説明

電動圧縮機の中継接続構造

【課題】インバータ装置と電動機とをハウジングの隔壁に設けられた中継ターミナルにそれぞれのケーブルを介して接続されたクラスタを装着させて電気的に接続する構成において、クラスタの抜け止めを確実に行う。
【解決手段】中継ターミナル46のターミナルピン50に装着されるインバータ側クラスタ43と電動機側クラスタ45の少なくとも一方について、中継ターミナルへのクラスタの取付後に組み付けられる部材によって、背面のクリアランスがターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定される。電動機側クラスタは、駆動軸を支持するブロック部材5によって、また、インバータ側クラスタは、インバータ収容室32を閉塞する蓋部材35によって、それぞれ背面のクリアランスが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機構と電動機とが内蔵されているハウジングの外周にインバータ装置を一体に組み付けて構成される電動圧縮機に採用され、インバータ装置と電動機とを電気的に接続するために用いられる中継接続構造に関し、特に、インバータ装置と電動機とのそれぞれにケーブルを介して接続されたクラスタを中継ターミナルに装着して電気的に接続する電動圧縮機の中継接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動圧縮機として、下記する特許文献1及び2に示されるものが公知となっている。
このうち、特許文献1に示されるものは、モータ一体型コンプレッサにおいて、外部電力をモータに取り込む入力端子を、ステータの外周面に配置されて接線方向に延びる雌端子を備えたクラスタと、雌端子と導通される雄端子を備えたハーメチック端子(中継ターミナル)とを有して構成したもので、このような構成とすることで、モータ及びコンプレッサを収容するハウジングの半径方向長さ及び軸方向長さの増加を抑えるようにしたものである。
【0003】
また、特許文献2に示されるものは、電動圧縮機の端子構造に関するもので、密閉端子に挿抜される接続端子ユニットを、電動機のコイルエンド上などの密閉端子と対向する位置に固定し、密閉端子を密閉容器に装着固定することにより端子ピンを接続端子ユニットの貫通孔に挿入させてケーブルの端子と接続するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42409号公報
【特許文献2】特開2004−176682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したいずれの構成も、クラスタはステータに固定されているため、運転中に振動があってもクラスタがこれに装着する端子ピンから抜けることはないが、クラスタの固定位置に精度が要求され、また、クラスタの取り付け自由度が低くなる不都合がある。しかも、クラスタの設置箇所が限定されるため、ハウジング等の設計自由度は限定されるものであった。
このようなクラスタは、ターミナルピンへの装着作業性を考えると、できるだけ自由に動くようにしておくことが望ましく、その上でクラスタが圧縮機の運転中に抜けることがないようにしておくことが望ましい。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、圧縮機構と電動機とが内蔵されているハウジングの外周にインバータ装置が一体に組み付けられて構成される電動圧縮機のインバータ装置と電動機とを電気的に接続する中継接続構造に関し、インバータ装置と電動機とのそれぞれのケーブルに設けられたクラスタを中継ターミナルに装着して電気的に接続する場合に、クラスタの取付自由度を高くすると共に、クラスタが圧縮機の運転中にターミナルピンから抜けることを確実に防止することが可能な電動圧縮機の中継接続構造を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る電動圧縮機の中継接続構造は、ハウジング内に圧縮機構とこの圧縮機構を駆動する電動機とを備え、前記ハウジングに前記電動機を作動させるインバータ装置が設けられ、前記インバータ装置にケーブルを介して接続されるインバータ側クラスタと前記電動機にケーブルを介して接続される電動機側クラスタとを、前記ハウジングに形成された隔壁に設けられる中継ターミナル(ハーメチック端子)のターミナルピンに前記隔壁に対して互いに反対側から装着することで前記インバータ装置と前記電動機とを電気的に接続し、前記インバータ側クラスタと前記電動機側クラスタの少なくとも一方は、その背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されていることを特徴としている。
【0008】
ここで、インバータ側クラスタと電動機側クラスタの少なくとも一方の背面のクリアランスがターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満であるとは、ターミナルのターミナルピンにクラスタを挿抜する際にクラスタをターミナルピンの先端から挿抜方向に移動させて装着させるまでの移動量、換言すれば、ターミナルピンに装着状態にあるクラスタを挿抜方向に移動させてターミナルピンの先端から外れるまでの移動量よりもクラスタ背面のクリアランスが小さく設定されてクラスタがターミナルピンから抜けることがない状態を維持することをいう。
【0009】
したがって、電動圧縮機の運転中に圧縮機が振動してクラスタがターミナルピンからの抜け方向に移動する場合においても、クラスタ背面のクリアランスはターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されているので、クラスタがターミナルピンから抜けることなく接続状態を保つことが可能となる。
【0010】
ここで、前記インバータ側クラスタと前記電動機側クラスタの少なくとも一方は、前記中継ターミナル(ハーメチック端子)への取付後に組み付けられる部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定するとよい。
【0011】
このような構成においては、クラスタ背面のクリアランスが、クラスタの中継ターミナル(ハーメチック端子)への取付後に組み付けられる部材に依存することになるが、後から組付けられる部材の形状を調整することで、クリアランスを調整することが可能となる。
【0012】
例えば、中継ターミナルに装着される電動機側クラスタは、ハウジング内に配される部材、例えば、ハウジング内の前記圧縮機構と前記電動機との間で駆動軸を支持するブロック部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されるようにしてもよい。
【0013】
また、中継ターミナルに装着されるインバータ側クラスタは、前記ハウジングに形成された前記インバータ装置を収容するインバータ収容室を閉塞するための蓋部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されるようにしてもよい。
【0014】
尚、中継ターミナルは、プレート部と、このプレート部から略垂直に両側へ突出した導電性のターミナルピンとから構成され、前記プレート部は、前記ハウジングの軸方向に対して傾斜させるように前記隔壁に取り付けるようにしてもよい。このような構成とすることで、中継ターミナルの取付箇所を駆動軸の軸方向に短くすることが可能となる。
【0015】
さらに、中継ターミナルは、インバータ装置を収容するインバータ収容室を画成する壁部のうち、ハウジングの軸方向で互いに対向する側壁部の一方に近接して設けられ、前記側壁部の内面を窪ませることによりそこに前記プレート部の一部を挿入させたり、プレート部とインバータ装置のインバータ回路基板とを、ハウジングの軸方向でオーバーラップさせるようにするとよい。このような構成によれば、圧縮機の軸方向の寸法を短くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、本発明によれば、インバータ装置にケーブルを介して接続されるインバータ側クラスタと電動機にケーブルを介して接続される電動機側クラスタとを、ハウジングに形成された隔壁に設けられる中継ターミナルのターミナルピンに装着する構成とし、インバータ側クラスタと電動機側クラスタとの少なくとも一方の背面のクリアランスをターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定するようにしたので、クラスタの取付自由度を高くすると共に、電動圧縮機の運転中に圧縮機が振動してクラスタがターミナルピンの抜け方向に移動する場合においても、クラスタがターミナルピンから抜けることを確実に防止すること可能となる。
【0017】
また、インバータ側クラスタと電動機側クラスタの少なくとも一方について、中継ターミナルへの取付後に組み付けられる部材によって背面のクリアランスがターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定される構成とすれば、クラスタのターミナルピンへの取付後に組み付けられる部材によって、クラスタ背後のクリアランスを調整することが可能となる。
【0018】
さらに、中継ターミナルを、プレート部と、このプレート部から略垂直に両側へ突出した導電性のターミナルピンとを有して構成する場合には、中継ターミナルのプレート部をハウジングに形成された隔壁にハウジングの軸方向に対して傾斜させて取り付けたり、インバータ収容室を画成する軸方向で互いに対向する側壁部の一方の内面を窪ませ、そこにプレート部の一部を挿入させるようにしたり、プレート部とインバータ装置のインバータ回路基板とをハウジングの軸方向でオーバーラップさせるようにすることで、圧縮機の軸方向の寸法を短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係る電動圧縮機の全体構成例を示す断面図である。
【図2】図2は、電動圧縮機の構成部材を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、電動圧縮機のハウジングの電動機及びインバータ装置が収容される部分を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその側断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る中継ターミナルとインバータ側クラスタ及び電動機側クラスタの具体例を示す図である。
【図5】図5は、インバータ装置と電動機とを接続する中継ターミナルとこれに装着するクラスタ(インバータ側クラスタ、電動機側クラスタ)の構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、インバータ装置と電動機とを接続する中継ターミナルとこれに装着するクラスタ(インバータ側クラスタ、電動機側クラスタ)の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1において、冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに適した電動圧縮機1が示されている。この電動圧縮機1は、アルミ合金で構成されたハウジング2内に、図中左方において圧縮機構3を配設し、また、図中右側において圧縮機構を駆動する電動機4を配設している。尚、図1では、図中右側を圧縮機の前方、図中左側を圧縮機の後方としている。
【0022】
ハウジング2の内部には、その中程に固定された軸支部材としてのブロック部材5とハウジング2の前壁部2dとに軸受け6,7を介して回転可能に支持された駆動軸8が設けられている。このブロック部材5によりハウジング2の内部が圧縮機構3を収納する圧縮機構収容部9aと電動機4を収納する電動機収容部9bとに画成されている。
【0023】
圧縮機構3は、固定スクロール部材10と可動スクロール部材11とを有するスクロールタイプのものが用いられており、固定スクロール部材10は、ハウジング2の後部内側において固定された円板状の基板10aと、この基板10aから前方に向かって延設された渦巻状の固定渦巻壁10bとから構成されている。
また、可動スクロール部材11は、固定スクロール部材10の前方側に配設されているもので、円板状の基板11aと、この基板11aから後方に向かって立設された渦巻状の可動渦巻壁11bとから構成され、駆動軸8の後端部に設けられた偏心軸8aにブッシュ12及び軸受け6を介して固定スクロール部材10と対向するように支持されている。尚、19は、駆動軸8の後端部に設けられるバランスウエイトである。
【0024】
固定スクロール部材10と可動スクロール部材11とは、それぞれの渦巻壁10b、11bをもって互いに噛み合わされており、それぞれの渦巻壁10b、11bの先端が相手のスクロール部材の基板10a,11aに当接されており、したがって、固定スクロール部材10の基板10aおよび固定渦巻壁10bと、可動スクロール部材11の基板11aと可動渦巻壁11bとによって囲まれた空間に圧縮室15が画成されている。
【0025】
また、固定スクロール部材10の外周縁とブロック部材5の後方に延びる外周壁5aとは付き合わされてピン16によって位置決めされており、可動スクロール部材11の外周縁に形成された前方へのびる外周壁11cとブロック部材5の内側に形成された環状段部5bとは、スラスト板17を介して付き合わされている。さらに、可動スクロール部材11とブロック部材5との間には可動スクロール部材11の自転を防止するオルダムリング18が配設されている。
【0026】
ブロック部材5の外周壁5aと可動スクロール部材11の可動渦巻壁11bの最外周部との間には、後述する吸入口29から吸入経路39を介して導入された冷媒を吸入する吸入室20が形成され、また、ハウジング内の固定スクロール部材10の後方には、圧縮室15で圧縮された冷媒ガスが固定スクロール部材10の略中央に形成された吐出孔21を介して吐出される吐出室22がハウジング2の後壁部2eとの間に画成されている。吐出室22に吐出された冷媒ガスは、吐出口から図示しない外部冷媒回路へ圧送されるようになっている。
【0027】
これに対して、ハウジング2内のブロック部材5より前方の電動機収容部9bには、電動機4を構成するステータ25が固定されている。このステータ25は、円筒状をなすステータコア26とこれに巻回された励磁コイル27とで構成され、ハウジング2の内面に対して固定されている。また、前記駆動軸8には、ステータ25の内側において回転可能に収容されたマグネットからなるロータ28が固装され、このロータ28がステータ25によって形成される回転磁力により駆動軸8と共に回転できるようになっている。これらステータ25やロータ28によって、ブラシレスDCモータからなる電動機4が構成されている。
【0028】
そして、電動機収容部9bに臨むハウジング2の側面には、外部から冷媒ガスを吸入する吸入口29が形成され、ステータ25とハウジング2との間の隙間や、ブロック部材5とハウジング2との間に形成される隙間等により、吸入口29から電動機収容部9bに流入した冷媒を前記吸入室20に導く吸入経路39が構成されている。
【0029】
したがって、電動機4が回転して駆動軸8が回転すると、可動スクロール部材11が偏心軸8aを中心として回転されるので、可動スクロール部材11は、固定スクロール部材10の軸心の周りを公転する。この際、可動スクロール部材11は、オルダムリング18からなる自転阻止機構によって自転が阻止されているので、公転運動のみが許容される。
【0030】
この可動スクロール部材11の公転運動により、圧縮室15が両スクロール部材の渦巻壁10b、11bの外周側から中心側へ容積を徐々に小さくしつつ移動するので、吸入室20から圧縮室15に吸入された冷媒ガスが圧縮され、この圧縮された冷媒ガスは固定スクロール部材10の基板10aに形成された吐出孔21を介して吐出室22に吐出し、その後、吐出口を介して外部冷媒回路へ送出される。
【0031】
このような電動圧縮機1には、図2、図3にも示されるように、電動機4の給電制御をおこなうためのインバータ装置40がハウジング2に設けられている。この例において、インバータ装置40は、インバータ駆動回路30を搭載したインバータ回路基板31をハウジング2の前方寄りの外表面、即ち、電動機4を収容した部分(電動機収容部9b)の上方外表面に形成されたインバータ収容室32に収容して構成されている。
【0032】
このインバータ収容室32は、ハウジング2の外周壁に形成された収容凹部33にオーリング34を介して蓋部材35をネジ36で取り付けることにより構成され、インバータ回路基板31は、収容凹部33の四隅に形成されたボス部37にねじ38によって固定されている。
【0033】
インバータ駆動回路30には、ケーブル42を介してインバータ側クラスタ43が接続され、また、電動機4のステータ25にも、ケーブル44を介して電動機側クラスタ45が接続されている。インバータ駆動回路30にケーブル42を介して接続されたインバータ側クラスタ43は、ハウジング2のインバータ収容室32の後部に設けられた中継ターミナル(気密端子)46に隔壁2bの上方から装着され、また、ステータ25にケーブル44を介して接続された電動機側クラスタ45は、前記中継ターミナル46に隔壁2bの下方から装着され、インバータ駆動回路30とステータ25とを中継ターミナル46を介して電気的に接続し、電動機4に対してインバータ装置から給電するようにしている。
【0034】
前記中継ターミナル46は、インバータ収容室を画成する壁部のうち、ハウジング2の軸方向で互いに対向する側壁部の一方、即ち、後方の側壁部2aに近接して設けられているもので、図4にも示されるように、隔壁2bに形成された通孔2cを気密に封止するように取り付けられており、通孔2cを覆うように隔壁2bにネジ41によって固定されるプレート部47と、このプレート部47に形成されたピン挿通孔48と、それぞれのピン挿通孔48に挿通されてガラスシール部材49を介してピン挿通孔48に気密にシールされた状態で固定され、プレート部47に対して略垂直に両側へ延びるターミナルピン50とを有して構成されている。ピン挿通孔48とこれに固定されるターミナルピン50は、正面視において正三角形となるように配置され、この例においては、ターミナルピン50のガラスシール部材49の両側に、絶縁距離を確保するセラミックスからなる絶縁部材51が固定されている。
【0035】
また、中継ターミナル46のプレート部47は、ハウジング2に形成された隔壁2bに、ハウジング2の軸方向、即ち、駆動軸8に対して傾斜させた状態で取り付けられている。この例では、図3に示されるように、後方へ向かうほどハウジングの軸心から遠ざかるようにしている(ハウジングの外側へ向かうように傾斜させている)。
【0036】
これに対して、インバータ側クラスタ43及び電動機側クラスタ45は、中継ターミナル46の3本のターミナルピン50に対応する接続用ばね端子52と、この接続用ばね端子52を収容するクラスタ本体部53とから構成され、接続用ばね端子52は、インバータ装置40又は電動機4から引き出されるケーブル42,44の先端部に接続されており、ターミナルピン50を弾性的に把持することでターミナルピン50と電気的に接続されるようになっている。
【0037】
そして、インバータ側クラスタ43は、図5にも示されるように、その背面をインバータ収容室32を閉塞する蓋部材35と対峙させ、また、電動機側クラスタ45は、その背面をハウジング内に固定されるブロック部材5の周壁と対峙させるようにしている。インバータ側クラスタ43の背面のクリアランス、即ち、インバータ側クラスタ43と蓋部材35との間のインバータ側クラスタ43の挿抜方向の隙間は、インバータ側クラスタ43のターミナルピン50への挿抜に要するストローク量未満に設定され、また、電動機側クラスタ45の背面のクリアランス、即ち、電動機側クラスタ45とブロック部材5との間の電動機側クラスタ45の挿抜方向の隙間は、電動機側クラスタ45のターミナルピン50への挿抜に要するストローク量未満に設定されている。
【0038】
以上の構成において、インバータ側クラスタ43と電動機側クラスタ45の背面に上述のようなクリアランスを形成するために、電動圧縮機1は次のように組付けられる。
先ず、ハウジング2の後方から電動機側クラスタ45がケーブル44を介して取り付けられているステータ25をハウジング2内に挿入し固定する。その後、中継ターミナル46をプレート部47と隔壁2bの間にシール部材55を介在させてプレート部47をネジ41により隔壁2bに固定することで通孔2cを気密に封止する。そして、この中継ターミナル46のターミナルピン50のハウジング内側(電動機収容部9b)に突出した部分に、電動機側クラスタ45をハウジング2の内側から装着する。
この際、中継ターミナル46のプレート部47は、後方へ向かうほど駆動軸8から遠ざかるように傾斜させて取り付けられているので、ターミナルピン50は、その先端がハウジング2の開口部分に向けられるように傾いており、電動機側クラスタ45の装着が容易となる。
【0039】
その後に、軸受け7や駆動軸8に固装されたロータ28を挿入すると共にブロック部材5を挿入し、駆動軸8の先端部に軸受け6やバランスウエイト19、ブッシュ12等を取り付け、圧縮機構3の他の構成部材を組み付けていく。
したがって、電動機側クラスタ45の背面は、中継ターミナル46への取り付け後において、ハウジング内に導入されたブロック部材5の外周と対峙することとなり、このブロック部材5によって、背面のクリアランスがターミナルピン50への挿抜に要するストローク量未満に設定される。
【0040】
その後、インバータ収納室32にインバータ回路基板31をネジ38で固定し、その後、インバータ回路基板31にケーブル42を介して取り付けられるインバータ側クラスタ43を中継ターミナル46のターミナルピン50のインバータ収容室32に突出した部分に装着する。また、インバータ回路基板31に他の配線関係を接続した後、蓋部材35をネジ36で止めてインバータ収納室32を閉塞する。
したがって、インバータ側クラスタ43の背面は、中継ターミナル46への取り付け後において装着された蓋部材35と対峙することとなり、この蓋部材35によって、背面のクリアランスがターミナルピン50への挿抜に要するストローク量未満に設定される。
【0041】
よって、電動圧縮機1の組付け後においては、インバータ側クラスタ43も電動機側クラスタ45も、背面のクリアランスがターミナルピン50への挿抜に要するストローク量未満に設置されるので、圧縮機が振動しても、クラスタ(インバータ側クラスタ43、電動機側クラスタ45)が抜けることを確実に防止することが可能となる。
また、中継ターミナル46のプレート部47をハウジング2の軸方向に対して傾斜させているので、インバータ収容室32の軸方向寸法を短くでき、また、クラスタのターミナルピン50への装着が容易となる。
【0042】
尚、上述の構成において、クラスタの抜け止めを図る観点から構造上の工夫が施されているが、圧縮機の小型化を図る観点から、さらに次のような構成としてもよい。
即ち、図6に示されるように、プレート部47が駆動軸8に対して傾斜して取り付けられる構成に加え、前述の実施例のように、中継ターミナル46がハウジング2の側壁部2aに隣接して設けられる場合には、側壁部2aの内面に窪み部60を形成し、そこにプレート部47の一部を挿入させて固定する。また、プレート部47とインバータ装置40のインバータ回路基板31とを、駆動軸8の軸方向でオーバーラップさせるように固定する。
【0043】
このような構成を採用することで、中継ターミナル46の取り付け位置をできるだけ後方にずらすことができ、また、中継ターミナル46のプレート部47とインバータ回路基板31とを軸方向でオーバーラップさせることで、インバータ収容室32の軸方向の寸法を短くすることが可能となり、もって、コンプレッサの軸方向寸法を短くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
2a 側壁部
2b 隔壁
3 圧縮機構
4 電動機
5 ブロック部材
8 駆動軸
30 インバータ駆動回路
31 インバータ回路基板
32 インバータ収容室
35 蓋部材
40 インバータ装置
42,44 ケーブル
43 インバータ側クラスタ
45 電動機側クラスタ
46 中継ターミナル
47 プレート部
50 ターミナルピン
60 窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に圧縮機構とこの圧縮機構を駆動する電動機とを備え、前記ハウジングに前記電動機を作動させるインバータ装置が設けられ、前記インバータ装置にケーブルを介して接続されるインバータ側クラスタと前記電動機にケーブルを介して接続される電動機側クラスタとを、前記ハウジングに形成された隔壁に設けられる中継ターミナルのターミナルピンに前記隔壁に対して互いに反対側から装着することで前記インバータ装置と前記電動機とを電気的に接続し、前記インバータ側クラスタと前記電動機側クラスタの少なくとも一方は、その背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されていることを特徴とする電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項2】
前記インバータ側クラスタと前記電動機側クラスタの少なくとも一方は、前記中継ターミナルへの取付後に組み付けられる部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されていることを特徴とする請求項1記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項3】
前記中継ターミナルに装着される前記電動機側クラスタは、前記ハウジング内に配される部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項4】
前記ハウジング内に配される部材は、前記ハウジング内において前記圧縮機構と前記電動機との間に配されて駆動軸を支持するブロック部材であることを特徴とする請求項3記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項5】
前記中継ターミナルに装着される前記インバータ側クラスタは、前記ハウジングに形成された前記インバータ装置を収容するインバータ収容室を閉塞するための蓋部材によって背面のクリアランスが前記ターミナルピンへの挿抜に要するストローク量未満に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項6】
前記中継ターミナルは、プレート部と、このプレート部から略垂直に両側へ突出する導電性のターミナルピンとを有して構成され、前記プレート部は、前記ハウジングの軸方向に対して傾斜させるように前記隔壁に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項7】
前記隔壁に設けられる前記中継ターミナルは、前記インバータ装置を収容するインバータ収容室を画成する壁部のうち、前記ハウジングの軸方向で互いに対向する側壁部の一方に近接して設けられ、前記側壁部の内面を窪ませることによりそこに前記プレート部の一部を挿入させていることを特徴とする請求項6記載の電動圧縮機の中継接続構造。
【請求項8】
前記プレート部と前記インバータ装置のインバータ回路基板とは、前記ハウジングの軸方向でオーバーラップさせていることを特徴とする請求項6又は7に記載の電動圧縮機の中継接続構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−241799(P2011−241799A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117023(P2010−117023)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】