説明

電力線通信システム、電力線通信装置、電力線送信機及び電力線受信機

【課題】負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線通信システムの提供。
【解決手段】電力線1を通じて信号を送信する電力線送信部28と、その信号を無線送信する無線送信部27とを有する送信機22を備え、電力線送信部28からの信号を電力線1を通じて受信する電力線受信部35と、無線送信部27からの信号を無線により受信する無線受信部34と、電力線受信部35及び無線受信部34がそれぞれ受信した各信号を合成、又は受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部36とを有する受信機31を備える電力線通信システム。無線送信部27が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路29bを備え、電力線受信部35が、受信した信号を所定時間遅延させる受信遅延回路39aを備える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線を通じて信号を送受信する電力線通信システム及び電力線通信装置、並びに電力線通信システムに使用される電力線送信機及び電力線受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、商用の100V(50/60Hz)の電力線、及び車両内の電力線(直流又は交流)等に高周波信号を重畳し、電力線を伝送路として双方向の通信を行う電力線通信が実用化されつつある。
電力線通信の利点としては、既存の電灯引込線及びコンセントがそのまま利用でき、新規の配線工事が不要、プラグをコンセントに差込むだけで接続でき、即時に利用可能、各家庭内の各部屋間でホームネットワークの構築が可能等が考えられる。
【0003】
特許文献1には、電力線を使用する送受信器と無線送受信器とを備え、共通のデータ処理部を通じて、同一データを有線及び無線の両方で送信し、受信側では有線及び無線でそれぞれ受信したデータを、ダイバシティ部で合成して、又は受信信号品質に応じて一方を選択して受信データとする電力線通信システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、電力線を使用する送受信器と無線受信器(受信器のみ)とを備えて、データを有線送信し、受信側では有線で受信したデータ、及び電力線通信信号の漏洩電界を利用した無線で受信したデータを、ダイバシティ部で合成して、又は受信信号品質に応じて一方を選択して受信データとする電力線通信システムが開示されている。
【特許文献1】特開2006−339882号公報
【特許文献2】特開2006−339821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力線通信の問題点の1つとして、使用する高周波帯域では、電力線から電力供給される家電機器又は車載機器等から発生する負荷ノイズ、及び空中を伝播する飛来ノイズ等が、電力線に混入し、通信障害が発生することが挙げられる。
特許文献1,2に開示された技術では、電力線通信でノイズ等の影響を受け、通信が妨害されるという問題を、無線通信を併用することで回避しようとしているが、両者共に、有線及び無線の信号データの伝送タイミングが同じである為、現実には通信障害を回避することは困難である。
【0006】
即ち、通信の障害源となるノイズが発生した場合、図5(a)(b)に示すように、それらは有線通信にも無線通信にも同一タイミングで影響を与えることになり、それらを合成したとしても、その通信結果は、(c)に示すように、影響された部分が欠損となる。特許文献2に開示された技術では、有線通信のデータの一部にノイズが重畳した場合でも、その漏洩電界を利用して無線で受信しており、明らかにデータの同一タイミング部分にノイズの影響が生じる。
【0007】
特許文献1に開示された技術では、特許文献1の段落番号[0012]において、「無線通信は周波数のアップコンバート及びダウンコンバートだけで済み電力線通信に対して通信の遅延時間やジッタ等に差がほとんど生じない・・・」と記載されており、有線信号及び無線信号を同じタイミングで送受信することが明示されている。
従って、特許文献1,2に開示された技術では、同じ理由により、ノイズの妨害に対して、有線信号と無線信号とが補完的に作用することはできず、通信の信頼性を確保することはできない。
【0008】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、第1,2発明では、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線通信システムを提供することを目的とする。
第3,4発明では、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線通信装置を提供することを目的とする。
第5発明では、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線送信機を提供することを目的とする。
第6発明では、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る電力線通信システムは、電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する1又は複数の送信機を備え、前記電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信する電力線受信部と、前記無線送信部からの信号を無線により受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する1又は複数の受信機を備える電力線通信システムにおいて、前記無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記電力線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0010】
この電力線通信システムでは、1又は複数の送信機は、電力線送信部が、電力線を通じて信号を送信し、無線送信部が、その信号を無線により送信する。1又は複数の受信機は、電力線受信部が電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信し、無線受信部が、無線送信部からの信号を無線により受信し、ダイバシティ部が、電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は各信号の受信品質の良好な方を選択して出力する。無線送信部は、送信する信号を送信遅延回路が所定時間遅延させ、電力線受信部は、受信した信号を受信遅延回路が所定時間遅延させる。
【0011】
第2発明に係る電力線通信システムは、電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する1又は複数の送信機を備え、前記電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信する電力線受信部と、前記無線送信部からの信号を無線により受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する1又は複数の受信機を備える電力線通信システムにおいて、前記電力線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記無線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0012】
この電力線通信システムでは、1又は複数の送信機は、電力線送信部が、電力線を通じて信号を送信し、無線送信部が、その信号を無線により送信する。1又は複数の受信機は、電力線受信部が、電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信し、無線受信部が、無線送信部からの信号を無線により受信し、ダイバシティ部が、電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は各信号の受信品質の良好な方を選択して出力する。電力線送信部は、送信する信号を送信遅延回路が所定時間遅延させ、無線受信部は、受信した信号を受信遅延回路が所定時間遅延させる。
【0013】
第3発明に係る電力線通信装置は、電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する送信機を備え、前記電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する受信機を備える電力線通信装置において、前記無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記電力線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0014】
この電力線通信装置では、送信機は、電力線送信部が、電力線を通じて信号を送信し、無線送信部が、その信号を無線により送信する。受信機は、電力線受信部が、電力線を通じて信号を受信し、無線受信部が、無線により信号を受信し、ダイバシティ部が、電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は各信号の受信品質の良好な方を選択して出力する。無線送信部は、送信する信号を送信遅延回路が所定時間遅延させ、電力線受信部は、受信した信号を受信遅延回路が所定時間遅延させる。
【0015】
第4発明に係る電力線通信装置は、電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する送信機を備え、前記電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する受信機を備える電力線通信装置において、前記電力線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記無線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0016】
この電力線通信装置では、送信機は、電力線送信部が、電力線を通じて信号を送信し、無線送信部が、その信号を無線により送信する。受信機は、電力線受信部が、電力線を通じて信号を受信し、無線受信部が、無線により信号を受信し、ダイバシティ部が、電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は各信号の受信品質の良好な方を選択して出力する。電力線送信部は、送信する信号を送信遅延回路が所定時間遅延させ、無線受信部は、受信した信号を受信遅延回路が所定時間遅延させる。
【0017】
第5発明に係る電力線送信機は、電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを備える電力線送信機において、前記電力線送信部又は無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0018】
この電力線送信機では、電力線送信部が、電力線を通じて信号を送信し、無線送信部が、その信号を無線により送信し、電力線送信部又は無線送信部が備える送信遅延回路が、送信する信号を所定時間遅延させる。
【0019】
第6発明に係る電力線受信機は、電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを備える電力線受信機において、前記電力線受信部又は無線受信部が、受信した信号を所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする。
【0020】
この電力線受信機では、電力線受信部が、電力線を通じて信号を受信し、無線受信部が、無線により信号を受信し、ダイバシティ部が、電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は各信号の受信品質の良好な方を選択して出力する。電力線受信部又は無線受信部が備える受信遅延回路が、受信した信号を所定時間遅延させる。
【発明の効果】
【0021】
第1,2発明に係る電力線通信システムによれば、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線通信システムを実現することができる。
【0022】
第3,4発明に係る電力線通信装置によれば、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線通信装置を実現することができる。
【0023】
第5発明に係る電力線送信機によれば、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線送信機を実現することができる。
【0024】
第6発明に係る電力線受信機によれば、負荷ノイズ及び飛来ノイズ等が電力線に混入しても、通信障害が発生し難い電力線受信機を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る電力線通信システム、電力線通信装置、電力線送信機及び電力線受信機の実施の形態1の要部構成を示すブロック図である。
この電力線通信システムは、電力線1を通じて、2台の電力線通信装置2,3が、双方向通信を行っており、電力線通信装置2は、送信機22(電力線送信機)、受信機21(電力線受信機)及びデータ処理部23を、電力線通信装置3は、送信機32、受信機31及びデータ処理部33をそれぞれ備えている。
【0026】
データ処理部23,33は、外部から与えられた信号を送信用信号に変換処理して、送信機22,32に与え、受信機21,31から与えられた受信信号を、外部への出力用信号へ変換して、外部へ出力する。
送信機22は、データ処理部23から与えられた送信用信号を、電力線1に流れる電流に重畳させて送信する電力線送信部28と、データ処理部23から与えられた送信用信号を、遅延回路29bにより所定時間遅延させた後、図示しないアンテナから無線送信する無線送信部27とを備えている。
【0027】
受信機21は、電力線通信装置3側の送信機32から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、遅延回路29aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部26に与える電力線受信部25を備えている。また、電力線通信装置3側の送信機32から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、ダイバシティ部26に与える無線受信部24を備えている。ダイバシティ部26は、電力線受信部25及び無線受信部24から与えられた各信号を合成して、又は各信号の品質の良好な方を選択して、受信信号としてデータ処理部23に与える。
【0028】
送信機32は、データ処理部33から与えられた送信用信号を、電力線1に流れる電流に重畳させて送信する電力線送信部38と、データ処理部33から与えられた送信用信号を、遅延回路39bにより所定時間遅延させた後、図示しないアンテナから無線送信する無線送信部37とを備えている。
【0029】
受信機31は、電力線通信装置2側の送信機22から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、遅延回路39aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部36に与える電力線受信部35を備えている。また、電力線通信装置2側の送信機22から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、ダイバシティ部36に与える無線受信部34を備えている。ダイバシティ部36は、電力線受信部35及び無線受信部34から与えられた各信号を合成して、又は各信号の品質の良好な方を選択して、受信信号としてデータ処理部33に与える。
【0030】
以下に、このような構成の電力線通信システムの動作の例を以下に説明する。
電力線通信装置2側では、データ処理部23が、外部から与えられた信号を送信用信号に変換処理して、送信機22に与える。
送信機22では、電力線送信部28が、データ処理部23から与えられた送信用信号を、電力線1に流れる電流に重畳させて送信すると共に、無線送信部27が、データ処理部23から与えられた送信用信号を、遅延回路29bにより所定時間遅延させた後、図示しないアンテナから無線送信する。
【0031】
この結果、図2(a)(b)に示すように、送信機22から無線送信された信号は、送信機22から電力線1で有線送信された信号より所定時間遅延するので、ノイズによる妨害が発生したときに、妨害されるデータ(図2では、有線;データ2、無線;データ1)が異なることになる。従って、無線送信された信号、及び有線送信された信号の少なくとも何れかに、妨害されなかったデータが残ることになる。
【0032】
電力線通信装置3側では、受信機31は、電力線受信部35が、電力線通信装置2側の電力線送信部28から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、遅延回路39aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部36に与える。また、無線受信部34が、電力線通信装置2側の送信機22から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、ダイバシティ部36に与える。
この結果、ダイバシティ部36に与えられる無線送信された信号、及び有線送信された信号は、それぞれ送信時から所定時間遅延されたことになる。
【0033】
その為、ダイバシティ部36は、与えられた両信号を合成する(例えば、パルス信号の論理和を取る)ことにより、又は各信号の品質の良好な方を選択することにより、図2(c)に示すように、通信結果として、ノイズによる妨害の影響を除去することができる。
ダイバシティ部36は、ノイズによる妨害の影響を除去した通信結果を、受信信号としてデータ処理部33に与える。データ処理部33は、与えられた受信信号を、外部への出力用信号へ変換して、外部へ出力する。
尚、上述した動作は、電力線通信装置2側から電力線通信装置3へ送信する場合の動作であるが、電力線通信装置3側から電力線通信装置2へ送信する場合の動作も、符号が変わること以外は同様である。
【0034】
(実施の形態2)
図3は、本発明に係る電力線通信システム、電力線通信装置、電力線送信機及び電力線受信機の実施の形態2の要部構成を示すブロック図である。
この電力線通信システムは、電力線1を通じて、2台の電力線通信装置4,5が、双方向通信を行っており、電力線通信装置4は、送信機42(電力線送信機)、受信機41(電力線受信機)及びデータ処理部43を、電力線通信装置5は、送信機52、受信機51及びデータ処理部53をそれぞれ備えている。
【0035】
データ処理部43,53は、外部から与えられた信号を送信用信号に変換処理して、送信機42,52に与え、受信機41,51から与えられた受信信号を、外部への出力用信号へ変換して、外部へ出力する。
送信機42は、データ処理部43から与えられた送信用信号を、遅延回路49bにより所定時間遅延させた後、電力線1に流れる電流に重畳させて送信する電力線送信部48と、データ処理部43から与えられた送信用信号を、図示しないアンテナから無線送信する無線送信部47とを備えている。
【0036】
受信機41は、電力線通信装置5側の送信機52から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、ダイバシティ部46に与える電力線受信部45を備えている。また、電力線通信装置5側の送信機52から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、遅延回路49aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部46に与える無線受信部44を備えている。ダイバシティ部46は、電力線受信部45及び無線受信部44から与えられた各信号を合成して、又は各信号の品質の良好な方を選択して、受信信号としてデータ処理部43に与える。
【0037】
送信機52は、データ処理部53から与えられた送信用信号を、遅延回路59bにより所定時間遅延させた後、電力線1に流れる電流に重畳させて送信する電力線送信部58と、データ処理部53から与えられた送信用信号を、図示しないアンテナから無線送信する無線送信部57とを備えている。
【0038】
受信機51は、電力線通信装置4側の送信機42から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、ダイバシティ部56に与える電力線受信部55を備えている。また、電力線通信装置4側の送信機42から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、遅延回路59aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部56に与える無線受信部54を備えている。ダイバシティ部56は、電力線受信部55及び無線受信部54から与えられた各信号を合成して、又は各信号の品質の良好な方を選択して、受信信号としてデータ処理部53に与える。
【0039】
以下に、このような構成の電力線通信システムの動作の例を以下に説明する。
電力線通信装置4側では、データ処理部43が、外部から与えられた信号を送信用信号に変換処理して、送信機42に与える。
送信機42では、電力線送信部48が、データ処理部43から与えられた送信用信号を、遅延回路49bにより所定時間遅延させた後、電力線1に流れる電流に重畳させて送信すると共に、無線送信部47が、データ処理部43から与えられた送信用信号を、図示しないアンテナから無線送信する。
【0040】
この結果、図4(a)(b)に示すように、送信機42から電力線1で有線送信された信号は、送信機42から無線送信された信号より所定時間遅延するので、ノイズによる妨害が発生したときに、妨害されるデータ(図4では、有線;データ1、無線;データ2)が異なることになる。従って、無線送信された信号、及び有線送信された信号の少なくとも何れかに、妨害されなかったデータが残ることになる。
【0041】
電力線通信装置5側では、受信機51は、電力線受信部55が、電力線通信装置4側の電力線送信部48から送信され、電力線1を通じて受信した有線信号を、ダイバシティ部56に与える。また、無線受信部54が、電力線通信装置4側の送信機42から送信され、図示しないアンテナにより受信した無線信号を、遅延回路59aにより所定時間遅延させた後、ダイバシティ部56に与える。
この結果、ダイバシティ部56に与えられる無線送信された信号、及び有線送信された信号は、それぞれ送信時から所定時間遅延されたことになる。
【0042】
その為、ダイバシティ部56は、与えられた両信号を合成する(例えば、パルス信号の論理和を取る)ことにより、又は各信号の品質の良好な方を選択することにより、図4(c)に示すように、通信結果として、ノイズによる妨害の影響を除去することができる。
ダイバシティ部56は、ノイズによる妨害の影響を除去した通信結果を、受信信号としてデータ処理部53に与える。データ処理部53は、与えられた受信信号を、外部への出力用信号へ変換して、外部へ出力する。
尚、上述した動作は、電力線通信装置4側から電力線通信装置5へ送信する場合の動作であるが、電力線通信装置5側から電力線通信装置4へ送信する場合の動作も、符号が変わること以外は同様である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る電力線通信システム、電力線通信装置、電力線送信機及び電力線受信機の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電力線通信システムの動作の例を説明する為のタイミングチャートである。
【図3】本発明に係る電力線通信システム、電力線通信装置、電力線送信機及び電力線受信機の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る電力線通信システムの動作の例を説明する為のタイミングチャートである。
【図5】従来の電力線通信システムの動作の例を説明する為のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 電力線
2〜5 電力線通信装置
21,31,41,51 受信機(電力線受信機)
22,32,42,52 送信機(電力線送信機)
23,33,43,53 データ処理部
24,34,44,54 無線受信部
25,35,45,55 電力線受信部
26,36,46,56 ダイバシティ部
27,37,47,57 無線送信部
28,38,48,58 電力線送信部
29a,39a,49a,59a 遅延回路(受信遅延回路)
29b,39b,49b,59b 遅延回路(送信遅延回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する1又は複数の送信機を備え、前記電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信する電力線受信部と、前記無線送信部からの信号を無線により受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する1又は複数の受信機を備える電力線通信システムにおいて、
前記無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記電力線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する1又は複数の送信機を備え、前記電力線送信部からの信号を電力線を通じて受信する電力線受信部と、前記無線送信部からの信号を無線により受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する1又は複数の受信機を備える電力線通信システムにおいて、
前記電力線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記無線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする電力線通信システム。
【請求項3】
電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する送信機を備え、前記電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する受信機を備える電力線通信装置において、
前記無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記電力線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする電力線通信装置。
【請求項4】
電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを有する送信機を備え、前記電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを有する受信機を備える電力線通信装置において、
前記電力線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備え、前記無線受信部が、受信した信号を前記所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする電力線通信装置。
【請求項5】
電力線を通じて信号を送信する電力線送信部と、該信号を無線により送信する無線送信部とを備える電力線送信機において、
前記電力線送信部又は無線送信部が、送信する信号を所定時間遅延させる送信遅延回路を備えることを特徴とする電力線送信機。
【請求項6】
電力線を通じて信号を受信する電力線受信部と、無線により信号を受信する無線受信部と、前記電力線受信部及び無線受信部がそれぞれ受信した各信号を合成、又は該各信号の受信品質の良好な方を選択して出力するダイバシティ部とを備える電力線受信機において、
前記電力線受信部又は無線受信部が、受信した信号を所定時間遅延させる受信遅延回路を備えることを特徴とする電力線受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−283483(P2008−283483A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125959(P2007−125959)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】