説明

電動二輪車および電動二輪車用の給電システム

【課題】電動二輪車において、電磁誘導式の無接点給電を効率的且つ簡便に実現することができる新規な構造の電動二輪車及びその給電システムを提供すること。
【解決手段】電動スクータ10において、送電側コイル38と受電側コイル40の電磁誘導による無接点給電に用いられる受電側コイル40を、停車時に車体14を支持するスタンド30に設けるようにした。また、送電側コイル38が内蔵されたスタンド載置部60を有する送電装置11を用い、スタンド載置部60上で電動スクータ10のスタンド30を接地するようにした給電システム12を構築した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源として走行する電動二輪車に係り、特に、電動モータへの給電を担うバッテリへの給電を、電磁誘導式の無接点給電により行うようにした電動二輪車に関する。また、本発明はそのような電動二輪車に用いられる給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータの駆動力により後輪等の駆動輪を駆動させて走行する、スクータや電動アシスト自転車等の電動二輪車が知られている。このような電動二輪車には、電動モータへの給電を担うバッテリが搭載されており、このバッテリを充電することにより、継続的な走行ができるようになっている。
【0003】
ところで、従来の電動二輪車におけるバッテリへの給電は、例えば特開2004−210072号公報(特許文献1)に記載されているように、家庭用コンセントとバッテリを電源ケーブルで接続して給電を行うものが主流である。また、特開2004−74907号公報(特許文献2)等には、車体に対して着脱自在とされたバッテリを採用して、該バッテリを取り外して家庭用コンセント付近に移動して給電を行うものが提案されている。
【0004】
ところが、このような従来の電動二輪車では、バッテリを充電するために、使用者が電動二輪車の使用後に、電源ケーブルでバッテリと家庭用コンセントを接続したり、或いは、バッテリを車体から取り外して家庭用コンセント付近まで移動させる必要があり、給電作業が面倒であった。また、バッテリ残量不足に気付かずバッテリへの給電作業を適時に行わなかった場合には、走行中にバッテリ切れが発生するおそれもあった。
【0005】
なお、電気自動車等の移動体の給電システムとして、特開平6−189479号公報(特許文献3)に電磁誘導による無接点給電も提案されている。しかしながら、電磁誘導式の無接点給電では、送電側コイルと受電側コイルの離隔距離の増大や中心軸のずれにより、過大な給電ロスが発生する。これに対処するために、コイルの径を大きくすることも考えられるが、車体が小さな二輪車においてはコイルの配設スペースが限られており、電磁誘導による無接点給電を電動二輪車のバッテリ給電に採用できる有効な構造は未だ提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−210072号公報
【特許文献2】特開2004−74907号公報
【特許文献3】特開平6−189479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、電動二輪車において、電磁誘導式の無接点給電を効率的且つ簡便に実現することができる新規な構造の電動二輪車を提供することにある。
【0008】
また、本発明はそのような電動二輪車用の給電システムを提供することもその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電動二輪車に関する本発明の第一の態様は、駆動輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを備え、該バッテリへの給電が送電側コイルと受電側コイルの電磁誘導を用いた無接点給電により行なわれるようになっている電動二輪車において、前記受電側コイルが停車時に車体を支持するスタンドに設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
一般に、電磁誘導を利用した移動体への無接点給電では、送電側コイルが車体が載置された路面や床面等の車体の接地面側に配設されている。本態様に従う構造とされた電動二輪車においては、スタンドに無接点給電の受電側コイルが設けられていることから、停車時にスタンドを接地して車体を起立状態に保持させる停車作動を行うのみで、送電側コイルと受電側コイルを近接させることができる。これにより、電磁誘導を利用した無接点給電の給電効率を有利に確保することができ、受電側コイルの外形寸法を小さくしても、効率のよい給電を、空きスペースの限られた電動二輪車において有利に実現することができる。
【0011】
また、従来の如く、電源ケーブルを差し込んで充電を開始したり、バッテリを取り外して給電が可能なスペースに移動させたりといった特別な動作を伴うことなく、バッテリへの給電を行うことができ、給電に必要な操作を大幅に簡素化できる。
【0012】
特に、受電側コイルをスタンドという停車時の接地部品に設けたことから、接地面側の送電側コイル上で電動二輪車のスタンドをかけることのみによって、送電側コイルと受電側コイルの位置決めを目視にて容易且つ確実に行うことができる。それ故、移動体の無接点給電において採用されている位置センサの如き複雑な構成を必要とすることなく、受電側コイルと送電側コイルの位置決めを行うことができる。
【0013】
しかも、スタンドを下して電動二輪車を起立状態に保持させる動作は、電動二輪車の停車時に必須の動作であり、かかる動作に給電動作を組み込むことにより、バッテリ充電のし忘れ等の問題を確実に回避することができる。
【0014】
電動二輪車に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにお
いて、前記受電側コイルを収容する収容部が、前記スタンドの接地部に設けられており、該接地部の接地面から上方に離隔して該受電側コイルが収容配置されているものである。
【0015】
本態様によれば、スタンドの接地部に設けられた収容部に受電側コイルが収容されていることから、一層有利に受電側コイルを送電側コイルに近づけることができる。これにより、一層高い給電効率が実現でき、電動二輪車において給電効率のよい電磁誘導型無接点給電をさらに有利に実現することができる。
【0016】
また、受電側コイルがスタンドの接地部の接地面から上方に離隔して収容されていることから、スタンドの接地により加えられる外力が受電側コイルに伝達されてコイルが破損等することを防止できる。なお、スタンドの接地面とは、車両が載置されている路面や床面等の車両の接地面に接触する面をいう。
【0017】
電動二輪車用の給電システムに関する本発明は、本発明の第一又は第二の態様に記載の電動二輪車と、外部電源から給電可能な前記送電側コイルを内部に収容するスタンド載置部を有する送電装置とを備えており、前記スタンド載置部上で前記スタンドを接地するようにしたことを特徴とする
【0018】
本態様に従う構成とされた給電システムによれば、送電側コイルが内蔵されたスタンド載置部を備えていることから、載置部上で受電側コイルが設けられたスタンドを接地させることのみにより、送電側コイルと受電側コイルを簡単且つ確実に近接配置することができる。これにより、電磁誘導を利用したバッテリへの効率的な給電が、電動二輪車の停車動作のみにより実現できる。なお、「スタンド載置部」は、路面に固定的に設置されてもよいし、持ち運び可能な部品として構成されてもよい。
【0019】
電動二輪車用の給電システムに関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記送電装置が、前記スタンド載置部を構成すると共に前記送電側コイルを収容する収容ケースと、該収容ケースから延び出す該送電側コイルへの給電用電源ケーブルを含んで構成されたポータブル型とされているものである。
【0020】
本態様によれば、スタンド載置部がポータブル型であることから、スタンド載置部を路面等に配設する大規模な工事を伴うことなく、本発明の給電システムを構築することができる。従って、家庭用コンセントなど、電源ケーブルを接続できる環境があれば、移動先でも場所を問わず電動二輪車のバッテリへの給電を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
電動二輪車に関する本発明によれば、電磁誘導型無接点給電に用いられる受電側コイルを電動二輪車のスタンドに設けたことから、電動二輪車の停車時に、受電側コイルを送電側コイルに近接して配置することができる。また、電動二輪車用の給電システムに関する本発明によれば、送電側コイルを収容するスタンド載置部上で本発明にかかる電動二輪車のスタンドを接地するのみで、受電側コイルを送電側コイルに近接して配置することができる。これにより、電動二輪車において、電磁誘導を利用した無接点給電の給電効率を簡便且つ有利に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態としての電動スクータを示す全体図。
【図2】図1に示された電動スクータを構成するスタンドの要部拡大斜視図
【図3】本発明の一実施形態としての給電システムを構成するスタンド及び送電装置の要部拡大断面図であり、図2のIII−III断面に相当する図。
【図4】本発明の一実施形態としての電動スクータにおける給電構成及び駆動構成を示すブロック図。
【図5】本発明一実施形態としての給電システムを構成するポータブル型送電装置を示す全体図。
【図6】本発明の一実施形態として電動スクータを構成するスタンドの別例を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1には、電動二輪車に関する本発明の第一の実施形態としての電動スクータ10と、電動二輪車用の給電システムに関する本発明の第一実施形態としての給電システム12が概略的に示されている。なお、給電システム12は、電動スクータ10と送電装置11を含んで構成されている。
【0025】
電動スクータ10は、車体14と、車体14の前方に取り付けられる操舵輪としての前輪16と、車体14の後方に取り付けられる駆動輪としての後輪18を備えている。前輪16は、車体14に対して左右方向に揺動可能に装着されたフロントフォーク20の下端部に、回転自在に軸支されている。後輪18は、車体14に対して枢支されたスイングアーム22の揺動端部に、回転自在に軸支されている。スイングアーム22には、駆動源としての電動モータ24が取り付けられており、後輪18と電動モータ24にそれぞれ設けられた図示しないプーリ間に架け渡された伝動ベルト26を介して、電動モータ24の駆動力が後輪18に伝達されるようになっている。そして、電動モータ24から伝達される駆動力により後輪18が回転駆動されると、それに伴って、前輪16も回転して電動スクータ10が前方に走行されるようになっている。なお、電動スクータ10の車体14には、走行時に電動モータ24へ電力を供給するバッテリ28も搭載されている。
【0026】
さらに、電動スクータ10は、停車時において車体14を支持すべく所定角度範囲内で回動可能なスタンド30を備えている。スタンド30は、非磁性体金属等によって構成されており、図2に示されるように、長手状に延びる一対の支持脚部32a,32bを有し、長手方向中間部分の適所において、連結部33a,33bにより相互に連結されて一体化されている。スタンド30は、支持脚部32a,32bの一端側に設けられた枢支部34において、車体14に対して連結ピンによって回動可能に取り付けられている。また、一対の支持脚部32a,32bの他端部は、それぞれ側面視において略L字状に屈曲されており、屈曲された端部によってスタンド30の接地部36、36が構成されている。
【0027】
このスタンド30には、図示しないコイルばね等の付勢手段が取り付けられており、かかる付勢手段の付勢力によって、図1に破線で示した一方の回動端となる収容位置に付勢されて保持されるようになっている。これにより、電動スクータ10の走行時には、スタンド30が路面から離隔した収納状態で保持されて、走行の妨げにならないようになっている。そして、電動スクータ10の停車時には、付勢手段の付勢力に抗して、スタンド30が図1に実線で示した他方の回動端となる接地位置に移動されて、スタンド30の接地部が接地される。これにより、電動スクータ10がスタンド30を介して、安定した起立状態で地面等に支持されることとなる。
【0028】
このような電動スクータ10は、車体14に搭載されたバッテリ28への給電を、送電側コイルと受電側コイルの電磁誘導を用いた無接点給電により行うようになっている。すなわち、図1に概略的に示されているように、無接点給電を利用した本実施形態の給電システム12は、停車時の電動スクータ10のスタンド30が接地される、ガレージの地面や床面等の地上側に配設された送電装置11に収容された送電側コイル38と、かかるスタンド30に設けられた受電側コイル40とを備えている。送電側コイル38には、外部電源42がインバータ装置44を介して接続されており、インバータ装置44によって高周波に変換された高周波電流が送電側コイル38に通電されるようになっている。そして、高周波電流の通電により送電側コイル38に発生する交流磁界が、スタンド30に設けられた受電側コイル40を通過することにより、受電側コイル40に交流起電力が発生し、かかる電力が受電側コイル40に被覆電線31を介して電気的に接続されたバッテリ28に給電されるシステムである。
【0029】
より具体的には、図2および図3に示されるように、電動スクータ10のスタンド30には、一対の支持脚部32a,32bのそれぞれの接地部36に跨って延びる受電側コイル40の収容部46が、一体的に設けられている。収容部46は、アルミニウムやステンレス等の任意の非磁性材料から構成されており、下方に向かって開口する矩形箱体形状を呈している。収容部46は、互いに対向する両側縁部において、接地部36の上面に載置されており、溶接や接着等によって固定的に取り付けられている。なお、図2には地面上に露出した送電装置11の表面のみが図示されており、図3には、地面に埋設された部分も含めた送電装置11の断面図が示されている。
【0030】
収容部46の内部には、受電側コイル40が収容配置されている。受電側コイル40は、フェライト製の同心円環状のコア50に電線が巻回されて、周囲を合成樹脂製の保護体52で包囲された構成とされている。そして、受電側コイル40は、磁束出入力端面54が収容部46の開口部側となる下方に向けられた状態で、収容部46内に収容配置されて、接着やかしめ固定等の任意の固定方法により、収容部46内で位置決め固定されている。ここで、収容部46は、スタンド30の接地部36の上面側に設けられており、接地部36の地上側への接地面56から上方に離隔した位置に設けられている。なお、受電側コイル40からは、被覆電線58が引き出されており、スタンド30の支持脚部32aの内部に設けられた中空路内を通って、バッテリ28側に延び出しており、かかる被覆電線58を通じて、受電側コイル40がバッテリ28側と電気的に接続されるようになっている。
【0031】
一方、スタンド30が接地される地上側に配設された送電装置11は、内部に送電側コイル38が収容されたスタンド載置部60を備えている。スタンド載置部60は、上方に開口するコイル収容凹所62を有する矩形ブロック形状の支持基体64と支持基体64に重ねあわされてコイル収容凹所62の開口部を密封する蓋体66を備えており、ステンレスやアルミ等の非磁性材料から構成されている。また、送電側コイル38は、フェライト製の同心円環状のコア68に電線が巻回されて、周囲を合成樹脂製の保護体70で包囲された構成とされている。そして、送電側コイル38は、磁束出入力端面71が上方に向けられた状態で、支持基体64のコイル収容凹所62に収容配置されて接着等の任意の固定方法により位置決め固定されている。なお、送電側コイル38に接続する被覆電線72がスタンド載置部60から外部に引き出されており、インバータ装置44を介して外部電源42に接続可能とされている。
【0032】
このスタンド載置部60は、蓋体66の表面が外部に露呈された埋設状態で地上側に配設される。そして、図2に示されているように、スタンド載置部60の露呈面となる蓋体66の表面には、スタンドの接地領域を識別可能に示す、接地領域マーク74が印刷や刻印等により形成されている。これにより、電動スクータ10の停車時に、スタンド載置部60の接地領域マーク74を目印にして、スタンド載置部60上でスタンド30を接地することにより、送電側コイル38と受電側コイル40の位置決めが容易に行えるようになっている。
【0033】
次に、図4のブロック図を用いて、本実施形態の電動スクータ10の走行時および本実施形態の給電システム12の給電時における給電構成について説明する。まず、電動スクータ10の走行時には、バッテリ28から直流電流がインバータ装置76に供給される。インバータ装置76はDC/ACコンバータと昇圧回路を備えており、インバータ装置76に流入した直流電流は、DC/ACコンバータによって交流電流に変換された後、所要のモータ動力を得るべく昇圧回路を介して所定の電圧まで昇圧される。
【0034】
そして、昇圧された交流電流によって、電動モータ24に電力が供給されて、伝動ベルト26を通じて駆動輪である後輪18に動力が伝達されることにより、電動スクータ10が駆動される。なお、本実施形態に係る電動モータ24としては、ACサーボモータ等、種々の交流モータが採用可能である。
【0035】
電動スクータ10の減速時には、後輪18の回転により発電機78を回転させて電力を発生し、発電機78の内部に設けられたAC/DCコンバータにより直流電流に変換した後、レギュレータ等を介して減圧して、バッテリ28に充電されるようになっている。なお、本実施形態における発電機78としては、オルタネータ等の各種交流発電機が採用され得る。さらに、発電機78が電動モータ24に対して別体とされることは必須ではなく、ブレーキの制動機構による回転抵抗を利用して電動モータを逆回転させることにより、電動モータ自体を発電機として用いることも可能である。
【0036】
そして、電動スクータ10の停車時には、図1乃至図3に示すように、スタンド30を送電装置11のスタンド載置部60上で接地することに、電動スクータ10を起立状態で支持する。その際、スタンド載置部60には、接地領域マーク74が設けられていることから、接地領域マーク74とスタンド30の接地部36を位置合わせするのみで、図3に示すように、それらの内部に収容された送電側コイル38と受電側コイル40の磁束出入力端面54,71を略同軸状に位置決めすることができる。
【0037】
このように送電側コイル38と受電側コイル40が位置決めされた状態で、送電装置11の送電側コイル38に対して、外部電源42から交流電流がインバータ装置44を介して供給される。すなわち、外部電源42から供給される交流電流は、インバータ装置44によって高周波電流に変換された後、送電側コイル38に通電されるようになっている(図4参照)。そして、高周波電流の通電により送電側コイル38に発生する交流磁界が、スタンド30に設けられた受電側コイル40を通過することにより、受電側コイル40に交流起電力が発生する。この際、誘導起電力によって受電側コイル40に電圧が印加され、これにより発生した交流電流が、整流器45を通じて直流電流に変換されて、バッテリ28に電力が供給されることにより充電が行われる。
【0038】
なお、電動スクータ10に対しては、バッテリ28の充電時において、電動モータ24に対する電力供給を遮断するために、電動スクータ10をセーフモードに移行させるための安全装置を設けることが望ましい。かかる安全装置の作動により、充電状態において電動モータ24が駆動不能とされて、スタンド接地状態での走行が防止されるため、電動スクータ10の安全性向上を図ることができる。なお、安全装置は、スタンド30の昇降に伴って、自動的に作動・停止するように構成してもよいし、必要に応じて給電ボタンを設けて手動で作動するように構成してもよい。
【0039】
このような構造とされた電動スクータ10および、その給電システム12においては、停車時に車体14を支持するスタンド30に無接点給電の受電側コイル40が内蔵されていることから、スタンド30を接地して車体を起立させる停車動作と、受電側コイル40と送電側コイル38を近接させる動作とを同時に行うことができる。そして、受電側コイル40と送電側コイル38を近接させて対向配置することにより、給電を開始することができる。それ故、バッテリ28を給電スペースに移動させる作業や、停車後に電源ケーブルを接続する動作が不要となり、給電に必要な操作が大幅に簡素化される。
【0040】
ここで、受電側コイル40と送電側コイル38が近接されるほど、漏れ磁束の発生を抑えることができて、より大きな誘導起電力が得られるため、無接点給電における給電効率が向上する。本実施形態によれば、スタンドに無接点給電の受電側コイル40が設けられ、停車時において送電側コイル38が配置された車体14の接地面側に受電側コイル40が近接されることから、コイル間の離隔距離を短縮することが容易になり、給電効率を向上させることができる。
【0041】
特に、受電側コイル40がスタンド30の接地部36に設けられた収容部46に収容配置されていることから、受電側コイル40と送電側コイル38とを一層近接させて配置することが可能となる。さらに、受電側コイル40が接地部36の接地面56から上方に離隔して保持されているため、車体14の支持荷重が受電側コイル40へ加えられることを回避できると共に、路面等への接触による破損を防止できるため、受電側コイル40の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、大きな起電力を得るため、コイルの断面積や巻き数を増大させることは、空きスペースの限られた電動スクータ10において採用が難しい。本実施形態では、送電側コイル38に近接配置する必要がある受電側コイル40として小型コイルを採用しても、送電側コイル38に充分に近接させることが可能であることから充分な起電力を得ることができる。即ち、停車時に必然的に近接するスタンド30とスタンド載置部60の双方にコイル設置スペースを設けることで、電動スクータ10における空きスペースを有効に活用しつつ、小型コイルを用いて効率の良い給電を可能にし得たのである。
【0043】
加えて、本実施形態においては、送電装置11のスタンド載置部60上でスタンド30を接地することにより、受電側コイル40と送電側コイル38との位置決めが容易となるように構成されている。これにより、受電側コイル40と送電側コイル38との中心軸のずれによる給電ロスの発生を有効に抑えることができ、給電効率を向上させることができる。特に、スタンド載置部60に接地領域マーク74が形成されていることにより、目視にて容易且つ確実に位置決めすることができて、より高精度な位置決めによる更なる給電効率の向上を図ることが可能となる。
【0044】
しかも、本実施形態では、停車時において、スタンド30を起立させて電動スクータ10を支持する動作を給電動作に組み込むことができ、バッテリ充電のし忘れ等の問題を確実に回避することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されるものではなく、例えば以下に例示の如き種々の変更が可能である。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。例えば、前述の実施形態では送電装置11が地上側に埋設されていたが、図5に示すように、ポータブル型の送電装置79を採用してもよい。具体的には、送電装置79は、ステンレスやアルミなどの任意の非磁性材料から形成された矩形箱体形状の収容ケース80と、その内部に位置決めされて収容された送電側コイル38を備えており、送電側コイル38への給電用電源ケーブル82が、収容ケース80の外部に延出された構造とされている。そして、送電装置の一方の面(図5中上面)に送電側コイル38の磁束出入力端面71が向けられており、収容ケース80によってスタンド載置部が構成されている。
【0046】
収容ケース80は、持ち運び可能な大きさに形成されており、送電側コイル38に加えてインバータ装置44が該収容ケース80に収容されている。そして、収容ケース80の表面には前記実施形態と同様、スタンド30の接地領域を識別可能に示す接地領域マーク81が印刷や刻印などにより形成されている。
【0047】
一方、給電用電源ケーブル82は、収容ケース80の一側面から外方に向かって延び出す被覆電線84と、外部電源42と接続されるコネクタ86とを備えている。そして、この給電用電源ケーブル82を通じて外部電源42から供給された電流が、インバータ装置44によって高周波電流に変換されて送電側コイル38に通電されることにより、送電装置11に電力が供給されるようになっている。
【0048】
このように、送電装置79がポータブル型に構成されるため、電源ケーブルを接続できる環境があれば、移動先でも場所を問わず電動スクータ10のバッテリ28への給電を行うことが可能となる。
【0049】
加えて、上記実施形態では、スタンドの接地部36に設けた収容部46に受電側コイル40を収容配置させた構造を示したが、受電側コイルはスタンドに設けられていれば何れでもよく、具体的な配設構成に限定されない。例えば、図6に示すように、前記実施形態と同様の側面視L字状の一対の支持脚部32a, 32bと、これら一対の支持脚部32a, 32bを連結する連結部90からなるスタンド88を鉄等の任意の磁性体で形成し、連結部90の外周面に受電側コイル91を設けることもできる。
【0050】
受電側コイル91は、連結部90の外周面に装着されたボビン状のフェライト製コア94に対して、電線が巻回されており、その周囲を合成樹脂製の保護体92で包囲された構造とされている。図6に示すスタンド88における受電側コイル91の配設構造によれば、一対の支持脚部32a, 32bの連結部90から接地部36までの部位に磁気回路を効率的に形成する磁気ヨーク機能をもたせ、受電効率を高めることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、コイルの無接点給電方式として電磁誘導型が採用されていたが、自己共振コイルを電磁誘導コイルと併せて設けることにより、共鳴型の無接点給電方式でバッテリが充電されるようしてもよい。さらに、受電側コイル40が収容部46に内蔵されていることは必須ではなく、既存のスタンドに対して、別体として後付固定されていてもよい。
【0052】
送電側コイル38及び受電側コイル40の具体的形状は例示のものに限定されるものではなく、相互に電磁誘導が可能な各種コイルを用いることが可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、本発明が電動スクータ10に適用される例について詳述したが、本発明の電動二輪車は、電動バイクやスクータのみに限定されず、電動アシスト自転車などの電気式二輪車等であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10:電動スクータ(電動二輪車)、11:送電装置、12:給電システム、14:車体、18:後輪(駆動輪)、24:電動モータ、28:バッテリ、30:スタンド、36:接地部、38:送電側コイル、40:受電側コイル、42:外部電源、46:収容部、56:接地面、60:スタンド載置部、80:収容ケース、82:給電用電源ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを備え、該バッテリへの給電が送電側コイルと受電側コイルの電磁誘導を用いた無接点給電により行なわれるようになっている電動二輪車において、
前記受電側コイルが停車時に車体を支持するスタンドに設けられていることを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前記受電側コイルを収容する収容部が、前記スタンドの接地部に設けられており、該接地部の接地面から上方に離隔して該受電側コイルが収容配置されている請求項1に記載の電動二輪車。
【請求項3】
電動二輪車用の給電システムであって、
請求項1又は2に記載の電動二輪車と、
外部電源から給電可能な前記送電側コイルを内部に収容するスタンド載置部を有する送電装置とを備えており、
前記スタンド載置部上で前記スタンドを接地するようにしたことを特徴とする電動二輪車用の給電システム。
【請求項4】
前記送電装置が、前記スタンド載置部を構成すると共に前記送電側コイルを収容する収容ケースと、該収容ケースから延び出す該送電側コイルへの給電用電源ケーブルを含んで構成されたポータブル型とされている請求項3に記載の電動二輪車用の給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245922(P2012−245922A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120553(P2011−120553)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】