説明

電動二輪車のバッテリボックス

【課題】バッテリとバッテリボックスの間に手や指を挟んで作業者が怪我をしてしまうのを防止することを目的とする。
【解決手段】本発明は、バッテリ33の電力を動力源として走行する電動二輪車のバッテリボックス30であって、上向きの開口を備えてバッテリ33を挿脱可能なバッテリ収納部35と、バッテリ収納部35の開口縁部37に沿って設けられた弾性変形可能なクッション部材61と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力を動力源として走行する電動二輪車のバッテリボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車はエンジンを動力源とするものが主流であったが、環境への負荷を軽減する観点等から、車載のバッテリから供給される電力を動力源として走行する自動二輪車(以下、「電動二輪車」と略称する。)が提案されている。このような電動二輪車として、例えば、運転者シートの下方に設けられたバッテリボックスにバッテリを挿脱可能に収納し、このバッテリから供給される電力を動力源とした電動二輪車が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
上記先行技術に記載されたバッテリは略直方体に形成されて挿入方向先端部に接続端子が設けられ、これに対応するバッテリボックス側の接続端子は、バッテリボックスの底部に配置されている。また、バッテリを隙間なく包むように保持できるように、バッテリの外形に合わせてバッテリボックスが形成されている。このような構成を採用することで、路面からの走行振動によってバッテリ側の接続端子とバッテリボックス側の接続端子とが接触不良を起こしたり、バッテリボックス内に異物や水が入り込んでバッテリに設けられた放電端子部で短絡が発生したりするのを、抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−74907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにバッテリボックスでバッテリを隙間なく包むように保持したとしても、バッテリボックス内への異物や水の侵入を完全に防ぐのは困難であり、バッテリボックスの底部には侵入した異物や水が溜まりやすい。そのため、バッテリボックスの底部にバッテリボックス側の接続端子を配置すると、上記の異物や水が接続端子に付着し、接続端子間の接触不良の原因となる欠点がある。
【0006】
また、上記のようにバッテリとバッテリボックスの間の隙間を狭くすると、バッテリの交換時等に、バッテリボックスの開口縁部に作業者が手や指を置いたまま、バッテリボックス内にバッテリを誤って挿入したり落下させたりした場合に、バッテリボックスの開口縁部とバッテリとの間に手や指を挟んでしまい、作業者が怪我をする可能性がある。特に、特許文献1の場合のように運転者シートの下方のスペースをバッテリボックスとして使用する場合には、バッテリボックスの開口縁部の高さが丁度作業者が手を置きやすい高さになる為、手や指を挟んでしまう可能性が高まる。従って、何らかの対策が必要である。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、バッテリとバッテリボックスの間に手や指を挟んで作業者が怪我をしてしまうのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バッテリの電力を動力源として走行する電動二輪車のバッテリボックスであって、上向きの開口を備えて前記バッテリを挿脱可能なバッテリ収納部と、該バッテリ収納部の開口縁部に沿って設けられた弾性変形可能なクッション部材と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採用することにより、バッテリボックスの開口縁部に沿って設けられたクッション部材とバッテリの間に作業者が手や指を万一挟んでしまったとしても、クッション部材が弾性変形して衝撃が緩和されるため、作業者が手や指を怪我するのを防止することが可能となる。
【0010】
また、前記バッテリは上下に長い形状を成し、前記バッテリの周面にはバッテリ側端子を備えた突出部が設けられ、該突出部に対応して前記バッテリ収納部に段状の凹部が設けられ、該凹部に前記バッテリ側端子と接続可能なバッテリ収納部側端子が設けられるとともに、前記凹部に対応する前記開口縁部に沿って前記クッション部材が設けられていても良い。
【0011】
このような構成を採用することにより、たとえバッテリ収納部の底部に異物や水が溜まったとしても、この異物や水がバッテリ側端子やバッテリ収納部側端子に付着するのを抑制ことが可能となり、端子間の接触不良を防止することができる。
【0012】
また、前記バッテリ収納部の上端面を前記凹部の底面の近傍まで切り欠き、この切り欠き部に前記クッション部材を配設しても良い。
【0013】
このように、バッテリ収納部の上端面に設けられた凹部にクッション部材を配置することにより、凹部を設けていないバッテリ収納部の上端面にクッション部材を配置する場合と比較して、クッション部材の下端部を低い位置に設定することができる。従って、クッション部材の上端部の位置が同一であれば、クッション部材の上下幅を大きくすることができ、結果としてクッション部材の上端部と開口縁部を遠ざけることが可能となる。そのため、作業者が開口縁部とバッテリとの間に手や指を挟んでしまうのを防止することができ、安全性を一層高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動二輪車のバッテリボックスによれば、バッテリとバッテリボックスの間に手や指を挟んで作業者が怪我をしてしまうのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動二輪車を示す左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、バッテリボックスの近傍を示す左上方からの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、バッテリボックスを示す左上方からの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、バッテリボックスの前部を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、クッション部材を示す左下方からの斜視図である。
【図6】(a)は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、クッション部材を示す底面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図であり、(c)は、(a)のB−B断面図である。
【図7】(a)は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車において、バッテリが前方収納部に挿入される途中の状態を示す説明図であり、(b)は、バッテリが前方収納部に挿入された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、本発明を小型のスクータ型電動二輪車1(以下、「電動二輪車1」と略称する。)に適用した場合について説明する。
【0017】
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電動二輪車1の全体の構成について説明する。なお、図1において、電動二輪車1の後部は、透視図で記載されている。以下、上下、左右、前後の方向は、電動二輪車1に乗車する運転者から見た方向を示す。
【0018】
電動二輪車1には、車体の骨組を構成する車体フレーム2が設けられている。車体フレーム2は、ガソリンエンジンを搭載した一般的なスクータ型自動二輪車に設けられる車体フレーム2と同様の構成であり、車体フレーム2の前部上端に配置されるヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後下方に向かって延設されるダウンチューブ4と、ダウンチューブ4の後端から後上方に向かって延設されるリヤフレーム5と、を備えている。
【0019】
ヘッドパイプ3には、フロントフォーク6が左右に回転可能に支持され、フロントフォーク6の下端には前輪7が軸支されている。ヘッドパイプ3には、ステアリングシャフト8が取り付けられており、ステアリングシャフト8の上端にはハンドルバー11が固定されている。ハンドルバー11の上方には、バックミラー12が設けられている。
【0020】
ヘッドパイプ3とダウンチューブ4の周囲は、前方からフロントカバー13により覆われるとともに後方からレッグシールド14により覆われている。フロントカバー13の前面には、上部から下部にかけて、上面が開口された箱型形状のフロントバスケット15が固定され、フロントバスケット15の後上方には巻取装置17が設けられている。巻取装置17には、フロントバスケット15の上面を被覆可能なシート状の蓋部材(図示せず)が捲回されている。フロントバスケット15の下面とフロントカバー13の前面下部との間には、ヘッドライト18が取り付けられている。
【0021】
ダウンチューブ4の後下部にはパワーユニット20の前端部が上下方向揺動可能に支持され、パワーユニット20の前下部には、スタンド装置21が支持されている。パワーユニット20の後端部には、後輪22が軸支されるとともに後輪22を駆動させるためのモータ23が固定されている。
【0022】
リヤフレーム5は、フレームカバー24によって覆われており、フレームカバー24とレッグシールド14の間には、運転者が乗車時に足を載置するための低床状のフットボード25が設けられ、フットボード25にはインバータ26が収納されている。フレームカバー24の後端部には、後輪22の上面を覆うようにしてリヤフェンダ27が設けられている。リヤフェンダ27の前上方には運転者シート28が設けられ、運転者シート28の下方でリヤフェンダ27の前方にはバッテリボックス30が設けられている。
【0023】
次に、主に図2〜図7を用いて、バッテリボックス30の構成について説明する。
【0024】
バッテリボックス30は、上向きに開口されて箱型形状を成している。バッテリボックス30の上縁部31は後上方に傾斜しており、上縁部31には環状突起29が設けられている。バッテリボックス30の上縁部31の前端部の前下方にはシートヒンジ32が設けられ、シートヒンジ32に運転者シート28の前端部を取り付けることで、運転者シート28がバッテリボックス30の上端に開閉可能に支持されるようになっている。
【0025】
バッテリボックス30の内部には、バッテリ33が挿脱可能に収納されたバッテリ収納部としての前方収納部34と、バッテリ(スペア)35が挿脱可能に収納された後方収納部36と、が設けられ、前方収納部34と後方収納部36とは、バッテリボックス30の上部空間38を介して繋がっている。
【0026】
バッテリ33は、上下に長い略直方体形状を成しており、バッテリ33の前面の上部には突出部40が前方に向かって突設され、突出部40の下端にはバッテリ側端子としての放電端子41が内設されている(図7参照)。バッテリ33の上端には、折り畳み可能なグリップ42が取り付けられている。
【0027】
図3、図4に示されるように、前方収納部34は、上端に開口縁部37が設けられた上向きの開口を備えている。前方収納部34の上端部には、バッテリ33の突出部40に対応する位置に、平面視で横長長方形の段状の凹部43が前方に突出するようにして設けられており、凹部43に対応する開口縁部37は前方に向かってコ字状に突出している。以下、このコ字状に突出した部分を開口縁部37の突部44とする。凹部43の底面45には、バッテリ33の放電端子41と対応する位置に横長長方形状の連通穴46が上下方向に穿設され、連通穴46の左方には円形の貫通穴47が上下方向に穿設されている(図4参照)。
【0028】
前方収納部34の上端面48(前方収納部34の開口縁部37から周囲に広がる面)の前部は、凹部43の底面45の近傍まで切り欠かれており、これにより、切り欠き部50が形成されている。切り欠き部50は、凹部43の底面45よりも僅かに高い位置に、凹部43の前側、右側及び左前側を囲むようにして設けられている。切り欠き部50には、凹部43の前方の左右方向中央部及び左右両端に円形の嵌合穴51が上下方向に穿設されている。左右方向中央部の嵌合穴51は、左右両端の嵌合穴51よりも僅かに前方に位置している。
【0029】
図4に示されるように、凹部43の後部左方の切り欠き部50には、左突部52に支持されて平面視略T字状の左リブ53が設けられている。凹部43の後部右方には、右突部54に固定されて支持板55が設けられている。支持板55は、前後方向に設けられた内側板56及び外側板57と、左右方向に設けられた連結板58と、によって平面視コ字状に形成されており、内側板56の前端には、平面視T字状の右リブ60が突設されている。右リブ60は、凹部43の前部右方の切り欠き部50に設けられている。
【0030】
切り欠き部50には、開口縁部37の突部44に沿って、弾性変形可能なゴム製のクッション部材61が立設されている。クッション部材61は、平面視でコ字状を成し、図5、図6に示されるように、前後方向に設けられた左右両短辺部62と、左右方向に設けられて左右両短辺部62の前端部を連結する長辺部63とを備えている。
【0031】
左短辺部62の後部には、底面視でT字状の左嵌合溝64が、前方収納部34の切り欠き部50に設けられた左リブ53と対応する位置に設けられている。右短辺部62の上後端部には、上後方に向けて連結突起65が設けられており、連結突起65の後下部には、前方収納部34の右突部54と係合可能な係合溝66が設けられている。右短辺部62には、底面の後部から係合溝66の上端にかけて、底面視でT字状の右嵌合溝67が、前方収納部34の切り欠き部50に設けられた右リブ60と対応する位置に設けられている。
【0032】
長辺部63の前面の左右方向中央部には、下方に向かって拡径する半円錐状のテーパ部68が設けられており、これに伴って、長辺部63の底面の左右方向中央部には前方に向かって湾出部70が形成されている。
【0033】
長辺部63の底面の左右方向中央部と左右両端部には、前方収納部34の切り欠き部50に設けられた各嵌合穴51と対応する位置に、突起71が設けられている。左右両端部の突起71が長辺部63の底面の前後方向略中央に設けられているのに対して、左右方向中央部の突起71は、湾出部70側、即ち、前側に偏った位置に設けられている。そのため、各突起71の中心部は同一直線上には配置されておらず、くの字形の折れ線上に配置されている(図6の二点鎖線参照)。各突起71は、長辺部63の底面に連結される円柱状の基端部72と、基端部72の下方に設けられたクサビ形(下向き円錐形)の鍔部73と、鍔部73の下方において縦長に設けられた先端部74と、を備えている(図6(b)参照)。
【0034】
クッション部材61には、左嵌合溝64の前方から左端部の突起71の後方まで中空部75aが設けられ、左端部の突起71の左方から左右方向中央部の突起71の左方まで中空部75bが設けられ、左右方向中央部の突起71の右方から右嵌合溝67の前方まで中空部75cが設けられている。中空部75a〜75cは、クッション部材61の底面から上端部まで設けられており、下端が開口されている(図6(c)参照)。
【0035】
図3に最も良く示されるように、クッション部材61の真下には、バッテリボックス30の前部壁76(前方収納部34の内部空間の前部を覆う壁体)の前面に沿ってコントローラ77が設けられ、コントローラ77の上端に設けられたバッテリ収納部側端子としての給電端子78が、連通穴46を介して凹部43内に突出している。そして、この給電端子78がバッテリ33の放電端子41と接続されることで、バッテリ33とコントローラ77の電気的な接続が可能となっている。コントローラ77の下端にはメインハーネス80が下方に向けて延出され(図7(a)、図7(b)参照)、メインハーネス80には補助ハーネス(図示せず)の一端が固定されている。
【0036】
バッテリ(スペア)35は、後方収納部36にバッテリ33とは前後逆向きに収納されている。バッテリ(スペア)35の形状に関しては、バッテリ33と同一であるため記載を省略する。後方収納部36には、バッテリ(スペア)35に設けられた突出部81と対応する位置に、凹溝82が凹設されている。
【0037】
バッテリボックス30の後部壁83(後方収納部36及び上部空間38の後部を覆う壁体)の上部には円形の配線挿通孔84が穿設されている。配線挿通孔84にはゴム製のグロメット85が着脱可能に設けられ、グロメット85には、ハーネスの他端が固定された故障診断用カプラ86が嵌合支持されている。
【0038】
上述の如く構成されたものにおいて、前方収納部34の切り欠き部50にクッション部材61を組み付けるには、クッション部材61の左右嵌合溝64、67を切り欠き部50の左右リブ53、60に上方から嵌合させるとともにクッション部材61の各突起71の先端部74を切り欠き部50の各嵌合穴51に貫挿させ、手やラジオペンチ等で先端部74を下方に引っ張る。このように先端部74を下方に引っ張ると、各突起71の鍔部73が収縮しながら嵌合穴51を通過し、嵌合穴51の下方に配置される(図6(b)参照)。これにより、開口縁部37の突部44に沿ってクッション部材61が立設されて、クッション部材61の組み付けが完了する。
【0039】
本実施形態では上述の如く、突起71に設けられたクサビ形の鍔部73の下方に縦長の先端部74が設けられているため、上記の如く前方収納部34の切り欠き部50にクッション部材61を組み付ける際に、突起71を下方に引っ張り易くなり、組み付け作業の作業性を向上させることが可能となる。また、鍔部73をクサビ形(下向き円錐形)としているため、鍔部73が嵌合穴51を通過しやすくなり、この点においても上記組み付け作業の作業性を向上させることが可能となる。
【0040】
また、クッション部材61が配置される位置は、シートヒンジ32に近く、且つ、コントローラ77の真上であるため、クッション部材61の配置スペースは非常に小さい。一方で、走行中の振動やバッテリ33を着脱する時のクッション部材61とバッテリ33との接触によりクッション部材61が脱落するのを防止する必要があり、限られたスペースの中でクッション部材61を前方収納部34の切り欠き部50に強固に固定しなければならない。
【0041】
そこで、本実施形態では、前方収納部34の切り欠き部50に設けられた左右リブ53、60にクッション部材61の左右嵌合溝64、67を嵌合させることで、クッション部材61の左右両短辺部62の底面の後部を前方収納部34の切り欠き部50に強固に固定している。また、前方収納部34の切り欠き部50に設けられた嵌合穴51にクサビ形の鍔部73を備えたクッション部材61の突起71を嵌合させることで、クッション部材61の長辺部63の底面の左右方向中央部及び左右両端部を前方収納部34の切り欠き部50に強固に固定している。以上の如く、左右短辺部62、長辺部63のいずれについても、限られたスペースの中で前方収納部34の切り欠き部50に強固に固定することができるため、前方収納部34の切り欠き部50に対するクッション部材61の固定強度を高めることが可能となる。
【0042】
また、クッション部材61の前面の左右方向中央部にテーパ部68を設けることでクッション部材61の底面に湾出部70を形成しているため、クッション部材61の底面積が増大し、これに伴ってクッション部材61の底面と切り欠き部50との接触面積も増大させることが可能となり、クッション部材61を倒れにくくすることができる。更に、前述の如く、クッション部材61の長辺部63において、突起71を一直線上ではなく、くの字形の折れ線上に配置しているため、この点においても、クッション部材61を倒れにくくすることができる。
【0043】
次に、上記のようにしてクッション部材61が組み付けられた前方収納部34にバッテリ33を挿入するには、図7(a)に示されるように、バッテリ33を前方収納部34の内部空間に上方から挿入していき、図7(b)に示されるように、前方収納部34の凹部43に突出するコントローラ77の給電端子78に、バッテリ33の突出部40に設けられた放電端子41を接続する。これにより、バッテリ33からコントローラ77への電力の供給が可能となり、バッテリ33の電力を動力源として電動二輪車1を走行させることが可能となる。
【0044】
本実施形態では前述の如く、前方収納部34の開口縁部37とバッテリ33の間で手や指を挟む可能性のある箇所(開口縁部37の突部44)に沿って、弾性変形可能なクッション部材61を配置している。このような構成を採用することで、前方収納部34にバッテリ33を挿入する際に、前方収納部34の開口縁部37に沿って設けられたクッション部材61とバッテリ33の間に作業者が手や指を万一挟んでしまったとしても、クッション部材61が弾性変形して衝撃を緩和するため、作業者が手や指を怪我するのを防止することが可能となる。また、前方収納部34の開口縁部37の突部44に沿ってクッション部材61を配置することで、開口縁部37から前方収納部34内に異物や水が侵入するのを防止することが可能となる。
【0045】
また、クッション部材61には、下端を開口した中空部75a〜75cが設けられているため、作業者が手や指を挟んでしまった時には、クッション部材61が容易に弾性変形して作業者が怪我を負うのを防止することができ、それ以外の時には、クッション部材61が形状を保持して、開口縁部37から前方収納部34内に異物や水が侵入するのを防止することができる。
【0046】
また、バッテリ33の前面の上部に突設された突出部40の下端に放電端子41が設けられ、この放電端子41と接続可能な給電端子78が前方収納部34の段状の凹部43に突設されている。そのため、たとえ前方収納部34の内部空間の底部に異物や水が溜まったとしても、この異物や水が放電端子41や給電端子78に付着するのを抑制することが可能となり、端子間の接触不良を防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、前方収納部34の上端面48に設けられた凹部43にクッション部材61を配置しているため、凹部43を設けていない前方収納部34の上端面48にクッション部材61を配置する場合と比較して、クッション部材61の下端部を低い位置に設定することができる。従って、クッション部材61の上端部の位置が同一であれば、クッション部材の上下幅を大きくすることができ、結果としてクッション部材61の上端部と開口縁部37を遠ざけることが可能となる。そのため、作業者が開口縁部37とバッテリ35との間に手や指を挟んでしまうのを防止することができ、安全性を一層高めることが可能となる。
【0048】
本実施形態では、バッテリ33の前面の上部に突出部40を突設する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、バッテリ33の前面の下部や中央部等に突出部40を突設することも可能である。つまり、バッテリ33の前面の下端部以外の部分に突出部40を突設すれば、これに対応する前方収納部34の凹部43が段状となり、上記した接触不良の防止効果を高めることができる。本実施形態では、バッテリ33の周面のうちの前面に突出部40を突設する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、バッテリ33の周面のうちの後面や両側面に突出部40を突設しても良い。
【0049】
本実施形態では、バッテリ33の突出部40に放電端子41を収納したが、他の異なる実施形態では、バッテリ33の回路等の他の部品を収納しても良い。本実施形態では、前方収納部34にT字状の左右リブ53、60を設け、この左右リブ53、60が嵌合可能なT字状の左右嵌合溝64、67をクッション部材61に設けたが、他の異なる実施形態では、これとは逆に、クッション部材61にT字状の左右リブ53、60を設け、この左右リブ53、60が嵌合可能なT字状の左右嵌合溝64、67を前方収納部34に設けても良い。
【0050】
また、前方収納部34は、その開口縁部37からバッテリボックス30の上縁部31までの距離が近いため、開口縁部37に手や指を置きやすい。これに対して、後方収納部36は、その開口縁部からバッテリボックス30の上縁部31までの距離が遠く、高低差もあるため、開口縁部に手や指を置きにくい。このような事情を考慮し、本実施形態では前方収納部34にのみクッション部材61を設けた。一方で、他の異なる実施形態では、前方収納部34だけでなく後方収納部36にもクッション部材61を設けても良い。また、本実施形態では、前方収納部34の開口縁部37のうち、手や指を置きやすい部分にのみクッション部材61を設けたが、他の異なる実施形態では、前方収納部34の開口縁部37の全周を囲むようにしてクッション部材61を設けても良い。
【0051】
本実施形態では、クッション部材61の前面の左右方向中央部のみに下方に向かって拡径するテーパ部68を設けたが、他の異なる実施形態ではクッション部材61の前面の全体を下方に向かって拡径するテーパ状に形成しても良い。この場合には、クッション部材61の底面積を一層大きくすることが可能となり、これに伴ってクッション部材61の底面と前方収納部34の切り欠き部50との接触面積も一層大きくすることが可能となり、クッション部材61の倒れを一層効果的に防止することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、ゴム製のクッション部材61を用いたが、クッション部材61の材質はこれには限定されず、例えば弾性変形可能な樹脂材にて形成されたクッション部材61を用いても良い。本実施形態では、3個の突起71をくの字の折れ線上に配置したが、他の異なる実施形態では、4個以上の突起71をジグザグ状に配置しても良く、この場合にも、クッション部材61の倒れを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電動二輪車
30 バッテリボックス
33 バッテリ
34 前方収納部(バッテリ収納部)
37 開口縁部
40 突出部
41 放電端子(バッテリ側端子)
43 凹部
48 上端面
50 切り欠き部
61 クッション部材
78 給電端子(バッテリ収納部側端子)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力を動力源として走行する電動二輪車のバッテリボックスであって、
上向きの開口を備えて前記バッテリを挿脱可能なバッテリ収納部と、該バッテリ収納部の開口縁部に沿って設けられた弾性変形可能なクッション部材と、を備えていることを特徴とする電動二輪車のバッテリボックス。
【請求項2】
前記バッテリは上下に長い形状を成し、前記バッテリの周面にはバッテリ側端子を備えた突出部が設けられ、
該突出部に対応して前記バッテリ収納部に段状の凹部が設けられ、該凹部に前記バッテリ側端子と接続可能なバッテリ収納部側端子が設けられるとともに、前記凹部に対応する前記開口縁部に沿って前記クッション部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動二輪車のバッテリボックス。
【請求項3】
前記バッテリ収納部の上端面を前記凹部の底面の近傍まで切り欠き、この切り欠き部に前記クッション部材を配設したことを特徴とする請求項2に記載の電動二輪車のバッテリボックス。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66730(P2012−66730A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213994(P2010−213994)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】