説明

電動ステープラ

【課題】綴り用紙を狭持するクランプ部を紙厚調整のために付勢する構成において、この付勢を常時行わないように制限することで、当該部材のかしがりを低減できる電動ステープラを提供する。
【解決手段】クリンチャ機構40に対して相対的に接離移動することで前記クリンチャ機構40と協働して綴り用紙Aを狭持するクランプ部13と、前記クランプ部13を前記綴り用紙Aの方向へ付勢する付勢機構14と、を備え、前記付勢機構14は、少なくとも前記クランプ部13が前記クリンチャ機構40に対して最も離反するホームポジションにあるときに、前記クランプ部13に対する付勢を解除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動ステープラに関し、特に、綴り用紙を狭持するクランプ部のかしがりを防止できる電動ステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機や印刷機等の内部の用紙搬送路に配置されて複写や印刷処理された複数の用紙を綴じる電動ステープラが知られている。
【0003】
こうした電動ステープラにおいては、略真直状のステープルをフォーミングプレートによってコ字状に成形し、コ字状に成形したステープルをドライバによって綴り用紙に打ち込むようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、こうした電動ステープラにおいては、フォーミングプレートやドライバなどを収容したドライバ機構と対向する位置にクリンチャ機構が設けられており、このドライバ機構とクリンチャ機構とで綴り用紙を挟み込んだ状態でステープルが綴り用紙に打ち込まれるようになっている。そして、綴り用紙に打ち込まれたステープルの脚部は綴り用紙を貫通してクリンチャ機構のクリンチャ溝に沿って折り曲げられ、綴り用紙をクリンチするように形成されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、このような電動ステープラにおいては、ドライバ機構とクリンチャ機構とで綴り用紙を挟み込む際に、綴り用紙の厚さの違いを調整するための機構(バネなど)を備えたものが存在する。例えば、特許文献3記載の発明においては、ドライバリンクに紙厚調整バネを設けた発明が開示されている。
【0006】
また、このような電動ステープラにおいては、ステープルの有無を検知するための機構を備えたものも存在する。例えば、特許文献4記載の発明においては、ステープルの有無状態を検出して検出信号を出力させる検出センサを前記マガジンを支持しているフレームに形成し、電動ステープラが非作動状態の時前記検出センサに対向して配置されるとともに前記検出センサにステープルの有無を検出させるように作動するフラグ部材をマガジンに設け、前記カートリッジの連結ステープル装填空間の内部へ進入可能に配置されるとともにカートリッジに装填された連結ステープルによって作動される検出部材をカートリッジに設け、更に、前記検出部材とフラグ部材との間に連携部材を設けて、カートリッジをマガジンに装着した状態で前記連携部材によって検出部材の作動を前記フラグ部材に連携させるようにした点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3620351号
【特許文献2】特開2005−335021号
【特許文献3】実用新案登録第2561157号
【特許文献4】特許第4103700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した特許文献3記載の発明においては、ドライバリンクに紙厚調整バネを設けており、綴り用紙を挟み込んでいない状態(ステープルの打ち込みを行っていない待機状態など)でも常にバネの負荷が加えられているため、このバネによって付勢されたマガジンがあおられてかしいだり、ガイド溝が摩耗するなどの問題があった。
【0009】
また、上記した特許文献4記載の発明のようにマガジンにフラグ部材を設けている場合、マガジンがかしぐことでフラグ部材がセンサの検知領域から外れてしまい、ステープルの有無の検出が正しく動作しないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、綴り用紙を狭持するクランプ部を紙厚調整のために付勢する構成において、この付勢を常時行わないように制限することで、当該部材のかしがりを低減できる電動ステープラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0012】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の電動ステープラは、略コ字状に成形したステープルを綴り用紙に打ち込むドライバ機構と、前記ドライバ機構に対向して設けられ、前記綴り用紙に打ち込まれて前記綴り用紙を貫通したステープルの脚部を前記綴り用紙の裏面に沿って折り曲げるクリンチャ機構と、を備えた電動ステープラにおいて、前記ドライバ機構は、本体部と、前記本体部に摺動可能に収容されるとともに、前記クリンチャ機構に対して相対的に接離移動することで前記クリンチャ機構と協働して前記綴り用紙を狭持するクランプ部と、前記クランプ部を前記綴り用紙の方向へ付勢する付勢機構と、を備え、前記付勢機構は、少なくとも前記クランプ部が前記クリンチャ機構に対して最も離反するホームポジションにあるときに、前記クランプ部に対する付勢を解除していることを特徴とする。
【0014】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、前記ドライバ機構は、駆動源によって駆動される歯車機構と、ステープルを打ち込むドライバ部材と、前記歯車機構に含まれるカムによって揺動して前記ドライバ部材を駆動するリンク部材と、を更に備え、前記リンク部材は、前記付勢機構と係合可能な付勢係合部を備え、前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向に揺動したときに、前記付勢係合部が前記付勢機構に係合して前記付勢機構を機能させることを特徴とする。
【0016】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、前記ドライバ機構は、駆動源によって駆動される歯車機構と、ステープルを打ち込むドライバ部材と、前記歯車機構に含まれるカムによって揺動して前記ドライバ部材を駆動するリンク部材と、を更に備え、前記リンク部材は、前記クランプ部と係合するクランプ係合部を備え、前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向の反対方向に揺動したときに、前記クランプ係合部が前記クランプ部に係合して前記クランプ部を前記ホームポジションの方向に押動することを特徴とする。
【0018】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0019】
すなわち、前記クランプ部は、前記連結ステープルの有無を検知するための検知片を移動可能に支持しており、前記本体部は、前記検知片の状態をセンシングして前記連結ステープルの有無に係る信号を出力するセンサを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、前記付勢機構は、少なくとも前記クランプ部が前記クリンチャ機構に対して最も離反するホームポジションにあるときに、前記クランプ部に対する付勢を解除しているため、ステープルの打ち込みを行っていない待機状態においては付勢機構の負荷がクランプ部に加えられない。よって、クランプ部への付勢を常時行わないように制限することができ、クランプ部のかしがりを低減することができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記リンク部材は、前記付勢機構と係合可能な付勢係合部を備え、前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向に揺動したときに、前記付勢係合部が前記付勢機構に係合して前記付勢機構を機能させるように形成されている。このため、モータによる打ち込み動作に連動して付勢機構を機能させることができ、ステープルの打ち込み直前(ドライバが所定の位置まで打ち出し方向に駆動したとき)にだけクランプのための付勢力が加わるようにすることができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記リンク部材は、前記クランプ部と係合するクランプ係合部を備え、前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向の反対方向に揺動したときに、前記クランプ係合部が前記クランプ部に係合して前記クランプ部を前記ホームポジションの方向に押動するように形成されている。このため、モータによる打ち込み動作に連動してクランプ部をホームポジションに移動させることができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、前記クランプ部は、前記連結ステープルの有無を検知するための検知片を移動可能に支持しており、前記本体部は、前記検知片の状態をセンシングして前記連結ステープルの有無に係る信号を出力するセンサを備えている。このため、移動するクランプ部にセンサを設けていないので、フレキシブルケーブル等を用いるなどしてクランプ部の移動に追随する構成を使用せずに低コストで機構を構成することができる。しかも、クランプ部のかしがりを防止することができるので、クランプ部に設けられた検知片の位置がずれてステープルの有無の検出が正しく動作しないという問題も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電動ステープラの外観図であって、クランプ部がホームポジションにある状態を示す図である。
【図2】電動ステープラの外観図であって、クランプ部が下降した状態を示す図である。
【図3】電動ステープラの側面図である。
【図4】電動ステープラの機構を示す説明図である。
【図5】電動ステープラの作動を示す説明図であって、クランプ部がホームポジションにある状態を示す図である。
【図6】電動ステープラの作動を示す説明図であって、クランプ部が下降を開始した直後の状態を示す図である。
【図7】電動ステープラの作動を示す説明図であって、クランプ部が途中まで下降した状態を示す図である。
【図8】電動ステープラの作動を示す説明図であって、クランプ部が下降した状態を示す図である。
【図9】電動ステープラの作動を示す説明図であって、クランプ部が上昇を開始した状態を示す図である。
【図10】ドライバ機構の一部を斜め上方から見た図であって、連結ステープルの有無を検知するための機構を説明する図である。
【図11】連結ステープルの有無を検知するための機構を示す図であって、連結ステープルがある状態における(a)斜め上方から見た図、(b)側面図である。
【図12】連結ステープルの有無を検知するための機構を示す図であって、連結ステープルがない状態における(a)斜め上方から見た図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0026】
図1〜4に示すように、本実施形態に係る電動ステープラ10は、複写機や印刷機等の内部の用紙搬送路に配置されて複写や印刷処理された複数の用紙を綴じるためのものであり、連結ステープルAから個々のステープルを略コ字状に成形したのち分離して綴り用紙に打ち込むドライバ機構11と、前記ドライバ機構11に対向して設けられ、前記綴り用紙に打ち込まれて前記綴り用紙を貫通したステープラの脚部を前記綴り用紙の裏面に沿って折り曲げるクリンチャ機構40と、を備えて構成されている。
【0027】
ステープルを打ち込む際には、上記したドライバ機構11とクリンチャ機構40との間の間隙Sにステープルを打ち込みたい綴り用紙を挿入し、その後ドライバ機構11(のクランプ部13)とクリンチャ機構40とで綴り用紙を狭持し、ステープルを打ち込む。
【0028】
なお、特に図示しないが、連結ステープルAは多数の真直状のステープルを複数並列させて隣接したステープル同士を接着剤等によって連結したものであり、この連結ステープルAを積層して束ねたリフィルを収容したカートリッジが後述するクランプ部13の内部に着脱可能に収容されている。
【0029】
カートリッジには、カートリッジ内に積層されたステープルを打出部11aへ送り出す送り機構が設けられており、クランプ部13の内部に収容された連結ステープルAは、バネなどに付勢されて先頭のステープルが順次打出部11aへ供給され、フォーミングプレート17によってコ字形に成形され、コ字形に成形されたステープルはドライバ16によって綴り用紙に向けて打ち出される。
【0030】
この打出部11aと対向する位置には、クリンチャ機構40のクリンチャ溝40aが設けられており、ドライバ16によって綴り用紙に向けて打ち出されたステープルの脚部は、綴り用紙を貫通してクリンチャ溝40aに入り込み、クリンチャ溝40aに沿って折り曲げられて綴り用紙をクリンチする。
【0031】
ところで、上記したドライバ機構は、本体部12と、前記本体部12に摺動可能に収容されるクランプ部13と、前記クランプ部13を前記綴り用紙の方向へ付勢するクランプバネ14と、モータによって駆動する歯車機構20と、前記歯車機構20によって作動してステープルをコ字形に成形するフォーミングプレート17と、前記歯車機構20によって作動してステープルを打ち込むドライバ16と、前記歯車機構20に含まれるカム22bによって揺動して前記フォーミングプレート17及び前記ドライバ16を駆動させるリンク部材30と、本体部12に設けられたセンサ35と、連結ステープルAの有無を検知するための検知片32と、を備えて構成されている。
【0032】
以下、各構成について説明する。
【0033】
(本体部12)
本体部12は、図1〜4に示すように、クリンチャ機構40と相対して設けられ、クリンチャ機構40との間に綴り用紙を挿入するための間隙Sを設けて固定されたフレームである。この本体部12の側部には、ステープルの打出方向に沿って上下方向に延びるガイド孔12aが設けられている。このガイド孔12aは、後述するリンク部材30が支持するシャフト31をガイドするためのものである。
【0034】
(クランプ部13)
クランプ部13は、図1〜4に示すように、本体部12に摺動可能に収容される箱型の部材であり、クリンチャ機構40に対して相対的に接離移動することでクリンチャ機構40と協働して綴り用紙を狭持するものである。
【0035】
このクランプ部13の側部には、ステープルの打出方向に沿って上下方向に延びる摺動孔13aが設けられている。この摺動孔13aは、側面から見たときに本体部12のガイド孔12aに重なり合う位置に配置されており、ガイド孔12aよりもやや上下に短く設定されている。この摺動孔13aには、後述するシャフト31が貫通している。
【0036】
(クランプバネ14)
クランプバネ14は、クランプ部13を綴り用紙の方向へ付勢する付勢機構として設けられたものであり、具体的にはクランプ部13に固定された捩りコイルバネである。
【0037】
このクランプバネ14は、図1〜4に示すように、下側がクランプ部13のバネ支持部13bに固定されるとともに、上側がクランプ部13に固定されたクランプバネプレート15によって保持されている。
【0038】
なお、クランプバネプレート15はクランプバネ14が一定以上拡がらないように抑え込むためのものであり、クランプバネ14はこのクランプバネプレート15によって付勢力を抑制された状態となっている。
【0039】
このクランプバネ14の上端部14aは、後述するリンク部材30が所定の位置まで下がってきたときにリンク部材30と係合できるように露出している。
【0040】
(歯車機構20)
歯車機構20は、複写機や印刷機、電動ステープラの本体等に設けられた駆動源の一例であるモータ(図示せず)によって駆動されるものであり、図1〜4に示すように、モータからの駆動力を受けて回転する第1ギア21と、この第1ギア21から駆動力を伝達されて回転する第2ギア22と、を備えている。
【0041】
第2ギア22の裏側には、図3及び図4に示すように、同じ軸22aを中心に回転するカム22bが配設されている。このカム22bは円周から軸22aまでの距離が一定でない円板カムである。
【0042】
なお、この歯車機構20を駆動するモータは、複写機や印刷機、電動ステープラの本体等に設けられた制御装置(図示せず)によって駆動を制御される。また、この歯車機構20は、本体部12の両側に同じものが2つ設けられており、それぞれの歯車機構20のカム22bが側面視で同じ形状で重なるように配置されている。これにより、2つの歯車機構20は、モータが駆動したときに互いに全く同じ挙動をとるように形成されている。
【0043】
(リンク部材30)
リンク部材30は、上述したカム22bによって揺動させられる部材であり、図3及び4に示すように、打出部11aの逆側に設けられたリンク軸30aによって本体部12に揺動可能に固定されている。このリンク部材30は、リンク軸30aを中心に揺動することで打出部11a側の先端部30eが上下に揺動するようになっている。このリンク部材30は、図示しないバネによって常時上方向(クリンチャ機構40から離反する方向)へと付勢されている。このリンク部材30は、上記した2つの歯車機構20に対応してそれぞれ設けられている。
【0044】
このリンク部材30の先端部30eには、シャフト31を保持するためのシャフト保持部30dが形成されている。
【0045】
シャフト31は、両側のリンク部材30のシャフト保持部30dに両端を保持されて水平方向に延設されており、上述した本体部12のガイド孔12a及びクランプ部13の摺動孔13aを貫通している。
【0046】
このシャフト31は、リンク部材30が揺動したときに、本体部12のガイド孔12aに沿って上下に摺動する。なお、シャフト31がガイド孔12aに沿って所定の位置まで上方向に摺動したときに、このシャフト31はクランプ部13の摺動孔13aの上端縁に係合してクランプ部13を持ち上げるようになっており、これによりこのシャフト31はクランプ部13と係合するクランプ係合部を形成している。
【0047】
また、シャフト31は、フォーミングプレート17及びドライバ16の上端に設けられた孔を貫通しており、これによってフォーミングプレート17及びドライバ16を保持している。このため、シャフト31が上下に移動したときにフォーミングプレート17及びドライバ16が連動して上下動する。
【0048】
また、リンク部材30の先端部30e付近の下部には、外方へ突出した逆L字形の付勢係合部30bが設けられている。この付勢係合部30bは、前述したクランプバネ14と係合可能な位置に設けられており、リンク部材30が所定の位置まで下方に揺動したときに、下方に向いた面がクランプバネ14の上端部14aに当接し、クランプバネ14の付勢力を受けるように形成されている。
【0049】
また、リンク部材30の中間部には、図4〜9に示すように、側方に突出した軸状のカム係合部30cが形成されている。このカム係合部30cは、カム22bの下部周縁に係合するものであり、カム22bが回転したときにカム22bの周縁に沿って所定の位置まで下方に押し下げられ、これによってリンク部材30がバネの付勢力に抗って下方に移動するように形成されている。
【0050】
(センサ35)
センサ35は、図10に示すように、本体部12の内側に設けられており、検知片32の状態をセンシングして連結ステープルAの有無に係る信号を出力するフォトセンサである。
【0051】
このセンサ35は、図10に示すように、溝型のフォトセンサであり、コ字状の検出部35aの溝部35bに物体が存在するか否かをセンシングする。
【0052】
このセンサ35は、複写機や印刷機、電動ステープラの本体等の制御装置に接続されており、制御装置からの命令に従って連結ステープルAの有無をチェックし、その結果を制御装置に送信する。
【0053】
なお、センサ35と制御装置とはケーブル(図示せず)で接続されているが、本実施形態に係るセンサ35は固定的に設けられた本体部12に取り付けられており、センサ35と制御装置との位置関係が固定であるため、センサ35の移動を考慮した特別なケーブルを使用する必要がない(センサ35がクランプ部13などの可動部に設けられている場合、センサ35の移動を考慮する必要があるため、比較的コストの高いフレキシブルケーブルなどを使用しなければならないが、本実施形態においてはこのような特別なケーブルを使用する必要がない)。
【0054】
(検知片32)
検知片32は、連結ステープルAの有無を検知するためのものであり、図10〜12に示すように、クランプ部13に対して回動可能に固定された部材である。この検知片32の端部には軸孔32aが設けられており、この軸孔32aを貫通する支持軸33を介してクランプ部13に固定されている。
【0055】
また、この検知片32は、軸孔32aの逆端側に突出する突出部32bを備えている。この突出部32bは、軸孔32aと直交する方向に延設されているため、検知片32が軸孔32aを中心に回動することにより上下に揺動するようになっている。この突出部32bは、上下に揺動することでその先端部が上述したセンサ35の溝部35bに対して出没するように配置されている。
【0056】
また、この検知片32には、突出部32bと略平行に接触部32cが突出形成されている。この接触部32cは、クランプ部13の内部に収容されている連結ステープルAと係合できるように配置されている。
【0057】
この検知片32は、軸孔32a近傍に配置されたコイルバネ34によって、接触部32cが連結ステープルAと係合する方向に付勢されている。
【0058】
このため、図11に示すように、クランプ部13内に連結ステープルAが存在する場合には、コイルバネ34の付勢力によって接触部32cが連結ステープルAに押し付けられて係合している。この状態においては、突出部32bがセンサ35の溝部35b内に位置しており、センサ35の光路上に検知片32が位置しているので、センサ35は連結ステープルAが存在していることを検出することができる。
【0059】
一方、図12に示すように、クランプ部13内に連結ステープルAが存在しない場合には、接触部32cが連結ステープルAと係合しないので、コイルバネ34の付勢力で検知片32が回動する。この状態においては、突出部32bがセンサ35の溝部35bの外に位置しており、センサ35の光路上に検知片32が位置していないので、センサ35は連結ステープルAが存在していないことを検出することができる。
【0060】
このようにセンサ35はステープルの有無を検出し、その結果を複写機や印刷機等に設けられた制御装置に対して出力する。ステープルの有無に係る信号を受信した制御装置は、例えばステープルの換装を促すメッセージを表示するなどの処理を行うことができる。
【0061】
(電動ステープラ10の作動について)
次に、上記した電動ステープラ10の作動について、図5〜9を参照しつつ説明する。
【0062】
図5は、クランプ部13がホームポジションにある状態を示す図である。ホームポジションとは、クランプ部13がクリンチャ機構40と最も離反した最上位置にある状態であり、クランプ部13とクリンチャ機構40との間に綴り用紙を狭持する前の待機状態である。このホームポジションにおいて、複写機や印刷機等に設けられた紙送り装置(図示せず)によって綴り用紙がクランプ部13とクリンチャ機構40との間の間隙Sに供給される。その後モータが駆動して電動ステープラ10が作動し、綴り用紙にステープルを打ち込むようになっている。
【0063】
このホームポジションにおいては、カム22bの下端の周縁部からカム22bの軸22aまでの距離が最も短くなっており、すなわち、カム22bによるリンク部材30の押し下げが最も小さい状態となっている。これにより、リンク部材30は最上位置に位置している。
【0064】
このとき、リンク部材30のシャフト保持部30dが支持するシャフト31も最上位置に位置しており、クランプ部13の摺動孔13aの上端縁に係合している。これにより、クランプ部13はシャフト31によって最上位置(ホームポジション)に持ち上げられている。
【0065】
また、リンク部材30の付勢係合部30bは、クランプバネ14の上端部14aよりも更に上に位置しているため、クランプバネ14と係合していない。このため、クランプ部13にはクランプバネ14の付勢力が働いていない。
【0066】
図6は、クランプ部13が下降を開始した直後の状態を示す図である。すなわち、モータが駆動して歯車機構20が作動したことによりカム22bが回転し、カム22bによってカム係合部30cが少し下に押し下げられた状態を示す図である。カム係合部30cが下に押し下げられることにより、リンク部材30はリンク軸30aを中心に揺動し、先端部30eが下方に移動する。
【0067】
このとき、リンク部材30のシャフト保持部30dが支持するシャフト31も少し下に移動する。これにより、シャフト31に保持されたドライバ16及びフォーミングプレート17も下方向(打ち出し方向)に移動する。また、クランプ部13を持ち上げていたシャフト31が少し下に移動したことにより、シャフト31とクランプ部13の摺動孔13aの上端縁との係合が解除されるため、クランプ部13はシャフト31が移動した分だけ下方向に摺動可能となる。
【0068】
なお、この実施形態においては、クランプ部13と本体部12との間に摺動抵抗があるためクランプ部13はホームポジションから移動していないが、下方向に摺動することはできる状態である。すなわち、クランプ部13は、クリンチャ機構40の側へ接近する方向に移動可能な状態となっている。
【0069】
また、リンク部材30の付勢係合部30bは、クランプバネ14の上端部14aに接する位置まで下がる。
【0070】
この図6に示す位置から更にモータが駆動して歯車機構20が作動すると、図7に示すような状態となる。この状態では、リンク部材30のシャフト保持部30dが支持するシャフト31も更に下に移動し、シャフト31に保持されたドライバ16及びフォーミングプレート17も更に下方向(打ち出し方向)に移動する。また、シャフト31が更に下に移動したことにより、シャフト31が摺動孔13aに沿って下方向に移動することとなり、シャフト31と摺動孔13aとの関係においては、クランプ部13は更に下方向に摺動可能となる。
【0071】
このとき、リンク部材30の付勢係合部30bがクランプバネ14の上端部14aと係合しているため、リンク部材30の付勢係合部30bはクランプバネ14を下方に押し付ける。すると、このリンク部材30による下方向への荷重は、クランプバネ14を介してクランプ部13に伝達され、クランプ部13を下方へ移動させる。すなわち、クランプ部13をクリンチャ機構40の側へ接近する方向に移動させる。
【0072】
この図7に示す位置から更にモータが駆動して歯車機構20が作動すると、図8に示す状態となる。この状態は、クランプ部13が下降して最もクリンチャ機構40と接近可能となった状態であり、実際にはクランプ部13とクリンチャ機構40との間に綴り用紙を狭持した状態である(図においては説明の便宜のために綴り用紙を図示していない)。
【0073】
この状態においては、カム22bの下端の周縁部からカム22bの軸22aまでの距離が最も長くなっており、すなわち、カム22bによるリンク部材30の押し下げが最も大きい状態となっている。これにより、リンク部材30は最も下に位置している。
【0074】
このとき、リンク部材30のシャフト保持部30dが支持するシャフト31も最も下に位置している。このため、シャフト31に保持されたドライバ16及びフォーミングプレート17も最も下方向(打ち出し方向)にまで移動しており、ステープルの成形や打ち込みが実行されて完了している。
【0075】
また、リンク部材30の付勢係合部30bがクランプバネ14の上端部14aと係合しており、リンク部材30が最も下に位置しているため、クランプバネ14を介したクランプ部13の押し下げ荷重も最大となっている。すなわち、クランプ部13が最もクリンチャ機構40の側に押し下げられており、最も強く綴り用紙を狭持した状態となっている。
【0076】
このとき、綴り用紙の厚みの違いはクランプバネ14が撓むことによって吸収される。例えば、この図8は綴り用紙が20枚の場合のクランプ部13の位置を示すものであるが、綴り用紙の枚数が20枚よりも少なければクランプ部13は更に下方に移動するし、綴り用紙の枚数が20枚よりも多ければクランプ部13はもっと上方で停止する。
【0077】
このような構造により、クランプ部13がクリンチャ機構40と協働して綴り用紙を狭持するとともに、クランプバネ14の撓みによって紙厚の違いを吸収することができる。
【0078】
この図8に示す位置から更にモータが駆動して歯車機構20が作動すると、図9に示すようにリンク部材30が打ち出し方向とは反対方向に揺動し、リンク部材30の先端部30eが上昇を始める。リンク部材30の先端部30eが所定の位置まで上昇すると、シャフト31がクランプ部13の摺動孔13aに係合し、クランプ部13をホームポジションの方向に持ち上げていく。すなわち、クランプ部13は、クリンチャ機構40から離反する方向に移動する。その後更にモータが駆動して歯車機構20が作動することで、図5に示すホームポジションまでリンク部材30がクランプ部13を押動する。そして、このホームポジションにおいて歯車機構20が停止され、次にステープルを打ち込む綴り用紙が準備されるまで待機状態となる。
【0079】
そして、この待機状態(クランプ部13がホームポジションにある状態)においては、上述したように、リンク部材30の付勢係合部30bがクランプバネ14と係合していないため、クランプ部13にはクランプバネ14の付勢力が働いていない。
【0080】
(まとめ)
本実施形態は上記の通りであり、付勢機構としてのクランプバネ14は、少なくともクランプ部13がクリンチャ機構40に対して最も離反するホームポジションにあるときに、クランプ部13に対する付勢を解除しているため、ステープルの打ち込みを行っていない待機状態においてはクランプバネ14の負荷がクランプ部13に加えられない。よって、クランプ部13への付勢を常時行わないように制限することができ、クランプ部13のかしがりを低減することができる。
【0081】
また、リンク部材30は、クランプバネ14と係合可能な付勢係合部30bを備え、リンク部材30が所定の位置まで打ち出し方向に揺動したときに、付勢係合部30bがクランプバネ14に係合してクランプバネ14を機能させるように形成されている。このため、モータによる打ち込み動作に連動してクランプバネ14を機能させることができ、ステープルの打ち込み直前(ドライバ16が所定の位置まで打ち出し方向に駆動したとき)にだけクランプのための付勢力が加わるようにすることができる。
【0082】
また、リンク部材30は、クランプ部13と係合するクランプ係合部としてのシャフト31を備え、リンク部材30が所定の位置まで打ち出し方向の反対方向に揺動したときに、シャフト31がクランプ部13に係合してクランプ部13をホームポジションの方向に押動するように形成されている。このため、モータによる打ち込み動作に連動してクランプ部13をホームポジションに移動させることができる。
【0083】
また、クランプ部13は、連結ステープルAの有無を検知するための検知片32を移動可能に支持しており、本体部12は、検知片32の状態をセンシングして連結ステープルAの有無に係る信号を出力するセンサ35を備えている。このため、移動するクランプ部13にセンサ35を設けていないので、フレキシブルケーブル等を用いるなどしてクランプ部13の移動に追随する構成を使用せずに低コストで機構を構成することができる。しかも、クランプ部13のかしがりを防止することができるので、クランプ部13に設けられた検知片32の位置がずれてステープルAの有無の検出が正しく動作しないという問題も回避できる。
【符号の説明】
【0084】
10 電動ステープラ
11 ドライバ機構
11a 打出部
12 本体部
12a ガイド孔
13 クランプ部
13a 摺動孔
13b バネ支持部
14 クランプバネ(付勢機構)
14a 上端部
15 クランプバネプレート
16 ドライバ
17 フォーミングプレート
20 歯車機構
21 第1ギア
22 第2ギア
22a 軸
22b カム
30 リンク部材
30a リンク軸
30b 付勢係合部
30c カム係合部
30d シャフト保持部
30e 先端部
31 シャフト(クランプ係合部)
32 検知片
32a 軸孔
32b 突出部
32c 接触部
33 支持軸
34 コイルバネ
35 センサ
35a 検出部
35b 溝部
40 クリンチャ機構
40a クリンチャ溝
A 連結ステープル
S 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コ字状に成形したステープルを綴り用紙に打ち込むドライバ機構と、
前記ドライバ機構に対向して設けられ、前記綴り用紙に打ち込まれて前記綴り用紙を貫通したステープルの脚部を前記綴り用紙の裏面に沿って折り曲げるクリンチャ機構と、
を備えた電動ステープラにおいて、
前記ドライバ機構は、
本体部と、
前記本体部に摺動可能に収容されるとともに、前記クリンチャ機構に対して相対的に接離移動することで前記クリンチャ機構と協働して前記綴り用紙を狭持するクランプ部と、
前記クランプ部を前記綴り用紙の方向へ付勢する付勢機構と、
を備え、
前記付勢機構は、少なくとも前記クランプ部が前記クリンチャ機構に対して最も離反するホームポジションにあるときに、前記クランプ部に対する付勢を解除していることを特徴とする、電動ステープラ。
【請求項2】
前記ドライバ機構は、
駆動源によって駆動される歯車機構と、
ステープルを打ち込むドライバ部材と、
前記歯車機構に含まれるカムによって揺動して前記ドライバ部材を駆動するリンク部材と、
を更に備え、
前記リンク部材は、前記付勢機構と係合可能な付勢係合部を備え、
前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向に揺動したときに、前記付勢係合部が前記付勢機構に係合して前記付勢機構を機能させることを特徴とする、請求項1記載の電動ステープラ。
【請求項3】
前記ドライバ機構は、
駆動源によって駆動される歯車機構と、
ステープルを打ち込むドライバ部材と、
前記歯車機構に含まれるカムによって揺動して前記ドライバ部材を駆動するリンク部材と、
を更に備え、
前記リンク部材は、前記クランプ部と係合するクランプ係合部を備え、
前記リンク部材が所定の位置まで打ち出し方向の反対方向に揺動したときに、前記クランプ係合部が前記クランプ部に係合して前記クランプ部を前記ホームポジションの方向に押動することを特徴とする、請求項1記載の電動ステープラ。
【請求項4】
前記クランプ部は、前記連結ステープルの有無を検知するための検知片を移動可能に支持しており、
前記本体部は、前記検知片の状態をセンシングして前記連結ステープルの有無に係る信号を出力するセンサを備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電動ステープラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−86231(P2013−86231A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230711(P2011−230711)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】