説明

電力変換装置

【課題】交流電源から負荷への電流を増加させるためのMERSにおいて、各スイッチに流れる電流を低減する。
【解決手段】交流電源VSの出力電圧の負から正に切り替わる時点から数十度の間(交流電源VSの出力電圧が負荷LDに必要な電圧より低い間の一部の期間)、MERS110で交流電源VSを短絡・開放することで、負荷LDへ供給される電力を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフ時の電流の持つ磁気エネルギーを電荷の形で静電エネルギーとしてコンデンサに回収し次回のオン時にこのコンデンサの静電エネルギーを再利用可能なスイッチとして特許文献1に開示されているものがある。
このスイッチは、MERS(Magnetic Energy Recovery Switch:磁気エネルギー回生スイッチ)と呼ばれている。MERSはソフトスイッチングを特徴とする低損失なスイッチでもある。
特許文献2には、MERSを負荷と交流電源との間に並列に接続することによって、交流電源から直流電力を効率よく得ることができる交流/直流変換電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3634982号
【特許文献2】特許4478799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されているような装置において、MERSに流れる電流をより小さくするという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、MERSに流れる電流がより小さい交流直流電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明に係る電力変換装置は、
交流電源とリアクタンスとの直列回路と、負荷と、の間に接続される磁気エネルギー回生スイッチと、
前記磁気エネルギー回生スイッチを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記交流電源の出力に対して進み位相で、前記磁気エネルギー回生スイッチを制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、MERSを用いた低損失な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2A】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2B】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2C】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2D】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2E】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2F】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2G】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図2H】図1に示す電力変換装置の動作を説明するための図である。
【図3】図1に示す電力変換装置の動作に伴う各部の電流・電圧の変化を示す波形図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図5】図4に示す電力変換装置の動作に伴う各部の電流・電圧の変化を示す波形図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図8】図7に示す電力変換装置の変形例を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図10】図9に示す電力変換装置の動作に伴う各部の電流・電圧の変化を示す図である。
【図11】図9に示す電力変換装置の応用例を示す図である。
【図12】図6に示す電力変換装置の変形例を示す図である。
【図13】図8に示す電力変換装置の変形例を示す図である。
【図14】MERSの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る電力変換装置を図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る電力変換装置100は、図1に示すように、MERS110と制御部150と、整流器RECと、平滑コンデンサCsと、を備え、交流電源VS及びインダクタLacの直列回路と、負荷LDとの間に接続される。
【0010】
交流電源VSとインダクタLacの直列回路は、整流器RECの入力側に接続される。
【0011】
整流器RECは、入力された交流電力を、直流電力に整流して平滑コンデンサCs及び負荷LDに供給する。
【0012】
平滑コンデンサCsは、整流器RECと負荷LDとの間に並列に接続され、整流器RECから供給される直流出力を平滑化する。
【0013】
MERS110は、2つの交流端子AC1及びAC2と、2つの直流端子DCP及びDCNと、2つの逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2と、2つのコンデンサCM1及びCM2と、から構成されている。MERS110は、交流電源VS及びインダクタLacの直列回路と整流器RECとの間に並列に、交流端子AC1及びAC2を介して接続されている。
【0014】
逆導通型半導体スイッチSW1は、ダイオード部D1,スイッチ部S1及びゲートG1から構成されている。同様に、逆導通型半導体スイッチSW2はダイオード部D2,スイッチ部S2及びゲートG2から構成されている。
【0015】
スイッチ部S1及びS2はいずれも、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Silicon Field Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)あるいはその他の半導体スイッチング素子からなり、それぞれ電流路と制御端とを備えている。そして、各自の制御端に後述のオン信号が供給されると電流路を導通させ、オフ信号が供給されると電流路を遮断する。
本実施形態では、スイッチ部S1及びS2はいずれも、nチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Silicon Field Effect Transistor)である。この場合、このMOSFETのドレイン−ソース間がスイッチ部の電流路をなし、ゲートG1,G2がスイッチ部の制御端をなす。
【0016】
ダイオード部D1及びD2はいずれも、電流を一方向にのみ導通させる電流路を備える。本実施形態では、それぞれスイッチ部S1及びS2の寄生ダイオードである。
【0017】
交流端子AC1には、スイッチ部S1のソース及びダイオード部D1のアノードと、スイッチ部S2のドレイン及びダイオード部D2のカソードと、が接続されている。
直流端子DCPには、スイッチ部S1のドレイン及びダイオード部D1のカソードと、コンデンサCM1の一端(正極)と、ダイオードD3のカソードと、が接続されている。
直流端子DCNには、スイッチ部S2のソース及びダイオード部D2のアノードと、コンデンサCM2の一端(負極)と、ダイオードD4のアノードと、接続されている。
交流端子AC2には、コンデンサCM1の他端(負極)と、コンデンサCM2の他端(正極)と、ダイオードD3のアノードと、ダイオードD4のカソードと、が接続されている。
【0018】
それぞれの逆導通型半導体スイッチにつき、ダイオード部のアノードはスイッチ部のソースに接続されており、ダイオード部のカソードはスイッチ部のドレインに接続されており、スイッチ部の電流路とダイオード部の電流路とが、合わせて逆導通型半導体スイッチの電流路をなす。
このような接続関係をとる結果、各逆導通型半導体スイッチはいずれも、スイッチ部のドレインからソースに向かう方向(順方向)に流れる電流を、当該スイッチ部のゲートに印加される信号の値に応じてオン/オフする。一方、当該スイッチ部のソースからドレインに向かう方向(逆方向)の電流については、ダイオード部がこの電流のバイパスを確保する結果、原則オン状態を保つ。
本実施形態では、制御部150から、オン信号あるいはオフ信号からなるゲート信号が、各逆導通型半導体スイッチのゲートに供給される。言い換えれば、各逆導通型半導体スイッチは、制御部150からオン信号が供給されるとオンし、オフ信号が供給されるとオフする。
【0019】
制御部150は、交流電源VSの出力する交流電圧が入力される。制御部150は、この交流電圧に基づいてゲート信号SG1,SG2を決定する。ゲート信号SG1,SG2は、オン信号及びオフ信号から構成された信号であり、ゲートG1,G2にそれぞれ供給される。
本実施形態では、ゲート信号SG1と、ゲート信号SG2とは、交流電源VSと同じ周期で、デューティ比が0.5の信号であり、互いにオン信号と、オフ信号とが、逆になっている。また、ゲート信号SG1は、入力された交流電圧が負から正に切り替わるゼロ交差より、140度早い位相でオン信号になり、40度遅い位相でオフ信号になるように予め設定されている。また、ゲート信号SG2は、入力された交流電圧が正から負に切り替わるゼロ交差より、140度早い位相でオン信号になり、40度遅い位相でオフ信号になるように予め設定されている。
【0020】
本実施形態では、制御部150は、CPU151(Central Processing Unit),RAM152(Random Access Memory),ROM153(Read Only Memory)及び入出力部154と、を備える。制御部150のCPU151は、ROM152が記憶するプログラムに従って、入力された交流電圧に対して所定のデータを用いてゲート信号SG1,SG2を決定する。RAM152は、CPU151のメインメモリとして機能する。ROM153は、プログラムや、下記の処理で制御部150に使用される各種データを記憶する。CPU151は、下記の処理を、ROM153が記憶するデータを適宜用いて行うものとする。入出力部154は、各種ポートから構成される。制御部150の外部から供給されるデータは、入出力部154から入力し、CPU151に供給される。
【0021】
次に 上記構成の電力変換装置100の動作を、図2A〜H及び図3を参照して説明する。
なお、図2A〜2Hは、図1の電力変換装置100から制御部を省略したものであり、図中のオン記号・オフ記号はそのスイッチのオン・オフを示し、矢印は電流の流れる向きを示す。
また、図3は、交流電源VSから出力される電圧Vac,コンデンサCM2の電圧Vcm2,整流器RECに入力される電圧Vrec,交流電源VSに流れる電流Iin,逆導通型半導体スイッチSW2に流れる電流Is2,ゲート信号SG2及びSG1の時間変化の関係が示されている。
【0022】
以下では、初期状態を、スイッチS1はオン,スイッチS2はオフで、交流電源VSからMERS110の交流端子AC2への方向(図中の矢印の方向)へ電流が流れており、交流電源VSの出力電圧の絶対値が、平滑コンデンサCsの電圧より低い、後述の図2Hの状態であるとする。
また、制御部150は、電圧Vacが負から正に切り替わるゼロクロスより、140度早く、ゲート信号SG2をオフ信号からオン信号に切替え、ゲート信号SG1をオン信号からオフ信号に切替える(スイッチS2はオフからオンに切り替わり、スイッチS1はオンからオフに切り替わる)。また、制御部150は、電圧Vacが正から負に切り替わるゼロクロスより、140度早く、ゲート信号SG2をオン信号からオフ信号に切り替え、ゲート信号SG1をオフ信号からオン信号に切替える(スイッチS2はオンからオフに切り替わり、スイッチS1はオフからオンに切り替わる)として説明する。
【0023】
[時刻T1−T2](図2A)
電圧Vacが負から正に切り替わるゼロクロスより140度早い時刻T1になると、制御部150は、ゲート信号SG1をオン信号からオフ信号に切り替え、ゲート信号SG2をオフ信号からオン信号に切り替える。スイッチS1はオフされ、スイッチS2はオンされる。
すると、インダクタLac及び交流電源VSを通る電流は、コンデンサCM2の正極に流入し、コンデンサCM2の負極からでる電流は、ダイオード部D2を流れ(図3の電流Is2参照)、交流電源VSに戻る。コンデンサCM2に電流が流れこむため、コンデンサCM2の電圧は上昇し(図3の電圧Vcm2参照)、整流器RECに入力される電圧の絶対値は上昇する(図3の電圧Vrec参照)。なお、この段階では、整流器RECの入力側の電圧は、出力側の電圧である平滑コンデンサCsより電圧が低いため、整流器RECから電力は出力されない。
【0024】
[時刻T2−T3](図2B)
コンデンサCM2の電圧が、整流器RECの出力側の電圧(平滑コンデンサCsの電圧)と同じ高さになる時刻T2から、交流電源VSを流れる電流は、整流器RECを介して平滑コンデンサCs及び負荷LDに供給される(図3の電流Irec)。
図3にしめすように、交流電源VSの出力電圧Vacの絶対値が、整流器RECの出力側の電圧より高い間は、負荷LDに供給される電流(図3の電流Irec)は増加し続ける(インダクタLacに蓄積される磁気エネルギーは増加する)。交流電源VSの出力電圧Vacの絶対値が、整流器RECの出力側の電圧より低くなると、負荷LDに供給される電流(図3の電流Irec)は減少し続ける(インダクタLacに蓄積されている磁気エネルギーは減少する)。
【0025】
[時刻T3−T4](図2C)
インダクタLacに蓄積されている磁気エネルギーが実質的に0になる(図2Bの矢印の方向の電流が0になる)時刻T3において、交流電源VS及びインダクタLacに流れる電流は反転する(図3の電流Iin参照)。この電流は、オンのスイッチS2を介し(図3の電流Is2参照)、コンデンサCM2の負極に流入する。コンデンサCM2は放電し(図3の電圧Vcm2参照)、コンデンサCM2の正極から交流電源VSに電流が流れる。ただし、整流器RECに入力される電圧の絶対値は平滑コンデンサCsの電圧より低いため、整流器RECを介して負荷LDに電流は供給されない(図3のIrec参照)
【0026】
[時刻T4−T5](図2D)
コンデンサCM2の放電が完了する時刻T4に、コンデンサCM2を流れていた電流は、ダイオードD4を流れはじめる。そのため、コンデンサCM2の電圧は、略0を保持する(図3の電圧Vcm2参照)。
【0027】
[時刻T5−T6](図2E)
電圧Vacが正から負に切り替わるゼロクロスより140度早い時刻T5になると、制御部150は、ゲート信号SG2をオン信号からオフ信号に切り替え、ゲート信号SG1をオフ信号からオン信号に切り替える。スイッチS2はオフされ、スイッチS1はオンされる。
すると、インダクタLac及び交流電源VSを通る電流は、ダイオード部D1を介して、コンデンサCM1の正極に流入し、コンデンサCM1の負極からでる電流は、交流電源VSに戻る。コンデンサCM1に電流が流れこむため、コンデンサCM1の電圧は上昇し、整流器RECの交流入力端子間に印加される電圧は上昇する。しかし、この段階では、整流器RECの入力側の電圧は、出力側の電圧である平滑コンデンサCsより電圧が低いため、整流器RECから電力は供給されない(図3のIrec参照)。なお、スイッチS2がオフすることに伴いスイッチS2に流れる電流は遮断される(図3の電流Is2)。
【0028】
[時刻T6−T7](図2F)
コンデンサCM1の電圧が、整流器RECの出力側の電圧(平滑コンデンサCsの電圧)と同じ高さになる時刻T6に、交流電源VSを流れる電流は、整流器RECを介して平滑コンデンサCs及び負荷LDに供給される(図3の電流Irec参照)。
交流電源VSの出力電圧Vacの絶対値が、整流器RECの出力側の電圧より高い間は、負荷LDに供給される電流(図3の電流Irec)は増加し続ける(インダクタLacに蓄積される磁気エネルギーは増加する)。交流電源VSの出力電圧Vacの絶対値が、整流器RECの出力側の電圧より低くなると、負荷LDに供給される電流(図3の電流Irecは減少し続ける(インダクタLacに蓄積されている磁気エネルギーは減少する)。
【0029】
[時刻T7−T8](図2G)
インダクタLacに蓄積されている磁気エネルギーが実質的に0になる(図2Fの矢印の方向の電流が0になる)時刻T7において、交流電源VS及びインダクタLacに流れる電流は反転する。この電流は、コンデンサCM1の負極に流入する。コンデンサCM1は放電し、コンデンサCM1の正極からオンのスイッチS1を介し交流電源VSに電流が流れる。
【0030】
[時刻T8−T9](図2H)
コンデンサCM1の放電が完了する時刻T8に、コンデンサCM1を流れていた電流は、ダイオードD3を流れる。そのため、コンデンサCM1の電圧は、略0を保持する。
【0031】
[時刻T9以降](図2A)
再び電圧Vacが負から正に切り替わるゼロクロスより140度早い時刻T9になると、制御部150は、ゲート信号SG1をオン信号からオフ信号に切り替え、ゲート信号SG2をオフ信号からオン信号に切り替える。
【0032】
以後、電力変換装置100は、上記動作を繰り返す。なお、この例では、MERS110と、負荷LDとの両方に電流が流れる場合はなかったが、ゲート信号の位相によっては、両方に流れる場合がある。
【0033】
このように、交流電源VSの出力する電圧が、整流器RECの出力側の電圧より低い場合に、MERS110のオンによって、交流電源VSを短絡させることで、MERS110がない場合には供給されない電力を、インダクタLacに蓄積し、MERS110のオフによって、このインダクタLacに蓄積された電力をMERS110のコンデンサに供給することにより電圧を確保し、本来なら供給されなかった電力を負荷に供給する。
これによって、交流電源VSの出力する電力を、MERS110がない場合に比べ、より引き出すことができる。
【0034】
なお、MERS110の制御は、デューティ比0.5の信号を用いるという簡単な制御でよい。特に、デューティ比0.5の制御を進み位相で行えば、遅れ制御で行う場合より、MERS110に流れる電流を減らすことができる。
より詳細に説明すると、進み制御でMERSを制御すると、オンにしていても交流電源が短絡されない時間(上記時刻T1−T3,時刻T5−T7)がある。ただし、電流が負荷に供給されなくなると自動的に、交流電源VSを短絡させて電流を引き出す。進み制御の場合は、基本的には、MERSをオンした時から、交流電源はMERSによって短絡され、MERSに電流が流れる。
【0035】
なお、デューティを0.5であるとして説明したが、デューティが0.5である必要はない。重要なのは、MERSで交流電源を短絡して電力を引き出すことであるので、デューティは0.5以下であっても問題ない。
より具体的には、電力変換装置100において、時刻T1−T3(図2A,2B)の間は、スイッチS2はオンである必要はないし、時刻T5−T7(図2E,2F)の間は、スイッチS1はオンである必要はない。
もちろん、上記電力変換装置100のように、時刻T3の前に予めスイッチS2がオンであり(スイッチS1はオフ)、時刻T5の前に予めスイッチS1がオン(スイッチS2はオフ)であれば、電流の向きが反転し次第、自動的に交流電源VSを短絡させることができる。
【0036】
また、ゲート信号SG1は、入力された交流電圧が負から正に切り替わるゼロ交差より、140度早い位相でオン信号になり、140度遅い位相でオフ信号になるように予め設定されており、ゲート信号SG2は、入力された交流電圧が正から負に切り替わるゼロ交差より、140度早い位相でオン信号になり、40度遅い位相でオフ信号になるように予め設定されている、として説明したが、140度である必要はない。
ただし、本実施形態においては、およそ140度で制御すると、力率がおよそ1なる。
【0037】
また、交流電源VSの出力電源に対して進み制御にするとして説明したが、電流に対して進み制御にしてもよい。ただし、MERSの制御によって電流の波形は変化するため、制御を簡単にするためには、交流電源VSの出力電圧に対して進み制御にすることが好ましい。
【0038】
また、MERS110のコンデンサCM1及びCM2の電圧は、整流器RECの出力側の電圧(高々コンデンサCsの電圧)にまでしか上昇しないため、MERSに高耐圧のスイッチが不必要である。
また、コンデンサCM1及びCM2の容量をより小さいものにしてもよい。ただし、コンデンサCM1及びCM2の容量が小さくなりすぎると(例えばコンデンサCM1及びCM2を取り除くと)、スナバーエネルギーによりMERS110の各スイッチが破壊される可能性がある。すなわり、コンデンサCM1及びCM2には、スナバーエネルギーを吸収しきれるだけの容量があることが好ましい。
【0039】
(実施形態2)
上記電力変換装置100では、図2A,図2Eで示したように、逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2の寄生ダイオードであるダイオード部D1及びD2に電流が流れる可能性がある。寄生ダイオードのドロップ電圧は、そのスイッチの特性によるものなので調整が難しい。スイッチの価格やスペックなどを考慮すると、その寄生ダイオードに流れる電流量を減らすことが求められている。
本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置200は、電力変換装置100において、MERS110の機能を保持したまま、逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2のダイオード部D1及びD2に電流が流れないようにしたものである。
【0040】
以下、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置を図面を参照して説明する。
【0041】
図4に示すように、電力変換装置200は、電力変換装置100のMERS110を変形型のMERS210に置き換えたものである。
MERS210は、2つの交流端子AC1及びAC2と、2つの直流端子DCP及びDCNと、4個の逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2と、2つのダイオードF1及びF2と、ダイオードR1,R2,D3及びD4からなるダイオード整流器RECと、コンデCM1及びCM2と、から構成されている。
なお、MERS110と同一の部分には同一の符号を付している。
【0042】
交流端子AC1には、スイッチ部S1のソースと、ダイオードF2のアノードと、ダイオードR1のアノードと、ダイオードR2のカソードと、が接続されている。スイッチ部S1のドレインには、ダイオードF1のカソードが接続されている。
交流端子AC2には、コンデンサCM1の一端(負極)と、コンデンサCM2の一端(正極)と、ダイオードD3のアノードと、ダイオードD4のカソードと、が接続されている。
直流端子DCPには、ダイオードF1のアノードとダイオードR1のカソードと、ダイオードD3のカソードと、コンデンサCM1の他端(正極)と、が接続されている。
直流端子DCNには、スイッチ部S2のソースと、ダイオード部R2のアノードと、ダイオードD4のアノードと、コンデンサCM2の他端(負極)と、
が接続されている。
【0043】
MERS210を、MERS110と比較すると、次のよう相違点がある。
相違点1.MERS210は、MERS110の逆導通型半導体スイッチSW1,SW2に、直列に、逆方向の電流(ダイオードD1,D2の導通する電流)を阻止するダイオードF1,F2が接続されている。
相違点2.逆導通型半導体スイッチSW1とダイオード部F1との直列回路に並列に順方向の電流を遮断し、逆方向の電流を導通するダイオードR1を接続されている。逆導通型半導体スイッチがSW2とダイオードF2の直列回路と、ダイオード部R2についても同様の接続関係がある。
【0044】
上記電力変換装置200の各部の電流・電圧の時間変化の関係は図5のようになる。図5は、交流電源VSから出力される電圧Vac,整流器RECに入力される電圧Vrec,交流電源VSに流れる電流Iac,逆導通型半導体スイッチSW2に流れる電流Isw2,ゲート信号SG1の時間変化の関係が示されている。
【0045】
逆導通型半導体スイッチSW2には、逆方向の電流を阻止するダイオードF2が接続されているため、図5にしめすように、電流Isw2は、順方向のみの電流になっている。
また、逆導通型半導体スイッチと逆電流を阻止するダイオードとの直列回路に並列に順方向の電流を阻止し、逆方向の電流を導通するダイオードを接続しているため、MERSとしての機能を保持している。そのため、図5のように、交流電源VSの出力電圧Vacの電圧の絶対値が、整流器RECの出力側の電圧よりも低い場合であっても、整流器RECの入力側の電圧Vrecは、出力側の電圧とほぼ等しくなっている。
【0046】
なお、上記電力変換装置200では、逆導通型半導体スイッチSW1,SW2に流れる電流が順方向のみになるように直列にダイオードを接続してあるが、この直列回路を、逆阻止能力を持ったスイッチに置き換えてもよい。この場合、例えば、ダイオードR1,R2,D3,D4としてダイオード整流器を用いるとよい。このダイオード整流器は、コンデンサCM1,CM2の充電と、ダイオード整流器での損失分の電力を扱うため、整流器RECと比較して小型なもので十分である。
【0047】
(実施形態3)
上記電力変換装置200は、単相に一つのMERSが接続されている形態である。これを、3相に応用することも可能である。
本発明の第3の実施形態にかかる電力変換装置300は、図6示すように、三相発電機GENと、出力側を平滑コンデンサCs及び直流母線Vdcoutに接続された三相整流器REC3との間に接続されている。
【0048】
電力変換装置300は、3つのMERS210uv,210vw及び210wuと、制御部320とから構成されている。
本実施形態では、3つのMERSはデルタ結線されており、三相交流発電機GENの各線間に接続されている。より正確には、MERS210uvの交流端子AC1はU相に、交流端子AC2はV相に、接続されており、MERS210vwの交流端子AC1はV相に、交流端子AC2はW相に、接続されており、MERS210wuの交流端子AC1はW相に、交流端子AC2はU相に、接続されている。
【0049】
制御部320は、MERS210uv,210vw及び210wuを制御する信号のパルスタイミング,パルス幅をそれぞれ制御する。これにより、出力電流や3相の電流の不平衡を制御することができる。
【0050】
(実施形態4)
3相電流が平衡であれば、3相のフルブリッジMERS410を用いても良い。
本発明の第4の実施形態の電力変換装置装置400は、図7に示すように、電力変換装置300の3つの210uv,210vw及び210wuの直流端子DCP、DCNをそれぞれ接続し、共通の部分を省略したものである。具体的には、コンデンサCM1,CM2が共通している(図7のコンデンサCM1,CM2に対応する)。また、ダイオードD3,D4が共通している(図7のダイオードD3,D4に対応する)。
また、図7において、Uの添字が付されているものは、上記MERS210UVの1の添字を付されているものに対応し、Xの添字が付されているものは、上記MERS210uvの2の添字を付されているものに対応する。Vの添字が付されているものは、上記MERS210vwの1の添字を付されているものに対応し、Yの添字が付されているものは、上記MERS210vwの2の添字を付されているものに対応する。Wの添字が付されているものは、上記MERS210wuの1の添字を付されているものに対応し、Zの添字が付されているものは、上記MERS210wuの2の添字を付されているものに対応する。
【0051】
なお、図8に示すように、MERS410直流端子と三相整流器REC3の直流出力端子とを接続してもよい。ただし、この場合、MERS410のソフトスイッチング性は失われる。
ただし、本発明に係る各実施形態においては、PWM制御などの数キロHzの高周波でスイッチングをするわけではなく、電源周波数でスイッチングするため、スイッチング損失は、高周波でスイッチングする場合にくらべると大幅に少ない。
【0052】
(実施形態5)
図8に示すようにMERS410直流端子と三相整流器REC3の直流出力端子とを接続すると、整流器REC3と、ダイオードRU乃至RZが、同一の接続形態をすることになる。また、コンデンサCM1及びCM2と、コンデンサCsも同一の接続形態であり、ダイオードD3、D4は実質的に必要ない。
【0053】
この共通部分を省略したものが、本発明の第5の実施形態に係る電力変換装置500である。以下、図9を参照して、電力変換装置500を説明する。
電力変換装置500は、図9に示すように、三相発電機GENと、直流母線Vdcoutとの間に接続される。
【0054】
本実施形態では、三相発電機GENは、200V50Hzの出力電圧で、およそ1puの内部リアクタンスを持つ永久磁石式発電機である。コンデンサCsの容量は200μF、直流母線Vdcoutの電圧は250Vである。スイッチング周波数は50Hzでありその位相角が三相発電機の出力電源より140度位相が早い。
【0055】
この場合の各部電流電圧の関係を図10に示す。図10の波形図は、三相発電機GENのU相の電流Iuin,逆導通型半導体スイッチSWUに流れる電流Iswu,逆導通型半導体スイッチSWXに流れる電流Iswxと、三相発電機GENのU相の起電圧Vuin,三相整流器のU相に入力される電圧Vurec,直流母性Vdcoutの電圧Vdcoutの時間変化を示す。
【0056】
電力変換装置500は、電力変換装置100を三相に適応し、直流端子を共通にし、機能が重なる部分を省略しただけであるので、電力変換装置100と同様に力率が略1になっている。
また、U相に流れる電流Iuinの実効値はおよそ11.3Aであるのに対し、逆導通型半導体スイッチSWUに流れる電流Iswuの実効値は2.9Aである。U相の電流量に対して、逆導通型半導体スイッチに流れる電流はおよそ25%である。
【0057】
(応用例1)
上記電力変換装置500の大きな特徴は、整流器REC3とダイオードFU乃至FZがある時(本実施形態の時)と、ない時を比較すると、ある時の方が、MERSに流れる電流を低減されているところにある。特に、ダイオードFU乃至FZによって、逆導通型半導体スイッチSWU乃至SWZに流れる逆電流を阻止している。
しかし、三相整流器REC3のダイオードのドロップ電圧が、寄生ダイオードであるダイオードDU乃至DZのドロップ電圧より低い場合には、ダイオードFU乃至FZは不必要である。この場合、ダイオードDU乃至DZは実質的にオープンになる。
この場合、図11に示すように、ダイオード逆並列ペアを交流入力に用いてもよい。
【0058】
(変形例1)
電力変換装置300において、MERSuv,MERSvw,MERSwuとして、横ハーフ型のMERSを用いる場合、MERSのコンデンサが直列に接続される。そのため、ダンパー抵抗を用いるのが好ましい。
図12はその1例である。この例では、MERSuv,MERSvw,MERSwuとして、変形型の横ハーフMERSを用いている。3つのMERSのコンデンサが直列に接続されることになるので、ダンパー抵抗511を、三相発電機GENとMERSuv,MERSvw,MERSwuとの間に接続している。
【0059】
(変形例2)
電源電圧と、負荷に必要な電圧との間に、大きな差がある場合、トランスを用いてもよい。
例えば、図13に示すように、例えば、MERSの後段に、トランスXfmrを接続する。これにより、高電圧を得てもよいし、低電圧を得てもよい。
【0060】
また、MERSとして、図14に示すようなフルブリッジ型のMERSを用いてもよい。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、MERSを進み制御し交流電源をMERSによって短絡・開放、インダクタに磁気エネルギーを蓄積・回生することにより、交流電源の利用効率を上昇させることができる。
例えば、交流電源VSの出力電圧が十分でなく負荷に電流が供給されなくなる時点から、MERS110は自動的に交流電源VSを数十度だけ短絡・開放することで、負荷LDへ供給される電力を増加させる。
また、交流電源の出力電圧に対して略140度で進相で制御することにより、交流電源の力率は略1になる。そのため、永久磁石式の発電機や、他励式・自励式の発電機や、内部インピーダンスの大きな交流電源において、利用効率が大幅に上昇する。
特に、永久磁石式の発電機では、内部起電力が低くても、進相運転により、電圧が上昇するため、磁力の弱い永久磁石を用いることが可能である。従って、磁石のコストと重量の削減に大いに効果がある。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態における各設定値は1例であり、様々な設定が可能である。また、上述の実施形態に記載した構成の全てを備える必要はなく、所期の目的を達成できるならば、一部の構成の組み合わせであってもよい。
【0063】
例えば、上記実施形態1で説明したように、他の実施形態においても、デューティが0.5である必要はない。重要なのは、交流電源の出力電圧では、負荷に電力を供給できないときに、MERSで交流電源を短絡して電力を引き出すことであるので、デューティは0.5以下であっても問題ない。
【符号の説明】
【0064】
100,200,300,400,500 電力変換装置
110,210,410,510 MERS
150 制御部
REC,REC3 整流器
VS 交流電源
GEN 三相発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源とリアクタンスとの直列回路と、負荷と、の間に接続される磁気エネルギー回生スイッチと、
前記磁気エネルギー回生スイッチを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記交流電源の出力に対して進み位相で、前記磁気エネルギー回生スイッチを制御する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電源の出力電圧に対して、進み位相で、前記磁気エネルギー回生スイッチを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記磁気エネルギー回生スイッチは、少なくとも2つの交流端子を備え前記交流端子間に、前記リアクタンスと前記交流電源との直列回路を接続される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
更に、前記リアクタンスと前記交流電源との直列回路を交流側に、前記負荷を直流側に接続される整流器を更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置
【請求項5】
前記磁気エネルギー回生スイッチは、更に2つの直流端子を備え、前記直流端子間に前記負荷が接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置
【請求項6】
前記磁気エネルギー回生スイッチは、少なくとも一つのスイッチ部を備え、
前記スイッチ部は第一の端子と第二の端子と制御端とを備え、前記第二の端子から前記第一の端子への方向に流れる電流は遮断する逆阻止能力をもち、かつ、前記制御端に入力される信号によって前記第一の端子から前記第二の端子への電流路のオン・オフを切り替えるスイッチ部であり、
更に、カソードを前記スイッチ部の前記第二の端子に、アノードを前記スイッチ部の前記第一の端子に接続される逆導通ダイオード部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記スイッチ部は、
前記制御端に入力される信号によって前記第一の端子から前記第二の端子への電流路のオン・オフを切り替え、前記第二の端子から前記第一の端子への方向に流れる電流を導通する逆導通型スイッチ部と、前記第二の端子から前記第一の端子への方向に流れる電流を遮断する逆阻止ダイオード部との直列回路であり、
前記逆導通ダイオード部は、カソードを前記逆阻止ダイオード部のアノードに、アノードを前記スイッチ部の第一の端子に接続される、
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記スイッチ部は、前記第二の端子から前記第一の端子への方向へ流れる電流を導通する寄生ダイオードを備え、前記寄生ダイオードのドロップ電圧が前記ダイオード部のドロップ電圧より高いことにより前記第二の端子から前記第一の端子への方向に流れる電流を遮断する逆阻止能力をもつ、
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記スイッチ部は、逆阻止能力を持った半導体スイッチ部である、
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記逆導通ダイオード部を少なくとも4つ備え、
当該4つの逆導通ダイオード部はダイオード整流器を構成する、
ことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記交流電源の出力する電圧の正・負に対応する前記スイッチ部を、前記交流電源の出力する電圧に対して進み位相で、180度オン・180度オフする、
ことを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載の電力変換装置。

【図3】
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【図9】
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【図11】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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