説明

電力需給平準化システム

【課題】揚水発電所方式の代替システムとして、深夜電力に加えて自然エネルギーを利用した風力発電・太陽光発電等の電力も貯蔵でき、環境破壊も大量のCO排出もない安価な無公害の電力需給平準化システムを提供すること。
【解決手段】本発明の電力需給平準化システムは、複数の電気所に分散配置され、深夜の余剰電力を使って水を電気分解後、水素ガスを熱交換で液体水素にして貯蔵し、電力需要ピーク時に液体水素をガス化した水素を用いて発電する。さらに、風力発電・太陽光発電等のP、Q、V短周期変動が激しい電力もP、Q、V短周期変動平滑化装置2によって平滑化して、水を電気分解するために使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の周波数や電圧を安定化させる電力需給平準化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府が2009年から推進している「スマート・グリッド・プロジェクト」と命名した省エネルギープロジェクトは、需要家側の省エネを目的としているのに対して、本発明は、電力供給者側の省エネを目的としている。
【0003】
(昼間と深夜の電力需要変動対策)
図6に示すように、電力需要は、一日の間に時間単位で見ても大きく変化するため、電力需給を平準化して電力需要と発電量をバランスさせている揚水発電方式の代替システムとして、深夜の余剰電力を使って水を電気分解して発生した水素ガスを液体水素にして貯蔵しておき、電力需要ピーク時に貯蔵しておいた液体水素をガス化した水素ガスを使用して発電する電力需給平準化システムが考えられていた。(特許文献1参照)
【0004】
(フェランチ現象の発生防止対策)
都市部の地中ケーブル送電線やEHV(2〜4導体)、UHV(6〜8導体)送電線を数10回線以上も収容した発変電所の静電容量は、近年非常に大きくなっているため、平日の深夜や、年末年始、5月のゴールデンウィーク、8月お盆休み等(特異日と称す)の期間中は、工場やオフィスが休みで都市の電力需要は大幅に減少するため、フェランチ現象(Ferranti phenomena)という電力系統の異常な電圧上昇が発生する。このような電力系統の異常な電圧上昇を防止するため、リアクトルや変圧器タップ調整、ShR(シャントリアクトル)の全量投入、SC(静止型コンデンサー)の解列、平行送電線2回線区間の1回線を解列して1回線の送電線として運転する等の対策が行われている。しかし、この1回線の送電線で事故が発生すれば、即、停電となる。更に、送電線事故が無いにも拘らず電力系統が不安定となることもあった。
【0005】
(地球環境対策)
CO排出による地球環境破壊防止のためのグローバルなCO排出削減規制の強化及び石炭や石油等の化石燃料資源の枯渇によるコストの高騰等のため、化石燃料を使用しない発電方式として、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した風力発電・太陽光発電等が行われているが、その発電量の変動を吸収するために風力発電・太陽光発電等の電力を使って発生した水素ガスを液体水素にして貯蔵し、その液体水素をガス化した水素ガスを使用して発電することも考えられている。(特許文献2、非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−363779号公報
【特許文献2】特開2004−99359号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】後藤信、呉国紅、多田泰之、皆川保、「風力発電と電力貯蔵装置併用時における電力システムへの導入効果に関する基礎検討」、電気学会論文誌B、127巻5号、2007年、637−644頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、揚水発電方式の代替システムとして、従来の深夜の余剰電力に加えて、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーも蓄積しておき、電力需要ピーク時に、必要な電力を安定した出力や電圧で提供でき、環境破壊も大量のCO排出もない安価な無公害の電力需給平準化システムを提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、自然エネルギーを利用した風力発電・太陽光発電等は、電力需要と無関係に発電され、P(有効電力)、Q(無効電力)、V(電圧)が時々刻々大きく変動し、電力系統の安定性を損なう原因となっているので、この課題を解決し、風力発電・太陽光発電等の発電量を有効に利用できるようにすることである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、高価なSVC(Static Var Compensator、静止型無効電力補償装置:進相電流量を連続的に0〜最大量まで連続的に、且つ、高速に変化できるもの)、SVG(Static Var Generator、静止型無効電力補償装置:Var(無効電力)を+から−(最大進相電流量から最大遅相電流量)まで連続的に、且つ、変化できるもの)等の設備を配備することなく、フェランチ現象による電力系統の異常な電圧上昇や電力系統の不安定現象を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多数の電気所に分散配置されて運用される電力需給平準化システムである。風力発電所・太陽光発電所等からP、Q、V短周期変動の激しい電力を受電する電気所にはP、Q、V短周期変動平滑化装置2も備えて平滑化した電力を昼間に供給し、深夜時間帯では水を電気分解し、水素を貯蔵、翌日の発電に使用する。
【0012】
本発明の電力需給平準化システムは、水を電気分解して製造された液体水素を液体水素貯蔵装置30に貯蔵し、電力需要ピーク時に、前記液体水素貯蔵装置30に貯蔵された液体水素を水素ガス化装置40でガス化し、その水素ガスを水素ガスタンク41に貯蔵し、発電装置50がその水素ガスを用いて発電し、電力系統を使って送電する。
【0013】
また、本発明の発電装置50は、発電機軸と水素ガス燃焼原動機軸を自動的に連結/切り離し可能な発電機装置となっている。従って、発電所としての役割を果たすだけでなく、この水素ガス燃焼原動機で駆動し、自動並列装置を使って発電機(同期機)を電力系統に並列後、この水素ガス燃焼原動機軸と発電機軸とを連結するクラッチを切り離して同期調相機運転することで、電力系統網の電圧を平滑化する系統電力系統電圧調整装置として使用する。
【0014】
平日の深夜および特異日の昼夜に、フェランチ現象の発生防止対策として、本発明のシステムが分散設置されている電気所の発電装置50を全て調相機運転モードで並列して運転する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来の深夜の余剰電力に加えて、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーも蓄積しておくので、電力需要ピーク時に、必要な電力を安定した出力や電圧で提供でき、安定且つ高品質の電力を供給できる。また、本システムは離島などの単独系統で風力発電機を多数設置された場所でも効果が高い。
【0016】
また、平日の深夜および特異日の昼夜に、フェランチ現象の発生防止対策として、本発明のシステムが分散設置されている電気所の発電装置50を全て同期調相機運転で並列して置くことで電力系統の異常高電圧の発生を防止できる。
【0017】
本発明は、P、Q、V短周期変動平滑化装置を備え、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーも液体水素に変換、貯蔵し、電力需要ピーク時に電力エネルギーに変換するので、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーを電力会社からも歓迎されるエネルギーに変身させ、わが国のCO排出量を削減することができる。
【0018】
本発明は、風力発電・太陽光発電等の変動の激しい電力を液体水素に変換・貯蔵後、電力需要ピーク時に、電力に再変換することで、安定した電力を電力系統に送電することにより従来利用できなかった自然エネルギーも有効に利用できる。また、揚水発電方式と比べ、エネルギーの蓄積と発電を電力需要地近辺で行うので、送電損失は大幅に少なくなる。
【0019】
本発明の発電装置50は、フェランチ現象の発生防止対策が必要な時に、電力系統に並列して同期調相機運転でき、電力系統の電圧を平滑化させることで電力系統の安定度が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の小型電力需給平準化システムを示す。
【図2】本発明の実施例2の大型電力需給平準化システムを示す。
【図3】本発明の実施例3の製鉄所に隣接又は近接したコンビナート立地型小型電力需給平準化システムを示す。
【図4】本発明の実施例4の水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドシステムを示す。
【図5】本発明の実施例5の人口衛星打上げ基地用液体水素・液体酸素補給システムを示す。
【図6】電力需要の1日24時間変動と各種電力エネルギー分担を示す。
【図7】電力系統運用の保安確保及び最適化のための階層構造の運用指令形態を示す。
【図8A】本発明の小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置の構成を示す。
【図8B】本発明の小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置の起動に用いる均一ブリッジ型サイリスタ励磁方式の同期機起動並列用サイリスタ磁励装置を示す。
【図8C】本発明の大電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置の構成を示す。
【図9】本発明の同期調相機兼用の発電装置を示す。
【図10】本発明の同期調相機、フライホイール調相機兼用の発電装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(前提条件)
電力系統の運用体制は、全世界で、保安確保のために、図7に示す階層構造の運用指令形態を採用している。
(1)各電力会社の中央給電指令所→地区電力系統遠隔監視制御所→電気所(水力、火力、原子力、地熱等の発電所と変電所)にいたる階層制御構造になっている。各電力会社の中央給電指令所の電力系統運用自動化システム(EMS:Energy Management System)90は、地区電力系統遠隔監視制御所(SCC:Supervisory Control Center)の地区遠隔監視制御システム91を介して各電気所を最適に運用する。電力系統運用自動化システム90の監視制御情報データはWAN又はLAN経由で、LFC(Load Frequency Control)、EDC(Economical Dispatch Control)制御信号は、より信頼度の高い専用ITC(Intelligent Telemeter Control System)を使って伝達される。
(2)水力発電所や変電所は全て無人で、運転は地区電力系統遠隔監視制御所から遠隔監視操作自動制御が実施されている。
【0022】
電力系統運用自動化システム90が、本発明の電力需給平準化を実施する場合、送電損失が少なく、電圧変動も少なく、電力系統安定度も良く、コストも最小の電力系統潮流分布になるよう各地の発電所出力を最適化し、複数の電気所に装備された電力需給平準化システムは地区遠隔監視制御システム91によって自動的に遠隔制御される。本発明の電力需給平準化システムが連繋する電力系統の中央給電指令所の電力系統運用自動化システム90は、1日24時間分の全系統総需要(MW)カーブを予想し、全発電所の最適な発電出力分担を自動的に決定する。
本発明の電力需給平準化システムは、GPS(Global Positioning System)信号を受信し、電力需給平準化システムが備える「制御装置70」のSCADA(System Control And Data Acquisition:制御用信号およびデータの送信、受信、伝達などのデータリンクをLAN、WAN、ITC等を使って実施するインターフェース)で、電力系統運用自動化システム90からの指令、制御信号を受信し、計測データ、制御操作、事故発生・検出等の事象発生時刻をミリ秒単位の精度でスタンピングしているので事故現象解析を的確に、且つ、敏速に事故現象を究明できる。これらのデータは、「制御装置70」のSCADAでデータ処理され、上位の制御所や指令所にアップロードされる。
【0023】
(発電装置の方式)
本発明の電力需給平準化システムに用いる発電方式として、次の四つが考えられる。
(1)水素燃料電池方式(数百kW以下の電気所)
水素燃料電池にも種々な方式と特性があるが、騒音がなく、環境性に優れているがコストは高くなる。貯蔵できるエネルギーも少なく小規模発電向きである。
(2)水素燃料ロータリーエンジン発電方式(数万kW以下の電気所)
水素ガス、ガソリン、LNGガス等を使用できる。発電効率は少々劣るが電力需要の直近位置で発電できるので送電損失を大幅に減少できる。補修、運転等は容易、且つ、機器は丈夫である。同期調相機運転やフライホイール調相機運転も容易である。電力系統の軽負荷時に発生する様々な課題(軽負荷時のフェランチ現象による異常電圧、系統安定度等)の解決に有効である。
(3)ガスタービン発電方式(数10万kW未満の電気所)
水素ガスタービン発電方式で20〜80MW級の中規模の発電向きである。極低温の液体水素貯蔵装置を保有し、大量の水素ガスを燃焼して高温度ガスでタービンを駆動し発電するので、発電に係わる熱管理が重要である。単体の水素ガスタービンだけでは熱効率が悪い。液体水素や液体酸素の極低温とタービンの廃熱を地域冷暖房と組み合わせて、熱効率を上げることができる(都市内立地のケース)。
(4)コンバイドサイクル発電方式(数100万kW以上の電気所)
上記のガスタービン発電装置3台の高温廃熱ガスを蒸気ボイラー(1台)に導き発生した蒸気を利用して蒸気タービン発電機(1台)で発電する。このコンバイドサイクル発電方式が、現在一番熱効率が高い。
なお、(2)〜(4)の発電装置は、LNGガスに水素ガス10〜30%程度混合した燃料を用いて発電してもよい。
【0024】
(運用形態)
本発明の電力需給平準化システムの運転モードは以下の5種類ある。
(1)発電(揚水発電所代替)モード:
平日の電力需要ピーク時間帯に最大出力で4〜6時間程度の発電を行う。運転時間は事前に生成・貯蔵した水素ガス量で決まる。発電中は電力需給平準化、送電損失減少、二次系統送電電圧安定化を行う。
(2)系統電圧制御専用モード:
前記の電力系統に連繋した発電機(=同期機)の原動機を切離して連繋系統の同期調相機運転を行い、平日深夜および特異日の軽負荷時の異常電圧を防止する役目を分担する。
(3)電力変動抑制運転モード:
風力発電や鉄鋼所のコールドストリップミル使用により送電線のP、Q、Vに発生する秒オーダの変動をフラィホィールと同期調相機運転で平滑化する。
(4)水素生成モード:
水電気分解、液体水素生成と液体水素貯蔵を行う一連の運転操作を実行する。
(5)試験モード:
各装置単位に装置の状態をオフラインで試験、チェックする。
(6)停止モード:
運転中の機器を停止させる。
(その他)
P、Q、V短周期変動平滑化装置は、ユニット数を増減することで必要な容量を確保し、制御装置とリンクできる。
現地電気所の制御装置70および地区遠隔監視制御システム91の制御装置デスプレー上に運転モードと状態を表示し、運転モード選択操作、実施および停止操作を実行する。
【実施例1】
【0025】
図1に示す本発明の実施例1は、電力需要が集中する都市内又は都市近郊の多数の電気所に設置され、主として二次系統(66kV又は154kV)又は配電系統(6.6kV)に連繋される小型電力需給平準化システム100を示す。
【0026】
(設備構成)
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生させる水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31、液体水素をガス化する水素ガス化装置40、水素ガスタンク41、水素ガスで発電する発電装置50を備えるが、全て1対1の必要はない。例えば、5セットの水電気分解装置10と発電装置50が、2セットの液体水素貯蔵装置30と水素ガス化装置40と水素ガスタンク41を共有して使用するように設計することでコストを低減できる。
発電装置50は水素ロータリーエンジンに直結された交流同期発電機(発電容量110kW、マツダ水素ロータリーエンジンRX−8、ハイドロエンジンRE、高圧水素ガスタンク35MPa)25台分(2.75MW)を1セットとし、将来、4セット程度まで増設可能である。これに加えて、風力発電・太陽光発電等のP、Q、V短周期変動が激しい電力を平滑化し水電気分解装置10が安定に水を電気分解できるようにするP、Q、V短周期変動平滑化装置2、販売する液体水素を出荷する液体水素出荷装置32、酸素を必要とする病院や工場のために液体酸素を出荷する液体酸素出荷装置33を設けてもよい。風力発電・太陽光発電等の自然エネルギー発電に良好な地点であれば、風力発電・太陽光発電等の発電装置を設けてもよい。実施例1では、風力発電装置1とP、Q、V短周期変動平滑化装置2とを設けて、風力発電装置1と一般商用電力送電網80からの電力がP、Q、V短周期変動平滑化装置2で平滑される。
なお、酸素の供給、販売の予定が無い場合は水電気分解直後に空気中に放出するので、この場合は酸素関係の液体酸素貯蔵装置31、バルブV202、V311等の関連バルブを閉鎖する。
【0027】
(設備運用)
各装置配管の自動バルブは全て初期状態では閉となっている。本装置の起動、停止、発電量又は電力受電量等は全て中央給電指令所の電力系統運用自動化システム90からの指令、制御信号を地区遠隔監視制御システム91経由で受信して制御装置70により自動的に運転される。制御装置70は、上記の一連の機器を備えた電気所内の全装置の運転状況を的確に監視制御する。
水素生成モードでは、制御装置70は、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31を稼動させ、電力系統連繋装置60(電気所の母線、保護リレー、遮断器等々)を制御して一般商用電力送配電網80から深夜電力を受電する。次に、バルブV101(水素用)とバルブV102(酸素用)を開いて、深夜電力を使って水電気分解装置10で水素及び酸素ガスを分離生成する。循環する冷媒と熱交換させることにより、生成された水素ガスと酸素ガスを液化させる冷凍極低温交換器と前記冷媒を圧縮するリサイクル圧縮機で圧縮された冷媒を膨張させる膨張タービンを備えた液体水素・液体酸素製造装置20で液体水素及び液体酸素を生成する。次に、バルブV201を開いて、液体水素を液体水素貯蔵装置30に貯蔵し、バルブV202を開いて、液体酸素を液体酸素貯蔵装置31に24時間以内程度貯蔵する。また、P、Q、V短周期変動平滑化装置2で平滑化された風力発電装置1の電力も、水電気分解装置10の電力として使用する。
発電モードでは、制御装置70は、電力需要ピーク時に地区遠隔監視自動制御システム91から発電指令と運転開始指示のデータを受信すると、バルブV301を開いて、液体水素を水素ガス化装置40で発電装置50の廃熱と海水、湖水、河川水等の潜熱等を使ってガス化し、バルブV401を開いて、水素ガスタンク41に収納し、バルブV411を開いて、水素ガスを発電装置50に供給し、水素ロータリーエンジンを起動、規定回転数に到達すると発電機の自動並列装置が回転数及び電圧を適切に調整して発電機を電力系統に並列する。水素ロータリーエンジン発電機は最大100台あるが全発電機を数分以内に全て並列できる。発電装置50で発電された電力は電力系統連繋装置60により一般商用電力送配電網80に送電される。
発電を停止する時は電力系統連繋装置60で当該発電セットの遮断器を制御装置70から自動又は手動等で開路すると当該セットの全発電機(25台分)が解列され、当該セットのバルブV411も自動的に閉鎖され、水素ロータリーエンジンも全てを停止する。また、この系列の全発電機が解列された場合はバルブV301、V401、V411は自動的に閉鎖される。電力系統の事故で当該セットの遮断器がオフされると当該セットの全発電機(25台分)も停止され電力系統の事故波及を防止する。
【0028】
離島用の小規模な単独電力系統に風力発電を導入し、出来るだけ安価にP、Q、Vの短周期変動を平滑化するケースに適用するP、Q、V短周期変動平滑化装置2は、図8Aと図8Bに示す小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置である。しかし、多くの風力発電機(IG:Induction Generatorを用いるものが一般的である。)を有する風力発電所を大電力系統に並列するケースに適用するP、Q、V短周期変動平滑化装置2は、図8Cに示すEDLC(Electric Double Layer Capacitor)装置を使って平滑化を行う大電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置である。
図8Aに示す小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置は台座21上に設置した同期機22とフライホイール23と、同期機22の軸とフライホイール23の軸を連結/切離可能に連結するクラッチ24と、同期機起動並列用サイリスタ励磁装置25とで構成され、送電線からの電力を用いる同期機並列用サイリスタ励磁装置25からの直流電流パルスが電源線を通して同期機22に供給され直流電流パルス・モータとして駆動する。また、図8Bに、この小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置の起動に用いる均一ブリッジ型サイリスタ励磁方式の同期機起動並列用サイリスタ励磁装置25を示す。均一ブリッジ型サイリスタ励磁方式はサイリスタ27、励磁用変圧器(PPT)28、自動電圧調整装置(AVR)29から構成されるサイリスタ逆変換装置を用いて電源周波数を変えることで、周波数に同期して電動機の速度を停止状態から定格速度まで上昇させる起動方式である。サイリスタ27は、同期機が電源と常に同期を保つように電動機回転位置に同期した点弧信号によって動作する。この小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置の起動は先ず、同期機だけをサイリスタ起動して系統に並列後、クラッチでフライホイール軸を接続する。
大電力系統に並列される多くの風力発電機を有する風力発電所の場合は、前記のフライホイールを用いる小電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置では効果が少ないため、図8Cに示す大電力系統用のP、Q、V短周期変動平滑化装置を使用する。図8Cに示す大電力系統用のP、Q、V平滑化装置は、遮断器(CB:Circuit Breaker)201−203と、DC/AC変換装置204、205と、高速に充電、放電可能な蓄電池であるEDLC装置(Battery)206−207とで構成されコンパクトに収容された装置で、EDLC装置206−207を用いて電気エネルギーを一時的にコンデンサーに蓄電し、この直流電源エネルギーをP、Q、Vを平滑するようにDC/AC変換装置204、205を使って交流変換して電力系統に電力を供給することでP、Q、Vを平滑するものである。図に示す様にこの運用はP、Q、Vの目標値を時間のカーブとして目標値を与えることにより時々刻々の目標値からの偏差値(ΔP:Pの変動量観測値、ΔV:Vの変動量観測値)を小さくするように制御される。P、Q、Vの目標値を与えるソフトウェアを様々な制御目的に応じた目標値を与えることで、対象とする電力系統に適切な運転を行える。
P、Q、V短周期変動平滑化装置2の起動と停止はオペレータの判断により遠隔制御で実施できる。しかし、最新のAI(Artificial Intelligence:人工知能、Expert System、Neural Network、Fuzzy、フラクタル等の総称)理論を使って起動/停止を全自動で実施することもできる。一番簡単な方法は、t秒間で測定されたP、Q、Vについてそれぞれn個分(通常2〜4個)の最新の観測データから算出したt秒先の予測値に基づいてP、Q、Vの調整の有無と調整量を求めて制御する。P、Q、Vの観測値が一定の時間、例えば20分以上、閾値内に留まっている安定な場合はP、Q、V短周期変動平滑化装置2を自動的に停止するなど適切なソフトウェアを作ることで自動運転が可能となる。
【0029】
揚水発電所には無い、または揚水発電所では簡単に実施できない便利な機能を本発明の発電装置50に持たせることができる。その機能の一つは、電圧調整用同期調相機の機能である。発電装置50の発電機軸と原動機軸を自動的に切り離して、発電装置50に、自動的に電力系統の電圧を調整する同期調相機を兼用させることができる。
図9に、支持基礎53上に設置された水素ガス・ロータリー・エンジン51と三相交流同期発電機52とを備える同期調相機兼用の発電装置50を示す。その動作は次の通りである。先ず、水素ガス・ロータリー・エンジン51を起動し、エンジン51の軸に自動クラッチAで自動的に連結/切り離し可能な軸を有する三相交流同期発電機を回転させる。この発電機52を電力系統に並列後、自動クラッチAの結合を解除し、水素ガス・ロータリー・エンジン51を停止させる。以後、電力系統に並列した発電機52の励磁電流を増やすと有効電力Pは零であるが無効電力Qを系統側に送出すると、系統電圧が上昇する。逆に、発電機52の励磁電流を減少させると有効電力Pは殆ど零であるが無効電力は−Q(発電機側に吸収)となり、発電機側の電圧が低下する。この励磁電流を自動的に制御することでこの発電機母線の電圧を一定にすることができる。この発電セットの発電機25台が全て並列後、ロータリーエンジンは全て切り離されているので水素ガスは不要であり、バルブV411は自動的に閉鎖する。
この同期調相機群を停止するときは回転している同期調相機群を一括又は数台ずつ解列することで同期調相機群を停止できる。
専用の電圧調整用同期調相機を設けるのでなく、電力需要ピーク時には発電機として使用し、軽負荷時にはフェランチ現象の発生防止対策として地区遠隔監視自動制御システム91から制御装置70の運転モードを切換えて必要な台数を並列し、同期調相機運転することで電力系統の電圧を所定の範囲に平滑化することができる。事前の予測解析結果から電圧制御が必要との判断がある場合は事前に必要台数を同期調相機として待機させておくこともできる。電力系統の異常な電圧上昇や降下が始まると同期調相機として自動的に無効電力を吸収/送出させることで系統電圧が一定に保たれる。
【0030】
図10は、さらに、この発電機52の他端の軸と同様、自動クラッチで自動的に連結/切り離し可能な軸を有するフライホイール54を支持基礎53上に設置した軸受台に取り付けた同期調相機、フライホイール調相機兼用の発電装置50を示す。水素ガス・ロータリー・エンジン51と三相交流同期発電機52及びフライホイール54の軸を自動クラッチA、Bで結合している。先ず、水素ガス・ロータリー・エンジン51を起動し、三相交流同期発電機52及びフライホイール54を回転させる。この発電機52を系統に並列後、自動クラッチAの結合を解除し、水素ガス・ロータリー・エンジン51を停止させる。三相交流同期発電機52及びフライホイール54は並列した電力系統の周波数に同期して回転を続ける。系統周波数が加速上昇しようとすると、その分の電気エネルギーを系統側から吸収することでフライホイール54の回転も上昇する。他方、系統周波数が減速するとフライホイール54の回転エネルギーが減少した分を電気エネルギーとして系統側に放出する。このフライホイール効果は離島用の小規模な単独電力系統のみ有効であるが、装置を安価にできる。
通常は、発電機として使用し、フェランチ現象の発生防止対策が必要な時だけ、地区遠隔監視自動制御システムから制御装置70の運転モードを同期調相機モードに切換えて必要な台数を並列し、同期調相機として運転することで電圧を所定の範囲に平滑化することができる。また、地区遠隔監視自動制御システム91から制御装置70の運転モードを切換えて必要な台数を、フライホイール調相機運転することで電圧や周波数を所定の範囲に平滑化するなど多目的な役割を分担する。
【0031】
風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーにあまり変動が無い地点ではP、Q、V短周期変動平滑化装置2を備える必要はない。
【0032】
(効 果)
(1)個々のシステムが小型であっても多数分散配置することで、従来の揚水発電所以上の電力需給平準化能力がえられる。更に、電力需給平準化システムを標準化すれば大量生産による生産コスト削減が可能である。また、高額の費用を要するEHV、UHVなどの大容量長距離送電線の建設も必要なくなる。且つ、送電損失を大幅に低減できる。
(2)揚水発電所の建設による自然環境破壊もなくCO排出もない。更に、風力発電・太陽光発電等による電力系統擾乱現象を完全に無縁化するだけでなく、従来利用できなかった領域のエネルギーを吸収して貯蔵後、電力需要のピーク時に安定した良質の電力として高付加価値のクリーンエネルギーとして販売できる。
(3)小型電力需給平準化システム100は、都市内及び都市近郊の二次送電系統変電所に多数分散配置し、深夜、余剰電力を液体水素生成に使用し、貯蔵することは深夜の都心や都市近郊の電力負荷を増加させることを意味する。従って、深夜の軽負荷時の対策に貢献することになる。また、本方式の装置を深夜に同期調相機運転することで、高価なSVC、ShRなどの電圧調相設備を購入設置する必要もなく、且つ、大きい容量の電圧調相設備を得ることができる。深夜や特異日等の軽負荷時に電力系統の異常な電圧上昇防止、不安定化による停電事故防止等の効果がある。
(4)電力系統の質(周波数、電圧、安定供給、コスト等)を改善し、電力系統の安定性も改善して、高付加価値の電力を供給できる。
(5)フェランチ現象による電力系統の異常な電圧上昇だけでなく、風力発電・太陽光発電等からの送電や需要家側の特殊負荷(例えばコールド鉄板圧延、コールドストリップミル使用工場)等による送電線のP、Q、Vの短周期変動を平滑化することにより、安定した電力で水電気分解を行うことができる。(非特許文献1参照)
【実施例2】
【0033】
図2に示す本発明の実施例2は、電力需要が集中する都市郊外又は大都市郊外から少々離れたLNG基地に隣接して設置された大型電気所内に設置され、水素ガスをLNGガス中に10〜30%程度まで混入した混合ガスを使用して大型のコンバインドサイクル発電装置で発電する大型電力需給平準化システムである。
図2は水素ガス・LNGガス混合装置L10と、LNGガス受入装置L20及びLNGを供給するLNG基地L50との関係をも示している。また、近辺に、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギー発電に良好な地点があれば、風力発電・太陽光発電等の発電装置を設けてもよい。この実施例2では、海岸、港湾に面しているので風力発電装置1を構内に設置した。
【0034】
(設備構成)
この実施例2の電力系統連繋装置60、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31、水素ガス化装置40、水素ガスタンク41、制御装置70の機能は実施例1の各装置の機能と同じであるが設備容量の規模が格段に大きい。また、この大型電力需給平準化システム200はLNG基地に隣接して設置され、この発電所は運転員及び機器補修要員が常駐する。発電装置50は、高効率のコンバインドサイクル発電装置(第1系列:148MWガスタービン発電機3台、218MW蒸気タービン発電機1台で構成、認可発電容量は545MW、第2系列:第1系列と同じ、発電所としてはこのコンバインドサイクル発電装置の認可出力は1,090MW)である。また、LNG基地は、専用港湾、LNG陸揚げ装置、LNG貯蔵タンク、LNG気化装置を保有し、隣接する大型電力需給平準化システム200に気化したLNGガスをガスパイプで供給している。
【0035】
(設備運用)
深夜、水電気分解装置10で余剰電力を使って得た水素や酸素と、風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーを使って得た水素や酸素を液化して、液体水素を貯蔵装置30に貯蔵し、液体酸素は貯蔵装置31に貯蔵する。電力需要ピーク時に合わせ水素ガス化装置40で海水、河川・湖水等の潜熱や発電装置50の廃熱を利用して水素をガス化しておく。この水素ガスは水素ガスタンク41に入った後、水素ガス用バルブV411を閉鎖したままで、バルブ412を開いて水素ガス・LNGガス混合装置L10に入れる。他方、LNGガスはLNG基地L50から本システムのLNGガス受入装置(計量装置)L20とバルブLV521を経由して水素ガス・LNGガス混合装置L10に入り、水素ガスが10〜30%程度混合したLNG・水素ガス燃料をガスタービンの発電装置50で燃焼させて発電し、電力系統連繋装置60を経由して送電線で送電する。
発電中の大型電力需給平準化システム200を停止するためには、停止モードを選択して該当する大型電力需給平準化システム200を自動的に停止し、各バルブを閉鎖する。
【0036】
風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーの発電所がないケースでは大型電力需給平準化システム200にP、Q、V短周期変動平滑化装置2を備える必要はない。
【0037】
(効 果)
10〜30%程度の水素ガスをLNGガスに混合したガスを使ってガスタービン式コンバインドサイクル発電装置で発電することで熱効率が高い(約55%)。また、液化LNG貯蔵とガス化に関する技術と管理は、液体水素貯蔵とガス化に関する技術と管理と共通することが多いので、隣設するLNG基地に、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、水素ガス化装置40、水素ガスタンク41を設置し、LNG火力と同様に通常、関連企業となっているLNG会社の極低温液化ガス装置の運用とメインテナンス技術に精通した要員の知識と技能を有効に活用して、運転、補修、管理等の業務を委託することで要員の削減も可能である。
【実施例3】
【0038】
図3に示す実施例3は、製鉄所に隣接又は近接したコンビナート立地型小型電力需給平準化システム300である。
製鉄所のコークス製造炉F10で石炭をコークスへ変換する工程では、コークスガス(COG)に約55%含まれる水素を排出ガスや廃熱を伴わない圧力スイング(PSA法)による吸着分離操作で精製する。また、分離後の残ガスはCOG或いは他副生ガス系統へ回収し製鉄プロセスの燃料に利用される。
【0039】
(設備構成)
この実施例3の小型電力需給平準化システム300は、実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様の風力発電装置1、P、Q、V短周期変動平滑化装置2、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31、水素ガス化装置40、水素ガスタンク41、発電装置50、電力系統連系装置60、制御装置70を備え、液体水素・液体酸素製造装置20に水素ガスを供給するバルブFV400、V203を介して水素ガスタンクF30を結合し、さらに液体酸素貯蔵装置31から液体酸素を供給するバルブV311、FV312を介して液体酸素貯蔵装置F31に結合して構成される。
【0040】
(設備運用)
小型電力需給平準化システム300から製鉄所へは、液体酸素貯蔵装置31のバルブV311とFV312を経由して製鉄所の液体酸素貯蔵装置F31に製造した液体酸素を供給する。製鉄所では、液体酸素を酸素ガス化装置F40によってガス化して、酸素ガスを酸素ガスタンクに貯蔵し、鉄精錬工程F42に役立てる。逆に、製鉄所から小型電力需給平準化システム300へは、コークス製造炉F10の高熱により水分解により生成した高温の水素ガスを、小型電力需給平準化システム300からパイプで輸送した液体酸素の冷熱を使って高温の水素ガスを水素ガス冷却装置F20で冷却後、一端、バルブFV201を経由して水素ガスタンクF30に貯蔵してから、バルブFV400とV203を経由して小型電力需給平準化システム300の液体水素・液体酸素製造装置20に水素ガスを供給する。小型電力需給平準化システム300では、液体水素として液体水素貯蔵装置30に貯蔵する。
小型電力需給平準化システム300の起動から停止までの操作制御は、実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0041】
(効 果)
製鉄所に隣接又は近接して小型電力需給平準化システム300を設置した発電事業者は、製鉄所から不要の水素ガスの供与を受け、液体水素として貯蔵し、電力需要ピーク時に発電に役立て、他方、製鉄所は、発電事業者から水の電気分解で得た不要の酸素ガスの供与を受けて鉄精錬に役立てることができる。
このように、コンビナート立地型小型電力需給平準化システム300を設置した発電事業者と隣接した他企業とが水素、酸素、熱(高熱及び冷熱)等を相互に供給する等の様々なコンビナート立地企業間相互協力により、相互に大きなメリットを享受できると共に、CO排出も大幅に削減できる。
【実施例4】
【0042】
石油・天然ガス資源涸渇の対策は全世界の緊急の課題である。この対策として水素自動車の研究開発が進められ、実際の道路での実証試験に入っている。しかし、水素自動車開発が進んできたのに、我国では水素ガスを補給する水素販売スタンドは東京と大阪の実験用スタンド数箇所しかないので、安価に、且つ、安全な水素販売スタンドの開発が課題となっている。
地球温暖化防止のため全地球規模で化石燃料の節約を推進する有力な方策の一つである水素燃料自動車の実用化には水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドの普及が不可欠である。液体水素をタンクローリーで水素燃料販売スタンドに輸送する方法は液体水素輸送途中のタンクローリーが交通事故や大規模地震災害に遭遇した場合には、大変な災害をもたらす可能性が大きいという問題がある。また、大規模地震の復旧では、重要拠点(県庁、警察、病院、通信・電話局等)の電気は数日〜1週間以内に、水道は1〜2ヶ月程度で、都市ガスは2〜3ヶ月程度で再開されている。
図4に示す本発明の実施例4は、簡易、且つ安全な水素燃料自動車用水素燃料販売スタンド網を実現し、以上の課題を解決する水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドシステム400である。
【0043】
(設備構成)
実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様の風力発電装置1、P、Q、V短周期変動平滑化装置2、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31、水素ガス化装置40、水素ガスタンク41、発電装置50、電力系統連系装置60、制御装置70を備え、水素ガスタンク41にバルブV401を介して水素ガス販売メータS41を結合し、さらに制御装置70に通信ネットワークを介して水素燃料販売会社本社システムS400を結合して構成される。主要な設備は簡易で経済的な免震対策を施す。
【0044】
(設備運用)
水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドシステム400の起動から停止までの操作制御は、実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0045】
(効 果)
電気と水さえあれば水素燃料自動車用水素を製造できるのでタンクローリーで運搬する必要が無く、平常時にはタンクローリー車の液体水素輸送コストやタンクローリー車が関係した交通事故を皆無にでき、大規模地震時にも早期復旧が可能な災害に強い水素燃料販売スタンドを提供できる。しかも、販売需要に応じて水素を1〜2日分程度、自所で安価な深夜の余剰電力や風力発電・太陽光発電等の自然エネルギーを利用して製造・貯蔵するので、無駄が無く、水素を安価に供給できる。この結果、水素燃料自動車が普及することで自動車から排出されるCOの総量を減少させる効果もある。
【実施例5】
【0046】
人工衛星打上げ頻度が多くなると、離島の人口衛星打上げ基地では、ロケット燃料である液体水素と液体酸素の供給及び基地用非常電源が不足する。
図5に示す本発明の実施例5は、そのような人口衛星打上げ基地用の液体水素・液体酸素補給システム500である。
【0047】
(設備構成)
実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様の風力発電装置1、P、Q、V短周期変動平滑化装置2、水電気分解装置10、液体水素・液体酸素製造装置20、液体水素貯蔵装置30、液体酸素貯蔵装置31、水素ガス化装置40、水素ガスタンク41、発電装置50、電力系統連系装置60、制御装置70を備え、液体水素貯蔵装置30及び液体酸素貯蔵装置31をそれぞれ人工衛星打上げ基地用の液体水素貯蔵装置R30及び液体酸素貯蔵装置R31と断熱パイプで結合し、制御装置70に通信ネットワークを介してロケット点検・整備サイトR40や人工衛星打上げ基地管制センターR100を結合して構成する。
【0048】
(設備運用)
人工衛星打上げ準備期間はそれぞれ液体水素貯蔵装置30及び液体酸素貯蔵装置31から酸素及び水素を何時でも断熱パイプで輸送できる様に準備する。液体水素及び液体酸素の出荷はバルブV302及びV311を開くことで開始する。貯蔵された液体水素及び液体酸素の出荷はそれぞれのバルブを閉じることで終了する。人口衛星打上げ基地用の液体水素・液体酸素補給システム500のその他の操作制御は、実施例1の小型電力需給平準化システム100と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0049】
(効 果)
本発明によって、離島の人工衛星打上げ基地でも、人工衛星打上げに必要な多量の液体水素と液体酸素を確保するだけでなく、風力発電・太陽光発電との組合せで無公害の電源を確保できる。
【符号の説明】
【0050】
1 風力発電装置
2 P、Q、V短周期変動平滑化装置
10 水電気分解装置
20 液体水素・液体酸素製造装置
30 液体水素貯蔵装置
31 液体酸素貯蔵装置
32 液体水素出荷装置
33 液体酸素出荷装置
40 水素ガス化装置
41 水素ガスタンク
50 発電装置
51 水素ガス・ロータリー・エンジン
52 三相交流同期発電機
53 支持基礎
54 フライホイール
60 電力系統連繋装置
70 制御装置
80 一般商用電力送配電網
90 電力系統運用自動化システム
91 地区遠隔監視自動制御システム
100 小型電力需給平準化システム
200 大型電力需給平準化システム
300 製鉄所に隣接又は近接したコンビナート立地型小型電力需給平準化システム
400 水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドシステム
500 人口衛星打上げ基地用液体水素・液体酸素補給システム
L10 水素ガス・LNGガス混合装置
L20 LNGガス受入装置
L50 LNG基地
F10 コークス製造炉
F20 水素ガス冷却装置
F30 水素ガスタンク
F31 液体酸素貯蔵装置
F40 酸素ガス化装置
F41 酸素ガスタンク
F42 鉄精錬工程
FV101、FV201、FV311、FV312、FV400、FV401、FV411 製鉄所構内のバルブ
R40 ロケット点検・整備サイト
R100 人工衛星打上げ基地管制センター
RV312、RV303 ロケット点検・整備サイトのバルブ
S41 水素ガス販売メータ
S400 水素燃料販売会社本社システム
LV500、LV511、LV521、V101、V102、V201、V202、V301、V302、V311、V401、V411、V412 電力供給平準化システムのバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気所に分散配置し、運用する電力需給平準化システムであって、
風力発電装置(1)と、
P、Q、V短周期変動平滑化装置(2)と、
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生する水電気分解装置(10)と、
前記水電気分解装置(10)が発生する水素ガスと酸素ガスを液化する液体水素・液体酸素製造装置(20)と、
前記液体水素・液体酸素製造装置(20)で製造された液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵装置(30)と、
前記液体水素・液体酸素製造装置(20)で製造された液体酸素を貯蔵する液体酸素貯蔵装置(31)と、
液体水素をガス化する水素ガス化装置(40)と、
その水素ガスを貯蔵する水素ガスタンク(41)と、
その水素ガスを用いて発電する発電装置(50)と、
一般商用電力送配電網(80)から電力を受電する電力系統連繋装置(60)と、
上位の電力系統運用自動化システム(90)及び地区遠隔監視自動制御システム装置(91)とデータリンクし、上記の一連の機器を備えた電気所内の全装置の運転状況を的確に監視制御する制御装置(70)と、
から構成され、
前記水電気分解装置(10)は、風力発電装置(1)及び電力系統連繋装置(60)からのP、Q、V短周期変動が激しい電力をP、Q、V短周期変動平滑化装置2によって平滑化した電力で水を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生し、
電力需要ピーク時に、前記液体水素貯蔵装置(30)に貯蔵された液体水素を前記水素ガス化装置(40)でガス化し、その水素ガスを水素ガスタンク(41)に貯蔵し、前記発電装置(50)がその水素ガスを用いて発電する電力需給平準化システム。
【請求項2】
請求項1に記載された電力需給平準化システムにおいて、
さらに、LNG基地(L50)からLNGガスと前記水素ガスタンク(41)に貯蔵された水素ガスとを混合する混合装置(L10)を備え、前記発電装置(50)でこの混合ガスを用いて発電する電力需給平準化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電力需給平準化システムにおいて、
製鉄所に隣接又は近接した前記電気所に配置され、
製鉄所で生成される水素ガスを取り入れ、酸素ガスを製鉄所に供給する電力需給平準化システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電力需給平準化システムにおいて、
コンビナートに立地する前記電気所に設置され、隣接する他企業と水素、酸素、熱(高熱及び冷熱)等を相互に供給する電力需給平準化システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電力需給平準化システムの前記水素ガスタンク(41)に水素ガス販売メータ(S41)を結合して構成した水素燃料自動車用水素燃料販売スタンドシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の電力需給平準化システムの前記液体水素貯蔵装置(30)及び液体酸素貯蔵装置(31)を、それぞれ人工衛星打上げ基地用の液体水素貯蔵装置(R30)及び液体酸素貯蔵装置(R31)と断熱パイプで結合して構成した人口衛星打上げ基地用液体水素・液体酸素補給システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電力需給平準化システムにおいて、
前記発電装置(50)は、水素ガス燃焼原動機(51)と発電機(52)とを備え、発電機軸と水素ガス燃焼原動機軸を自動的に連結/切り離し可能な水素ガス燃焼エンジン発電機装置であって、
前記発電装置(50)は、前記水素ガス燃焼原動機(51)で駆動し、自動並列装置を使って発電機を電力系統に並列後、水素ガス燃焼原動機軸を切り離し、前記水素ガス燃焼原動機(51)を停止させることにより、同期調相機として電圧を平滑化させる電力需給平準化システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電力需給平準化システムにおいて、
前記発電装置(50)は、水素ガス燃焼原動機(51)と発電機(52)とを備え、発電機軸と水素ガス燃焼原動機軸を自動的に連結/切り離し可能な水素ガス燃焼エンジン発電機装置であって、
前記発電装置(50)は、前記水素ガス燃焼原動機(51)で駆動し、この発電機を電力系統に並列後、水素ガス燃焼原動機軸との結合を切り離し、前記水素ガス燃焼原動機(51)を停止させることにより、前記発電装置(50)は、フェランチ現象の発生防止対策が必要な時に電力系統に並列された同期調相機として電力系統の電圧を平滑化させる電力需給平準化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182516(P2011−182516A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42605(P2010−42605)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(510055138)
【Fターム(参考)】