説明

電力計測システム、及び、該電力計測システムに用いられるマスター装置、並びに、該電力計測システムに用いられるスレーブ装置

【課題】 アドレスの設定が容易な電力計測システム、及び、該電力計測システムに用いられるマスター装置、並びに、該電力計測システムに用いられるスレーブ装置を提供する。
【解決手段】 1個のマスター装置1に対して複数個のスレーブ装置がデイジーチェーン接続される。マスター装置1は、所定のトリガを入力されると、未使用のアドレスを示すアドレス設定信号を生成するとともに、マスター装置1に直接接続されたスレーブ装置2に対してアドレス設定信号を入力する。各スレーブ装置2は、それぞれ、アドレス設定信号を入力されると、自身に既にアドレスが設定されていれば後段のスレーブ装置2にアドレス設定信号を入力し、自身に未だアドレスが設定されていない場合にはアドレス設定信号に示されたアドレスを自身のアドレスとして設定してアドレス設定信号を後段のスレーブ装置2には入力しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力計測システム、及び、該電力計測システムに用いられるマスター装置、並びに、該電力計測システムに用いられるスレーブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、省エネの効果や電力消費の履歴などの確認を可能とする電力計測システムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、一般に、電力を計測する装置には、電圧が入力される電圧入力部と、電流が入力される電流入力部とが設けられるが、電流入力部を構成する端子やコネクタの個数を固定とすると、電流を計測する箇所の個数も固定されてしまい、柔軟性に欠ける。
【0004】
そこで、電流入力部と電圧入力部とを有するマスター装置に対してそれぞれ電流入力部を有する複数個のスレーブ装置を接続可能とするとともに、マスター装置に接続するスレーブ装置の個数を変更することによって上記の端子やコネクタの個数を変更可能とした電力計測システムが提案されている。
【0005】
さらに、上記の電力計測システムとして、マスター装置に対して各スレーブ装置をデイジーチェーン接続するものがある。すなわち、スレーブ装置のうち1個のみがマスター装置に直接接続され、その他のスレーブ装置は自身よりも前段(すなわちマスター装置に近い側)に接続された他のスレーブ装置を介してマスター装置と通信する。このような電力計測システムでは複数個のスレーブ装置がマスター装置との通信に共通の信号路を用いることになるので、周知の時分割多重が用いられ、使用開始時には各スレーブ装置にそれぞれ固有のアドレスが付される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−55385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように各スレーブ装置のアドレスを設定する方法としては、例えば各スレーブ装置にそれぞれアドレスの入力を受け付けるディップスイッチ等のアドレス入力手段を設け、スレーブ装置毎に手動でアドレスを設定するという方法がある。しかしながら、この方法では、アドレスを設定する操作が煩わしくなるほか、誤って複数個のスレーブ装置に共通のアドレスを設定してしまうという可能性もある。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、アドレスの設定が容易な電力計測システム、及び、該電力計測システムに用いられるマスター装置、並びに、該電力計測システムに用いられるスレーブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力計測システムは、それぞれ少なくとも電流を計測する複数個のスレーブ装置を、電圧を計測するとともにこの電圧と少なくとも各前記スレーブ装置で計測された電流とを用いて電力を演算するマスター装置に対してデイジーチェーン接続して構成される電力計測システムであって、各前記スレーブ装置は、それぞれ、既にアドレスが設定されていれば、前記マスター装置から送信された電気信号のうち自身のアドレスを含む電気信号のみを受信するとともに、前記マスター装置に送信する電気信号には自身のアドレスを含めるものであって、前記マスター装置は、所定のトリガを入力されると、未使用のアドレスを示すアドレス設定信号を生成するとともに、前記マスター装置に直接接続された前記スレーブ装置に対して前記アドレス設定信号を入力し、各前記スレーブ装置は、それぞれ、前記アドレス設定信号を入力されると、自身に既にアドレスが設定されていれば後段の前記スレーブ装置に前記アドレス設定信号を入力し、自身に未だアドレスが設定されていない場合には前記アドレス設定信号に示されたアドレスを自身のアドレスとして設定して前記アドレス設定信号を後段の前記スレーブ装置には入力しないことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のマスター装置は、上記の電力計測システムに使用されるマスター装置であって、前記スレーブ装置が接続されるスレーブ接続部と、前記トリガが入力されるトリガ入力部と、前記トリガ入力部に前記トリガが入力されたときに前記アドレス設定信号を前記スレーブ接続部から出力するマスター制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明のスレーブ装置は、上記の電力計測システムに使用されるスレーブ装置であって、前記マスター装置又は前記マスター装置により近い他の前記スレーブ装置に接続される前段接続部と、前記マスター装置からより離れた他の前記スレーブ装置に接続される後段接続部と、前記前段接続部と前記後段接続部との間で電気信号を中継する中継部と、前記中継部を制御するスレーブ制御部とを備え、前記スレーブ制御部は、前記前段接続部に前記アドレス設定信号が入力されると、自身に未だアドレスが設定されていない場合には前記アドレス設定信号に示されたアドレスを自身のアドレスとして設定して前記アドレス設定信号を前記後段接続部から出力しないように前記中継部を制御し、自身に既にアドレスが設定されている場合であって少なくとも前記後段接続部に他のスレーブ装置が接続されている場合には前記後段接続部から前記アドレス設定信号を出力するように前記中継部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アドレスを設定するための操作入力をスレーブ装置毎に必要とする場合に比べ、アドレスの設定作業が容易となる。また、アドレスを設定するための操作入力をスレーブ装置毎に必要とする場合と違い、人為的なミスにより1個のアドレスが複数個のスレーブ装置に重複して設定されてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上においてマスター装置に2個のスレーブ装置が接続された状態を示す斜視図である。
【図3】同上のマスター装置を示す斜視図である。
【図4】同上のスレーブ装置を示す、図2とは異なる方向から見た斜視図である。
【図5】同上のマスター装置を示す、図3とは異なる方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態は、図1及び図2に示すように、1個のマスター装置1と、このマスター装置1にデイジーチェーン接続された複数個(図では2個)のスレーブ装置2とで構成されている。各スレーブ装置2はそれぞれ異なる場所の電流を計測するものであって、マスター装置1は各スレーブ装置2における計測結果と別途に計測された電流・電圧とを用いた電力の演算などを行うものである。
【0016】
マスター装置1と各スレーブ装置2とは、それぞれ、ドイツ連邦規格(DIN)に準拠していわゆるDINレール(図示せず)に着脱可能な構造のハウジング10,20を有する。以下、上下左右は図2を基準とし、DINレールに向けられる面(図2での右奥側に向けられている面)を後面と呼び、DINレールの反対側に向けられる面(図2での左手前側の面)を前面と呼ぶ。
【0017】
マスター装置1は、図3に示すように、ハウジング10の右側に保持されてスレーブ装置2が接続されるスレーブ接続部11を有する。また、各スレーブ装置2は、それぞれ、ハウジング20の右側に保持されてスレーブ接続部11と同様の構造を有し後段側の(すなわち自身よりもマスター装置1から離れた)スレーブ装置2が接続される後段側接続部22を有する。さらに、各スレーブ装置2は、それぞれ、図4に示すようにハウジング20の左側に保持されてマスター装置1のスレーブ接続部11又は前段側の(すなわち自身よりもマスター装置1に近い)スレーブ装置2の後段側接続部22に接続される前段側接続部21を有する。
【0018】
マスター装置1のスレーブ接続部11とスレーブ装置2の後段側接続部22とには、それぞれ、周知のコネクタのレセプタクルを用いることができる。また、スレーブ装置2の前段側接続部21には、上記のレセプタクルに対して挿入接続されるプラグを用いることができる。スレーブ装置2を追加する際には、追加するスレーブ装置2の前段側接続部21を、マスター装置1のスレーブ接続部11と既存のスレーブ装置2の後段側接続部22とのうち右側に露出しているものに対して挿入接続すればよい。
【0019】
また、マスター装置1は、操作入力を受け付ける操作部12と、各種の表示を行う表示部13と、家電などの負荷への給電路に設けられたカレントトランス(図示せず)に接続される電流入力部14と、電源電圧や計測されるべき電圧が入力される電圧入力部15と、計測されたデータの出力を行うためのデータ出力部16と、各部の制御を行うマスター制御部17とを有する。
【0020】
操作部12は3個の押釦スイッチ(図示せず)を有しており、マスター装置2のハウジング10の前面には前方からの押力を1個ずつの押釦スイッチに伝達するように他の部位に対して前後に弾性的に変位可能な3個の押釦部121が設けられている。
【0021】
表示部13は、前方から見て露出する形でハウジング10に保持された液晶パネル131と、マスター制御部17の制御に従って液晶パネル131を駆動する駆動回路とで構成することができる。
【0022】
電流入力部14は、図5に示すように、一端が上記のカレントトランスに接続された電線の他端に設けられたプラグ(図示せず)が挿入接続される周知のレセプタクル141で構成することができる。
【0023】
電圧入力部15は、例えば複数個のねじ端子151で構成することができる。
【0024】
データ出力部16としては、ハウジング10の前面に設けられたカードスロット161に挿入されたメモリカード3への読み書きを行うリーダライタ装置(図示せず)と、ハウジング10の前面に設けられた通信用レセプタクル162に接続された外部機器との間での通信を行う通信装置(図示せず)とを有する。上記のリーダライタ装置と通信装置とはいずれも周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0025】
マスター制御部17は、予め入力されたプログラムや外部からの入力に応じて、表示部13の制御や、スレーブ接続部11を介した電気信号の送信や、データ出力部16の制御を行う。ここでいう外部からの入力としては、例えば、外部機器から通信用レセプタクル162に入力された電気信号や、スレーブ接続部11に入力された電気信号や、操作部12に受け付けられた操作入力などがある。このようなマスター制御部17は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0026】
さらに、各スレーブ装置2は、それぞれ、前段側接続部21と後段側接続部22との間で電気信号を中継する中継部23と、家電などの負荷への給電路に設けられたカレントトランス(図示せず)に接続される電流入力部24と、前段側接続部21に入力された電気信号に応じて、上記のカレントトランスから電流入力部24に入力された電流の計測結果の送信や、中継部23の制御を行うスレーブ制御部25とを備える。
【0027】
中継部23は例えば増幅回路のような適宜の電子回路で実現することができる。
【0028】
スレーブ装置2の電流入力部24には、マスター装置1の電流入力部14と同様のレセプタクル241を用いることができる。
【0029】
ここで、マスター装置1と各スレーブ装置2との間の通信は、周知の時分割多重(例えばポーリング)により共通の伝送路を用いて行われる。すなわち、マスター装置1と各スレーブ装置2との間で送受信される電気信号には、基本的には各スレーブ装置2に予め設定されたアドレスの情報が含まれており、各スレーブ装置2はそれぞれ既にアドレスが設定されていれば該アドレスを含む電気信号のみを受信する。アドレスとしては例えば番号が用いられる。
【0030】
以下、本発明の特徴である、各スレーブ装置2にアドレスを設定する手順について説明する。
【0031】
マスター装置1において、アドレスの設定を指示するトリガとしての所定の操作入力が、トリガ入力部としての操作部12に受け付けられると、マスター制御部17は、新たに設定されるべき未使用のアドレス(すなわち、いずれのスレーブ装置2にも設定されていないアドレス)の情報を含む電気信号(以下、「アドレス設定信号」と呼ぶ。)を生成してスレーブ接続部11から出力する。なお、アドレス設定信号を生成及び出力するトリガは、上記のような操作入力ではなく所定の電気信号の入力であってもよい。
【0032】
スレーブ装置2において、前段接続部21からアドレス設定信号が入力されると、スレーブ制御部25は、自身にアドレスが設定されているか否かを判定する。
【0033】
そして、自身に未だアドレスが設定されていなければ、アドレス設定信号に含まれるアドレスを自身のアドレスとして設定(すなわち記憶)するとともに、アドレス設定信号がアドレス設定に使用された旨を示す電気信号(以下、「設定継続信号」と呼ぶ。)を前段接続部21からマスター装置1へ送信する。この場合、スレーブ制御部25は、アドレス設定信号を後段のスレーブ装置2には出力しないように中継部23を制御する。
【0034】
一方、アドレス設定信号が前段入力部21に入力されたときに既に自身にアドレスが設定されていれば、スレーブ制御部25は、次に、後段接続部22にスレーブ装置2が接続されているか否かを判定する。そして、後段接続部22にスレーブ装置2が接続されていれば、スレーブ制御部25は、アドレス設定信号を後段接続部22から後段のスレーブ装置2へ出力するように中継部23を制御する。また、後段接続部22にスレーブ装置2が接続されていなければ、中継部23を動作させず、全てのスレーブ装置2でアドレス設定が完了した旨を示す電気信号(以下、「設定完了信号」と呼ぶ。)を前段接続部21からマスター装置1へ送信する。
【0035】
マスター装置1において、設定継続信号がスレーブ接続部11に入力されると、マスター制御部17は、更に別の未使用アドレスの情報を含むアドレス設定信号を生成してスレーブ接続部11から出力する。また、設定完了信号がスレーブ接続部11に入力されると、マスター制御部17は、アドレス設定の動作を終了し、アドレス設定が完了した旨を表示するように表示部13を制御する。
【0036】
上記構成によれば、アドレスを設定するための操作入力をスレーブ装置2毎に必要とする場合に比べ、アドレスの設定作業が容易となる。また、アドレスを設定するための操作入力をスレーブ装置2毎に必要とする場合と違い、人為的なミスにより1個のアドレスが複数個のスレーブ装置2に重複して設定されてしまうことがない。
【符号の説明】
【0037】
1 マスター装置
2 スレーブ装置
11 スレーブ接続部
12 操作部(トリガ入力部)
17 マスター制御部
21 前段接続部
22 後段接続部
23 中継部
25 スレーブ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ少なくとも電流を計測する複数個のスレーブ装置を、電圧を計測するとともにこの電圧と少なくとも各前記スレーブ装置で計測された電流とを用いて電力を演算するマスター装置に対してデイジーチェーン接続して構成される電力計測システムであって、
各前記スレーブ装置は、それぞれ、既にアドレスが設定されていれば、前記マスター装置から送信された電気信号のうち自身のアドレスを含む電気信号のみを受信するとともに、前記マスター装置に送信する電気信号には自身のアドレスを含めるものであって、
前記マスター装置は、所定のトリガを入力されると、未使用のアドレスを示すアドレス設定信号を生成するとともに、前記マスター装置に直接接続された前記スレーブ装置に対して前記アドレス設定信号を入力し、
各前記スレーブ装置は、それぞれ、前記アドレス設定信号を入力されると、自身に既にアドレスが設定されていれば後段の前記スレーブ装置に前記アドレス設定信号を入力し、自身に未だアドレスが設定されていない場合には前記アドレス設定信号に示されたアドレスを自身のアドレスとして設定して前記アドレス設定信号を後段の前記スレーブ装置には入力しないことを特徴とする電力計測システム。
【請求項2】
請求項1の電力計測システムに使用されるマスター装置であって、
前記スレーブ装置が接続されるスレーブ接続部と、
前記トリガが入力されるトリガ入力部と、
前記トリガ入力部に前記トリガが入力されたときに前記アドレス設定信号を前記スレーブ接続部から出力するマスター制御部とを備えることを特徴とするマスター装置。
【請求項3】
請求項1の電力計測システムに使用されるスレーブ装置であって、
前記マスター装置又は前記マスター装置により近い他の前記スレーブ装置に接続される前段接続部と、
前記マスター装置からより離れた他の前記スレーブ装置に接続される後段接続部と、
前記前段接続部と前記後段接続部との間で電気信号を中継する中継部と、
前記中継部を制御するスレーブ制御部とを備え、
前記スレーブ制御部は、前記前段接続部に前記アドレス設定信号が入力されると、自身に未だアドレスが設定されていない場合には前記アドレス設定信号に示されたアドレスを自身のアドレスとして設定して前記アドレス設定信号を前記後段接続部から出力しないように前記中継部を制御し、自身に既にアドレスが設定されている場合であって少なくとも前記後段接続部に他のスレーブ装置が接続されている場合には前記後段接続部から前記アドレス設定信号を出力するように前記中継部を制御することを特徴とするスレーブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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