電力変換装置
【課題】導通損失が大きくなるのを抑制することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、片方向スイッチ11〜28と、入力側端子と複数の片方向スイッチ11〜28との間に設けられる直流インダクタ31〜36とをそれぞれ含む3個の電流形インバータ回路1〜3を備え、電流形インバータ回路1〜3の入力側端子を短絡するとともに、3個の電流形インバータ回路1〜3の出力側端子同士を並列接続し、3個の電流形インバータ回路1〜3にそれぞれ設けられる直流インダクタ31、33および35(32、34および36)同士を結合させて、片方向スイッチ11〜28のオンオフに基づいて、結合された直流インダクタ31〜36の巻線間において電流が移動する動作が行われるように構成されている。
【解決手段】この電力変換装置100は、片方向スイッチ11〜28と、入力側端子と複数の片方向スイッチ11〜28との間に設けられる直流インダクタ31〜36とをそれぞれ含む3個の電流形インバータ回路1〜3を備え、電流形インバータ回路1〜3の入力側端子を短絡するとともに、3個の電流形インバータ回路1〜3の出力側端子同士を並列接続し、3個の電流形インバータ回路1〜3にそれぞれ設けられる直流インダクタ31、33および35(32、34および36)同士を結合させて、片方向スイッチ11〜28のオンオフに基づいて、結合された直流インダクタ31〜36の巻線間において電流が移動する動作が行われるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源の各相と出力側の各相を双方向スイッチで直接接続し、交流電源の各相と双方向スイッチとの間に接続された入力側リアクトルと、負荷の各相と双方向スイッチとの間に接続された出力側リアクトルと、出力側リアクトルの双方向スイッチ側端子間を接続する第1のコンデンサ群と、第1のコンデンサ群を構成するコンデンサ相互間の接続を接断可能な第1の接断回路と、入力側リアクトルの双方向スイッチ側各端子間を接続する第2のコンデンサ群と、第2のコンデンサ群を構成するコンデンサ相互間の接続を接断可能な第2の接断回路と、入力側インダクタの双方向スイッチ側を、双方向スイッチを用いて短絡したり、出力側に接続したりすることで、電源電圧よりも高い電圧を出力する昇圧出力の機能を備えたマトリクスコンバータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/112275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマトリクスコンバータは、昇圧チョッパの原理に基づく電流形電力変換器であるが、入力と出力の双方にリアクトル、コンデンサ及び接断手段であるスイッチを備える必要があり、装置が大形化するという問題がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置が大形化するのを抑制することが可能な電流形電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電力変換装置は、M相(Mは2以上の自然数)の交流が入力されるとともに、N相(Nは2以上の自然数)の交流が出力される電力変換装置であって、複数の片方向スイッチと、入力側端子と複数の片方向スイッチとの間に設けられるインダクタとをそれぞれ含む複数の電力変換部を備え、電力変換部の入力側端子を短絡するとともに、複数の電力変換部の出力側端子同士を並列接続し、複数の電力変換部にそれぞれ設けられるインダクタ同士を結合させて、複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、結合されたインダクタの巻線間において電流を移動させる動作ができるように構成されている。
【0007】
この一の局面による電力変換装置では、上記のように、複数の電力変換部にそれぞれ設けられるインダクタ同士を結合させて、複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、結合されたインダクタの巻線間において電流を移動させる動作を行うことによって、外部のリアクトル、スイッチを省略できるため、装置の大形化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電力変換装置の制御回路のブロック図である。
【図3】従来の電流形電力変換装置の双方向スイッチ群の回路図である。
【図4】図3と電気的に等価な電力変換装置の回路図である。
【図5】3相入力3相出力電流形インバータの回路図である。
【図6】本発明の第1実施形態による電力変換装置の出力側の空間ベクトル図である。
【図7】本発明の第1実施形態による電力変換装置の入力側の空間ベクトル図である。
【図8】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS、ITT)を生成する場合の回路図である。
【図9】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRT、ISR、ITS)を生成する場合の回路図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRS、IST、ITR)を生成する場合の回路図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるスイッチ駆動信号のタイムチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図13】従来の電流形電力変換装置の双方向スイッチ群の回路図である。
【図14】図13と電気的に等価な電力変換装置の回路図である。
【図15】2相入力3相出力電流形インバータの回路図である。
【図16】本発明の第2実施形態による電力変換装置の入力側の空間ベクトル図である。
【図17】本発明の第2実施形態による電力変換装置のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS)を生成する場合の回路図である。
【図18】本発明の第2実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRS、ISR)を生成する場合の回路図である。
【図19】本発明の第3実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図20】本発明の第3実施形態による電力変換装置のNが奇数の場合の出力側の空間ベクトル図である。
【図21】本発明の第3実施形態による電力変換装置のNが偶数の場合の出力側の空間ベクトル図である。
【図22】本発明の第4実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図23】本発明の第1〜第4実施形態の変形例による電力変換装置の回路図である。
【図24】図15に示す2相入力3相出力電流形インバータの第1変形例による電流形インバータの回路図である。
【図25】図15に示す2相入力3相出力電流形インバータの第2変形例による電流形インバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置100は、3相交流電源の入力端子であるR端子、S端子およびT端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子と、3個の電力変換回路1、2および3と、フィルタ用キャパシタ4、5および6と、フィルタ用キャパシタ7、8および9と、制御回路51とを有する。なお、電力変換回路1〜3は、本発明の「電力変換部」の一例である。
【0012】
電力変換回路1は、6個の片方向スイッチ11〜16と、直流インダクタ31および32とを含む。片方向スイッチ11〜16は、それぞれ、ダイオード41と、トランジスタ42とによって構成されている。片方向スイッチ11〜16は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1R、S4R、S3R、S6R、S5RおよびS2Rによって駆動される。また、電力変換回路1の入力側端子(直流インダクタ31のR端子側、直流インダクタ32のR端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ31は、R端子と、片方向スイッチ11、13および15との間に設けられている。また、直流インダクタ32は、R端子と、片方向スイッチ12、14および16との間に設けられている。
【0013】
電力変換回路2は、電力変換回路1と同様の構成を有する。すなわち、電力変換回路2は、6個の片方向スイッチ17〜22と、直流インダクタ33および34とを含む。片方向スイッチ17〜22は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1S、S4S、S3S、S6S、S5SおよびS2Sによって駆動される。また、電力変換回路2の入力側端子(直流インダクタ33のS端子側、直流インダクタ34のS端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ33は、S端子と、片方向スイッチ17、19および21との間に設けられている。また、直流インダクタ34は、S端子と、片方向スイッチ18、20および22との間に設けられている。
【0014】
電力変換回路3は、電力変換回路1と同様の構成を有する。すなわち、電力変換回路3は、6個の片方向スイッチ23〜28と、直流インダクタ35および36とを含む。片方向スイッチ23〜28は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1T、S4T、S3T、S6T、S5TおよびS2Tによって駆動される。また、電力変換回路3の入力側端子(直流インダクタ35のT端子側、直流インダクタ36のT端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ35は、T端子と、片方向スイッチ23、25および27との間に設けられている。また、直流インダクタ36は、T端子と、片方向スイッチ24、26および28との間に設けられている。また、片方向スイッチ11、13、15、17、19、21、23、25および27は、本発明の「第1片方向スイッチ」の一例である。また、片方向スイッチ12、14、16、18、20、22、24、26および28は、本発明の「第2片方向スイッチ」の一例である。また、直流インダクタ31、33および35は、本発明の「インダクタ」および「第1インダクタ」の一例である。また、直流インダクタ32、34および36は、本発明の「インダクタ」および「第2インダクタ」の一例である。
【0015】
ここで、第1実施形態では、直流インダクタ31、33および35は、結合されており、実際には一つのインダクタである。また、直流インダクタ32、34および36は、結合されており、実際には一つのインダクタである。結合されたインダクタの結合方向は図1の黒丸で示している。また、結合された直流インダクタ内の各巻線の巻回数は、等しいとする。これにより、結合された直流インダクタの巻線間で、1つの巻線に流れる電流を、大きさを保持したまま他の巻線に移動させる動作を行うことが可能である。これはスイッチング電源のフライバック型コンバータなどで利用される動作として一般的に知られている動作と同じである。また、この動作は、片方向スイッチ11〜28のオンオフによって行われる。
【0016】
また、第1実施形態では、電力変換装置100には、18個の片方向スイッチ11〜28のオンオフを制御するための制御回路51が設けられている。制御回路51には、図2に示すように、従来の3相入力3相出力の電流形インバータのインバータ部を制御するインバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、が設けられており、また従来の3相入力3相出力の電流形コンバータのコンバータ部を制御するコンバータ電流指令部512、コンバータPWM演算部522、が設けられている。また、制御回路51には、インバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部522によって生成されたスイッチ駆動信号を組み合わせる(分配する)ことにより、片方向スイッチ11〜28を制御する駆動信号分配回路53が設けられている。なお、制御回路51は、本発明の「制御部」の一例である。また、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、コンバータ電流指令部512およびコンバータPWM演算部522は「第1制御部」の一例、および駆動信号分配回路53は、「第2制御部」の一例である。
【0017】
次に、図1、図3および図4を参照して、第1実施形態の電力変換装置100の動作原理を説明する。
【0018】
まず、図3に示す双方向スイッチ群200は、従来のマトリクスコンバータによる電流形電力変換装置の一部を構成し、電力変換を行うものである。双方向スイッチ群200は3相交流電源の入力端子であるR端子、S端子およびT端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子とが設けられている。また、R端子、S端子およびT端子と、U端子、V端子およびW端子との間には、9個の双方向スイッチ201〜209が設けられている。ここで、R端子、S端子およびT端子と、U端子、V端子およびW端子とには各々リアクトルと、相互間の接続をスイッチにて接断可能なコンデンサとが接続されるが、これらは図3では省略されている。
【0019】
R端子には、双方向スイッチ201〜203の入力側が接続されている。また、S端子には、双方向スイッチ204〜206の入力側が接続されている。また、T端子には、双方向スイッチ207〜209の入力側が接続されている。また、双方向スイッチ201、204および207の出力側は、U端子に接続されている。また、双方向スイッチ202、205および208の出力側は、V端子に接続されている。また、双方向スイッチ203、206および209の出力側は、W端子に接続されている。
【0020】
また、双方向スイッチ201〜209は、それぞれ、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22、S23、S31、S32およびS33によって駆動される。双方向スイッチ群200への入力電流および双方向スイッチ群200からの出力電流は、前述の入力端子及び出力端子に接続された図示しないリアクトルの作用により、ほぼ一定の振幅の交流電流となる。このとき双方向スイッチ群200に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(1)によって表わされる。
【0021】
【数1】
【0022】
なお、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22、S23、S31、S32およびS33が「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、入力端子(R端子、S端子、T端子)から、出力端子(U端子、V端子、W端子)への向きを正とする。
【0023】
また、双方向スイッチ201(202、203)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1R(S3R、S5R)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4R(S6R、S2R)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。また、双方向スイッチ204(205、206)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1S(S3S、S5S)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4S(S6S、S2S)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。また、双方向スイッチ207(208、209)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1T(S3T、S5T)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4T(S6T、S2T)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。
【0024】
図4は、図3に示す回路と電気的に等しい回路を示している。図4では、双方向スイッチ201〜209に含まれる片方向スイッチ(片方向スイッチ221〜238)を分離して表示している。片方向スイッチ221〜238に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(2)および式(3)によって表わされる。
【0025】
【数2】
【0026】
なお、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、電流irp、ispおよびitpは、入力端子(R端子、S端子、T端子)側から、出力端子(U端子、V端子、W端子)側へ、一方向に流れる直流電流である。また、電流irn、isnおよびitnは、出力端子側から、入力端子側へ、一方向に流れる直流電流である。従来の電流形電力変換装置では、入力電流は正弦波であり、式(3)により電流irp、ispおよびitpは、それぞれ入力電流ir、is、itを正に整流した半波整流波形(正弦波の正の部分)を有する直流電流となり、電流irn、isnおよびitnは、それぞれ入力電流ir、is、itを負に整流した半波整流波形(正弦波の負の部分)を有する直流電流となる。
【0027】
図1と図4を比較すると、図1に示す第1実施形態の電力変換装置100は、図4に示す従来の電流形電力変換装置を構成する双方向スイッチ群200の直流電流irp〜itnの流路に、各々結合インダクタ31〜36を設けたものであることがわかる。前述のように、結合されたインダクタの巻線に接続された閉回路の間で電流を移動することができるので、電力変換装置100において下記の式(4)に示される状態を瞬時に切り替えることが可能である。これは、常に直流インダクタ31、33、35のどれか一つにパルス状の直流電流idcを流し、かつ常に直流インダクタ32、34、36のどれか一つにパルス状の直流電流−idcを流すことを意味している。さらにこれは、S1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5S、S1T、S3T、S5Tのうち常にどれか一つを「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6S、S2T、S4T、S6Tのうち常にどれか一つを「1」とすることにより実現される。
【0028】
【数3】
【0029】
上記の式(4)の状態をパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を適用することにより、各巻線にidcを流す時間を変化させることによって、入力電流ir(is、it)の平均値を正弦波状にすることが可能となる。すなわち、第1実施形態の電力変換装置100は、従来の電流形電力変換装置の内部に流れる直流電流をパルス化し、PWMの適用により従来の電流形電力変換装置と等価な電流を流すことで等価な動作が行え、かつ外部にリアクトルと、スイッチとを必要としない電力変換装置となる。
【0030】
次に、図5〜図10を参照して、第1実施形態の電力変換装置100に対して、入力出力各々の電流指令ベクトルを用いることにより、制御回路51にてスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成することを説明する。
【0031】
まず、図5に示す電流形インバータ300を用いて、入力出力各々の電流指令ベクトルについて説明する。電流形インバータ300には、コンバータ部301とインバータ部302とが設けられている。また、コンバータ部301とインバータ部302との間には、直流インダクタ303および304と、電流形インバータ制御回路305とが設けられている。
【0032】
コンバータ部301には、片方向スイッチ311〜316が設けられている。片方向スイッチ311〜316は、それぞれ、スイッチ駆動信号S4c、S6c、S2c、S1c、S3c、および、S5cによって駆動される。また、インバータ部302の片方向スイッチ321〜326は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iによって駆動される。
【0033】
図5に示すように、3相入力3相出力の電流形インバータ300では、交流−直流変換を行うコンバータ部301により交流電源から直流電流idcを生成した後、直流電流idcを直流−交流変換を行うインバータ部302により交流に変換する。このとき、コンバータ部301は、直流電流idcを一定にするように制御されるとともに、インバータ部302は、所望の電流を出力するように制御される。
【0034】
図6に示すように、電流形インバータ300の直流−交流変換を行うインバータ部302は、3本のゼロ電流ベクトル(IUU、IVV、IWW)と、直流電流指令idc_rの大きさを有する6本の電流ベクトル(IUW、IUV、IWV、IWU、IVU、IVW)とを出力可能に構成されている。具体的には、表1に示すとおりに片方向スイッチをオンオフすることにより出力される。
【0035】
【表1】
【0036】
図7に示すように、電流形インバータ300のコンバータ部301も同様に、3本のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS、ITT)と、直流電流指令idc_rの大きさを有する6本のゼロでない電流ベクトル(IRT、IRS、ITS、ITR、ISR、IST)とを入力可能に構成されている。具体的には、表2に示すとおりに片方向スイッチをオンオフすることにより入力される。
【0037】
【表2】
【0038】
図2に示すとおり、電力変換装置100の制御回路51は、直流電流指令部513を備え、直流電流指令idc_rを出力電流の振幅値以上の一定の値として生成する。また、制御回路51は、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521を備え、直流電流指令idc_rに基づき、電流形インバータ300のインバータ部302に対するスイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iを生成している。さらに制御回路51はコンバータ電流指令部512、コンバータPWM演算部522を備え、直流電流指令idc_rに基づき、電流形インバータ300のコンバータ部301に対するスイッチ駆動信号S4c、S6c、S2c、S1c、S3c、および、S5cを生成している。制御回路51はさらに駆動信号分配回路53を備え、これらのスイッチ駆動信号から、第1実施形態の電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する。
【0039】
インバータ電流指令部511は、駆動する交流負荷の特性に応じて出力電流振幅指令、出力電流周波数指令(出力電流振幅指令、出力電流位相指令でも良い)を生成する。例えば負荷がモータである場合、インバータ電流指令部511は交流電動機のベクトル制御則により、前述の指令を出力する。
【0040】
制御回路51のインバータPWM演算部521は、インバータ電流指令部511から出力電流振幅指令および出力電流周波数指令を受け取り、出力電流指令ベクトルを生成し、実際に出力する電流ベクトルの出力の継続時間を演算するように構成されている。出力電流が正弦波である場合、出力電流指令ベクトルは図6に示すベクトル空間を、出力電流周波数指令で決まる角速度で回転し、ある瞬間では、出力電流指令ベクトルは例えば図6のIo_refとなる。インバータPWM演算部521は、出力電流指令ベクトルの大きさを出力電流振幅指令と等しい値とし、さらにインバータ変調率Iout_rとして正規化する。具体的には出力電流指令ベクトルの大きさが図6の六角形の内接円の半径(直流電流指令idc_rの√3/2倍)と一致する際に値が1となるようにする。また、インバータPWM演算部521は、電流位相指令θIoutを、出力電流指令ベクトルIo_refの基準位置を定め、出力電流周波数指令を積分して2πを掛け算することにより求める(インバータ電流指令部511が出力電流位相指令を生成する場合はそれを直接使用しても良い)。例えば、出力電流指令ベクトルIo_refと電流位相指令θIoutから求まるU相の電流指令が、正の最大値となるときの位相をゼロとして基準位相とした場合、図6に示すとおり、電流位相指令θIoutはRe軸と出力電流指令ベクトルIo_refのなす角となる。インバータPWM演算器512は、インバータ変調率Iout_rと位相θIoutとを有する出力電流指令ベクトルIo_refに隣接する1つのゼロ電流ベクトルと、ゼロでない2つの電流ベクトルIiおよびIi+1とを用いてPWMを行う。このとき、ゼロ電流ベクトルの出力時間Tz、ゼロでない電流ベクトルIiの出力時間Ti、および、ゼロでない電流ベクトルIi+1の出力時間Ti+1は、下記の式(5)、式(6)および式(7)によって表わされる。
【0041】
【数4】
【0042】
ここで、θ0は、出力電流指令ベクトルIo_refと電流ベクトルIiとのなす角を表わしている。また、Tsは、PWM制御の周期を表わしている。インバータ変調率Iout_rと電流位相指令θIoutとが、図6に示されるような場合では、Tzは、ゼロ電流ベクトルIUU、IVVおよびIWWのうちの1つの出力時間であり、Tiは、ゼロでない電流ベクトルIUWの出力時間であり、Ti+1は、ゼロでない電流ベクトルIUVの出力時間となる。また、θ0は、π/6−θIoutとなる。PWMの結果、出力時間Tiに応じた電流ベクトルIaと出力時間Ti+1に応じた電流ベクトルIbとが生成される。
【0043】
コンバータ電流指令部512は、一例として直流電流指令idc_rと等しい入力電流振幅指令と、入力に接続される電源の周波数と等しい入力電流周波数指令を生成し、入力側に正弦波状の電流を流す指令を生成する。インバータPWM演算部521と同様に、コンバータPWM演算部522は、入力電流に対してコンバータ変調率Iin_rと電流位相指令θIinを定め、3本のゼロ電流ベクトル(たとえばIRR、ISS、ITT、図7参照)のうちの1本と、6本のゼロでない電流ベクトル(IRT、IRS、ITS、ITR、ISR、IST)のうちの2本を選択するようにスイッチのオンオフが制御される。これらの6つの電流ベクトルの状態を、各々、どの程度の時間継続させるかを、上記の式(5)〜(7)にて、変調率Iout_rを入力側の入力電流指令ベクトルIi_refに対する変調率Iin_rに、また電流位相指令θIoutを入力側の入力電流指令ベクトルIi_refに対する位相指令にそれぞれ置き換えた式により定めている。
【0044】
次に、図1および図5を参照して、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する電力変換装置100の制御回路51の構成について説明する。
【0045】
図5のコンバータ部301の片方向スイッチ311〜316に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される直流電流(idc、−idc)との関係は、スイッチ駆動信号S1c〜S6cを用いて、下記の式(8)によって表わされる。
【0046】
【数5】
【0047】
なお、スイッチ駆動信号S1c〜S6cが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。片方向スイッチ321〜326に入力される直流電流(idc、−idc)と、図5のインバータ部302から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、スイッチ駆動信号S1i〜S6iを用いて、下記の式(9)によって表わされる。
【0048】
【数6】
【0049】
なお、スイッチ駆動信号S1i〜S6iが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。
【0050】
次に、前述のとおり、第1実施形態の電力変換装置100は、式(4)に示すように、直流インダクタ31、33および35のどれか一つに直流電流idcが流れ、直流インダクタ32、34および36のどれか一つに直流電流−idcが流れるので、電力変換装置100に入力される3相電流(ir、is、it)と、直流電流(idc、−idc)との関係は、上記の式(8)と同様に、下記の式(10)によって表わされる。
【0051】
【数7】
【0052】
また、直流電流(idc、−idc)と、電力変換装置100から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、前述のとおりS1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5S、S1T、S3T、S5Tのうち常にどれか一つが「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6S、S2T、S4T、S6Tのうち常にどれか一つが「1」であることから、上記の式(9)と同様に、下記の式(11)によって表わされる。
【0053】
【数8】
【0054】
ここで、第1実施形態の電力変換装置100は、3相入力3相出力の電流形インバータ300と同様に、入力される3相交流を電圧の大きさ、周波数の異なる3相交流に変換して出力するものであることを考慮すると、上記の式(8)と式(10)との比較から、下記の式(12)の関係が満たされる必要があることになる。
【0055】
【数9】
【0056】
また、同様に上記の式(9)および式(11)の比較から、下記の式(13)の関係が満たされる必要がある。
【0057】
【数10】
【0058】
そして、上記の式(12)と式(13)とを比較することにより、第1実施形態の電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tと、電流形インバータ300のスイッチ駆動信号S1c〜S6c、S1i〜S6iとの間には、下記の式(14)の関係があることが分かる。
【0059】
【数11】
【0060】
すなわち、第1実施形態の電力変換装置100において、インバータPWM演算部521は決定した1本のゼロ電流ベクトルと、2本のゼロでない電流ベクトルと、時間Tz、Ti、Ti+1と、に基づき、さらに表1を使用して、式(9)のSi1〜Si6を決定し、駆動信号分配器53に出力する。また、コンバータPWM演算部522は、インバータPWM演算部521と同様に、式(8)のSc1〜Sc6を生成し(表2を使用)、駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、上記の式(14)に基づいて論理積回路により、電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する。その結果、制御回路51は3相入力3相出力の電流形インバータ300のスイッチ駆動信号に基づいて、電力変換装置100を駆動することとなる。
【0061】
次に、図8〜図10を参照して、制御回路51の駆動信号分配回路53がスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する別の構成を説明する。
【0062】
図8は、図1と電気的に同じ図を示しているが、ゼロ電流ベクトルの説明を容易にするために、図1の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。なお、フィルタ用キャパシタ4〜9と、制御回路51とは、省略している。図8に示すように、電力変換回路1aは、図5に示す電流形インバータ300の片方向スイッチ314(S1c)と、片方向スイッチ311(S4c)とがオンであり、片方向スイッチ312(S6c)、片方向スイッチ313(S2c)、片方向スイッチ315(S3c)、片方向スイッチ316(S5c)がオフである入力側の状態がゼロ電流ベクトルIRRの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2aは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルISSの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3aは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルITTの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1a、2a、3aのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルに基づいて決めることは、電流形インバータ300において3個のゼロ電流ベクトルのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0063】
図9は、図8と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図8の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。図9に示すように、電力変換回路1bは、図5に示す電流形インバータ300の片方向スイッチ311(S4c)と、片方向スイッチ316(S5c)とがオンであり、片方向スイッチ312(S6c)、片方向スイッチ313(S2c)、片方向スイッチ314(S1c)、片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態が電流ベクトルIRTの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2bは、入力側の状態が電流ベクトルISRの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3bは、入力側の状態が電流ベクトルITSの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1b、2b又は3bのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ300において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRT、ISR、ITSのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0064】
図10は、図8と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図8の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。図10に示すように、電力変換回路1cは、入力側の状態が電流ベクトルIRSの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2cは、入力側の状態が電流ベクトルISTの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3cは、入力側の状態が電流ベクトルITRの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1c、2c又は3cのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ300において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRS、IST、ITRのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0065】
図8〜図10に示す直流インダクタ31、33および35は、結合されているとともに、直流インダクタ32、34および36は、結合されている。これにより、上記したように、駆動信号分配回路53が、片方向スイッチ11〜28をオンオフすることにより、直流インダクタ31、33および35の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えること(フライバックコンバータ同等の動作)が可能である。また、片方向スイッチ11〜28をオンオフすることにより、直流インダクタ32、34および36の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えることも可能である。従って、図8〜図10に示す9つの電力変換回路を任意に選択し、選択した電力変換回路に電流を流すことが可能である。コンバータPWM演算部522は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、この情報に従い、電力変換回路を選択する。電力変換回路を選択することにより、図8〜図10の各々に示す電力変換装置の3つの構成のうち、どれか一つを選択したことになる。一方、インバータPWM演算部521は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、選択した電力変換回路に対して、この情報に従いスイッチのオンオフを決め、選択した電力変換装置の構成中の選択しなかった2個の電力変換回路のスイッチは全てオフとすることにより、全てのスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tのオンオフ状態を決定する。駆動信号分配回路53は、さらにインバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部522が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを出力する。
【0066】
一例として、出力電流指令ベクトルIo_refと入力電流指令ベクトルIi_refが図6および図7に示す位置にあるときの、電力変換装置100に対するスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tのタイムチャートを図11に示す。図6および図7の状態は、出力電流指令ベクトルIo_refに隣接するゼロでない2本の電流ベクトルがIUWとIUVであり、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接するゼロでない2本の電流ベクトルがIRTとIRSである場合である。図11ではゼロ電流ベクトルは、隣接する2本のゼロでない電流ベクトルに共通に含まれる相によるものとして、出力電流指令ベクトルIo_refに対してはIUU、入力電流指令ベクトルIi_refに対してはIRRとしている。このようにすることで、片方向スイッチの切替回数を減らすことができるが、他の目的で別のゼロ電流ベクトルとしても本発明には関係しない。
【0067】
図11により、制御回路51の動作をより詳細に説明する。インバータPWM演算部521は、ゼロ電流ベクトルIUUの継続時間をTiz、電流ベクトルIUWの継続時間をTii、電流ベクトルIUVの継続時間をTii+1としている。また、コンバータPWM演算部522は、ゼロ電流ベクトルIRRの継続時間をTcz、電流ベクトルIRTの継続時間をTci、電流ベクトルIRSの継続時間をTci+1としている。図11において駆動信号分配回路53は、ゼロ電流を出力する時間を2分の1にし、キャリア周期の始めと終わりに1つずつゼロ電流を出力する時間を設けている。駆動信号分配回路53はキャリア周期の開始を時刻ゼロとし、インバータPWM演算部521の演算した継続時間から時刻Tiz/2、時刻Tiz/2+Tii、時刻Tiz/2+Tii+(Tii+1)を、コンバータPWM演算部522の演算した継続時間から時刻Tcz/2、時刻Tcz/2+Tci、時刻Tcz/2+Tci+(Tci+1)を求め、これら6つの時刻を大小順に並べることにより、キャリア周期Tsを区間Aから区間Gに分割する。
【0068】
駆動信号分配回路53は、各区間について、図8〜図10に示した電力変換回路と、出力される電流ベクトルの組を決定する。図11の例ではこれらは、区間A:(電力変換回路1a、IUU)、区間B:(電力変換回路1a、IUW)、区間C:(電力変換回路1b、IUW)、区間D:(電力変換回路1b、IUV)、区間E:(電力変換回路1c、IUV)、区間F:(電力変換回路1a、IUV)、区間G:(電力変換回路1a、IUU)となる。さらに、駆動信号分配回路53は、この各区間における電力変換回路と出力する電流ベクトルの組から、実際の電流形インバータ回路を参照して、指定された電流ベクトルを出力するためにオンする片方向スイッチを選択する。図11の例ではその片方向スイッチは、区間A(S1R、S4R)、区間B(S1R、S2R)、区間C(S1R、S2T)、区間D(S1R、S2S)、区間E(S1R、S6S)、区間F(S1R、S6R)、区間G(S1R、S4R)となる。各区間にて、このようにして決まった片方向スイッチをONし、その他のスイッチをオフすることで、駆動信号分配回路53は、図11に示すタイムチャートのスイッチ駆動信号を出力する。電力変換回路を参照しなくても、あらかじめ9つの入力に関する電流ベクトルと9つの出力に関する電流ベクトルの全組み合わせ81通りについて、図8〜図10の回路図に基づき、オンする2個の片方向スイッチをテーブル化しておけば、駆動信号分配回路53は、このテーブルを参照することで、オンする2個の片方向スイッチを直ちに決定できる。
【0069】
このように、第1実施形態の電力変換装置100は、3相入力3相出力の電流形インバータ300と同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、複数の電力変換回路1〜3にそれぞれ設けられる直流インダクタ31、33および35(直流インダクタ32、34および36)同士を結合させて、複数の片方向スイッチ11〜28のオンオフに基づいて、結合された直流インダクタ31、33および35(直流インダクタ32、34および36)の巻線間において電流が移動する動作を行う。これにより、図5に示す電流形インバータに比べ、電流が通過する片方向スイッチの数が減り、導通損失が低減できる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、図5に示す電流形インバータと同じ動作原理に基づくため、電力変換の方向が双方向でかつ電圧の昇圧・降圧が可能である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、図12を参照して、第2実施形態の電力変換装置101について説明する。この第2実施形態では、上記3相交流が入力されるとともに3相交流が出力される第1実施形態と異なり、単相交流(2相交流)または直流が入力されるとともに3相交流が出力される。
【0073】
第2実施形態の電力変換装置101は、図1に示す第1実施形態の電力変換装置100において、T端子および電力変換回路3を取り除いた構成を有している。すなわち、図12に示すように、本実施形態に係る電力変換装置101は、2相交流電源の入力端子であるR端子およびS端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子と、2個の電力変換回路1および2と、フィルタ用キャパシタ4と、フィルタ用キャパシタ7、8および9と制御回路54を有する。なお、第2実施形態の電力変換装置101のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
次に、図12〜図14を参照して、第2実施形態の電力変換装置101の動作原理を説明する。
【0075】
図13に示す双方向スイッチ群400は、従来のマトリクスコンバータによる電流形電力変換装置の一部を構成し、電力変換を行うものであり、図3に示す双方向スイッチ群200にて、T端子およびT端子に接続される双方向スイッチ207〜209を取り除いた構成を有している。すなわち、図13に示すように、双方向スイッチ群400には、2相交流電源の入力端子であるR端子およびS端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子とが設けられている。また、R端子およびS端子と、U端子、V端子およびW端子との間には、6個の双方向スイッチ201〜206が設けられている。なお、双方向スイッチ群400のその他の構成は、比較例1の双方向スイッチ群200と同様である。ここで、R端子およびS端子と、U端子、V端子およびW端子とには各々リアクトルと、相互間の接続をスイッチにて接断可能なコンデンサとが接続されるが、これらは図13では省略されている。
【0076】
また、双方向スイッチ201〜206は、それぞれ、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22およびS23によって駆動される。双方向スイッチ群400への入力電流および双方向スイッチ群400からの出力電流は、前述の入力端子及び出力端子に接続された図示しないリアクトルの作用により、ほぼ一定の振幅の交流電流となる。このとき双方向スイッチ201〜206に入力される単相(2相)電流(ir、is)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(15)によって表わされる。
【0077】
【数12】
【0078】
なお、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22およびS23が「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、入力端子(R端子、S端子)から、出力端子(U端子、V端子、W端子)への向きを正とする。
【0079】
図14は、図13に示す回路と電気的に等しい回路を示している。図14では、双方向スイッチ201〜206に含まれる片方向スイッチ(片方向スイッチ221〜232)を分離して表示している。片方向スイッチ221〜232に入力される2相電流(ir、is)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(16)および式(17)によって表わされる。
【0080】
【数13】
【0081】
なお、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、電流irpおよびispは、入力端子(R端子、S端子)側から、出力端子(U端子、V端子、W端子)側へ、一方向に流れる直流電流である。また、電流irnおよびisnは、出力端子側から、入力端子側へ、一方向に流れる直流電流である。従来の電流形電力変換装置では入力電流は正弦波であり、電流irpおよびispは、それぞれ入力電流irおよびisを正に整流した半波整流波形(正弦波の正の部分)を有する直流電流となり、電流irnおよびisnは、それぞれ入力電流irおよびisを負に整流した半波整流波形(正弦波の負の部分)を有する直流電流となる。
【0082】
次に、図12と図14を比較すると、第2実施形態の電力変換装置101では、図14に示す電流形電力変換装置を構成する双方向スイッチ群400の直流電流irp〜isnの流路に、各々結合インダクタ31〜34を設けたものであることがわかる。前述のように、結合されたインダクタの巻線に接続された閉回路の間で電流を移動することができるので、電流形の電力変換器101において下記の式(18)に示される状態を瞬時に切り替えることが可能である。これは、常に直流インダクタ31、33のどちらかにパルス状の直流電流idcを流し、かつ常に直流インダクタ32、34のどちらかにパルス状の直流電流−idcを流すことを意味している。さらにこれは、S1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5Sのうち常にどれか一つを「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6Sのうち常にどれか一つを「1」とすることにより実現される。
【0083】
【数14】
【0084】
上記の式(18)の状態をパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を適用することにより、各巻線にidcを流す時間を変化させることによって、入力電流ir(is)の平均値を正弦波状にすることが可能となる。すなわち、第2実施形態の電力変換装置101は、従来の電流形電力変換装置の内部に流れる直流電流をパルス化しPWMの適用で従来の電流形電力変換器と等価な電流を流すことで等価な動作が行え、かつ外部にリアクトルと、スイッチとを必要としない電力変換装置となる。
【0085】
次に、図15〜図18を参照して、第2実施形態の電力変換装置101に対して、入力出力各々の電流指令ベクトルを用いることにより、制御回路54にてスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成することを説明する。
【0086】
まず、図15に示す電流形インバータ500は、図5に示す電流形インバータ300において、T端子およびT端子に接続される片方向スイッチ313および316を取り除いた構成を有している。
【0087】
図15に示すように、2相入力3相出力の電流形インバータ500では、交流−直流変換を行うコンバータ部501により交流電源から直流電流idcを生成した後、直流電流idcを直流−交流変換を行うインバータ部302により交流に変換する。このとき、コンバータ部501は、直流電流idcを一定にするように制御されるとともに、インバータ部302は、所望の電流を出力するように制御される。また、インバータ部302は、第1実施形態と同様、表1に従い電流ベクトルを出力可能である。一方コンバータ部501は表3に従い電流ベクトルを入力可能である。
【0088】
【表3】
【0089】
図12に示すとおり、制御回路54は、直流電流指令部513、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、コンバータ電流指令部542、コンバータPWM演算部552を備える。第1実施形態と同じく、直流電流指令部513は、直流電流指令idc_rを生成し、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521は、直流電流指令idc_rに基づき、インバータ部302に対するスイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iを生成している。コンバータ電流指令部542およびコンバータPWM演算部552は、直流電流指令idc_rに基づき、図15に示すコンバータ部501に対するスイッチ駆動信号S4c、S2c、S1c、および、S3cを生成している。そして、制御回路54はさらに駆動信号分配回路56を備え、これらのスイッチ駆動信号から、第2実施形態の電流形電力変換装置101のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する。
【0090】
図15に示す交流−直流変換を行うコンバータ部501は、2本のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS)と、idcの長さを有する2本の電流ベクトル(ISR、IRS)とを出力可能に構成されている。コンバータ電流指令部542は、一例として直流電流指令idc_rと等しい入力電流振幅指令と、入力に接続される電源の周波数と等しい入力電流周波数指令を生成する。コンバータPWM演算部552は、コンバータ電流指令部542から入力電流振幅指令および入力電流周波数指令を受け取り、入力電流指令ベクトルを生成し、電流形インバータ500に入力される電流ベクトルの時間を演算するように構成されている。入力電流ベクトルは、図16に示すベクトル図において、IRS−ISRで示す一本の軸上を、入力電流周波数指令で定まる周期で往復するベクトルとなる。また、コンバータPWM演算部552は、入力電流周波数指令を積分し電流位相指令θIinを定める。こうして振幅と位相を定めることにより、入力電流指令ベクトルIi_refは、その大きさが、例えば式(19)で定まるベクトルとなる。
【0091】
【数15】
【0092】
上記は、入力電流指令ベクトルIi_refの大きさが最大となるときの位相を基準位相とした場合の例である。また、コンバータPWM演算部552は、式(19)で定まる入力電流ベクトルIi_refの大きさと、直流電流指令idc_rの√3/2倍の値との比をコンバータ変調率Iin_rとする。さらに、コンバータPWM演算部552は、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接する1つのゼロ電流ベクトル(IRRまたはISS)とゼロでない1つの電流ベクトルIi(IRSまたはISR)とを用いて、ゼロ電流ベクトルの出力時間Tz、および、ゼロでない電流ベクトルIiの出力時間Tiを、下記の式(20)および式(21)によって決定する。
【0093】
【数16】
【0094】
このように、インバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部552は、2相入力3相出力の電流形インバータ500の出力および入力に対して、それぞれ電流指令ベクトルを決めて、PWM周期内で、出力電流指令ベクトルIo_refに対しては、隣接する3本の電流ベクトル(たとえばIUU、IUW、IUV、図6参照)を選択し、入力電流指令ベクトルIi_refに対しては、隣接する2本の電流ベクトル(たとえば、IRR、IRS、図16参照)を選択する。さらに、これらの5本の電流ベクトルの状態を、各々、どの程度の時間継続させるかを、上記の式(5)〜(7)、(20)および(21)により定めている。
【0095】
次に、図12および図15を参照して、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する電力変換装置101の制御回路54の動作について説明する。
【0096】
図15のコンバータ部501の片方向スイッチ311、312、314および315に入力される2相電流(ir、is)と、出力される直流電流(idc、−idc)との関係は、スイッチ駆動信号S1c〜S4cを用いて、下記の式(22)によって表わされる。
【0097】
【数17】
【0098】
なお、スイッチ駆動信号S1c〜S4cが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、図15のインバータ部302の片方向スイッチ321〜326に入力される直流電流(idc、−idc)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、スイッチ駆動信号S1i〜S6iを用いて、下記の式(23)によって表わされる。
【0099】
【数18】
【0100】
なお、スイッチ駆動信号S1i〜S6iが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。
【0101】
次に、前述のとおり、第2実施形態の電力変換装置101では、式(18)に示すように、直流インダクタ31および33のどちらか一つに直流電流idcが流れ、直流インダクタ32および34のどちらか一つに直流電流−idcが流れるので、電力変換装置101に入力される2相電流(ir、is)と、直流電流(idc、−idc)との関係は、上記の式(22)と同様に、下記の式(24)によって表わされる。
【0102】
【数19】
【0103】
また、直流電流(idc、−idc)と、電力変換装置101から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、前述のとおりS1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5Sのうち常にどれか一つが「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6Sのうち常にどれか一つが「1」であることから、上記の式(23)と同様に、下記の式(25)によって表わされる。
【0104】
【数20】
【0105】
ここで、第2実施形態の電力変換装置101は、2相入力3相出力の電流形インバータ500と同様に、入力される単相交流を電圧の大きさ、周波数の異なる3相交流に変換して出力するものであることを考慮すると、上記の式(22)と式(24)との比較から、下記の式(26)の関係が満たされる必要があることになる。
【0106】
【数21】
【0107】
また、同様に上記の式(23)および式(25)の比較から、下記の式(27)の関係が満たされる必要がある。
【0108】
【数22】
【0109】
そして、上記の式(26)と式(27)とを比較することにより、下記の式(28)の関係があることが分かる。
【0110】
【数23】
【0111】
すなわち、第2実施形態の電力変換装置101では、第1実施形態と同様に、インバータPWM演算部521は決定した1つのゼロ電流ベクトルと、2つのゼロでない電流ベクトルと、時間Tz、Ti、Ti+1と、に基き、さらに表1を使用して、式(23)のSi1〜Si6を生成し、駆動信号分配器56に出力する。また、コンバータPWM演算部552は、インバータPWM演算部521と同様に、式(22)のSc1〜Sc4を生成し(表3を使用)、駆動信号分配回路56に出力する。図12に示す制御回路54の駆動信号分配回路56は、上記の式(28)に基づいて、論理積回路により、電流形の電力変換装置101のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する。その結果、制御回路54は2相入力3相出力の電流形インバータ500のスイッチ駆動信号に基づいて、電力変換装置101を駆動することとなる。
【0112】
次に、図17および図18を参照して、制御回路54の駆動信号分配回路56がスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する別の構成を説明する。
【0113】
図17は、図12と電気的に同じ図を示しているが、ゼロ電流ベクトルの説明を容易にするために、図12の片方向スイッチ11〜22の配置を移動している。なお、フィルタ用キャパシタ4および7〜9と、制御回路51とは、省略している。図17に示すように、電力変換回路1eは、図15に示す電流形インバータ500の片方向スイッチ314(S1c)および片方向スイッチ311(S4c)がオンであり、片方向スイッチ312(S2c)および片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態がゼロ電流ベクトルIRRの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2eは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルISSの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1e、2eのどちらかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルに基づいて決めることは、電流形インバータ500において2本のゼロ電流ベクトルのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0114】
図18は、図17と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図18の片方向スイッチ11〜22の配置を移動している。図18に示すように、電力変換回路1fは、図15に示す比較例2の電流形インバータ500の片方向スイッチ314(S1c)および片方向スイッチ312(S2c)がオンであり、片方向スイッチ311(S4c)および片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態がゼロでない電流ベクトルIRSの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2fは、入力側の状態がゼロでない電流ベクトルISRの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1f、2fのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ500において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRS、ISRのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0115】
図17および図18に示す直流インダクタ31および33は、結合されているとともに、直流インダクタ32および34は、結合されている。これにより、上記したように、駆動信号分配回路56が、片方向スイッチ11〜22をオンオフすることにより、直流インダクタ31および33の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えること(フライバックコンバータ同等の動作)が可能である。また同様に、片方向スイッチ11〜22をオンオフすることにより、直流インダクタ32および34の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えることも可能である。従って、図17および図18に示す4つの電力変換回路を任意に選択し、選択した電力変換回路に電流を流すことが可能である。コンバータPWM演算部552は選択した1本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路56に出力する。駆動信号分配回路56は、この情報により、電力変換回路を選択する。電力変換回路を選択することにより、図17および図18に示す電力変換装置102の2つの構成のうち、どちらか一つを選択したことになる。一方、インバータPWM演算部521は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路56に出力する。駆動信号分配回路56は、選択した電力変換回路に対して、この情報に従いスイッチのオンオフを決め、選択した電力変換装置102の構成の中の選択しなかった1個の電力変換回路のスイッチは全てオフとすることにより、全てのスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sのオンオフ状態を決定する。駆動信号選択回路56は、さらにインバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部552が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを出力する。
【0116】
このように、第2実施形態の電力変換装置101は、2相入力3相出力の電流形インバータ500と同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0117】
なお、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0118】
(第3実施形態)
次に、図19を参照して、第3実施形態の電力変換装置102について説明する。この第3実施形態では、上記3相入力3相出力の電力変換装置100である第1実施形態および2相入力3相出力の電力変換装置101である第2実施形態と異なり、M相入力(Mは2以上の自然数)N相(Nは2以上の自然数)出力の電力変換装置102である。
【0119】
第3実施形態の電力変換装置102は、図19に示すように、M相分のM個の入力端子と、N相分のN個の出力端子と、入力の相数と同じM個の電力変換回路1021、1022・・・102mとを備える。さらに、第3実施形態の電力変換装置102は図示しない制御回路57を備えている。
【0120】
電力変換回路1021、1022・・・102mの構成は、それぞれ、N個の正側片方向スイッチと、N個の負側片方向スイッチとを含む。また、電力変換回路1021、1022・・・102mは、M本の結合されたインダクタの巻線をもつ直流インダクタ31および32の巻線を含む。
【0121】
制御回路57は、図2に示す第1実施形態における制御回路51にて、インバータPWM演算部521を図示しないインバータPWM演算部に、コンバータPWM演算部522を図示しないコンバータPWM演算部に、また、駆動信号分配回路53を図示しない駆動信号分配回路に置き換えたものである。直流電流指令部513、インバータ電流指令部511、コンバータ電流指令部512については、第1実施形態と全く同一であるためここでは説明を省略する。
【0122】
電力変換装置102では、出力の相数であるN相のNが奇数の場合には、この場合、図20に示すように、互いに360/2N度離れた2N本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとを選び出し生成できる。また、Nが偶数の場合には、図21に示すように、互いに360/N度離れた大きさの等しいN本のゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとを選び出し生成できる。入力についても同様で、相数Mが奇数の場合、互いに360/2M度離れた2M本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルと、M本のゼロ電流ベクトルとを選び出し入力でき、相数Mが偶数の場合には、互いに360/M度離れた大きさの等しいM本のゼロでない電流ベクトルと、M本のゼロ電流ベクトルとを選び出し入力できる。
【0123】
電力変換装置102においても、上記第1実施形態の3相入力3相出力の電力変換装置100と同様に、インバータPWM演算部は、出力電流指令ベクトルIo_refと隣接する1本のゼロ電流ベクトルと、2つのゼロでない電流ベクトルを、上記2N本(Nが奇数のとき)またはN本(Nが偶数のとき)のゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとの中から選び出す。
【0124】
次に、電力変換装置102のインバータPWM演算部は、第1実施形態におけるインバータPWM演算部511と同様、出力電流指令ベクトルIo_refの大きさと、2N本またはN本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルの内接円の半径とからインバータ変調率Iout_rを求め、また出力電流周波数指令から、積分により電流位相指令θIoutを求める。さらに式(5)にてπ/3をπ/N(Nが奇数のとき)または2π/N(Mが偶数のとき)で置き換えた式と、式(6)、式(7)とを用いて、選び出した2つのゼロでない電流ベクトルと1つのゼロ電流ベクトル各々の継続時間Ti、Ti+1、Tzを決定する。
【0125】
電力変換装置102のコンバータPWM演算部も、インバータPWM演算部と同様に、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接する2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルを選び出し、その電流を入力する2M個のコンバータのスイッチのオンオフを決定する。さらにコンバータ変調率Iin_r、電流位相指令θIinを求め、式(5)にてπ/3をπ/M(Mが奇数のとき)または2π/M(Mが偶数のとき)で置き換えた式と、式(6)、式(7)とを用いて、選び出した2本のゼロでない電流ベクトルと1本のゼロ電流ベクトル各々の継続時間Ti、Ti+1、Tzを決定する。
【0126】
電力変換装置102の駆動信号分配回路は、電力変換装置102のコンバータPWM演算部が出力する、2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがどの電流ベクトルかについての情報から、電力変換回路を選び出す。電力変換装置102では、M2個の電力変換回路が存在するため、その中から選び出すことになる。一つの電力変換回路を選ぶことにより、M個の電力変換回路を有する電力変換装置102の回路構成を一つ選択したことになる。そして、こうして選び出した電力変換回路の2N個の片方向スイッチに対して、電力変換装置102のインバータPWM演算部が出力する、2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがどの電流ベクトルかについての情報に従い、オンオフを決め、他のM−1個の電流形インバータの片方向スイッチは全てオフとする。電力変換装置102の駆動信号選択回路は、さらに電力変換装置102のインバータPWM演算部およびコンバータPWM演算部が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、2MN個の片方向スイッチに対するスイッチ駆動信号を出力する。
【0127】
このように、第3実施形態の電力変換装置102は、M相入力N相出力電流形インバータと同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0128】
なお、第3実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0129】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、第4実施形態の電力変換装置103について説明する。この第4実施形態では、カレントトランス61とスナバ回路62とが設けられている。
【0130】
第4実施形態の電力変換装置103は、図22に示すように、R端子と直流インダクタ31との間、S端子と直流インダクタ33との間、および、T端子と直流インダクタ35との間にカレントトランス61が設けられている。カレントトランス61は、直流インダクタ31、33および35に流れる電流の和を検出する。第1実施形態において説明したとおり、常に直流インダクタ31、33、35のどれか一つに直流電流idcが流れるため、この検出された電流の和はidcと等しくなる。そこで、この検出された電流の和は、直流電流指令部513(図2参照)に入力され、直流電流指令部513は、検出された電流の和を使用して直流電流idcのフィードバック制御を行なう。
【0131】
また、直流インダクタ31〜36と、片方向スイッチ11〜28との間には、スナバ回路62が設けられている。スナバ回路62は、6個のダイオード63と、コンデンサ64と、抵抗65とを含む。なお、直流インダクタ31〜36間の結合度は、1よりも小さいので、直流インダクタ31〜36の電流経路をオンからオフに切り替えた際に巻線にサージ電圧が発生する。スナバ回路62は、このサージ電圧を抑制する機能を有する。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第4実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0132】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0133】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、3相入力3相出力、2相入力3相出力、および、M相入力N相出力の電力変換装置に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図23に示すように、2相入力2相出力の電力変換装置105に本発明を適用してもよい。この場合、直流を2相の交流に変換して出力するものであるので、1つの電流形インバータに、4個(2×2個)の片方向スイッチが必要となる。また、2相入力2相出力の電力変換装置では、各相について1つずつ2個の電流形インバータ回路が設けられるので、合計8個(2×2×2個)の片方向スイッチが設けられる。
【0134】
また、図15のような一般的な電流形インバータ回路において、直流インダクタ303、304は両方必要という分けではなく、図24に示す電流形インバータ500aのように、どちらかひとつに省略することも可能である。したがって、上記第1〜第4実施形態では、入力端子(R端子、S端子、T端子)と片方向スイッチとの間に、結合された直流インダクタ31、33および35と結合された直流インダクタ32、34および36とを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも、入力端子(R端子、S端子、T端子)と片方向スイッチとの間に、結合された直流インダクタ31、33および35が設けられていればよい。
【0135】
また、図15のような一般的な電流形インバータ回路において、直流インダクタ303、304は、図25に示す電流形インバータ500bのように、二つを結合させてもよい。したがって、上記第1〜第4実施形態では、直流インダクタ31、33および35と、直流インダクタ32、34および36とが、別個に結合されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、直流インダクタ31〜36すべてを図1の黒丸の方向へ結合させてもよい。
【0136】
第1〜第4実施形態では、片方向スイッチはダイオードとトランジスタを直列接続したものとしたが、トランジスタはIGBTのような自己消弧形のものであってもよい。またRB−IGBTのような逆阻止型のみを使用し、ダイオードを省略したものであってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3 電力変換回路(電力変換部)
11、13、15、17、19、21、23、25、27 片方向スイッチ(第1片方向スイッチ)
12、14、16、18、20、22、24、26、28 片方向スイッチ(第2片方向スイッチ)
31、33、35 直流インダクタ(インダクタ、第1インダクタ、巻線)
32、34、36 直流インダクタ(インダクタ、第2インダクタ、巻線)
51、54、57 制御回路(制御部)
511 インバータ電流指令部
512、542 コンバータ電流指令部
513 直流電流指令部
521 インバータPWM演算部
522、552 コンバータPWM演算部
53、56 駆動信号分配回路(第2制御部)
100、101、102、103、104、105 電力変換装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源の各相と出力側の各相を双方向スイッチで直接接続し、交流電源の各相と双方向スイッチとの間に接続された入力側リアクトルと、負荷の各相と双方向スイッチとの間に接続された出力側リアクトルと、出力側リアクトルの双方向スイッチ側端子間を接続する第1のコンデンサ群と、第1のコンデンサ群を構成するコンデンサ相互間の接続を接断可能な第1の接断回路と、入力側リアクトルの双方向スイッチ側各端子間を接続する第2のコンデンサ群と、第2のコンデンサ群を構成するコンデンサ相互間の接続を接断可能な第2の接断回路と、入力側インダクタの双方向スイッチ側を、双方向スイッチを用いて短絡したり、出力側に接続したりすることで、電源電圧よりも高い電圧を出力する昇圧出力の機能を備えたマトリクスコンバータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/112275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマトリクスコンバータは、昇圧チョッパの原理に基づく電流形電力変換器であるが、入力と出力の双方にリアクトル、コンデンサ及び接断手段であるスイッチを備える必要があり、装置が大形化するという問題がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置が大形化するのを抑制することが可能な電流形電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電力変換装置は、M相(Mは2以上の自然数)の交流が入力されるとともに、N相(Nは2以上の自然数)の交流が出力される電力変換装置であって、複数の片方向スイッチと、入力側端子と複数の片方向スイッチとの間に設けられるインダクタとをそれぞれ含む複数の電力変換部を備え、電力変換部の入力側端子を短絡するとともに、複数の電力変換部の出力側端子同士を並列接続し、複数の電力変換部にそれぞれ設けられるインダクタ同士を結合させて、複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、結合されたインダクタの巻線間において電流を移動させる動作ができるように構成されている。
【0007】
この一の局面による電力変換装置では、上記のように、複数の電力変換部にそれぞれ設けられるインダクタ同士を結合させて、複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、結合されたインダクタの巻線間において電流を移動させる動作を行うことによって、外部のリアクトル、スイッチを省略できるため、装置の大形化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電力変換装置の制御回路のブロック図である。
【図3】従来の電流形電力変換装置の双方向スイッチ群の回路図である。
【図4】図3と電気的に等価な電力変換装置の回路図である。
【図5】3相入力3相出力電流形インバータの回路図である。
【図6】本発明の第1実施形態による電力変換装置の出力側の空間ベクトル図である。
【図7】本発明の第1実施形態による電力変換装置の入力側の空間ベクトル図である。
【図8】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS、ITT)を生成する場合の回路図である。
【図9】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRT、ISR、ITS)を生成する場合の回路図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRS、IST、ITR)を生成する場合の回路図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるスイッチ駆動信号のタイムチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図13】従来の電流形電力変換装置の双方向スイッチ群の回路図である。
【図14】図13と電気的に等価な電力変換装置の回路図である。
【図15】2相入力3相出力電流形インバータの回路図である。
【図16】本発明の第2実施形態による電力変換装置の入力側の空間ベクトル図である。
【図17】本発明の第2実施形態による電力変換装置のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS)を生成する場合の回路図である。
【図18】本発明の第2実施形態による電力変換装置のゼロでない電流ベクトル(IRS、ISR)を生成する場合の回路図である。
【図19】本発明の第3実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図20】本発明の第3実施形態による電力変換装置のNが奇数の場合の出力側の空間ベクトル図である。
【図21】本発明の第3実施形態による電力変換装置のNが偶数の場合の出力側の空間ベクトル図である。
【図22】本発明の第4実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図23】本発明の第1〜第4実施形態の変形例による電力変換装置の回路図である。
【図24】図15に示す2相入力3相出力電流形インバータの第1変形例による電流形インバータの回路図である。
【図25】図15に示す2相入力3相出力電流形インバータの第2変形例による電流形インバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置100は、3相交流電源の入力端子であるR端子、S端子およびT端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子と、3個の電力変換回路1、2および3と、フィルタ用キャパシタ4、5および6と、フィルタ用キャパシタ7、8および9と、制御回路51とを有する。なお、電力変換回路1〜3は、本発明の「電力変換部」の一例である。
【0012】
電力変換回路1は、6個の片方向スイッチ11〜16と、直流インダクタ31および32とを含む。片方向スイッチ11〜16は、それぞれ、ダイオード41と、トランジスタ42とによって構成されている。片方向スイッチ11〜16は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1R、S4R、S3R、S6R、S5RおよびS2Rによって駆動される。また、電力変換回路1の入力側端子(直流インダクタ31のR端子側、直流インダクタ32のR端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ31は、R端子と、片方向スイッチ11、13および15との間に設けられている。また、直流インダクタ32は、R端子と、片方向スイッチ12、14および16との間に設けられている。
【0013】
電力変換回路2は、電力変換回路1と同様の構成を有する。すなわち、電力変換回路2は、6個の片方向スイッチ17〜22と、直流インダクタ33および34とを含む。片方向スイッチ17〜22は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1S、S4S、S3S、S6S、S5SおよびS2Sによって駆動される。また、電力変換回路2の入力側端子(直流インダクタ33のS端子側、直流インダクタ34のS端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ33は、S端子と、片方向スイッチ17、19および21との間に設けられている。また、直流インダクタ34は、S端子と、片方向スイッチ18、20および22との間に設けられている。
【0014】
電力変換回路3は、電力変換回路1と同様の構成を有する。すなわち、電力変換回路3は、6個の片方向スイッチ23〜28と、直流インダクタ35および36とを含む。片方向スイッチ23〜28は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1T、S4T、S3T、S6T、S5TおよびS2Tによって駆動される。また、電力変換回路3の入力側端子(直流インダクタ35のT端子側、直流インダクタ36のT端子側)は、短絡されている。また、直流インダクタ35は、T端子と、片方向スイッチ23、25および27との間に設けられている。また、直流インダクタ36は、T端子と、片方向スイッチ24、26および28との間に設けられている。また、片方向スイッチ11、13、15、17、19、21、23、25および27は、本発明の「第1片方向スイッチ」の一例である。また、片方向スイッチ12、14、16、18、20、22、24、26および28は、本発明の「第2片方向スイッチ」の一例である。また、直流インダクタ31、33および35は、本発明の「インダクタ」および「第1インダクタ」の一例である。また、直流インダクタ32、34および36は、本発明の「インダクタ」および「第2インダクタ」の一例である。
【0015】
ここで、第1実施形態では、直流インダクタ31、33および35は、結合されており、実際には一つのインダクタである。また、直流インダクタ32、34および36は、結合されており、実際には一つのインダクタである。結合されたインダクタの結合方向は図1の黒丸で示している。また、結合された直流インダクタ内の各巻線の巻回数は、等しいとする。これにより、結合された直流インダクタの巻線間で、1つの巻線に流れる電流を、大きさを保持したまま他の巻線に移動させる動作を行うことが可能である。これはスイッチング電源のフライバック型コンバータなどで利用される動作として一般的に知られている動作と同じである。また、この動作は、片方向スイッチ11〜28のオンオフによって行われる。
【0016】
また、第1実施形態では、電力変換装置100には、18個の片方向スイッチ11〜28のオンオフを制御するための制御回路51が設けられている。制御回路51には、図2に示すように、従来の3相入力3相出力の電流形インバータのインバータ部を制御するインバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、が設けられており、また従来の3相入力3相出力の電流形コンバータのコンバータ部を制御するコンバータ電流指令部512、コンバータPWM演算部522、が設けられている。また、制御回路51には、インバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部522によって生成されたスイッチ駆動信号を組み合わせる(分配する)ことにより、片方向スイッチ11〜28を制御する駆動信号分配回路53が設けられている。なお、制御回路51は、本発明の「制御部」の一例である。また、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、コンバータ電流指令部512およびコンバータPWM演算部522は「第1制御部」の一例、および駆動信号分配回路53は、「第2制御部」の一例である。
【0017】
次に、図1、図3および図4を参照して、第1実施形態の電力変換装置100の動作原理を説明する。
【0018】
まず、図3に示す双方向スイッチ群200は、従来のマトリクスコンバータによる電流形電力変換装置の一部を構成し、電力変換を行うものである。双方向スイッチ群200は3相交流電源の入力端子であるR端子、S端子およびT端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子とが設けられている。また、R端子、S端子およびT端子と、U端子、V端子およびW端子との間には、9個の双方向スイッチ201〜209が設けられている。ここで、R端子、S端子およびT端子と、U端子、V端子およびW端子とには各々リアクトルと、相互間の接続をスイッチにて接断可能なコンデンサとが接続されるが、これらは図3では省略されている。
【0019】
R端子には、双方向スイッチ201〜203の入力側が接続されている。また、S端子には、双方向スイッチ204〜206の入力側が接続されている。また、T端子には、双方向スイッチ207〜209の入力側が接続されている。また、双方向スイッチ201、204および207の出力側は、U端子に接続されている。また、双方向スイッチ202、205および208の出力側は、V端子に接続されている。また、双方向スイッチ203、206および209の出力側は、W端子に接続されている。
【0020】
また、双方向スイッチ201〜209は、それぞれ、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22、S23、S31、S32およびS33によって駆動される。双方向スイッチ群200への入力電流および双方向スイッチ群200からの出力電流は、前述の入力端子及び出力端子に接続された図示しないリアクトルの作用により、ほぼ一定の振幅の交流電流となる。このとき双方向スイッチ群200に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(1)によって表わされる。
【0021】
【数1】
【0022】
なお、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22、S23、S31、S32およびS33が「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、入力端子(R端子、S端子、T端子)から、出力端子(U端子、V端子、W端子)への向きを正とする。
【0023】
また、双方向スイッチ201(202、203)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1R(S3R、S5R)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4R(S6R、S2R)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。また、双方向スイッチ204(205、206)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1S(S3S、S5S)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4S(S6S、S2S)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。また、双方向スイッチ207(208、209)は、ダイオード210と、スイッチ駆動信号S1T(S3T、S5T)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチと、ダイオード210とスイッチ駆動信号S4T(S6T、S2T)により駆動されるトランジスタ211とからなる片方向スイッチとを逆並列に接続して構成されている。
【0024】
図4は、図3に示す回路と電気的に等しい回路を示している。図4では、双方向スイッチ201〜209に含まれる片方向スイッチ(片方向スイッチ221〜238)を分離して表示している。片方向スイッチ221〜238に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(2)および式(3)によって表わされる。
【0025】
【数2】
【0026】
なお、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、電流irp、ispおよびitpは、入力端子(R端子、S端子、T端子)側から、出力端子(U端子、V端子、W端子)側へ、一方向に流れる直流電流である。また、電流irn、isnおよびitnは、出力端子側から、入力端子側へ、一方向に流れる直流電流である。従来の電流形電力変換装置では、入力電流は正弦波であり、式(3)により電流irp、ispおよびitpは、それぞれ入力電流ir、is、itを正に整流した半波整流波形(正弦波の正の部分)を有する直流電流となり、電流irn、isnおよびitnは、それぞれ入力電流ir、is、itを負に整流した半波整流波形(正弦波の負の部分)を有する直流電流となる。
【0027】
図1と図4を比較すると、図1に示す第1実施形態の電力変換装置100は、図4に示す従来の電流形電力変換装置を構成する双方向スイッチ群200の直流電流irp〜itnの流路に、各々結合インダクタ31〜36を設けたものであることがわかる。前述のように、結合されたインダクタの巻線に接続された閉回路の間で電流を移動することができるので、電力変換装置100において下記の式(4)に示される状態を瞬時に切り替えることが可能である。これは、常に直流インダクタ31、33、35のどれか一つにパルス状の直流電流idcを流し、かつ常に直流インダクタ32、34、36のどれか一つにパルス状の直流電流−idcを流すことを意味している。さらにこれは、S1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5S、S1T、S3T、S5Tのうち常にどれか一つを「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6S、S2T、S4T、S6Tのうち常にどれか一つを「1」とすることにより実現される。
【0028】
【数3】
【0029】
上記の式(4)の状態をパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を適用することにより、各巻線にidcを流す時間を変化させることによって、入力電流ir(is、it)の平均値を正弦波状にすることが可能となる。すなわち、第1実施形態の電力変換装置100は、従来の電流形電力変換装置の内部に流れる直流電流をパルス化し、PWMの適用により従来の電流形電力変換装置と等価な電流を流すことで等価な動作が行え、かつ外部にリアクトルと、スイッチとを必要としない電力変換装置となる。
【0030】
次に、図5〜図10を参照して、第1実施形態の電力変換装置100に対して、入力出力各々の電流指令ベクトルを用いることにより、制御回路51にてスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成することを説明する。
【0031】
まず、図5に示す電流形インバータ300を用いて、入力出力各々の電流指令ベクトルについて説明する。電流形インバータ300には、コンバータ部301とインバータ部302とが設けられている。また、コンバータ部301とインバータ部302との間には、直流インダクタ303および304と、電流形インバータ制御回路305とが設けられている。
【0032】
コンバータ部301には、片方向スイッチ311〜316が設けられている。片方向スイッチ311〜316は、それぞれ、スイッチ駆動信号S4c、S6c、S2c、S1c、S3c、および、S5cによって駆動される。また、インバータ部302の片方向スイッチ321〜326は、それぞれ、スイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iによって駆動される。
【0033】
図5に示すように、3相入力3相出力の電流形インバータ300では、交流−直流変換を行うコンバータ部301により交流電源から直流電流idcを生成した後、直流電流idcを直流−交流変換を行うインバータ部302により交流に変換する。このとき、コンバータ部301は、直流電流idcを一定にするように制御されるとともに、インバータ部302は、所望の電流を出力するように制御される。
【0034】
図6に示すように、電流形インバータ300の直流−交流変換を行うインバータ部302は、3本のゼロ電流ベクトル(IUU、IVV、IWW)と、直流電流指令idc_rの大きさを有する6本の電流ベクトル(IUW、IUV、IWV、IWU、IVU、IVW)とを出力可能に構成されている。具体的には、表1に示すとおりに片方向スイッチをオンオフすることにより出力される。
【0035】
【表1】
【0036】
図7に示すように、電流形インバータ300のコンバータ部301も同様に、3本のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS、ITT)と、直流電流指令idc_rの大きさを有する6本のゼロでない電流ベクトル(IRT、IRS、ITS、ITR、ISR、IST)とを入力可能に構成されている。具体的には、表2に示すとおりに片方向スイッチをオンオフすることにより入力される。
【0037】
【表2】
【0038】
図2に示すとおり、電力変換装置100の制御回路51は、直流電流指令部513を備え、直流電流指令idc_rを出力電流の振幅値以上の一定の値として生成する。また、制御回路51は、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521を備え、直流電流指令idc_rに基づき、電流形インバータ300のインバータ部302に対するスイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iを生成している。さらに制御回路51はコンバータ電流指令部512、コンバータPWM演算部522を備え、直流電流指令idc_rに基づき、電流形インバータ300のコンバータ部301に対するスイッチ駆動信号S4c、S6c、S2c、S1c、S3c、および、S5cを生成している。制御回路51はさらに駆動信号分配回路53を備え、これらのスイッチ駆動信号から、第1実施形態の電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する。
【0039】
インバータ電流指令部511は、駆動する交流負荷の特性に応じて出力電流振幅指令、出力電流周波数指令(出力電流振幅指令、出力電流位相指令でも良い)を生成する。例えば負荷がモータである場合、インバータ電流指令部511は交流電動機のベクトル制御則により、前述の指令を出力する。
【0040】
制御回路51のインバータPWM演算部521は、インバータ電流指令部511から出力電流振幅指令および出力電流周波数指令を受け取り、出力電流指令ベクトルを生成し、実際に出力する電流ベクトルの出力の継続時間を演算するように構成されている。出力電流が正弦波である場合、出力電流指令ベクトルは図6に示すベクトル空間を、出力電流周波数指令で決まる角速度で回転し、ある瞬間では、出力電流指令ベクトルは例えば図6のIo_refとなる。インバータPWM演算部521は、出力電流指令ベクトルの大きさを出力電流振幅指令と等しい値とし、さらにインバータ変調率Iout_rとして正規化する。具体的には出力電流指令ベクトルの大きさが図6の六角形の内接円の半径(直流電流指令idc_rの√3/2倍)と一致する際に値が1となるようにする。また、インバータPWM演算部521は、電流位相指令θIoutを、出力電流指令ベクトルIo_refの基準位置を定め、出力電流周波数指令を積分して2πを掛け算することにより求める(インバータ電流指令部511が出力電流位相指令を生成する場合はそれを直接使用しても良い)。例えば、出力電流指令ベクトルIo_refと電流位相指令θIoutから求まるU相の電流指令が、正の最大値となるときの位相をゼロとして基準位相とした場合、図6に示すとおり、電流位相指令θIoutはRe軸と出力電流指令ベクトルIo_refのなす角となる。インバータPWM演算器512は、インバータ変調率Iout_rと位相θIoutとを有する出力電流指令ベクトルIo_refに隣接する1つのゼロ電流ベクトルと、ゼロでない2つの電流ベクトルIiおよびIi+1とを用いてPWMを行う。このとき、ゼロ電流ベクトルの出力時間Tz、ゼロでない電流ベクトルIiの出力時間Ti、および、ゼロでない電流ベクトルIi+1の出力時間Ti+1は、下記の式(5)、式(6)および式(7)によって表わされる。
【0041】
【数4】
【0042】
ここで、θ0は、出力電流指令ベクトルIo_refと電流ベクトルIiとのなす角を表わしている。また、Tsは、PWM制御の周期を表わしている。インバータ変調率Iout_rと電流位相指令θIoutとが、図6に示されるような場合では、Tzは、ゼロ電流ベクトルIUU、IVVおよびIWWのうちの1つの出力時間であり、Tiは、ゼロでない電流ベクトルIUWの出力時間であり、Ti+1は、ゼロでない電流ベクトルIUVの出力時間となる。また、θ0は、π/6−θIoutとなる。PWMの結果、出力時間Tiに応じた電流ベクトルIaと出力時間Ti+1に応じた電流ベクトルIbとが生成される。
【0043】
コンバータ電流指令部512は、一例として直流電流指令idc_rと等しい入力電流振幅指令と、入力に接続される電源の周波数と等しい入力電流周波数指令を生成し、入力側に正弦波状の電流を流す指令を生成する。インバータPWM演算部521と同様に、コンバータPWM演算部522は、入力電流に対してコンバータ変調率Iin_rと電流位相指令θIinを定め、3本のゼロ電流ベクトル(たとえばIRR、ISS、ITT、図7参照)のうちの1本と、6本のゼロでない電流ベクトル(IRT、IRS、ITS、ITR、ISR、IST)のうちの2本を選択するようにスイッチのオンオフが制御される。これらの6つの電流ベクトルの状態を、各々、どの程度の時間継続させるかを、上記の式(5)〜(7)にて、変調率Iout_rを入力側の入力電流指令ベクトルIi_refに対する変調率Iin_rに、また電流位相指令θIoutを入力側の入力電流指令ベクトルIi_refに対する位相指令にそれぞれ置き換えた式により定めている。
【0044】
次に、図1および図5を参照して、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する電力変換装置100の制御回路51の構成について説明する。
【0045】
図5のコンバータ部301の片方向スイッチ311〜316に入力される3相電流(ir、is、it)と、出力される直流電流(idc、−idc)との関係は、スイッチ駆動信号S1c〜S6cを用いて、下記の式(8)によって表わされる。
【0046】
【数5】
【0047】
なお、スイッチ駆動信号S1c〜S6cが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。片方向スイッチ321〜326に入力される直流電流(idc、−idc)と、図5のインバータ部302から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、スイッチ駆動信号S1i〜S6iを用いて、下記の式(9)によって表わされる。
【0048】
【数6】
【0049】
なお、スイッチ駆動信号S1i〜S6iが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。
【0050】
次に、前述のとおり、第1実施形態の電力変換装置100は、式(4)に示すように、直流インダクタ31、33および35のどれか一つに直流電流idcが流れ、直流インダクタ32、34および36のどれか一つに直流電流−idcが流れるので、電力変換装置100に入力される3相電流(ir、is、it)と、直流電流(idc、−idc)との関係は、上記の式(8)と同様に、下記の式(10)によって表わされる。
【0051】
【数7】
【0052】
また、直流電流(idc、−idc)と、電力変換装置100から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、前述のとおりS1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5S、S1T、S3T、S5Tのうち常にどれか一つが「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6S、S2T、S4T、S6Tのうち常にどれか一つが「1」であることから、上記の式(9)と同様に、下記の式(11)によって表わされる。
【0053】
【数8】
【0054】
ここで、第1実施形態の電力変換装置100は、3相入力3相出力の電流形インバータ300と同様に、入力される3相交流を電圧の大きさ、周波数の異なる3相交流に変換して出力するものであることを考慮すると、上記の式(8)と式(10)との比較から、下記の式(12)の関係が満たされる必要があることになる。
【0055】
【数9】
【0056】
また、同様に上記の式(9)および式(11)の比較から、下記の式(13)の関係が満たされる必要がある。
【0057】
【数10】
【0058】
そして、上記の式(12)と式(13)とを比較することにより、第1実施形態の電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tと、電流形インバータ300のスイッチ駆動信号S1c〜S6c、S1i〜S6iとの間には、下記の式(14)の関係があることが分かる。
【0059】
【数11】
【0060】
すなわち、第1実施形態の電力変換装置100において、インバータPWM演算部521は決定した1本のゼロ電流ベクトルと、2本のゼロでない電流ベクトルと、時間Tz、Ti、Ti+1と、に基づき、さらに表1を使用して、式(9)のSi1〜Si6を決定し、駆動信号分配器53に出力する。また、コンバータPWM演算部522は、インバータPWM演算部521と同様に、式(8)のSc1〜Sc6を生成し(表2を使用)、駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、上記の式(14)に基づいて論理積回路により、電力変換装置100のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する。その結果、制御回路51は3相入力3相出力の電流形インバータ300のスイッチ駆動信号に基づいて、電力変換装置100を駆動することとなる。
【0061】
次に、図8〜図10を参照して、制御回路51の駆動信号分配回路53がスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを生成する別の構成を説明する。
【0062】
図8は、図1と電気的に同じ図を示しているが、ゼロ電流ベクトルの説明を容易にするために、図1の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。なお、フィルタ用キャパシタ4〜9と、制御回路51とは、省略している。図8に示すように、電力変換回路1aは、図5に示す電流形インバータ300の片方向スイッチ314(S1c)と、片方向スイッチ311(S4c)とがオンであり、片方向スイッチ312(S6c)、片方向スイッチ313(S2c)、片方向スイッチ315(S3c)、片方向スイッチ316(S5c)がオフである入力側の状態がゼロ電流ベクトルIRRの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2aは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルISSの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3aは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルITTの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1a、2a、3aのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルに基づいて決めることは、電流形インバータ300において3個のゼロ電流ベクトルのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0063】
図9は、図8と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図8の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。図9に示すように、電力変換回路1bは、図5に示す電流形インバータ300の片方向スイッチ311(S4c)と、片方向スイッチ316(S5c)とがオンであり、片方向スイッチ312(S6c)、片方向スイッチ313(S2c)、片方向スイッチ314(S1c)、片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態が電流ベクトルIRTの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2bは、入力側の状態が電流ベクトルISRの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3bは、入力側の状態が電流ベクトルITSの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1b、2b又は3bのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ300において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRT、ISR、ITSのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0064】
図10は、図8と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図8の片方向スイッチ11〜28の配置を移動している。図10に示すように、電力変換回路1cは、入力側の状態が電流ベクトルIRSの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2cは、入力側の状態が電流ベクトルISTの電流形インバータと同等の回路構成となる。また、電力変換回路3cは、入力側の状態が電流ベクトルITRの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1c、2c又は3cのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ300において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRS、IST、ITRのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0065】
図8〜図10に示す直流インダクタ31、33および35は、結合されているとともに、直流インダクタ32、34および36は、結合されている。これにより、上記したように、駆動信号分配回路53が、片方向スイッチ11〜28をオンオフすることにより、直流インダクタ31、33および35の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えること(フライバックコンバータ同等の動作)が可能である。また、片方向スイッチ11〜28をオンオフすることにより、直流インダクタ32、34および36の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えることも可能である。従って、図8〜図10に示す9つの電力変換回路を任意に選択し、選択した電力変換回路に電流を流すことが可能である。コンバータPWM演算部522は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、この情報に従い、電力変換回路を選択する。電力変換回路を選択することにより、図8〜図10の各々に示す電力変換装置の3つの構成のうち、どれか一つを選択したことになる。一方、インバータPWM演算部521は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路53に出力する。駆動信号分配回路53は、選択した電力変換回路に対して、この情報に従いスイッチのオンオフを決め、選択した電力変換装置の構成中の選択しなかった2個の電力変換回路のスイッチは全てオフとすることにより、全てのスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tのオンオフ状態を決定する。駆動信号分配回路53は、さらにインバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部522が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tを出力する。
【0066】
一例として、出力電流指令ベクトルIo_refと入力電流指令ベクトルIi_refが図6および図7に示す位置にあるときの、電力変換装置100に対するスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6S、S1T〜S6Tのタイムチャートを図11に示す。図6および図7の状態は、出力電流指令ベクトルIo_refに隣接するゼロでない2本の電流ベクトルがIUWとIUVであり、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接するゼロでない2本の電流ベクトルがIRTとIRSである場合である。図11ではゼロ電流ベクトルは、隣接する2本のゼロでない電流ベクトルに共通に含まれる相によるものとして、出力電流指令ベクトルIo_refに対してはIUU、入力電流指令ベクトルIi_refに対してはIRRとしている。このようにすることで、片方向スイッチの切替回数を減らすことができるが、他の目的で別のゼロ電流ベクトルとしても本発明には関係しない。
【0067】
図11により、制御回路51の動作をより詳細に説明する。インバータPWM演算部521は、ゼロ電流ベクトルIUUの継続時間をTiz、電流ベクトルIUWの継続時間をTii、電流ベクトルIUVの継続時間をTii+1としている。また、コンバータPWM演算部522は、ゼロ電流ベクトルIRRの継続時間をTcz、電流ベクトルIRTの継続時間をTci、電流ベクトルIRSの継続時間をTci+1としている。図11において駆動信号分配回路53は、ゼロ電流を出力する時間を2分の1にし、キャリア周期の始めと終わりに1つずつゼロ電流を出力する時間を設けている。駆動信号分配回路53はキャリア周期の開始を時刻ゼロとし、インバータPWM演算部521の演算した継続時間から時刻Tiz/2、時刻Tiz/2+Tii、時刻Tiz/2+Tii+(Tii+1)を、コンバータPWM演算部522の演算した継続時間から時刻Tcz/2、時刻Tcz/2+Tci、時刻Tcz/2+Tci+(Tci+1)を求め、これら6つの時刻を大小順に並べることにより、キャリア周期Tsを区間Aから区間Gに分割する。
【0068】
駆動信号分配回路53は、各区間について、図8〜図10に示した電力変換回路と、出力される電流ベクトルの組を決定する。図11の例ではこれらは、区間A:(電力変換回路1a、IUU)、区間B:(電力変換回路1a、IUW)、区間C:(電力変換回路1b、IUW)、区間D:(電力変換回路1b、IUV)、区間E:(電力変換回路1c、IUV)、区間F:(電力変換回路1a、IUV)、区間G:(電力変換回路1a、IUU)となる。さらに、駆動信号分配回路53は、この各区間における電力変換回路と出力する電流ベクトルの組から、実際の電流形インバータ回路を参照して、指定された電流ベクトルを出力するためにオンする片方向スイッチを選択する。図11の例ではその片方向スイッチは、区間A(S1R、S4R)、区間B(S1R、S2R)、区間C(S1R、S2T)、区間D(S1R、S2S)、区間E(S1R、S6S)、区間F(S1R、S6R)、区間G(S1R、S4R)となる。各区間にて、このようにして決まった片方向スイッチをONし、その他のスイッチをオフすることで、駆動信号分配回路53は、図11に示すタイムチャートのスイッチ駆動信号を出力する。電力変換回路を参照しなくても、あらかじめ9つの入力に関する電流ベクトルと9つの出力に関する電流ベクトルの全組み合わせ81通りについて、図8〜図10の回路図に基づき、オンする2個の片方向スイッチをテーブル化しておけば、駆動信号分配回路53は、このテーブルを参照することで、オンする2個の片方向スイッチを直ちに決定できる。
【0069】
このように、第1実施形態の電力変換装置100は、3相入力3相出力の電流形インバータ300と同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、複数の電力変換回路1〜3にそれぞれ設けられる直流インダクタ31、33および35(直流インダクタ32、34および36)同士を結合させて、複数の片方向スイッチ11〜28のオンオフに基づいて、結合された直流インダクタ31、33および35(直流インダクタ32、34および36)の巻線間において電流が移動する動作を行う。これにより、図5に示す電流形インバータに比べ、電流が通過する片方向スイッチの数が減り、導通損失が低減できる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、図5に示す電流形インバータと同じ動作原理に基づくため、電力変換の方向が双方向でかつ電圧の昇圧・降圧が可能である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、図12を参照して、第2実施形態の電力変換装置101について説明する。この第2実施形態では、上記3相交流が入力されるとともに3相交流が出力される第1実施形態と異なり、単相交流(2相交流)または直流が入力されるとともに3相交流が出力される。
【0073】
第2実施形態の電力変換装置101は、図1に示す第1実施形態の電力変換装置100において、T端子および電力変換回路3を取り除いた構成を有している。すなわち、図12に示すように、本実施形態に係る電力変換装置101は、2相交流電源の入力端子であるR端子およびS端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子と、2個の電力変換回路1および2と、フィルタ用キャパシタ4と、フィルタ用キャパシタ7、8および9と制御回路54を有する。なお、第2実施形態の電力変換装置101のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
次に、図12〜図14を参照して、第2実施形態の電力変換装置101の動作原理を説明する。
【0075】
図13に示す双方向スイッチ群400は、従来のマトリクスコンバータによる電流形電力変換装置の一部を構成し、電力変換を行うものであり、図3に示す双方向スイッチ群200にて、T端子およびT端子に接続される双方向スイッチ207〜209を取り除いた構成を有している。すなわち、図13に示すように、双方向スイッチ群400には、2相交流電源の入力端子であるR端子およびS端子と、3相交流出力端子であるU端子、V端子およびW端子とが設けられている。また、R端子およびS端子と、U端子、V端子およびW端子との間には、6個の双方向スイッチ201〜206が設けられている。なお、双方向スイッチ群400のその他の構成は、比較例1の双方向スイッチ群200と同様である。ここで、R端子およびS端子と、U端子、V端子およびW端子とには各々リアクトルと、相互間の接続をスイッチにて接断可能なコンデンサとが接続されるが、これらは図13では省略されている。
【0076】
また、双方向スイッチ201〜206は、それぞれ、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22およびS23によって駆動される。双方向スイッチ群400への入力電流および双方向スイッチ群400からの出力電流は、前述の入力端子及び出力端子に接続された図示しないリアクトルの作用により、ほぼ一定の振幅の交流電流となる。このとき双方向スイッチ201〜206に入力される単相(2相)電流(ir、is)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(15)によって表わされる。
【0077】
【数12】
【0078】
なお、スイッチ駆動信号S11、S12、S13、S21、S22およびS23が「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、入力端子(R端子、S端子)から、出力端子(U端子、V端子、W端子)への向きを正とする。
【0079】
図14は、図13に示す回路と電気的に等しい回路を示している。図14では、双方向スイッチ201〜206に含まれる片方向スイッチ(片方向スイッチ221〜232)を分離して表示している。片方向スイッチ221〜232に入力される2相電流(ir、is)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、下記の式(16)および式(17)によって表わされる。
【0080】
【数13】
【0081】
なお、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、電流irpおよびispは、入力端子(R端子、S端子)側から、出力端子(U端子、V端子、W端子)側へ、一方向に流れる直流電流である。また、電流irnおよびisnは、出力端子側から、入力端子側へ、一方向に流れる直流電流である。従来の電流形電力変換装置では入力電流は正弦波であり、電流irpおよびispは、それぞれ入力電流irおよびisを正に整流した半波整流波形(正弦波の正の部分)を有する直流電流となり、電流irnおよびisnは、それぞれ入力電流irおよびisを負に整流した半波整流波形(正弦波の負の部分)を有する直流電流となる。
【0082】
次に、図12と図14を比較すると、第2実施形態の電力変換装置101では、図14に示す電流形電力変換装置を構成する双方向スイッチ群400の直流電流irp〜isnの流路に、各々結合インダクタ31〜34を設けたものであることがわかる。前述のように、結合されたインダクタの巻線に接続された閉回路の間で電流を移動することができるので、電流形の電力変換器101において下記の式(18)に示される状態を瞬時に切り替えることが可能である。これは、常に直流インダクタ31、33のどちらかにパルス状の直流電流idcを流し、かつ常に直流インダクタ32、34のどちらかにパルス状の直流電流−idcを流すことを意味している。さらにこれは、S1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5Sのうち常にどれか一つを「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6Sのうち常にどれか一つを「1」とすることにより実現される。
【0083】
【数14】
【0084】
上記の式(18)の状態をパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を適用することにより、各巻線にidcを流す時間を変化させることによって、入力電流ir(is)の平均値を正弦波状にすることが可能となる。すなわち、第2実施形態の電力変換装置101は、従来の電流形電力変換装置の内部に流れる直流電流をパルス化しPWMの適用で従来の電流形電力変換器と等価な電流を流すことで等価な動作が行え、かつ外部にリアクトルと、スイッチとを必要としない電力変換装置となる。
【0085】
次に、図15〜図18を参照して、第2実施形態の電力変換装置101に対して、入力出力各々の電流指令ベクトルを用いることにより、制御回路54にてスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成することを説明する。
【0086】
まず、図15に示す電流形インバータ500は、図5に示す電流形インバータ300において、T端子およびT端子に接続される片方向スイッチ313および316を取り除いた構成を有している。
【0087】
図15に示すように、2相入力3相出力の電流形インバータ500では、交流−直流変換を行うコンバータ部501により交流電源から直流電流idcを生成した後、直流電流idcを直流−交流変換を行うインバータ部302により交流に変換する。このとき、コンバータ部501は、直流電流idcを一定にするように制御されるとともに、インバータ部302は、所望の電流を出力するように制御される。また、インバータ部302は、第1実施形態と同様、表1に従い電流ベクトルを出力可能である。一方コンバータ部501は表3に従い電流ベクトルを入力可能である。
【0088】
【表3】
【0089】
図12に示すとおり、制御回路54は、直流電流指令部513、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521、コンバータ電流指令部542、コンバータPWM演算部552を備える。第1実施形態と同じく、直流電流指令部513は、直流電流指令idc_rを生成し、インバータ電流指令部511、インバータPWM演算部521は、直流電流指令idc_rに基づき、インバータ部302に対するスイッチ駆動信号S1i、S3i、S5i、S4i、S6i、および、S2iを生成している。コンバータ電流指令部542およびコンバータPWM演算部552は、直流電流指令idc_rに基づき、図15に示すコンバータ部501に対するスイッチ駆動信号S4c、S2c、S1c、および、S3cを生成している。そして、制御回路54はさらに駆動信号分配回路56を備え、これらのスイッチ駆動信号から、第2実施形態の電流形電力変換装置101のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する。
【0090】
図15に示す交流−直流変換を行うコンバータ部501は、2本のゼロ電流ベクトル(IRR、ISS)と、idcの長さを有する2本の電流ベクトル(ISR、IRS)とを出力可能に構成されている。コンバータ電流指令部542は、一例として直流電流指令idc_rと等しい入力電流振幅指令と、入力に接続される電源の周波数と等しい入力電流周波数指令を生成する。コンバータPWM演算部552は、コンバータ電流指令部542から入力電流振幅指令および入力電流周波数指令を受け取り、入力電流指令ベクトルを生成し、電流形インバータ500に入力される電流ベクトルの時間を演算するように構成されている。入力電流ベクトルは、図16に示すベクトル図において、IRS−ISRで示す一本の軸上を、入力電流周波数指令で定まる周期で往復するベクトルとなる。また、コンバータPWM演算部552は、入力電流周波数指令を積分し電流位相指令θIinを定める。こうして振幅と位相を定めることにより、入力電流指令ベクトルIi_refは、その大きさが、例えば式(19)で定まるベクトルとなる。
【0091】
【数15】
【0092】
上記は、入力電流指令ベクトルIi_refの大きさが最大となるときの位相を基準位相とした場合の例である。また、コンバータPWM演算部552は、式(19)で定まる入力電流ベクトルIi_refの大きさと、直流電流指令idc_rの√3/2倍の値との比をコンバータ変調率Iin_rとする。さらに、コンバータPWM演算部552は、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接する1つのゼロ電流ベクトル(IRRまたはISS)とゼロでない1つの電流ベクトルIi(IRSまたはISR)とを用いて、ゼロ電流ベクトルの出力時間Tz、および、ゼロでない電流ベクトルIiの出力時間Tiを、下記の式(20)および式(21)によって決定する。
【0093】
【数16】
【0094】
このように、インバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部552は、2相入力3相出力の電流形インバータ500の出力および入力に対して、それぞれ電流指令ベクトルを決めて、PWM周期内で、出力電流指令ベクトルIo_refに対しては、隣接する3本の電流ベクトル(たとえばIUU、IUW、IUV、図6参照)を選択し、入力電流指令ベクトルIi_refに対しては、隣接する2本の電流ベクトル(たとえば、IRR、IRS、図16参照)を選択する。さらに、これらの5本の電流ベクトルの状態を、各々、どの程度の時間継続させるかを、上記の式(5)〜(7)、(20)および(21)により定めている。
【0095】
次に、図12および図15を参照して、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する電力変換装置101の制御回路54の動作について説明する。
【0096】
図15のコンバータ部501の片方向スイッチ311、312、314および315に入力される2相電流(ir、is)と、出力される直流電流(idc、−idc)との関係は、スイッチ駆動信号S1c〜S4cを用いて、下記の式(22)によって表わされる。
【0097】
【数17】
【0098】
なお、スイッチ駆動信号S1c〜S4cが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。また、図15のインバータ部302の片方向スイッチ321〜326に入力される直流電流(idc、−idc)と、出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、スイッチ駆動信号S1i〜S6iを用いて、下記の式(23)によって表わされる。
【0099】
【数18】
【0100】
なお、スイッチ駆動信号S1i〜S6iが「1」の場合は、オン信号となり、「0」の場合は、オフ信号となる。
【0101】
次に、前述のとおり、第2実施形態の電力変換装置101では、式(18)に示すように、直流インダクタ31および33のどちらか一つに直流電流idcが流れ、直流インダクタ32および34のどちらか一つに直流電流−idcが流れるので、電力変換装置101に入力される2相電流(ir、is)と、直流電流(idc、−idc)との関係は、上記の式(22)と同様に、下記の式(24)によって表わされる。
【0102】
【数19】
【0103】
また、直流電流(idc、−idc)と、電力変換装置101から出力される3相電流(iu、iv、iw)との関係は、前述のとおりS1R、S3R、S5R、S1S、S3S、S5Sのうち常にどれか一つが「1」、かつS2R、S4R、S6R、S2S、S4S、S6Sのうち常にどれか一つが「1」であることから、上記の式(23)と同様に、下記の式(25)によって表わされる。
【0104】
【数20】
【0105】
ここで、第2実施形態の電力変換装置101は、2相入力3相出力の電流形インバータ500と同様に、入力される単相交流を電圧の大きさ、周波数の異なる3相交流に変換して出力するものであることを考慮すると、上記の式(22)と式(24)との比較から、下記の式(26)の関係が満たされる必要があることになる。
【0106】
【数21】
【0107】
また、同様に上記の式(23)および式(25)の比較から、下記の式(27)の関係が満たされる必要がある。
【0108】
【数22】
【0109】
そして、上記の式(26)と式(27)とを比較することにより、下記の式(28)の関係があることが分かる。
【0110】
【数23】
【0111】
すなわち、第2実施形態の電力変換装置101では、第1実施形態と同様に、インバータPWM演算部521は決定した1つのゼロ電流ベクトルと、2つのゼロでない電流ベクトルと、時間Tz、Ti、Ti+1と、に基き、さらに表1を使用して、式(23)のSi1〜Si6を生成し、駆動信号分配器56に出力する。また、コンバータPWM演算部552は、インバータPWM演算部521と同様に、式(22)のSc1〜Sc4を生成し(表3を使用)、駆動信号分配回路56に出力する。図12に示す制御回路54の駆動信号分配回路56は、上記の式(28)に基づいて、論理積回路により、電流形の電力変換装置101のスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する。その結果、制御回路54は2相入力3相出力の電流形インバータ500のスイッチ駆動信号に基づいて、電力変換装置101を駆動することとなる。
【0112】
次に、図17および図18を参照して、制御回路54の駆動信号分配回路56がスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを生成する別の構成を説明する。
【0113】
図17は、図12と電気的に同じ図を示しているが、ゼロ電流ベクトルの説明を容易にするために、図12の片方向スイッチ11〜22の配置を移動している。なお、フィルタ用キャパシタ4および7〜9と、制御回路51とは、省略している。図17に示すように、電力変換回路1eは、図15に示す電流形インバータ500の片方向スイッチ314(S1c)および片方向スイッチ311(S4c)がオンであり、片方向スイッチ312(S2c)および片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態がゼロ電流ベクトルIRRの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2eは、入力側の状態がゼロ電流ベクトルISSの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1e、2eのどちらかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルに基づいて決めることは、電流形インバータ500において2本のゼロ電流ベクトルのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0114】
図18は、図17と電気的に同じ図を示しているが、電流ベクトルの説明を容易にするために、図18の片方向スイッチ11〜22の配置を移動している。図18に示すように、電力変換回路1fは、図15に示す比較例2の電流形インバータ500の片方向スイッチ314(S1c)および片方向スイッチ312(S2c)がオンであり、片方向スイッチ311(S4c)および片方向スイッチ315(S3c)がオフである入力側の状態がゼロでない電流ベクトルIRSの電流形インバータと同等の回路構成となる。同様に、電力変換回路2fは、入力側の状態がゼロでない電流ベクトルISRの電流形インバータと同等の回路構成となる。すなわち、電力変換回路1f、2fのどれかを選択し、選択した回路のスイッチのオンオフを出力側の電流ベクトルを用いて決めることは、電流形インバータ500において、それぞれゼロでない電流ベクトルIRS、ISRのどれかを入力する状態と出力側の電流ベクトルとを同時に選択したことに等しくなる。
【0115】
図17および図18に示す直流インダクタ31および33は、結合されているとともに、直流インダクタ32および34は、結合されている。これにより、上記したように、駆動信号分配回路56が、片方向スイッチ11〜22をオンオフすることにより、直流インダクタ31および33の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えること(フライバックコンバータ同等の動作)が可能である。また同様に、片方向スイッチ11〜22をオンオフすることにより、直流インダクタ32および34の間において、直流インダクタに流れる直流電流を瞬時に切り替えることも可能である。従って、図17および図18に示す4つの電力変換回路を任意に選択し、選択した電力変換回路に電流を流すことが可能である。コンバータPWM演算部552は選択した1本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路56に出力する。駆動信号分配回路56は、この情報により、電力変換回路を選択する。電力変換回路を選択することにより、図17および図18に示す電力変換装置102の2つの構成のうち、どちらか一つを選択したことになる。一方、インバータPWM演算部521は選択した2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがそれぞれどの電流ベクトルであるかについての情報を駆動信号分配回路56に出力する。駆動信号分配回路56は、選択した電力変換回路に対して、この情報に従いスイッチのオンオフを決め、選択した電力変換装置102の構成の中の選択しなかった1個の電力変換回路のスイッチは全てオフとすることにより、全てのスイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sのオンオフ状態を決定する。駆動信号選択回路56は、さらにインバータPWM演算部521およびコンバータPWM演算部552が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、スイッチ駆動信号S1R〜S6R、S1S〜S6Sを出力する。
【0116】
このように、第2実施形態の電力変換装置101は、2相入力3相出力の電流形インバータ500と同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0117】
なお、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0118】
(第3実施形態)
次に、図19を参照して、第3実施形態の電力変換装置102について説明する。この第3実施形態では、上記3相入力3相出力の電力変換装置100である第1実施形態および2相入力3相出力の電力変換装置101である第2実施形態と異なり、M相入力(Mは2以上の自然数)N相(Nは2以上の自然数)出力の電力変換装置102である。
【0119】
第3実施形態の電力変換装置102は、図19に示すように、M相分のM個の入力端子と、N相分のN個の出力端子と、入力の相数と同じM個の電力変換回路1021、1022・・・102mとを備える。さらに、第3実施形態の電力変換装置102は図示しない制御回路57を備えている。
【0120】
電力変換回路1021、1022・・・102mの構成は、それぞれ、N個の正側片方向スイッチと、N個の負側片方向スイッチとを含む。また、電力変換回路1021、1022・・・102mは、M本の結合されたインダクタの巻線をもつ直流インダクタ31および32の巻線を含む。
【0121】
制御回路57は、図2に示す第1実施形態における制御回路51にて、インバータPWM演算部521を図示しないインバータPWM演算部に、コンバータPWM演算部522を図示しないコンバータPWM演算部に、また、駆動信号分配回路53を図示しない駆動信号分配回路に置き換えたものである。直流電流指令部513、インバータ電流指令部511、コンバータ電流指令部512については、第1実施形態と全く同一であるためここでは説明を省略する。
【0122】
電力変換装置102では、出力の相数であるN相のNが奇数の場合には、この場合、図20に示すように、互いに360/2N度離れた2N本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとを選び出し生成できる。また、Nが偶数の場合には、図21に示すように、互いに360/N度離れた大きさの等しいN本のゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとを選び出し生成できる。入力についても同様で、相数Mが奇数の場合、互いに360/2M度離れた2M本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルと、M本のゼロ電流ベクトルとを選び出し入力でき、相数Mが偶数の場合には、互いに360/M度離れた大きさの等しいM本のゼロでない電流ベクトルと、M本のゼロ電流ベクトルとを選び出し入力できる。
【0123】
電力変換装置102においても、上記第1実施形態の3相入力3相出力の電力変換装置100と同様に、インバータPWM演算部は、出力電流指令ベクトルIo_refと隣接する1本のゼロ電流ベクトルと、2つのゼロでない電流ベクトルを、上記2N本(Nが奇数のとき)またはN本(Nが偶数のとき)のゼロでない電流ベクトルと、N本のゼロ電流ベクトルとの中から選び出す。
【0124】
次に、電力変換装置102のインバータPWM演算部は、第1実施形態におけるインバータPWM演算部511と同様、出力電流指令ベクトルIo_refの大きさと、2N本またはN本の大きさの等しいゼロでない電流ベクトルの内接円の半径とからインバータ変調率Iout_rを求め、また出力電流周波数指令から、積分により電流位相指令θIoutを求める。さらに式(5)にてπ/3をπ/N(Nが奇数のとき)または2π/N(Mが偶数のとき)で置き換えた式と、式(6)、式(7)とを用いて、選び出した2つのゼロでない電流ベクトルと1つのゼロ電流ベクトル各々の継続時間Ti、Ti+1、Tzを決定する。
【0125】
電力変換装置102のコンバータPWM演算部も、インバータPWM演算部と同様に、入力電流指令ベクトルIi_refに隣接する2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルを選び出し、その電流を入力する2M個のコンバータのスイッチのオンオフを決定する。さらにコンバータ変調率Iin_r、電流位相指令θIinを求め、式(5)にてπ/3をπ/M(Mが奇数のとき)または2π/M(Mが偶数のとき)で置き換えた式と、式(6)、式(7)とを用いて、選び出した2本のゼロでない電流ベクトルと1本のゼロ電流ベクトル各々の継続時間Ti、Ti+1、Tzを決定する。
【0126】
電力変換装置102の駆動信号分配回路は、電力変換装置102のコンバータPWM演算部が出力する、2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがどの電流ベクトルかについての情報から、電力変換回路を選び出す。電力変換装置102では、M2個の電力変換回路が存在するため、その中から選び出すことになる。一つの電力変換回路を選ぶことにより、M個の電力変換回路を有する電力変換装置102の回路構成を一つ選択したことになる。そして、こうして選び出した電力変換回路の2N個の片方向スイッチに対して、電力変換装置102のインバータPWM演算部が出力する、2本のゼロでない電流ベクトルと、1本のゼロ電流ベクトルがどの電流ベクトルかについての情報に従い、オンオフを決め、他のM−1個の電流形インバータの片方向スイッチは全てオフとする。電力変換装置102の駆動信号選択回路は、さらに電力変換装置102のインバータPWM演算部およびコンバータPWM演算部が、それぞれ出力する継続時間Tz、Ti、Ti+1に従い、2MN個の片方向スイッチに対するスイッチ駆動信号を出力する。
【0127】
このように、第3実施形態の電力変換装置102は、M相入力N相出力電流形インバータと同様に、電流指令ベクトルからスイッチ駆動信号が生成されて駆動される電力変換装置である。
【0128】
なお、第3実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0129】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、第4実施形態の電力変換装置103について説明する。この第4実施形態では、カレントトランス61とスナバ回路62とが設けられている。
【0130】
第4実施形態の電力変換装置103は、図22に示すように、R端子と直流インダクタ31との間、S端子と直流インダクタ33との間、および、T端子と直流インダクタ35との間にカレントトランス61が設けられている。カレントトランス61は、直流インダクタ31、33および35に流れる電流の和を検出する。第1実施形態において説明したとおり、常に直流インダクタ31、33、35のどれか一つに直流電流idcが流れるため、この検出された電流の和はidcと等しくなる。そこで、この検出された電流の和は、直流電流指令部513(図2参照)に入力され、直流電流指令部513は、検出された電流の和を使用して直流電流idcのフィードバック制御を行なう。
【0131】
また、直流インダクタ31〜36と、片方向スイッチ11〜28との間には、スナバ回路62が設けられている。スナバ回路62は、6個のダイオード63と、コンデンサ64と、抵抗65とを含む。なお、直流インダクタ31〜36間の結合度は、1よりも小さいので、直流インダクタ31〜36の電流経路をオンからオフに切り替えた際に巻線にサージ電圧が発生する。スナバ回路62は、このサージ電圧を抑制する機能を有する。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第4実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0132】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0133】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、3相入力3相出力、2相入力3相出力、および、M相入力N相出力の電力変換装置に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図23に示すように、2相入力2相出力の電力変換装置105に本発明を適用してもよい。この場合、直流を2相の交流に変換して出力するものであるので、1つの電流形インバータに、4個(2×2個)の片方向スイッチが必要となる。また、2相入力2相出力の電力変換装置では、各相について1つずつ2個の電流形インバータ回路が設けられるので、合計8個(2×2×2個)の片方向スイッチが設けられる。
【0134】
また、図15のような一般的な電流形インバータ回路において、直流インダクタ303、304は両方必要という分けではなく、図24に示す電流形インバータ500aのように、どちらかひとつに省略することも可能である。したがって、上記第1〜第4実施形態では、入力端子(R端子、S端子、T端子)と片方向スイッチとの間に、結合された直流インダクタ31、33および35と結合された直流インダクタ32、34および36とを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも、入力端子(R端子、S端子、T端子)と片方向スイッチとの間に、結合された直流インダクタ31、33および35が設けられていればよい。
【0135】
また、図15のような一般的な電流形インバータ回路において、直流インダクタ303、304は、図25に示す電流形インバータ500bのように、二つを結合させてもよい。したがって、上記第1〜第4実施形態では、直流インダクタ31、33および35と、直流インダクタ32、34および36とが、別個に結合されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、直流インダクタ31〜36すべてを図1の黒丸の方向へ結合させてもよい。
【0136】
第1〜第4実施形態では、片方向スイッチはダイオードとトランジスタを直列接続したものとしたが、トランジスタはIGBTのような自己消弧形のものであってもよい。またRB−IGBTのような逆阻止型のみを使用し、ダイオードを省略したものであってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3 電力変換回路(電力変換部)
11、13、15、17、19、21、23、25、27 片方向スイッチ(第1片方向スイッチ)
12、14、16、18、20、22、24、26、28 片方向スイッチ(第2片方向スイッチ)
31、33、35 直流インダクタ(インダクタ、第1インダクタ、巻線)
32、34、36 直流インダクタ(インダクタ、第2インダクタ、巻線)
51、54、57 制御回路(制御部)
511 インバータ電流指令部
512、542 コンバータ電流指令部
513 直流電流指令部
521 インバータPWM演算部
522、552 コンバータPWM演算部
53、56 駆動信号分配回路(第2制御部)
100、101、102、103、104、105 電力変換装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M相(Mは2以上の自然数)の交流が入力されるとともに、N相(Nは2以上の自然数)の交流が出力される電力変換装置であって、
複数の片方向スイッチと、入力側端子と前記複数の片方向スイッチとの間に設けられるインダクタとをそれぞれ含む複数の電力変換部を備え、
前記電力変換部の前記入力側端子を短絡するとともに、前記複数の電力変換部の出力側端子同士を並列接続し、
前記複数の電力変換部にそれぞれ設けられる前記インダクタ同士を結合させて、前記複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、前記結合されたインダクタの巻線の間において電流が移動する動作が行われるように構成されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部の各々に設けられた前記複数の片方向スイッチは、前記入力側端子から前記出力側端子へ電流を流す第1片方向スイッチと、前記出力側端子から前記入力側端子へ電流を流す第2片方向スイッチとを含み、
前記インダクタは、少なくとも、前記短絡された入力側端子と前記第1片方向スイッチとの間に設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記入力側端子と前記第1片方向スイッチとの間に第1インダクタが設けられるとともに、前記入力側端子と前記第2片方向スイッチとの間に前記第1インダクタと電流の流れ込みの位置が異なる第2インダクタが設けられ、
前記第1インダクタ同士を結合させるとともに、前記第2インダクタ同士を結合させるように構成されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記インダクタは、前記複数の片方向スイッチと前記出力側端子との間には設けられずに、前記入力側端子と前記複数の片方向スイッチとの間に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御するとともに、結合された前記インダクタの巻線の間において電流を移動させる制御を行う制御部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、コンバータ部とインバータ部とを含む電流形インバータを駆動する信号を生成して前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御する信号を生成するための信号として出力する第1制御部と、前記第1制御部により出力された信号から前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御する信号を生成する第2制御部とを含む、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の電力変換部は、3相の交流が入力されるとともに、3相の交流が出力される3個の電力変換部からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項1】
M相(Mは2以上の自然数)の交流が入力されるとともに、N相(Nは2以上の自然数)の交流が出力される電力変換装置であって、
複数の片方向スイッチと、入力側端子と前記複数の片方向スイッチとの間に設けられるインダクタとをそれぞれ含む複数の電力変換部を備え、
前記電力変換部の前記入力側端子を短絡するとともに、前記複数の電力変換部の出力側端子同士を並列接続し、
前記複数の電力変換部にそれぞれ設けられる前記インダクタ同士を結合させて、前記複数の片方向スイッチのオンオフに基づいて、前記結合されたインダクタの巻線の間において電流が移動する動作が行われるように構成されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部の各々に設けられた前記複数の片方向スイッチは、前記入力側端子から前記出力側端子へ電流を流す第1片方向スイッチと、前記出力側端子から前記入力側端子へ電流を流す第2片方向スイッチとを含み、
前記インダクタは、少なくとも、前記短絡された入力側端子と前記第1片方向スイッチとの間に設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記入力側端子と前記第1片方向スイッチとの間に第1インダクタが設けられるとともに、前記入力側端子と前記第2片方向スイッチとの間に前記第1インダクタと電流の流れ込みの位置が異なる第2インダクタが設けられ、
前記第1インダクタ同士を結合させるとともに、前記第2インダクタ同士を結合させるように構成されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記インダクタは、前記複数の片方向スイッチと前記出力側端子との間には設けられずに、前記入力側端子と前記複数の片方向スイッチとの間に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御するとともに、結合された前記インダクタの巻線の間において電流を移動させる制御を行う制御部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、コンバータ部とインバータ部とを含む電流形インバータを駆動する信号を生成して前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御する信号を生成するための信号として出力する第1制御部と、前記第1制御部により出力された信号から前記複数の片方向スイッチのオンオフを制御する信号を生成する第2制御部とを含む、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の電力変換部は、3相の交流が入力されるとともに、3相の交流が出力される3個の電力変換部からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−186924(P2012−186924A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48592(P2011−48592)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
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