説明

電動ドリルのガイドアタッチメントおよびこれを備えた穿孔装置

【課題】単純な構造で、穿孔深さを無段階に調整することができる電動ドリルのガイドアタッチメントおよびこれを備えた穿孔装置を提供する。
【解決手段】電動ドリル2に装着され、穿孔をガイドする電動ドリル2のガイドアタッチメント3であって、電動ドリル2に装着されるガイドホルダ6と、中心部にドリルビット11が挿通される挿通孔を有し、穿孔対象部の穿孔穴形成部に突き当てられる当接部材7と、前端部で当接部材を支持するガイドロッドと後端部でガイドホルダに支持されたガイド筒とを、入れ子式で連結した一対のスライドガイド8と、一方のスライドガイドのガイド筒93に螺合し、当接部材7に突き当たって穿孔穴の穿孔深さを規制する調整雌ネジ部材98と、前記調整雌ネジ部材98の後側に位置する弛み止めナット99と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、タイル、石材等に穿孔を行う電動ドリルに装着され、電動ドリルによる穿孔をガイドする電動ドリルのガイドアタッチメントおよびこれを備えた穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の穿孔装置として、電動ドリル本体に連なるチャックカバーと、チャックカバー下方においてドリルを囲繞する塵埃ボックスと、チャックカバーと塵埃ボックスとを連結する蛇腹部材と、チャックカバーおよび塵埃ボックスに各々突設したブラケット間に渡したガイド部材と、ガイド部材に取り付けられドリルの穿孔深さを設定するためのストッパ部材と、を備えたものが、知られている(特許文献1参照)。
この穿孔装置では、ガイド部材に穿孔深さを設定するための複数の設定目盛り溝が形成されており、ストッパ部材に設けたハンドルレバーの先端を、この設定目盛り溝に嵌合させることにより、ストッパ部材を所望の位置に取り付けるようになっている。そして、穿孔作業が進み、上側のブラケットにストッパ部材が当接することで、設定した深さに穿孔穴が形成される。
【特許文献1】特開2004−276194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような穿孔装置では、設定目盛り溝にストッパ部材のハンドルレバーを嵌合させることで穿孔深さを設定する構造であるため、任意の穿孔深さに無段階で調整することができないという問題があった。また、ガイド部材およびストッパ部材の構造が複雑になり、コスト高となる問題もあった。さらに、ブラケットおよびレバー付のストッパ部材が電動ドリル本体側から突き出ているため、作業時の取り回しの際に、邪魔になることもあった。
【0004】
本発明は、単純な構造で、穿孔深さを無段階に調整することができる電動ドリルのガイドアタッチメントおよびこれを備えた穿孔装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動ドリルのガイドアタッチメントは、穿孔対象部に穿孔穴を穿孔する電動ドリルに装着され、電動ドリルによる穿孔をガイドする電動ドリルのガイドアタッチメントであって、電動ドリルに装着されるガイドホルダと、中心部に電動ドリルのドリルビットが挿通される挿通孔を有し、穿孔対象部の穿孔穴形成部に突き当てられる当接部材と、前端部で当接部材を支持するガイドロッドと後端部でガイドホルダに支持されたガイド筒とを、入れ子式で連結した一対のスライドガイドと、一対のスライドガイドにおける一方のスライドガイドのガイド筒に螺合し、当接部材に突き当たって電動ドリルによる穿孔穴の穿孔深さを規制する調整雌ネジ部材と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、ガイド筒に対し、調整雌ネジ部材を正逆回転させて進退させることにより、調整雌ネジ部材と当接部材との離間距離が調整される。すなわち、ガイド筒を雄ネジとし調整雌ネジ部材を雌ネジとするネジ機構により、電動ドリルによる穿孔穴の穿孔深さが調整される。このように、一方のスライドガイドのガイド筒を利用して、穿孔深さの調整機構を構成することができるため、構造を単純化することができる。また、ネジ機構を用いることにより、穿孔深さを無段階に調整することができる。しかも、調整雌ネジ部材は突出部分が無く、調整雌ネジ部材が作業の邪魔になることがない。
【0007】
この場合、一対のスライドガイドにおける他方のスライドガイドに巻回するように設けられ、ガイドホルダを受けにして当接部材を前方に相対的に付勢するコイルスプリングを、更に備えることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、作業者は、穿孔作業を完了した段階で力を抜くようにすれば、コイルスプリングにより、一対のスライドガイドに案内させつつドリルビットを穿孔穴から引抜くことができる。これにより、作業性を向上させることができると共に、ドリルビットを穿孔穴から真っ直ぐ引き抜くことができる。
【0009】
また、一方のスライドガイドのガイドロッドには、穿孔穴の穿孔深さを指標するゲージが設けられていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、作業者が、別途、ゲージ(物差し)を用意して穿孔深さを測り設定する必要がなく、穿孔深さの設定を迅速かつ精度良く行うことができる。
【0011】
さらに、調整雌ネジ部材の後側に位置して、一方のスライドガイドのガイド筒に螺合し、位置規制した調整雌ネジ部材の弛み止めとなる弛み止めナットを、更に備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、弛み止めナットにより、所定の穿孔深さに調整した調整雌ネジ部材の弛みを防止することができるため、穿孔作業中の振動等により調整雌ネジ部材が位置ズレしてしまうのを、有効に防止することができる。
【0013】
一方、電動ドリルは、ドリル本体と、ドリルビットと、ドリル本体とドリルビットとの間に介設され、冷却剤をドリルビットに送り込む冷却剤供給アタッチメントと、から成り、ガイドホルダは、冷却剤供給アタッチメントの部分で電動ドリルに装着されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、例えば、外部に設けた冷却剤供給装置から冷却剤供給アタッチメントを介してビットおよび穿孔穴形成部に冷却剤を供給することができ、いわゆる湿式で穿孔穴を穿孔することができる。このため、穿孔作業時の粉塵の飛散防止や、熱によるドリルビットの損傷を防止することができると共に、低騒音で穿孔作業を行なうことができる。
【0015】
この場合、当接部材は、一対のスライドガイドに支持された当接部材本体と、当接部材本体に装着され、穿孔穴形成部に突き当てられると共に挿通孔を形成したホーン状の吸着パッドと、当接部材本体に形成され、吸着パッドの内側空間に連通する吸引排水口と、を有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ドリルビットから穿孔穴形成部に供給された冷却剤は、穿孔作業時の粉塵と共に、例えば、外部に設けた冷却剤回収装置に吸引・回収することができる。このため、粉塵混じりの冷却剤は、外部に飛び散ることなく回収され、作業現場を汚すことがない。
【0017】
また、吸着パッドは、挿通孔と同軸上において、穿孔穴形成部に突き当てられる内外2重の環状シール片を有していることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、穿孔穴形成部の外側を2重にシールすることができるため、穿孔作業時の粉塵混じりの冷却剤の飛散および漏れを、より適切に防止することができる。
【0019】
さらに、吸着パッドは、挿通孔の近傍に通気孔を有していることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、例えば、外部に設けた冷却剤回収装置により、穿孔作業時の粉塵混じりの冷却剤の吸引する際、通気孔からのエアーの流れを利用してスムーズな吸引を行うことができる。
【0021】
本発明の穿孔装置は、上記した電動ドリルのガイドアタッチメントと、電動ドリルと、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、所望の深さの穿孔穴を効率よく且つ精度良く穿孔することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る穿孔装置ついて説明する。この穿孔装置は、電動ドリルに、穿孔をガイドするガイドアタッチメントを装着し、コンクリート、タイル、石材等に穿孔作業を行うものである。
【0024】
図1に示すように、穿孔装置1は、コンクリート等の穿孔対象物Cに穿孔穴Hを穿孔する電動ドリル2と、穿孔対象物Cに突き当てられ、電動ドリル2の穿孔をガイドするガイドアタッチメント3と、から構成されている。電動ドリル2は、先端に穿孔対象物Cを穿孔研削するための切刃12を装着したドリルビット11と、これを回転させる動力源たるドリル本体15と、ドリルビット11とドリル本体15との間に介設した冷却剤供給アタッチメント4と、から構成されている。
【0025】
冷却剤供給アタッチメント4には、冷却剤をドリルビット11(切刃12)に供給する冷却剤供給ユニット21が接続されている。また、ガイドアタッチメント3の先端には、切刃12に供給した冷却剤を穿孔対象物Cの研削粉(粉塵)と共に回収する冷却剤回収ユニット(図示省略)が接続されている。なお、冷却剤供給ユニット21および冷却剤回収ユニットは、床面に設置され、それぞれ冷却剤供給チューブ23および冷却剤回収チューブ24を介して穿孔装置1に接続されている。
【0026】
穿孔作業において、冷却剤は、冷却剤供給チューブ23を介して冷却剤タンク22から冷却剤供給アタッチメント4に加圧供給されると共に、ガイドアタッチメント3を介してドリルビット11の先端(切刃12)を穿孔対象物Cの要穿孔箇所(穿孔穴形成部)にあてがい、ドリル本体15によりドリルビット11を回転させ、穿孔対象物Cに所定の深さの穿孔穴Hを穿孔する。この際、冷却剤は、切刃12を穿孔対象物Cに突き当てる動作に連動して、冷却剤供給アタッチメント4からドリルビット11を通って切刃12に供給される。また、切刃12に供給された冷却剤は、穿孔対象物Cの研削粉と混合した状態で、ガイドアタッチメント3の先端部から冷却剤回収チューブ24を介して冷却剤回収ユニット(図示省略)に回収される。
【0027】
ドリルビット11は、コア部を残すようにして穿孔対象物Cを断面リング状に研削するダイヤモンドコアビットであって、穿孔対象物Cを穿孔する切刃12と、先端部に切刃12を保持すると共に基端部で冷却剤供給アタッチメント4に装着されるシャンク13とで構成されている。切刃12は、いわゆるダイヤモンド切刃であり、コア部を残すようにして穿孔対象物Cを研削すべく円筒状に形成されると共に、シャンク13に比べて幾分太径に形成されている。
【0028】
シャンク13は、先端に切刃12を固定したシャンク本体13aと、シャンク本体13aの基端側に連なり有底円筒状に形成された接合凹部13bとで、一体に形成されている。そして、接合凹部13bには、後述する出力軸41の接合凸部44(図2参照)が嵌合すると共に、接合凸部44の係止ピンが係止する係止溝(図示省略)が形成されている。これにより、冷却剤供給アタッチメント4にドリルビット11が着脱自在に装着される。また、ドリルビット11の軸心部分には、穿孔された穿孔対象物Cのコア部を呼び込むと共に、冷却剤の流路となるビット内流路14が形成されている。冷却剤は、出力軸41からこのビット内流路14を通って切刃12の先端に導かれ、他方、研削されたコア部は、相対的に切刃12からビット内流路14に導かれる。
【0029】
ドリル本体15は、モータハウジング16と、モータハウジング16から後方に延びるグリップ部17とを有し、モータハウジング16には、常用電源で駆動するモータ(図示省略)とモータの回転を減速して出力する減速機(図示省略)とが収容されている。減速機から延びるドリル本体15の主軸18は、モータハウジング16の先端に形成した軸カバー19に収容されており、その先端部には正方形断面の凹溝が形成され、これに後述する入力軸31の主軸連結部32(図2参照)が係合している。なお、軸カバー19のドリルビット11側端部には、後述するアタッチメントケース25の雄ネジ27が、螺合する雌ネジ(図示省略)が形成されている。
【0030】
図2に示すように、冷却剤供給アタッチメント4は、ドリル本体15の軸カバー19に固定されるアタッチメントケース25と、ドリル本体15の主軸18に連結され、アタッチメントケース25に回転自在に軸支された入力軸31と、入力軸31に対し一体回転自在に且つ軸方向にスライド自在に保持される出力軸41と、出力軸41の軸心に形成された軸内流路45に収容され、先端部に弁体52を有する弁部材51と、を備えている。
【0031】
アタッチメントケース25は、円筒形状を有し、その内部には、ドリル本体15側(後側)に開口して形成した太内径部25aと、太内径部25aに連なり、これよりも細径に形成した中内径部25bと、中内径部25bに連なり、これよりも細径に形成した細内径部25cと、細内径部25cに連なると共にドリルビット11側(前側)に開口し、前側ベアリング26が配設される軸受け部25dと、が形成されている。また、アタッチメントケース25の後側の外周面には、上記の軸カバー19の雌ネジに螺合(固定)するように、雄ネジ27が形成されている。さらに、アタッチメントケース25の外周面には、後述する入力軸31の軸円筒部33に連通する接続孔28(冷却剤導入口)が開口しており、この接続孔28に上記の冷却剤供給チューブ23が接続(ねじ接合)されている。
【0032】
入力軸31は、ドリル本体15の主軸18に連結される主軸連結部32と、主軸連結部32の前側に連なり、有底円筒状に形成され、その内周面に出力軸41を一体回転自在に且つ軸方向にスライド自在に保持する軸円筒部33と、軸円筒部33の先端(前端)に形成され上記の前側ベアリング26の抜止めとして機能する入力フランジ部34と、で一体に形成されている。なお、入力軸31は、前側ベアリング26とドリル本体15側のベアリング(図示省略)により、両持ちで回転自在に支持されている。
【0033】
上記の前側ベアリング26の後側、すなわち上記の細内径部25cの軸方向両端には、軸円筒部33の外周面と細内径部25cの内周面との間を一対のシールパッキン35によりシールすることで、この間に外側冷却剤溜り36が形成されている。そして、この外側冷却剤溜り36には、径方向外側から上記の接続孔28が連通している。軸円筒部33の外周面の180°対称位置には、軸円筒部33内側に連通する一対の径方向流路37が形成されている。また、軸円筒部33内側の底部39には、弁部材51の弁体支持部53(後述する)の基端(後端)を固定する固定ネジ穴38が形成されている。
【0034】
出力軸41は、入力軸31の軸円筒部33に挿入される出力軸本体42と、出力軸本体42の前側に連なる出力フランジ部43と、出力フランジ部43の前側に連なる接合凸部44と、で一体に構成されている。出力軸41の軸心には、下流側で上記のビット内流路14に連通する軸内流路45が貫通形成されており、入力軸31の底部39に開放されている。また、接合凸部44には、図示しないが、係止ピンが植設されており、この係止ピンと、ドリルビット11の接合凹部13bに形成した係止溝とにより、接合凸部44が接合凹部13bに抜止め状態で連結される。
【0035】
出力軸本体42は、スライド可能な寸法公差をもって入力軸31の軸円筒部33に挿入されている。また、出力軸本体42の外周面の軸方向略中間部には、環状の環状溝47が形成され、環状溝47には、その外周面の180°対称位置に、軸内流路45に径方向から連通する一対の連通孔48が形成されている。
【0036】
そして、この環状溝47の外周面と上記の軸円筒部33の内周面との間には、環状の内側冷却剤溜り46が形成されている。内側冷却剤溜り46には、径方向外側から上記の一対の径方向流路37が連通し、径方向内側から一対の連通孔48が連通している。すなわち、軸内流路45には、上流側から順に、接続孔28、外側冷却剤溜り36、径方向流路37、内側冷却剤溜り46、連通孔48を介して、冷却剤タンク22から冷却剤が供給される。
【0037】
軸内流路45は、その下流端の近傍に形成された狭窄部45aと、狭窄部45aから上流側に連なる上流部45bと、狭窄部45aから下流側に連なる下流部45cとから構成されており、狭窄部45aは、上流部45bおよび下流部45cに比べて細径に形成され、下流部45cは、上流部45bに比べて僅かに細径に形成されている。上述したように、軸内流路45は、入力軸31の底部39に開放されているため、軸内流路45に供給された冷却剤は、ビット内流路14に流れ込むと共に、底部39にも流れ込むようになっている。底部39に流れ込んだ冷却剤の圧力により、入力軸31の内周面にスライド自在に保持された出力軸41は、前側に付勢される。
【0038】
出力フランジ部43の後側面と入力フランジ部34の前側面との間には、出力軸41を前側に付勢する弾性部材Rが介設されており、各フランジ部34,43および弾性部材Rには、各々、連結ピンPを圧入するための4つの連結孔が周方向に均等間隔配置されている。各連結孔に連結ピンPを圧入することにより、各フランジ部34,43および弾性部材Rは、回転方向に固定される共に、軸方向に互いに離接可能に連結される。
【0039】
弁部材51は、軸内流路45の下流部45cに収容された弁体52と、弁体52から軸内流路45内で後側に延在する弁体支持部53と、で一体に構成されている。弁体52は、後側が先細となる形状で、弁体支持部53の前側に連なり、弁体52と狭窄部45aの先端部(前端部)とが密接すると、軸内流路45が閉塞(閉弁)される。また、閉弁状態から、弁体52を狭窄部45aに対し下流側に移動させると、弁体52と狭窄部45aの先端部との間に間隙が生じ、軸内流路45が開放(開弁)される。弁体支持部53は、軸内流路45の狭窄部45aに比べて、僅かに細径に形成されている。また、弁体支持部53の後端部(基端部)には、入力軸31の底部39に形成された固定ネジ穴38に螺合し、弁部材51を入力軸31に固定するための固定ネジ部54が形成されている。
【0040】
これにより、ドリルビット11の押し付けに伴って出力軸41を後側に後退させると、狭窄部45aは、弁体52に対して、上流側(開放方向)に後退し、軸内流路45が開放される。また、その状態から、ドリルビット11の押し付け解除に伴って出力軸41を前側に前進させると、狭窄部45aは、弁体52に対して、下流側(閉塞方向)に前進し、軸内流路45が閉塞される。なお、弁部材51は、出力軸41の抜止めとしても機能している。
【0041】
次に、図3および図4を参照して、ガイドアタッチメント3について説明する。ガイドアタッチメント3は、電動ドリル2を固定するガイドホルダ6と、穿孔対象物Cに突き当てられる当接部材7と、ガイドホルダ6および当接部材7間に渡した一対のスライドガイド8と、を有している。また、ガイドアタッチメント3は、そのガイドホルダ6の部分で、冷却剤供給アタッチメント4のアタッチメントケース25に差込み固定されており、この状態で、ドリルビット11が当接部材7の位置まで前方に延びている(図1参照)。すなわち、ガイドアタッチメント3の中心軸と同軸上に、ガイドホルダ6、当接部材7およびドリルビット11が配設され、中心軸に平行に且つ左右対称に位置して、一対のスライドガイド8が配設されている。ドリルビット11が穿孔対象物Cに切り込んでゆく際に、当接部材7は、一対のスライドガイド8を介して穿孔穴Hの縁部に突き当てられる。
【0042】
図3に示すように、一対のスライドガイド8は、主スライドガイド81と副スライドガイド91とから成り、いずれも入れ子式のガイドで構成されている。そして、主スライドガイド81には、これに巻回するようにコイルスプリング84が設けられ、副スライドガイド91には、穿孔深さを規制するネジ式のスライドストッパ94が設けられている(詳細は、後述する。)。
【0043】
ガイドホルダ6は、アタッチメントケース25が嵌合する円形の内周面を有するホルダ本体61と、ホルダ本体61の両側に突出形成された一対のガイド取付部62と、で一体に形成されている。また、ホルダ本体61には、一文字グリップG(図1参照)がネジ止め固定されるボス状のグリップ固定孔63が形成されている。ホルダ本体61には、アタッチメントケース25が嵌合しており、この状態で、ホルダ本体61に径方向から螺合した止めネジ64により、ガイドアタッチメント3が冷却剤供給アタッチメント4に固定されている。
【0044】
一対のガイド取付部62には、前後方向に貫通孔65がそれぞれ形成されており、両貫通孔65には、一対のスライドガイド8がその基部(後部)を貫通させた状態で接着固定されている。なお、各スライドガイド8の基部は、貫通孔65に圧入固定してもよいし、ネジ固定してもよい。
【0045】
当接部材7は、中心部にドリルビット11の先端部が臨む貫通開口74を形成した当接部材本体71と、当接部材本体71の両側に突設した一対のガイド固定部72と、当接部材本体71の先端部に装着した吸着パッド73と、で構成されている。当接部材本体71と一対のガイド固定部72とは、ステンレス等で一体に形成され、吸着パッド73は、ゴム等の弾性材で形成されている。当接部材本体71の下面には、冷却剤の吸引排水口75が突設されている。吸引排水口75は、斜め後方に延在しており、吸引排水口75には、冷却剤を冷却剤回収ユニットに導く冷却剤回収チューブ24(図1参照)が接続されている。
【0046】
各ガイド固定部72には、ネジ孔76が形成されており、ネジ孔76には、各スライドガイド8の先端部が螺合している。これにより、当接部材7が一対のスライドガイド8に支持されている。また、当接部材7(ガイド固定部72)から突出した各スライドガイド8の先端部位には、袋ナットBNが取り付けられている。これにより、穿孔作業に伴う振動で、スライドガイド8に弛みが生ずることがなく、且つスライドガイド8の先端部位が保護されるようになっている。
【0047】
図3および図4に示すように、吸着パッド73は、当接部材本体71の貫通開口74に挿入装着される円筒部77と、穿孔対象物Cに密着する内外2重の環状シール片の形態を有するホーン部78と、円筒部77とホーン部78との間に介設されるパッドフランジ部79と、で一体に形成されている。円筒部77は、有底円筒状に形成され、後側の円筒底部には、上記の貫通開口74に連通する挿通孔77aと、挿通孔77aの周囲に周方向に均等配置された3つの通気孔77bと、が形成されている。また、円筒部77の下面には、上記の吸引排水口75に連通する排水孔77cが形成されている。
【0048】
ホーン部78は、その環状の外形を形作る外環状シール片78aと、外環状シール片78aの内側に形成され、これよりも小径且つ短い内環状シール片78bと、が上記の挿通孔77aと同軸上に形成されている。当接部材7が前進端位置にある状態において、ドリルビット11の切刃12は、所定の間隙を存して吸着パッド73内に収容されており、穿孔作業に移行すると、穿孔対象物Cに密接した吸着パッド73から切刃12が相対的に突出しながら穿孔対象物Cに切り込んでゆく。ここで、吸着パッド73は、パッドフランジ部79が、貫通開口74の縁部に押し付けられるため、吸着パッド73が貫通開口74に潜り込んでしまうことがない。
【0049】
また、吸着パッド73の穿孔対象物Cへの押し付けに伴って、外環状シール片78aは、径方向外側に撓んで拡がり、穿孔対象物Cに密着する。さらに、それに伴って、内環状シール片78bも同様に穿孔対象物Cに密着する。このように、穿孔穴形成部の縁部を2重にシールするようにしているため、粉塵混じりの冷却剤の飛散および漏れを有効に防止することができる。一方、穿孔穴形成部から流出した切削粉塵混じり冷却剤は、吸着パッド73から吸引排水口75を通って、冷却剤回収チューブ24に導かれる。この場合、冷却剤回収ユニットは、冷却剤を真空吸引するようになっており、粉塵混じりの冷却剤は、通気孔77bからのエアーの流れを利用して円滑に吸引される。なお、回収した冷却剤は、濾過して再使用することが好ましい。また、冷却剤は、作業後の乾燥(気化)を促進すべくアルコール混じりのものを用いることが、好ましい。
【0050】
図3に示すように、一対のスライドガイド8のうちの主スライドガイド81は、先端部で上記の当接部材7を支持する主ガイドロッド82と、基部で上記のガイドホルダ6に支持された主ガイド筒83とから成り、主ガイド筒83に対しで主ガイドロッド82が入れ子式でスライド自在に構成されている。主ガイド筒83は、基部側が幾分太径に形成され、この部分でガイドホルダ6に固定されている。主ガイド筒83の内周面は、いわゆるストレート孔となっているが、先端部のみ環状段部を存して幾分細径に形成され、この部分に主ガイドロッド82の抜け止めとして機能する抜止め部87が形成されている。すなわち、この抜止め部87により、一対のスライドガイド8(当接部材7)の前進端位置が位置規制される。同様に、当接部材7が一対のスライドガイド8の主ガイド筒83および副ガイド筒93(後述する)の先端に突き当たることで、一対のスライドガイド8(当接部材7)の後退端位置が位置規制される。
【0051】
主ガイドロッド82は、先端部に当接部材7に螺合する雄ネジを形成したロッド本体85と、ロッド本体85の基端に連なるスライド部86とで一体に形成されている。ロッド本体85に対しスライド部86は、幾分太径に形成されており、ロッド本体85は主ガイド筒83の抜止め部87の部分に摺接し、スライド部86はストレート孔の部分に摺接する。これにより、主ガイドロッド82は、主ガイド筒83に対し常に2箇所で摺接し、直進性を維持しつつ円滑にスライドするようになっている。
【0052】
主スライドガイド81に巻回するように設けたコイルスプリング84は、一方の端部をガイドホルダ6に当接すると共に他方の端部を当接部材7に当接して、圧縮ばねとして機能している。すなわち、コイルスプリング84は、ガイドホルダ6を受けとして当接部材7を前方に付勢している。
【0053】
一方、副スライドガイド91は、先端部で上記の当接部材7を支持する副ガイドロッド92と、基部で上記のガイドホルダ6に支持された副ガイド筒93とから成り、副ガイド筒93に対しで副ガイドロッド92が入れ子式でスライド自在に構成されている。副ガイド筒93は、外周面に雄ネジを形成した前半部のネジ筒部95と、ネジ筒部95より幾分太径に形成された後半部の取付筒部96と、で一体に形成されている。副スライドガイド91は、この取付筒部96の部分で上記のガイドホルダ6に取り付けられている。また、ネジ筒部95には、上記のスライドストッパ94が螺合している。そして、副ガイド筒93の内周面は、主ガイド筒83と異なり完全なストレート孔に形成されている。
【0054】
副ガイドロッド92は、ストレートのロッドであり、副ガイド筒93の内周面に所定の寸法公差を存してスライド自在に支持されている。副ガイドロッド92の先端部には、当接部材7に螺合する雄ネジを形成され、また軸方向のほぼ全長に亘って、穿孔穴Hの穿孔深さを指標するゲージ97(目盛り)が刻まれている。なお、本実施形態における主スライドガイド81と副スライドガイド91とは、異なる構造となっているが、同一の構造としてもよい。但し、この場合には、抜止め部87およびネジ筒部95を有する構造とする。
【0055】
スライドストッパ94は、副ガイド筒93のネジ筒部95に螺合する調整雌ネジ部材98と、調整雌ネジ部材98の後側に位置し、ネジ筒部95に螺合する弛み止めナット99と、で構成されている。調整雌ネジ部材98は、長い円筒形状を有し、前半部内周面において副ガイド筒93よりも太径に形成された挿通内径部98aと、後半部内周面においてネジ筒部95に螺合する雌ネジ部98bと、で一体に形成されている。そして、調整雌ネジ部材98の先端(前端)と合致する副ガイドロッド92のゲージ97の読み寸法が、穿孔穴Hの穿孔深さとなる。すなわち、穿孔穴Hの穿孔が進んで、調整雌ネジ部材98の先端が当接部材7に突き当たると、調整雌ネジ部材98により調整した穿孔深さの穿孔穴Hが形成される。
【0056】
この場合、調整雌ネジ部材98を、正逆回転させて進退させることにより、調整雌ネジ部材98と当接部材7との離間距離(穿孔深さ)が無段階に調整される。この際、上記のゲージ97により、穿孔深さを確認しながら調整することができる。これにより、作業者が、別途、ゲージ(物差し)を用意する必要せずとも、穿孔深さ調整を迅速かつ精度良く行うことができる。
【0057】
弛み止めナット99は、薄手の六角ナットで構成されている。調整雌ネジ部材98により穿孔深さを調整後、弛み止めナット99を、後側から調整雌ネジ部材98に当接させ、調整雌ネジ部材98と弛み止めナット99とを互いに締め合うことで(いわゆるダブルナット)、調整雌ネジ部材98が副ガイド筒93に弛み止め状態で固定される。これにより、穿孔作業に伴う振動による、調整した調整雌ネジ部材98の弛みを防止することができるため、穿孔作業中に調整雌ネジ部材98が位置ズレすることがない。なお、弛み止めナット99を締め付ける場合には、連れ回りを防止すべく調整雌ネジ部材98を片手で握って回り止めとする。もっとも、調整雌ネジ部材98を長い六角ナットで構成し、調整雌ネジ部材98および弛み止めナット99を工具で締め付けるようにしてもよい。
【0058】
穿孔に伴ってドリルビット11が徐々に前進してゆくと、一対のスライドガイド8はコイルスプリング84に抗して収縮して行き、その際、コイルスプリング84に付勢された当接部材7は、穿孔対象物Cに、常に突き当てられた状態を維持する。穿孔が進み、穿孔穴Hが調整した穿孔深さに達すると、調整雌ネジ部材98の先端部が当接部材7に突き当たって穿孔が規制される。このようにして穿孔作業が完了したら、作業者は力を抜くようにする。すると、コイルスプリング84のばね力が作用し、一対のスライドガイド8に案内されつつドリルビット11を穿孔穴Hから真っ直ぐに引き抜かれる。
【0059】
以上のように本実施形態よれば、穿孔装置1による穿孔作業において、一方のスライドガイド(副スライドガイド91)の副ガイド筒93を利用して、穿孔深さの調整機構を構成することができるため、構造を単純化することができ、また、ネジ機構は製作容易である上、ネジ機構を用いることにより、穿孔深さを無段階に調整することができる。しかも、調整雌ネジ部材98は突出部分が無く、調整雌ネジ部材98が作業の邪魔になることがない。さらに、冷却剤供給アタッチメント4および吸着パッド73による湿式の穿孔作業ができ、穿孔作業時の粉塵の飛散や冷却剤の漏れ等を防止すると共に、低騒音で穿孔作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る穿孔装置の外観図である。
【図2】穿孔装置の冷却剤供給アタッチメントの構造図である。
【図3】穿孔装置のガイドアタッチメントの平面図である。
【図4】穿孔装置の吸着パッドの構造図である。
【符号の説明】
【0061】
1:穿孔装置、2:電動ドリル、3:ガイドアタッチメント、4:冷却剤供給アタッチメント、6:ガイドホルダ、7:当接部材、8:スライドガイド、11:ドリルビット、15:ドリル本体、71:当接部材本体、73:吸着パッド、75:吸引排水口、77b:通気孔、78a:外環状シール片、78b:内環状シール片、81:主スライドガイド、84:コイルスプリング、91:副スライドガイド、92:副ガイドロッド、93:副ガイド筒、97:ゲージ、98:調整雌ネジ部材、99:弛み止めナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔対象部に穿孔穴を穿孔する電動ドリルに装着され、前記電動ドリルによる穿孔をガイドする電動ドリルのガイドアタッチメントであって、
前記電動ドリルに装着されるガイドホルダと、
中心部に前記電動ドリルのドリルビットが挿通される挿通孔を有し、前記穿孔対象部の穿孔穴形成部に突き当てられる当接部材と、
前端部で前記当接部材を支持するガイドロッドと後端部で前記ガイドホルダに支持されたガイド筒とを、入れ子式で連結した一対のスライドガイドと、
前記一対のスライドガイドにおける一方の前記スライドガイドの前記ガイド筒に螺合し、前記当接部材に突き当たって前記電動ドリルによる前記穿孔穴の穿孔深さを規制する調整雌ネジ部材と、を備えたことを特徴とする電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項2】
前記一対のスライドガイドにおける他方の前記スライドガイドに巻回するように設けられ、前記ガイドホルダを受けにして前記当接部材を前方に相対的に付勢するコイルスプリングを、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項3】
一方の前記スライドガイドの前記ガイドロッドには、前記穿孔穴の穿孔深さを指標するゲージが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項4】
前記調整雌ネジ部材の後側に位置して、一方の前記スライドガイドの前記ガイド筒に螺合し、位置規制した前記調整雌ネジ部材の弛み止めとなる弛み止めナットを、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項5】
前記電動ドリルは、ドリル本体と、前記ドリルビットと、前記ドリル本体と前記ドリルビットとの間に介設され、冷却剤を前記ドリルビットに送り込む冷却剤供給アタッチメントと、から成り、
前記ガイドホルダは、前記冷却剤供給アタッチメントの部分で前記電動ドリルに装着されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項6】
前記当接部材は、前記一対のスライドガイドに支持された当接部材本体と、
前記当接部材本体に装着され、前記穿孔穴形成部に突き当てられると共に前記挿通孔を形成したホーン状の吸着パッドと、
前記当接部材本体に形成され、前記吸着パッドの内側空間に連通する吸引排水口と、を有していることを特徴とする請求項5に記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項7】
前記吸着パッドは、前記挿通孔と同軸上において、前記穿孔穴形成部に突き当てられる内外2重の環状シール片を有していることを特徴とする請求項6に記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項8】
前記吸着パッドは、前記挿通孔の近傍に通気孔を有していることを特徴とする請求項6または7に記載の電動ドリルのガイドアタッチメント。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電動ドリルのガイドアタッチメントと、
前記電動ドリルと、を備えたことを特徴とする穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−285821(P2009−285821A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144118(P2008−144118)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】