説明

電力通電ワイヤー、ワイヤーグリップ、電気機器吊下装置及び電気機器吊り下げ方法

電気機器吊下装置1は、2本の電力通電ワイヤー20−1、20−2を用いて照明機器3に通電するとともに、同機器3を天井5から吊るす。各ワイヤー20の下端部は下側留具40で照明機器3の吊り部材7に連結され、上端部は上側留具100で天井5に敷設された吊りレール9に接続している。電力通電ワイヤー20は、芯線と、芯線の外周に被覆された絶縁層と、絶縁層の外周に被覆された外周線層とから構成される。芯線は、高強度・高導電性の銅合金製の素線が多数縒り合わされたものである。一方のワイヤー20−1の芯線21が接地側導線W1に導通し、他方のワイヤー20−2の芯線21が電圧側導線W2に導通する。このように、吊下装置1は、通電と吊り下げとを1本のワイヤーで兼ねるとともに、高い引っ張り強度を備えた電力通電ワイヤーを用いて電気機器を吊り下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電力通電と機器の吊り下げを1本のワイヤーで兼ねることのできる電力通電ワイヤー等に関する。また、そのような通電ワイヤーや同ワイヤーを固定するグリップを備えた電気機器吊下装置に関する。
【背景技術】
天井から照明機器を吊り下げるのに、吊り下げ紐(強度部材)と通電ケーブルを1本にまとめた吊り下げコードが使用されている。この場合、1本のコードで照明機器への通電と同機器の自重を支える吊り下げとを兼ねているため、施工が楽で、見た目がすっきりとして見栄えがよい。
このような照明機器用吊り下げコードとして、電力供給用の接地側導線と電圧側導線とが対となって並列し、両線の外側が樹脂や繊維等の絶縁層で被覆されているものがある(例えば、特開平8−129905号公報参照)。照明機器を動作させるための十分な電力を供給するため、これらの導線は導電性の高い銅等の縒線で作製されている。これらの導線は引っ張り強度が低く、数Kg以上の荷重を支えることはできないため、このような通電ワイヤーでは、一般家庭用の照明機器のような軽量なものしか吊り下げることができない。また、このワイヤーは径が約5mm以上と太く、デザイン性に富んだ照明機器の吊り下げには不向きである。
また、信号線としても使用しうる物品吊下用ワイヤーもある(例えば、特開平11−113702号公報参照)。この電力通電ワイヤーは、絵画等を吊るすとともに盗難センサとしての機能を備えている。同ワイヤーは、導電性の芯線と、芯線の外周を被覆する絶縁層と、絶縁層の外周を被覆する導線性の外周層とからなる。芯線と外周層とは、高張力線の縒線である。ワイヤーの先端では、芯線と外周層とが電気的に短絡しており、基端では、芯線と外周層は信号入力端子にはめ込まれている。このような構造によって、芯線と外周層とは閉じた回路を形成する。回路には微弱な電流が流されている。絵画等は、このワイヤーの途中に別途のグリップ等によって取り付けられる。
絵画を外そうとしてワイヤーを途中で切断すると、芯線と外周線との導通が切られ、回路が開く。回路は警報システムを備えており、回路が開くと音声や表示でワイヤーが切断されたことを知らせる。
この例のワイヤーは、絵画等の比較的重いものを吊り下げることができるが、流される電流が微弱であり、照明機器等の電気機器を作動させるための十分な量の電流を流すことはできない。
一般に、導線に電流を流すと、コンジット(導管)に誘導電流が発生し、発熱するおそれがある。しかし、接地側導線と電圧側導線とが並列して外側が樹脂や繊維等の絶縁層で被覆されている電力通電ワイヤーの場合、各導線の電流の向きが逆であり、誘導磁界を互いにキャンセルするため、コンジットが発熱するおそれはない。また、芯線と外周層、すなわち、接地側導線と電圧側導線とが二重環構造となっている場合も、芯線への通電により発生する誘導電流と、外周層への通電によって発生する誘導電流とがキャンセルされる。なお、コンジットが不良導体の場合は、誘導電流は発生しにくい。
電気機器をこのような電力通電ワイヤーを吊り下げるために、ワイヤーグリップなどが使用される。この際、電力通電ワイヤーの途中をワイヤーグリップに取り付け、このワイヤーグリップを電気機器に取り付ける。そして、ワイヤーの端末を電気機器の端末に接続し、ワイヤーの導電性芯線及び導電性外周線を電気機器のコンタクトに導通させる。
ところで、このようなワイヤーには、外周線層が、金属製の編線で作製されるものもある。編線とは、金属製の縦細線束と横細線束が交互に編み込まれたものである。このような編線は、柔軟性と、ワイヤーの長さ方向に収縮する性質を有する。しかし、このような編ワイヤーを切断すると、切断面から細線がばらけてしまう。このワイヤーの端末を処理するには、まず、切断面から外周線層をワイヤーの長さ方向にずらして(まくるように奇せて)絶縁層を露出させ、ずらされた外周線層を絶縁テープ等で絶縁層に留めておく。その後、絶縁層をニッパなどを使用して剥き、導電線を露出させる。
しかし、このようなワイヤーは柔軟性を有するため、端末処理をしたワイヤーを先端からワイヤーグリップのワイヤー通し孔に挿通しようとすると、ワイヤーがねじれたり、外周線層がよってこぶのようになると、ワイヤーを孔に挿通できない。このため、端末に終端キャップを取り付けるなどの処置が必要になる。この処置には特殊な工具が必要になり、取付に手間がかかる。そのため、ワイヤーは予め所定の長さに切断されて、端末処理されたものを使用せざるをえない。このような事情により、実際の取付現場において、ワイヤーの長さを変更することは困難であった。
一方、吊るされたワイヤーの途中に棚等を取り付ける場合に使用されるワイヤーグリップが提案されている(例えば、実公昭64−47256号公報参照)。このワイヤーグリップは、ワイヤーグリップの長さ方向にすり割溝が形成され、ワイヤーの途中をワイヤーグリップの横から挿入してグリップに固定するものである。この方式のワイヤーグリップは、外周線層が編線で作製された柔軟な電力通電ワイヤーにも適用できるが、ワイヤーを緊張させた状態で、ワイヤーグリップのすり割溝に挿通させる必要がある。外周線層が金属編線の場合は、ワイヤーを緊張させても、外周線層がずれてワイヤー通し溝に達しずらい。
ところで、近年、薄型の液晶テレビの普及や、デザイン性に富んだ建築物や店舗のディスプレイ等に好適な照明機器への適用として、電気機器を見栄えよく吊り下げる吊下装置が求められている。これらの電気機器の吊下装置は十分な強度を備える必要があり、また、電気的な安全性も要求される。
【発明の開示】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、通電と吊り下げとを1本のワイヤーで兼ねるとともに、高い引っ張り強度を備えた電力通電ワイヤーを提供することを目的とする。また、照明機器や液晶ディスプレイ、スピーカ、マイク等の重い電気機器を吊り下げることのできる吊下装置や吊下方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の電力通電ワイヤーは、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線と、該芯線の外周に被覆された絶縁層と、該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製縒線からなる外周線層と、を具備することを特徴とする。
高強度・高導電性の芯線を導線として使用することにより、比較的重い電気機器の吊り下げと通電とを一本のワイヤーで兼用できる。なお、この場合は、1台の機器の吊下げ・通電にワイヤーを2本使用し、一方のワイヤーの芯線が電圧側導線、他方のワイヤーの芯線を接地側導線とすればよい。このような高導電性の芯線を用いることにより、高出力の照明機器や液晶ディスプレイ等の電気機器を作動するための十分な量の電流を通電できる。また、この芯線は高強度であり、非磁性の金属製外周線層として引っ張り強度の高い材料を選択することにより、十分な吊り下げ強度を持つことができる。そして、このような構造により従来の接地用導線と電圧用導線が並列したものと比べて径が細くなり、施工が楽になるとともに見栄えがよくなる。
なお、外周線層は非磁性の金属製(例えば、非磁性ステンレス鋼製)であるため、外周線層が磁気シールドのような役割を果し(推定)、外部に誘導磁界が生じず、コンジットの発熱のおそれがなく安全である。
本発明の第2の電力通電ワイヤーは、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線と、該芯線の外周に被覆された絶縁層と、該絶縁層の外周に被覆された高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる外周線層と、該外周線層の外周に被覆された最外周絶縁層と、を具備することを特徴とする。
外周線層も高強度・高導電性の材料で作製することにより、1本のワイヤーで、一つの電気機器への通電と吊り下げを兼ねることができる。この場合、芯線又は外周線層を、電力供給用の接地側導線又は電圧側導線とする。こうすることにより、芯線への通電により発生する誘導電流と、外周線層への通電によって発生する誘導電流とがキャンセルされる。
本発明のワイヤーグリップは、ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、を具備し、前記内スリーブのボールセット孔が前記通し孔の孔軸方向に2段以上設けられており、各段のボールセット孔に、径の異なる複数種のボール(大ボール、小ボール)が嵌合していることを特徴とする。
内スリーブがスプリングによって付勢され、ワイヤーにかかる自重によってボールがワイヤーの外周面に押し当てられてワイヤーがグリップに固定される。そして、重量の重い電気機器を吊り下げるための十分なグリップ力を得るために、複数のボールを2段以上に設けている。すなわち、1個のボールのワイヤー外周面への押し当て力が同じとすると、ボールを複数個設けることにより、十分なグリップ力が得られるとともに、ボール1個当たりの押し当て力は小さくてすむ。このため、たとえワイヤーが柔らかい材料の絶縁層(例えば絶縁プラスチック層)を有する場合であっても、ボールの絶縁層へのくい込み量は小さい。すなわち、絶縁層の厚さが保たれて絶縁性が確保され、安全である。
本発明においては、前記ボールセット孔が前記ワイヤー通し孔に開孔する部分に、前記ボールの前記ワイヤー通し孔への過度の突出を防止するストッパ部を形成すれば、ボールのワイヤー外周面への過度のくい込みを防止でき、芯線の絶縁性を確保できる。
本発明においては、前記2段以上のボールセット孔として、3個の大ボールセット孔と3個の小ボールセット孔が、前記内スリーブの周方向に交互に振り分けて形成すれば、ボールセット孔の部分のスペースを小さくでき、グリップを小型化できる。また、大ボールと小ボールとがワイヤー外周に沿って交互に接するとともに、長さ方向にずれて接するため、ワイヤーの一ヶ所に局所的にボールからの負荷がかかることを防ぐ。
本発明の電気機器吊下装置は、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、及び、該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製縒線からなる外周線層、を有する複数の電力通電ワイヤーと、該ワイヤーの各々の下端部に接続された、電気機器の複数の吊り部材に各々連結される複数の下側留具と、該ワイヤーの各々の上端部に接続された上側留具と、を具備することを特徴とする。
ワイヤーを2本使用し、一方のワイヤーの芯線と接地側導線、他方のワイヤーの芯線を電圧側導線とすれば、2本のワイヤーで電気機器の吊り下げと通電とを行うことができる。ワイヤーは十分な強度を有するため、重量の重い電気機器を安全に吊り下げることができる。
本発明においては、前記複数の電力通電ワイヤーの内の少なくとも2本の下端部から前記電気機器のターミナルに前記ワイヤーの芯線が接続され、該ワイヤーの上端部から電路に前記ワイヤーの芯線が接続されることとすれば、ワイヤーの上下端を見栄えよく処理できる。
本発明の他の態様の電気機器吊下装置は、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、該絶縁層の外周に被覆された高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる外周線層、及び、該外周線層の外周に被覆された最外周絶縁層、を有する電力通電ワイヤーと、該ワイヤーの下端部に接続された、電気機器の吊り部材に連結される下側留具と、該ワイヤーの上端部に接続された上側留具と、を具備することを特徴とする。
使用電力の少ない電気機器の場合に、1本のワイヤーで通電と吊り下げとを行うことができる。なお、外周線層の外周に被覆された最外周絶縁層をさらに具備すれば、使用電力の比較的大きい電気機器も1本のワイヤーで通電と吊り下げとを行うことができる。
本発明においては、前記電力通電ワイヤーの下端部から前記電気機器のターミナルに前記ワイヤーの芯線及び外周線層が接続され、該ワイヤーの上端部から電路に前記ワイヤーの外周線層及び芯線が接続されることが好ましい。
本発明の他の態様のワイヤーグリップは、ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、を具備するワイヤーグリップであって、前記内スリーブ及び前記外スリーブに、前記ワイヤー通し孔に連通するすり割溝が形成されており、ワイヤーを該すり割溝に押し込む治具が付設されていることを特徴とする。
ワイヤーの端末が処理されていない場合(終端キャップが付いておらずバラケやすい場合)や、柔軟性が高く曲がりやすいワイヤーの場合のように、ワイヤーを先端からワイヤーグリップのワイヤー通し孔に通しにくい場合に、ワイヤーの途中をワイヤーグリップの横からワイヤー通し孔に挿通することにより、ワイヤーをワイヤーグリップに取り付けることができる。このため、電気機器を実際に吊り下げる現場においても、ワイヤーをその場で適当な長さに切断して手軽にグリップに通すことができる。
本発明においては、前記治具が、前記内スリーブを、前記スプリングの付勢方向と反対方向に押すためのスリーブ押し部と、該スリーブ押し部から延びて、前記すり割溝にワイヤーを押し込む帯片部と、を有することとできる。
この場合、内スリーブを外スリーブに対して、スプリングの付勢方向と反対方向に押してスライドさせて、各ボールがワイヤー通し孔から外へ逃げられるようにする動作と、ワイヤーをすり割溝からワイヤー通し溝に押し込む動作を一度に又は連続して行うことができ、容易にワイヤーをワイヤーグリップのワイヤー通し孔に挿通させることができる。
本発明の他の態様の電気機器吊り下げ方法は、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、及び、該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製編線からなる外周線層、を有する電力通電ワイヤーを用いて電気機器を吊り下げる方法であって、該ワイヤーに接続され、電気機器の吊り部材に連結されるワイヤーグリップが、ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、を具備し、さらに、該ワイヤーグリップは、その内スリーブ及び外スリーブに、前記ワイヤー通し孔に連通するすり割溝が形成されているとどもに、ワイヤーを該すり割溝に押し込む治具が付設されており、前記電力通電ワイヤーを、前記ワイヤーグリップの横方向から前記すり割溝に当て、前記治具を用いて該ワイヤーを前記すり割溝に押し込むことにより該ワイヤーを前記ワイヤーグリップに入れることを特徴とする。
さらに、本発明においては、前記電力通電ワイヤーを適当な長さに切断した後、該電力通電ワイヤーの切断された端面から前記外周線層を該ワイヤーの長さ方向に寄せて絶縁層を露出させ、次いで、該絶縁層をむいて該ワイヤーの芯線を前記電気機器の端末に接続するとともに、前記の寄せた外周線層を前記すり割溝に通すことをとできる。
外周線層が金属製の編線の場合、ワイヤーは予め適宜な長さに切断しておいて、切断された端部に終端キャップを被せて処理しておくと扱いやすい。というのは、編線がワイヤーの長さ方向に寄ってコブ状になったり、編線の細線束の各線がバラけるため、ワイヤーを切断端部から一般的なグリップのワイヤー通し孔に通しづらくなるのである。そこで、すり割溝を設けるとともに、治具を用いて、ワイヤーをグリップの横方向からワイヤー通し孔に通すことにより、外周線層が編線の場合にもワイヤーを途中でワイヤーグリップ内に入れてグリップすることができる。したがって、ワイヤーを予め適宜な長さに切断し、端末を処理しておく必要がなく、電気機器を取り付ける現場において、電気機器の実際の高さや位置にあわせてワイヤーを所望の長さに切断しながら現場作業を行うことができる。
なお、外周線層が編線の場合は、ワイヤーグリップのボールが編線に引っ掛かかることにより、ワイヤーがグリップされやすくなるということもある。
本発明の他の態様のワイヤーグリップは、ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、を具備するワイヤーグリップであって、前記ボールが電気絶縁性の材料からなることを特徴とする。
ボールは、ワイヤーの外周面に押し当てられてワイヤーをグリップするが、その際、ワイヤーの導電線を被覆する絶縁層にめり込む。これによって絶縁層の厚さが薄くなって、ワイヤー全体の絶縁耐力が低下する傾向となる。しかし、ボールを絶縁性の材料で作製すれば、ボール自身も絶縁に寄与するため絶縁耐力の極端な低下を防止できる。ここで、絶縁性の材料の例としては、硬質プラスチック(例えばナイロン、デルリンなどエンジニアプラスチックス)、セラミックス(例えばアルミナ)を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を模式的に示す図である。
図2は、本発明の電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
図3は、下側留具の全体の構造を説明する図である。
図4は、ワイヤーグリップの構造を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)は平面断面図である。
図5は、ワイヤーグリップ41の全体の構造を示す一部透視斜視図である。
図6は、ワイヤーグリップの解除作用を説明するための図である。
図7は、ワイヤーグリップのボールセット孔の形状を詳細に説明するための断面図である。
図8は、フックの構造を説明する斜視図である。
図9は、終端キャップの構造を示す側面断面図である。
図10(A)は、電極固定具の全体構造を説明するための図であり、図10(B)は同固定具の本体の側面図である。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明するための図である。
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明するための図である。
図13は、上側留具の構造を説明する図である。
図14は、アース金具の構造を説明する図であり、図14(A)は側面断面図、図14(B)は正面図である。
図15は、本発明の第4の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図16は、図15の電気機器吊下装置に用いる電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
図17は、本発明の第5の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図18は、図17の電気機器吊下装置に用いる電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
図19は、本発明の第6の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図20は、本発明の第7の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図21は、本発明の第8の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図22は、本発明の第9の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
図23は、ワイヤーグリップの全体形状を説明する図であり、図23(A)は正面図、図23(B)は左側面図、図23(C)は右側面図、図23(D)は平面図である。
図24は、ワイヤーグリップの構造を説明する分解斜視図である。
図25は、図24のワイヤーグリップの構造の一部を説明する図であり、図25(A)は側面図、図25(B)は図25(A)のA−B断面図である。
図26は、治具の構造を説明する図であり、図26(A)は正面図、図26(B)は底面図、図26(C)は側面図である。
図27は、治具の作用を説明する正面断面図である。
図28は、治具の作用を説明する正面断面図である。
図29は、治具の構造の他の例を説明する図である。
図30は、ワイヤーグリップを電気機器に取り付けた状態を示す図である。
図31は、他の例のワイヤーグリップを電気機器に取り付けた状態を示す図である。
発明を実施するための形態
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を模式的に示す図である。
この例の電気機器吊下装置1は、照明機器(蛍光灯)3に通電するとともに、同機器3を天井5から吊るすためのものである。同装置1は、2本の電力通電ワイヤー20−1、20−2と、各ワイヤー20の下端部を照明機器3の吊り部材7に連結する下側留具40と、各ワイヤー20の上端部を天井5に敷設された吊りレール9に接続する上側留具100と、から構成される。照明機器3はAC600V以下の低電圧とする。
まず、電力通電ワイヤー20の構造を説明する。
図2は、本発明の電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
この電力通電ワイヤー20は、芯線21と、芯線21の外周に被覆された絶縁層23と、絶縁層23の外周に被覆された外周線層25とから構成される。芯線21は、高強度・高導電性の銅合金製の素線(単位線)27が多数(一例で19本)縒り合わされたものである。この芯線21は、素線27の引っ張り強さが500MPa以上、望ましくは700MPa以上、さらに望ましくは900MPa以上であり、導電率が40%IACS、望ましくは50%IACS以上、さらに望ましくは60%IACS以上の性質を備える。
このような性質を備えた高強度・高導電性の銅合金性の素線としては、例えば、昭和電線電纜社製の銅銀合金細線を用いることができる(平成9年度電気学会全国大会「高強度、高導電率Cu−Ag合金極細線の開発」参照)。この銅銀合金細線は、Cu基の周りにCu−Ag共晶相がネットワーク状に存在した組成のものを伸線加工して作製される。この伸線加工は、中間熱処理と冷間加工とを数回組み合わせて行う。導電率が最大の場合、最高で引っ張り強さが1000MPa、導電率が80%IACSを得られる。なお、電気用軟銅線の場合は、引っ張り強さが250MPa、導電率が98%IACSである。同細線の径は、一例で0.2mmである。
芯線21は、上述のように、この素線27を19本縒り合わせて作製される。この芯線21においては、54.8Kgの切断強度が得られ、定格電流=6A(100V600W)において電流値0.6SQが得られる。芯線21の径は一例で0.95mmである。
絶縁層23は芯線21の外周を均等な厚さで被覆している。同絶縁層23はナイロン材で作製され、厚さは一例で0.68mmである。
外周線層25は、複数(一例で12本)の縒線31を絶縁層23の周りに編み込んで形成されている。縒線31は、複数(一例で7本)のステンレス製細線29が縒り合わされたものである。ステンレス製細線29は一例で径が0.22mmである。外周線層25で被覆されたワイヤー20の径は3.6mmとなる。ステンレスで外周線層25を作製することにより引っ張り強度を高めることができ、電力通電ワイヤー20は、全体として切断強度が640Kgとなる。
この電力通電ワイヤー20においては、芯線21に電流が流される。この例の電気機器吊下装置1には、図1に示すように2本の電力通電ワイヤー20が使用され、一方のワイヤー20−1の芯線21が接地側導線となり、他方のワイヤー20−2の芯線21が電圧側導線となる。このように導線に電流を流すと、コンジット内に誘導電流が流れる。しかし、この誘導電流は、非磁性・導電性の外周線層25でキャンセルされるため、被覆している絶縁層23を発熱させるおそれはない。このように、外周線層25はワイヤーの張力を高めるとともに、誘導電流をキャンセルする作用を有する。
次に、電力通電ワイヤー20の下端部を照明機器3の吊り部材7に連結する下側留具40について説明する。
図3は、下側留具の全体の構造を説明する図である。
下側留具(フック付きワイヤーグリップ)40は、電力通電ワイヤー20を任意の位置でグリップするワイヤーグリップ41と、照明機器3の吊り部材7に引っ掛けられるフック43とからなる。フック43の上部はワイヤーグリップ41の下部に接続されている。
まず、ワイヤーグリップ41の構造を説明する。
図4は、ワイヤーグリップの構造を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)は平面断面図である。
図5は、ワイヤーグリップ41の全体の構造を示す一部透視斜視図である。
ワイヤーグリップ41は、図1に示すように、フック43で吊るされた照明機器3をワイヤー20の任意の位置に固定する(つまり、照明機器3の高さを調整できる)もので、照明機器3の荷重を支えるための強度と、ワイヤー20の芯線21の絶縁性が要求される。同グリップ41は、内スリーブ45と、ボール47、49と、外スリーブ51と、スプリング53とから構成される。
内スリーブ45は、電力通電ワイヤー20が挿通されるワイヤー通し孔55を有する。同孔55の内径は長さ方向(図4の縦方向)で均一であり、ワイヤー20の外径+α(一例で、1mm)である。内スリーブ45は、円筒状の上部45aと円錐状の下部45bを有し、下部の外周面は下方に向かって広がるテーパ面45cとなっている。
円錐状下部45bには、テーパ外周面45cとワイヤー通し孔55との間を延びる各々3個のボールセット孔57、59が開けられている。同孔は、図4(A)に示すようにワイヤー通し孔55の孔軸方向に2段設けられて、ワイヤー通し孔55の孔軸の直交方向(径方向)に延びている。上段の孔57の径は、下段の孔59の径より狭い。そして、図4(B)に示すように、上段の孔57と下段の孔59は、ワイヤー通し孔55の孔軸の周方向に交互に振り分けられている。つまり、3個の上段の孔57は、孔軸を中心にして120°間隔で配置され、3個の下段の孔59は、上段の孔57より60°ずれて、孔軸を中心にして120°間隔で配置されている。すなわち、図4(B)に示すように、全ての孔は孔軸を中心にして60°間隔で配置されている。
各上段の孔57には、小径のボール47が嵌合しており、各下段の孔59には大径のボール49が嵌合している。上段の孔57の径は小ボール47の径+α(例えば、0.1mm)であり、長さは小ボール47の径よりやや短い。
また、下段の孔59の径は大ボール49の径+α(例えば、0.1mm)であり、長さは大ボール49の径よりやや短い。なお、長さとは、孔57、59の幅中央部での、孔の方向に沿った長さとする。一例として、上段の孔57の径(小ボール47の径)は2.4mm、下段の孔57の径(大ボール49の径)は2.8mmである。
このような構造により、図4に示すように、各ボールセット孔57、59に各ボール47、49を嵌合したときに、各ボール47、49の内側はややワイヤー通し孔55内に突き出ている。
円錐状下部45bの下方は下円筒部45dとなっている。この下円筒部45dに、スプリング53の上部が嵌合する。
外スリーブ51は、円錐台状の上部51aと、円筒状の下部51bとからなる。円錐台状上部51aの内周面51cは、内スリーブ45のテーパ外周面45cに内接するテーパ面となっている。円筒状下部51bの内部の下方には、環状のスプリングストッパ61が設けられている。スプリング53は、外スリーブ51内の、内スリーブ45の円錐状下部45bの下面と外スリーブ51のスプリングストッパ61との間に配置される。スプリング53の上部は、内スリーブ45の下円筒部45dに嵌合している。スプリング53によって、内スリーブ45は外スリーブ51に対して上方に付勢されて、内スリーブ45のテーパ外周面45cが外スリーブ51のテーパ内周面51cに内接する。
このワイヤーグリップ41のグリップ作用について説明する。
スプリング53によって、内スリーブ45が外スリーブ51に対して上方に付勢されて、内スリーブ45のテーパ外周面45cが外スリーブ51のテーパ内周面51cに内接しているとき、上述のように各ボールセット孔57、59に嵌合した各ボール47、49は、外側が外スリーブ51のテーパ内周面51cに押されて、内側がワイヤー通し孔55内に突き出ている。ワイヤー20は、このボール47、49の突き出た部分に押し当てられてグリップされる。
1個のボールのワイヤー外周面への押し当て力が同じとすると、ボールを6個設けることにより、全体のグリップ力が増加するとともに、ボール1個当たりの押し当て力は小さくてすむ。このため、ボールのワイヤーの外周線層面へのくい込み量は小さい。そして、絶縁層へのくい込みも小さくなり、絶縁層の絶縁性が確保され、芯線を保護できる。
また、ボールセット孔を上段と下段との2段に設け、さらに、各段の孔をワイヤー通し孔の孔軸に対して交互に配置することによって、複数のボールセット孔を設けるために必要なスペースを小さくできる。さらに、複数のボールによってワイヤー外周の均等に離れた位置からワイヤーに負荷を加えているため、局所的にボールからの負荷がかからない。
次に、グリップの解除作用を説明する。
図6は、ワイヤーグリップの解除作用を説明するための図である。
グリップ41を解除するためには、内スリーブ45を片方の手の指F1でつまみ、他方の手の指F2で外スリーブ51をつまむ。そして、内スリーブ45を、スプリング53の付勢力に抗して外スリーブ51の方向(図の矢印で示す)に押す。すると、図の二点鎖線で示すように、内スリーブ45は、外スリーブ51のテーパ内周面51cの径が広がる方向(図6の下側)へ動き、ボールセット孔57、59の外側と外スリーブ51のテーパ内周面51cとの間にスキマDができる。各ボール47、49は上述のように、外スリーブ51のテーパ内周面51cによって内側へ押されているので、各孔の外側にスキマDが形成されると、スキマの方向、すなわち外方向へ移動する。
このように各ボール47、49がボールセット孔57、59を外方向へ動くと、ボール47、49がワイヤー20から離れてワイヤー20をグリップしていた力がなくなる。もしくは、同力が弱くなる。すると、ワイヤー20は、ワイヤー通し孔55内を上下方向に自由にスライドできる。また、スライド中はボール47、49は各セット孔57、59内で回転するため、ボール47、49とワイヤー20の表面との摩擦が小さくなり、ワイヤー20をスムーズにスライドできる。
このスライド動作は、内スリーブ45を外スリーブ51に対して押している間のみ可能である。そして、ワイヤー20を所望の長さだけスライドさせてから、内スリーブ45を押す力を解除する。すると、内スリーブ45はスプリング53で付勢されて、内スリーブ45のテーパ外周面45cが外スリーブ51のテーパ内周面51cに内接し、テーパ内周面51cで押し付けられたボール47、49によってワイヤー20がグリップされる。
そして、この状態でグリップ41に照明機器等が吊下げられると、外スリーブ51は自重によって下方向に引っ張られる。すると、外スリーブ51のテーパ内周面51cは、内スリーブ45のテーパ外周面45cが拡がる方向に動き、ボール47、49を内方向に押す力が強くなる。これにより、各ボール47、49がワイヤー20の外面へくい込む量が多くなり、グリップ力が強くなる。
図7は、ワイヤーグリップのボールセット孔の形状を詳細に説明するための断面図である。
各ボールセット孔57、59は、真っ直ぐな貫通孔ではなく、図に示すように、内端側(ワイヤー通し孔55側)の面Aが内側に湾曲した球面になっている。この球状面(ストッパ部)Aの曲率は各孔に嵌合されるボール47、49の曲率と等しい。このような球状面Aは、先端が丸いドリルを用いて加工される。
ボールセット孔57、59をこのような形状とすることによって、同孔に嵌合されたボール47、49は、同孔の球状側面Aで係止されて、ボールがワイヤー通し孔55内へ過度に突出しない。したがって、球状側面Aの長さを適度に選択することによって、外周線層や絶縁層に過度に負荷がかからない程度のグリップ力を付与できる。これにより、絶縁層の厚さを確保でき、絶縁耐力を確保できる。
図4、図6に示すように、外スリーブ51の下端の内面には、フック43の上部と螺合する雌ネジ63が切られている。なお、スプリングストッパ61は、ネジ63の奥まで螺合挿入されて固定されている。
次に、フック43の構造を説明する。
図8は、フックの構造を説明する斜視図である。
フック43は、ワイヤー挟持部材67と、吊部材69とからなる。ワイヤー挟持部材67は、上端が雌ネジ63に噛み合う雄ネジの形状であり、ワイヤーグリップ41の外スリーブ51の雌ネジ63に螺合して、同グリップ41に固定される。
ワイヤー挟持部材67は、ほぼ直方体で、上端面の中央から一つの側面(図6の右側の面)のほぼ中央に渡ってスリット71が形成されている。スリット71の奥壁は、上端面の中央から側面の中央に向けて傾斜した面となっている。スリット71の上部には、ネジ孔73が開けられている。同孔73にはセットビス75がねじ込まれる。ワイヤー挟持部材67の下部には、スリット71を挟んで延びる2つの脚77が形成されている。各脚77の先端には、同軸上に延びるネジ孔79が開けられて、各脚77の間にネジ81が掛け渡される。このネジ81に吊部材69が取り付けられる。
吊部材69は、全体がループ形状で、上部が円形で、下部が涙滴型である。上部は、上述のワイヤー挟持部材67の各脚77の間に掛け渡されたネジ81に引っ掛けられる。下部には、照明機器3の吊部材7(図1参照)が取り外し可能に取り付けられる。
吊部材69は、C字状片69aとスナップ片69bとからなり、両片でループを形成している。スナップ片69bは、一端がC字状片69aの上方の端部に回転可能に接続しており、板バネ(図示されず)によってループを閉じるように付勢されている。スナップ片69bをループの内側に回転させると、スナップ片69aの他端とC字状片69bの下方の端部とが開き、その間から照明機器3の吊部材7が出し入れされる。スナップ片69bの下方の端部とC字状片69aの他端とは、スナップ片69bが外側に開いたり、外れないように噛み合っている。
ワイヤーグリップ41のワイヤー通し孔55及びスプリングストッパ61の孔から下方に延びたワイヤー20は、ワイヤー挟持部材67の上端面でスリット71に入り、スリット71の傾斜した奥壁に案内されて、側面でスリット71から側方に導き出される。すなわち、ワイヤーグリップ41に真っ直ぐに挿通されたワイヤー20は、ワイヤー挟持部材67で横方向に導き出される。これは、天井から真っ直ぐに垂下したワイヤー20を、下側留具40で横方向に向け、照明機器3の上面のターミナル11(図1参照)に接続するためである。
グリップ41を解除して、ワイヤー20を留具40から適度な長さだけ引き出した後、グリップ41を固定する。そして、ワイヤー挟持部材67のビス孔73にセットビス75を螺合させ、同ビス75の先端面とスリット71の奥壁との間にワイヤー20を挟みこんで、ワイヤー20をフック43に固定する。
このように、下側留具(フック付きグリップ)40によって、ワイヤー20に照明機器3が固定される。
下側留具40から導き出されたワイヤー20の先端は、図1に示すように、照明機器3の上面に取り付けられたターミナル11の棒端子付きACソケットに接続される。このときに、外周線層がむかれたワイヤー20がソケットに差し込まれ、ソケット内で、絶縁層がむかれて露出した芯線21が端子に接続される。なお、外周線層25の細線29がばらけないように、ワイヤー20の先端には終端キャップ85(図1参照)が取り付けられる。
図9は、終端キャップの構造を示す側面断面図である。
終端キャップ85は、ニッケルメッキされた真鍮等で作製された円筒状部材である。同キャップ85は、内径の大きい大径部85aと内径の小さい小径部85bとからなる。大径部85aの径は、ワイヤー20の径とほぼ等しく、小径部85bの径は、外周線層をむいたワイヤーの径とほぼ等しい。両部の間には、傾斜した段部85cが形成されている。
この終端キャップ85を、大径部85a側から、外周線のみがむかれたワイヤー20に挿通していく。そして、大径部85aが外周線層を囲み、外周線層の端面が段部85cに当たるまで挿通する。このとき小径部85bは絶縁層を囲んでいる。そして、接着剤によってキャップ85をワイヤー20に固定する。これにより、外周線層は大径部85aに囲まれて、ばらけることなくきれいに処理される。
次に、各ワイヤー20の上端部を吊りレール兼配線ダクト9に接続する上側留具100について説明する。
上側留具100は、図1に示すように、吊りレール9に取り付けられるスライドプラグ101と、電力通電ワイヤー20の上端が取り付けられる電極固定具110とを有する。吊りレール9は、レール等の機械構造体で、天井5に敷設されている。プラグ101は、レールに嵌合して、同レールに沿ってスライドする。電極固定具110は、プラグ101の下面に取り付けられる。
図10(A)は、電極固定具の全体構造を説明するための図であり、図10(B)は同固定具の本体の側面図である。
電極固定具110はニッケルメッキされた真鍮等で作製され、ワイヤー20の芯線21を吊りレール9内を通っている導電線Wに接続し、外周線層25をアースしている。同固定具110は、本体111と、大ナット113と、2つの小ナット115とから構成される。本体111の中央には、ワイヤー通し孔117が貫通している。本体111は、図10(B)に示すように、大ネジ部111aと、小ネジ部111cと、両部の間で外方向に拡がるフランジ111bを有する。図10(B)に示すように、小ネジ部111cには、長さ方向(図10(B)の縦方向)に延びるスリット119が、対向する2ヶ所に形成されている。
大ナット113は大ネジ部111aに噛み合い、各小ナット115は小ネジ部111cに噛み合う。
この固定具110をプラグ101に取り付ける際は、まず、プラグ101の取付孔103の上側から同固定具110の大ネジ部111aをはめ込む。すると、固定具110はフランジ111bでプラグ101上に係止される。そして、プラグ101の下側から大ネジ部111aに大ナット113を螺合させて、プラグ101を大ナット113とフランジ111bとの間に挟んで、固定具110をプラグ101に固定する。
ワイヤー20の上端は、電極固定具110の大ネジ部111a側からワイヤー通し孔117に通される。そして、同孔の小ネジ部111c側から引き出されたワイヤー20は、所定の位置で外周線層25がむかれて、2つに分けられる。分けられた外周線層25の各線は折られて小ネジ部111cのスリット119に挟み込まれ、ドライバーなどによってスリット119の下端へ押し付けられる。そして、一つ目の小ナット115を小ネジ部111cに螺合させ、小ナット115とフランジ111bと間に細線25を挟んで固定する。これにより、外周線層25は固定具110に導通する。なお、外周線層25はプラグ101に短絡しないように切断される。
なお、外周線層25をアースする際には、アース電線120の端部に取り付けられた圧着端子121を小ネジ部111cにはめ込み、二つ目のナット115を小ネジ部111cに螺合させて、二つの小ナット115の間に圧着端子121を挟む。これにより外周線層25は電極固定具110を介してアース電線120でアースされる。
外周線層25がむかれて絶縁層23が露出したワイヤー20は、プラグ101内の端子105まで導かれる。そして、絶縁層23をむいて露出した芯線21を端子105に導通させる。なお、図1に示すように、一方の電力通電ワイヤー20−1の芯線は、プラグ101を介してレール9の内側に敷設された電路の接地側導線W1に導通し、他方の電力通電ワイヤー20−2の芯線は、プラグを介して電路の電圧側導線W2に導通する。
次に、この電気機器吊下装置の取付方法について、図1を参照して説明する。
まず、2本の通電ワイヤー20の上端を、電極固定具110によってプラグ101に固定する。そして、プラグ101をレール9に沿って所望の位置へ移動させる。次に、照明機器3の高さを決めて、下側留具40のワイヤーグリップ41で通電ワイヤー20をグリップするとともに、ワイヤー挟持部材43を照明器具3の吊部材7に引っ掛ける。このときに上側留具40とターミナル11との間のワイヤー20が長ければ、照明機器3上で束ねて固定する。
以上説明したように、この例の電気機器吊下装置1は、照明機器3に電力を通電するとともに、同機器を天井5に敷設された吊りレールや配線ダクト9から吊るすことができる。電力の通電は、2本のワイヤー20の芯線21を通して行われているが、芯線21の電流値は0.6SQであり、照明機器3を作動させるために十分な電力を供給できる。なお、芯線21に通電した場合に発生する誘導電流は、外周線層25でキャンセルされるため、発熱のおそれはなく安全である。また、ワイヤー20の切断強度は640Kgであり、下側留具40によってワイヤー20と照明機器3が確実及び安全に固定されるため、照明機器3の荷重を十分に支えることができる。なお、通電ワイヤー20と下側留具40を用いて荷重試験(絶縁耐圧試験)を行った結果、絶縁強度は70Kg/3000Vを確保できた。さらに、ワイヤーグリップ41によって照明機器3の高さを調整することも可能である。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明するための図である。
この例の電気機器吊下装置201も、照明機器を2本のワイヤー20−1、20−2で天井5に取り付けている。この例では、天井5に、FケーブルCから引き出された接地側導線W1と電圧側導線W2とが各々接続されている配線端末13が設けられている。同装置201は、図1の電気機器吊下装置1とほぼ同様の構造を有するが、上側留具210がこの配線端末13に対応したものとなる。
上側留具210は、配線端末13用のプラグ211と、電極固定具110とからなる。電極固定具110の構造は、図1の電気機器吊下装置の電極固定具(図10参照)の構造と同じである。電極固定具110はプラグ211に取り付けられ、同プラグ211は、配線端末13に取り付けられる。そして、一方の電力通電ワイヤー20−1の芯線が、上側留具210を介して一方の配線端末13で接地側導線W1に導通し、他方の電力通電ワイヤー20−2の芯線は、上側留具210を介して他方の配線端末13で電圧側導線W2に導通する。
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明するための図である。
この例の電気機器吊下装置301も、照明機器3を2本のワイヤー20−1、20−2で天井5に取り付けている。この例では、天井5に吊りレールや配線端末が設けられていない。また、照明機器3のターミナル(圧着ジョイント端子)17が照明機器の内側に配置されている。
天井5に吊りレールや配線端末が設けられていないため、ワイヤー20の上端は、天井裏で配線端末15に接続する必要がある。この配線端末15には、FケーブルCから引き出された接地側導線W1と電圧側導線W2が延びている。ワイヤー20は上部で上側留具310によって天井5に固定されている。
図13は、上側留具の構造を説明する図である。
上側留具310(固定部材付きワイヤーグリップ)は、電力通電ワイヤーを任意の位置でグリップするワイヤーグリップ41と、同グリップ41を天井(構造体)に固定する固定部材311とからなる。ワイヤーグリップ41は、図1の電気機器吊下装置1のワイヤーグリップ41(図4参照)と同様に、内スリーブと、ボールと、外スリーブと、スプリングとから主に構成される。これらの共通の構成要素については、図4との符号を付し、説明を省略する。この例では、グリップ41を上下を逆にして使用する。
固定部材311は、スリーブ部313と、同部の下端から外方向に拡がるフランジ315を有する。同部材311には、ワイヤーグリップ41のワイヤー通し孔55と径が同じで、同孔55と同軸上を延びるワイヤー通し孔317が開けられている。スリーブ部313の下端には雄ネジが切られている。この雄ネジがワイヤーグリップ41の外スリーブ51の雌ネジ63(図4(A)参照)に螺合して、固定部材313とワイヤーグリップ41が連結される。
上側留具310を天井に固定する際は、まず、同留具310のスリーブ部313を、天井5に開けられた固定用孔に挿入させる。すると、固定部材311のスリーブ部313は天井裏へ突き出し、同部材のフランジ315の上面は天井5の下面に当接する。そして、フランジ315と天井5とを複数のビス319とナット321で固定する。そして、同留具のワイヤー通し孔55、317に下側からワイヤー20を通す。
図12に示すように、上側留具310から通されたワイヤー20は、天井裏で配線端末15に接続される。このとき、一方の電力通電ワイヤー20−1の芯線が、配線端末15で接地側導線W1に導通し、他方の電力通電ワイヤー20−2の芯線が電圧側導線W2に導通する。
なお、図12に示すように、天井裏において、電圧側導線W2に導通しているワイヤー20−2にはアース金具350が取り付けられて、外周線層をアースしている。
図14は、アース金具の構造を説明する図であり、図14(A)は側面断面図、図14(B)は正面図である。
アース金具350もニッケルメッキされた真鍮などで作製され、本体351と、アース端子固定用ナット353と、同金具をワイヤー20に締め付けるためのナット355とからなる。本体351の中央には、長さ方向に延びるワイヤー通し孔357が開けられている。同本体の中央からやや端部(図の左端部)寄りには、外側に拡がるフランジ359が形成されている。本体のフランジ359の片側(図の左側)がアース端子固定部351aであり、その反対側(図の右側)がワイヤーに締め付けられる締め付け部351bである。
アース端子固定部351aの外面にはネジが切られており、同固定部にナット353が螺合する。アース線380の先端に固定された圧着端子381をアース端子固定部351aに通し、その後同部にナット353を螺合させることで、ナット353とフランジ359との間に圧着端子381が挟まれて固定される。これにより、金具350が圧着端子381を介してアースされる。
本体の締め付け部351bは、フランジ寄りの約半分の長さまでの外周面にネジが切られ、残りの外周面は端部に向かって先細のテーパ面361となっている。ネジとテーパ面との境の部分には、径方向に延びる4つの擦り割り363が形成されている。締め付け用ナット355は円筒状で、一端(図の左端)から約半分の長さまでの内周面にはネジが切られ、残りの内周面は先細のテーパ面365となっている。同ナット355の内周面のネジは、本体のワイヤー締め付け部351bのネジに螺合する。
本体のワイヤー通し孔357にワイヤー20が通された後、締め付け用ナット355を本体の締め付け部351bにねじ込む。すると、同ナットのテーパ内周面365が、本体のテーパ外周面361を内側に押し、本体351の擦り割り363から先の部分(図の右側)が内側に押し曲げられる。そして、同部分でワイヤー通し孔357に通されているワイヤー20を締め付けて、アース金具350をワイヤー20に接触させて固定する。
このように、電力通電ワイヤー20の途中で、外周線層を金具350及びアース線380を介してアースすることができる。
次に下側留具を説明する。
図12に示すように、照明機器3のターミナル(圧着ジョイント端子)17は照明機器の内側に配置されているため、ワイヤー20の下端は照明機器3の内側まで導き出される必要がある。そこで、図1の電気機器吊下装置の電極固定具110(図10参照)を使用して、ワイヤー20の下部を照明機器3に固定するとともに、ワイヤー20の芯線を圧着ジョイント端子17に接続する。なお、この例では、電極固定具110を上下を逆にして使用する。
固定具110を照明機器3に取り付ける際は、まず、照明機器3の取付孔の下側から同固定具110の大ネジ部111aをはめ込む(図10参照)。すると、固定具110はフランジ111bで照明機器3に係止される。そして、照明機器3の取付孔の上側から大ナット113を螺合させて、照明機器3のケースを大ナット113とフランジ111bとの間に挟んで固定する。
照明機器3内では、ワイヤーの外周線層は電極固定具110によってアース線120に接続してアースされる。そして、外周線がむかれて絶縁層が露出したワイヤー20は、機器3内の圧着ジョイント端子17まで導かれる。そして、絶縁層をむいて露出した芯線を端子17に導通させる。
図15は、本発明の第4の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の電気機器吊下装置401も、照明機器3に電力を通電するとともに、天井から吊るすためのものであるが、照明機器3を1本の電力通電ワイヤー420で吊り下げる。照明機器の電力はAC100Vで、100V200Wとする。
同装置は、1本の電力通電ワイヤー420と、ワイヤー420の上端部を配線端末13に接続する上側留具440と、から構成される。ワイヤー420の長さは予め固定されている。
まず、電力通電ワイヤーの構造を説明する。
図16は、図15の電気機器吊下装置に用いる電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
この電力通電ワイヤー420は、芯線421と、芯線421の外周に被覆された絶縁層423と、絶縁層423の外周に被覆された外周線層425と、外周線層425の外周に被覆された最外周絶縁層427とからなる。
芯線421は、高強度・高導電性の銅合金製の素線(単位線)429が複数よられたものである。このような性質を備えた高強度・高導電性の銅合金としては、図1の電気機器吊下装置と同様に、例えば、昭和電線電纜社製の銅銀合金細線を使用できる。芯線421は、この細線429を多数本(一例で、19本)縒り合わせて作製される。この芯線421においては、54.8Kgの切断強度が得られ、定格電流=6A(100V600W)において電流値0.6SQが得られる。
絶縁層423は芯線421の外周を均等な厚さで被覆している。同絶縁層423はナイロン材で作製される。
外周線層425は、複数(一例で12本)の縒線433を絶縁層423の周りに編み込んで形成されている。縒線433は、複数(一例で7本)の銅線431が縒り合わされたものである。この細線431は、芯線421と同様の高強度・高導電性の銅合金を使用できる。
最外周絶縁層427は、外周線層425を均等な厚さで被覆している。同層は、例えば、0.4mm厚のテフロン(登録商標)絶縁チューブを使用することができる。
この電力通電ワイヤー420においては、芯線421と外周線層425とに電流が流される。つまり、1本のワイヤー420において、芯線421と外周線層425の内の一方が電圧側導線となり、他方が接地側導線となる。この場合も、芯線421に電流を流す際に発生する誘導電流は、外周線層425でキャンセルされるため、被覆している絶縁層423、427を発熱させるおそれはない。また、このワイヤー420の切断強度は300Kgとなる。外周線層425に、高強度・高導電性の銅合金を使用したため、外周線層をステンレス製とした場合より切断強度が低くなるが、実用上に問題はない。
図15に示すように、ワイヤー420は下端で、芯線側端末と外周線側端末に分けられ、各端末が、照明機器3のターミナル11に差し込まれる。ワイヤー420の上端も、芯線側端末と外周線側端末に分けられ、各端末が、接続用プラグ440に差し込まれる。同プラグ440は天井に固定された配線端末13に取り付けられる。
このように、1本のワイヤーで電力供給と照明機器の吊り下げを行うことができ、用途が拡大し、図に示すようなペンダントライトに適用できる。
図17は、本発明の第5の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の電気機器吊下装置501も、図15の装置と同様に、照明機器3を1本の電力通電ワイヤーで吊り下げる。この照明機器3の電力は、LOW−VOLT(36V以下、AC、DCどちらでも可)で、12V60W以下であり、図15の照明機器より使用電力が小さい。また、この例では、天井5に配線端末が固定されていないため、ワイヤー20の上端は、天井裏で配線端末に接続する必要がある。
図18は、図17の電気機器吊下装置に用いる電力通電ワイヤーの構造を説明する断面図である。
この電力通電ワイヤー520は、芯線521と、芯線521の外周に被覆された絶縁層523と、絶縁層523の外周に被覆された外周線層525とからなる。このワイヤー520は、図15の装置のワイヤー420(図16参照)の最外周線層427をなくしたものである。
芯線521は、高強度・高導電性の銅合金製の素線(単位線)527が複数よられたものである。このような性質を備えた高強度・高導電性の銅合金としては、図1の電気機器吊下装置と同様に、例えば、昭和電線電纜社製の銅銀合金細線を使用できる。芯線521は、この細線527を多数本(一例で19本)縒り合わせて作製される。この芯線521においては、54.8Kgの切断強度が得られ、定格電流=6A(100V600W)において電流値0.6SQが得られる。
絶縁層523は芯線521の外周を均等な厚さで被覆している。同絶縁層はナイロン絶縁材で作製される。
外周線層525は、複数(一例で12本)の縒線533を絶縁層523の周りに編み込んで形成されている。縒線533は、複数(一例で7本)のステンレス製細線531が縒り合わされたものである。この細線531は、芯線521と同様の高強度・高導電性の銅合金を使用できる。
この電力通電ワイヤー520においては、図15の電気機器吊下装置と同様に、芯線521と外周線層525とに電流が流される。つまり、1本のワイヤーにおいて、芯線521と外周線層525の内の一方が電圧側導線となり、他方が接地側導線となる。この例では、最外周層である外周線層525に電流が流れるが、照明機器3の電力が小さいため流される電流量が小さく、直に触れても感電しない。
上側留具としては、図11の電気機器吊下装置と同様の固定部材付きワイヤーグリップ310(図13参照)を使用している。この留具を使用してワイヤー520の上部を天井5に固定する。
上側留具から天井裏に引き出されたワイヤー520は、上述のように、芯線521と外周線層525の内の一方が電圧側導線となり、他方が接地側導線となる。外周線層525を導線として配線端末に接続するため、アース金具350(図14参照)を使用することができる。すなわち、このアース金具350によって外周線層525をアース線ではなく導線380に接続し、この導線380を配線端末に接続すればよい。
図19は、本発明の第6の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の電気機器吊下装置501は、シャンデリア等の比較的重量の重い照明機器3の吊り下げに適している。シャンデリアの電力は300Wである。このように重量の重い機器を吊り下げるために、この装置501では2本の電力通電ワイヤー20の他に、1本の補強用ワイヤー610を使用している。
2本の通電ワイヤー20−1、2は、図1の電気機器吊下装置と同様の通電ワイヤー20(図2参照)を使用できる。各ワイヤーの下端は、電極固定具110(図10参照)で照明機器3に固定されている。また、各ワイヤーの上端は、固定部材付きワイヤーグリップ310(図13参照)で天井5に固定されている。補強用ワイヤー610は、外観が通電ワイヤー20と同様のステンレス製ワイヤー等を使用できる。補強用ワイヤー610の照明機器や天井への取付にも電極固定具110や固定部材付きワイヤーグリップ310を使用できる。
このように、照明機器の重量が重い場合は、補強用ワイヤーを設けることによって十分な耐荷重を得ることができる。さらに強度が必要な場合は、補強用ワイヤーを複数本設けてもよい。
図20は、本発明の第7の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の装置701は、複数のランプ3を、壁S1と壁S2との間に直列に繋いでいる。同装置701は、複数のランプ3を繋ぐ複数の電力通電ワイヤー720を有する。ワイヤー720は、1本で電力供給のための通電を行うことのできるワイヤー(図16、図18参照)を使用できる。ランプ3がLOW−VOLTの場合は、通電ワイヤー720は最外周層のない通電ワイヤー520(図18参照)を使用し、AC100Vの場合は、最外周層のある通電ワイヤー420(図16参照)を使用できる。
ワイヤー720をランプ3に固定する留具は、電極固定具110(図10参照)を使用できる。固定具110からランプ3内に引き出されたワイヤーは、芯線と外周線層とに分けられ、各々がランプ内のターミナル11に接続する。
ワイヤー720の端部を一方の壁S2に固定する留具は、固定部材付きワイヤーグリップ310(図13参照)を使用できる。一方、ワイヤー720の他端を他方の壁面S1に固定する留具は、電極固定具110(図10参照)を使用できる。なお、この場合、電極固定具110で分けられた芯線とともに、外周線層もFケーブルCから引かれた棒端子15に接続する。すなわち、図10に示すように、電極固定具110でアース線120に接続していた外周線層を導線に接続して、この導線を端子15に接続することもできる。
なお、壁S2に固定された固定部材付きワイヤーグリップ310から通電することもできる。
図21は、本発明の第8の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の装置701´は、図19の電気機器吊下装置701と同じ構造であり、複数のランプ3を、天井S1と床S2との間に直列に繋ぐように配置したものである。
図22は、本発明の第9の実施の形態に係る電気機器吊下装置の構造を説明する図である。
この例の装置は、薄型液晶テレビやサインディスプレイ等の電気機器の吊り下げに適用できる。
同装置901は、重量が重く、平坦な形状の電気機器910の吊り下げに適しており、2本の通電ワイヤーを使用する。通電ワイヤーは、図1の電気機器吊下装置と同様の通電ワイヤー20(図2参照)を使用できる。ワイヤーの下端はフック付きワイヤーグリップ40(図3、4参照)で電気機器910に取り付けられる。
この例においては、天井側にレール18と専用のアタッチメント19を設けることにより、ワイヤー吊り下げ位置の横方向の調整ができる。レール18は、天井5のやや下方で対向する壁間を延びるように架設される。そして、レール18には、レールをスライド可能なアタッチメント19が取り付けられる。ワイヤー20の上端は固定部材付きワイヤーグリップ310(図13参照)によってアタッチメント19の下部に固定される。ワイヤー20は、アタッチメント19から上方に引き出され、天井5に開けられた孔を通り、天井裏でFケーブルCから引かれた棒端子15に接続される。
上述のように、電力通電ワイヤーとして、3種類のワイヤー(図2、図16、図18参照)を使用し、ワイヤーの留具として、フック付きワイヤーグリップ40(図3参照)、電極固定具110(図10参照)、固定部材付きワイヤーグリップ310(図13参照)を使用し、導線引出し具としてアース金具350(図14参照)や電極固定具110を適当に組み合わせて使用できる。これらの中から適当なワイヤーや留具を選択することによって、照明機器等の電気機器を様々な形態で吊り下げることができる。
次に、他の例について説明する。
この例においても、電力通電ワイヤーの下端部を、下側留具(フック付きワイヤーグリップ)を用いて電気機器(照明機器)に連結し、同ワイヤーの導電線を電気機器の端末に接続する方法を説明する。この電力通電ワイヤーは、図2の電力通電ワイヤー20とほぼ同じ構造を有し、高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線と、芯線の外周に被覆された絶縁層と、絶縁層の外周に被覆された外周線層とを有するが、外周線層の構造が異なり、非磁性の金属製細線からなる縦線束と横線束が編まれた編線で作製される。金属製編線は収縮性を有するとともに、ワイヤーの長さ方向に寄せる(スライドする)ことができる。また、電力通電ワイヤー自体が柔軟である。
下側留具は、電力通電ワイヤーを任意の位置でグリップするワイヤーグリップと、照明機器の釣り部材に引っ掛けられるフック(図3の符号43)とからなる。フックについては説明を省略する。
図23は、ワイヤーグリップの全体形状を説明する図であり、図23(A)は正面図、図23(B)は左側面図、図23(C)は右側面図、図23(D)は平面図である。
このワイヤーグリップ1001は、ワイヤーWを同グリップに挿通して固定するための治具1101を備える。図に示すように、治具1101の外形はワイヤーグリップ1001の外形に沿う形状を有する。
まず、ワイヤーグリップ1001の構造を説明する。
図24は、ワイヤーグリップの構造を説明する分解斜視図である。
図25は、図24のワイヤーグリップの構造の一部を説明する図であり、図25(A)は側面図、図25(B)は図25(A)のA−B断面図である。
ワイヤーグリップ1001は、外スリーブ1005と、内スリーブ1021と、ボール1033と、スプリング1051と、スプリング押え1041とから構成され、図5等で示したワイヤーグリップ41とほぼ同様の作用を有する。
外スリーブ1005は、円筒状部1007とフランジ部1008とを有する。同スリーブの中心軸上には、内スリーブ通し孔1009が形成されている。内スリーブ通し孔1009は、端部に向かってつぼまるテーパ面1011と、テーパ面に続く円筒面1013とを有する。
外スリーブ1005には、同スリーブの外周面から内スリーブ通し孔1009に連通するすり割溝1015が形成されている。すり割溝1015は、外スリーブ1005の全長に渡って延びている。
内スリーブ1021は、外スリーブ1005の内スリーブ通し孔1009に嵌合され、小径円筒状部1023、小径円筒部から拡がるテーパ部1025、テーパ部に続く大径円筒状部1027を有する。内スリーブ1021の中心軸上には、電力通電ワイヤーが通されるワイヤー通し孔1029が形成されている。
内スリーブ1021には、同スリーブの外周面からワイヤー通し孔1029に連通するすり割溝1031が形成されている。すり割溝1031は、内スリーブ1021の全長に渡って延びている。
テーパ部1025には、テーパ外周面とワイヤー通し孔1029との間を、ワイヤー通し孔の孔軸の直交方向(径方向)に延びる3個のボールセット孔1031が開けられている。各ボールセット孔1031は、ワイヤー通し孔1029の孔軸の周方向に等間隔(120°間隔)で配置されている。各ボールセット孔1031には、ボール1033が嵌合している。各ボール1033は、電気絶縁性の材料(例えば、硬質プラスチックス(ナイロン、デルリンなどエンジニアプラスチックス)、セラミックス(例えばアルミナ))で作製される。各ボールセット孔1031の径は、ボール1033の径+α(例えば、0.1mm)であり、長さ(径方向)はボール1033の径よりやや短い。ボールセット孔1031をこのような寸法にすることにより、各ボールセット孔1031にボール1033を嵌合したときに、各ボール1033は、ワイヤー通し孔1029に突き出る。
大径円筒部1027には、2つのスプリング収容溝1035と、1つのガイド溝1037(図25参照)が形成されている。後述するように、スプリング収容溝1035には、内スリーブ1021をワイヤー通し孔1029の孔軸方向に付勢するスプリングが収容され、ガイド溝1037には、内スリーブ1021を真っ直ぐに付勢するためのまわり止め軸が収容される。各溝は、大径円筒部1027の端面から内スリーブ1021の長さ方向に延びている。図25(A)に示すように、各スプリング収容溝1035は、内スリーブの円周方向において、すり割溝1031に対して両方向に90°周った位置に形成され、ガイド溝1037は、すり割溝1031に対して180°周った位置に形成されている。各スプリング収容溝1035の長さは、ガイド溝1037の長さよりやや短い。また、各溝の底面は半球状となっている。さらに、スプリング収容溝1035の上端も半球状となっている。
図25に分かりやすく示すように、スプリング押え1041の中心にはワイヤー通し孔1043が開けられている。スプリング押え1041には、外周面からワイヤー通し孔1043中心に延びるすり割溝1045が形成されている。
スプリング押え1041の内側の面(外スリーブ側の面)には、長さ方向に延びる2本のスプリング保持ピン1047と、1本のまわり止め軸1049が立設されている。各スプリング保持ピン1047にはスプリング1051が挿通されており、各スプリング1051の先端にはボール1053が配置されている。各スプリング保持ピン1047の長さは、まわり止め軸1049の長さよりやや短い。各スプリング保持ピン1047は、スプリング押え1041の円周方向において、すり割溝1045に対して両方向に90°の位置に形成され、まわり止め軸1049は、すり割溝1045に対して180°の位置に形成されている。つまり、スプリング押え1041のすり割溝1045と内スリーブ1021のすり割溝1031を同じ円周方向位置に合わせたとき、スプリング押えの各スプリング保持ピン1047は、内スリーブのスプリング収容溝1035の位置に位置し、まわり止め軸1049は内スリーブのガイド溝1037の位置に位置する。
スプリング押え(キャップ)1041は、すり割溝1045が、外スリーブ1005のすり割溝1015と同じ円周方向位置に位置するように、外スリーブ1005のフランジ部1008にビス1042で固定される。これにより、スプリング押え1041、内スリーブ1021、外スリーブ1005の各すり割溝1045、1031、1015が連通する。このすり割溝は、ワイヤーグリップ1001の外周面からワイヤー通し孔1029へ延びている。
スプリング押え1041が外スリーブ1005のフランジ部1008に固定されると、スプリング1051が挿通されたスプリング通しピン1047は、内スリーブ1021のスプリング収容溝1035内に位置する。そして、スプリング1051はボール1053を介して内スリーブ1021のスプリング収容溝1035の先端の半球状面に当たり、内スリーブ1021はスプリング1051によりスプリング押え1041に対して前方へ付勢される。内スリーブ1021はまわり止め軸1049に沿って真っ直ぐに付勢されて、内スリーブ1021のテーパ面1025が、外スリーブ1005のテーパ内面1011に内接する。すると、内スリーブ1021の各ボールセット孔1031に嵌合されているボール1033は、その外側の面が外スリーブ1005のテーパ面1011に押されて、内側の面がワイヤー通し孔1029に突き出る。これにより、各ボール1033の突き出た部分が、ワイヤー通し孔1029に通されたワイヤーの外周線層に押し当てられワイヤーがグリップ1001にグリップされる。この際、編線の編目に引っ掛かかると同時に、編目にかかった張力により編目が半径方向に収縮しようとして絶縁層をグリップする力が増す。
グリップを解除するには、内スリーブ1021をスプリング1051の力に抗してスプリング押え1041方向へ付勢する。すると。外スリーブ1005のテーパ内周面1011に内接していた内スリーブ1021のテーパ面1025が後退し、外スリーブ1005のテーパ内周面1011と内スリーブ1021のテーパ面1025との間、すなわち、内スリーブ1021のテーパ面1025の外側にスキマが開く。このスキマが開くことにより、各ボールセット孔1031に嵌合されていたボール1033が外方向に移動可能となり、各ボール1033がワイヤーをグリップしていた力がなくなる、もしくは、この力が弱くなり、ワイヤーのスライドが可能になる。
なお、このワイヤーグリップ1001のボール1033は電気絶縁性材料で作製されているため、ボール1033がワイヤーの外周線の網目から絶縁層に食い込むようなことがあっても、ワイヤーの芯線の十分な絶縁性を保つことができる。
なお、ワイヤーがある程度の剛性を持っている場合は、ワイヤーを先端からこのワイヤーグリップ1001のワイヤー通し孔1029に通すことができる。しかし、外周層が金属製編線で形成されているような電力通電ワイヤーを先端からワイヤー通し孔1029に通そうとすると、先端に終端キャップを取り付けるなどの端末処理が必要になる。つまり、このような外周線層が金属製編線で形成された電力通電ワイヤーを実際に取り付ける際は、予め所定の長さに切断して、先端を端末処理しておかなければならない。このため、実際の取付現場において、取付場所の高さのくるいが生じている場合などの要因によって長さを変える必要が生じる状況では不都合が生じる。
そこで、このワイヤーグリップ1001においては、ワイヤーの途中を同グリップのすり割溝1015、1031、1045からワイヤー通し孔1029、1043に押し込む。この際、ワイヤーを押し込むための治具1101を使用する。
図26は、治具の構造を説明する図であり、図26(A)は正面図、図26(B)は底面図、図26(C)は側面図である。
この治具1101は、内スリーブ1021を外スリーブ1005に対して押圧し、ワイヤー通し孔1029を開くとともに、ワイヤーを、開いたワイヤー通し孔1029に押し込むように作用する。治具1101は、内スリーブ1021をスプリング1051の付勢方向と反対方向に押すためのリング状のスリーブ押し部(リング部)1103と、リング部から延びて、すり割溝からワイヤー通し孔にワイヤーを押し込む帯片部1105とを有する。
リング部1103は外周面と内周面を有する。リング部1103の外径は、外スリーブ1005の円筒部1007の外径と等しく、内径は内スリーブ1021の小径円筒部1023の外径と等しい。リング部1103には、外周面から内周面に延びるワイヤー通し溝1107が形成されている。同溝の幅は、ワイヤーの幅より広い。
帯片部1105は、リング部1103の内周面からリング部の径方向に突き出た基部1109と、リング部1103と基部1109の一端面から、リング部1103に対して直角に延びる本体部1111を有する。つまり、基部1109と本体部1111は、図26(C)に示すように、治具1101を側面から見たとき、リング部1103の径方向に突き出ている。本体部1111の長さは、外スリーブ1105のすり割溝1015の長さと等しい。帯片部1105の幅は、すり割溝の幅とほぼ等しい。基部1109の断面形状は方形である。本体部1111の断面形状は、外側の辺1111aが方形であり、内側の辺1111bが先細となっている。
リング部1103には、後述するように、治具1101をグリップ等に繋ぐためのひもを接続する突部1113が設けられている。また、帯片部1105の先端には、外方向に延びる突部1115が設けられている。
次に、治具1101の作用について説明する。
図27、28は、治具の作用を説明する正面断面図である。
まず、図27(A)に示すように、ワイヤーグリップ1001の各すり割溝1015、1031、1045に、ワイヤーWの途中を嵌め込む。ワイヤーWは、各すり割溝を通り、ワイヤー通し孔1029に突き出ている各ボール1033に当たる。
そして、図27(B)に示すように、治具1101を、リング部1103を内スリーブ1021側に位置させ、ワイヤーWをワイヤー通し溝1107からリング部1103に通す。次に、帯片部1105を各すり割溝1015、1031に合わせる。このとき、ワイヤーWがボール1033に当たっているため、帯片部1105はワイヤーWに当り、完全にすり割溝に入り込まない。このため、図に示すように、治具1101はグリップ1001に対して斜めとなり、リング部1103が内スリーブ1021の下部の一部を嵌合する。そして、帯片部1105の本体部1111の基部が内スリーブ1021のすり割溝1015に嵌り、本体部1111はすり割溝1015内のワイヤーWに当たって斜めに延びる。
次に、治具1101のリング部1103をワイヤーグリップ1001に向かって押し込む。すると、内スリーブ1021が外スリーブ1005に対して押され、徐々に内スリーブ内の各ボール1033が外方向に移動できるようになる。さらに、リング部1103をワイヤーグリップ1001に向かって押し込むと、帯片部1105はすり割溝1015内でワイヤーWをワイヤー通し孔1029に押し込む。そして、図28(A)に示すように、リング部1103の端面が外スリーブ1005に当たり、治具1101の全体が図の時計方向に回転する。次に、図28(B)に示すように、リング部1103が内スリーブ1021の小径円筒部1023を完全に嵌合するとともに、帯片部1105がワイヤーWをワイヤー通し孔1029に押し込む。このとき、帯片部1105の本体部1111の内側の辺1111bは先細となっているため、ボール1033間のスキマにも入り込むことができ、ワイヤーWを完全にワイヤー通し孔1029に挿通できる。その後、内スリーブ1021を押し込む力を解除すると、内スリーブ1021はスプリング1051により付勢されて、ボール1033がワイヤー通し孔1029に突き出て、ワイヤーWの網目をグリップする。これにより、ワイヤーWをワイヤーグリップ1001に固定できる。
なお、図28(B)に示すように、治具1101がワイヤーグリップ1001のすり割溝に挿入されたとき、治具1101はグリップ1001の外形に沿う形状であるため、治具1101はこのままグリップ1001に装着しておいてもよい。この場合、後述するように、治具1101の突部1113につなぎひもを通して、このひもで治具1101をグリップ1001や周辺の部材につないでおくこともできる。
次に、治具1101の他の構造を説明する。
図29は、治具の構造の他の例を説明する図である。
この例の治具1201は、図26の治具と同様の構成であり、リング部1203と帯片部1205を有するが、帯片部1205の先端に突部(図26の符号1115)が形成されていない。また、帯片部1205の先端の内側の部分1205aが丸められている。このような構造とすることにより、帯片部1205の操作がスムーズになる(ワイヤーに対してスムーズに滑る)という効果が得られる。
次に、このワイヤーグリップ1001を電気機器に取り付ける方法について説明する。
図30は、ワイヤーグリップを電気機器に取り付けた状態を示す図である。
ここでは、上述のワイヤーグリップ1001でワイヤーWを照明器具の取り付けベースBに取り付ける方法を説明する。なお、この例のワイヤーグリップ1001は、図30(A)に示すように、外スリーブ及びスプリング押え板1041の側面の一部が平らになっている。
照明器具の取り付けベースBには貫通孔Oが開けられており、同貫通孔Oにはパイプ1301が通されている。ベースBから外側に突き出たパイプ1301には、ワッシャ1303を介してL字型のブラケット1305が固定されている。ワイヤーグリップ1001は、スプリング押え板1041を下側にして、外スリーブ及びスプリング押え板の平らな側面をブラケット1305に当て、スプリング押え板1041をブラケット1305にビス1307で固定する。
治具1101は、つなぎひも1150でブラケット1305につながれている。そして、ワイヤーWをグリップ1001に取り付けた後も、治具1101をグリップ1001に取り付けておく。治具1101は、通常、ワイヤー取付時に使用するものであるが、ワイヤーの長さを変える場合等にも使用する場合がある。このため、治具は常にワイヤーグリップのそばに用意しておくことが好ましい。そこで、このようにつなぎひも1150で治具1101をブラケット1305につないでおくことにより、治具1101をなくしたり、ワイヤーの取り外しや長さ変更時に改めて治具を用意する必要がない。
照明機器を吊るすには、まず、上述の方法で、天井などから吊り下げられたワイヤーWを所定の位置(照明器具の高さ)でワイヤーグリップ1001に取り付ける。そして、ワイヤーグリップ1001を、照明機器のベースに取り付けられたブラケットに固定する。次に、ワイヤーグリップ1001のワイヤー通し孔から出たワイヤーWを、パイプ1301を通して照明器具内の端末まで延ばし、そこで切断する。その後、ワイヤーの切断された端面から外周線層をワイヤーの長さ方向に寄せて(ずらして)絶縁層を露出させる。そして、絶縁層をニッパー等で剥いて導電線を露出させ、この導電線の端部を照明機器のコンタクトに接続する。
図31は、他の例のワイヤーグリップを電気機器に取り付けた状態を示す図である。
この例のワイヤーグリップ1501は、上述のワイヤーグリップ1001と同じ構成・作用を有するが、外スリーブの形状が異なる。この外スリーブ1503は、図に示すように、円柱形であり、円柱の中心軸がワイヤー通し溝1505の孔軸と直交するように配置されている。外スリーブ1503をこのような形状にすることによって、外スリーブの円形の側面に、別の取付部材を取り付けやすくなる。このため、例えば、電力通電ワイヤーの途中に棚等を取り付ける際に、このワイヤーグリップ1501をワイヤーの途中に固定し、同グリップの外スリーブの側面に取り付けられた取付部材に棚取り付け用の部材を接続することができる。
上述の例と同様に、照明器具の取り付けベースBには貫通孔Oが開けられており、同貫通孔Oにはパイプ1531が通されている。ベースBから外側に突き出たパイプ1531には、ワッシャ1533を介してブラケット1535が固定されている。ブラケット1535は、コの字型で、下壁と、下壁の両側から立設する側壁を有する。ブラケット1535は下壁でパイプ1531に固定されている。ワイヤーグリップ1501は、ブラケット1535の両側壁間に配置され、円形の両側面がブラケットの両壁にビスで固定される。
なお、ワイヤーWは、この例で示すように、ワイヤーグリップ1501のワイヤー通し孔1505からパイプ1531を通さずにベースBの上方で曲げて引き出すこともできる。
この例においても、治具1511とブラケット1501とが繋ぎ紐1521でつながれている。
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、通電と吊り下げとを1本のワイヤーで兼ねるとともに、高い引っ張り強度を備えた電力通電ワイヤーを提供することができる。そして、このワイヤーに適したワイヤーグリップ等を使用することにより、照明機器や液晶ディスプレイ、スピーカ、マイク等の重量の重い電気機器を吊り下げることのできる吊下装置を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線と、
該芯線の外周に被覆された絶縁層と、
該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製縒線からなる外周線層と、
を具備することを特徴とする電力通電ワイヤー。
【請求項2】
高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線と、
該芯線の外周に被覆された絶縁層と、
該絶縁層の外周に被覆された高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる外周線層と、
該外周線層の外周に被覆された最外周絶縁層と、
を具備することを特徴とする電力通電ワイヤー。
【請求項3】
ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、
前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、
前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、
該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、
を具備し、
前記内スリーブのボールセット孔が前記通し孔の孔軸方向に2段以上設けられており、
各段のボールセット孔に、径の異なる複数種のボール(大ボール、小ボール)が嵌合していることを特徴とするワイヤーグリップ。
【請求項4】
前記ボールセット孔が前記通し孔に開孔する部分に、前記ボールの前記ワイヤー通し孔への過度の突出を防止するストッパ部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のワイヤーグリップ。
【請求項5】
前記2段以上のボールセット孔として、3個の大ボールセット孔と3個の小ボールセット孔が、前記内スリーブの周方向に交互に振り分けられて形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載のワイヤーグリップ。
【請求項6】
高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、及び、該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製縒線からなる外周線層、を有する複数の電力通電ワイヤーと、
該ワイヤーの各々の下端部に接続された、電気機器の複数の吊り部材に各々連結される複数の下側留具と、
該ワイヤーの各々の上端部に接続された上側留具と、
を具備することを特徴とする電気機器吊下装置。
【請求項7】
前記複数の電力通電ワイヤーの内の少なくとも2本の下端部から前記電気機器のターミナルに前記ワイヤーの芯線が接続され、
該ワイヤーの上端部から電路に前記ワイヤーの芯線が接続されることを特徴とする請求項6記載の電気機器吊下装置。
【請求項8】
高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、該絶縁層の外周に被覆された高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる外周線層、及び、該外周線層の外周に被覆された最外周絶縁層、を有する電力通電ワイヤーと、
該ワイヤーの下端部に接続された、電気機器の吊り部材に連結される下側留具と、
該ワイヤーの上端部に接続された上側留具と、
を具備することを特徴とする電気機器吊下装置。
【請求項9】
前記電力通電ワイヤーの下端部から前記電気機器のターミナルに前記ワイヤーの芯線及び外周線層が接続され、
該ワイヤーの上端部から電路に前記ワイヤーの芯線及び外周線層が接続されることを特徴とする請求項8記載の電気機器吊下装置。
【請求項10】
ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、
前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、
前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、
該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、
を具備するワイヤーグリップであって、
前記内スリーブ及び前記外スリーブに、前記ワイヤー通し孔に連通するすり割溝が形成されており、
ワイヤーを該すり割溝に押し込む治具が付設されていることを特徴とするワイヤーグリップ。
【請求項11】
前記治具が、
前記内スリーブを、前記スプリングの付勢方向と反対方向に押すためのスリーブ押し部と、
該スリーブ押し部から延びて、前記すり割溝にワイヤーを押し込む帯片部と、を有することを特徴とする請求項10記載のワイヤーグリップ。
【請求項12】
高強度・高導電性の銅合金製縒線からなる芯線、該芯線の外周に被覆された絶縁層、及び、該絶縁層の外周に被覆された非磁性の金属製編線からなる外周線層、を有する電力通電ワイヤーを用いて電気機器を吊り下げる方法であって、
該ワイヤーに接続され、電気機器の吊り部材に連結されるワイヤーグリップが、
ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、
前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、
前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、
該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、を具備し、
さらに、該ワイヤーグリップは、その内スリーブ及び外スリーブに、前記ワイヤー通し孔に連通するすり割溝が形成されているとともに、ワイヤーを該すり割溝に押し込む治具が付設されており、
前記電力通電ワイヤーを、前記ワイヤーグリップの横方向から前記すり割溝に当て、前記治具を用いて該ワイヤーを前記すり割溝に押し込むことにより該ワイヤーを前記ワイヤーグリップに入れることを特徴とする電気機器吊り下げ方法。
【請求項13】
前記電力通電ワイヤーを適当な長さに切断した後、該電力通電ワイヤーの切断された端面から前記外周線層を該ワイヤーの長さ方向に寄せて絶縁層を露出させ、次いで、該絶縁層をむいて該ワイヤーの芯線を前記電気機器の端末に接続するとともに、
前記の寄せた外周線層を前記すり割溝に通すことを特徴とする請求項12記載の電気機器吊り下げ方法。
【請求項14】
ワイヤーが挿通されるワイヤー通し孔、該ワイヤー通し孔の内面及び該スリーブ外周面の双方に開口するボールセット孔、並びに、該ボールセット孔の存在する部分のスリーブ外周に形成されたテーパ外周面、を有する内スリーブと、
前記ボールセット孔に嵌合するとともに、前記ワイヤー通し孔に一部突出して前記ワイヤーの外周面に押し当てられる複数のボールと、
前記内スリーブのテーパ外周面に内接するとともに、前記ボールを内方向に押すテーパ内周面を有する外スリーブと、
該外スリーブに対して前記内スリーブを前記テーパ外周面のつぼまり方向に付勢するスプリングと、
を具備するワイヤーグリップであって、
前記ボールが電気絶縁性の材料からなることを特徴とするワイヤーグリップ。

【国際公開番号】WO2004/036115
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544991(P2004−544991)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013374
【国際出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【出願人】(502381195)有限会社 エー・ジー・ケー (10)
【Fターム(参考)】