説明

電力変換装置

【課題】冷却効率を向上し、装置の小型化を図る。
【解決手段】風洞部5を2つのダクト3,4で構成し、各ダクト3,4内で個別に冷却風を流通させることで、通風抵抗の増大を防ぎ、空冷が必要な発熱体だけを集中的に強制空冷させることができる。また、外側ダクト3の冷却風流入口31oに下部送風ファン11を設け、内側ダクト4の冷却風流出口32iに上部送風ファン12を設けることで、送風ファン11,12を互い違いの配置とし、装置全体の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、筐体内に発熱体を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータ装置等の電力変換装置は、その筐体内に、例えばスイッチングを行う半導体素子やヒートシンクなどの発熱体を備えている。このような発熱体を冷却するものとして、ヒートシンクを収納した風洞部の内部に冷却風を流通させて冷却する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−280779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、インバータ装置等の電力変換装置は、半導体素子やヒートシンクの他にも、例えば回生エネルギーを消費する抵抗器、力率を改善するためのリアクトル、平滑用のコンデンサなどの複数の発熱体を有している。このような電力変換装置に上記従来技術を適用した場合には、次のような課題が存在する。
【0005】
すなわち、上記従来技術では、風洞部が1つのダクトとして構成されている。インバータ装置等の電力変換装置にこの構成を適用した場合、1つのダクト内部における広い一体の中空空間内に複数の発熱体を分散配置し、所定の一箇所から冷却風を流入させる構成となる。この場合、冷却風が内部空間で拡散して各部に反射しながら循環する。よって、通風抵抗が増加し、冷却風量が減少する。これにより、冷却効率が著しく低くなる。このため、十分な冷却を行うには送風用のファンを大型化する必要があるが、この場合には装置全体の大型化を招くという課題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、冷却効率を向上し、装置の小型化を図ることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、複数の発熱体と、冷却風が流通される風洞部と、を収納した筐体を有する電力変換装置であって、前記風洞部は、前記複数の発熱体のうちの第1の発熱体を収納し、その冷却風流入口に設けた第1送風ファンにより冷却風を流通させる第1ダクトと、前記複数の発熱体のうちの第2の発熱体を収納し、その冷却風流出口に設けた第2送風ファンにより冷却風を流通させる第2ダクトと、を有し、前記第1ダクトと前記第2ダクトは、それぞれの冷却風の流路が略平行な配置関係で重なり合い、互いの前記冷却風流入口同士、及び前記冷却風流出口同士が近接するよう配置されていることを特徴とする電力変換装置が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却効率を向上することにより、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施の形態のインバータ装置の筐体の全体構成を表す部分透過斜視図及びその分解図である。
【図2】一実施の形態のインバータ装置の筐体の全体構成を表す正面図である。
【図3】図1、図2中の矢視III−III断面から見た側断面図である。
【図4】一方の送風ファンを大径化する変形例における側断面図である。
【図5】両方のダクトを直線形状化する変形例における側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
なお、以下の説明において、図1における左手前−右奥の斜め方向がインバータ装置1の前後方向に対応し、右手前−左奥の斜め方向が当該インバータ装置1の左右方向に対応し、上−下の方向が当該インバータ装置1の上下方向に対応する。
【0012】
図1、図2、及び図3において、本実施形態のインバータ装置1(電力変換装置)は、図示しないモータの駆動を制御する装置であり、全体が略直方体形状を備えた筐体2と、下部送風ファン11と、上部送風ファン12と、抵抗器13と、リアクトル14と、コンデンサ15と、半導体素子16と、ヒートシンク17と、回路基板18とを備えている。
【0013】
まず図1、図2において、筐体2は、外壁部としての金属板を貼り合わせた全体が略直方体形状を備えており、この例では長手方向が上下方向に向く姿勢で設置される。筐体2は、筐体本体2aと筐体蓋部2bとを有している。筐体蓋部2bは、筐体本体2aの正面前方側(図1中左手前側)の開口部に着脱可能となっており、この開口部を覆うように筐体蓋部2bを装着した際には、筐体2全体の内部が中空構造となって他の各部品を収納可能となっている。さらに本実施形態では、当該筐体本体2aの内部に冷却風が流通される風洞部5が設けられている。この風洞部5は、互いに連通せずにそれぞれ独立して設けられた2つの外側ダクト3と内側ダクト4を有している。
【0014】
一方の外側ダクト3は、筐体本体2aの外側背面壁部21(図1中右奥側の外壁部)と、この外側背面壁部21より前方側で平行に対向して配置された内側背面壁部22と、筐体本体2aの外側天井壁部23(図1中上手前側の外壁部)と、この外側天井壁部23より下方側で平行に対向して配置された内側天井壁部24と、筐体本体2aの左右両側の外側側面壁部25とによって囲まれた略L字形状(図中では上下逆さまの略L字形状)の中空空間である。また、他方の内側ダクト4は、上記内側背面壁部22と、この内側背面壁部22より前方側で平行に対向して配置された内側前面壁部26と、上記内側天井壁部24と、この内側天井壁部24より下方側で平行に対向して配置された内側下面壁部27と、筐体本体2aの左右両側の外側側面壁部25よりそれぞれ内側で平行に対向して配置された内側側面壁部28とによって囲まれた略L字形状の中空空間である。
【0015】
各ダクト3,4の下方側の端部と、上方前側の端部はそれぞれ開口しており、周囲の大気と連通している。なお、図示する例では、外側ダクト3の上方前側の開口部と、内側ダクト4の下方側の開口部には、それぞれ十分な通気が可能な通気蓋部2cが設けられている(内側ダクト4の下方側の開口部では図示省略)。これら外側ダクト3と内側ダクト4は、後述するようにそれぞれの下方側の開口部を冷却風流入口31o,31iとしてそれらから周囲の空気を流入し、この流入した空気を冷却風として内部に流通させ、それぞれの上方前側の開口部を冷却風流出口32o,32iとしてそれらから冷却風を流出させる。つまり、外側ダクト3と内側ダクト4は、それぞれ冷却風の流路として機能する。なお、図示する例では、各冷却風流出口32o,32iが上記筐体蓋部2bの取り付け位置より前方側に少しだけ突出している。このような構成により、外側ダクト3と内側ダクト4は、それぞれの冷却風の流路が略平行な配置関係で重なり合い、互いの冷却風流入口31o,31i同士、及び前記冷却風流出口32o,32i同士が近接するよう配置されている。
【0016】
なお、各ダクト3,4と筐体本体2aは、上記構成のように近接する壁部同士を共有させて一体に形成する以外にも、それぞれ個別の壁部で囲んで形成してもよい。また、外側ダクト3と内側ダクト4の各部寸法は、それぞれ内部に収納する後述の発熱体の大きさや、後述する送風ファンの送風面積に合わせて適宜設定される。
【0017】
次に図3において、下部送風ファン11は、この例では軸流ファンで構成されており、外側ダクト3の下方側端部の冷却風流入口31oに設けられている。特に図示しないが、当該冷却風流入口31oには、その開口面積で最も多く設置可能な複数の下部送風ファン11が設けられており、又は開口面積の各寸法がそれら複数の下部送風ファン11の送風面積とほぼ同じとなるよう設定されるのが望ましい。なお、本実施形態では、この下部送風ファン11が、特許請求の範囲に記載の第1送風ファンの一例に相当し、この下部送風ファン11を冷却風流入口31oに設けた上記外側ダクト3が特許請求の範囲に記載の第1ダクトの一例に相当する。
【0018】
上部送風ファン12も、この例では軸流ファンで構成されており、内側ダクト4の上方前側端部の冷却風流出口32iに設けられている。また特に図示しないが、この上部送風ファン12についても上記下部送風ファン11と同様に、当該冷却風流出口32iには、その開口面積で最も多く設置可能な複数の上部送風ファン12が設けられており、又は開口面積の各寸法がそれら複数の上部送風ファン12の送風面積とほぼ同じとなるよう設定されるのが望ましい。なお、本実施形態では、この上部送風ファン12が、特許請求の範囲に記載の第2送風ファンの一例に相当し、この上部送風ファン12を冷却風流出口32iに設けた上記内側ダクト4が特許請求の範囲に記載の第2ダクトの一例に相当する。
【0019】
抵抗器13は、当該インバータ装置1が駆動制御する図示しないモータに対して、いわゆるダイナミックブレーキを作動させる際に回生エネルギーを消費する。このため、ダイナミックブレーキの作動時には、当該抵抗器13が比較的高温に発熱する。
【0020】
リアクトル14は、交流に変換された電力の力率を改善するよう交流電流を流すコイルである。このため、周波数の高い交流電流が流れた際には当該リアクトル14が発熱する。
【0021】
コンデンサ15は、電源部の平滑用に用いられ、大きい交流電力が供給されて高い電荷を蓄電する。このため、コンデンサ15は常に発熱する。
【0022】
半導体素子16は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子からなり、直流電力を交流電力に変換するためのスイッチングを行う。このため、スイッチング時には当該半導体素子16が比較的高温に発熱する。この半導体素子16は、ヒートシンク17に密着して取り付けられている。
【0023】
ヒートシンク17は、例えばアルミニウムや銅等の熱が伝導しやすい金属等で構成されており、例えば同じ矩形形状の複数の薄板を併設した構成で全体が直方体形状を備えている。上記半導体素子16が発熱した際には、当該ヒートシンク17にその発熱が伝導されて拡散し、全体が高温となる。
【0024】
回路基板18には、当該インバータ装置1の動作に関わる電子回路が設けられている。この回路基板18は筐体2に固定されるとともに、接続部材6を介して複数の配線7と接続されている。特に図示はしないが、複数の配線7は筐体2の前方側において底部を貫通して下方に引き回されている。
【0025】
上記の抵抗器13、リアクトル14、コンデンサ15、半導体素子16、ヒートシンク17、及び回路基板18のうち、回路基板18を除いた各部品が発熱体となっている。これらの発熱体のうち、風洞部5内に配置されるのは、抵抗器13、リアクトル14、コンデンサ15、及びヒートシンク17である。なお、図示する例では、コンデンサ15を上記内側前面壁部26に貫通させて主に発熱する端部部分を内側ダクト4内に収納させている。本実施形態の例では、これら4つの発熱体は、抵抗器13、ヒートシンク17、コンデンサ15、リアクトル14の順に発熱量が大きくなっている。そして、最も発熱量が大きい抵抗器13と、最も発熱量が小さいリアクトル14とが上記外側ダクト3内に配置され、2番目に発熱量が大きいヒートシンク17と、3番目に発熱量が大きいコンデンサ15とが上記内側ダクト4内に配置されている。
【0026】
なお、本実施形態では、外側ダクト3内に収納する抵抗器13とリアクトル14が、特許請求の範囲に記載の第1の発熱体の一例に相当し、内側ダクト4内に収納するヒートシンク17とコンデンサ15が、特許請求の範囲に記載の第2の発熱体の一例に相当する。
【0027】
以上の配置構成で、下部送風ファン11と上部送風ファン12を作動させた場合には、外側ダクト3と内側ダクト4のそれぞれにおいて、下方側の各冷却風流入口31o,31iから周囲の空気を流入し、この流入した空気を冷却風として上方に流通させる。この際に上方に流通する冷却風が上記の各発熱体を冷却する。そして各発熱体を冷却した冷却風は、上記外側天井壁部23及び上記内側天井壁部24でその流通方向を前方に屈曲され、各ダクト3,4の上方前側の各冷却風流出口32o,32iから流出される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のインバータ装置1においては、強制空冷が必要な複数の発熱体を2つのダクト3,4に振り分けて収納させ、各ダクト3,4で個別に冷却風を流通させて各発熱体を空冷する。
【0029】
これに対して、特に図示しないが、1つのダクト内部における広い一体の中空空間内に複数の発熱体を分散配置し、所定の一箇所から冷却風を流入させる構成の場合には、冷却風が内部空間で拡散して各部に反射しながら循環する。よって、通風抵抗が増加し、冷却風量が減少する。これにより、冷却効率が著しく低くなる。これを解決するためには、大型の送風ファンを使用して冷却風の流通量を増大させる必要があり、その結果、装置の大型化及び製造コストの増大を招くという課題があった。
【0030】
本実施形態においては、風洞部5を2つのダクト3,4で構成し、各ダクト3,4内で個別に冷却風を流通させる構成とする。これにより、通風抵抗の増大を防ぎ、空冷が必要な発熱体だけを集中的に強制空冷させることができる。
【0031】
また、外側ダクト3はその冷却風流入口31oに下部送風ファン11を設け、内側ダクト4はその冷却風流出口32iに上部送風ファン12を設けている。このように、互い違いの配置で送風ファン11,12を設けることで、送風ファン11,12を冷却風流入口31o,31i同士、あるいは冷却風流出口32o,32i同士に近接して配置する場合に比べ、各送風ファン11,12に近接したダクト4,3の径(すなわち冷却風流入口31i及び冷却風流出口32oの口径)を適宜の大きさに調整することで、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0032】
また、外側ダクト3と内側ダクト4は、それぞれの冷却風の流路が略平行な配置関係で重なり合っているため、それら全体の容積の小型化を図ることができる。
【0033】
また、外側ダクト3と内側ダクト4は、互いの冷却風流入口31o,31i同士、及び冷却風流出口32o,32i同士が近接するよう配置されており、また外側ダクト3は冷却風流入口31oだけに送風ファン11を設け、内側ダクト4は冷却風流出口32iだけに送風ファン12を設けている。この場合、外側ダクト3の下部送風ファン11は、当該外側ダクト3の冷却風流入口31oに冷却風を流入させると同時に、隣接する内側ダクト4の冷却風流入口31iに対しても冷却風の引き込みを補助するよう機能する。また、内側ダクト4の上部送風ファン12においても、当該内側ダクト4の冷却風流出口32iから冷却風を流出させると同時に、隣接する外側ダクト3の冷却風流出口32oに対しても冷却風の吐き出しを補助するよう機能する。このように、各送風ファン11,12の送風機能が両方のダクト3,4に対して互いに冷却風の流通を補助し合うため、簡易な送風機構で効率的な冷却風の流通と冷却が可能となる。
【0034】
また、当該インバータ装置1が静的な空間中に固定される場合には、2つのダクト3,4が、互いの冷却風流入口31o,31i同士、及び冷却風流出口32o,32i同士を近接して配置していることで、筐体2が周囲の大気空間に対して円滑な空気の循環流を形成し、これによっても効率的な冷却風の流入と流出が可能となる。
【0035】
以上の結果、本実施形態によれば、冷却効率を向上して装置全体の小型化を図ることができる。
【0036】
また、送風ファン11,12は比較的高い頻度で交換する部品であるが、本実施形態においては、外側ダクト3の下部送風ファン11については筐体2の下方側に配置され、内側ダクト4の上部送風ファン12については筐体2の上部前方側に配置されていることから、少なくとも上部送風ファン12については、筐体2の前方側下方に引き回された配線7等の影響を受けることなく、交換作業を容易に行える。したがって、送風ファン11,12の両方を筐体2の下部に配置する場合に比べ、ファンの交換作業性を良くできる。また、2つのダクト3,4での2重構造としていることにより、筐体2全体の剛性強度を向上させる利点もある。
【0037】
また、本実施形態では特に、複数の発熱体のうち最も発熱量の大きな抵抗器13と、2番目に発熱量の大きなヒートシンク17とを、外側ダクト3と内側ダクト4とに振り分けて配置している。これにより、一方のダクト内における発熱量の集中化を防ぐことができ、効率的な冷却が可能となる。さらに、最も発熱量が大きい抵抗器13と、最も発熱量が小さいリアクトル14とを組み合わせて外側ダクト3内に、2番目に発熱量が大きいヒートシンク17と、3番目に発熱量が大きいコンデンサ15とを組み合わせて内側ダクト4内に配置することで、各ダクト3,4内における発熱量の総和の略均一化を図っており、これによっても効率的な冷却が可能となっている。
【0038】
また、本実施形態では特に、上記図1に示したように、2つのダクト3,4のそれぞれの流路がいずれも途中位置で屈曲する略L字形状となっている。これにより、筐体2全体の剛性強度を向上させる利点もある。
【0039】
また、本実施形態では特に、下部送風ファン11及び上部送風ファン12のいずれの送風面積も、それぞれ設置する冷却風流入口31o及び冷却風流出口32iの開口面積とほぼ同一である。これにより、各ダクト3,4の内部で通風抵抗を増大させることなく、どの流通位置においても効率的な冷却風量で流通し、各発熱体に対する強制的な冷却が可能となる。
【0040】
なお、外側ダクト3の上前方側の冷却風流出口32oに上部送風ファン12を設置し、内側ダクト4の下方側の冷却風流入口31iに下部送風ファン11を設置する構成としてもよく、この場合でも同様の効果が得られる。
【0041】
なお、実施の形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0042】
(1)送風ファンを大径化する場合
上記実施形態においては、各ダクト3,4の端部付近の流路厚さ寸法と同等に冷却風流入口31o,31i及び冷却風流出口32o,32iの厚さ寸法が設定され、対応して設置される送風ファン11,12も同等の径のものを使用していた。しかし、これに限られず、例えば各ダクト3,4の端部付近の流路厚さ寸法より大きい径の送風ファンを設置してもよい。
【0043】
図4は、上記実施形態の図3に対応する側断面図であり、外側ダクト3Aの冷却風流入口に大径化した下部送風ファン11Aを設置した構成を表している。この図4において、外側ダクト3Aと内側ダクト4Aのそれぞれ上下方向に沿った長辺部分で互いに重なり合う方向、つまり図示する例の筐体前後方向(図中の左右方向)で、外側ダクト3Aの大部分の基準厚さ寸法をT1oとし、内側ダクト4Aの大部分の基準厚さ寸法をT1iとする。
【0044】
外側ダクト3Aの下方端部の冷却風流入口31oAは、上記基準厚さ寸法T1oよりも所定の偏差寸法Fだけ大きく設定され、同等に大きい径の大径下部送風ファン11Aが設置されている。また、この大径の冷却風流入口31oAは、冷却風の流通方向に沿って厚さ寸法が連続的に減少して上記基準厚さ寸法T1oに戻る。一方、内側ダクト4Aの下方端部の冷却風流入口31iAは、上記基準厚さ寸法T1iよりも所定の偏差寸法Fだけ小さく設定され、冷却風の流通方向に沿って厚さ寸法が連続的に減少して上記基準厚さ寸法T1iに戻る。重なり合う配置の外側ダクト3Aと内側ダクト4Aの全体としては、それぞれの厚さ寸法の変化が相殺し合って全体の厚さ寸法に変化はない。
【0045】
以上説明したように、本変形例のインバータ装置1Aにおいては、大きな送風面積の大径下部送風ファン11Aにより流入された大量の冷却風が、小さい基準厚さ寸法T1oの流路に流れ込むため、外側ダクト3A内においては冷却風の流通速度が増速し冷却機能を向上させることができる。また、内側ダクト4Aにおいても、小さい開口面積の冷却風流入口31iAが流路の絞りとして機能するため、冷却風流入口31iA近傍における冷却風の流通速度が増速して(特に入口近傍のコンデンサ15に関する)冷却機能を向上させることができる。
【0046】
以上の結果、本変形例においては、重なり合う配置の外側ダクト3Aと内側ダクト4Aの全体の小型化を維持しつつ、各ダクト3A,4A内の冷却機能を向上させることができる。
【0047】
なお、このような大径の送風ファンの設置構造を冷却風流出口32o,32i側に設けてもよいし、または冷却風流入口31oA,31iAと冷却風流出口32o,32iの両方に設けてもよく、いずれの場合も同様の効果を得ることができる。
【0048】
(2)ダクトを直線状とする場合
【0049】
上記実施形態及び変形例では、外側ダクト3,3Aと内側ダクト4,4Aはそれぞれ略L字形状の屈曲構造を備えていたが、これに限られない。例えば、図5に示すように、2つのダクト3B,4Bが上下方向に略直線状の形状を備えてもよい。なお、図5に示す例には、冷却風流入口31oB,31iBと冷却風流出口32oB,32iBの両方に上述の大径の送風ファン11B,12Bの設置構造を設けた構成も併せて示している。
【0050】
このように外側ダクト3Bと内側ダクト4Bのそれぞれの流路がいずれも略直線状の形状となっている場合には、それぞれの内部において冷却風が円滑に流通するため、冷却機能をさらに向上させることができる。
【0051】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0052】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 インバータ装置(電力変換装置)
2 筐体
3,3A,3B 外側ダクト(第1ダクト)
4,4A,4B 内側ダクト(第2ダクト)
5 風洞部
11 下部送風ファン(第1送風ファン)
11A,11B 大径下部送風ファン
12 上部送風ファン(第2送風ファン)
12A,12B 大径上部送風ファン
13 抵抗器(第1の発熱体)
14 リアクトル(第1の発熱体)
15 コンデンサ(第2の発熱体)
16 半導体素子
17 ヒートシンク(第2の発熱体)
18 回路基板
31o,31i 冷却風流入口
32o,32i 冷却風流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱体と、冷却風が流通される風洞部と、を収納した筐体を有する電力変換装置であって、
前記風洞部は、
前記複数の発熱体のうちの第1の発熱体を収納し、その冷却風流入口に設けた第1送風ファンにより冷却風を流通させる第1ダクトと、
前記複数の発熱体のうちの第2の発熱体を収納し、その冷却風流出口に設けた第2送風ファンにより冷却風を流通させる第2ダクトと、を有し、
前記第1ダクトと前記第2ダクトは、それぞれの冷却風の流路が略平行な配置関係で重なり合い、互いの前記冷却風流入口同士、及び前記冷却風流出口同士が近接するよう配置されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の発熱体のうち、最も発熱量の大きい発熱体と、2番目に発熱量の大きい発熱体とが、前記第1ダクトと前記第2ダクトとに振り分けて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1ダクトと前記第2ダクトが重なり合う方向でのそれぞれの基準厚さ寸法に対し、前記第1送風ファン及び前記第2送風ファンの少なくともいずれか一方が前記基準厚さ寸法より所定の偏差寸法だけ大きく、当該送風ファンに近接する前記冷却風流入口又は前記冷却風流出口が前記基準厚さ寸法より前記所定の偏差寸法だけ小さく設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1ダクトと前記第2ダクトのそれぞれの流路がいずれも途中位置で屈曲する形状となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1ダクトと前記第2ダクトのそれぞれの流路がいずれも略直線状の形状となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1送風ファン及び前記第2送風ファンのいずれの送風面積も、それぞれ設置する前記冷却風流入口及び前記冷却風流出口の開口面積とほぼ同一である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223033(P2012−223033A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88832(P2011−88832)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】