説明

電力通信パネル及び給電通信システム

【課題】広範な給電通信対象平面にも容易に電力供給を行なうことができると共に、利用者の安全確保を行うことができる、給電通信システムを提供すること。
【解決手段】複数の導電板11、12と、これら複数の導電板11、12の相互間に設けられた絶縁層13とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された電力通信パネル10であって、この電力通信パネル10の外面に配置された導電板11、12の少なくとも1枚を、接地極とするように直流電源に接続される導電板11とし、絶縁層13を、通信信号を伝播するための通信路とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力及び通信信号を供給するための電力通信パネルと、この電力通信パネルを用いた給電通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般住宅やオフィス等の各種の空間に対して電力や通信信号を供給するための様々な供給構造が提案されている。一般的には、配電盤から床下や壁面内部にケーブルを敷設すると共に、このケーブルの端部を室内近傍に引出していた。そして、この端部に電源コネクタや信号端子を接続し、これら電源コネクタや信号端子に電気機器を接続することによって、電力や通信信号を供給していた。しかしながら、近年のOA機器を中心とする電気機器の多様化に伴い、空間内の様々な位置で電力や通信信号を使用したいとのニーズが高まっており、より自由度の高い電力や通信信号の供給構造が要望されている。
【0003】
このような自由度の高い供給構造の一形態として、従来から、いわゆるフラットケーブルを用いた構造が提案されている。このフラットケーブルは、一対の平線型の導体を複数本並べた状態で被覆して構成されている。このフラットケーブルは一般的なケーブルに比べて薄厚であり、このフラットケーブルを床上面に敷設してカーペット等にて覆うことでその存在感をほぼ消すことができるため、このフラットケーブルの敷設経路の自由度を高めることができる。
【0004】
また、特許文献1には、板状の導体を用いた電力用配線構造が開示されている。この構造は、第1の導体及び第2の導体にて絶縁膜を介して第3の導体を挟むことによって層状に構成されている。第1から第3の導体はそれぞれ細幅の板状に形成されており、このような構造を用いることで、平坦状の電力供給構造を構築することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−151367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の電力や通信信号の供給構造は、平坦化を図ることで敷設経路の自由度を高めることが可能になる一方で、細幅の導体を用いていたことから、依然として一部の領域に対してしか電力や通信信号を供給することができなかった。例えば、広範な室内の多数の位置で電力や通信信号を使用する可能性がある場合、フラットケーブルや特許文献1の電力用配線構造を用いる場合にはこれらを多数本敷設しなければならず、その敷設や接続に多大な手間を要する等、実用性に欠けていた。
【0007】
特に、特許文献1の如き電力供給構造においては、導体が表面側に露出していて利用者に触れる可能性があるため、電力供給構造における最も基本的な目標である利用者の安全確保が、阻害される危険性があった。
【0008】
また、通信信号を供給する場合、電力に通信信号を重畳するPLC(電力線搬送通信:Power Line Communications)の如き技術も提案されているが、ケーブルがアンテナとして作用することによって漏洩電磁波が発生するという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、広範な給電通信対象平面にも容易に電力や通信信号の供給を行なうことができると共に、利用者の安全確保を行うことができ、さらに通信信号による漏洩電磁波の発生を低減することができる、電力通信パネル及び給電通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る発明は、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された電力通信パネルであって、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板の少なくとも1枚を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、前記絶縁層を、通信信号を伝播するための通信路としたこと、を特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る複数の電界プローブ又は磁界プローブを取り付け可能とし、前記複数の電界プローブの中の一部の前記電界プローブを介して前記絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の前記電界プローブ又は前記磁界プローブを介して出力可能としたこと、を特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る複数の磁界プローブ又は電界プローブを取り付け可能とし、前記複数の磁界プローブの中の一部の前記磁界プローブを介して前記絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の前記磁界プローブ又は前記電界プローブを介して出力可能としたこと、を特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された電力通信パネルであって、前記複数の導電板のうち、当該電力通信パネルの外面に配置された導電板の少なくとも1枚を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、前記複数の導電板を、前記直流電源から供給された直流電流に通信信号を重畳して伝送する伝送路としたこと、を特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して他の前記導電板に至る接続端子を取り付け可能とし、前記導電板を介して供給された電流と、当該電流に重畳された通信信号との両方を、前記接続端子によって取得可能としたこと、を特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれか一項に係る発明において、当該電力通信パネルの外面に配置された一対の導電板と、これら一対の導電板の相互間に配置された導電板とを備え、前記外面に配置された前記一対の導電板の各々を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、前記一対の導電板の相互間に配置された導電板を、陽極とするように前記直流電源に接続される導電板とし、前記接地極側の導電板の各々と前記陽極側の導電板との相互間、並びに、前記陽極側の導電板の側方に、前記絶縁パネルを設けたこと、を特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記一対の接地極側の導電板の相互間の側方に、これら一対の接地極側の導電板に相互に導通する導電板を配置することにより、これら一対の接地極側の導電板と導電部材とによって囲繞される閉鎖空間部を形成し、前記閉鎖空間部の内部に、前記絶縁パネルと、前記接地極側の導電板に対して電気的に絶縁された前記陽極側の導電板とを配置したこと、を特徴とする。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれか一項に係る発明において、前記電力通信パネルの前記導電板に対して電力を供給する電力供給部と、前記電力通信パネルの前記導電板から電力を取り出す電力取出部と、前記電力通信パネルの前記絶縁層又は前記導電板に対して通信信号を供給する信号入力部と、前記電力通信パネルの前記絶縁層又は前記導電板から通信信号を取り出す信号出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記信号入力部及び前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る電界プローブ又は磁界プローブであり、前記電界プローブを介して前記絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の前記電界プローブ又は磁界プローブを介して出力可能としたこと、を特徴とする。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記信号入力部及び前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る磁界プローブ又は電界プローブであり、前記磁界プローブを介して前記絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の前記磁界プローブ又は電界プローブを介して出力可能としたこと、を特徴とする。
【0020】
請求項11に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記信号入力部は、前記複数の導電板を介して前記直流電源から供給された直流電流に、通信信号を重畳して伝送し、前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して他の前記導電板に至る接続端子であり、前記導電板を介して供給された電流と、当該電流に重畳された通信信号との両方を、前記接続端子を介して取得可能としたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、電力通信パネルを敷設するだけで、面状の給電通信対象平面を形成することができ、広範な領域にも容易に電力供給を行なうことができる。
また、平坦状の電力通信パネルを並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。
特に、外面に配置された導電板の少なくとも1枚を接地極とすることで、この導電板が居室等の人の作業空間に近接するように電力通信パネルを配置することで、人がこの導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
また特に、絶縁層を通信信号を伝播するための通信路として使用可能としたので、特別な構成を用いることなく、絶縁層によってカバーされた広範な給電通信対象平面に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、電界プローブを介して絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の電界プローブを介して出力可能としたので、絶縁層を電界の伝播路として利用でき、広範な給電通信対象平面に任意の経路で通信ラインを容易に構築できる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、磁界プローブを介して絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の磁界プローブを介して出力可能としたので、絶縁層を磁界の伝播路として利用でき、広範な給電通信対象平面に任意の経路で通信ラインを容易に構築できる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、電力通信パネルを敷設するだけで、面状の給電通信対象平面を形成することができ、広範な領域にも容易に電力供給を行なうことができる。
また、平坦状の電力通信パネルを並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。
特に、外面に配置された導電板の少なくとも1枚を接地極とすることで、この導電板が居室等の人の作業空間に近接するように電力通信パネルを配置することで、人がこの導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
また特に、直流電流に通信信号を重畳して伝送可能としたので、特別な構成を用いることなく、導電板によってカバーされた広範な給電通信対象平面に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、電流と通信信号との両方を接続端子によって取得可能としたので、接続端子によって電力取出部と信号出力部の両方を兼ねることができ、電力供給及び通信を一層簡易な構成で行うことができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、電力通信パネルの外面に配置される導電板の全てを接地極としているので、人が電力通信パネルのいずれの外面に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を一層高めることができる。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、陽極側の導電板を絶縁層及び接地極側の導電板にて完全に囲繞することで、陽極側の導電板を流れるプラス電流に起因するノイズが電力通信パネルの外部に漏洩しないようにシールドすることができ、通信環境を高めることができる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、電力通信パネルを敷設して面状の給電通信対象平面を形成し、電力供給部及び電力取出部を介して電力供給を行うことができると共に、信号入力部及び信号出力部を介して通信を行うことができ、電力供給及び通信の両方を行うことができるので、広範な領域にも容易に電力供給を行なうことができる。
また、平坦状の電力通信パネルを並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。
特に、外面に配置された導電板の少なくとも1枚を接地極とすることで、この導電板が居室等の人の作業空間に近接するように電力通信パネルを配置することで、人がこの導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、電界プローブを介して絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の電界プローブを介して出力可能としたので、絶縁層を電界の伝播路として利用でき、広範な給電通信対象平面に任意の経路で通信ラインを容易に構築できる。
【0030】
請求項10に係る発明によれば、磁界プローブを介して絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の磁界プローブを介して出力可能としたので、絶縁層を磁界の伝播路として利用でき、広範な給電通信対象平面に任意の経路で通信ラインを容易に構築できる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、直流電流に通信信号を重畳して伝送可能としたので、特別な構成を用いることなく、導電板によってカバーされた広範な給電通信対象平面に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、この発明の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0033】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る電力通信パネル及び給電通信システムは、一般住宅やオフィス等の任意空間における電力供給を行うためのものである。この空間は、室内に限定されず室外であってもよく、また建屋に限定されずに電車や飛行機の如き乗り物の内部空間を含む。以下では、このように電力通信パネル又は給電通信システムが利用される3次元空間を「給電通信対象空間」と称すると共に、この給電通信対象空間を区画する各平面のうち、電力や通信信号を供給するための平面を「給電通信対象平面」、それ以外の平面を「給電通信非対象平面」と称する。給電通信対象平面は、例えば、給電通信対象空間を区画する床、壁、あるいは、天井の全領域や、あるいはこれら領域のうちの一部(例えば、床面のうち、四周の周縁部のみを除外した中央領域)である。
【0034】
電力通信パネルは、概略的には、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成されている。ここで、導電板とは、従来のような細幅の導体ではなく、広幅のパネル体であって、広範な面積をカバーする。このことにより、広範な給電通信対象平面において容易に電力供給や通信を行なうことができる。ただし、給電通信対象平面の全てを1枚の電力通信パネルで覆う必要はなく、複数の電力通信パネルを並設すると共に相互に連結してもよい。この電力通信パネルは、給電通信対象平面に応じた平面形状、例えば方形状や円形状として形成可能である。
【0035】
この電力通信パネルは、必要に応じて支持体によって支持される。支持体は、給電通信対象空間を他の空間から区画するものであって、電力通信パネルを支持し得る任意の構造体を含み、例えば、床部、壁部、あるいは、天井を含む。この支持体としては、電力通信パネルを支持する支持面を平面とした平面構造体の他、桟構造のように非平面を介して電力通信パネルを不連続的に支持するものを含む。ただし、電力通信パネルは、必ずしも支持体によって支持されなくてもよく、例えば自立させた状態で使用してもよい。
【0036】
このような構成において、各実施の形態に共通の基本的特徴の一つは、電力通信パネルの外面に配置された複数の導電板のうち、少なくとも一方の導電板を接地極とするように、複数の導電板を直流電源に接続可能とした点にある。例えば、給電通信対象空間を区画する支持体によって電力通信パネルを支持する構造の場合、支持体に近接する側の導電板を陽極、この陽極と対向する側の導電板を接地極とする。この場合、給電通信対象空間に居る人間に対しては、接地極の導電板が近接することになり、人間が導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができるので、人の安全性を確保することが可能になる。なお、人体に限らず、ペットや家畜の如き人間以外の生物がいる側を基準に、接地極側とする導電板の配置位置を決定してもよい。
【0037】
また、各実施の形態に共通の基本的特徴の他の一つは、電力通信パネルを介して、電力に加えて通信信号を供給する点にある。この通信形態としては、1)絶縁層を用いた電界変化による通信(以下、「電界通信」)、2)絶縁層を用いた磁界変化による通信(以下、「磁界通信」)、3)導電板を用いたPLCによる通信(以下、「PLC通信」)、の3形態がある。以下、このような電力通信パネル及び給電通信システムを実現する各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0038】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る電力通信パネル及び給電通信システムの各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0039】
〔実施の形態1〕
まず、本発明の実施の形態1について説明する。この形態は、最も基本的な構造の電力通信パネルを支持体にて支持した形態であって、絶縁層を用いた電界変化による通信を行う形態である。
【0040】
(給電通信システムの全体構成)
図1は本実施の形態1に係る給電通信システムを適用した居室の斜視図、図2は図1の要部平面図(仕上げ材4を除く)、図3は図1の電力通信パネル周辺の縦断面図である。これら図1から図3に示すように、給電通信システムは、建屋内の居室1の床部2の上面に、複数の電力通信パネル10を並設して構成されている。ここでは、居室1の内部領域が、上述した給電通信対象空間に該当する。
【0041】
床部2は、電力通信パネル10を支持する支持体であり、例えば鉄筋コンクリート造の床スラブとして構成されており、その上面を平滑状の水平面とした面構造体である。この床部2の上面の略全面には絶縁シート3が敷設されており、この絶縁シート3によって、床部2と電力通信パネル10とが相互に絶縁されている。また、電力通信パネル10の上面には、フロアタイルやタイルカーペット等の仕上げ材4が敷設されており、電力通信パネル10が居室1に直接的には露出しないようにカバーされている。このように構成される平面方形状の床部2のうち、本実施の形態では、図2に示すように、一部の領域のみを給電通信対象平面5としており、その他の周縁部を給電通信非対象平面6としている。
【0042】
給電通信対象平面5においては、複数の電力通信パネル10を並設することでその上面に連続する平坦な床面が形成されており、床面に各種の装置や家具を配置することができる。各電力通信パネル10は、床部2の上面に敷設されており、隣接する他の電力通信パネル10と相互に接続されている。一方、給電通信非対象平面6においては、床部2を単に露出状としてもよいが、ここでは電力通信パネル10と略同一の厚みを有する床構成パネル7を配置することで、電力通信パネル10と床構成パネル7との上面を相互に略面一状として、平坦な床面を構成している。床構成パネル7は、例えば樹脂や木材にて形成された板状体である。
【0043】
ここでは、図3に示すように、電力通信パネル10には、電力供給部14及び電力取出部15が接続されている。電力供給部14は、電力通信パネル10に対して直流電流を供給するための直流電流入力手段であり、電力取出部15は、電力通信パネル10から直流電流を取得して任意の負荷100に供給するための直流電流出力手段である。例えば、複数枚の電力通信パネル10を並設してこれらを相互に通電可能に接続した場合には、いずれか1枚の電力通信パネル10にのみ電力供給部14を接続し、他の電力通信パネル10に対して負荷100に応じた任意の数だけ電力取出部15を設けて電力を複数個所で取得してもよい。あるいは、各々の電力通信パネル10に対して、1組の電力供給部14及び電力取出部15を設けてもよい。これら電力供給部14及び電力取出部15の構成の詳細については後述する。
【0044】
また、電力通信パネル10には、信号入力部30及び信号出力部31が接続されている。信号入力部30は、電力通信パネル10に対して通信信号を入力するための通信信号入力手段であり、信号出力部31は、電力通信パネル10から通信信号を取得して任意の通信機器に供給するための通信信号出力手段である。これら信号入力部30及び信号出力部31は、複数の電力通信パネル10に対してそれぞれ任意の数だけ設けることができ、例えば、1つの信号入力部30から入力された通信信号を複数の信号出力部31の各々から出力したり、複数の信号入力部30から入力された通信信号を1つの信号出力部31から出力することができる。複数の通信信号を通信する場合には、例えば公知の通信プロトコルに準じた通信を行ったり、通信信号に識別情報を付加することで、各通信信号を相互に識別することができる。これら信号入力部30及び信号出力部31の構成の詳細については後述する。
【0045】
(電力通信パネル10の構成)
次に、各電力通信パネル10の構成の詳細について説明する。図4は、電力通信パネル10の斜視図である。電力通信パネル10は、平面方形状に形成されており、複数(ここでは2枚)の導電板11、12と、これら複数の導電板11、12の相互間に設けられた絶縁層13とを、相互に重畳状に配置して構成されている。これら導電板11と導電板12とは、例えば接着の如き任意の固定方法によって相互に固定されており、全体として1枚の電力通信パネル10が構成されている。
【0046】
各導電板11、12は、金属等の導電体から形成された板状体である。これら導電板11、12の具体的な材質や厚みは、所望の強度や供給電力等を考慮して決定することができる。
【0047】
絶縁層13は、導電板11、12を相互に絶縁することによってこれら相互間における短絡を防止すると共に、通信信号を伝播させる導波管として機能する。この絶縁層13は、導電板11、12と略同一の平面形状に形成され、これら導電板11、12の相互間のほぼ全域に設けられている。この絶縁層13の具体的な材質や厚みは、所望の絶縁性や導波性を考慮して決定することができ、例えば、ポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂、マイカやガラス繊維などの無機材料、あるいは、磁器を用いることができる。
【0048】
(電力供給システムの構成)
次に、この電力通信パネル10に対して電力供給を行うと共に、この電力通信パネル10から電力を取得するための電力供給システムについて説明する。図5は電力供給システムを概念的に示す縦断面図、図6は電力供給システムを概念的に示す斜視図である。
【0049】
まず、電力供給部14について説明する。電力供給部14は、直流電源14a、陽極側供給線14b、及び、接地極側供給線14cを備える。
【0050】
直流電源14aは、電力通信パネル10に対して直流電力を供給するための電源手段であり、例えば、蓄電池や、商用交流電源を直流変換して供給する直流安定化電源を用いて構成される。この直流電源14aは、電力通信パネル10の近傍における任意の位置、例えば、居室1の内部や、居室1に隣接する配電室に設置されており、その負極を接地(GND)されている。
【0051】
陽極側供給線14bは、支持体である床部2に近接する導電板12が陽極(非接地極)となるように当該導電板12に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板12の側面や端面に接続されると共に、その他端を直流電源14aの陽極に接続されている。
【0052】
接地極側供給線14cは、導電板12に対向配置された導電板(電力通信パネル10の外側に配置された導電板であって、給電通信対象空間に最も近接する位置に配置された導電板)11が接地極となるように当該導電板11に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板11の側面や端面に接続されると共に、その他端を接地されている。
【0053】
次に、電力取出部15について説明する。この電力取出部15は、電力通信パネル10から電力を取り出して任意の負荷100に供給するための電力取出手段であり、陽極側取出線15a及び接地極側取出線15bを備える。
【0054】
陽極側取出線15aは、陽極側の導電板12と負荷100とを相互に接続するものであり、その一端を導電板12の内面に接続されると共に、その他端を負荷100の陽極に接続されている。より具体的には、仕上げ材4、接地極側の導電板11、及び、絶縁層13には、相互に連通する引出孔15cが形成されており、この引出孔15cを介して陽極側取出線15aが給電通信対象空間側に引き出されて、負荷100に接続されている。
【0055】
接地極側取出線15bは、接地極側の導電板11と負荷100とを相互に接続するものであり、具体的には、その一端を接地極側の導電板11の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陰極に接続されている。なお実際には、これら陽極側取出線15a及び接地極側取出線15bと負荷100との間に、必要に応じて図示しない整流装置を設けることができる。また、負荷100が直流機器の場合には電力取出部15をそのまま当該直流機器に接続することができるが、負荷100が交流機器の場合には公知の直流/交流変換アダプタを介して当該交流機器に交流電流を供給することができる。
【0056】
次に、このように構成された電力供給システムの機能について、その作用・効果を交えつつ説明する。この電力供給システムでは、直流電源14aの陽極、陽極側供給線14b、陽極側の導電板12、陽極側取出線15a、負荷100、接地極側取出線15b、接地極側の導電板11、接地極側供給線14c、及び、接地面に順次至る直流回路が形成され、負荷100に対して直流電力を供給することができる。
【0057】
このように交流電力ではなく直流電力を供給することとしたのは、電力通信パネル10は巨大なコンデンサと回路上等価であるため、このコンデンサの容量が大きくなるとこれに反比例するインピーダンスが小さくなり、交流電流を流すことが困難だからである。また、直流電流を導電板11、12の如き平面導体に流した場合には、図6に矢印で示すように、直流電流が導電板11、12に沿って面状に広がり、電圧降下を小さくできるので、高効率な送電を行うことができる。
【0058】
また、上述のように支持体である床部2に近接する導電板12を陽極側とすることで、給電通信対象空間に近接する側の導電板11を接地極側としたので、この導電板11に人が直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。なお、さらに絶縁性を高めるためには、導電板11と仕上げ材4との間に図1の絶縁シート3を敷設してもよい。
【0059】
さらに、引出孔15cを介して陽極側取出線15aを給電通信対象空間に引き出しているので、居室1側で使用する負荷100に対して陽極側取出線15aや接地極側取出線15bを容易に接続でき、導電板12に床部2の側からアクセスする必要がなくなるので、電力使用が一層容易である。
【0060】
(電力供給システムの構成−接続構造1)
次に、電力通信パネル10に対して直流電源や負荷100を接続するための接続構造について、より詳細に説明する。図7は電力通信パネル10を接続端子と共に示す縦断面図、図8は図7の要部拡大図である。図7に示すように、電力通信パネル10の複数位置には接続端子20が取付けられている。なお、以下は電力通信パネル10に対する負荷100の接続構造として説明するが、この構造は、電力通信パネル10に対する直流電源14aの接続構造としても同様に適用することができる。
【0061】
この接続端子20は、図8に示すように、円筒状の外部電極20aと、棒状の内部電極20bと、これら外部電極20aと内部電極20bを絶縁する円筒状の絶縁層20cとを、相互に同心状に組み合わせて構成されている。内部電極20bは、陽極側の電極であり、接地極側の導電板11及び絶縁層13を貫通して陽極側の導電板12に至る長さに形成されている。外部電極20aは、接地極側の電極であり、内部電極20bよりも短く形成され、内部電極20bと共に導電板11に貫通される。これら外部電極20aと内部電極20bとは、導電板11や絶縁層13に対する差込みが容易なように、先鋭状に形成されている。
【0062】
このような構成において、電力通信パネル10における電力を取得したい任意位置に接続端子20を上方から挿入することで、図8に示すように、引出孔15cが自動的に形成されると同時に、内部電極20bを陽極の導電板12に接触させると共に、外部電極20aを接地極の導電板11に接触させることができる。そして、内部電極20bには陽極側取出線15aを接続すると共に、外部電極20aには接地極側取出線15bを接続し、これら陽極側取出線15a及び接地極側取出線15bを図5のように負荷100に接続することで、当該負荷100に電力を供給できる。
【0063】
(電力供給システムの構成−接続構造2)
次に、接続構造の他の例について説明する。図9は電力通信パネル10を他の例に係る接続端子と共に示す縦断面図、図10は図9の要部拡大図である(図9から図14、図16、18,21、28、29、30、31、34においては仕上げ材4を省略して示す)。図9に示すように、電力通信パネル10の複数位置には接続孔21が形成されており、この接続孔21の全部又は任意の一部に接続端子22が取付けられている。
【0064】
接続端子22は、図10に拡大して示すように、外部電極22a、内部電極22b及び絶縁層22cを同心状に配置して構成されており、外部電極22aと内部電極22bとは非先鋭状に形成されていると共に、外部電極22aには円環状の接触部22dが一体に設けられている。接続孔21は、接続端子22の外形に略適合した円筒状の開口部であり、接地極側の導電板11から絶縁層13を介して陽極側の導電板12に至るように形成されている。この接続孔21は、例えば電力通信パネル10の製造工場において予め穿設しておくことができる。
【0065】
このような構成において、電力通信パネル10を床部2に敷設した後の任意のタイミングで、ユーザが、電力を取得したい任意位置に近い接続孔21に接続端子22を差し込む。この差し込み後の状態においては、図10の左側に示すように、外部電極22aの接触部22dが接地極側の導電板11の上面に当接すると共に、内部電極22bの先端が陽極側の導電板12に接触するので、当該接続端子22を介して電力取得が可能になる。また、電力取得が不要になった場合には、図10の右側に示すように、接続孔21から接続端子22を抜けばよい。
【0066】
ここで、接続端子22を差し込んだ状態において、外部電極22aの接触部22dと導電板11とを相互に一層確実に接続するため、図11に示すように、円環状の導電性シール23を接触部22dから導電板11に至って架け渡すように貼付してもよい。あるいは、導電板11と接触部22dとの相互の接触面における酸化膜を紙ヤスリ等で取り除いた後、当該接触面に酸化皮膜付着防止グリース等を塗って、導電性を向上及び持続させてもよい。
【0067】
また、使用していない接続孔21は、図12に示すように、導電性カバー24によって塞いでもよい。この導電性カバー24は、特許請求の範囲における接続孔カバーに対応するもので、導電板11に設けた開口部と略同一形状の円盤状に形成されている。この導電性カバー24にて接続孔21を塞ぐことで、接続孔21を介して陽極側の導電板11に不用意に接触することを防止できると共に、接続孔21への埃や水等の侵入を防止でき、さらには電力通信パネル10の上面を平坦状に維持しておくことができる。なお、導電板11と導電性カバー24との相互の導通を一層確実にするため、導電性カバー24から導電板11に至る円盤状の導電性シール25を貼付してもよい。なお、未使用の接続孔21における導通を遮断しても問題ない場合には、導電性カバー24や導電性シール25に代えて、導電性のない素材にてカバーやシールを構成してもよい。
【0068】
あるいは、図13に示すように、接続孔21に対応する側面T字状の絶縁体26を用いて、未使用の接続孔21を塞いでもよく、この場合には接続孔21を一層確実に塞ぐことができる。さらには、水の浸入を防ぐ為のグリースを接続孔21の周囲に塗布してもよい。
【0069】
(電力供給システムの構成−接続構造3)
次に、接続構造の他の例について説明する。図14は電力通信パネル10を他の例に係る接続端子と共に示す縦断面図である。この図14の左側に示すように、接続端子27は、外部電極27a、内部電極27b及び絶縁層27cを備え、接続端子22とほぼ同様に構成されている。ここで、外部電極27aの接触部27dから導電板11に至る導電性の取付ネジ28がネジ込まれている。この構造では、取付ネジ28の締結力によって接触部27dを導電板11に一層確実に接触させることができるので、図11の如き導電性シール23を省略することができる。あるいは、図14の右側に示すように、導電板11の全体又は接続端子27を取付ける所定箇所のみをネジ孔27dが形成可能な厚みとし、この部分を介して取付ネジ28をネジ込んでもよい。
【0070】
(通信システムの構成−電界通信)
次に、この電力通信パネル10に対して通信信号を供給すると共に、この電力通信パネル10から通信信号を取得するための通信システムについて説明する。まず、電界通信を行う場合について説明する。図15は通信システムを概念的に示す縦断面図、図16は通信システムの要部縦断面図である。
【0071】
図15に示すように、電力通信パネル10の任意の位置には、信号入力部30又は信号出力部31として機能する複数の電界プローブ32が接続されている。各電界プローブ32は、図16に示すように、外部電極32a、内部電極32b、及び、これらの相互間に配置された絶縁層32cを、相互に同芯状に配置した同軸プローブとして構成されている。この電界プローブ32の先端部は、電力通信パネル10の任意の位置に上方から差し込まれることによって、接地極側の導電板11を貫通して絶縁層13の内部に至っている。より具体的には、電界プローブ32の先端部は、伝播される電波の電界方向(電波がTE10波の場合には、絶縁層の長手方向に直交する方向であり、図15の矢印方向)に沿うように、かつ、所定寸法L=λ/4(ここでλは電波の波長)だけ突出するように配置されている。
【0072】
このような構成において、光回線終端装置(Optical Network Unit)の如き図示しない任意の信号供給源から出力されたアナログ通信信号が、いずれか一部の電界プローブ32を介して電界変化として絶縁層13に供給される。実際には、電波を遮断周波数以上の周波数で伝播させる必要があるため、必要な周波数変換を行う変換装置を介して電波が供給される。このような伝播された電波は、他の電界プローブ32又は後述する磁界プローブ33を介して取得され、所定の通信機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に入力される。
【0073】
(通信システムの構成−磁界通信)
次に、磁界通信を行う場合について説明する。図17は通信システムを概念的に示す縦断面図、図18は通信システムの要部縦断面図である。図17に示すように、電力通信パネル10の任意の位置には、信号入力部30又は信号出力部31として機能する複数の磁界プローブ33が接続されている。各磁界プローブ33は、図18に示すように、円環状のいわゆるループアンテナとして構成されている。この磁界プローブ33の先端部は、電力通信パネル10の任意の位置に上方から差し込まれることによって、接地極側の導電板11を貫通して絶縁層13の内部に至っている。具体的には、磁界プローブ33の先端部は、伝播される電波の磁界方向(電波がTE10波の場合には、絶縁層の長手方向に沿った方向であり、図17の矢印方向)に対してループ面が直交するように配置されている。
【0074】
このような構成において、光回線終端装置の如き図示しない任意の信号供給源から出力された通信信号が、いずれか一部の磁界プローブ33を介して磁界変化として絶縁層13に供給される。この磁界変化は絶縁層13を介して伝播され、他の磁界プローブ33又は上述した電界プローブ32を介して取得され、所定の通信機器に入力される。
【0075】
(通信システムの構成−PLC通信)
次に、PLC通信を行う場合について説明する。このPLC通信では、電力供給部14が信号入力部30の一部を兼ねると共に、電力取出部15が信号出力部31の一部を兼ねる。図19は電力供給部周辺の要部縦断面図、図20は電力取出部周辺の要部縦断面図である。図19に示すように、電力通信パネル10の電力供給部14の前段側にはモデム34が接続されており、光ファイバ35を介して送信されたデジタル通信信号が、モデム34にて数十MHzの高周波のアナログ通信信号に変換された後、信号線36a、36bを介して導電板11、12に供給されることで直流電流に重畳され、この導電板11、12を介して伝播される。なお、図19には、重畳前の直流信号、重畳前の通信信号、重畳後の直流信号及び通信信号の波形をそれぞれ方形枠内に示す。
【0076】
一方、図20に示す電力取出部15は、図8と同様の接続端子20を備えて構成されており、この接続端子20から信号線37a、37bが引き出されている。このうち、陽極側の信号線37aの後段には信号分離フィルタ38が接続されている。この信号分離フィルタ38は、直流電流から信号成分を分離するものであり、例えばコンデンサを含んで構成されたハイパスフィルタである。この信号分離フィルタ38にて分離されたアナログ通信信号が、モデム39にてデジタル通信信号に変換されて図示しない通信機器に出力される。なお、ここでは接続端子20を用いているが、図11、14の接続端子22、27を用いてもよい。
【0077】
(電力通信パネル10の接続構造)
次に、電力通信パネル10を相互に接続するための接続構造について説明する。図21は、接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は電力通信パネル10の付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す。
【0078】
図21(a)に示すように、相互に接続される2枚の電力通信パネル10は、それぞれの接続側の端部を傾斜状に加工されている。より具体的には、下側の導電板12のみが相手方の電力通信パネル10に向けて突出され、絶縁層13は上方に至るに伴って相手方の電力通信パネル10から遠ざかるように傾斜し、上側の導電板11は絶縁層13の傾斜上端位置よりさらに相手方の電力通信パネル10から遠ざかる位置に配置されている。そして、これら2枚の電力通信パネル10を並設することで、これら2枚の電力通信パネル10の相互間には断面略V字状の空間部10aが形成される。
【0079】
このような状態において、下側の導電板12を所定方法(例えば、溶接、あるいは、導電性部材を用いたピン留めやテープ留め)にて相互に接続して図21(b)の状態とすることで、下側の導電板12を相互に導通可能とする。そして、連結部29を上方から空間部10aに挿入して図21(c)の状態とする。この連結部29は、導電部29aと絶縁部29bとから構成され、全体として、空間部10aに略対応する断面略V字状に形成されている。
【0080】
その後、上側の導電板11と連結部29の導電部29aとを溶接等の任意の方法にて相互に連結し、あるいは、導電性のシールをこれら上側の導電板11及び導電部29aに架け渡すように貼付すことにより、導電部29aを介して上側の導電板11を相互に導通可能に接続すると共に、絶縁部29bを介して絶縁層13を相互に電界又は磁界を伝播可能に接続する。これにて接続を終了する。なお、図21には一断面のみを示しているが、本接続構造は、電力通信パネル10の接続側の側辺の全長に渡って適用することができ、連結部29は当該接続側の側辺の全長に対応した長手部材として構成することができる。
【0081】
(実施の形態1の効果)
このような構成によれば、電力通信パネル10を敷設するだけで、面状の給電通信対象平面5を形成することができ、広範な領域にも容易に電力供給を行なうことができる。特に、平坦状の電力通信パネル10を並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。
【0082】
また、床部2に近接する導電板12を陽極とし、給電通信対象空間に近接する側の導電板11を接地極側としたので、人が導電板11に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
【0083】
さらに、電力通信パネル10の任意の位置に対して接続端子20、22、27を取付けることで電力の供給や取得を行うことができるので、広範な給電通信対象平面5に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。
【0084】
さらにまた、電力通信パネル10の任意の位置に対して電界プローブ32や磁界プローブ33を取付け、絶縁層13を導波管として機能させて電界又は磁界を伝播させることができる。あるいは、電流に通信信号を重畳して導電板11、12を介して伝播できる。従って、広範な給電通信対象平面5に任意の経路で通信ラインを容易に構築でき、通信の利便性を高めることができ、電力通信パネル10を通信パネルとしても利用できる。
【0085】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、桟構造の支持体にて電力通信パネルを支持した形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0086】
(給電通信システムの全体構成)
図22は、本実施の形態2に係る給電通信システムの縦断面図である。この図22に示すように、給電通信システムは、建屋内の居室1の天井8に、電力通信パネル40を敷設して構成されている。
【0087】
この天井8は、いわゆる吊天井であり、複数の野縁(横桟材、下地材)8aと、これら野縁8aを連結するものであって当該野縁8aと直交する方向に沿って所定間隔で配置された野縁受け8bと、天井8を吊り下げ固定する吊木8cとを備えて構成されている。ここで、野縁8aは所定間隔で並設されており、これら野縁8aの下面には断続的な非平滑面が形成されていて、この非平滑面に電力通信パネル40が任意の固定方法にて固定されている。この電力通信パネル40は、導電板41、42及びこれらの相互に配置された絶縁層43から構成されている。
【0088】
このような構造において、建築工事や電気工事の作業員が天井8の上方に入った場合、野縁8aと野縁受け8bの相互間から電力通信パネル40に触れる可能性がある。このため、本実施の形態2では、支持体である天井8に近接する側の導電板41を接地極側とすることで、作業員等の感電の危険性を排除すると共に、電力通信パネル40の上面に絶縁シート3を敷設してその安全性を一層高めている。
【0089】
一方、天井8の下方側の導電板42を陽極側としているが、これは、天井8を人が容易に接触できない高さに設けているため、この導電板42を陽極としても当該導電板42に人が触れる可能性が少ないことを前提としている。なお、この導電板42の下面には仕上げ材4が貼付されているが、これら導電板42と仕上げ材4との間に絶縁シート3を敷設したり、仕上げ材4自体に絶縁性を持たせてもよい。この天井8には、照明装置等の負荷100が接続される。
【0090】
(電力供給システムの構成)
次に、この電力通信パネル40に対する電力供給システムについて説明する。図23は電力供給システムを概念的に示す縦断面図である。
【0091】
電力供給部14の陽極側供給線14bは、導電板42が陽極極となるように当該導電板42に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板42に接続されると共に、その他端を直流電源14aの陽極に接続されている。接地極側供給線14cは、天井8に近接する導電板41が接地極となるように当該導電板41に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板41に接続されると共に、その他端を接地面に接続されている。
【0092】
また、電力取出部15の陽極側取出線15aは、その一端を導電板42の下面に接続されると共に、その他端を負荷100の陽極に接続されている。接地極側取出線15bは、その一端を導電板41の下面に接続されると共に、その他端を負荷100の陰極に接続されている。具体的には、陽極側の導電板42及び絶縁層43には、相互に連通する引出孔15cが形成されており、この引出孔15cを介して接地極側取出線15bが給電通信対象空間側に引き出されて、負荷100に接続されている。ただし、天井8の上方側に負荷100を設置する場合には、実施の形態1と同様に、接地極側の導電板の方に陽極側供給線14b及び接地極側供給線14cを引き出すようにしてもよい。
【0093】
(通信システムの構成)
電力通信パネルに対する通信システムは、実施の形態1と同様に構成することができ、例えば、図16の電界プローブ32や図18の磁界プローブ33を電力通信パネル40の任意の位置に差し込むことにより、絶縁層43を介して通信信号を電界変化又は磁界変化として伝播できる。あるいは、図19,20と同様に、導電板41、42を介して通信信号を直流電流に重畳してPLC方式にて伝送してもよい。なお、本実施の形態のように、電力通信パネル40の両面の少なくとも一部が外部に露出している場合、電界プローブ32や磁界プローブ33を接地極側の導電板41から差し込んでもよいが、感電等の危険性を回避できる場合には陽極側の導電板42から差し込んでもよく、電力通信パネル40のいずれの面からも通信信号の入力や出力を行うことができる。
【0094】
(実施の形態2の効果)
このように支持体側の導電板41を接地極側とすると共に、他方の導電板42を陽極側としてもよく、この場合には支持体側に居る人体の安全性を確保しつつ、支持体と反対側の負荷100に対して電力を供給することができる。
【0095】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、電力通信パネルを半密閉型に構成した形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0096】
(電力通信パネルの構成)
図24は、本実施の形態3に係る給電通信システムの縦断面図である。この図24に示すように、給電通信システムは、実施の形態1と同様に構成された床部2及び絶縁シート3の上面に、複数の電力通信パネル50を並設して構成されている。
【0097】
各電力通信パネル50は、一対の導電板51、52と、これら一対の導電板51、52の相互間に配置された導電板53と、導電板51と導電板53との相互間に配置された絶縁層54と、導電板52と導電板53との相互間に配置された絶縁層55とを備えて構成されている。また、導電板53の側方には必要に応じて絶縁層56が配置されており、これら絶縁層54〜56によって導電板53が完全に囲繞されて外部から絶縁されることで、当該導電板53の端部が電力供給パネル50の端面に対して非露出状とされている。なお、図25に示すように、隣接する複数の電力通信パネル50の導電板53を後述する接続構造を用いることで相互に接続してもよい。
【0098】
(電力供給システムの構成)
次に、電力供給システムについて説明する。図26は電力供給システムを概念的に示す縦断面図である。電力供給部14の接地極側供給線14cは、電力通信パネル50の外側に配置される一対の導電板51、52が接地極になるように当該導電板51、52に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板51、52の上面や端面に接続されると共に、その他端を接地面に接続されている。陽極側供給線14bは、絶縁層54、55によって囲繞された導電板53が陽極になるように当該導電板53に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板53の上面や端面に接続されると共に、その他端を直流電源14aの陽極に接続されている。なお、陽極側供給線14bを導電板53の端面に接続する場合には、絶縁層56に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して陽極側供給線14bを引き込んでもよい。
【0099】
また、電力取出部15の陽極側取出線15aは、陽極側の導電板53と負荷100とを相互に接続するものであり、その一端を導電板53の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陽極に接続されている。具体的には、接地極側の導電板51及び絶縁層54には、相互に連通するものであって陽極側の導電板53に至る引出孔15cが形成されており、この引出孔15cを介して陽極側取出線15aが給電通信対象空間側に引き出されて、負荷100に接続されている。接地極側取出線15bは、接地極側の導電板51と負荷100とを相互に接続するものであり、具体的には、その一端を接地極側の導電板51の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陰極に接続されている。
【0100】
(電力供給システムの構成−接続構造)
次に、電力通信パネル50に対して負荷100を接続するための接続構造について詳細に説明する。この接続構造では、実施の形態1において図8、11、14に示したのと同様の接続端子20、22、27を用いることができる。これら図8、11、14に対応する構造を図27から図29にそれぞれ示す。ただし、本実施の形態では、接続端子20、22、27の外部電極20a、22a、27aは接地極側の導電板51に接続され、内部電極20b、22b、27bは接地極側の導電板51及び絶縁層54を貫通する引出孔15cを介して、陽極側の導電板53に接続される。
【0101】
(通信システムの構成)
電力通信パネル50に対する通信システムは、実施の形態1と同様に構成することができ、例えば、図30に示すように電界プローブ32を用いたり、図31に示すように磁界プローブ33を用いることで、絶縁層54を介して通信信号を電界変化又は磁界変化として伝播できる。なお、ここでは、これら電界プローブ32や磁界プローブ33が導電板51を貫通して絶縁層54に差し込まれている例を示しているが、電力通信パネル50の下側から当該電力通信パネル50にアクセスできる場合(例えば実施の形態2のような桟構造にて電力通信パネル50を支持した場合)には、導電板52を貫通して絶縁層55に差し込むようにしてもよい。
【0102】
また、PLC通信を行う場合には、図32に示すように、通信信号を信号線36a、36bを介して直流電流に重畳できる。また、図33に示すように、電力通信パネル50に接続した接続端子20を介して通信信号を取得することができる。ここでは、接地極側の導電板51及び陽極側の導電板53を介して通信信号を重畳伝送しているが、接地極側の導電板52及び陽極側の導電板53を用いてもよい。
【0103】
(電力通信パネル50相互の接続構造)
次に、電力通信パネル50を相互に接続するための接続構造について説明する。図34は、接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は電力通信パネル50の付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す。
【0104】
図34(a)に示すように、相互に接続される2枚の電力通信パネル50は、それぞれの接続側の端部を傾斜状に加工されている。より具体的には、下側の導電板52のみが相手方の電力通信パネル50に向けて突出され、絶縁層55、導電板53、絶縁層54の各々は上方に至るに伴って相手方の電力通信パネル50から遠ざかるように傾斜し、上側の導電板51は絶縁層54の傾斜上端位置よりさらに相手方の電力通信パネル50から遠ざかる位置に配置されている。そして、これら2枚の電力通信パネル50を並設することで、これら2枚の電力通信パネル50の相互間には断面略V字状の空間部50aが形成される。
この状態においては導電板53の端部が外部に露出されているが、例えば、導電板53の側方を絶縁層56で囲繞した電力通信パネル50を準備し、この電力通信パネル50の連結面を傾斜状に加工することで、導電板53の端部を露出させてもよい。あるいは、絶縁層56を省略して、始めから導電板53の端部を露出させた電力通信パネル50を用いてもよい。
【0105】
このような状態において、下側の導電板52を所定方法(例えば、溶接、あるいは、導電性部材を用いたピン留めやテープ留め)にて相互に接続して図34(b)の状態とすることで、下側の導電板52を相互に導通可能とする。そして、連結部57を上方から空間部50aに挿入して図34(c)の状態とする。この連結部57は、導電部57a、絶縁部57b、導電部57c、絶縁部57dを図示のように順次重合して構成され、全体として、空間部50aに略対応する断面略V字状に形成されている。特に、導電部57cの両側方には下方に突出する接続端子57eが設けられている。従って、連結部57を空間部50aに挿入すると、接続端子57eが導電板53の端部に差し込まれ、接続端子57eを介して導電板53を導電部57cに導通可能に連結することができる。
【0106】
その後、上側の導電板51と連結部57の導電部57aとを溶接等の任意の方法にて相互に連結し、あるいは、導電性のシールをこれら上側の導電板51及び導電部57aに架け渡すように貼付すことにより、導電部57aを介して上側の導電板51を相互に導通可能に接続すると共に、絶縁部57b、57dを介して絶縁層54、55を相互に電界又は磁界を伝播可能に接続する。これにて接続を終了する。
【0107】
(実施の形態3の効果)
【0108】
このような構造によれば、電力通信パネル50の外面に配置される導電板の全てを接地極としているので、人が電力通信パネル50のいずれの外面に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を一層高めることができる。
【0109】
〔実施の形態4〕
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、電力通信パネルを密閉型に構成した形態である。なお、実施の形態3と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態3で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0110】
(電力通信パネルの構成)
図35は、本実施の形態4に係る給電通信システムの縦断面図である。この図35に示すように、給電通信システムは、建屋内の居室1の床部2の上面に、複数の電力通信パネル70を並設して構成されている。
【0111】
各電力通信パネル70は、一対の導電板71、72と、これら一対の導電板71、72の相互間に配置された導電板73と、導電板71と導電板73との相互間に配置された絶縁層74と、導電板72と導電板73との相互間に配置された絶縁層75とを備えて構成されている。また、導電板73の側方には絶縁層76が配置されており、これら絶縁層74〜76によって導電板73が完全に囲繞されて外部から絶縁されることで、当該導電板73の端部が電力供給パネル70の端面に対して非露出状とされている。さらに、実施の形態3と異なり、絶縁層74〜76の四周側方にも導電板77が配置された密閉構造となっており、この導電板77を介して一対の導電板71、72が相互に導通可能に接続されている。なお、図36に示すように、隣接する複数の電力通信パネル70の導電板73を後述する接続構造を用いることで相互に接続してもよい。
【0112】
(電力供給システムの構成)
電力供給システムについては、実施の形態3と同様に、図26に示した構成や図27から図29に示した接続端子20、22、27を用いることができるので、その説明を省略する。このような電力供給システムにより、電力通信パネル70の外側に露出する導電板71、72及び側方の導電板77が接地極側、中央の導電板73が陽極側になるように電力が供給される。なお、陽極側供給線14bを導電板73の端面に接続する場合には、絶縁層76及び導電板77に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して陽極側供給線14bを引き込んでもよい。この際には、導電板77と陽極側供給線14bとの相互間に絶縁部材を設けて絶縁を確保することが好ましい。
【0113】
(通信システムの構成)
通信システムに関しては、実施の形態3と同様に、図30に示す電界プローブ32や図31に示す磁界プローブ33を用いたり、あるいは、図32、33に示したPLC通信を行うことができるので、その説明を省略する。
【0114】
(電力通信パネル70相互の接続構造)
次に、電力通信パネル70を相互に接続するための接続構造については、図34に示した接続構造を適用できるので、その説明を省略する。この場合において、例えば、導電板73の側方を絶縁層76や導電板77で囲繞した電力通信パネル70を準備し、この電力通信パネル70の連結面を傾斜状に加工することで、導電板73の端部を露出させてもよい。あるいは、絶縁層76や導電板77を省略して、始めから導電板73の端部を露出させた電力通信パネル70を用いてもよい。
【0115】
(実施の形態4の効果)
このような構成によれば、陽極側の導電板73が絶縁層74〜76及び接地極側の導電板77にて完全に囲繞されて外部に露出しないので、電力通信パネル70の安全性を一層高めることができる。
【0116】
特に、陽極側の導電板73を絶縁層74〜76及び接地極側の導電板77にて完全に囲繞することで、陽極側の導電板73を流れるプラス電流に起因するノイズが電力通信パネル70の外部に漏洩しないようにシールドすることができ、通信環境を高めることができる。
【0117】
〔実施の形態5〕
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、実施の形態4の電力通信パネルをパーテーションに組み込んだ形態である。なお、実施の形態4と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態4で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0118】
(電力通信パネルの構成)
図37は本実施の形態5に係る給電通信システムの斜視図、図38は図37の要部縦断面図である。図37に示すように、給電通信システムは、建屋内の居室1の床部2の上面に立設されたパーテーション9に、複数の電力通信パネル80を並設状に組み込んで構成されている。
【0119】
パーテーション9は、公知の構造にて構成された支持体であり、概略的には、床部2に固定されたフレーム9aの内部に、複数の方形状のパネル9bを嵌め込んで構成されている。ここで、通常のパネル9bの一部に代えて、複数の電力通信パネル80が並設されている。
【0120】
各電力通信パネル80は、図38に示すように、実施の形態4の電力通信パネル70とほぼ同様に構成されており、一対の導電板81、82と、これら一対の導電板81、82の相互間に配置された導電板83と、導電板81と導電板83との相互間に配置された絶縁層84と、導電板82と導電板83との相互間に配置された絶縁層85とを備えて構成されている。また、導電板83の側方には絶縁層86が配置されており、これら絶縁層84〜86によって導電板83が完全に囲繞されて外部から絶縁されることで、当該導電板83の端部が電力供給パネル80の端面に対して非露出状とされている。さらに、絶縁層84〜86の四周側方にも導電板87が配置された密閉構造となっており、この導電板87を介して一対の導電板81、82が相互に導通可能に接続されている。
【0121】
特に、各電力通信パネル80は、全体として横長帯状に形成されており、このことによって、パーテーション9の横方向に沿った帯状の給電通信対象平面が形成されている。また、パーテーション9の内部に配置された導電板81には、パーテーション9に対して当該電力通信パネル80を係脱自在に係止させるための係止爪81aが取付ネジ81bを介して着脱自在に取り付けられており、この係止爪81aをフレーム9aの受け部9cに係止させることで、電力通信パネル80がパーテーション9に取付けられている。
【0122】
この給電通信システムとしては、例えば、図19や図20に示した構造を用いることができる。また、電力取出構造については、実施の形態3と同様の構造を採用することができる。
【0123】
(実施の形態5の効果)
このような構成によれば、パーテーション9の如きオフィス家具の一部として電力通信パネル80を組み込むことができるので、オフィス家具から容易に電力を取得できるので、オフィス家具の利便性を向上させることができる。なお、パーテーション9以外の任意の対象物に電力通信パネル80を組み込んでもよく、例えば、居室1の壁面や机の天板に電力通信パネル80を嵌め込んでもよい。
【0124】
また、電力通信パネル80を支持体であるパーテーション9に接続するための係止爪81aを導電板81に設けたので、別途に固定手段を設ける必要がなくなり、電力通信パネル80の固定が一層容易になる。
【0125】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0126】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0127】
(各実施の形態の組合せ)
各実施の形態に示した構成は、相互に組合せることができ、例えば、各実施の形態1から4の電力通信パネル10、40、50、70、80を、同一の給電通信対象平面に混在して敷設してもよい。
【0128】
(各電力通信パネル10、40、50、70、80と支持体との関係)
上記実施の形態1から4では、支持体が床部2や天井8である場合を例示したが、例えば、壁部の側面に電力通信パネル10、40、50、70、80を配置してもよい。この場合には、実施の形態1のように、支持体(壁部)の側の導電板を陽極とすると共に、他の導電板を接地極としてもよい。あるいは、実施の形態2のように、支持体(壁部)の側の導電板を接地極とすると共に、他の導電板を陽極としてもよい。また支持体としては、必ずしも電力通信パネル10、40、50、70、80の幅広面側に配置されるものに限定されず、例えば、電力通信パネル10、40、50、70、80を床上や机上に立設した状態で支持するようなパネルスタンドであってもよい。
【0129】
(絶縁層の構成)
絶縁層は、板状体以外にも、複数の導電板の相互の絶縁性を維持できる限りにおいて任意の形状にて構成することができる。例えば、立方体状、直方体状、角棒状、あるいは、球状の如き絶縁性物質を、複数の導電板の相互間に連続的に又は断続的に配置することで、絶縁層を形成してもよい。すなわち、複数の導電板の相互間に板状の絶縁空間部が形成できればよく、この絶縁空間部の内部に絶縁性物質を必ずしも充満させる必要はない。ただし、絶縁性物質を充満させた場合には、水の浸入を防止することが可能となる点においてより好ましい。
【0130】
(陽極の導電板の端部の非露出化のための構成)
実施の形態3においては、接地極側の導電板の相互間に配置された陽極の導電板を、その側方においても絶縁層にて囲繞することで、当該陽極の導電板の端部が電力供給パネルの端面から外部に露出しないようにしている。また、実施の形態4、5においては、接地極側の導電板の相互間に配置された陽極の導電板の側方にも、接地極になる導電板を配置することで、当該陽極の導電板の端部が電力供給パネルの端面から外部に露出しないようにしている。この他にも、陽極の導電板の端部を電力供給パネルの端面から外部に露出させないための構成を採用することができ、例えば、陽極の導電板の長さ及び幅を、接地極側の導電板の長さ及び幅より短くすることで、陽極の導電板の端部を電力供給パネルの内側に位置させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
この発明は、各種の空間に電力を供給するものであり、特に、広範な給電通信対象平面に電力供給を行なうと共に、利用者の安全確保を図ることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施の形態1に係る給電通信システムを適用した居室の斜視図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】図1の電力通信パネル周辺の縦断面図である。
【図4】電力通信パネルの斜視図である。
【図5】電力供給システムを概念的に示す縦断面図である。
【図6】電力供給システムを概念的に示す斜視図である。
【図7】電力通信パネルを接続端子と共に示す縦断面図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】電力通信パネルを他の例に係る接続端子と共に示す縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】接続端子に導電性シールを貼付した状態を示す縦断面図である。
【図12】接続孔を導電性カバーにて閉鎖した状態を示す図である。
【図13】接続孔を絶縁体にて閉鎖した状態を示した図である。
【図14】電力通信パネルを他の例に係る接続端子と共に示す縦断面図である。
【図15】電界通信を行うための通信システムを概念的に示す縦断面図である。
【図16】図15の通信システムの要部縦断面図である。
【図17】磁界通信を行うための通信システムを概念的に示す縦断面図である。
【図18】図17の通信システムの要部縦断面図である。
【図19】PLC通信のための電力供給部周辺の要部縦断面図である。
【図20】PLC通信のための電力取出部周辺の要部縦断面図である。
【図21】接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は電力通信パネルの付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す図である。
【図22】実施の形態2に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図23】電力供給システムを概念的に示す縦断面図である。
【図24】実施の形態3に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図25】実施の形態3の他の例に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図26】電力供給システムを概念的に示す縦断面図である。
【図27】実施の形態3における、図8に対応する接続構造を示す図である。
【図28】実施の形態3における、図11に対応する接続構造を示す図である。
【図29】実施の形態3における、図14に対応する接続構造を示す図である。
【図30】実施の形態3における電界プローブを用いた通信システムの要部縦断面図である。
【図31】実施の形態3における磁界プローブを用いた通信システムの要部縦断面図である。
【図32】実施の形態3におけるPLC通信のための電力供給部周辺の要部縦断面図である。
【図33】実施の形態3におけるPLC通信のための電力取出部周辺の要部縦断面図である。
【図34】接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は電力通信パネルの付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す図である。
【図35】実施の形態4に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図36】実施の形態4の他の例に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図37】実施の形態5に係る給電通信システムの斜視図である。
【図38】図37の要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0133】
1 居室
2 床部
3 絶縁シート
4 仕上げ材
5 給電通信対象平面
6 給電通信非対象平面
7 床構成パネル
8 天井
8a 野縁
8b 野縁受け
8c 吊木
9 パーテーション
9a フレーム
9b パネル
9c 受け部
10、40、50、70、80 電力通信パネル
11、12、41、42、51〜53、71〜73、77、81〜83、87 導電板
13、43、54〜56、74〜76、84〜86 絶縁層
14 電力供給部
14a 直流電源
14b 陽極側供給線
14c 接地極側供給線
15 電力取出部
15a 陽極側取出線
15b 接地極側取出線
15c 引出孔
20、22、27 接続端子
20a、22a、27a 外部電極
20b、22b、27b 内部電極
20c、22c、27c 絶縁層
21 接続孔
22d、27d 接触部
23、25 導電性シール
24 導電性カバー
26 絶縁体
28、81b 取付ネジ
29、57 連結部
30 信号入力部
31 信号出力部
32 電界プローブ
33 磁界プローブ
34、39 モデム
35 光ファイバ
36a、36b、37a、37b 信号線
38 信号分離フィルタ
81a 係止爪
100 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された電力通信パネルであって、
当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板の少なくとも1枚を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、
前記絶縁層を、通信信号を伝播するための通信路としたこと、
を特徴とする電力通信パネル。
【請求項2】
当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る複数の電界プローブ又は磁界プローブを取り付け可能とし、
前記複数の電界プローブの中の一部の前記電界プローブを介して前記絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の前記電界プローブ又は前記磁界プローブを介して出力可能としたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電力通信パネル。
【請求項3】
当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る複数の磁界プローブ又は電界プローブを取り付け可能とし、
前記複数の磁界プローブの中の一部の前記磁界プローブを介して前記絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の前記磁界プローブ又は前記電界プローブを介して出力可能としたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電力通信パネル。
【請求項4】
複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された電力通信パネルであって、
当該電力通信パネルの外面に配置された導電板の少なくとも1枚を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、
前記複数の導電板を、前記直流電源から供給された直流電流に通信信号を重畳して伝送する伝送路としたこと、
を特徴とする電力通信パネル。
【請求項5】
当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して他の前記導電板に至る接続端子を取り付け可能とし、
前記導電板を介して供給された電流と、当該電流に重畳された通信信号との両方を、前記接続端子によって取得可能としたこと、
を特徴とする請求項4に記載の電力通信パネル。
【請求項6】
当該電力通信パネルの外面に配置された一対の導電板と、これら一対の導電板の相互間に配置された導電板とを備え、
前記外面に配置された前記一対の導電板の各々を、接地極とするように直流電源に接続される導電板とし、
前記一対の導電板の相互間に配置された導電板を、陽極とするように前記直流電源に接続される導電板とし、
前記接地極側の導電板の各々と前記陽極側の導電板との相互間、並びに、前記陽極側の導電板の側方に、前記絶縁パネルを設けたこと、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電力通信パネル。
【請求項7】
前記一対の接地極側の導電板の相互間の側方に、これら一対の接地極側の導電板に相互に導通する導電板を配置することにより、これら一対の接地極側の導電板と導電部材とによって囲繞される閉鎖空間部を形成し、
前記閉鎖空間部の内部に、前記絶縁パネルと、前記接地極側の導電板に対して電気的に絶縁された前記陽極側の導電板とを配置したこと、
を特徴とする請求項6に記載の電力通信パネル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力通信パネルと、
前記電力通信パネルの前記導電板に対して電力を供給する電力供給部と、
前記電力通信パネルの前記導電板から電力を取り出す電力取出部と、
前記電力通信パネルの前記絶縁層又は前記導電板に対して通信信号を供給する信号入力部と、
前記電力通信パネルの前記絶縁層又は前記導電板から通信信号を取り出す信号出力部と、
を備えたことを特徴とする給電通信システム。
【請求項9】
前記信号入力部及び前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る電界プローブ又は磁界プローブであり、
前記電界プローブを介して前記絶縁層における電界変化として入力された通信信号を、他の前記電界プローブ又は磁界プローブを介して出力可能としたこと、
を特徴とする請求項8に記載の給電通信システム。
【請求項10】
前記信号入力部及び前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して前記絶縁層に至る磁界プローブ又は電界プローブであり、
前記磁界プローブを介して前記絶縁層における磁界変化として入力された通信信号を、他の前記磁界プローブ又は電界プローブを介して出力可能としたこと、
を特徴とする請求項8に記載の給電通信システム。
【請求項11】
前記信号入力部は、前記複数の導電板を介して前記直流電源から供給された直流電流に、通信信号を重畳して伝送し、
前記信号出力部は、当該電力通信パネルの外面に配置された前記導電板を貫通して他の前記導電板に至る接続端子であり、
前記導電板を介して供給された電流と、当該電流に重畳された通信信号との両方を、前記接続端子を介して取得可能としたこと、
を特徴とする請求項8に記載の給電通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2008−282730(P2008−282730A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126982(P2007−126982)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】