表面(斜線で表した領域)に絶縁材(樹脂材)をコーティング処理して絶縁コーティング層7aを被膜形成している。さらに、この母線7P,7Nに3枚の絶縁バリア板9,10,11を重ねて表裏両側からサンドイッチ状に挟んだ上で、その長手方向の2箇所をねじ12により締結して一体構造の母線組立体7を構成している。なお、母線7P,7Nのねじ締結箇所に開けたねじ穴には絶縁管を嵌入して締結ねじ12と絶縁しておくものとする。
【0008】
一方、前記の母線組立体7の配線経路に沿って電源盤2とインバータ盤3との境に立設した支柱2b,3bには、前記母線組立体7の配線経路に高さを合わせて縦長の長穴2c,3cをあらかじめ穿孔しておく。そして、盤内に収納した平滑コンデンサユニット5とインバータユニット6との間に主回路の水平母線を配線する際には、母線組立体7を前記支柱2b,3bの長穴2c,3cに嵌挿した上で、母線7P,7Nの端子部に分岐接続導体8を介して平滑コンデンサユニット5,インバータユニット6の外部端子と接続(ねじ締結)し、所定の配線回路を形成する。
上記の配線構造によれば、直流中間回路のP極,N極に対応する母線7Pと7Nは、その導体表面に絶縁コーティング層7aを施した上で、さらに絶縁バリア板9,10,11の間にサンドイッチ状に挟んで導体の両面が絶縁されている。したがって、母線7P,7Nとその配線経路に対向する盤内の主回路機器(平滑コンデンサユニット5,インバータユニット6)との間、および母線7P,7Nと電源盤2,インバータ盤3の外郭(パネル)およびその支柱2b,3bとの間には、従来の裸バー導体を採用する場合の絶縁空間距離を確保することなく、互いに接近させて盤内に布設することかできる。これにより、配電盤の奥行き方向で母線7P,7Nの配線距離,配線スペースを縮小し、さらに盤の奥行き寸法dを従来構造の奥行き寸法Dよりも縮減して装置全体の小形,コンパクト化,並びに製品コストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例による電力変換装置の盤内における主回路の配線構造図で、(a)は盤内上部の正面図、(b)は(a)の矢視A−A断面図、(c)は(b)の矢視B−B断面図
【図2】図1における母線組立体の詳細構造図で、(a),(b)は平面図,および側面図、(c)は分解斜視図
【図3】本発明の実施対象となる電力変換装置前端の構成図で、(a)は正面図、(b)は盤内の主回路機器配置を示す正面図、(c)は(b)の矢視X−X断面図
【図4】図3の盤内に布設した主母線の従来における配線構造図で、(a)は盤内上部の正面図、(b)は(a)の矢視A−A断面図、(c)は(b)の矢視B−B断面図
【符号の説明】
【0010】
1 列盤構造の自立形配電盤
2 電源盤
3 インバータ盤
2b,3b 支柱
2c,3c 長穴
5 平滑コンデンサユニット
6 インバータユニット
7 母線組立体
7P P極の母線
7N N極の母線
7a 絶縁コーティング層
8 母線の分岐接続導体
9,10,11 絶縁バリア板
12 締結ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
列盤構造になる自立形配電盤にインバータを含む主回路機器を収納した電力変換装置であり、直流中間回路に接続した平滑コンデンサユニットとインバータユニットを隣接する列盤に分けて収納配置し、その列盤の内側に布設した水平母線を介して平滑コンデンサユニットとインバータユニットとの間を配線したものにおいて、
前記水平母線を幅広,薄厚な帯状導体とし、かつその導体の両面に絶縁バリア板を重ねて異極の導体を一体に積層した上で、その母線組立体を列盤間の支柱に穿孔した長穴に嵌挿して配線したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、母線の導体表面を絶縁材でコーティング処理したことを特徴とする電力変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95152(P2009−95152A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263894(P2007−263894)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】