説明

電力系統設備制御試験支援システムおよび電力系統設備制御試験支援方法

【課題】 電力系統制御部署からの遠隔制御によって行われる現場の電力系統設備の制御試験の際に、電力系統制御部署の誤認による対象外の制御試験を確実に防止することが可能な電力系統設備制御試験支援システムを提供する。
【解決手段】 現場Aに設けられ、制御所Bと通信可能な現場側通信装置2と、現場Aに設けられ、制御所Bに試験要請信号を送出することが可能な制御信号送出ボタン2aと、制御所Bに設けられ、複数の現場Aと通信可能な制御側通信装置3と、制御所Bに設けられ、複数の現場Aのうち特定の現場Aからの試験要請信号であるか否かを判別する発信元照合タスク3aと、制御所Bに設けられ、現場Aからの試験要請信号と監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づいて、試験要請信号を送出した特定の現場Aに設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする試験制御タスク43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統制御部署からの遠隔制御によって特定の現場の電力系統設備の制御試験を行う電力系統設備制御試験支援システムおよび電力系統設備制御試験支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線や開閉器などの電力系統設備は、電力所の作業者が現場にて点検を行い、制御試験を行う場合には、電話などで管理センタの制御責任者に対象電力系統設備の制御を依頼し、入・切操作を行っている。このような電力系統設備の入・切操作においては、操作手順や対象設備の確認などに高度な正確性が要求される。
【0003】
そこで、従来より、電力系統設備の操作を正確に行うための、電力系統設備の改修や保守点検作業において、その作業の責任者と電力系統制御責任者との間の連絡ミスによる電力系統機器の誤操作を防止する電力系統設備制御試験支援システムに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−159374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような電力系統設備の入・切操作において誤操作の原因は、電力所の作業者から管理センタの制御責任者への連絡時の連絡ミスや、操作対象の電力系統設備の機器番号と同一の機器番号が存在する場合に生じるおそれがある。例えば、制御所などの電力系統監視部署において、電力系統設備の番号は同一で異なる現場の状況が表示されていた場合は、電力系統監視部署が表示現場を制御試験対象の現場と誤認し、実際には制御試験を必要としない現場の電力系統設備について、誤って制御試験を行うことがある。
【0006】
そこでこの発明は、電力系統制御部署からの遠隔制御によって行われる現場の電力系統設備の制御試験の際に、電力系統制御部署の誤認による対象外の制御試験を確実に防止することが可能な電力系統設備制御試験支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、電力系統制御部署に設けられた監視制御装置によって遠隔制御が可能な電力系統設備についての遠隔による制御試験を、現場から前記電力系統制御部署へ要請するための電力系統設備制御試験支援システムであって、前記現場に設けられ、前記電力系統制御部署と通信可能な現場側通信装置と、前記現場に設けられ、前記現場側通信装置を介して前記電力系統制御部署に前記制御試験の要請をする試験要請信号を送出することが可能な試験要請信号送出手段と、前記電力系統制御部署に設けられ、複数の現場と通信可能な電力系統制御部署側通信装置と、前記電力系統制御部署に設けられ、前記複数の現場のうち特定の現場からの前記試験要請信号であるか否かを前記電力系統制御部署側通信装置を介して判別する発信元照合手段と、前記電力系統制御部署に設けられ、前記現場からの前記試験要請信号と前記監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づいて、前記試験要請信号を送出した特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする試験制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、複数の現場のうち特定の現場からの試験要請信号であるか否かを発信元照合手段によって判別し、試験制御手段は、試験要請信号と監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づき、試験要請信号を送出した特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力系統設備制御試験支援システムにおいて、前記試験要請信号送出手段は前記現場側通信装置に組み込まれており、前記発信元照合手段は前記電力系統制御部署側通信装置に組み込まれていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、電力系統制御部署に設けられた監視制御装置によって遠隔制御が可能な電力系統設備についての遠隔による制御試験を、現場から前記電力系統制御部署へ要請するための電力系統設備制御試験支援方法あって、前記現場に設けられた現場側通信装置によって前記電力系統制御部署と通信可能とし、前記現場に設けられた試験要請信号送出手段によって前記現場側通信装置を介して前記電力系統制御部署に前記制御試験の要請をする試験要請信号を送出し、前記電力系統制御部署に設けられた電力系統制御部署側通信装置によって複数の現場と通信可能とし、前記電力系統制御部署に設けられた発信元照合手段によって前記複数の現場のうち特定の現場からの前記試験要請信号であるか否かを前記電力系統制御部署側通信装置を介して判別し、前記電力系統制御部署に設けられた試験制御手段は、前記現場からの前記試験要請信号と前記監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づき前記試験要請信号を送出した特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および3に記載の発明によれば、試験要請信号が特定の現場からの試験要請信号であるか否かを発信元照合手段によって判別するようにしたので、電力系統制御部署側での制御試験の要請について誤認を回避することが可能となり、電力系統制御部署の誤認による遠隔操作を確実に防止することができる。また、試験制御手段は、試験要請信号と電力系統監視情報とによって特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とするので、電力系統制御部署が試験要請信号を受取った後は、迅速に制御試験を行うことができ、制御試験の作業能率を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、試験要請信号送出手段を現場側通信装置に組み込み、発信元照合手段を電力系統制御部署側通信装置に組み込むようにしているので、試験要請信号送出手段と現場側通信装置および発信元照合手段と電力系統制御部署側通信装置をそれぞれ一体化することができる。これにより、システムの使い勝手を向上させることができ、かつシステムの構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る電力系統設備制御試験支援システムの概要を示すブロック図である。
【図2】図1の電力系統設備制御試験支援システムの概略を示すブロック図である。
【図3】図1の電力系統設備制御試験支援システムの試験制御装置の概略を示すブロック図である。
【図4】図1の電力系統設備制御試験支援システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の電力系統設備制御試験支援システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の電力系統設備制御試験支援システムによって監視制御装置に表示される電気所画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0015】
図1ないし図6は、この発明の実施の形態を示している。電力系統設備制御試験支援システム1は、電力系統制御部署に設けられた監視制御装置100によって遠隔制御が可能な電力系統設備Eについての遠隔による制御試験を、現場から電力系統制御部署へ要請するものである。ここで、この実施の形態では、現場としては変電所や発電所である電気所Aを、電力系統制御部署としては制御所Bを想定している。また、電力系統設備Eとは、例えば、遮断器、断路器や送配電線などである。この電力系統設備制御試験支援システム1は、主として、図2に示すように、現場側通信装置2と、試験信号送出手段としての制御信号送出ボタン2aと、電力系統制御部署側通信装置としての制御側通信装置3と、発信元照合手段3aと、試験制御手段としての試験制御装置4と、から構成されている。このうち、現場側通信装置2と制御信号送出ボタン2aは、現場Aに配置されており、制御側通信装置3と発信元照合手段3aと試験制御装置4は、制御所Bに設置されている。この電力系統設備制御試験支援システム1は、現場側通信装置2と制御側通信装置3と試験制御装置4とが、有線または無線から構成される通信網NWを介して通信可能に接続され、監視制御装置100によって遠隔制御が可能な電力系統設備Eについての遠隔による制御試験を支援する機能を有している。
【0016】
現場側通信装置2は、電気所Aに設置されて現場作業責任者M1が使用し、制御所Bの制御側通信装置3と通信可能で、例えば、プッシュ式電話機で構成され、発信時に受信者側には発信元電話番号が通知されるようになっている。この現場側通信装置2は、制御側通信装置3に制御試験の要請をする試験要請信号を送出することが可能な制御信号送出ボタン2aを備えている。この制御信号送出ボタン2aは、押下されたボタンに対応するトーン信号を送信するもので、所定のボタンを押下することによって試験要請信号が送信される(試験フラグを「ON」にする)ように設定されている。
【0017】
制御側通信装置3は、制御所Bに設けられ、複数の電気所Aの現場側通信装置2、試験制御装置4と通信可能で、例えば、プッシュ式電話機で構成され、着信時に発信元電話番号が通知されるようになっている。この制御側通信装置3は、着信ボタン、保留ボタン、制御試験開始ボタン、制御試験終了ボタン、発信元照合タスク3aを備えている。着信ボタンは、電話に応答したり電話を切断するもので、電話の応答時は、着信ボタンが押下されると同時に発信元照合タスク3aが起動される。保留ボタンは、電話を保留するものである。また、制御試験開始ボタンは、制御試験の開始信号を送信するものであり、制御試験終了ボタンは、制御試験の終了信号を送信するものである。発信元照合タスク3aは、複数の電気所Aうち特定の電気所Aからの試験要請信号であるか否かを判別するものである。つまり、発信元照合タスク3aは、図5に示すフローチャートに基づいて、現場側通信装置2からの着信時に通知される発信元電話番号から発信元の電気所Aを特定し、作業箇所であるかを照合する機能を有している。この発信元照合タスク3aは、発信元の電気所Aが作業箇所で、かつ、制御信号を送信している場合には、後述する試験制御タスク43を起動するためのタスク起動信号を送信する。
【0018】
試験制御装置4は、制御所Bに設けられ、制御側通信装置3、監視制御装置100と通信可能である。この試験制御装置4は、図3に示すように、主として、通信手段としての通信部41、電力系統設備情報記憶手段42、試験制御手段としての試験制御タスク43、および、これらの制御を行う制御部44とを備えている。通信部41は、通信網NWを介して制御側通信装置3、監視制御装置100と通信するための通信装置であり、タスク起動信号を受信したり、画面ロック信号、画面ロック解除信号を送信する機能を有している。
【0019】
電力系統設備情報記憶手段42は、電気所Aごとに、設置されている電力系統設備Eを示す電力系統設備情報データベース42aを格納するものである。この電力系統設備情報データベース42aには、電気所Aごとに、つまり、電気所Aを識別する電気所IDごとに、作業箇所フラグ、設置されている電力系統設備機器ID、電力系統設備名、敷設情報、電力系統監視情報、その他などが記憶されている。作業箇所フラグは、電気所Aが作業箇所であるか否かを示すもので、電気所Aの作業状態が変化すると同時に更新され、リアルタイムに反映されるようになっている。敷設情報は、当該電気所A内の電力系統設備Eの敷設状態が記憶され、電力系統監視情報は、電力系統設備Eの運転状態(「運転中」、「停電中」)が記憶されている。この電力系統監視情報は、電力系統設備Eの運転状態が変化すると同時に更新され、リアルタイムに反映されるようになっている。
【0020】
試験制御タスク43は、電気所Aからの試験要請信号と監視制御装置100からの電力系統監視情報とに基づいて、試験要請信号を送出した特定の電気所Aに設置された電力系統設備Eのみの制御試験を可能とする機能を有している。つまり、試験制御タスク43は、パラメータの電気所Aと、電力系統設備情報データベース42aに記憶された電力系統情報に基づいて、当該電気所Aに設置され、かつ、電力系統管理情報が「停電中」である電力系統設備(試験対象電力系統設備)Eのみを遠隔で制御可能とする機能を有し、図4、図5に示すフローチャートに基づいている。つまり、試験対象電力系統設備Eのみが、監視制御装置100によって制御可能となるように、試験制御タスク43は、監視制御装置100に画面ロック信号を送信する。また、この試験制御タスク43は、試験を終了して処理を終了する際に、監視制御装置100に画面ロック解除信号を送信する。
【0021】
ここで、監視制御装置100の表示部は、電力系統設備Eの作業状態や運転状態などを表示する表示装置である。この表示部は、複数画面で構成され、例えば、制御所Bの監視下の系統全体を表示する画面(マクロ画面、図示略)、図6に示すように、電気所に設置されている電力系統設備を表示する画面(電気所画面)100a、現地の状態変化を時系列に表示する画面(図示略)、操作の状況を時系列に表示する画面(図示略)などを同時に表示できるようになっている。また、これらの画面は、例えば、マクロ画面において表示されている電気所を選択すると、選択された電気所画面100aに遷移するなど、画面間で画面遷移可能となっている。さらに、電気所画面100aは、電力系統設備Eの運転状態を色分けして表示し、例えば、図6に示すように、「切」状態の場合は緑(図中の白抜き)で表示し、「入」状態の場合は赤(図中の黒塗り)で表示し、送配電線が「停電中」の場合は黒で表示し、「運転中」の場合は白で表示するようになっている。また、電気所画面100aに表示されている電力系統設備Eを選択することによって、当該電力系統設備Eの入・切操作ができるようになっている。
【0022】
つまり、画面ロック信号は、監視制御装置100の表示部において試験対象電力系統設備Eのみを制御可能(選択可能)とし、それ以外は、制御不可(選択不可)とするものである。そして、監視制御装置100が画面ロック信号を受信すると、表示部において試験対象電力系統設備Eは選択して運転状態を切り替えることができるが、試験対象以外の電力系統設備Eは選択できず、運転状態を切り替えることができないようになる。さらに、監視制御装置100の表示部に表示される当該電気所Aの電気所画面100aは画面遷移がロックされ、他の電気所Aの電気所画面100aに画面遷移しないようになる。
【0023】
次に、電力系統設備制御試験支援システム1の処理手順および作用について説明する。
【0024】
まず、電気所Aの現場作業責任者M1が電力系統設備Eの点検を行い、制御試験が必要であると判定した場合には、現場作業責任者M1が、現場側通信装置2で制御所Bの制御側通信装置3に対して発信し、制御信号送出ボタン2aを押下する。このとき、制御所Bの制御側通信装置3に発信元電話番号と制御試験要請信号とが送信される。そして、制御側通信装置3に着信が通知され、制御部署側の電力系統責任者M2が着信ボタンを押下して応答する。そして、電力系統責任者M2が制御側通信装置3の着信ボタンを押下すると同時に、図4に示す発信元照合タスク3aが起動される。
【0025】
まず、ステップS11において、受信した発信者電話番号に基づいて、発信元の電気所Aを判定し、当該電気所Aの電力系統設備情報データベース42aの作業箇所フラグが取得される。
【0026】
ステップS12において、発信元の当該電気所Aが作業箇所であるか否か(作業箇所フラグが「ON」か「OFF」か)が判定される。作業箇所フラグが「OFF」場合(「NO」の場合)は、処理を終了する。作業箇所フラグが「ON」場合(「YES」の場合)は、ステップS13に進む。
【0027】
ステップS13において、試験要請信号を送信しているか否か(試験フラグが「ON」か「OFF」か)が判定される。試験フラグが「OFF」の場合(「NO」の場合)は、処理を終了する。試験フラグが「ON」の場合(「YES」の場合)は、ステップS14の試験制御タスク43に進む。
【0028】
続いて、試験制御タスク43では、図5に示すように、ステップS21において、電力系統設備情報データベース42aに基づいて、当該電気所Aに設置されている電力系統設備Eが取得される。
【0029】
ステップS22において、電力系統設備情報データベース42aに基づいて、ステップS21で取得した電力系統設備Eの電力系統監視情報が取得される。
【0030】
ステップS23において、ステップS21、S22で取得した試験対象電力系統設備Eと、その電力系統監視情報を監視制御装置100の表示部に表示するように制御信号が送信される。例えば、図3に示すように、送配電線が黒で表示されている「停電中」の試験対象電力系統設備Eは、制御可能(選択可能)とし、送配電線が白で表示されている「運転中」の試験対象外の電力系統設備Eは、制御不可(選択不可)とする。このため、試験対象電力系統設備Eは、電力系統監視情報を監視制御装置100の表示部で選択して運転状態を切り替えることができるが、試験対象外の電力系統設備Eは、選択できず、運転状態の切り替えが不可となる。さらに、当該電気所Aの電気所画面100aは、画面遷移がロックされ、他の電気所Aの電気所画面100aに画面遷移しないようになる。
【0031】
具体的には、図6に示すように、監視制御装置100の表示部の電気所画面100aには、当該電気所Aに設置されている電力系統設備E11−E41−E31間の送配電線は停電中で、電力系統設備E13は「入」状態、電力系統設備E11、E12、E41は「切」状態であることがわかる。電力系統責任者M2は、電気所画面100aに表示された操作可能な電力系統設備E11、E12、E13、E41を予め定められている操作手順に従って制御試験を行う。この状態で、例えば、「運転中」の電力系統設備E21、E22などは選択不可となっている。
【0032】
ステップS24において、試験終了か否かが判定される。ここで、試験終了となるのは、着信ボタンが押下され通話が終了される場合、電力系統責任者M2によって制御試験終了ボタンが押下された場合、保留ボタンが押下された場合のいずれかである。試験終了ではない場合(「NO」の場合)は、試験終了までステップS24を繰り返す。試験終了の場合(「YES」の場合)は、ステップS25に進む。
【0033】
ステップS25において、ステップS23における電力系統設備Eについての制御ロックと電気所画面100aの画面遷移ロックとを解除するための画面ロック解除信号が送信される。これによって、監視制御装置100の表示部は試験制御タスク43の開始前の表示に戻される。
【0034】
また、この試験制御タスク43は、電力系統責任者M2が制御試験開始ボタンを押下することによっても起動される。例えば、通話中に現場作業責任者M1から口頭で試験要請された場合は、電力系統責任者M2が制御側通信装置3の制御試験開始ボタンを押下すると、試験制御タスク43が起動される。
【0035】
以上のように、この電力系統設備制御試験支援システム1によれば、試験要請信号が特定の電気所Aからの試験要請信号であるか否かを発信元照合タスク3aによって判別するようにしたので、制御所B側での制御試験の要請について誤認を回避可能となり、制御所Bの誤認による遠隔操作を確実に防止することができる。また、試験制御タスク43は、試験要請信号と電力系統監視情報とによって特定の電気所Aに設置された電力系統設備Eのみの制御試験を可能とするので、制御所Bが試験要請信号を受取った後は、迅速に制御試験を行うことができ、制御試験の作業能率を高めることができる。つまり、電力系統制御試験を実施するには、現場側通信装置2で試験要請信号を送信したり、制御試験開始ボタンを押下したりするだけで、試験対象電力系統設備Eが表示された電気所画面100aが表示されるので、人間系の判断が介在せず、制御試験を迅速に実施できる。さらに、操作不可の電力系統設備Eについては、表示部で画面をロックし、ロックが解除されるまでは画面遷移不可(操作不可)の状態が保たれるので、誤操作を確実に防止できる。
【0036】
また、制御試験の誤操作の防止を、発信者番号に基づいて判定した電気所Aと、当該電気所Aに設置されている電力系統設備Eを電力系統設備情報データベース42aによって取得した電力系統設備Eで、かつ、電力系統監視情報が「停電中」に限定するので、確実に作業対象の電力系統設備Eを判定することができる。
【0037】
さらに、制御信号送出ボタン2aを現場側通信装置2に組み込み、発信元照合タスク3aを制御側通信装置3に組み込むようにしているので、制御信号送出ボタン2aと現場側通信装置2および発信元照合タスク3aと制御側通信装置3をそれぞれ一体化することができる。これにより、システムの使い勝手を向上させることができ、かつシステムの構成を簡素化することができる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、発信元照合タスク3aを試験制御装置4に備えるようにしてもよい。また、制御信号送出ボタン2aの代わりに、制御試験要請専用電話番号を用意し、当該専用電話番号で発信、受信した電話は制御試験要請である(試験フラグが「ON」)と判断するようにしてもよい。さらに、電力系統監視情報は電力系統設備情報データベース42aに記憶せずに、表示部に表示されているリアルタイムの運転状況に基づいて、画像解析によって取得してもよい。例えば、この実施の形態では、監視制御装置100の電気所画面100aにおいて送配電線は、停電中の場合は黒で表示され、運転中の場合は白で表示されているので、電気所画面100aに表示されている送配電線の色を画像解析して、「停電中」か「運転中」かを判定するようにしてもよい。
【0039】
さらに、電力系統責任者M2によって制御試験開始ボタンが押下された場合には、まず通話相手(発信元電話番号)が作業箇所の電気所Aであるか否かを判定し、作業箇所の電気所Aである場合は試験制御タスク43を起動し、作業箇所の電気所Aではない場合はその旨を通知して試験制御タスク43を起動しないように制御するようにしてもよい。
【0040】
この実施の形態においては、制御試験を停電試験とした場合を説明したが、遠隔制御によって行われる制御試験は、停電試験に限定されることはなく、停電を伴わない制御試験であってもよいし、電力機器の動作確認試験などであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電力系統設備制御試験支援システム
2 現場側通信装置
2a 制御信号送出ボタン(試験要請信号送出手段)
3 制御側通信装置(電力系統制御部署側通信装置)
3a 発信元照合タスク(発信元照合手段)
4 試験制御装置(試験制御手段)
42a 電力系統設備情報データベース
43 試験制御タスク
A 電気所
B 制御所
E 電力系統設備
M1 現場作業責任者
M2 電力系統責任者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統制御部署に設けられた監視制御装置によって遠隔制御が可能な電力系統設備についての遠隔による制御試験を、現場から前記電力系統制御部署へ要請するための電力系統設備制御試験支援システムであって、
前記現場に設けられ、前記電力系統制御部署と通信可能な現場側通信装置と、
前記現場に設けられ、前記現場側通信装置を介して前記電力系統制御部署に前記制御試験の要請をする試験要請信号を送出することが可能な試験要請信号送出手段と、
前記電力系統制御部署に設けられ、複数の現場と通信可能な電力系統制御部署側通信装置と、
前記電力系統制御部署に設けられ、前記複数の現場のうち特定の現場からの前記試験要請信号であるか否かを前記電力系統制御部署側通信装置を介して判別する発信元照合手段と、
前記電力系統制御部署に設けられ、前記現場からの前記試験要請信号と前記監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づいて、前記試験要請信号を送出した特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする試験制御手段と、
を備えることを特徴とする電力系統設備制御試験支援システム。
【請求項2】
前記試験要請信号送出手段は前記現場側通信装置に組み込まれており、前記発信元照合手段は前記電力系統制御部署側通信装置に組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の電力系統設備制御試験支援システム。
【請求項3】
電力系統制御部署に設けられた監視制御装置によって遠隔制御が可能な電力系統設備についての遠隔による制御試験を、現場から前記電力系統制御部署へ要請するための電力系統設備制御試験支援方法あって、
前記現場に設けられた現場側通信装置によって前記電力系統制御部署と通信可能とし、
前記現場に設けられた試験要請信号送出手段によって前記現場側通信装置を介して前記電力系統制御部署に前記制御試験の要請をする試験要請信号を送出し、
前記電力系統制御部署に設けられた電力系統制御部署側通信装置によって複数の現場と通信可能とし、
前記電力系統制御部署に設けられた発信元照合手段によって前記複数の現場のうち特定の現場からの前記試験要請信号であるか否かを前記電力系統制御部署側通信装置を介して判別し、
前記電力系統制御部署に設けられた試験制御手段は、前記現場からの前記試験要請信号と前記監視制御装置からの電力系統監視情報とに基づき前記試験要請信号を送出した特定の現場に設置された電力系統設備のみの制御試験を可能とする、
ことを特徴とする電力系統設備制御試験支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−55139(P2012−55139A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197923(P2010−197923)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】