説明

電動二輪車

【課題】モータや遠心クラッチの配置の最適化を図ったパワーユニットを備える電動二輪車を提供する。
【解決手段】回転軸75を車幅方向に指向させたモータMと、該モータMの回転駆動力を出力軸80に伝達する遠心クラッチCLとを含むパワーユニットPを有する電動二輪車1において、遠心クラッチCLをモータMと同軸配置する。出力軸80と同軸配置されて遠心クラッチCLから伝達される駆動力を出力軸80に伝達するプライマリドリブンギヤ49を備える。プライマリドリブンギヤ49を、回転軸75の軸方向で、遠心クラッチCLとモータMとの間に挟まれるように配設する。クラッチアウタ71を、回転軸75に対して相対回転可能なクラッチアウタホルダ74に固定し、プライマリドリブンギヤ49は、クラッチアウタホルダ74の外周部に形成されたプライマリドライブギヤ69に噛合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車に係り、特に、バッテリから供給される電力でモータを駆動して走行する電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータが内蔵されたパワーユニットを車体フレームに取り付け、モータの回転駆動力を駆動輪に伝達して走行するようにした電動二輪車が知られている。
【0003】
特許文献1には、車体フレームに揺動自在に軸支されるスイングアームの後端に駆動輪としての後輪が取り付けられ、パワーユニット内のモータの回転駆動力を、チェーンドライブ機構を介して後輪に伝達する電動二輪車が開示されている。このパワーユニットの内部には、動力源としてのモータと、駆動側プーリと従動側プーリの間にVベルトを巻き掛けてなる無段変速機と、モータの回転速度が所定回転を超えると接続状態に切り替わる遠心クラッチとが収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2988993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたパワーユニットでは、駆動側プーリと同軸位置にモータを配設すると共に従動側プーリと同軸位置に遠心クラッチを配設する構造を有する。この構造により、モータと遠心クラッチとが車体前後方向に配設されてパワーユニットの車幅方向寸法が低減される一方、モータと遠心クラッチが車体前後方向に並ぶために前後長が増加しやすいという課題があった。また、モータ出力が比較的小さい場合など、無段変速機を不要とするパワーユニットを構成する場合には、さらなる小型化を図るためにモータや遠心クラッチ等の配置に工夫を施すことが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、モータや遠心クラッチの配置の最適化を図ったパワーユニットを備える電動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、回転軸(75)を車幅方向に指向させたモータ(M)と、該モータ(M)の回転駆動力を前記回転軸(75)に対して平行に設けられた出力軸(80)に伝達する遠心クラッチ(CL)とを含むパワーユニット(P)を有する電動二輪車(1)において、前記遠心クラッチ(CL)は、前記モータ(M)と同軸配置されており、前記出力軸(80)と同軸配置されて、前記遠心クラッチ(CL)から伝達される駆動力を前記出力軸(80)に伝達するプライマリドリブンギヤ(49)を備え、前記プライマリドリブンギヤ(49)は、前記回転軸(75)の軸方向で、前記遠心クラッチ(CL)と前記モータ(M)との間に挟まれるように配設されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記回転軸(75)の一端部に、前記遠心クラッチ(CL)のクラッチシュー(82)を保持するクラッチプレート(73)が固定されており、前記クラッチプレート(73)に対して前記モータ(M)寄りの位置に、前記遠心クラッチ(CL)を構成する有底円筒状のクラッチアウタ(71)が配設されており、前記クラッチアウタ(71)は、前記回転軸(75)に対して相対回転可能なクラッチアウタホルダ(74)に固定されており、前記プライマリドリブンギヤ(49)は、前記クラッチアウタホルダ(74)の外周部に形成されたプライマリドライブギヤ(69)に噛合する点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記プライマリドリブンギヤ(49)は、その外形が前記回転軸(75)に近接するよう、車体側面視で、前記遠心クラッチ(CL)と重なるように配置されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記出力軸(80)は、前記遠心クラッチ(CL)の車体後方側で前記パワーユニット(P)からその一端部が車体外側へ突出するように配設されており、前記出力軸(80)の一端部に、ドライブチェーン(20)が巻き掛けられるドライブスプロケット(15)が固定されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記回転軸(80)は、互いに離間して配設される2つの軸受(79,81)によって支持されており、前記2つの軸受(79,81)のうち、前記ドライブスプロケット(15)に近接する側の軸受(79)が、前記遠心クラッチ(CL)の径方向外側に配設されている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記プライマリドライブギヤ(49)およびプライマリドリブンギヤ(69)は、電動二輪車(1)の車体中心線(O)上に配設されている点に第6の特徴がある。
【0013】
さらに、前記パワーユニット(P)は、ケース(50)の車幅方向の一方側にクラッチケース(51)を取り付けると共に、他方側にモータカバー(36)を取り付けた構成を有し、前記回転軸(75)は、前記ケース(50)に嵌合された軸受(68)および前記モータカバー(36)に嵌合された軸受(64)によって支持されており、前記出力軸(80)は、前記ケース(50)に嵌合された軸受(81)および前記クラッチケース(51)に嵌合された軸受(79)によって支持されている点に第7の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴によれば、遠心クラッチはモータと同軸配置されており、出力軸と同軸配置されて遠心クラッチから伝達される駆動力を出力軸に伝達するプライマリドリブンギヤを備え、プライマリドリブンギヤは、回転軸の軸方向で、遠心クラッチとモータとの間に挟まれるように配設されているので、遠心クラッチとモータとの間のスペースを有効活用してプライマリドリブンギヤを配設することにより、パワーユニットの車幅方向寸法を大幅に低減することが可能となる。
【0015】
第2の特徴によれば、回転軸の一端部に、遠心クラッチのクラッチシューを保持するクラッチプレートが固定されており、クラッチプレートに対してモータ寄りの位置に、遠心クラッチを構成する有底円筒状のクラッチアウタが配設されており、クラッチアウタは、回転軸に対して相対回転可能なクラッチアウタホルダに固定されており、プライマリドリブンギヤは、クラッチアウタホルダの外周部に形成されたプライマリドライブギヤに噛合するので、簡単な構成でパワーユニットおよび動力伝達系を構成することができる。
【0016】
第3の特徴によれば、プライマリドリブンギヤは、その外形が回転軸に近接するよう、車体側面視で、遠心クラッチと重なるように配置されているので、回転軸と出力軸とを近接配置でき、パワーユニットをよりコンパクトに構成することができる。
【0017】
第4の特徴によれば、出力軸は、遠心クラッチの車体後方側でパワーユニットからその一端部が車体外側へ突出するように配設されており、出力軸の一端部に、ドライブチェーンが巻き掛けられるドライブスプロケットが固定されているので、パワーユニットから駆動輪への動力伝達を簡単な構成で達成することができる。
【0018】
第5の特徴によれば、回転軸は、互いに離間して配設される2つの軸受によって支持されており、2つの軸受のうち、ドライブスプロケットに近接する側の軸受が、遠心クラッチの径方向外側に配設されているので、遠心クラッチとドライブスプロケットとの干渉を避けながら、ドライブスプロケットをケースの中心側に寄せて、パワーユニットの車幅方向の寸法を低減することができる。
【0019】
第6の特徴によれば、プライマリドライブギヤおよびプライマリドリブンギヤは、電動二輪車の車体中心線上に配設されているので、パワーユニットの車幅方向の重量バランスが取りやすく、電動二輪車の車幅方向の重量バランスを適正化することが容易となる。
【0020】
第7の特徴によれば、パワーユニットは、ケースの車幅方向の一方側にクラッチケースを取り付けると共に、他方側にモータカバーを取り付けた構成を有し、回転軸は、ケースに嵌合された軸受およびモータカバーに嵌合された軸受によって支持されており、出力軸は、ケースに嵌合された軸受およびクラッチケースに嵌合された軸受によって支持されているので、複数のケースおよびカバー部材を用いて、2本の軸を効率よく支持するパワーユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電動二輪車の左側面図である。
【図2】電動二輪車の斜視図である。
【図3】電動二輪車の左側面の一部拡大図である。
【図4】電動二輪車の右側面の一部拡大図である。
【図5】車体右前方から見たパワーユニット周辺の斜視図である。
【図6】車体右後方から見たパワーユニット周辺の斜視図である。
【図7】図4のA−A線断面図である。
【図8】自動二輪車の下面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るパワーユニットを車体右後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車1の左側面図である。また、図2は、電動二輪車1の斜視図である。電動二輪車1は、モータMおよび減速機構等を含むパワーユニットPを車体フレーム2に取り付け、該パワーユニットPが発揮する回転駆動力を、チェーンドライブ機構を介して後輪WRに伝達する構成を有する。
【0023】
電動二輪車1の車体フレーム2の前端には、ステムシャフト3aを回動自在に軸支するヘッドパイプ3が結合されている。ヘッドパイプ3から後方に伸びる車体フレーム2には、車体下方へ湾曲する部分にシートフレーム4が連結されており、その下方には、左右一対のピボットプレート5が連結されている。該ピボットプレート5には、スイングアーム19を揺動自在に軸支するピボット軸18が取り付けられている。
【0024】
前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク11は、ステムシャフト3aの上下に固定されたトップブリッジ9およびアンダブラケット10によって支持されている。トップブリッジ9の上部にはアップタイプのハンドル6が固定されており、アンダブラケット10の下部にはフロントフェンダ12が固定されている。
【0025】
車幅方向中央でトップブリッジ9の上面に固定されるハンドル6の両端部には、乗員が把持するハンドルグリップ20が取り付けられている。車幅方向右側のスロットルグリップ20は回動式のスロットル入力手段であり、その回動動作がスロットルケーブル7を介して、車体フレーム2の上部のスロットル開度センサ26に伝達される。ハンドル6の車幅方向中央には、GPS機能等を有する表示装置8が取り付けられている。
【0026】
パワーユニットPは、ピボット軸18近傍の支持部23および左右一対のハンガプレート28を介して車体フレーム2に支持されている。パワーユニットPの車幅方向左側には、出力軸80(図7参照)に固定されたドライブスプロケット15が配設されており、モータMの回転駆動力は、ドライブスプロケット15に巻き掛けられたドライブチェーン20を介して、後輪WRのドリブンスプロケット21に伝達される。
【0027】
スイングアーム19には、ドライブチェーン20の上部を覆うチェーンカバー33が取り付けられている。スイングアーム19は、ピボットプレート5のピボット軸18によって車体フレーム2に揺動可能に軸支されると共に、リヤクッション29を介して車体フレーム2の取付部27から吊り下げられている。車幅方向右側のピボットプレート5には、リヤブレーキペダル17が取り付けられている。
【0028】
パワーユニットPの車体前方上方で、かつ車体フレーム2の下部には、パワーユニットPに電力を供給するバッテリ13F,13Rおよび供給電力の制御装置としてのPDU(パワー・デリバリー・ユニット)14が配設されている。互いに同形状とされる前側バッテリ13Fおよび後側バッテリ13Rは、前後に並んで車体フレーム2の下部に近接配置されている。PDU14は、バッテリ13F,13Rより車体上下方向の寸法が小さい一方、バッテリ13F,13Rより車体前後方向および車幅方向の寸法が大きな略直方体とされ、パワーユニットPの前方でバッテリ13F,13Rの下部に近接配置されている。
【0029】
リヤフレーム4は、シート30、リヤフェンダ31およびリヤカバー32で覆われている。シート30の車体前方には、スロットル開度センサ26および電装部品25を覆う上部カバー24が配設されており、車体フレーム2および前側バッテリ13Fの側方にかけては、左右一対のサイドカバー22が配設されている。
【0030】
パワーユニットPにおいて、モータMの回転中心C1と、ドライブスプロケット15の回転中心C2とは、車体前後方向にほぼ水平をなすように配設されている。パワーユニットPの車幅方向右側には、車幅方向右側に突出するモータMを覆う有底円筒状のモータカバー36と、このモータカバー36の車体前方から車体下方にかけて配設される湾曲板状のモータガード37と、モータカバー36の車体後方で支持台35に支持される板状のヒールガード34とが配設されている。本発明に係る電動二輪車1においては、モータカバー36、モータガード37およびヒールガード34からなる3つの保護部材によってモータMを保護するように構成されている。なお、パワーユニットPの下面PB(図8参照)に取り付けられる左右一体の足乗せステップ16は、この下面を保護する機能も有する。
【0031】
図3は、電動二輪車1の左側面の一部拡大図である。前記したように、パワーユニットPは、ピボット軸18近傍の支持部23と、その上方に設けられるハンガプレート28とによって車体フレーム2に支持されている。略三角形状とされるハンガプレート28は、2本のボルト47で車体フレーム2に固定される一方、ボルト47aによってパワーユニットPの上部に固定されている。
【0032】
バッテリ13F,13Rは、取付ネジ45によって車体フレーム2に固定されるバッテリステー43に保持されている。PDU14は、バッテリステー43の下部に取付ネジ42で固定されるPDUステー41に保持されている。後側バッテリ13Fとハンガプレート28との間に形成されるスペースには、バッテリ13FおよびPDU14間、PDU14およびパワーユニットP間をそれぞれ接続する高圧配線44が取り回されるほか、各配線を接続するコネクタ46やヒューズ48等が配設されている。本実施形態では、前後バッテリ13F,13R、PDU14およびパワーユニットPがそれぞれ近接配置されるので、電動二輪車1のマスの集中が図られると共に、それぞれを接続する高圧配線の長さを短縮して伝達効率の向上が可能となる。
【0033】
パワーユニットPは、モータMと同軸配置される遠心クラッチCLと、ドライブスプロケット15と同軸配置される大径のプライマリドリブンギヤ49とを有している。モータMの回転駆動力は、遠心クラッチCLを介してプライマリドリブンギヤ49からドライブスプロケット15を経由して、ドライブチェーン20に伝達される。パワーユニットPの左側面PL(図示ハッチング部分)は略平坦な面とされ、この左側面PLからは、回転中心C1の周囲の小さな突出部77aおよびドライブスプロケット15のみが車幅方向左側に突出している。
【0034】
なお、前側バッテリ13Fの前方で車体フレーム2の下面には、イグニッションスイッチ40が設けられている。また、リヤブレーキペダル17は、車幅方向右側のピボットプレート5に設けられた支軸17aによって揺動自在に取り付けられている。
【0035】
図4は、電動二輪車1の右側面の一部拡大図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。後側バッテリ13とハンガプレート28との間に設けられるコネクタ53の下部には、モータMに電力を供給するためにパワーユニットPの内部に導かれる高圧配線54が接続される。高圧配線54は、パワーユニットPの車体前方上方かつPDU14との間の位置でパワーユニットPの内部に挿入される。換言すれば、PDU14からモータMに電力を供給する高圧配線54は、PDU14から延出し、バッテリ13F,13Rの下方かつ後方を経由して、ケース50の車体前方上方に配索されており、これにより、高圧配線54がバッテリ13F,13RとパワーユニットPとの間に配設され、高圧配線54を外乱から保護することが可能となる。
【0036】
パワーユニットPの一側面としての右側面PR(図示ハッチング部分)は略平坦な面とされているが、この右側面PRからは、モータMを覆うモータカバー36およびヒールガード34を支持する略円柱状の支持台35が、車幅方向右側に大きく突出している。ヒールガード34は、2つの取付ネジ56で支持台35に固定されると共に、車体後方側の取付ネジ56aによってピボットプレート5に固定されている。
【0037】
図5は、車体右前方から見たパワーユニットPの周辺の斜視図である。また、図6は、車体右後方から見た同斜視図である。パワーユニットPは、車幅方向中央のケース50に対して、車幅方向左側にクラッチケース51を取り付けると共に、車幅方向右側にモータカバー36を取り付けることで構成されている。本実施形態では、さらに、パワーユニットPの右側面PRに、モータガード37と、支持台35を介してヒールガード34が取付られることで、モータMの保護および乗員の利便性向上が図られている。
【0038】
具体的には、本実施形態に係るパワーユニットPにおいては、モータMの回転軸を車幅方向に指向させて配設するため、モータMの多くの部分がケース50の車幅方向右側に突出することとなる。この突出部分を覆うのが有底円筒状のモータカバー36である。また、モータガード37は、モータカバー36の車体前方から車体下方を保護するように右側面PRから立設するように取り付けられ、走行時のはね石等がモータカバー36に接触しないように構成されている。
【0039】
さらに、ヒールガード34は、右側面PRとモータカバー36との間に生じる段差に、足乗せステップ16に乗せた足のかかとが入り込むことを防ぐと共に、右側面PRにはね石等が接触する可能性を低減することを可能とする。本実施形態では、ヒールガード34は、その表面がモータカバー36の右側面と略面一となるように配設されており、これにより、継ぎ目に足が引っかかりにくいと共に、外観性を向上させることができる。また、本実施形態では、ヒールガード37の前方側がケース50の右側面PRに取り付けられる円柱状の支持台35に支持されているので、ヒールガード35の剛性が高められ、ヒールガード37によってケース50およびモータMをより一層保護しやすくなる。なお、ヒールガード34の支持台35の形状は種々の変形が可能であり、例えば、各取付ネジ56の位置に対応した細い2本の円柱部材等で構成してもよい。
【0040】
図7は、図4のA−A線断面図である。前記したように、パワーユニットPは、車幅方向中央のケース50に対して、車幅方向左側にクラッチケース51を取り付けると共に、車幅方向右側にモータカバー36を取り付けた構成を有する。
【0041】
モータMは、回転軸75に固定されたロータ63と、ケース50に固定されたステータ62とからなるインナーロータ式とされる。モータカバー36は、円筒状のモータMの大部分を覆うように、複数の取付ネジ36aを用いてケース50に固定される。モータカバー36がケース50に固定されることにより、パワーユニットPの車幅方向右側にモータMが収納されるモータ室90が形成されることとなる。
【0042】
モータMの回転軸75は、ケース50の車幅方向左側に嵌合された軸受68およびモータカバー36に嵌合された軸受64によって回転自在に軸支されている。モータ室90の車幅方向左側の側壁には、ホール素子等かなる回転速度センサがネジ67によって固定されており、ロータ63の図示左側の回転軸75には、磁石等からなる被検知体65を保持する保持具92が固定されている。保持具92とケース50との間には、環状のシール部材93が設けられている。
【0043】
一方、パワーユニットPの車幅方向左側には、クラッチケース51がケース50に固定されることにより、遠心クラッチCLおよび減速機構が収納される減速機室91が形成されている。遠心クラッチCLは、クラッチシュー82を保持するクラッチプレート73と、クラッチシュー82の外方を覆うように配設されるクラッチアウタ71とから構成されている。円盤状のクラッチプレート73は、回転軸75の図示左端部にナット77を用いて固定されている。クラッチプレート73に保持されるクラッチシュー82は、ウェイト72に作用する遠心力に応じて径方向外側に移動して、クラッチアウタ71の内周面に当接するように構成されている。
【0044】
クラッチアウタ71は、クラッチアウタホルダ74から径方向外側に延出するフランジ部70に対してリベット76によって固定されている。クラッチアウタホルダ74は、回転軸74と相対回転可能に構成されており、その図示右側にはプライマリドライブギヤ69が形成されている。そして、回転軸75の回転速度が所定値に達して遠心クラッチCLが接続状態に切り替わると、プライマリドライブギヤ69に回転駆動力が伝達されることとなる。
【0045】
プライマリドライブギヤ69に噛合するプライマリドリブンギヤ49は、出力軸80と一体的に構成されている。出力軸80は、ケース50に嵌合された軸受81と、クラッチアウタ51に嵌合された軸受79とによって回転自在に軸支されている。
【0046】
上記した構成によれば、プライマリドリブンギヤ49は、回転軸75の軸方向で遠心クラッチCLとモータMとの間に挟まれるように配置されることとなり、遠心クラッチとモータとの間のスペースを有効活用してプライマリドリブンギヤを配設し、パワーユニットPの車幅方向寸法を大幅に低減することが可能となる。
【0047】
出力軸80は、遠心クラッチCLの車体後方側でクラッチケース51からその一端部が突出して、この一端部にドライブスプロケット15が複数の取付ボルト78を用いて固定されている。また、本実施形態では、ドライブスプロケット15を可能な限り車体中央側に寄せて配設するため、出力軸80の軸受79を遠心クラッチCLの径方向外側の位置まで内側に追い込んでおり、これにより、ドライブスプロケット15と遠心クラッチCLとの干渉を避けながら、パワーユニットPの車幅方向の寸法を低減することができる。
【0048】
さらに、プライマリドライブギヤ49およびプライマリドリブンギヤ69を、電動二輪車1の車体中心線O上に配設することにより、パワーユニットPの車幅方向の重量バランスが取りやすく、車幅方向の重量バランスの適正化を容易としている。
【0049】
図8は、自動二輪車1の下面図である。足乗せステップ16は、車幅方向に延出するパイプ部と該パイプ部をパワーユニットPに取り付けるための板状の基部59とを一体に形成してなる。足乗せステップ16は、基部59を貫通する4本の取付ボルト60を用いて、ケース50の下面PBに固定されている。足乗せステップ16のパイプ部の両端には、可倒式の踏部16aが取り付けられる。
【0050】
本実施形態では、パワーユニットPの車幅方向寸法が、車体中心線Oを挟んで左右に概ね均等となるように構成されている。ケース50を挟んで、車幅方向左側にクラッチケース51が取り付けられ、一方、車幅方向右側には、モータカバー36、モータガード37およびヒールガード34が取り付けられることで車幅方向の重量バランスも保たれる。
【0051】
図9は、本発明の第2実施形態に係るパワーユニットPを車体右後方から見た斜視図である。本実施形態では、ヒールガード34の支持部材35を廃すると共に、右側面PRとヒールガード34との間のスペースにPDU14aを配置するように構成されている。PDU14aは、右側面PRに固定され、ヒールガード34は、PDU14aに対して取付ネジ56を用いて固定されている。この構成によれば、デッドスペースを有効活用すると共に、ヒールガード34によってPDU14aの保護も図ることが可能となる。
【0052】
なお、パワーユニットのケース、クラッチケース、モータカバー、モータガードおよびヒールガードの形状、モータ回転中心および出力軸回転中心の配置関係、バッテリおよびPDUの形状、モータおよび遠心クラッチの構造、足乗せステップの形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る上記構造は、電動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種電動車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…電動二輪車、2…車体フレーム、13F…前側バッテリ、13R…後側バッテリ、15…ドライブスプロケット、16…足乗せステップ、34…ヒールガード、35…支持台、36…モータカバー、37…モータガード、49…プライマリドリブンギヤ、50…ケース、51…クラッチケース、69…プライマリドライブギヤ、71…クラッチアウタ、73…クラッチプレート、74…クラッチアウタホルダ、75…回転軸、79,81…軸受、P…パワーユニット、PR…右側面(一側面)、PL…左側面、PB…下面、CL…遠心クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(75)を車幅方向に指向させたモータ(M)と、該モータ(M)の回転駆動力を前記回転軸(75)に対して平行に設けられた出力軸(80)に伝達する遠心クラッチ(CL)とを含むパワーユニット(P)を有する電動二輪車(1)において、
前記遠心クラッチ(CL)は、前記モータ(M)と同軸配置されており、
前記出力軸(80)と同軸配置されて、前記遠心クラッチ(CL)から伝達される駆動力を前記出力軸(80)に伝達するプライマリドリブンギヤ(49)を備え、
前記プライマリドリブンギヤ(49)は、前記回転軸(75)の軸方向で、前記遠心クラッチ(CL)と前記モータ(M)との間に挟まれるように配設されていることを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前記回転軸(75)の一端部に、前記遠心クラッチ(CL)のクラッチシュー(82)を保持するクラッチプレート(73)が固定されており、
前記クラッチプレート(73)に対して前記モータ(M)寄りの位置に、前記遠心クラッチ(CL)を構成する有底円筒状のクラッチアウタ(71)が配設されており、
前記クラッチアウタ(71)は、前記回転軸(75)に対して相対回転可能なクラッチアウタホルダ(74)に固定されており、
前記プライマリドリブンギヤ(49)は、前記クラッチアウタホルダ(74)の外周部に形成されたプライマリドライブギヤ(69)に噛合することを特徴とする請求項1に記載の電動二輪車。
【請求項3】
前記プライマリドリブンギヤ(49)は、その外形が前記回転軸(75)に近接するよう、車体側面視で、前記遠心クラッチ(CL)と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動二輪車。
【請求項4】
前記出力軸(80)は、前記遠心クラッチ(CL)の車体後方側で前記パワーユニット(P)からその一端部が車体外側へ突出するように配設されており、
前記出力軸(80)の一端部に、ドライブチェーン(20)が巻き掛けられるドライブスプロケット(15)が固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動二輪車。
【請求項5】
前記回転軸(80)は、互いに離間して配設される2つの軸受(79,81)によって支持されており、
前記2つの軸受(79,81)のうち、前記ドライブスプロケット(15)に近接する側の軸受(79)が、前記遠心クラッチ(CL)の径方向外側に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の電動二輪車。
【請求項6】
前記プライマリドライブギヤ(49)およびプライマリドリブンギヤ(69)は、電動二輪車(1)の車体中心線(O)上に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の電動二輪車。
【請求項7】
前記パワーユニット(P)は、ケース(50)の車幅方向の一方側にクラッチケース(51)を取り付けると共に、他方側にモータカバー(36)を取り付けた構成を有し、
前記回転軸(75)は、前記ケース(50)に嵌合された軸受(68)および前記モータカバー(36)に嵌合された軸受(64)によって支持されており、
前記出力軸(80)は、前記ケース(50)に嵌合された軸受(81)および前記クラッチケース(51)に嵌合された軸受(79)によって支持されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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