電動倍力装置
【課題】自動車のブレーキシステムの電動倍力装置において、構造上、マスタシリンダとの分離が容易となるようにする。
【解決手段】遊星歯車機構である差動伝達機構10のサンギヤ11にブレーキペダルPDを連結し、リングギヤ14に電動モータ8を連結し、プラネタリキャリア16に出力ロッド9を連結し、また、出力ロッド9をマスタシリンダ3のピストンに連結する。ブレーキペダルPDを操作してサンギヤ11を回転させると、プラネタリピニオン12が自転及び公転し、プラネタリキャリア16が回転して出力ロッド9を前進させ、ピストンを押圧してマスタシリンダ3に液圧を発生させる。このとき、サンギヤ11の回転に応じて電動モータ8を制御してリングギヤ14を回転させ、サンギヤ11に追従させることにより、プラネタリキャリア16の回転に電動モータ8のサーボ力を付与する。
【解決手段】遊星歯車機構である差動伝達機構10のサンギヤ11にブレーキペダルPDを連結し、リングギヤ14に電動モータ8を連結し、プラネタリキャリア16に出力ロッド9を連結し、また、出力ロッド9をマスタシリンダ3のピストンに連結する。ブレーキペダルPDを操作してサンギヤ11を回転させると、プラネタリピニオン12が自転及び公転し、プラネタリキャリア16が回転して出力ロッド9を前進させ、ピストンを押圧してマスタシリンダ3に液圧を発生させる。このとき、サンギヤ11の回転に応じて電動モータ8を制御してリングギヤ14を回転させ、サンギヤ11に追従させることにより、プラネタリキャリア16の回転に電動モータ8のサーボ力を付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキシステムに用いられる倍力装置において、例えば特許文献1に記載されたもののように、電動モータを倍力源として利用する電動倍力装置が知られている。この電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作と連動する入力ピストンの移動に応じて電動モータを駆動してボールネジ(回転直動変換機構)を介してマスタシリンダのピストンを推進し、所望の液圧を発生させて、各車輪のブレーキキャリパに供給する。このとき、ピストンを貫通してマスタシリンダの圧力室内に挿入される入力ピストンによって、マスタシリンダ内の液圧の一部を受圧することにより、制動時の反力の一部をブレーキペダルにフィードバックするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電動倍力装置では、マスタシリンダ内の液圧を入力ピストンによって直接受ける構造であるため、マスタシリンダとの分離が困難であり、設計の自由度が低いという問題がある。
【0005】
本発明は、構造上、マスタシリンダとの分離が容易な電動倍力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動倍力装置は、上記課題を解決するために、電動モータと、
ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動倍力装置によれば、マスタシリンダとの分離が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る電動倍力装置の右側面の縦断面図である。
【図2】図1に示す電動倍力装置の左側面の縦断面図である。
【図3】図1に示す電動倍力装置の正面の縦断面図である。
【図4】図1に示す電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す縦断面図である。
【図5】図1に示す電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す横縦断面図である。
【図6】図1に示す電動倍力装置の入出力特性を示すグラフ図である。
【図7】第2実施形態に係る電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す横断面図である。
【図8】第3実施形態に係る電動倍力装置の側面図である。
【図9】図8に示す電動倍力装置の正面図である。
【図10】図8に示す電動倍力装置の縦断面図である。
【図11】電動倍力装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図10に示す電動アシスト機構を車両用電動パワーステアリング装置に応用した場合の車両用電動パワーステアリング装置の概略構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示すパワーステアリング装置に組込まれた電動アシスト機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第1実施形態に係る電動倍力装置1について、図1乃至図6を参照して説明する。本第1実施形態に係る電動倍力装置1は、自動車のブレーキシステムに装着されるものであって、図1乃至図3に示すように、エンジンルームEと車室Cとの隔壁であるダッシュパネルDの車室C側に取付けられる電動アシスト機構2を備えている。この電動アシスト機構2は、ブレーキペダルPDに連結され、また、ダッシュパネルDを挟んでエンジンルームE側に取付けられたマスタシリンダ3に連結されている。
【0010】
マスタシリンダ3は、一般的な自動車の液圧ブレーキシステムに使用するタンデム型マスタシリンダと同様のものであり、ピストンPの前進により、プライマリポート4及びセカンダリポート5から2系統の液圧回路を介して各車輪のブレーキキャリパ等に液圧を供給して制動力を発生させる。また、ピストンPの後退時にリザーバ6から適宜、ブレーキ液を補充するようになっている。
【0011】
電動アシスト機構2は、ダッシュパネルDに取付けられるケース7の外側に設置される電動モータ8と、ケース7内に収容される差動伝達機構10とを備えており、ブレーキペダルPDの操作を回転入力で受けてマスタシリンダ3のピストンに連結する出力ロッド9へ倍力された力を出力するように構成されている。
【0012】
差動伝達機構10は、本実施形態においては遊星歯車機構であり、中心に配置され、ブレーキペダルPDに連結される第1入力軸となるサンギヤ11と、その周囲に噛合わされた3つのプラネタリピニオン12と、プラネタリピニオン12を回転可能に支持して出力軸となるプラネタリキャリア16と、3つのプラネタリピニオン12の周囲に噛合って第2入力軸となるリングギヤ14とから構成されている。これらサンギヤ11、プラネタリキャリア16、及びリングギヤ14の回転中心は同心上に配置されるようになっている。
【0013】
サンギヤ11は、その軸部11Aの両端部がケース7に形成された軸受部13に回転可能に支持されている。軸部11Aの一端側は、ブレーキペダルPDの基部が固定され、更に、他端側は、軸受部13を貫通してケース7の外部へ延ばされている。また、軸部11Aの他端側の先端部には、サンギヤ11の回転位置を検出する回転位置センサ15が設けられている。
【0014】
なお、本第1実施形態においては、軸部11Aの一端側に、ブレーキペダルPDの基部を直接固定させて連結しているが、ブレーキペダルPDの回動が軸部11Aの一端側に伝達されるようになっていれば、これ以外の連結構造としても良い。例えば、軸部11Aの一端側でブレーキペダルPDとの間に回転継手等を設けて軸部11Aの一端側とブレーキペダルPDの基部とを相対回転可能な構造とし、回転継手または軸部11Aの一端側とブレーキペダルPDの基部との間にブレーキペダルPDを踏み込む方向に当接する当接部を設け、ブレーキペダルPDの回動に軸部11Aを追従させるようにする一方、ブレーキペダルPDを操作しない状態で電動モータ8により軸部11Aが回動したときに当接部の当接部位が離間して軸部11Aのみが回動する連結構造としても良い。この場合には、ブレーキペダルPDの操作を伴わないブレーキ制御である車両安定性制御、アダプティッククルーズ制御や自動ブレーキ制御のときに、電動モータ8を駆動させたとしてもブレーキペダルPDが移動してしまうことがなく、運転者に違和感を与えることがない。
【0015】
3つのプラネタリピニオン12は、サンギヤ11のブレーキペダルPDの反対側に配置されたプラネタリキャリア16に固定された3つのプラネタリシャフト16Aにそれぞれ回転可能に支持されている。プラネタリキャリア16には、プラネタリシャフト16Aが固定された大径部17と、大径部17に隣接する小径部18と、小径部18から突出する中空の中空軸部19と、中空軸部19の先端部に形成されたピニオン部20とが同心上に一体的に形成されている。そして、プラネタリキャリア16は、小径部18がケース7の軸受部21にベアリング22によって回転可能に支持され、中空軸部19にサンギヤ11の軸部11Aが回転可能に挿通されている。
【0016】
リングギヤ14は、内周部に3つのプラネタリピニオン12に噛合う内歯23が形成されている。また、リングギヤ14の外周部には、電動モータ8のシャフト24に取付けられたウォームギヤ25と噛合う外歯26が形成されている。さらに、リングギヤ14の側部に形成された円筒部27がプラネタリキャリア16の大径部17にベアリング28によって回転可能に支持されている。
【0017】
電動モータ8には、ケース部8Aから延出するシャフト24が設けられている。ケース部8Aは、ケース7の外側に取付けられている。シャフト24は、ケース7を貫通して、その内部へ延ばされ、シャフト24に取付けられたウォームギヤ25がリングギヤ14の外歯26に噛合わされている。本実施形態においては、ウォームギヤ25とリングギヤ14の外歯26とにより、減速機構を構成している。シャフト24の先端部は、ケース7に形成された軸受部29によって回転可能に支持されている。
【0018】
出力ロッド9は、一端部がマスタシリンダ3に挿入されて、そのピストンPに当接して連結されている。また、出力ロッド9は、他端部がケース7に形成された案内部30に摺動可能に挿入されて、マスタシリンダ3の軸方向に沿って進退動可能に案内されるようになっている。出力ロッド9の軸方向中間部には、プラネタリキャリア16のピニオン部20に噛合うラック部31が形成されており、ピニオン部20とラック部31とからなる回転直動変換機構で本実施形態における出力機構を構成している。なお、例えば、ピストンP自体にラック部位が直接形成されるような場合には、このラック部位に噛合うピニオン部20が出力機構を構成することになる。このように、本第1実施形態においては、回転直動変換機構としてピニオン部20とラック部31とを用いるため、特許文献1のもののように、ボールねじを用いる必要がなく、部品点数の削減やコストの削減を図ることができるとともに、グリスの補充が容易でメンテナンス性が向上するようになっている。
【0019】
リングギヤ14に取付けられた一対の係止部32、33とサンギヤ11とともに回動するブレーキペダルPDとの間に、一対のオフセットバネ34,35(付勢手段;第1、第2バネ手段)が設けられている。これらのオフセットバネ34,35は、ブレーキペダルPDすなわちサンギヤ11とリングギヤ14とを一方へ相対回転させる方向及び他方へ相対回転させる方向にそれぞれバネ力を付与して、これらを図1に示すような中立位置に弾性的に保持している。
【0020】
なお、これらのオフセットバネ34,35の一方を省略して、1つの戻しバネによって、これらを所定位置に弾性的に保持するようにしてもよい。また、本実施形態においては、第1入力軸を構成するサンギヤ11と同様に回動するブレーキペダルPDを第1入力軸の一部として、このブレーキペダルPDと第2入力軸を構成するリングギヤ14との間に、付勢手段を構成する一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしている。しかし、このような構造に限らず、サンギヤ11とリングギヤ14との間に一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしても良い。また、出力軸を構成するプラネタリキャリア16とサンギヤ11との間、または、プラネタリキャリア16とブレーキペダルPDとの間に、一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしても良い。
【0021】
ブレーキペダルPDとケース7との間には、ブレーキペダルPDを図1に示す非制動位置に付勢する戻しバネ36が設けられている。
【0022】
図3に示すように、電動倍力装置1には、回転位置センサ15に加えて、電動モータ8のシャフト24の回転位置を検出するモータ回転位置センサ37が設けられ、更に、回転位置センサ15、モータ回転位置センサ37及びその他の必要な状態量(例えば、マスタシリンダ圧等)を検出する各種センサからの検出信号や、車両姿勢制御システムのECU及び車両制御システムのECUからの信号に基づいて電動モータ8の回転を制御するコントローラ38が設けられている。
【0023】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
運転者が制動を行なうために行なうブレーキペダルPDの操作(図1では図中左から右へ、図2では図中右から左への作動)によってサンギヤ11が回転する。このサンギヤ11の回転により、プラネタリピニオン12が自転しながら公転し、プラネタリピニオン12の公転に伴なってプラネタリキャリア16が回転する。プラネタリキャリア16が回転すると、そのピニオン部20とラック31との噛合いによって、出力ロッド9が前進してピストンを押圧し、マスタシリンダ3に液圧が発生する。そして、マスタシリンダ3の液圧が液圧回路を介して各車輪のブレーキキャリパ等に供給されて制動力を発生させる。
【0024】
このとき、コントローラ38は、サンギヤ11の回転をブレーキペダルPDの操作量として回転位置センサ15によって検出し、サンギヤ11の回転位置に応じて、サンギヤ11の回転量とリングギヤ14との回転量が等しくなるように電動モータ8を制御してシャフト24を回転させる。このシャフト24の回転によりウォームギヤ25と外歯26との噛合いで一定の減速比でリングギヤ14が回転する。このとき、サンギヤ11の回転角とリングギヤとの回転角とは等しくなり、相対変位ゼロの制御が行われることになる。そして、プラネタリピニオン12を自転及び公転させ、プラネタリキャリア16を回転させて、ブレーキペダルPDの操作によるサンギヤ11の回転に追従させる。これにより、ブレーキペダルPDの操作によるプラネタリキャリア16の回転力に電動モータ8のシャフト24の回転力を合成して出力ロッド8を推進する。このとき、ブレーキペダルPDの変位量である入力変位量と出力ロッド8の変位量である出力変位量との関係は、図6の線Xに示されるような特性となっている。
【0025】
このように出力ロッド8が推進すると、マスタシリンダ3のピストンPから出力ロッド9を介してプラネタリキャリア16に反力が作用する。この反力は、遊星歯車機構である差動伝達機構10によってリングギヤ14とサンギヤ11に減速比に基づく一定の割合で分配されるため、サンギヤ11に連結されたブレーキペダルPDの操作力が軽減されることになる。すなわち、上記の減速比に基づく一定の割合が電動倍力装置1および電動アシスト機構2における基本的な倍力比となる。本実施形態における差動伝達機構10では、遊星歯車機構の3つの入出力軸であるサンギヤ11と、リングギヤ14と、プラネタリキャリア16とが相互に差動運動を行い、サンギヤ11に連結されたブレーキペダルPDとリングギヤ14に連結された電動モータ8との回転力の配分は、遊星歯車機能の減速比によって決定することができ、サンギヤ11に対してリングギヤ14の配分を大きくし、その配分は、1対3乃至1対4程度とするとよい。この場合、本第1実施形態のブレーキペダルPDのペダル比は1対7乃至1対8となっている。
【0026】
このように、本実施形態においては、サンギヤ11によりブレーキペダルに連結される第1入力軸が構成されている。また、リングギヤ14により電動モータが連結される第2入力軸が構成されている。そして、プラネタリキャリア16により前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸が構成されている。なお、上記遊星歯車機構の3つの入出力軸であるサンギヤ11、リングギヤ14、及びプラネタリキャリア16と各接続要素であるブレーキペダルPD、電動モータ8、及び出力ロッド9との関係は上述したものが大きな減速比を取れる関係となっているが、これに限らず、減速比が小さくなるが、例えば、プラネタリキャリア16にブレーキペダルPDを連結し、サンギヤ11に出力ロッド9を接続するようにしても良い。この場合には、プラネタリキャリア16が第1入力軸を、サンギヤ11が出力軸を構成することになる。
【0027】
ここで、本実施形態における電動倍力装置1および電動アシスト機構2の入力変位量と出力変位量との関係は、上述したように入力変位量であるサンギヤ11の回転量に対してリングギヤ14の回転量を等しくする、相対変位ゼロの関係で作動させる場合以外に自由に変えることができる。すなわち、ブレーキペダルPDの変位量に対して出力ロッド9の変位量を変化させることができる。図6を参照して、ブレーキペダルPDの変位量(入力変位量;サンギヤ11の回転量)に対する出力ロッド9の変位量(出力変位量;プラネタリキャリア16の回転量)の関係を説明する。ブレーキペダルPDの変位量に対する出力ロッド9の変位量は比例するようになっている。その傾きは、電動モータ8の出力シャフト24の回転量(リングギヤ14の回転量)によって決まり、電動モータ8の回転量が大きいほど傾きが大きくなって図6の線Yで示すような特性となり、電動モータ8の回転量が小さいほど傾きが小さくなって図6の線Yで示すような特性となる。このように、ブレーキペダルPDの変位量に対して電動モータ8の回転量を大きくして出力ロッド9の変位量を大きくする、いわゆる進み制御を行なうことで、ブレーキアシスト制御が可能となる。また、ブレーキペダルPDの変位量に対して電動モータ8の回転量を小さくして出力ロッド9の変位量を小さくする、いわゆる遅れ制御を行なうことで、回生協調制御における減圧制御が可能となる。
【0028】
ここで、本第1実施形態における電動倍力装置1および電動アシスト機構2の入出力特性は、遊星歯車機構である差動伝達機構10の減速比に基づく倍力比となる。上述したようにサンギヤ11の回転量である入力変位量に対してリングギヤ14の回転量を等しくする、相対変位ゼロの関係で作動させる場合以外でも、差動伝達機構10の減速比が一定であるため基本的な倍力比は変化しない。上述したようなブレーキペダルPDの変位量に対して出力ロッド9の変位量を可変とする進み制御や遅れ制御を行なうとき、ブレーキペダルPDの操作によるサンギヤ11の回転位置に対するプラネタリキャリア16の追従位置が変化することで、ブレーキペダルPDに作用するオフセットバネ34,35のバネ力が加減することで入出力特性を変化させるにようになっている。
【0029】
具体的には、ブレーキアシスト制御を行なうための進み制御の場合には、ブレーキペダルPDの変位量よりも出力ロッド9の変位量が大きくなるため、マスタシリンダ3からのブレーキペダルPDに伝達される反力がブレーキペダルPDの変位量に対して増加することになる。しかし、出力ロッド9の変位量、すなわち電動モータ8により回動するリングギヤ14の回転量とブレーキペダルPDの変位量との相対変位量が大きくなるため、その相対変位量分だけ、オフセットばね34が短縮し、オフセットばね35が伸長して上記反力の増加分を相殺する方向のばね力(ブレーキペダルPDを踏み込む方向の力;ペダル操作力を増やす方向の力)を発生することになり、ブレーキペダルPDの変位量に対する反力が調整されるようになっている。
【0030】
また、回生協調制御を行なうための遅れ制御の場合には、ブレーキペダルPDの変位量よりも出力ロッド9の変位量が小さくなるため、マスタシリンダ3からのブレーキペダルPDに伝達される反力がブレーキペダルPDの変位量に対して減少することになる。しかし、出力ロッド9の変位量、すなわち電動モータ8により回動するリングギヤ14の回転量とブレーキペダルPDの変位量との相対変位量が小さくなるため、その相対変位量分だけ、オフセットばね34が伸長し、オフセットばね35が短縮して上記反力の減少分を相殺する方向のばね力(ブレーキペダルPDを開放する方向の力;ペダル操作力を押し戻す方向の力)を発生することになり、ブレーキペダルPDの変位量に対する反力が調整されるようになっている。
【0031】
このように、電動倍力装置1の入出力変位特性を変化させた場合でも、ブレーキペダルPDの操作に対する反力がオフセットバネ34,35によって調整されて、電動倍力装置1の入出力特性が変化しないようになる。したがって、入出力変位特性を変化させてブレーキアシスト制御、回生協調制御、ビルドアップ制御等の電動倍力装置によるブレーキ制御を、運転者にブレーキペダル反力の違和感を与えずに行なうことができるようになっている。本実施例においては、オフセットバネ34,35が付勢手段を構成している。
【0032】
なお、上述したオフセットバネ34,35は、必ずしも設ける必要はなく、オフセットバネ34,35を設けない場合に、コントローラ38が行なう電動モータ8の制御は、上述した相対変位ゼロの制御に限る必要もない。例えば、上述の進み制御を標準として、ブレーキペダルPDのショートストローク化を図り、ブレーキフィーリングの向上を図るようにしてもよい。
【0033】
また、電動モータ8、コントローラ38等の故障やウォームギヤ25と外歯26との噛み込み等により電動モータ8のシャフト24が回転不能となった場合、ウォームギヤ25と外歯26との噛合いにより、リングギヤ14が固定されることになる。しかしながら、この状態でも、ブレーキペダルPDの操作により、プラネタリピニオン12が自転しながら公転してプラネタリキャリア16を一定の減速比で回転させるので、出力ロッド9を前進させることで、マスタシリンダ2およびホイールシリンダを介して車両に制動力を発生させることができるようになっている。本実施形態においては、減速機構として逆効率のよくないウォーム機構を用いているため、電動モータ8の失陥時にブレーキペダルPDの操作力を電動モータ8側に逃がすことなく、上記操作力をロスせずに出力ロッド9に伝達することができる。
【0034】
上述したように本第1実施形態の電動倍力装置1においては、差動伝達機構10によって、マスタシリンダ3のピストンPからの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。このため、電動倍力装置1とマスタシリンダ3とを別々に組み立てられるので、製造効率が向上する。また、電動倍力装置1のメンテナンス時に、マスタシリンダ3内のブレーキ液を抜く必要がなく、整備が容易となる。さらに、入力変位量に対する出力変位量を可変にできるので、各種のブレーキ制御が可能となる。また、本第1実施形態の電動アシスト機構2においては、入力変位量に対する出力変位量を可変にすることができる。
【0035】
次に、第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上述の第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。図7に示すように、第2実施形態では、電動モータ8のシャフト24には、ウォームギヤ25の代りにピニオン39が取付けられ、ピニオン39は、リングギヤ14の外歯26に噛合わされている。これにより、電動モータ8の駆動力は、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26との噛合いによって減速されてリングギヤ14に伝達される。本第2実施形態においては、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26とにより、減速機構を構成している。このように、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26とを用いたことにより、電動モータ8が、差動伝達機構10の公転軸と電動モータ8の回転軸とが平行となるように配置されるため、第1実施形態に比して電動倍力装置1および電動アシスト機構2の重力方向の寸法を抑制することができ、車両搭載性が向上する。
【0036】
次に、第3実施形態について、図8乃至図10を参照して説明する。なお、上述の第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。図8乃至図10に示すように、本実施形態に係る電動倍力装置1´および電動アシスト機構2’では、差動伝達機構10において、リングギヤ14は、出力軸であり、その外歯26が出力ロッド9のラック31に噛合わされている。また、プラネタリキャリア16は、第2入力軸として、電動モータ8’のシャフト24’の回転が第1及び第2遊星歯車減速機構41、42を介して2段階に減速されて伝達されるようになっている。
【0037】
第1遊星歯車減速機構41は、電動モータ8’のシャフト24’に取付けられたサンギヤ43と、サンギヤ43の周囲に噛合わされた複数のプラネタリピニオン44と、サンギヤ43及びプラネタリピニオン44に隣接して回転可能に設けられてピニオンシャフト45によってプラネタリピニオン44を回転可能に支持するプラネタリキャリア46と、プラネタリキャリア46の外周部にベアリング47によって回転可能に支持されて複数のプラネタリピニオン44の外周部に噛合う内歯を有するリングギヤ48とを備えている。
【0038】
また、第2遊星歯車減速機構42は、第1遊星歯車減速機構41のプラネタリキャリア46に取付けられたサンギヤ49と、サンギヤ49の周囲に噛合わされた複数のプラネタリピニオン50と、サンギヤ49及びプラネタリピニオン50に隣接して回転可能に設けられてピニオンシャフト51によってプラネタリピニオン50を回転可能に支持するプラネタリキャリア52と、プラネタリキャリア52の外周部にベアリング53によって回転可能に支持されて複数のプラネタリピニオン50の外周部に噛合う内歯を有するリングギヤ54とを備えている。
【0039】
そして、第2遊星歯車減速機構42のプラネタリキャリア52と差動伝達機構10のプラネタリキャリア16とがシャフト55によって連結され、また、第1及び第2遊星歯車機構41、42のリングギヤ48、54は、固定されている。これにより、電動モータ8’のシャフト24’の回転が第1及び第2遊星歯車機構41、42によって所定の減速比で2段階に減速されて差動伝達機構10のプラネタリキャリア16に伝達される。
【0040】
そして、オフセットバネ34,35は、ブレーキペダルPDとリングギヤ14との間に設けられ、コントローラ38は、ブレーキペダルPDの操作量、すなわち、サンギヤ11の回転位置に応じて電動モータ8’を制御してリングギヤ14をサンギヤ11の回転に追従させる。これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、第1及び第2遊星歯車機構41、42を設けたことにより、第1、2実施形態に比して電動モータ8’の体格を小さくすることが可能となり、電動倍力装置1’および電動アシスト機構2’の小型化を図ることができる。
【0041】
次に、電動倍力装置の構成要素について図11を参照して説明する。なお、上記第1乃至第3実施形態に対して、対応する構成要素には適宜同じ参照符号を用いて説明する。図13に示すように、電動倍力装置(1)は、電動モータ(8)と、ブレーキペダル(2)に連結される第1入力軸(11)と、電動モータ(8)が連結される第2入力軸(14)と、第1入力軸(11)の回転力と第2入力軸(14)の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸(16)とを有し、第1、第2入力軸(11、14)及び出力軸(16)が互いに差動運動する差動伝達機構(10)と、出力軸(16)の回転を直線運動に変換してマスタシリンダ(3)のピストンを推進する出力機構(20、31)と備えている。このうち、電動モータ(8)と、ブレーキペダル(2)に連結される第1入力軸(11)と、電動モータ(8)が連結される第2入力軸(14)と、第1入力軸(11)の回転力と第2入力軸(14)の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸(16)とを有し、第1、第2入力軸(11、14)及び出力軸(16)が互いに差動運動する差動伝達機構(10)と、出力軸(16)とにより、電動アシスト機構2が構成されるようになっている。
【0042】
このため、電動倍力装置(1)においては、差動伝達機構(10)によってマスタシリンダ(3)のピストン(P)からの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。差動伝達機構(10)の第2入力軸(14)と電動モータ(8)との間に減速機構(14、25)を介装してもよい。このようにした場合には、電動モータ(8)の体格を小さくすることが可能となり、電動倍力装置の小型化を図ることができる。
【0043】
そして、ブレーキペダル(2)が操作されたとき、その操作量(第1入力軸(11)の回転量)を位置センサ(15)によって検出して、位置センサ(15)が検出する操作量(変位量)に応じて制御装置(38)によって第1入力軸(11)の回転量に応じて電動モータ(8)の駆動を制御する。詳細には、位置センサ(15)が検出する操作量により、所望の制動力(減速度若しくは制動液圧)を算出し、算出した制動力となるように電動モータ(8)のシャフト(24)の回転位置をフィードバック制御する。このような制御により、ブレーキペダル(2)の操作力と電動モータ(8)の回転力とを差動伝達機構(10)によって合成して出力し、更に、出力機構(20、31)によって直線運動に変換し、マスタシリンダ(3)のピストンを前進させて、液圧を発生させ、この液圧を各車輪のブレーキキャリパ等へ供給して制動力を付加するようになっている。なお、電動倍力装置(1)の制御は、上述した電動モータ(8)の回転位置制御に限らず、マスタシリンダ(3)に圧力センサ(70)を設け、その液圧に基づいて制御装置(38)によりフィードバック制御を行なうこともできる。
【0044】
電動倍力装置(1)の構成要素として、上記第1実施形態では、差動減速機構10として遊星歯車機構を用いて、サンギヤ11及びリングギヤ14を第1及び第2入力軸とし、プラネタリキャリア16を出力軸としている。また、減速機構として、外歯14及びウォームギヤ25を用い、回転直動変換機構として、ピニオン部20及びラック部31(ラックピニオン機構)を用いている。また、第2実施形態では、減速機構として、外歯14及びピニオン39(平歯車)を用いている。
【0045】
上記第3実施形態では、差動伝達機構10として遊星歯車機構を用いて、サンギヤ11及びプラネタリキャリア16をそれぞれ第1及び第2入力軸とし、リングギヤ16を出力軸としている。また、減速機構として、第1及び第2遊星歯車減速機構41、42を用い、回転直動変換機構として、外歯26及びラック部31(ラックピニオン機構)を用いている。
【0046】
このほか、本発明では、例えば、差動伝達機構(10)としては、上述の遊星歯車機構のほか、ボール減速機構、波動減速機構等を用いることができる。このうちボール減速機構を差動伝達機構として用いた場合には、一般的に現行の車両に搭載されている気圧式倍力装置の倍力比と同等の例えば1対7〜8の減速比を設定することができ、現行の車両のブレーキペダルのペダル比を変えずに車両に電動倍力装置(1)を搭載することができる。減速機構(14、25)としては、上述のウォーム歯車機構及び遊星歯車機構のほか、ボール減速機構、波動減速機構を用いることができる。なお、この減速機構(14、25)を省略して電動モータ(8)によって差動伝達機構(10)の第2入力軸(14)を直接駆動してもよい。また、回転直動変換機構である出力機構(20、31)として、上述のラックピニオン機構のほか、ボールネジ機構、ネジ機構、リンク機構等を用いることができる。
【0047】
上記各実施形態による電動倍力装置は、電動モータと、ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えている。このような構成により、差動伝達機構によって、マスタシリンダのピストンからの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。このため、電動倍力装置とマスタシリンダとを別々に組み立てられるので、製造効率が向上する。また、電動倍力装置のメンテナンス時に、マスタシリンダ内のブレーキ液を抜く必要がなく、整備が容易となる。さらに、入力変位量に対する出力変位量を可変にできるので、各種のブレーキ制御が可能となる。
【0048】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構は、前記第1入力軸に対して前記第2入力軸の回転力の配分が大きくなっている。このような構成により、マスタシリンダのピストンからの反力のうちブレーキペダルへ分配反力が小さくなり、好適な倍力比を実現しうる電動倍力装置を提供することができる。
【0049】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構は、遊星歯車機構となっている。このような構成により、比較的簡易な構造で電動倍力装置を製造することができ、製造効率が向上する。
【0050】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構(遊星歯車機構)の前記第1入力軸と前記第2入力軸との回転力の配分は、1対3乃至1対4となっている。
【0051】
上記各実施形態によれば、第1、第2入力軸及び出力軸の各回転中心は、同心上に配置されている。このような構成により、比較的コンパクトな差動伝達機構を使用することが可能となり、電動倍力装置を小型化することができる。
【0052】
上記各実施形態によれば、第1入力軸の回転量に対して第2入力軸の回転量が等しくなるように前記電動モータの回転を制御するようにしている。
【0053】
上記各実施形態によれば、第1入力軸と第2入力軸または出力軸との間に、これらの相対回転位置を中立位置に弾性的に付勢する付勢手段を設けている。このような構成により、電動倍力装置の入出力変位特性を変化させた場合でも、ブレーキペダルの操作に対する反力が付勢手段によって調整されて、電動倍力装置の入出力特性が変化しないようになる。したがって、入出力変位特性を変化させてブレーキアシスト制御、回生協調制御、ビルドアップ制御等の電動倍力装置によるブレーキ制御を、運転者にブレーキペダル反力の違和感を与えずに行なうことができるようになっている。
【0054】
上記各実施形態によれば、付勢手段は、第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に設けられて、これらを一方に相対回転させる方向に付勢する第1バネ手段と他方に相対回転させる方向に付勢する第2バネ手段とからなっている。
【0055】
上記各実施形態によれば、第2入力軸と電動モータとの間に減速機構が設けられている。この減速機構により、電動モータの大形化を抑制することができ、ひいては、電動倍力装置の小型化を図ることができる。
【0056】
上記第3実施形態に示した電動アシスト機構2´は、ブレーキシステム以外へ応用例することが可能である。例えば、電動アシスト機構2”を自動車の電動パワーステアリング装置に装着した場合の参考技術について、図12及び図13を参照して説明する。なお、上記第3実施形態における電動アシスト機構2’に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0057】
図12に示すように、電動パワーステアリング装置60は、自動車の操舵車輪(一般的には前輪)を操舵するためのものであって、ステアリングホイール61の回転を自在継手62A、62Bを有するステアリングコラムシャフト62(入力部材)を介してステアリングギヤ装置63に伝達し、ステアリングラック64の車体左右方向の移動に変換し、ステアリングラック64の両端部に連結されたタイロッドを介してサスペンション装置のナックルを回動させることにより、ナックルに支持された車輪を操舵する。
【0058】
ステアリングギヤ装置63は、ステアリングギヤケース65内において、車体左右方向に移動可能に支持されたステアリングラック64(出力部材)のラック部64Aに電動倍力装置1´のリングギヤ14の外歯26を噛合わせて、リングギヤ14の回転により、ステアリングラック64を車体左右方向に移動させるようにしたものであり、電動倍力装置1´のサンギヤ11の軸部11Aにステアリングコラムシャフト62の先端部が連結されている。
【0059】
これにより、ステアリングホイール61の回転に対して、電動モータ8を制御してリングギヤ14をサンギヤ11の回転に追従させることにより、ステアリングラック64の移動に電動モータ8による一定比率(ステアリングギア装置63の減速比)のサーボ力を付与することができる。また、ステアリングホイール61の操作量を回転位置センサ66で検出し、検出された操作量に対してECU67が電動モータ8を制御することでリングギヤ14の回転量を可変にすることができる。このため、ステアリングホイール61の操作量に応じてリングギヤ14の回転量を加減させることで、ステアリングラック64への可変変位量制御ができて、車両の走行状態に合わせてステアリングホイール61の操作量を調整することができる。
【0060】
ここで、電動パワーステアリング装置においては、特開2005−112025号公報に示されるように、ステアリングホイールの操作量に対してステアリングラックの移動量を可変にする伝達比可変機構を有するものがある。しかし、このような伝達比可変機構を有する電動パワーステアリング装置では、伝達比可変用の電動モータとステアリングアシスト用の電動モータとの2つの電動モータを設けているため、構造が煩雑で生産効率が良くないという問題がある。本参考技術のように電動パワーステアリング装置60の電動アシスト機構2”を用いることで、1つの電動モータによって、ステアリングホイール61の操作量に対してリングギヤ14の回転量、すなわち操舵角を可変にすることができ、構造が簡素で生産効率が向上するという効果を奏する。
【0061】
なお、上記電動アシスト機構2,2’は、上述したように電動パワーステアリング装置のほか、人間の操作力を電動で助力する装置、例えば電動アシスト自転車等に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電動倍力装置、2 電動アシスト機構、3 マスタシリンダ、8 電動モータ、10 差動伝達機構、11 サンギヤ、14 リングギヤ、16 プラネタリキャリア、26 外歯、31 ラック部、PD ブレーキペダル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキシステムに用いられる倍力装置において、例えば特許文献1に記載されたもののように、電動モータを倍力源として利用する電動倍力装置が知られている。この電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作と連動する入力ピストンの移動に応じて電動モータを駆動してボールネジ(回転直動変換機構)を介してマスタシリンダのピストンを推進し、所望の液圧を発生させて、各車輪のブレーキキャリパに供給する。このとき、ピストンを貫通してマスタシリンダの圧力室内に挿入される入力ピストンによって、マスタシリンダ内の液圧の一部を受圧することにより、制動時の反力の一部をブレーキペダルにフィードバックするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電動倍力装置では、マスタシリンダ内の液圧を入力ピストンによって直接受ける構造であるため、マスタシリンダとの分離が困難であり、設計の自由度が低いという問題がある。
【0005】
本発明は、構造上、マスタシリンダとの分離が容易な電動倍力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動倍力装置は、上記課題を解決するために、電動モータと、
ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動倍力装置によれば、マスタシリンダとの分離が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る電動倍力装置の右側面の縦断面図である。
【図2】図1に示す電動倍力装置の左側面の縦断面図である。
【図3】図1に示す電動倍力装置の正面の縦断面図である。
【図4】図1に示す電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す縦断面図である。
【図5】図1に示す電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す横縦断面図である。
【図6】図1に示す電動倍力装置の入出力特性を示すグラフ図である。
【図7】第2実施形態に係る電動倍力装置の要部である差動伝達機構を示す横断面図である。
【図8】第3実施形態に係る電動倍力装置の側面図である。
【図9】図8に示す電動倍力装置の正面図である。
【図10】図8に示す電動倍力装置の縦断面図である。
【図11】電動倍力装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図10に示す電動アシスト機構を車両用電動パワーステアリング装置に応用した場合の車両用電動パワーステアリング装置の概略構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示すパワーステアリング装置に組込まれた電動アシスト機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第1実施形態に係る電動倍力装置1について、図1乃至図6を参照して説明する。本第1実施形態に係る電動倍力装置1は、自動車のブレーキシステムに装着されるものであって、図1乃至図3に示すように、エンジンルームEと車室Cとの隔壁であるダッシュパネルDの車室C側に取付けられる電動アシスト機構2を備えている。この電動アシスト機構2は、ブレーキペダルPDに連結され、また、ダッシュパネルDを挟んでエンジンルームE側に取付けられたマスタシリンダ3に連結されている。
【0010】
マスタシリンダ3は、一般的な自動車の液圧ブレーキシステムに使用するタンデム型マスタシリンダと同様のものであり、ピストンPの前進により、プライマリポート4及びセカンダリポート5から2系統の液圧回路を介して各車輪のブレーキキャリパ等に液圧を供給して制動力を発生させる。また、ピストンPの後退時にリザーバ6から適宜、ブレーキ液を補充するようになっている。
【0011】
電動アシスト機構2は、ダッシュパネルDに取付けられるケース7の外側に設置される電動モータ8と、ケース7内に収容される差動伝達機構10とを備えており、ブレーキペダルPDの操作を回転入力で受けてマスタシリンダ3のピストンに連結する出力ロッド9へ倍力された力を出力するように構成されている。
【0012】
差動伝達機構10は、本実施形態においては遊星歯車機構であり、中心に配置され、ブレーキペダルPDに連結される第1入力軸となるサンギヤ11と、その周囲に噛合わされた3つのプラネタリピニオン12と、プラネタリピニオン12を回転可能に支持して出力軸となるプラネタリキャリア16と、3つのプラネタリピニオン12の周囲に噛合って第2入力軸となるリングギヤ14とから構成されている。これらサンギヤ11、プラネタリキャリア16、及びリングギヤ14の回転中心は同心上に配置されるようになっている。
【0013】
サンギヤ11は、その軸部11Aの両端部がケース7に形成された軸受部13に回転可能に支持されている。軸部11Aの一端側は、ブレーキペダルPDの基部が固定され、更に、他端側は、軸受部13を貫通してケース7の外部へ延ばされている。また、軸部11Aの他端側の先端部には、サンギヤ11の回転位置を検出する回転位置センサ15が設けられている。
【0014】
なお、本第1実施形態においては、軸部11Aの一端側に、ブレーキペダルPDの基部を直接固定させて連結しているが、ブレーキペダルPDの回動が軸部11Aの一端側に伝達されるようになっていれば、これ以外の連結構造としても良い。例えば、軸部11Aの一端側でブレーキペダルPDとの間に回転継手等を設けて軸部11Aの一端側とブレーキペダルPDの基部とを相対回転可能な構造とし、回転継手または軸部11Aの一端側とブレーキペダルPDの基部との間にブレーキペダルPDを踏み込む方向に当接する当接部を設け、ブレーキペダルPDの回動に軸部11Aを追従させるようにする一方、ブレーキペダルPDを操作しない状態で電動モータ8により軸部11Aが回動したときに当接部の当接部位が離間して軸部11Aのみが回動する連結構造としても良い。この場合には、ブレーキペダルPDの操作を伴わないブレーキ制御である車両安定性制御、アダプティッククルーズ制御や自動ブレーキ制御のときに、電動モータ8を駆動させたとしてもブレーキペダルPDが移動してしまうことがなく、運転者に違和感を与えることがない。
【0015】
3つのプラネタリピニオン12は、サンギヤ11のブレーキペダルPDの反対側に配置されたプラネタリキャリア16に固定された3つのプラネタリシャフト16Aにそれぞれ回転可能に支持されている。プラネタリキャリア16には、プラネタリシャフト16Aが固定された大径部17と、大径部17に隣接する小径部18と、小径部18から突出する中空の中空軸部19と、中空軸部19の先端部に形成されたピニオン部20とが同心上に一体的に形成されている。そして、プラネタリキャリア16は、小径部18がケース7の軸受部21にベアリング22によって回転可能に支持され、中空軸部19にサンギヤ11の軸部11Aが回転可能に挿通されている。
【0016】
リングギヤ14は、内周部に3つのプラネタリピニオン12に噛合う内歯23が形成されている。また、リングギヤ14の外周部には、電動モータ8のシャフト24に取付けられたウォームギヤ25と噛合う外歯26が形成されている。さらに、リングギヤ14の側部に形成された円筒部27がプラネタリキャリア16の大径部17にベアリング28によって回転可能に支持されている。
【0017】
電動モータ8には、ケース部8Aから延出するシャフト24が設けられている。ケース部8Aは、ケース7の外側に取付けられている。シャフト24は、ケース7を貫通して、その内部へ延ばされ、シャフト24に取付けられたウォームギヤ25がリングギヤ14の外歯26に噛合わされている。本実施形態においては、ウォームギヤ25とリングギヤ14の外歯26とにより、減速機構を構成している。シャフト24の先端部は、ケース7に形成された軸受部29によって回転可能に支持されている。
【0018】
出力ロッド9は、一端部がマスタシリンダ3に挿入されて、そのピストンPに当接して連結されている。また、出力ロッド9は、他端部がケース7に形成された案内部30に摺動可能に挿入されて、マスタシリンダ3の軸方向に沿って進退動可能に案内されるようになっている。出力ロッド9の軸方向中間部には、プラネタリキャリア16のピニオン部20に噛合うラック部31が形成されており、ピニオン部20とラック部31とからなる回転直動変換機構で本実施形態における出力機構を構成している。なお、例えば、ピストンP自体にラック部位が直接形成されるような場合には、このラック部位に噛合うピニオン部20が出力機構を構成することになる。このように、本第1実施形態においては、回転直動変換機構としてピニオン部20とラック部31とを用いるため、特許文献1のもののように、ボールねじを用いる必要がなく、部品点数の削減やコストの削減を図ることができるとともに、グリスの補充が容易でメンテナンス性が向上するようになっている。
【0019】
リングギヤ14に取付けられた一対の係止部32、33とサンギヤ11とともに回動するブレーキペダルPDとの間に、一対のオフセットバネ34,35(付勢手段;第1、第2バネ手段)が設けられている。これらのオフセットバネ34,35は、ブレーキペダルPDすなわちサンギヤ11とリングギヤ14とを一方へ相対回転させる方向及び他方へ相対回転させる方向にそれぞれバネ力を付与して、これらを図1に示すような中立位置に弾性的に保持している。
【0020】
なお、これらのオフセットバネ34,35の一方を省略して、1つの戻しバネによって、これらを所定位置に弾性的に保持するようにしてもよい。また、本実施形態においては、第1入力軸を構成するサンギヤ11と同様に回動するブレーキペダルPDを第1入力軸の一部として、このブレーキペダルPDと第2入力軸を構成するリングギヤ14との間に、付勢手段を構成する一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしている。しかし、このような構造に限らず、サンギヤ11とリングギヤ14との間に一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしても良い。また、出力軸を構成するプラネタリキャリア16とサンギヤ11との間、または、プラネタリキャリア16とブレーキペダルPDとの間に、一対のオフセットバネ34,35を設けるようにしても良い。
【0021】
ブレーキペダルPDとケース7との間には、ブレーキペダルPDを図1に示す非制動位置に付勢する戻しバネ36が設けられている。
【0022】
図3に示すように、電動倍力装置1には、回転位置センサ15に加えて、電動モータ8のシャフト24の回転位置を検出するモータ回転位置センサ37が設けられ、更に、回転位置センサ15、モータ回転位置センサ37及びその他の必要な状態量(例えば、マスタシリンダ圧等)を検出する各種センサからの検出信号や、車両姿勢制御システムのECU及び車両制御システムのECUからの信号に基づいて電動モータ8の回転を制御するコントローラ38が設けられている。
【0023】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
運転者が制動を行なうために行なうブレーキペダルPDの操作(図1では図中左から右へ、図2では図中右から左への作動)によってサンギヤ11が回転する。このサンギヤ11の回転により、プラネタリピニオン12が自転しながら公転し、プラネタリピニオン12の公転に伴なってプラネタリキャリア16が回転する。プラネタリキャリア16が回転すると、そのピニオン部20とラック31との噛合いによって、出力ロッド9が前進してピストンを押圧し、マスタシリンダ3に液圧が発生する。そして、マスタシリンダ3の液圧が液圧回路を介して各車輪のブレーキキャリパ等に供給されて制動力を発生させる。
【0024】
このとき、コントローラ38は、サンギヤ11の回転をブレーキペダルPDの操作量として回転位置センサ15によって検出し、サンギヤ11の回転位置に応じて、サンギヤ11の回転量とリングギヤ14との回転量が等しくなるように電動モータ8を制御してシャフト24を回転させる。このシャフト24の回転によりウォームギヤ25と外歯26との噛合いで一定の減速比でリングギヤ14が回転する。このとき、サンギヤ11の回転角とリングギヤとの回転角とは等しくなり、相対変位ゼロの制御が行われることになる。そして、プラネタリピニオン12を自転及び公転させ、プラネタリキャリア16を回転させて、ブレーキペダルPDの操作によるサンギヤ11の回転に追従させる。これにより、ブレーキペダルPDの操作によるプラネタリキャリア16の回転力に電動モータ8のシャフト24の回転力を合成して出力ロッド8を推進する。このとき、ブレーキペダルPDの変位量である入力変位量と出力ロッド8の変位量である出力変位量との関係は、図6の線Xに示されるような特性となっている。
【0025】
このように出力ロッド8が推進すると、マスタシリンダ3のピストンPから出力ロッド9を介してプラネタリキャリア16に反力が作用する。この反力は、遊星歯車機構である差動伝達機構10によってリングギヤ14とサンギヤ11に減速比に基づく一定の割合で分配されるため、サンギヤ11に連結されたブレーキペダルPDの操作力が軽減されることになる。すなわち、上記の減速比に基づく一定の割合が電動倍力装置1および電動アシスト機構2における基本的な倍力比となる。本実施形態における差動伝達機構10では、遊星歯車機構の3つの入出力軸であるサンギヤ11と、リングギヤ14と、プラネタリキャリア16とが相互に差動運動を行い、サンギヤ11に連結されたブレーキペダルPDとリングギヤ14に連結された電動モータ8との回転力の配分は、遊星歯車機能の減速比によって決定することができ、サンギヤ11に対してリングギヤ14の配分を大きくし、その配分は、1対3乃至1対4程度とするとよい。この場合、本第1実施形態のブレーキペダルPDのペダル比は1対7乃至1対8となっている。
【0026】
このように、本実施形態においては、サンギヤ11によりブレーキペダルに連結される第1入力軸が構成されている。また、リングギヤ14により電動モータが連結される第2入力軸が構成されている。そして、プラネタリキャリア16により前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸が構成されている。なお、上記遊星歯車機構の3つの入出力軸であるサンギヤ11、リングギヤ14、及びプラネタリキャリア16と各接続要素であるブレーキペダルPD、電動モータ8、及び出力ロッド9との関係は上述したものが大きな減速比を取れる関係となっているが、これに限らず、減速比が小さくなるが、例えば、プラネタリキャリア16にブレーキペダルPDを連結し、サンギヤ11に出力ロッド9を接続するようにしても良い。この場合には、プラネタリキャリア16が第1入力軸を、サンギヤ11が出力軸を構成することになる。
【0027】
ここで、本実施形態における電動倍力装置1および電動アシスト機構2の入力変位量と出力変位量との関係は、上述したように入力変位量であるサンギヤ11の回転量に対してリングギヤ14の回転量を等しくする、相対変位ゼロの関係で作動させる場合以外に自由に変えることができる。すなわち、ブレーキペダルPDの変位量に対して出力ロッド9の変位量を変化させることができる。図6を参照して、ブレーキペダルPDの変位量(入力変位量;サンギヤ11の回転量)に対する出力ロッド9の変位量(出力変位量;プラネタリキャリア16の回転量)の関係を説明する。ブレーキペダルPDの変位量に対する出力ロッド9の変位量は比例するようになっている。その傾きは、電動モータ8の出力シャフト24の回転量(リングギヤ14の回転量)によって決まり、電動モータ8の回転量が大きいほど傾きが大きくなって図6の線Yで示すような特性となり、電動モータ8の回転量が小さいほど傾きが小さくなって図6の線Yで示すような特性となる。このように、ブレーキペダルPDの変位量に対して電動モータ8の回転量を大きくして出力ロッド9の変位量を大きくする、いわゆる進み制御を行なうことで、ブレーキアシスト制御が可能となる。また、ブレーキペダルPDの変位量に対して電動モータ8の回転量を小さくして出力ロッド9の変位量を小さくする、いわゆる遅れ制御を行なうことで、回生協調制御における減圧制御が可能となる。
【0028】
ここで、本第1実施形態における電動倍力装置1および電動アシスト機構2の入出力特性は、遊星歯車機構である差動伝達機構10の減速比に基づく倍力比となる。上述したようにサンギヤ11の回転量である入力変位量に対してリングギヤ14の回転量を等しくする、相対変位ゼロの関係で作動させる場合以外でも、差動伝達機構10の減速比が一定であるため基本的な倍力比は変化しない。上述したようなブレーキペダルPDの変位量に対して出力ロッド9の変位量を可変とする進み制御や遅れ制御を行なうとき、ブレーキペダルPDの操作によるサンギヤ11の回転位置に対するプラネタリキャリア16の追従位置が変化することで、ブレーキペダルPDに作用するオフセットバネ34,35のバネ力が加減することで入出力特性を変化させるにようになっている。
【0029】
具体的には、ブレーキアシスト制御を行なうための進み制御の場合には、ブレーキペダルPDの変位量よりも出力ロッド9の変位量が大きくなるため、マスタシリンダ3からのブレーキペダルPDに伝達される反力がブレーキペダルPDの変位量に対して増加することになる。しかし、出力ロッド9の変位量、すなわち電動モータ8により回動するリングギヤ14の回転量とブレーキペダルPDの変位量との相対変位量が大きくなるため、その相対変位量分だけ、オフセットばね34が短縮し、オフセットばね35が伸長して上記反力の増加分を相殺する方向のばね力(ブレーキペダルPDを踏み込む方向の力;ペダル操作力を増やす方向の力)を発生することになり、ブレーキペダルPDの変位量に対する反力が調整されるようになっている。
【0030】
また、回生協調制御を行なうための遅れ制御の場合には、ブレーキペダルPDの変位量よりも出力ロッド9の変位量が小さくなるため、マスタシリンダ3からのブレーキペダルPDに伝達される反力がブレーキペダルPDの変位量に対して減少することになる。しかし、出力ロッド9の変位量、すなわち電動モータ8により回動するリングギヤ14の回転量とブレーキペダルPDの変位量との相対変位量が小さくなるため、その相対変位量分だけ、オフセットばね34が伸長し、オフセットばね35が短縮して上記反力の減少分を相殺する方向のばね力(ブレーキペダルPDを開放する方向の力;ペダル操作力を押し戻す方向の力)を発生することになり、ブレーキペダルPDの変位量に対する反力が調整されるようになっている。
【0031】
このように、電動倍力装置1の入出力変位特性を変化させた場合でも、ブレーキペダルPDの操作に対する反力がオフセットバネ34,35によって調整されて、電動倍力装置1の入出力特性が変化しないようになる。したがって、入出力変位特性を変化させてブレーキアシスト制御、回生協調制御、ビルドアップ制御等の電動倍力装置によるブレーキ制御を、運転者にブレーキペダル反力の違和感を与えずに行なうことができるようになっている。本実施例においては、オフセットバネ34,35が付勢手段を構成している。
【0032】
なお、上述したオフセットバネ34,35は、必ずしも設ける必要はなく、オフセットバネ34,35を設けない場合に、コントローラ38が行なう電動モータ8の制御は、上述した相対変位ゼロの制御に限る必要もない。例えば、上述の進み制御を標準として、ブレーキペダルPDのショートストローク化を図り、ブレーキフィーリングの向上を図るようにしてもよい。
【0033】
また、電動モータ8、コントローラ38等の故障やウォームギヤ25と外歯26との噛み込み等により電動モータ8のシャフト24が回転不能となった場合、ウォームギヤ25と外歯26との噛合いにより、リングギヤ14が固定されることになる。しかしながら、この状態でも、ブレーキペダルPDの操作により、プラネタリピニオン12が自転しながら公転してプラネタリキャリア16を一定の減速比で回転させるので、出力ロッド9を前進させることで、マスタシリンダ2およびホイールシリンダを介して車両に制動力を発生させることができるようになっている。本実施形態においては、減速機構として逆効率のよくないウォーム機構を用いているため、電動モータ8の失陥時にブレーキペダルPDの操作力を電動モータ8側に逃がすことなく、上記操作力をロスせずに出力ロッド9に伝達することができる。
【0034】
上述したように本第1実施形態の電動倍力装置1においては、差動伝達機構10によって、マスタシリンダ3のピストンPからの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。このため、電動倍力装置1とマスタシリンダ3とを別々に組み立てられるので、製造効率が向上する。また、電動倍力装置1のメンテナンス時に、マスタシリンダ3内のブレーキ液を抜く必要がなく、整備が容易となる。さらに、入力変位量に対する出力変位量を可変にできるので、各種のブレーキ制御が可能となる。また、本第1実施形態の電動アシスト機構2においては、入力変位量に対する出力変位量を可変にすることができる。
【0035】
次に、第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上述の第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。図7に示すように、第2実施形態では、電動モータ8のシャフト24には、ウォームギヤ25の代りにピニオン39が取付けられ、ピニオン39は、リングギヤ14の外歯26に噛合わされている。これにより、電動モータ8の駆動力は、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26との噛合いによって減速されてリングギヤ14に伝達される。本第2実施形態においては、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26とにより、減速機構を構成している。このように、ピニオン39とリングギヤ14の外歯26とを用いたことにより、電動モータ8が、差動伝達機構10の公転軸と電動モータ8の回転軸とが平行となるように配置されるため、第1実施形態に比して電動倍力装置1および電動アシスト機構2の重力方向の寸法を抑制することができ、車両搭載性が向上する。
【0036】
次に、第3実施形態について、図8乃至図10を参照して説明する。なお、上述の第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。図8乃至図10に示すように、本実施形態に係る電動倍力装置1´および電動アシスト機構2’では、差動伝達機構10において、リングギヤ14は、出力軸であり、その外歯26が出力ロッド9のラック31に噛合わされている。また、プラネタリキャリア16は、第2入力軸として、電動モータ8’のシャフト24’の回転が第1及び第2遊星歯車減速機構41、42を介して2段階に減速されて伝達されるようになっている。
【0037】
第1遊星歯車減速機構41は、電動モータ8’のシャフト24’に取付けられたサンギヤ43と、サンギヤ43の周囲に噛合わされた複数のプラネタリピニオン44と、サンギヤ43及びプラネタリピニオン44に隣接して回転可能に設けられてピニオンシャフト45によってプラネタリピニオン44を回転可能に支持するプラネタリキャリア46と、プラネタリキャリア46の外周部にベアリング47によって回転可能に支持されて複数のプラネタリピニオン44の外周部に噛合う内歯を有するリングギヤ48とを備えている。
【0038】
また、第2遊星歯車減速機構42は、第1遊星歯車減速機構41のプラネタリキャリア46に取付けられたサンギヤ49と、サンギヤ49の周囲に噛合わされた複数のプラネタリピニオン50と、サンギヤ49及びプラネタリピニオン50に隣接して回転可能に設けられてピニオンシャフト51によってプラネタリピニオン50を回転可能に支持するプラネタリキャリア52と、プラネタリキャリア52の外周部にベアリング53によって回転可能に支持されて複数のプラネタリピニオン50の外周部に噛合う内歯を有するリングギヤ54とを備えている。
【0039】
そして、第2遊星歯車減速機構42のプラネタリキャリア52と差動伝達機構10のプラネタリキャリア16とがシャフト55によって連結され、また、第1及び第2遊星歯車機構41、42のリングギヤ48、54は、固定されている。これにより、電動モータ8’のシャフト24’の回転が第1及び第2遊星歯車機構41、42によって所定の減速比で2段階に減速されて差動伝達機構10のプラネタリキャリア16に伝達される。
【0040】
そして、オフセットバネ34,35は、ブレーキペダルPDとリングギヤ14との間に設けられ、コントローラ38は、ブレーキペダルPDの操作量、すなわち、サンギヤ11の回転位置に応じて電動モータ8’を制御してリングギヤ14をサンギヤ11の回転に追従させる。これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、第1及び第2遊星歯車機構41、42を設けたことにより、第1、2実施形態に比して電動モータ8’の体格を小さくすることが可能となり、電動倍力装置1’および電動アシスト機構2’の小型化を図ることができる。
【0041】
次に、電動倍力装置の構成要素について図11を参照して説明する。なお、上記第1乃至第3実施形態に対して、対応する構成要素には適宜同じ参照符号を用いて説明する。図13に示すように、電動倍力装置(1)は、電動モータ(8)と、ブレーキペダル(2)に連結される第1入力軸(11)と、電動モータ(8)が連結される第2入力軸(14)と、第1入力軸(11)の回転力と第2入力軸(14)の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸(16)とを有し、第1、第2入力軸(11、14)及び出力軸(16)が互いに差動運動する差動伝達機構(10)と、出力軸(16)の回転を直線運動に変換してマスタシリンダ(3)のピストンを推進する出力機構(20、31)と備えている。このうち、電動モータ(8)と、ブレーキペダル(2)に連結される第1入力軸(11)と、電動モータ(8)が連結される第2入力軸(14)と、第1入力軸(11)の回転力と第2入力軸(14)の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸(16)とを有し、第1、第2入力軸(11、14)及び出力軸(16)が互いに差動運動する差動伝達機構(10)と、出力軸(16)とにより、電動アシスト機構2が構成されるようになっている。
【0042】
このため、電動倍力装置(1)においては、差動伝達機構(10)によってマスタシリンダ(3)のピストン(P)からの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。差動伝達機構(10)の第2入力軸(14)と電動モータ(8)との間に減速機構(14、25)を介装してもよい。このようにした場合には、電動モータ(8)の体格を小さくすることが可能となり、電動倍力装置の小型化を図ることができる。
【0043】
そして、ブレーキペダル(2)が操作されたとき、その操作量(第1入力軸(11)の回転量)を位置センサ(15)によって検出して、位置センサ(15)が検出する操作量(変位量)に応じて制御装置(38)によって第1入力軸(11)の回転量に応じて電動モータ(8)の駆動を制御する。詳細には、位置センサ(15)が検出する操作量により、所望の制動力(減速度若しくは制動液圧)を算出し、算出した制動力となるように電動モータ(8)のシャフト(24)の回転位置をフィードバック制御する。このような制御により、ブレーキペダル(2)の操作力と電動モータ(8)の回転力とを差動伝達機構(10)によって合成して出力し、更に、出力機構(20、31)によって直線運動に変換し、マスタシリンダ(3)のピストンを前進させて、液圧を発生させ、この液圧を各車輪のブレーキキャリパ等へ供給して制動力を付加するようになっている。なお、電動倍力装置(1)の制御は、上述した電動モータ(8)の回転位置制御に限らず、マスタシリンダ(3)に圧力センサ(70)を設け、その液圧に基づいて制御装置(38)によりフィードバック制御を行なうこともできる。
【0044】
電動倍力装置(1)の構成要素として、上記第1実施形態では、差動減速機構10として遊星歯車機構を用いて、サンギヤ11及びリングギヤ14を第1及び第2入力軸とし、プラネタリキャリア16を出力軸としている。また、減速機構として、外歯14及びウォームギヤ25を用い、回転直動変換機構として、ピニオン部20及びラック部31(ラックピニオン機構)を用いている。また、第2実施形態では、減速機構として、外歯14及びピニオン39(平歯車)を用いている。
【0045】
上記第3実施形態では、差動伝達機構10として遊星歯車機構を用いて、サンギヤ11及びプラネタリキャリア16をそれぞれ第1及び第2入力軸とし、リングギヤ16を出力軸としている。また、減速機構として、第1及び第2遊星歯車減速機構41、42を用い、回転直動変換機構として、外歯26及びラック部31(ラックピニオン機構)を用いている。
【0046】
このほか、本発明では、例えば、差動伝達機構(10)としては、上述の遊星歯車機構のほか、ボール減速機構、波動減速機構等を用いることができる。このうちボール減速機構を差動伝達機構として用いた場合には、一般的に現行の車両に搭載されている気圧式倍力装置の倍力比と同等の例えば1対7〜8の減速比を設定することができ、現行の車両のブレーキペダルのペダル比を変えずに車両に電動倍力装置(1)を搭載することができる。減速機構(14、25)としては、上述のウォーム歯車機構及び遊星歯車機構のほか、ボール減速機構、波動減速機構を用いることができる。なお、この減速機構(14、25)を省略して電動モータ(8)によって差動伝達機構(10)の第2入力軸(14)を直接駆動してもよい。また、回転直動変換機構である出力機構(20、31)として、上述のラックピニオン機構のほか、ボールネジ機構、ネジ機構、リンク機構等を用いることができる。
【0047】
上記各実施形態による電動倍力装置は、電動モータと、ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えている。このような構成により、差動伝達機構によって、マスタシリンダのピストンからの反力が分配されるようになっているため、従来のように反力分配のために入力ピストンをマスタシリンダの圧力室内に挿入する必要がなく、マスタシリンダとの分離が容易となる。このため、電動倍力装置とマスタシリンダとを別々に組み立てられるので、製造効率が向上する。また、電動倍力装置のメンテナンス時に、マスタシリンダ内のブレーキ液を抜く必要がなく、整備が容易となる。さらに、入力変位量に対する出力変位量を可変にできるので、各種のブレーキ制御が可能となる。
【0048】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構は、前記第1入力軸に対して前記第2入力軸の回転力の配分が大きくなっている。このような構成により、マスタシリンダのピストンからの反力のうちブレーキペダルへ分配反力が小さくなり、好適な倍力比を実現しうる電動倍力装置を提供することができる。
【0049】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構は、遊星歯車機構となっている。このような構成により、比較的簡易な構造で電動倍力装置を製造することができ、製造効率が向上する。
【0050】
上記各実施形態によれば、差動伝達機構(遊星歯車機構)の前記第1入力軸と前記第2入力軸との回転力の配分は、1対3乃至1対4となっている。
【0051】
上記各実施形態によれば、第1、第2入力軸及び出力軸の各回転中心は、同心上に配置されている。このような構成により、比較的コンパクトな差動伝達機構を使用することが可能となり、電動倍力装置を小型化することができる。
【0052】
上記各実施形態によれば、第1入力軸の回転量に対して第2入力軸の回転量が等しくなるように前記電動モータの回転を制御するようにしている。
【0053】
上記各実施形態によれば、第1入力軸と第2入力軸または出力軸との間に、これらの相対回転位置を中立位置に弾性的に付勢する付勢手段を設けている。このような構成により、電動倍力装置の入出力変位特性を変化させた場合でも、ブレーキペダルの操作に対する反力が付勢手段によって調整されて、電動倍力装置の入出力特性が変化しないようになる。したがって、入出力変位特性を変化させてブレーキアシスト制御、回生協調制御、ビルドアップ制御等の電動倍力装置によるブレーキ制御を、運転者にブレーキペダル反力の違和感を与えずに行なうことができるようになっている。
【0054】
上記各実施形態によれば、付勢手段は、第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に設けられて、これらを一方に相対回転させる方向に付勢する第1バネ手段と他方に相対回転させる方向に付勢する第2バネ手段とからなっている。
【0055】
上記各実施形態によれば、第2入力軸と電動モータとの間に減速機構が設けられている。この減速機構により、電動モータの大形化を抑制することができ、ひいては、電動倍力装置の小型化を図ることができる。
【0056】
上記第3実施形態に示した電動アシスト機構2´は、ブレーキシステム以外へ応用例することが可能である。例えば、電動アシスト機構2”を自動車の電動パワーステアリング装置に装着した場合の参考技術について、図12及び図13を参照して説明する。なお、上記第3実施形態における電動アシスト機構2’に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0057】
図12に示すように、電動パワーステアリング装置60は、自動車の操舵車輪(一般的には前輪)を操舵するためのものであって、ステアリングホイール61の回転を自在継手62A、62Bを有するステアリングコラムシャフト62(入力部材)を介してステアリングギヤ装置63に伝達し、ステアリングラック64の車体左右方向の移動に変換し、ステアリングラック64の両端部に連結されたタイロッドを介してサスペンション装置のナックルを回動させることにより、ナックルに支持された車輪を操舵する。
【0058】
ステアリングギヤ装置63は、ステアリングギヤケース65内において、車体左右方向に移動可能に支持されたステアリングラック64(出力部材)のラック部64Aに電動倍力装置1´のリングギヤ14の外歯26を噛合わせて、リングギヤ14の回転により、ステアリングラック64を車体左右方向に移動させるようにしたものであり、電動倍力装置1´のサンギヤ11の軸部11Aにステアリングコラムシャフト62の先端部が連結されている。
【0059】
これにより、ステアリングホイール61の回転に対して、電動モータ8を制御してリングギヤ14をサンギヤ11の回転に追従させることにより、ステアリングラック64の移動に電動モータ8による一定比率(ステアリングギア装置63の減速比)のサーボ力を付与することができる。また、ステアリングホイール61の操作量を回転位置センサ66で検出し、検出された操作量に対してECU67が電動モータ8を制御することでリングギヤ14の回転量を可変にすることができる。このため、ステアリングホイール61の操作量に応じてリングギヤ14の回転量を加減させることで、ステアリングラック64への可変変位量制御ができて、車両の走行状態に合わせてステアリングホイール61の操作量を調整することができる。
【0060】
ここで、電動パワーステアリング装置においては、特開2005−112025号公報に示されるように、ステアリングホイールの操作量に対してステアリングラックの移動量を可変にする伝達比可変機構を有するものがある。しかし、このような伝達比可変機構を有する電動パワーステアリング装置では、伝達比可変用の電動モータとステアリングアシスト用の電動モータとの2つの電動モータを設けているため、構造が煩雑で生産効率が良くないという問題がある。本参考技術のように電動パワーステアリング装置60の電動アシスト機構2”を用いることで、1つの電動モータによって、ステアリングホイール61の操作量に対してリングギヤ14の回転量、すなわち操舵角を可変にすることができ、構造が簡素で生産効率が向上するという効果を奏する。
【0061】
なお、上記電動アシスト機構2,2’は、上述したように電動パワーステアリング装置のほか、人間の操作力を電動で助力する装置、例えば電動アシスト自転車等に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電動倍力装置、2 電動アシスト機構、3 マスタシリンダ、8 電動モータ、10 差動伝達機構、11 サンギヤ、14 リングギヤ、16 プラネタリキャリア、26 外歯、31 ラック部、PD ブレーキペダル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、
前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項2】
前記差動伝達機構は、前記第1入力軸に対して前記第2入力軸の回転力の配分が大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動倍力装置。
【請求項3】
前記差動伝達機構は、遊星歯車機構であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動倍力装置。
【請求項4】
前記差動伝達機構の前記第1入力軸と前記第2入力軸との回転力の配分は、1対3乃至1対4であることを特徴とする請求項3に記載の電動倍力装置。
【請求項5】
前記第1、第2入力軸及び前記出力軸の各回転中心は、同心上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項6】
前記第1入力軸の回転量に対して前記第2入力軸の回転量が等しくなるように前記電動モータの回転を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項7】
前記第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に、これらの相対回転位置を中立位置に弾性的に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項8】
前記付勢手段は、前記第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に設けられて、これらを一方に相対回転させる方向に付勢する第1バネ手段と他方に相対回転させる方向に付勢する第2バネ手段とからなることを特徴とする請求項7に記載の電動倍力装置。
【請求項9】
前記第2入力軸と前記電動モータとの間に減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項1】
電動モータと、
ブレーキペダルに連結される第1入力軸と、前記電動モータが連結される第2入力軸と、前記第1入力軸の回転力と第2入力軸の回転力とを合成した回転力を出力する出力軸とを有し、前記第1、第2入力軸及び前記出力軸が互いに差動運動する差動伝達機構と、
前記出力軸の回転を直線運動に変換してマスタシリンダのピストンを推進する出力機構と備えていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項2】
前記差動伝達機構は、前記第1入力軸に対して前記第2入力軸の回転力の配分が大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動倍力装置。
【請求項3】
前記差動伝達機構は、遊星歯車機構であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動倍力装置。
【請求項4】
前記差動伝達機構の前記第1入力軸と前記第2入力軸との回転力の配分は、1対3乃至1対4であることを特徴とする請求項3に記載の電動倍力装置。
【請求項5】
前記第1、第2入力軸及び前記出力軸の各回転中心は、同心上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項6】
前記第1入力軸の回転量に対して前記第2入力軸の回転量が等しくなるように前記電動モータの回転を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項7】
前記第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に、これらの相対回転位置を中立位置に弾性的に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項8】
前記付勢手段は、前記第1入力軸と前記第2入力軸または前記出力軸との間に設けられて、これらを一方に相対回転させる方向に付勢する第1バネ手段と他方に相対回転させる方向に付勢する第2バネ手段とからなることを特徴とする請求項7に記載の電動倍力装置。
【請求項9】
前記第2入力軸と前記電動モータとの間に減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電動倍力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−93472(P2011−93472A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250929(P2009−250929)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]