電動リールのモータ制御装置
【課題】モータを多段速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようにする。
【解決手段】制御ユニット90は、回転速度を検出するスプールセンサ102と、負荷を電流値により検出する電流検出部108aと、回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する調整レバー101と、リール制御部100と、を備えている。リール制御部は、負荷がモータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が時間t5連続する第1条件を満たしたとき、回転速度より二段階低い上限速度に対応する目標速度を設定する。また、目標速度設定後の第1負荷と、それから時間t5後の第2負荷とを比較し、第1負荷が第2負荷より所定量大きいときは、目標速度を一段階低い上限速度に設定し、第1条件を満たすとき、目標速度になるようにモータを制御する。
【解決手段】制御ユニット90は、回転速度を検出するスプールセンサ102と、負荷を電流値により検出する電流検出部108aと、回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する調整レバー101と、リール制御部100と、を備えている。リール制御部は、負荷がモータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が時間t5連続する第1条件を満たしたとき、回転速度より二段階低い上限速度に対応する目標速度を設定する。また、目標速度設定後の第1負荷と、それから時間t5後の第2負荷とを比較し、第1負荷が第2負荷より所定量大きいときは、目標速度を一段階低い上限速度に設定し、第1条件を満たすとき、目標速度になるようにモータを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、特に、モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻き上げ時のスプールの回転をモータで行うことのできる電動リールは、リール本体と、リール本体に回転自在に支持されたスプールと、スプールを手動で回転させるためのハンドルと、スプールを巻き上げ方向に駆動する電動のモータとを備えている。リール本体の上面には、水深表示用のディスプレイや各種の入力を行うスイッチが設けられた操作パネルが装着されている。
【0003】
このような電動リールにおいて、スプールの巻き上げの上限巻き上げ速度が複数段階ごとに一定になるようにモータを多段速度制御するものが従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来の電動リールでは、操作パネルのハンドル側でリール本体の側面に設けられた揺動する操作レバーにより、上限速度を複数段階に設定している。
【0004】
従来の電動リールでは、操作レバーの揺動角度に応じて各段階の上限速度が設定され、それがディスプレイに表示される。モータ制御装置では、スプール回転数を検出し、検出されたスプール回転速度が設定された段階の速度になるようにモータを制御する。
【特許文献1】特開2000−139299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、負荷が高くなり、設定された上限速度までスプールの回転が上昇しない場合でも、上限速度まで上昇するようにモータに無駄に電流が流れ続けることがある。このような無駄な電流が流れると、モータにかかる負担が増大し、モータが焼損することがある。
【0006】
本発明の課題は、モータを多段速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る電動リールのモータ制御装置は、モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置であって、回転速度検出部と、負荷検出部と、上限速度設定部と、第1目標速度設定部と、負荷比較部と、第2目標速度設定部と、モータ制御部と、を備えている。回転速度設定部は、スプールの回転速度を検出する。負荷検出部は、スプールに作用する負荷を電流値により検出する。上限速度設定部は、スプールの回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する。第1目標設定部は、負荷検出部により検出された負荷が、モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が第1所定時間連続し、かつ検出された回転速度が設定された上限速度未満である第1条件を少なくとも満たしたとき、回転速度より少なくとも一段階低い上限速度に対応する目標速度を設定する。負荷比較部は、目標速度設定後の第1負荷と、それから第2所定時間後の第2負荷とを比較する。第2目標速度設定部は、第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、目標速度を少なくとも一段階低い上限速度に設定し、第2負荷が第1負荷より所定量小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に設定する。モータ制御部は、第1条件を満たさないとき、スプールの回転速度が設定された上限速度になるようにモータを制御し、第1及び第2目標設定部により目標速度が設定されたとき、スプールの回転速度が設定された目標速度となるようにモータを制御する。
【0008】
このモータ制御装置では、通常は上限速度設定部で設定された上限速度となるようにモータが制御される。負荷が増加し、負荷検出部により検出された負荷が、モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上(たとえば最大電流値の50から90%)の高い負荷状態が第1所定時間連続した第1条件を満たしたとき、回転速度より少なくとも一段階低い上限速度に対応する目標速度が設定される。そして、そのとき検出された第1負荷とそれから第2所定時間経過後の第2負荷とを比較し、第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、目標速度を少なくとも一段階低い上限速度に設定し、第2負荷が第1負荷より所定量小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に設定する。目標速度が設定されると上限速度ではなく目標速度となるようにモータ制御部がモータを速度制御する。
【0009】
ここでは、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータの速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータに流れる電流を減少させ、モータに無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける多段速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【0010】
発明2に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1に記載の装置において、第1目標設定部は、第1条件と、回転速度が第1所定時間連続して上限速度未満である第2条件とを満たしたとき、目標速度を設定する。この場合には、高負荷の判定精度がさらに高くなり、さらに無駄な電流を流しにくくなる。
【0011】
発明3に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1又は2に記載の装置において、モータ制御部は、目標速度より低速側に上限速度設定部により上限速度が変更されると、目標速度が解除され、上限速度となるようにモータを制御する。この場合には、目標速度が設定されてもその速度より低速側に上限速度が設定されると、目標速度がキャンセルされるので、さらに無駄な電流が流れにくくなる。
【0012】
発明4に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、モータ制御部は、目標速度より高速側に上限速度設定部により上限速度が変更されると、その変更を無視し、目標速度となるようにモータを制御する。この場合には、減速制御中にモータの負荷が大きくなる高速側への増速を禁止しているので、モータへの負担がさらに減少する。
【0013】
発明5に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、第1所定時間と第2所定時間とは同時間である。この場合には、2つの時間が同じ時間であるので、制御が容易になる。
【0014】
発明6に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から5のいずれかに記載の装置において、第2目標速度設定部は、最大段階の半分以下の所定段階を限度として目標速度を低くする。この場合には、電流値がそれほど大きくならない低速域までで減速を終了するので、リールの性能が低下する無駄な減速が生じなくなる。
【0015】
発明7に係る電動リールのモータ制御装置は、発明6に記載の装置において、モータ制御部は、第1電流値以上の負荷状態が第1所定時間より長い第3所定時間連続した場合に記スプールの回転速度が低速段階より高速側の中間段階の速度以下のとき、オンオフする断続的な電流をスプールに流す。
【0016】
この場合には、目標速度が中間段階以下になると減速するのではなく、モータを断続運転するので、高負荷によりモータの回転が低下してロックや低速回転する等のときに無駄な電流がモータに流れてないようにしてモータの発熱を抑えることができる。また、負荷が小さくなれば、設定された上限速度によってモータで巻き上げ可能になるので、性能を下げることなくモータの焼損を防止できるようになる。
【0017】
発明8に係る電動リールのモータ制御装置は、発明7に記載の装置において、モータ制御部は、回転速度が最高速段階の上限速度の半分以下の回転速度のときにモータに流れる電流が第1電流値より大きい第2電流値になると、設定された段階の上限速度となるようにモータを制御する。この場合には、断続制御中に第1速度よりモータの回転速度が高くなり、かつ第1電流値より大きい第2電流値以下の第2状態なると、モータに作用する負荷が軽減してモータが回り出したと判断して断続制御を解除して通常の速度制御に移行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータの速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータに流れる電流を減少させ、モータに無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔電動リールの概略構成〕
本発明の一実施形態による電動リールは、図1に示すように、外見上は、主としてハンドル1が装着されたリール本体2と、リール本体2に回転自在に装着されたスプール3と、スプール3内に装着されたモータ4とを備えている。リール本体2の上部には、水深表示等を行うためのカウンタ5が装着されている。リール本体2の内部には、図2に示すように、ハンドル1の回転をスプール3に伝達するとともにモータ4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構6と、回転伝達機構6の途中に設けられたクラッチ機構7及びドラグ機構8と、を備えている。
【0020】
リール本体2は、図2に示すように、フレーム13と、フレーム13の両側方を覆う側カバー14、15とを有している。フレーム13は、図2に示すように、アルミニウム合金ダイカストの一体成形された部材であり、左右1対の側板16、17と、側板16、17を複数箇所で連結する連結部材18とを有している。下部の連結部材18には、釣り竿を装着するための竿装着脚19が装着されている。
【0021】
側カバー15は、側板17にボルトにより締結されている。側カバー15には、回転伝達機構6などを装着するための固定フレーム20が図示しないボルトにより締結されている。したがって側カバー15を側板17から外すと、固定フレーム20も回転伝達機構6の一部や側カバー15とともに側板17から外れる。
【0022】
側カバー14は、側板16に図示しないボルトにより締結されている。側カバー14には、外部に設けられた蓄電池等の電源と接続するための電源ケーブル用のコネクタ部14a(図1)が前部に斜めに突出して設けられている。このコネクタ部14aに接続される電源ケーブルには、後述する無線通信用のアンテナが設けられている。なお、電動リールは、直流12V(ボルト)、16.8V、24Vの3種類の電圧の電源に対応可能である。
【0023】
リール本体2のハンドル1側の前側側面には、スプール3の巻き上げ速度を31段階に調節可能であるとともに、スプール3に巻き付けられた釣り糸の張力を31段階に調節可能な調整レバー(速度設定部及び上限張力設定部の一例)101が揺動可能に設けられている。調整レバー101の揺動軸には調整レバー101の揺動角度を検出するためのポテンショメータ104(図6)が取り付けられている。
【0024】
スプール3は、図2に示すように、内部にモータ4を収納可能な筒状の糸巻胴部3aと、糸巻胴部3aの外周部に間隔を隔てて形成された左右1対のフランジ部3bとを有している。スプール3の一端はフランジ部3bから外方に延びており、その延びた端部の外周面に軸受25が配置されている。スプール3の他端には、ギア板3cが固定されている。ギア板3cは、図示しないレベルワインド機構にスプール3の回転を伝達するために設けられている。ギア板3cのスプール中心側部において、ギア板3cと固定フレーム20との間には転がり軸受26が装着されている。この2つの軸受25、26により、スプール3は、リール本体2に回転自在に支持されている。
【0025】
〔カウンタの構成〕
カウンタ5は、釣り糸の先端に装着された仕掛けの水深を表示するとともに、モータ4を制御するために設けられている。カウンタ5は、図3及び図4に示すように、上ケース5a及び下ケース5bとを有している。上ケース5aは、表示部分が前細りに形成され、表示部分から左右にわずかに凹んで形成された稜線部5c,5dを有している。稜線部5cは、側カバー14に面一に接続されており、稜線部5dは、側カバー15に面一に連なっている。上ケース5aの表示部分には、台形の各片がわずかに凸に湾曲した形状の先細りの銘板8が固定されている。銘板8には、水深表示部98を覗かせるための透明カバー8aが設けられている。下ケース5aの底面には、後述する電界効果トランジスタ(FET)108bを冷却するためのアルミ板で構成されたヒートシンク5eが設けられている。
【0026】
カウンタ5には、図3に示すように、仕掛けの水深データLXや棚位置を水面からと底からとの2つの基準で表示するための液晶表示ディスプレイからなる水深表示部98と、水深表示部98の手前側(図3下側)に配置された、たとえば3つのスイッチボタンからなる操作キー部99とが設けられている。また、カウンタ5の内部には、図4に示すように、水深表示部98や操作キー部99が配置される第1回路基板10と、第1回路基板10の下方に配置された第2回路基板11とが設けられている。第1回路基板10は、カウンタ5の小型化を図るために従来のものより小さく作られている。第2回路基板11のハンドル1装着側には、調整レバー101への配線101aが上下のケース5a,5bのつなぎ部から横向きに外部に導出されている。これにより釣り糸との接触を防止している。この配線の導出部分はシリコンなどで封止されており、カウンタ5内部を水密に保っている。また、第1及び2回路基板10,11において、電源線のハンダ部やモータ駆動に関わる電解コンデンサの足部やマイクロコンピュータの足部のハンダ部分にはシリコンを塗布することにより絶縁性を向上させ、湿気による影響を防止して誤作動が生じないようにしている。
【0027】
水深表示部98は、図5に示すように、バックライト30を有するセグメント式の液晶ディスプレイ98aを用いている。バックライト30は、赤と緑の二色を発光可能な発光ダイオード30aと、発光ダイオード30aが一側に配置された導光板30bとを有している。このような導光板30bを設けることにより液晶ディスプレイ98a全面を光らせることができる。
【0028】
操作キー部99は、水深表示部98の下側に左右に並べて配置されたメニューボタンMBと、決定ボタンDBと、棚メモ用の棚メモボタンTBと、を有している。メニューボタンMBは、水深表示部98内の表示項目を選択するために使用されるボタンである。たとえば、メニューボタンMB操作するごとに上からモード(仕掛けの水深を水面からの深さで表示するモード)と底からモード(仕掛けの水深を水底からの水深で表示するモード)とに切り換える。またメニューボタンMBを3秒以上長押しすると、長押しの都度、モータの制御モードを速度モードと張力モードとに切り換えできる。ここで、速度モードは、調整レバー101の揺動角度に応じてスプール3の回転速度の上限速度を31段階に多段速度制御可能なモードである。張力モードは、釣り糸に作用する張力の上限張力を31段階に多段張力制御可能なモードである。なお、両モードとも、最高段階の31段階は、100%デューティでモータ4を動作させる速巻速度であり、電流制限は行うが、速度制御は行わない。
【0029】
決定ボタンDBは、選択結果を確定して設定するボタンである。また、決定ボタンDBをたとえば3秒以上長押しすると、そのときの水深データLXが水深0の基準位置としてセットされる0セット処理を行える。棚メモボタンTBは、操作したときの仕掛けの水深を棚位置として設定するためのボタンである。以降はセットされた基準位置からの糸長で水深データLXが表示される。なお、釣り人は通常、仕掛けが海面に着水したときに決定ボタンを長押しして0セットする。
【0030】
また、カウンタ5の内部には、図6に示すように、水深表示部98やモータ4を制御するための制御ユニット(モード制御装置の一例)10が設けられている。制御ユニット90には、マイクロコンピュータからなるリール制御部100が設けられている。リール制御部100は、機能的な構成として、モータ4を速度制御する第1制御部100aと、モータ4のトルクを糸巻径により張力に補正して張力を制御する第2制御部100bとを有している。なお、糸巻径は、水深データにより求めることができる。
【0031】
リール制御部100には、操作キー部99と、側カバー15に揺動自在に装着されスプールの速度や釣り糸の張力を調整するための調整レバー101と、スプール3の回転数と回転方向とを、たとえば回転方向に並べて配置された2つのホール素子で検出するスプールセンサ(回転速度検出部の一例)102と、モータの温度を検出する温度センサ103と、調整レバー101に連結されたボテンショメータ104と、リールの外部に設けられた釣り情報表示装置120と仕掛けの水深データ等を無線(たとえば、IEEE802.15.4(ZigBee(登録商標)等の規格)でやりとりするための無線通信部105と、が接続されている。また、リール制御部100には、各種の報知用のブザー106と、水深表示部98と、各種のデータを記憶するたとえば、EEPROMからなる記憶部107と、モータ4をパルス幅変調(PWM)したデューティ比で駆動するモータ駆動回路108と、他の入出力部とが接続されている。モータ駆動回路108には、モータ4に流れる電流を検出する電流検出部(負荷検出部及び張力検出部の一例)108aと、電界効果トランジスタ108bとが設けられている。温度センサ103は、モータ4の温度を直接検出するのではなく、モータ駆動回路108に搭載された電界効果トランジスタ(FET)108bの温度により検出する。電界効果トランジスタ108bは、第2回路基板11に搭載されている。
【0032】
釣り情報表示装置120は、釣り船に搭載された魚群探知機140と無線によりデータをやりとりして、魚群探知機140と同様な魚探データ(底位置や棚位置)をグラフィック及び数値表示可能である。また、リールと無線でやりとりしてリールから得た水深データにより仕掛けの位置をグラフィック及び数値表示可能である。
【0033】
〔リール制御部の制御〕
リール制御部100は、調整レバー101の操作量に応じてモータ4の速度やトルク(張力)を制御する。また、スプールセンサ102の出力により釣り糸の先端に取り付けられる仕掛けの水深を算出し、それを水深表示部98に表示する。さらに、操作キー部99の操作により底位置(海底の水深)や棚位置(魚が群れている水深)が設定されると、算出された水深と設定された底位置や棚位置とが一致して仕掛けが棚位置や底位置に到達したときに、ブザー106によりその旨が報知される。
【0034】
次に、具体的なリール制御部100の制御動作をモータ4の制御を中心に図7から図16のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
<メインルーチン>
リール制御部100に電源が投入されると、図7のステップS1で初期設定がなされる。この初期設定では、各種のフラグがオフされるとともに、モータの制御モードが速度モードにセットされ、水深表示が上からモードにセットされる。ステップS2では、各種の表示処理がなされる。この表示処理では、水深表示部98に表示されるデータの表示処理を行う。たとえば、水深データ等の表示処理がなされる。
【0036】
ステップS3では、操作キー部99や調整レバーなどの入力操作がなされたか否かが判断される。ステップS4では、スプールセンサ102からの出力によりスプール3が回転しているか否かを判断する。ステップS5では、温度センサ103からの出力により図8に示すモータ4の温度保護処理を実行する。ステップS6では、糸巻径の算出や釣り糸に応じたスプール回転数と糸長との関係を学習する学習処理等のその他の処理が指令されたか否かを判断する。
【0037】
キー入力があると、ステップS3からステップS7に移行する。ステップS7では、図9に示すキー入力処理を実行する。ステップS4でスプール3が回転していると判断すると、ステップS4からステップS8に移行する。ステップS8では、図16に示す各動作モード処理を実行する。その他の処理の指令がなされた場合は、ステップS6からステップS9に移行して指令されたその他の処理を実行する。
【0038】
<温度保護処理>
ステップS5の温度保護処理は、モータ駆動回路108の温度(すなわちモータ4の温度)が90度以上になるとモータ4をオフする処理である。温度保護処理では、図8のステップS11で温度センサ103の出力によりモータ駆動回路108の温度を読み込む。モータ駆動回路108の温度をモータ4の温度に略比例するので、モータ駆動回路108の温度によりモータ4の温度を検出できる。ステップS12では、モータ駆動回路108の温度が第1所定温度(たとえば、摂氏85度から95度程度が好ましく、この実施形態では、摂氏90度)を超えたか否かを判断する。モータ駆動回路108の温度が90度を超えるとステップS12からステップS13に移行する。ステップS13では、温度が初めて90度を超えたときにオンする温度フラグFSがすでにオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしていない場合は、ステップS14に移行して温度フラグFSをオンし、ステップS15に移行する。温度フラグFSがすでにオンしている場合はステップS14をスキップする。ステップS15では、モータ4をオフし、メインルーチンに戻る。これにより、過負荷時のモータ4の焼損を防止できる。
【0039】
温度が第1所定温度以下の場合は、ステップS12からステップS16に移行する。ステップS16では、温度フラグFSがすでにオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしていないときは、メインルーチンに戻る。温度フラグFSがすでにオンしている場合は、ステップS17に移行して検出された温度Tdが第1所定温度より低い第2所定温度(たとえば、摂氏75度から85度程度が好ましく、この実施形態では、摂氏80度)以下まで下がったか否かを判断する。この判断により温度保護処理を終了する。検出された温度Tdが80度を超えている場合は、メインルーチンに戻り、80度以下の場合はステップS18に移行する。ステップS18では、タイマT1がオンしているか否かを破断する。タイマT1は、第2所定温度以下の状態が、所定時間t1(たとえば、20秒から40秒が好ましく、この実施形態では、30秒)続いたかを調べるためのものである。タイマT1がオン(スタート)していない場合は、ステップS19に移行してタイマT1をオンする。タイマT1がすでにオンしている場合はステップS19をスキップする。ステップS20では、タイマT1がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。タイムアップしていない場合はメインルーチンに戻り、タイムアップしている場合、すなわち、80度以下の状態が30秒以上続いた場合は、過負荷状態は消滅したと考えステップS21に移行して温度フラグFSをオフし、温度保護処理を終了する。温度保護処理が終了した後に調整レバー101をいったん操作開始位置(段階ST=0)に戻すことにより、モータ4の動作が可能になる。
【0040】
<キー入力処理>
ステップS7のキー入力処理では、図9のステップS31でメニューボタンMBが3秒以上長押しされたか否かを判断する。ステップS32では、調整レバー101が操作開始位置から操作されたか否かを判断する。ステップS33では、棚メモボタンTBや決定ボタンDBやメニューボタンMBのシングルクリック等のその他のキーが操作されたか否かを判断する。
【0041】
メニューボタンMBが。長押しされるとステップS31からステップS34に移行する。ステップS34では、速度モードか否かを判断する。速度モードのときは、ステップS36に移行して張力モードにセットし、張力モードのときはステップS35に移行して速度モードにセットする。
【0042】
調整レバー101が操作開始位置(ST=0)以外の位置に操作されていると判断するとステップS32からステップS37に移行する。ステップS37では、温度フラグFSがオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしているときは、調整レバー101によるモータ制御操作を禁止するためにステップS33に移行する。温度フラグFSがオンしていない場合には、ステップS37からステップS38に移行する。ステップS38では速度モードか否かを判断する。速度モードのときには、ステップS39に移行して速度モード処理を実行する。張力モードのときにはステップS40に移行して張力モード処理を実行する。他のキー操作がなされた場合には、ステップS33からステップS41に移行し、操作されたキーに応じた処理を行う。
【0043】
<速度モード処理>
ステップS39の速度モード処理では、スプール3の回転数が段階毎に設定された上限速度となるようにモータ4を制御する。なお、上限速度は、スプール3の糸巻径により補正され、実際には、スプール3に巻き付ける釣り糸の巻き上げ速度が一定になるようにモータ4が制御される。
【0044】
図10のステップS50で後述する断続処理中であることを示す断続フラグFP3がオンしているか否かを判断する。断続フラグFP3がオフの場合はステップS51に移行する。断続フラグFP3がオンしている場合はステップS54に移行する。
【0045】
ステップS51では、調整レバー101により設定された段数ST及びスプールセンサ102の出力により算出されたスプール3の回転速度Vdを読み込む。ステップS52では、スプール3の速度Vdが段階ST又は後述する保護段階STS(目標速度の一例)に応じた上限速度Vsの下限値Vst1未満か否かを判断する。ステップS53では、スプール3の速度Vdが段階ST段階ST又は保護段階STSに応じた上限速度Vsの下限値Vst2を超えているか否かを判断する。なお、速度制御を行う際に、段階ST毎に上限速度Vsの下限値Vst1及び上限値Vst2を設けたのは、両速度Vst1,Vst2の間で速度が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。この上限値Vst2と下限値Vst1とは上限速度Vstの、たとえば±10%以内に設定されている。
【0046】
ステップS54では、高負荷の場合にモータ4の断続運転する第1保護処理を実行し、ステップS55では、高負荷の場合にモータ4を減速運転する第2保護処理を実行し、キー入力処理に戻る。
【0047】
速度Vdが下限値Vst1未満の場合には、ステップS52からステップS56に移行する。ステップS56では、後述する第2保護処理の際にオンされる第2保護フラグFP2がオンしているか否かを判断する。第2保護フラグFP2がオンしている場合、第2保護処理で減速された保護段階STSより高速側の段階STへのレバー操作による増速動作を禁止するために、ステップS56からステップS61に移行する。ステップS61では、設定された段階STが第2保護処理でセットされた保護段階STSを超えているか否かを判断する。設定された段階が保護段階STSを超えている場合は、レバー操作を無視して増速動作を禁止するためにステップS53に移行する。レバー操作で設定された段階STが保護段階STS以下の場合は、ステップS61からステップS62に移行し、第2保護フラグFP2をオフしてステップS57に移行する。
【0048】
第2保護フラグFP2がオフの場合は、ステップS56からステップS57に移行して現在の第1デューティ比D1を読み込む。この第1デューティ比D1は、記憶部107に設定が変更される都度記憶されている。また、各段階ST毎に最大値DUstと最小値DLstが設定されており、最初に各段階STに設定されたときには、たとえばその中間の第1デューティ比D1=((DUst+DLst)/2)にセットされる。ステップS58では、現在の第1デューティ比D1が設定された段階の最大値DUstを超えているか否かを判断する。超えている場合はステップS60に移行して第1デューティ比D1に最大値DUstをセットする。超えていない場合には、ステップS58からステップS59に移行し、第1デューティ比D1を所定の増分DI(たとえば1%)だけ増やしてステップS53に移行する。なお、最高段階(ST=31)のデューティ比は、100%に設定されているが、それより前までの段階(ST=1から30)では最大値DUstはデューティ比が85%以下に設定されている。
【0049】
速度Vが上限値Vst2を超えている場合には、ステップS53からステップS63に移行して現在の第1デューティ比D1を読み込む。この第1デューティ比D1もステップS57と同様である。ステップS64では、現在の第1デューティ比D1が設定された段階の最小値DLstを下回っているか否かを判断する。下回っている場合はステップS66に移行して第1デューティ比D1に最小値DLstをセットする。下回っていない場合には、ステップS64からステップS65に移行し、第1デューティ比D1を所定の減分DI(たとえば1%)だけ減らしてステップS54に移行する。
【0050】
<第1保護処理>
ステップS54の第1保護処理は、速度モード時に段階STが5〜31のときに有効なモータ保護処理であり、モータ4に高負荷が作用したときに、オンオフする断続電流を流してモータ4の焼損を防止する。第1保護処理では、モータ4に流れる電流値(すなわち、モータ4に作用する負荷)がモータに流す最大電流値(たとえば18A)の50%以上90%以下の第1電流値(たとえば、12A)が第1所定時間(たとえば、好ましくは、0.5秒から2秒であり、この実施形態では、1秒)連続し、かつ最高速段階の上限速度の40%以下の回転速度である第1速度(たとえば、12段階(ST=12)の上限速度)以下でスプール3が回転している第1状態になると、オンオフする断続的な電流をモータ4に流す断続制御を行う。そして、速度が第1速度より高速側の第2速度(たとえば、13段階(ST=13)の上限速度)になると、負荷が減少したと判断して断続制御を解除し、通常の速度制御または張力制御に戻る。
【0051】
具体的には、図11のステップS69で回転速度Vd及び負荷電流値Idを読み込む。ステップS70では、現在の段階STが5以上であるか否かを判断する。段階STが5以上の場合は、ステップS71に移行し、電流検出部108aにより検出されたモータ4の流れる電流値Id、すなわち負荷が第1電流値である12A以上であるか否かを判断する。電流値Idが12A以上の場合には、ステップS73に移行し、第1条件を満足するとオンする第1保護フラグFP1がすでにオンしているか否かを判断する。第1保護フラグFP1がまだオンしていない場合には、ステップS74に移行する。第1保護フラグFP1がすでにオンしている場合は、ステップS73〜ステップS77をスキップしてステップS78に移行する。
【0052】
ステップS74では、第1所定時間t2を計測するためのタイマT2がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT2がまだオンしていないときは、ステップS75に移行してタイマT2をオンしてステップS76に移行する。タイマT2がオンしている場合は、ステップS75をスキップしてステップS76に移行する。
【0053】
ステップS76では、タイマT2がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。すなわち、負荷及び速度が所定の条件を満たしてから1分間経過したか否かを判断する。タイマT2がタイムアップしたと判断すると、ステップS77に移行して第1条件を満たしたことを識別するための第1保護フラグFP1をオンする。ステップS78では、モータ4にオンオフする電流を流して駆動する断続制御処理を実行する。ステップS79では、負荷が第1電流値より大きい第2電流値である15A(アンペア)以下になったか否かを判断する。負荷が15A以下の場合はステップS80に移行する。ステップS80では、速度Vdが13段階(ST13)の上限速度Vst13以上であるか否かを判断する。速度Vdが上限速度Vst13以上の場合は、保護する必要がないと判断して第1保護フラグFP1をオフする。第1保護フラグFP1がオフされると、モータ4は通常の速度又は張力制御される。
【0054】
ステップS70,71,72,76,79,80での判断がNOの場合は、速度モード処理に戻る。
【0055】
<断続処理>
ステップS78の断続処理では、図12のステップS91で断続処理が始まってから第2所定時間(たとえば15秒)を計測するためのタイマT3がタイムアップしたか否かを判断する。ステップS92では、タイマT3がオンしているか否かを判断する。タイマT3がまだオンしていない場合はステップS99に移行してタイマT3をオンしてスタートさせステップS93に移行する。タイマT3がすでにオンしている場合は、ステップS99をスキップしてステップS93に移行する。ステップS93では、温度センサ103の出力によりモータ駆動回路108の温度、すなわちモータ4の温度Tdを読み込む。ステップS94では、モータ4の温度Tdが第1所定温度(たとえば、摂氏50度から70度が好ましく、この実施形態では、60度)を超えたか否かを判断する。この断続制御では、モータ4のオン時間とオフ時間を、第1所定温度を境に変更している。すなわち、温度が低いときはオン時間をオフ時間より長くし、高いときは冷却期間を設けるためにオフ時間をオン時間より長くしている。温度Tdが摂氏60度未満の場合は、ステップS94からステップS95に移行する。ステップS95では、モータ4を時間tn1(たとえば、600から1000m秒であり、この実施形態では750m秒)オンする。ステップS96では、モータ4を時間tf1(たとえば、時間tn1より短い350から750m秒であり、この実施形態では500m秒)オフし第1保護処理に戻る。温度Tdが60度以上の場合は、ステップS97に移行し、モータ4を時間tn2(たとえば、600から1000m秒であり、この実施形態では750m秒)オンする。ステップS96では、モータ4を時間tf1(たとえば、時間tn1より長い800から1200m秒であり、この実施形態では1000m秒)オフし、第1保護処理に戻る。
【0056】
タイマT3がタイムアップする、すなわち断続処理が15秒以上経過すると、ステップS91からステップS100に移行し、断続フラグFP3がオンしているか否かを判断する。断続フラグFP3は、前述したように断続処理が第2所定時間経過するとオンするフラグである。断続フラグFP3がオンしていない場合は、ステップS101に移行して断続フラグFP3をオンする。ステップS102では、モータ4をオフする。断続フラグFP3がすでにオンしている場合は、ステップS101,ステップS102をスキップする。ステップS103では、タイマT4がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT4は、モータ4をオフしてからの時間経過を計測してモータ4の回転を復帰させるためのタイマであり、30秒経過するとタイムアップしてオフする。タイマT4がオンしていない場合は、ステップS104に移行してタイマT4をオンする。タイマT4がすでにオンしている場合は、ステップS104をスキップする。ステップS105では、タイマT4がタイムアップしてオフしたか否かを判断する。タイムアップした場合には、ステップS106に移行し、モータ4を動作可能にするために断続フラグFP3をオフして第1保護処理に戻る。この後、調整レバー101を操作開始位置に戻すと、モータ4は動作可能になる。
【0057】
このような第1保護処理では、高負荷の状態のときにモータ4を断続的に回すことにより無駄な電流がモータ4に流れないようにして発熱を抑えることができる。しかも、負荷が十分小さくなれば、モータ4は設定された上限速度で回転する。したがって性能を下げることなくモータ4の焼損を防止できるようになる。
【0058】
<第2保護処理>
ステップS55の第2保護処理は、速度モードの8段階以上で有効であり、モータ4に作用する負荷が高くなると、モータ4を減速する処理である。第2保護処理では、電流検出部108aにより検出された負荷が、第3電流値Is(たとえば15A)以上の状態が第4所定時間t5(たとえば、3秒)連続する第1条件を満たしたとき、検出された回転速度より少なくとも一段階(この実施形態では2段階)低い上限速度に対応する目標速度を設定する。そして、目標速度設定後第5所定時間(たとえば、3秒)経過した第1負荷と、それから第6所定時間(たとえば、1秒)後の第2負荷とを比較し、第2負荷が第1負荷より所定量(たとえば、1A)大きいときは、目標速度を一段階低い上限速度に1秒間隔で繰り返して設定し、第2負荷が第1負荷より所定量(たとえば0.5A)小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に1秒間隔で繰り返して設定する。
【0059】
第2保護処理では、図13のステップS111で回転速度Vd、負荷電流値Id、現在の段数ST、及び第2保護処理で設定された保護段階STSを読み込む。ステップS112では、現在の段階STが8以上か否かを判断する。段階STが8以上の場合はステップS113に移行する。段階STが8未満の場合は何も処理せずに速度モード処理に戻る。ステップS113では、負荷を示す電流値Idが第3電流値Is以上であるか否かを判断する。電流値Idが第3電流値(たとえば、15A)Is以上の場合は、ステップS114に移行し、タイマT5がタイムアップしているか否かを判断する。タイマT5は、第2保護処理が必要である第1条件を判断するための所定時間t5を計測するためのタイマである。タイマT5がタイムアップしていない場合はステップS115に移行し、タイマT5がすでにオンしてスタートしているか否かを判断する。タイマT5がオンしていない場合は、ステップS116に移行してタイマT5をオンしてスタートさせる。タイマT5がオンしている場合はステップS116をスキップしてステップS117に移行する。
【0060】
タイマT5がタイムアップしている場合、すなわち、負荷が15A以上の状態が3秒以上続いて第1条件を満たした場合は、ステップS114からステップS117に移行する。ステップS117では、保護段階STSが8段階以上か否かを判断する。この第2保護処理では、7段階以下には減速しない。このため第2保護処理で保護段階STSが8段階未満の場合は処理を終了して速度モード処理に戻る。保護段階STSが8段階以上の場合は、ステップS118に移行する。ステップS118では、第1条件を満たして最初に減速処理したときにオンする第2保護フラグFP2がオンしているか否かを判断する。第2保護フラグFP2がオンしていないときは、ステップS119に移行して第2保護フラグFP2をオンする。ステップS120では、保護段階STSが8段か否かを判断する。この実施形態では、7段以下には減速しないので、保護段階STSが9段以上の場合は、ステップS121に移行し、現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから二段階低い段階(STvd−2)に保護段階STSをセットする。具体的には、現在の速度Vd以下で最も高い上限速度の段階から二段階低い段階にセットする。保護段階STSが8段の場合は、ステップS122に移行し、現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階低い段階(STvd−1)、すなわち7段階に保護段階STSをセットする。第2保護処理の実行中(第2保護フラグがオン)には、この保護段階STS以上に調整レバー101が操作されると、図10の速度モード処理のステップS61において、操作後の段階STが保護段階STSを超えるとその操作が無視され保護段階STS以上の高速操作が不能になる。
【0061】
ステップS123では、タイマT6がタイムアップしたか否かを判断する。このタイマT6は、最初に減速してから、所定時間(たとえば3秒)の経過を待つためにセットされるタイマである。タイマT6がタイムアップしている場合はステップS126に移行し、そのときの第1負荷である電流値Idnを読み込み、速度モード処理に戻る。なお、変数nは、最初は1にセットされている。タイマT6がまだタイムアップしていない場合はステップS124に移行し、タイマT6がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT6がまだオンしていない場合には、ステップS125に移行してタイマT6をオンしてスタートさせる。タイマT6がすでにオンしている場合は、ステップS125をスキップしてステップS126に移行する。ここで、二段減速してからただちに電流値を読み込むのではなく3秒間待つのは、二段減速後にただちに電流値を読み込むと、電流値が安定しないからである。
【0062】
読み込んだ現在の電流値(現在の負荷)Idが第3電流値Is未満であると判断すると、ステップS114からステップS136に移行する。ステップS136では、第2保護フラグFP2をオフして第2保護処理を解除して速度モード処理に戻る。これにより、保護段階STSも31段にリセットされる。
【0063】
第2保護フラグFP2がオンしていると判断すると、ステップS119からステップS127に移行し、タイマT7がタイムアップしているか否かを判断する。このタイマT7は、第1負荷である電流値Idnを検出してから、所定時間(たとえば、1秒)の経過を待つためにセットされるタイマである。タイマT7がタイムアップしている場合はステップS130に移行し、変数nを1インクリメントする。タイマT7がタイムアップしていないときは、ステップS128に移行し、タイマT7がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT7がまだオンしていない場合には、ステップS129に移行してタイマT7をオンしてスタートさせる。タイマT7がすでにオンしている場合は、ステップS129をスキップしてステップS130に移行する。ステップS131では、そのときの第2負荷である電流値Idnを読み込む。
【0064】
ステップS132では、読み込んだ第2負荷である電流値Idnが第3電流値Isの70%以下か否かを判断する。電流値Idnが第3電流値の70%以下の場合はステップS136に移行して第2保護フラグFP2をオフして第2保護処理を解除する。電流値Idnが第3電流値Isの70%を超える場合はステップS133に移行する。ステップS133では、今読み込んだ第2負荷(Idn)が先の減速時に読み込んだ第1負荷(Id(n−1))より1A以上大きいか否かを判断する。負荷が1A以上増加している場合には、ステップS134に移行し、1秒後の次のタイミングでの第2負荷の判定で比較対照としての第1負荷となる現在の電流値Idnの値を0.1A下げる。ステップS135では、段階STを現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階低い段階(STvd−1)にセットし、速度モード処理に戻る。
【0065】
第2負荷(Idn)が先の減速時に読み込んだ第1負荷(Id(n−1))より1A以上大きくない場合は、ステップS133からステップS137に移行する。ステップS137では、第2負荷である電流値Idnがモータ4に流す最大電流値(たとえば、18A)に到達しているか否かを判断する。最大電流値に到達している場合は、ステップS134に移行して減速処理を行い、到達していない場合は、ステップS138に移行する。
【0066】
ステップS138では、第1負荷(Id(n−1))が第2負荷(Idn)より0.5A以上大きいか否かが判断される。第1負荷が第2負荷より0.5A以上大きく、負荷が減少している場合は、ステップS139に移行して、段階STを現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階高い段階(STvd+1)にセットし、速度モード処理に戻る。また、第2負荷が1A未満の増加か、第2負荷が0.5A未満しか減少していない場合は、何も処理せず速度モード処理に戻る。
【0067】
このような第2保護処理では、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータ4の速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータ4に流れる電流を減少させ、モータ4に無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【0068】
また、図10の速度モード処理のステップS61で目標速度が設定されてもその速度より低速側に上限速度が設定されると、目標速度がキャンセルされるので、さらに無駄な電流が流れにくくなる。しかも、目標速度より高速側に上限速度が変更されるとその変更が無視される。したがって、第2保護処理中に保護段階STSより高速側に変速されることはない。
【0069】
<張力モード処理>
ステップS30の張力モード処理では、図14のステップS141で調整レバー101により設定された段数ST及び電流検出部108aの検出結果のトルクを糸巻径で補正した張力Qdを読み込む。ステップS142では、張力Qdが段階STに応じた上限張力Qsの下限値Qst1未満か否かを判断する。ステップS143では、張力Qdが段階STに応じた上限張力Qsの下限値Qst2を超えているか否かを判断する。なお、張力制御を行う際に、段階ST毎に上限張力Tsの下限値Qst1及び上限値Qst2を設けたのは、速度モードと同様に両張力Qst1,Qst2の間で張力が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。この上限値Qst2と下限値Qst1とは上限張力Qstの、たとえば±10%以内に設定されている。
【0070】
ステップS144では、段階STが最高段の31段か否かを判断し、31段階の場合はステップS146に移行し、図11に示す第1保護処理を実行する。段階STが31段階以外の場合は、ステップS145に移行し、図15に示す第3保護処理に移行する。これらの処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0071】
張力Qdが下限値Qst1未満の場合には、ステップS142からステップS147に移行する。ステップS147では、現在の第2デューティ比D4を読み込む。この第2デューティ比D4は、記憶部107に設定が変更される都度記憶されている。ステップS148では、第2デューティ比D4を所定の増分DI(たとえば1%)だけ増やしてステップS143に移行する。これを張力Qdが下限値Qst1を超えるまで続ける。
【0072】
張力Qdが上限値Qst2を超えている場合には、ステップS143からステップS149に移行して現在の第2デューティ比D4を読み込む。この第2デューティ比D4もステップS147と同様である。ステップS148では、第2デューティ比D4を所定の減分DI(たとえば1%)だけ減らしてステップS144に移行する。これを張力Qdが上限値Qst2を下回るまで続ける。
【0073】
この張力モード処理では、速度モード処理に比べて第2保護処理による張力減少処理は行われない。これは、張力モードでは、段階ST毎に電流値(張力)が定められているからである。
【0074】
<第3保護処理>
ステップS145の第3保護処理は、段階STが5〜30のときに有効なモータ保護処理であり、速度モード用の第1保護処理と略同様な考えを張力モード用に変更したものである。この第3保護処理では、モータ4に流れる電流値(すなわち、モータ4に作用する負荷)がモータに流す最大電流値(たとえば18A)の50%以上90%以下の第1電流値(たとえば、11A)が所定時間(たとえば、好ましくは、30秒から60秒であり、この実施形態では、45秒)連続している第3状態になると、オンオフする断続的な電流をモータ4に流す第2断続制御を行う。
【0075】
具体的には、図15のステップS160で現在の段階STが5以上であるか否かを判断する。段階STが5以上の場合は、ステップS161に移行し、電流検出部108aにより検出されたモータ4の流れる電流値Id、すなわち負荷が第1電流値である11A以上であるか否かを判断する。電流値Idが11A以上の場合には、ステップS162に移行し、第3条件を満足するとオンする第3保護フラグFP4がすでにオンしているか否かを判断する。第3保護フラグFP4がまだオンしていない場合には、ステップS163に移行する。第3保護フラグFP4がすでにオンしている場合は、ステップS163〜ステップS166をスキップしてステップS167に移行する。
【0076】
ステップS163では、電流値Idが11Aを超えてからの経過時間t8を計測するためのタイマT8がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT8がまだオンしていないときは、ステップS164に移行してタイマT8をオンする。タイマT8がすでにオンしているときは、ステップS164をスキップしてステップS165に移行する。ステップS165では、タイマT8がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。すなわち、負荷が所定の条件を満たしてから45分間経過したか否かを判断する。タイマT8がタイムアップしたと判断すると、ステップS166に移行して第3条件を満たしたことを識別するための第3保護フラグFP4をオンする。ステップS167では、モータ4にオンオフする電流を流して駆動する断続制御処理を実行する。この断続処理は速度モードときと同じ図12に示す処理である。ステップS168では、負荷が第3電流値より小さい第4電流値である10A以下になったか否かを判断する。負荷が10A以下の場合はステップS169に移行する。ステップS169では、保護する必要がないと判断して第3保護フラグFP4をオフする。第1保護フラグFP1がオフされると、調整レバー101を操作開始位置まで戻すことによりモータ4の動作が可能になる。
【0077】
ステップS160,161,165,168での判断がNOの場合は、張力モード処理に戻る。
【0078】
<各動作モード処理>
ステップS8の各動作モード処理では、図16のステップS171でスプール3の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ102のいずれのホール素子が先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール3の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS171からステップS172に移行する。ステップS172では、スプール回転数が減少する毎にスプール回転数から記憶部107に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS173では、得られた水深が底位置に一致したか、つまり、仕掛けが底に到達したか否かを判断する。底位置は、仕掛けが底に到達したときにメモボタンMBを押すことで記憶部107にセットされる。ステップS174では、学習モードなどの他のモードか否かを判断する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0079】
水深が底位置に一致するとステップS173からステップS175に移行し、仕掛けが底に到達したことを報知するためにブザー106を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS174からステップS176に移行し、指定された他のモードを実行する。
【0080】
スプール3の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS171からステップS177に移行する。ステップS177では、スプール回転数から記憶部107に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS178では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。船縁停止位置に到達するとステップS178からステップS179に移行する。ステップS179では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー106を鳴らす。ステップS180では、モータ4をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、たとえば水深6m以内で所定時間以上スプール3が停止しているとセットされる。
【0081】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、種々の電流値や時間値を設定しているがそれらの具体的な数値が一例であり、本発明はそれらの数値に限定されない。
【0082】
(b)前記実施形態では、第2保護処理において、第1条件と第2条件とを満たしたとき目標速度を設定しているが、第1条件だけで目標速度を設定してもよい。
【0083】
(c)前記実施形態では、断続制御の解除を回転速度及び電流値を検出結果により行っているが、回転速度又は電流値単独の検出結果で解除するようにしてもよい。
【0084】
(d)前記実施形態では、電流値を糸巻径で補正して張力を検出しているが、釣り糸に作用する張力を検出できるものであればどのような構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態が採用された電動リールの斜視図。
【図2】その背面一部断面図。
【図3】カウンタの平面図。
【図4】カウンタの断面図。
【図5】水深表示部の平面図。
【図6】電動リールの制御系の構成を示すブロック図。
【図7】リール制御部のメインルーチンを示すフローチャート。
【図8】温度保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図9】キー入力処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図10】速度モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図11】第1保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図12】断続処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図13】第2保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図14】張力モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図15】第3保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図16】各動作モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図17】他の実施形態の各動作モードのサブルーチンを示すフローチャート。
【図18】他の実施形態の高負荷ドラグ処理サブルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
10 制御ユニット(モータ制御装置の一例)
100 リール制御部(モータ制御部、第1及び第2目標設定部並びに負荷比較部の一例)
101 調整レバー(上限速度設定部の一例)
102スプールセンサ(回転速度検出部の一例)
108 モータ駆動部
108a 電流検出部(負荷検出部の一例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、特に、モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻き上げ時のスプールの回転をモータで行うことのできる電動リールは、リール本体と、リール本体に回転自在に支持されたスプールと、スプールを手動で回転させるためのハンドルと、スプールを巻き上げ方向に駆動する電動のモータとを備えている。リール本体の上面には、水深表示用のディスプレイや各種の入力を行うスイッチが設けられた操作パネルが装着されている。
【0003】
このような電動リールにおいて、スプールの巻き上げの上限巻き上げ速度が複数段階ごとに一定になるようにモータを多段速度制御するものが従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来の電動リールでは、操作パネルのハンドル側でリール本体の側面に設けられた揺動する操作レバーにより、上限速度を複数段階に設定している。
【0004】
従来の電動リールでは、操作レバーの揺動角度に応じて各段階の上限速度が設定され、それがディスプレイに表示される。モータ制御装置では、スプール回転数を検出し、検出されたスプール回転速度が設定された段階の速度になるようにモータを制御する。
【特許文献1】特開2000−139299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、負荷が高くなり、設定された上限速度までスプールの回転が上昇しない場合でも、上限速度まで上昇するようにモータに無駄に電流が流れ続けることがある。このような無駄な電流が流れると、モータにかかる負担が増大し、モータが焼損することがある。
【0006】
本発明の課題は、モータを多段速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る電動リールのモータ制御装置は、モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置であって、回転速度検出部と、負荷検出部と、上限速度設定部と、第1目標速度設定部と、負荷比較部と、第2目標速度設定部と、モータ制御部と、を備えている。回転速度設定部は、スプールの回転速度を検出する。負荷検出部は、スプールに作用する負荷を電流値により検出する。上限速度設定部は、スプールの回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する。第1目標設定部は、負荷検出部により検出された負荷が、モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が第1所定時間連続し、かつ検出された回転速度が設定された上限速度未満である第1条件を少なくとも満たしたとき、回転速度より少なくとも一段階低い上限速度に対応する目標速度を設定する。負荷比較部は、目標速度設定後の第1負荷と、それから第2所定時間後の第2負荷とを比較する。第2目標速度設定部は、第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、目標速度を少なくとも一段階低い上限速度に設定し、第2負荷が第1負荷より所定量小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に設定する。モータ制御部は、第1条件を満たさないとき、スプールの回転速度が設定された上限速度になるようにモータを制御し、第1及び第2目標設定部により目標速度が設定されたとき、スプールの回転速度が設定された目標速度となるようにモータを制御する。
【0008】
このモータ制御装置では、通常は上限速度設定部で設定された上限速度となるようにモータが制御される。負荷が増加し、負荷検出部により検出された負荷が、モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上(たとえば最大電流値の50から90%)の高い負荷状態が第1所定時間連続した第1条件を満たしたとき、回転速度より少なくとも一段階低い上限速度に対応する目標速度が設定される。そして、そのとき検出された第1負荷とそれから第2所定時間経過後の第2負荷とを比較し、第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、目標速度を少なくとも一段階低い上限速度に設定し、第2負荷が第1負荷より所定量小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に設定する。目標速度が設定されると上限速度ではなく目標速度となるようにモータ制御部がモータを速度制御する。
【0009】
ここでは、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータの速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータに流れる電流を減少させ、モータに無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける多段速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【0010】
発明2に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1に記載の装置において、第1目標設定部は、第1条件と、回転速度が第1所定時間連続して上限速度未満である第2条件とを満たしたとき、目標速度を設定する。この場合には、高負荷の判定精度がさらに高くなり、さらに無駄な電流を流しにくくなる。
【0011】
発明3に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1又は2に記載の装置において、モータ制御部は、目標速度より低速側に上限速度設定部により上限速度が変更されると、目標速度が解除され、上限速度となるようにモータを制御する。この場合には、目標速度が設定されてもその速度より低速側に上限速度が設定されると、目標速度がキャンセルされるので、さらに無駄な電流が流れにくくなる。
【0012】
発明4に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、モータ制御部は、目標速度より高速側に上限速度設定部により上限速度が変更されると、その変更を無視し、目標速度となるようにモータを制御する。この場合には、減速制御中にモータの負荷が大きくなる高速側への増速を禁止しているので、モータへの負担がさらに減少する。
【0013】
発明5に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、第1所定時間と第2所定時間とは同時間である。この場合には、2つの時間が同じ時間であるので、制御が容易になる。
【0014】
発明6に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1から5のいずれかに記載の装置において、第2目標速度設定部は、最大段階の半分以下の所定段階を限度として目標速度を低くする。この場合には、電流値がそれほど大きくならない低速域までで減速を終了するので、リールの性能が低下する無駄な減速が生じなくなる。
【0015】
発明7に係る電動リールのモータ制御装置は、発明6に記載の装置において、モータ制御部は、第1電流値以上の負荷状態が第1所定時間より長い第3所定時間連続した場合に記スプールの回転速度が低速段階より高速側の中間段階の速度以下のとき、オンオフする断続的な電流をスプールに流す。
【0016】
この場合には、目標速度が中間段階以下になると減速するのではなく、モータを断続運転するので、高負荷によりモータの回転が低下してロックや低速回転する等のときに無駄な電流がモータに流れてないようにしてモータの発熱を抑えることができる。また、負荷が小さくなれば、設定された上限速度によってモータで巻き上げ可能になるので、性能を下げることなくモータの焼損を防止できるようになる。
【0017】
発明8に係る電動リールのモータ制御装置は、発明7に記載の装置において、モータ制御部は、回転速度が最高速段階の上限速度の半分以下の回転速度のときにモータに流れる電流が第1電流値より大きい第2電流値になると、設定された段階の上限速度となるようにモータを制御する。この場合には、断続制御中に第1速度よりモータの回転速度が高くなり、かつ第1電流値より大きい第2電流値以下の第2状態なると、モータに作用する負荷が軽減してモータが回り出したと判断して断続制御を解除して通常の速度制御に移行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータの速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータに流れる電流を減少させ、モータに無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔電動リールの概略構成〕
本発明の一実施形態による電動リールは、図1に示すように、外見上は、主としてハンドル1が装着されたリール本体2と、リール本体2に回転自在に装着されたスプール3と、スプール3内に装着されたモータ4とを備えている。リール本体2の上部には、水深表示等を行うためのカウンタ5が装着されている。リール本体2の内部には、図2に示すように、ハンドル1の回転をスプール3に伝達するとともにモータ4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構6と、回転伝達機構6の途中に設けられたクラッチ機構7及びドラグ機構8と、を備えている。
【0020】
リール本体2は、図2に示すように、フレーム13と、フレーム13の両側方を覆う側カバー14、15とを有している。フレーム13は、図2に示すように、アルミニウム合金ダイカストの一体成形された部材であり、左右1対の側板16、17と、側板16、17を複数箇所で連結する連結部材18とを有している。下部の連結部材18には、釣り竿を装着するための竿装着脚19が装着されている。
【0021】
側カバー15は、側板17にボルトにより締結されている。側カバー15には、回転伝達機構6などを装着するための固定フレーム20が図示しないボルトにより締結されている。したがって側カバー15を側板17から外すと、固定フレーム20も回転伝達機構6の一部や側カバー15とともに側板17から外れる。
【0022】
側カバー14は、側板16に図示しないボルトにより締結されている。側カバー14には、外部に設けられた蓄電池等の電源と接続するための電源ケーブル用のコネクタ部14a(図1)が前部に斜めに突出して設けられている。このコネクタ部14aに接続される電源ケーブルには、後述する無線通信用のアンテナが設けられている。なお、電動リールは、直流12V(ボルト)、16.8V、24Vの3種類の電圧の電源に対応可能である。
【0023】
リール本体2のハンドル1側の前側側面には、スプール3の巻き上げ速度を31段階に調節可能であるとともに、スプール3に巻き付けられた釣り糸の張力を31段階に調節可能な調整レバー(速度設定部及び上限張力設定部の一例)101が揺動可能に設けられている。調整レバー101の揺動軸には調整レバー101の揺動角度を検出するためのポテンショメータ104(図6)が取り付けられている。
【0024】
スプール3は、図2に示すように、内部にモータ4を収納可能な筒状の糸巻胴部3aと、糸巻胴部3aの外周部に間隔を隔てて形成された左右1対のフランジ部3bとを有している。スプール3の一端はフランジ部3bから外方に延びており、その延びた端部の外周面に軸受25が配置されている。スプール3の他端には、ギア板3cが固定されている。ギア板3cは、図示しないレベルワインド機構にスプール3の回転を伝達するために設けられている。ギア板3cのスプール中心側部において、ギア板3cと固定フレーム20との間には転がり軸受26が装着されている。この2つの軸受25、26により、スプール3は、リール本体2に回転自在に支持されている。
【0025】
〔カウンタの構成〕
カウンタ5は、釣り糸の先端に装着された仕掛けの水深を表示するとともに、モータ4を制御するために設けられている。カウンタ5は、図3及び図4に示すように、上ケース5a及び下ケース5bとを有している。上ケース5aは、表示部分が前細りに形成され、表示部分から左右にわずかに凹んで形成された稜線部5c,5dを有している。稜線部5cは、側カバー14に面一に接続されており、稜線部5dは、側カバー15に面一に連なっている。上ケース5aの表示部分には、台形の各片がわずかに凸に湾曲した形状の先細りの銘板8が固定されている。銘板8には、水深表示部98を覗かせるための透明カバー8aが設けられている。下ケース5aの底面には、後述する電界効果トランジスタ(FET)108bを冷却するためのアルミ板で構成されたヒートシンク5eが設けられている。
【0026】
カウンタ5には、図3に示すように、仕掛けの水深データLXや棚位置を水面からと底からとの2つの基準で表示するための液晶表示ディスプレイからなる水深表示部98と、水深表示部98の手前側(図3下側)に配置された、たとえば3つのスイッチボタンからなる操作キー部99とが設けられている。また、カウンタ5の内部には、図4に示すように、水深表示部98や操作キー部99が配置される第1回路基板10と、第1回路基板10の下方に配置された第2回路基板11とが設けられている。第1回路基板10は、カウンタ5の小型化を図るために従来のものより小さく作られている。第2回路基板11のハンドル1装着側には、調整レバー101への配線101aが上下のケース5a,5bのつなぎ部から横向きに外部に導出されている。これにより釣り糸との接触を防止している。この配線の導出部分はシリコンなどで封止されており、カウンタ5内部を水密に保っている。また、第1及び2回路基板10,11において、電源線のハンダ部やモータ駆動に関わる電解コンデンサの足部やマイクロコンピュータの足部のハンダ部分にはシリコンを塗布することにより絶縁性を向上させ、湿気による影響を防止して誤作動が生じないようにしている。
【0027】
水深表示部98は、図5に示すように、バックライト30を有するセグメント式の液晶ディスプレイ98aを用いている。バックライト30は、赤と緑の二色を発光可能な発光ダイオード30aと、発光ダイオード30aが一側に配置された導光板30bとを有している。このような導光板30bを設けることにより液晶ディスプレイ98a全面を光らせることができる。
【0028】
操作キー部99は、水深表示部98の下側に左右に並べて配置されたメニューボタンMBと、決定ボタンDBと、棚メモ用の棚メモボタンTBと、を有している。メニューボタンMBは、水深表示部98内の表示項目を選択するために使用されるボタンである。たとえば、メニューボタンMB操作するごとに上からモード(仕掛けの水深を水面からの深さで表示するモード)と底からモード(仕掛けの水深を水底からの水深で表示するモード)とに切り換える。またメニューボタンMBを3秒以上長押しすると、長押しの都度、モータの制御モードを速度モードと張力モードとに切り換えできる。ここで、速度モードは、調整レバー101の揺動角度に応じてスプール3の回転速度の上限速度を31段階に多段速度制御可能なモードである。張力モードは、釣り糸に作用する張力の上限張力を31段階に多段張力制御可能なモードである。なお、両モードとも、最高段階の31段階は、100%デューティでモータ4を動作させる速巻速度であり、電流制限は行うが、速度制御は行わない。
【0029】
決定ボタンDBは、選択結果を確定して設定するボタンである。また、決定ボタンDBをたとえば3秒以上長押しすると、そのときの水深データLXが水深0の基準位置としてセットされる0セット処理を行える。棚メモボタンTBは、操作したときの仕掛けの水深を棚位置として設定するためのボタンである。以降はセットされた基準位置からの糸長で水深データLXが表示される。なお、釣り人は通常、仕掛けが海面に着水したときに決定ボタンを長押しして0セットする。
【0030】
また、カウンタ5の内部には、図6に示すように、水深表示部98やモータ4を制御するための制御ユニット(モード制御装置の一例)10が設けられている。制御ユニット90には、マイクロコンピュータからなるリール制御部100が設けられている。リール制御部100は、機能的な構成として、モータ4を速度制御する第1制御部100aと、モータ4のトルクを糸巻径により張力に補正して張力を制御する第2制御部100bとを有している。なお、糸巻径は、水深データにより求めることができる。
【0031】
リール制御部100には、操作キー部99と、側カバー15に揺動自在に装着されスプールの速度や釣り糸の張力を調整するための調整レバー101と、スプール3の回転数と回転方向とを、たとえば回転方向に並べて配置された2つのホール素子で検出するスプールセンサ(回転速度検出部の一例)102と、モータの温度を検出する温度センサ103と、調整レバー101に連結されたボテンショメータ104と、リールの外部に設けられた釣り情報表示装置120と仕掛けの水深データ等を無線(たとえば、IEEE802.15.4(ZigBee(登録商標)等の規格)でやりとりするための無線通信部105と、が接続されている。また、リール制御部100には、各種の報知用のブザー106と、水深表示部98と、各種のデータを記憶するたとえば、EEPROMからなる記憶部107と、モータ4をパルス幅変調(PWM)したデューティ比で駆動するモータ駆動回路108と、他の入出力部とが接続されている。モータ駆動回路108には、モータ4に流れる電流を検出する電流検出部(負荷検出部及び張力検出部の一例)108aと、電界効果トランジスタ108bとが設けられている。温度センサ103は、モータ4の温度を直接検出するのではなく、モータ駆動回路108に搭載された電界効果トランジスタ(FET)108bの温度により検出する。電界効果トランジスタ108bは、第2回路基板11に搭載されている。
【0032】
釣り情報表示装置120は、釣り船に搭載された魚群探知機140と無線によりデータをやりとりして、魚群探知機140と同様な魚探データ(底位置や棚位置)をグラフィック及び数値表示可能である。また、リールと無線でやりとりしてリールから得た水深データにより仕掛けの位置をグラフィック及び数値表示可能である。
【0033】
〔リール制御部の制御〕
リール制御部100は、調整レバー101の操作量に応じてモータ4の速度やトルク(張力)を制御する。また、スプールセンサ102の出力により釣り糸の先端に取り付けられる仕掛けの水深を算出し、それを水深表示部98に表示する。さらに、操作キー部99の操作により底位置(海底の水深)や棚位置(魚が群れている水深)が設定されると、算出された水深と設定された底位置や棚位置とが一致して仕掛けが棚位置や底位置に到達したときに、ブザー106によりその旨が報知される。
【0034】
次に、具体的なリール制御部100の制御動作をモータ4の制御を中心に図7から図16のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
<メインルーチン>
リール制御部100に電源が投入されると、図7のステップS1で初期設定がなされる。この初期設定では、各種のフラグがオフされるとともに、モータの制御モードが速度モードにセットされ、水深表示が上からモードにセットされる。ステップS2では、各種の表示処理がなされる。この表示処理では、水深表示部98に表示されるデータの表示処理を行う。たとえば、水深データ等の表示処理がなされる。
【0036】
ステップS3では、操作キー部99や調整レバーなどの入力操作がなされたか否かが判断される。ステップS4では、スプールセンサ102からの出力によりスプール3が回転しているか否かを判断する。ステップS5では、温度センサ103からの出力により図8に示すモータ4の温度保護処理を実行する。ステップS6では、糸巻径の算出や釣り糸に応じたスプール回転数と糸長との関係を学習する学習処理等のその他の処理が指令されたか否かを判断する。
【0037】
キー入力があると、ステップS3からステップS7に移行する。ステップS7では、図9に示すキー入力処理を実行する。ステップS4でスプール3が回転していると判断すると、ステップS4からステップS8に移行する。ステップS8では、図16に示す各動作モード処理を実行する。その他の処理の指令がなされた場合は、ステップS6からステップS9に移行して指令されたその他の処理を実行する。
【0038】
<温度保護処理>
ステップS5の温度保護処理は、モータ駆動回路108の温度(すなわちモータ4の温度)が90度以上になるとモータ4をオフする処理である。温度保護処理では、図8のステップS11で温度センサ103の出力によりモータ駆動回路108の温度を読み込む。モータ駆動回路108の温度をモータ4の温度に略比例するので、モータ駆動回路108の温度によりモータ4の温度を検出できる。ステップS12では、モータ駆動回路108の温度が第1所定温度(たとえば、摂氏85度から95度程度が好ましく、この実施形態では、摂氏90度)を超えたか否かを判断する。モータ駆動回路108の温度が90度を超えるとステップS12からステップS13に移行する。ステップS13では、温度が初めて90度を超えたときにオンする温度フラグFSがすでにオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしていない場合は、ステップS14に移行して温度フラグFSをオンし、ステップS15に移行する。温度フラグFSがすでにオンしている場合はステップS14をスキップする。ステップS15では、モータ4をオフし、メインルーチンに戻る。これにより、過負荷時のモータ4の焼損を防止できる。
【0039】
温度が第1所定温度以下の場合は、ステップS12からステップS16に移行する。ステップS16では、温度フラグFSがすでにオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしていないときは、メインルーチンに戻る。温度フラグFSがすでにオンしている場合は、ステップS17に移行して検出された温度Tdが第1所定温度より低い第2所定温度(たとえば、摂氏75度から85度程度が好ましく、この実施形態では、摂氏80度)以下まで下がったか否かを判断する。この判断により温度保護処理を終了する。検出された温度Tdが80度を超えている場合は、メインルーチンに戻り、80度以下の場合はステップS18に移行する。ステップS18では、タイマT1がオンしているか否かを破断する。タイマT1は、第2所定温度以下の状態が、所定時間t1(たとえば、20秒から40秒が好ましく、この実施形態では、30秒)続いたかを調べるためのものである。タイマT1がオン(スタート)していない場合は、ステップS19に移行してタイマT1をオンする。タイマT1がすでにオンしている場合はステップS19をスキップする。ステップS20では、タイマT1がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。タイムアップしていない場合はメインルーチンに戻り、タイムアップしている場合、すなわち、80度以下の状態が30秒以上続いた場合は、過負荷状態は消滅したと考えステップS21に移行して温度フラグFSをオフし、温度保護処理を終了する。温度保護処理が終了した後に調整レバー101をいったん操作開始位置(段階ST=0)に戻すことにより、モータ4の動作が可能になる。
【0040】
<キー入力処理>
ステップS7のキー入力処理では、図9のステップS31でメニューボタンMBが3秒以上長押しされたか否かを判断する。ステップS32では、調整レバー101が操作開始位置から操作されたか否かを判断する。ステップS33では、棚メモボタンTBや決定ボタンDBやメニューボタンMBのシングルクリック等のその他のキーが操作されたか否かを判断する。
【0041】
メニューボタンMBが。長押しされるとステップS31からステップS34に移行する。ステップS34では、速度モードか否かを判断する。速度モードのときは、ステップS36に移行して張力モードにセットし、張力モードのときはステップS35に移行して速度モードにセットする。
【0042】
調整レバー101が操作開始位置(ST=0)以外の位置に操作されていると判断するとステップS32からステップS37に移行する。ステップS37では、温度フラグFSがオンしているか否かを判断する。温度フラグFSがオンしているときは、調整レバー101によるモータ制御操作を禁止するためにステップS33に移行する。温度フラグFSがオンしていない場合には、ステップS37からステップS38に移行する。ステップS38では速度モードか否かを判断する。速度モードのときには、ステップS39に移行して速度モード処理を実行する。張力モードのときにはステップS40に移行して張力モード処理を実行する。他のキー操作がなされた場合には、ステップS33からステップS41に移行し、操作されたキーに応じた処理を行う。
【0043】
<速度モード処理>
ステップS39の速度モード処理では、スプール3の回転数が段階毎に設定された上限速度となるようにモータ4を制御する。なお、上限速度は、スプール3の糸巻径により補正され、実際には、スプール3に巻き付ける釣り糸の巻き上げ速度が一定になるようにモータ4が制御される。
【0044】
図10のステップS50で後述する断続処理中であることを示す断続フラグFP3がオンしているか否かを判断する。断続フラグFP3がオフの場合はステップS51に移行する。断続フラグFP3がオンしている場合はステップS54に移行する。
【0045】
ステップS51では、調整レバー101により設定された段数ST及びスプールセンサ102の出力により算出されたスプール3の回転速度Vdを読み込む。ステップS52では、スプール3の速度Vdが段階ST又は後述する保護段階STS(目標速度の一例)に応じた上限速度Vsの下限値Vst1未満か否かを判断する。ステップS53では、スプール3の速度Vdが段階ST段階ST又は保護段階STSに応じた上限速度Vsの下限値Vst2を超えているか否かを判断する。なお、速度制御を行う際に、段階ST毎に上限速度Vsの下限値Vst1及び上限値Vst2を設けたのは、両速度Vst1,Vst2の間で速度が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。この上限値Vst2と下限値Vst1とは上限速度Vstの、たとえば±10%以内に設定されている。
【0046】
ステップS54では、高負荷の場合にモータ4の断続運転する第1保護処理を実行し、ステップS55では、高負荷の場合にモータ4を減速運転する第2保護処理を実行し、キー入力処理に戻る。
【0047】
速度Vdが下限値Vst1未満の場合には、ステップS52からステップS56に移行する。ステップS56では、後述する第2保護処理の際にオンされる第2保護フラグFP2がオンしているか否かを判断する。第2保護フラグFP2がオンしている場合、第2保護処理で減速された保護段階STSより高速側の段階STへのレバー操作による増速動作を禁止するために、ステップS56からステップS61に移行する。ステップS61では、設定された段階STが第2保護処理でセットされた保護段階STSを超えているか否かを判断する。設定された段階が保護段階STSを超えている場合は、レバー操作を無視して増速動作を禁止するためにステップS53に移行する。レバー操作で設定された段階STが保護段階STS以下の場合は、ステップS61からステップS62に移行し、第2保護フラグFP2をオフしてステップS57に移行する。
【0048】
第2保護フラグFP2がオフの場合は、ステップS56からステップS57に移行して現在の第1デューティ比D1を読み込む。この第1デューティ比D1は、記憶部107に設定が変更される都度記憶されている。また、各段階ST毎に最大値DUstと最小値DLstが設定されており、最初に各段階STに設定されたときには、たとえばその中間の第1デューティ比D1=((DUst+DLst)/2)にセットされる。ステップS58では、現在の第1デューティ比D1が設定された段階の最大値DUstを超えているか否かを判断する。超えている場合はステップS60に移行して第1デューティ比D1に最大値DUstをセットする。超えていない場合には、ステップS58からステップS59に移行し、第1デューティ比D1を所定の増分DI(たとえば1%)だけ増やしてステップS53に移行する。なお、最高段階(ST=31)のデューティ比は、100%に設定されているが、それより前までの段階(ST=1から30)では最大値DUstはデューティ比が85%以下に設定されている。
【0049】
速度Vが上限値Vst2を超えている場合には、ステップS53からステップS63に移行して現在の第1デューティ比D1を読み込む。この第1デューティ比D1もステップS57と同様である。ステップS64では、現在の第1デューティ比D1が設定された段階の最小値DLstを下回っているか否かを判断する。下回っている場合はステップS66に移行して第1デューティ比D1に最小値DLstをセットする。下回っていない場合には、ステップS64からステップS65に移行し、第1デューティ比D1を所定の減分DI(たとえば1%)だけ減らしてステップS54に移行する。
【0050】
<第1保護処理>
ステップS54の第1保護処理は、速度モード時に段階STが5〜31のときに有効なモータ保護処理であり、モータ4に高負荷が作用したときに、オンオフする断続電流を流してモータ4の焼損を防止する。第1保護処理では、モータ4に流れる電流値(すなわち、モータ4に作用する負荷)がモータに流す最大電流値(たとえば18A)の50%以上90%以下の第1電流値(たとえば、12A)が第1所定時間(たとえば、好ましくは、0.5秒から2秒であり、この実施形態では、1秒)連続し、かつ最高速段階の上限速度の40%以下の回転速度である第1速度(たとえば、12段階(ST=12)の上限速度)以下でスプール3が回転している第1状態になると、オンオフする断続的な電流をモータ4に流す断続制御を行う。そして、速度が第1速度より高速側の第2速度(たとえば、13段階(ST=13)の上限速度)になると、負荷が減少したと判断して断続制御を解除し、通常の速度制御または張力制御に戻る。
【0051】
具体的には、図11のステップS69で回転速度Vd及び負荷電流値Idを読み込む。ステップS70では、現在の段階STが5以上であるか否かを判断する。段階STが5以上の場合は、ステップS71に移行し、電流検出部108aにより検出されたモータ4の流れる電流値Id、すなわち負荷が第1電流値である12A以上であるか否かを判断する。電流値Idが12A以上の場合には、ステップS73に移行し、第1条件を満足するとオンする第1保護フラグFP1がすでにオンしているか否かを判断する。第1保護フラグFP1がまだオンしていない場合には、ステップS74に移行する。第1保護フラグFP1がすでにオンしている場合は、ステップS73〜ステップS77をスキップしてステップS78に移行する。
【0052】
ステップS74では、第1所定時間t2を計測するためのタイマT2がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT2がまだオンしていないときは、ステップS75に移行してタイマT2をオンしてステップS76に移行する。タイマT2がオンしている場合は、ステップS75をスキップしてステップS76に移行する。
【0053】
ステップS76では、タイマT2がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。すなわち、負荷及び速度が所定の条件を満たしてから1分間経過したか否かを判断する。タイマT2がタイムアップしたと判断すると、ステップS77に移行して第1条件を満たしたことを識別するための第1保護フラグFP1をオンする。ステップS78では、モータ4にオンオフする電流を流して駆動する断続制御処理を実行する。ステップS79では、負荷が第1電流値より大きい第2電流値である15A(アンペア)以下になったか否かを判断する。負荷が15A以下の場合はステップS80に移行する。ステップS80では、速度Vdが13段階(ST13)の上限速度Vst13以上であるか否かを判断する。速度Vdが上限速度Vst13以上の場合は、保護する必要がないと判断して第1保護フラグFP1をオフする。第1保護フラグFP1がオフされると、モータ4は通常の速度又は張力制御される。
【0054】
ステップS70,71,72,76,79,80での判断がNOの場合は、速度モード処理に戻る。
【0055】
<断続処理>
ステップS78の断続処理では、図12のステップS91で断続処理が始まってから第2所定時間(たとえば15秒)を計測するためのタイマT3がタイムアップしたか否かを判断する。ステップS92では、タイマT3がオンしているか否かを判断する。タイマT3がまだオンしていない場合はステップS99に移行してタイマT3をオンしてスタートさせステップS93に移行する。タイマT3がすでにオンしている場合は、ステップS99をスキップしてステップS93に移行する。ステップS93では、温度センサ103の出力によりモータ駆動回路108の温度、すなわちモータ4の温度Tdを読み込む。ステップS94では、モータ4の温度Tdが第1所定温度(たとえば、摂氏50度から70度が好ましく、この実施形態では、60度)を超えたか否かを判断する。この断続制御では、モータ4のオン時間とオフ時間を、第1所定温度を境に変更している。すなわち、温度が低いときはオン時間をオフ時間より長くし、高いときは冷却期間を設けるためにオフ時間をオン時間より長くしている。温度Tdが摂氏60度未満の場合は、ステップS94からステップS95に移行する。ステップS95では、モータ4を時間tn1(たとえば、600から1000m秒であり、この実施形態では750m秒)オンする。ステップS96では、モータ4を時間tf1(たとえば、時間tn1より短い350から750m秒であり、この実施形態では500m秒)オフし第1保護処理に戻る。温度Tdが60度以上の場合は、ステップS97に移行し、モータ4を時間tn2(たとえば、600から1000m秒であり、この実施形態では750m秒)オンする。ステップS96では、モータ4を時間tf1(たとえば、時間tn1より長い800から1200m秒であり、この実施形態では1000m秒)オフし、第1保護処理に戻る。
【0056】
タイマT3がタイムアップする、すなわち断続処理が15秒以上経過すると、ステップS91からステップS100に移行し、断続フラグFP3がオンしているか否かを判断する。断続フラグFP3は、前述したように断続処理が第2所定時間経過するとオンするフラグである。断続フラグFP3がオンしていない場合は、ステップS101に移行して断続フラグFP3をオンする。ステップS102では、モータ4をオフする。断続フラグFP3がすでにオンしている場合は、ステップS101,ステップS102をスキップする。ステップS103では、タイマT4がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT4は、モータ4をオフしてからの時間経過を計測してモータ4の回転を復帰させるためのタイマであり、30秒経過するとタイムアップしてオフする。タイマT4がオンしていない場合は、ステップS104に移行してタイマT4をオンする。タイマT4がすでにオンしている場合は、ステップS104をスキップする。ステップS105では、タイマT4がタイムアップしてオフしたか否かを判断する。タイムアップした場合には、ステップS106に移行し、モータ4を動作可能にするために断続フラグFP3をオフして第1保護処理に戻る。この後、調整レバー101を操作開始位置に戻すと、モータ4は動作可能になる。
【0057】
このような第1保護処理では、高負荷の状態のときにモータ4を断続的に回すことにより無駄な電流がモータ4に流れないようにして発熱を抑えることができる。しかも、負荷が十分小さくなれば、モータ4は設定された上限速度で回転する。したがって性能を下げることなくモータ4の焼損を防止できるようになる。
【0058】
<第2保護処理>
ステップS55の第2保護処理は、速度モードの8段階以上で有効であり、モータ4に作用する負荷が高くなると、モータ4を減速する処理である。第2保護処理では、電流検出部108aにより検出された負荷が、第3電流値Is(たとえば15A)以上の状態が第4所定時間t5(たとえば、3秒)連続する第1条件を満たしたとき、検出された回転速度より少なくとも一段階(この実施形態では2段階)低い上限速度に対応する目標速度を設定する。そして、目標速度設定後第5所定時間(たとえば、3秒)経過した第1負荷と、それから第6所定時間(たとえば、1秒)後の第2負荷とを比較し、第2負荷が第1負荷より所定量(たとえば、1A)大きいときは、目標速度を一段階低い上限速度に1秒間隔で繰り返して設定し、第2負荷が第1負荷より所定量(たとえば0.5A)小さいときは、目標速度を少なくとも一段階高い上限速度に1秒間隔で繰り返して設定する。
【0059】
第2保護処理では、図13のステップS111で回転速度Vd、負荷電流値Id、現在の段数ST、及び第2保護処理で設定された保護段階STSを読み込む。ステップS112では、現在の段階STが8以上か否かを判断する。段階STが8以上の場合はステップS113に移行する。段階STが8未満の場合は何も処理せずに速度モード処理に戻る。ステップS113では、負荷を示す電流値Idが第3電流値Is以上であるか否かを判断する。電流値Idが第3電流値(たとえば、15A)Is以上の場合は、ステップS114に移行し、タイマT5がタイムアップしているか否かを判断する。タイマT5は、第2保護処理が必要である第1条件を判断するための所定時間t5を計測するためのタイマである。タイマT5がタイムアップしていない場合はステップS115に移行し、タイマT5がすでにオンしてスタートしているか否かを判断する。タイマT5がオンしていない場合は、ステップS116に移行してタイマT5をオンしてスタートさせる。タイマT5がオンしている場合はステップS116をスキップしてステップS117に移行する。
【0060】
タイマT5がタイムアップしている場合、すなわち、負荷が15A以上の状態が3秒以上続いて第1条件を満たした場合は、ステップS114からステップS117に移行する。ステップS117では、保護段階STSが8段階以上か否かを判断する。この第2保護処理では、7段階以下には減速しない。このため第2保護処理で保護段階STSが8段階未満の場合は処理を終了して速度モード処理に戻る。保護段階STSが8段階以上の場合は、ステップS118に移行する。ステップS118では、第1条件を満たして最初に減速処理したときにオンする第2保護フラグFP2がオンしているか否かを判断する。第2保護フラグFP2がオンしていないときは、ステップS119に移行して第2保護フラグFP2をオンする。ステップS120では、保護段階STSが8段か否かを判断する。この実施形態では、7段以下には減速しないので、保護段階STSが9段以上の場合は、ステップS121に移行し、現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから二段階低い段階(STvd−2)に保護段階STSをセットする。具体的には、現在の速度Vd以下で最も高い上限速度の段階から二段階低い段階にセットする。保護段階STSが8段の場合は、ステップS122に移行し、現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階低い段階(STvd−1)、すなわち7段階に保護段階STSをセットする。第2保護処理の実行中(第2保護フラグがオン)には、この保護段階STS以上に調整レバー101が操作されると、図10の速度モード処理のステップS61において、操作後の段階STが保護段階STSを超えるとその操作が無視され保護段階STS以上の高速操作が不能になる。
【0061】
ステップS123では、タイマT6がタイムアップしたか否かを判断する。このタイマT6は、最初に減速してから、所定時間(たとえば3秒)の経過を待つためにセットされるタイマである。タイマT6がタイムアップしている場合はステップS126に移行し、そのときの第1負荷である電流値Idnを読み込み、速度モード処理に戻る。なお、変数nは、最初は1にセットされている。タイマT6がまだタイムアップしていない場合はステップS124に移行し、タイマT6がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT6がまだオンしていない場合には、ステップS125に移行してタイマT6をオンしてスタートさせる。タイマT6がすでにオンしている場合は、ステップS125をスキップしてステップS126に移行する。ここで、二段減速してからただちに電流値を読み込むのではなく3秒間待つのは、二段減速後にただちに電流値を読み込むと、電流値が安定しないからである。
【0062】
読み込んだ現在の電流値(現在の負荷)Idが第3電流値Is未満であると判断すると、ステップS114からステップS136に移行する。ステップS136では、第2保護フラグFP2をオフして第2保護処理を解除して速度モード処理に戻る。これにより、保護段階STSも31段にリセットされる。
【0063】
第2保護フラグFP2がオンしていると判断すると、ステップS119からステップS127に移行し、タイマT7がタイムアップしているか否かを判断する。このタイマT7は、第1負荷である電流値Idnを検出してから、所定時間(たとえば、1秒)の経過を待つためにセットされるタイマである。タイマT7がタイムアップしている場合はステップS130に移行し、変数nを1インクリメントする。タイマT7がタイムアップしていないときは、ステップS128に移行し、タイマT7がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT7がまだオンしていない場合には、ステップS129に移行してタイマT7をオンしてスタートさせる。タイマT7がすでにオンしている場合は、ステップS129をスキップしてステップS130に移行する。ステップS131では、そのときの第2負荷である電流値Idnを読み込む。
【0064】
ステップS132では、読み込んだ第2負荷である電流値Idnが第3電流値Isの70%以下か否かを判断する。電流値Idnが第3電流値の70%以下の場合はステップS136に移行して第2保護フラグFP2をオフして第2保護処理を解除する。電流値Idnが第3電流値Isの70%を超える場合はステップS133に移行する。ステップS133では、今読み込んだ第2負荷(Idn)が先の減速時に読み込んだ第1負荷(Id(n−1))より1A以上大きいか否かを判断する。負荷が1A以上増加している場合には、ステップS134に移行し、1秒後の次のタイミングでの第2負荷の判定で比較対照としての第1負荷となる現在の電流値Idnの値を0.1A下げる。ステップS135では、段階STを現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階低い段階(STvd−1)にセットし、速度モード処理に戻る。
【0065】
第2負荷(Idn)が先の減速時に読み込んだ第1負荷(Id(n−1))より1A以上大きくない場合は、ステップS133からステップS137に移行する。ステップS137では、第2負荷である電流値Idnがモータ4に流す最大電流値(たとえば、18A)に到達しているか否かを判断する。最大電流値に到達している場合は、ステップS134に移行して減速処理を行い、到達していない場合は、ステップS138に移行する。
【0066】
ステップS138では、第1負荷(Id(n−1))が第2負荷(Idn)より0.5A以上大きいか否かが判断される。第1負荷が第2負荷より0.5A以上大きく、負荷が減少している場合は、ステップS139に移行して、段階STを現在の回転速度Vdに対応する上限速度の段階STvdから一段階高い段階(STvd+1)にセットし、速度モード処理に戻る。また、第2負荷が1A未満の増加か、第2負荷が0.5A未満しか減少していない場合は、何も処理せず速度モード処理に戻る。
【0067】
このような第2保護処理では、第1条件を満たすような高負荷状態になると、いったんモータ4の速度をそのときの回転速度より少なくとも一段階低い上限速度となるように減速し、モータ4に流れる電流を減少させ、モータ4に無駄な電流が流れないようにする。また、それからさらに負荷が減少するとモータの回転速度を増加し、負荷が増加するとモータの回転速度をさらに減少させる。このため、モータに無駄な電流が流れにくくなり、上限速度になるまでモータに電流を流し続ける速度制御する際に、モータへの負担を抑えてモータが焼損しないようになる。
【0068】
また、図10の速度モード処理のステップS61で目標速度が設定されてもその速度より低速側に上限速度が設定されると、目標速度がキャンセルされるので、さらに無駄な電流が流れにくくなる。しかも、目標速度より高速側に上限速度が変更されるとその変更が無視される。したがって、第2保護処理中に保護段階STSより高速側に変速されることはない。
【0069】
<張力モード処理>
ステップS30の張力モード処理では、図14のステップS141で調整レバー101により設定された段数ST及び電流検出部108aの検出結果のトルクを糸巻径で補正した張力Qdを読み込む。ステップS142では、張力Qdが段階STに応じた上限張力Qsの下限値Qst1未満か否かを判断する。ステップS143では、張力Qdが段階STに応じた上限張力Qsの下限値Qst2を超えているか否かを判断する。なお、張力制御を行う際に、段階ST毎に上限張力Tsの下限値Qst1及び上限値Qst2を設けたのは、速度モードと同様に両張力Qst1,Qst2の間で張力が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。この上限値Qst2と下限値Qst1とは上限張力Qstの、たとえば±10%以内に設定されている。
【0070】
ステップS144では、段階STが最高段の31段か否かを判断し、31段階の場合はステップS146に移行し、図11に示す第1保護処理を実行する。段階STが31段階以外の場合は、ステップS145に移行し、図15に示す第3保護処理に移行する。これらの処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0071】
張力Qdが下限値Qst1未満の場合には、ステップS142からステップS147に移行する。ステップS147では、現在の第2デューティ比D4を読み込む。この第2デューティ比D4は、記憶部107に設定が変更される都度記憶されている。ステップS148では、第2デューティ比D4を所定の増分DI(たとえば1%)だけ増やしてステップS143に移行する。これを張力Qdが下限値Qst1を超えるまで続ける。
【0072】
張力Qdが上限値Qst2を超えている場合には、ステップS143からステップS149に移行して現在の第2デューティ比D4を読み込む。この第2デューティ比D4もステップS147と同様である。ステップS148では、第2デューティ比D4を所定の減分DI(たとえば1%)だけ減らしてステップS144に移行する。これを張力Qdが上限値Qst2を下回るまで続ける。
【0073】
この張力モード処理では、速度モード処理に比べて第2保護処理による張力減少処理は行われない。これは、張力モードでは、段階ST毎に電流値(張力)が定められているからである。
【0074】
<第3保護処理>
ステップS145の第3保護処理は、段階STが5〜30のときに有効なモータ保護処理であり、速度モード用の第1保護処理と略同様な考えを張力モード用に変更したものである。この第3保護処理では、モータ4に流れる電流値(すなわち、モータ4に作用する負荷)がモータに流す最大電流値(たとえば18A)の50%以上90%以下の第1電流値(たとえば、11A)が所定時間(たとえば、好ましくは、30秒から60秒であり、この実施形態では、45秒)連続している第3状態になると、オンオフする断続的な電流をモータ4に流す第2断続制御を行う。
【0075】
具体的には、図15のステップS160で現在の段階STが5以上であるか否かを判断する。段階STが5以上の場合は、ステップS161に移行し、電流検出部108aにより検出されたモータ4の流れる電流値Id、すなわち負荷が第1電流値である11A以上であるか否かを判断する。電流値Idが11A以上の場合には、ステップS162に移行し、第3条件を満足するとオンする第3保護フラグFP4がすでにオンしているか否かを判断する。第3保護フラグFP4がまだオンしていない場合には、ステップS163に移行する。第3保護フラグFP4がすでにオンしている場合は、ステップS163〜ステップS166をスキップしてステップS167に移行する。
【0076】
ステップS163では、電流値Idが11Aを超えてからの経過時間t8を計測するためのタイマT8がすでにオンしているか否かを判断する。タイマT8がまだオンしていないときは、ステップS164に移行してタイマT8をオンする。タイマT8がすでにオンしているときは、ステップS164をスキップしてステップS165に移行する。ステップS165では、タイマT8がタイムアップしてオフしているか否かを判断する。すなわち、負荷が所定の条件を満たしてから45分間経過したか否かを判断する。タイマT8がタイムアップしたと判断すると、ステップS166に移行して第3条件を満たしたことを識別するための第3保護フラグFP4をオンする。ステップS167では、モータ4にオンオフする電流を流して駆動する断続制御処理を実行する。この断続処理は速度モードときと同じ図12に示す処理である。ステップS168では、負荷が第3電流値より小さい第4電流値である10A以下になったか否かを判断する。負荷が10A以下の場合はステップS169に移行する。ステップS169では、保護する必要がないと判断して第3保護フラグFP4をオフする。第1保護フラグFP1がオフされると、調整レバー101を操作開始位置まで戻すことによりモータ4の動作が可能になる。
【0077】
ステップS160,161,165,168での判断がNOの場合は、張力モード処理に戻る。
【0078】
<各動作モード処理>
ステップS8の各動作モード処理では、図16のステップS171でスプール3の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ102のいずれのホール素子が先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール3の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS171からステップS172に移行する。ステップS172では、スプール回転数が減少する毎にスプール回転数から記憶部107に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS173では、得られた水深が底位置に一致したか、つまり、仕掛けが底に到達したか否かを判断する。底位置は、仕掛けが底に到達したときにメモボタンMBを押すことで記憶部107にセットされる。ステップS174では、学習モードなどの他のモードか否かを判断する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0079】
水深が底位置に一致するとステップS173からステップS175に移行し、仕掛けが底に到達したことを報知するためにブザー106を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS174からステップS176に移行し、指定された他のモードを実行する。
【0080】
スプール3の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS171からステップS177に移行する。ステップS177では、スプール回転数から記憶部107に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS178では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。船縁停止位置に到達するとステップS178からステップS179に移行する。ステップS179では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー106を鳴らす。ステップS180では、モータ4をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、たとえば水深6m以内で所定時間以上スプール3が停止しているとセットされる。
【0081】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、種々の電流値や時間値を設定しているがそれらの具体的な数値が一例であり、本発明はそれらの数値に限定されない。
【0082】
(b)前記実施形態では、第2保護処理において、第1条件と第2条件とを満たしたとき目標速度を設定しているが、第1条件だけで目標速度を設定してもよい。
【0083】
(c)前記実施形態では、断続制御の解除を回転速度及び電流値を検出結果により行っているが、回転速度又は電流値単独の検出結果で解除するようにしてもよい。
【0084】
(d)前記実施形態では、電流値を糸巻径で補正して張力を検出しているが、釣り糸に作用する張力を検出できるものであればどのような構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態が採用された電動リールの斜視図。
【図2】その背面一部断面図。
【図3】カウンタの平面図。
【図4】カウンタの断面図。
【図5】水深表示部の平面図。
【図6】電動リールの制御系の構成を示すブロック図。
【図7】リール制御部のメインルーチンを示すフローチャート。
【図8】温度保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図9】キー入力処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図10】速度モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図11】第1保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図12】断続処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図13】第2保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図14】張力モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図15】第3保護処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図16】各動作モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図17】他の実施形態の各動作モードのサブルーチンを示すフローチャート。
【図18】他の実施形態の高負荷ドラグ処理サブルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
10 制御ユニット(モータ制御装置の一例)
100 リール制御部(モータ制御部、第1及び第2目標設定部並びに負荷比較部の一例)
101 調整レバー(上限速度設定部の一例)
102スプールセンサ(回転速度検出部の一例)
108 モータ駆動部
108a 電流検出部(負荷検出部の一例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置であって、
前記スプールの回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記スプールに作用する負荷を電流値により検出する負荷検出部と、
前記スプールの回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する上限速度設定部と、
前記負荷検出部により検出された負荷が、前記モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が第1所定時間連続する第1条件を少なくとも満たしたとき、前記回転速度より少なくとも一段階低い前記上限速度に対応する目標速度を設定する第1目標速度設定部と、
目標速度設定後の第1負荷と、それから第2所定時間後の第2負荷とを比較する負荷比較部と、
第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、前記目標速度を少なくとも一段階低い前記上限速度に繰り返して設定し、前記第2負荷が前記第1負荷より所定量小さいときは、前記目標速度を少なくとも一段階高い前記上限速度に設定する第2目標速度設定部と、
前記第1条件を満たさないとき、前記スプールの回転速度が設定された前記上限速度になるように前記モータを制御し、前記第1及び第2目標設定部により前記目標速度が設定されたとき、前記スプールの回転速度が設定された前記目標速度となるように前記モータを制御するモータ制御部と、
を備えた電動リールのモータ制御装置。
【請求項2】
前記第1目標設定部は、前記第1条件と、前記回転速度が前記第1所定時間連続して前記上限速度未満である第2条件とを満たしたとき、前記目標速度を設定する、請求項1に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記目標速度より低速側に前記上限速度設定部により前記上限速度が変更されると、前記目標速度が解除され、前記上限速度となるように前記モータを制御する、請求項1又は2に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項4】
前記1モータ制御部は、前記目標速度より高速側に前記上限速度設定部により前記上限速度が変更されると、その変更を無視し、前記目標速度となるように前記モータを制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項5】
前記第2目標速度設定部は、最大段階の半分以下の低速段階を限度として前記目標速度を低くする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータ制御部は、前記第1電流値以上の負荷状態が前記第1所定時間より長い第3所定時間連続した場合に前記スプールの回転速度が前記低速段階より高速側の中間段階の速度以下のとき、オンオフする断続的な電流を前記スプールに流す、請求項5記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項1】
モータの駆動によりスプールを回転可能な電動リールのモータ制御装置であって、
前記スプールの回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記スプールに作用する負荷を電流値により検出する負荷検出部と、
前記スプールの回転速度を高低複数段階の上限速度のいずれかに設定する上限速度設定部と、
前記負荷検出部により検出された負荷が、前記モータに流す最大電流値より小さい所定の第1電流値以上の状態が第1所定時間連続する第1条件を少なくとも満たしたとき、前記回転速度より少なくとも一段階低い前記上限速度に対応する目標速度を設定する第1目標速度設定部と、
目標速度設定後の第1負荷と、それから第2所定時間後の第2負荷とを比較する負荷比較部と、
第2負荷が第1負荷より所定量大きいときは、前記目標速度を少なくとも一段階低い前記上限速度に繰り返して設定し、前記第2負荷が前記第1負荷より所定量小さいときは、前記目標速度を少なくとも一段階高い前記上限速度に設定する第2目標速度設定部と、
前記第1条件を満たさないとき、前記スプールの回転速度が設定された前記上限速度になるように前記モータを制御し、前記第1及び第2目標設定部により前記目標速度が設定されたとき、前記スプールの回転速度が設定された前記目標速度となるように前記モータを制御するモータ制御部と、
を備えた電動リールのモータ制御装置。
【請求項2】
前記第1目標設定部は、前記第1条件と、前記回転速度が前記第1所定時間連続して前記上限速度未満である第2条件とを満たしたとき、前記目標速度を設定する、請求項1に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記目標速度より低速側に前記上限速度設定部により前記上限速度が変更されると、前記目標速度が解除され、前記上限速度となるように前記モータを制御する、請求項1又は2に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項4】
前記1モータ制御部は、前記目標速度より高速側に前記上限速度設定部により前記上限速度が変更されると、その変更を無視し、前記目標速度となるように前記モータを制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項5】
前記第2目標速度設定部は、最大段階の半分以下の低速段階を限度として前記目標速度を低くする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電動リールのモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータ制御部は、前記第1電流値以上の負荷状態が前記第1所定時間より長い第3所定時間連続した場合に前記スプールの回転速度が前記低速段階より高速側の中間段階の速度以下のとき、オンオフする断続的な電流を前記スプールに流す、請求項5記載の電動リールのモータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−178119(P2009−178119A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21631(P2008−21631)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
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