説明

電動圧縮機

【課題】騒音を防止するとともに取付に要するコストの低減を図る電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】電動圧縮機101は、車両の圧縮機取付台座82に取り付けられる。電動圧縮機101は、電力を動力として外部から吸入した流体を圧縮したのち吐出する圧縮機本体1と、圧縮機本体1に設けられ、第一取付穴10Cbを有する第一取付部10Cと、圧縮機本体1に設けられ、第二取付穴10Dbを有する第二取付部10Dと、第一取付部10C及び第二取付部10Dを覆うように設けられて、第二取付部10D及び圧縮機取付台座82の間に介在する減衰部材11であり、貫通穴11bをもち且つ樹脂から形成される減衰部材11と、減衰部材11の貫通穴11b、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbを通って減衰部材11を圧縮機取付台座82に取り付ける締結具15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動圧縮機に係り、特に車両に搭載される電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び電動モータを併用して走行するハイブリッド車両では、エンジンによる駆動と電動モータによる駆動との比率を車両の走行状態に応じて変化させている。このようなハイブリッド車両において、空調装置を構成する冷凍サイクルを動作させる圧縮機として、エンジンから駆動力を得るものを使用すると、圧縮機はエンジンから所要の駆動力を常時得ることができない。このため、ハイブリッド車両では、車両に搭載されたバッテリ等から得られる電力を動力として駆動する電動圧縮機が使用される。そして、電動圧縮機は、車両のボディやエンジンに取り付けられる。
【0003】
しかしながら、ハイブリッド車両は、アイドル運転時のアイドルストップ等のようにエンジンが停止された状態で電動モータのみにより運転されることがあり、このようなエンジン停止時に電動圧縮機が運転されると、電動圧縮機の運転に起因して、車内及び車外に不快な騒音が発生する。特に、電動圧縮機自体が発生する放射音よりも、電動圧縮機の振動がその取付部位を介してボディやエンジンを加振することにより発生する共振音が、不快な騒音の主因となる。このため、電動圧縮機からボディやエンジンに伝達する振動の緩和を図った圧縮機の取付構造が考案されている。
【0004】
特許文献1には、圧縮機に一体に形成された取付部の穴にねじを挿入して、このねじをエンジンの被取付体のねじ穴にねじ込むことによって、圧縮機が被取付体に取り付けられる構造が記載されている。取付部は、ねじ1本につき2つ設けられ、取付部の穴のそれぞれには、ゴムブッシュが圧入嵌合されている。ゴムブッシュは、外筒、内筒、及び、これらの間に接着された防振ゴムによって構成されている。さらに、2つのゴムブッシュの間に、内筒と同じ内径を有するスペーサを介在させており、ねじは、ゴムブッシュ、スペーサ及びゴムブッシュの順序でこれらに挿入されて、被取付体のねじ穴にねじ込まれる。そして、スペーサは、ねじをねじ穴にねじ込んだときに、ねじの頭よりにあるゴムブッシュが変形することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−44814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、被取付体への圧縮機の取付に要する部品点数が多いため、作業工数が多くなり、取付に要するコストが増加するという問題がある。また、取付部の2つのゴムブッシュにねじを挿入する際、スペーサの端部にねじの端部が引っかかると、スペーサのずれや脱落が生じる。このため、取付部へのねじ及びスペーサの組み付けに手間がかかり、さらにコストが増加するという問題がある。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、騒音を防止するとともに取付に要するコストの低減を図る電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明に係る電動圧縮機は、車両の被取付部に取り付けられる電動圧縮機であって、電力を動力として外部から吸入した流体を圧縮したのち吐出する圧縮機本体と、圧縮機本体に設けられ、取付穴を有する取付部と、取付部を覆うように設けられて、取付部及び被取付部の間に介在する減衰部材であって、締結穴をもち且つ樹脂から形成される減衰部材と、減衰部材の締結穴及び取付部の取付穴を通って減衰部材を被取付部に取り付ける締結具とを備える。
【0009】
取付部の取付穴は、取付穴を通る締結具より大きく、締結具は、取付部と接触することなく減衰部材の締結穴及び取付部の取付穴を通って減衰部材を被取付部に取り付けてもよい。
減衰部材は、取付部の取付穴に係合して減衰部材を取付部に固定可能な係合突起を有してもよい。
上記電動圧縮機は、減衰部材と一体に設けられて取付部及び被取付部を電気的に接続し且つ可撓性及び導電性をもつ導電部材をさらに備えてもよい。
減衰部材は、曲げ弾性率が100メガパスカル以上10000メガパスカル以下の樹脂から形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る電動圧縮機によれば、騒音を防止するとともに取付に要するコストの低減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電動圧縮機の構造を示す模式図である。
【図2】図1の要部を示す断面側面図である。
【図3】図2の第一取付部及び減衰部材の取付構造を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る電動圧縮機の取付構造を示す断面側面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る電動圧縮機の取付構造を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る電動圧縮機101の構成を説明する。なお、本実施の形態において、電動圧縮機101は、車両に搭載された内燃機関であるエンジン81に取り付けられるものとする。
【0013】
まず、図1を参照すると、電動圧縮機101は、略円筒状をしたハウジング2と、ハウジング2の内部の図示しない流体圧縮機構3とを有する圧縮機本体1を備えている。ハウジング2は、例えば、アルミニウム合金等の金属から形成されている。さらに、流体圧縮機構3は、電力を動力として動作して外部から冷媒等の流体を吸入し、吸入した流体を圧縮した後に外部に吐出する。
ここで、説明の便宜上、紙面上で下から上に向かう方向を上方向A、紙面上で上から下に向かう方向を下方向B、紙面上で左から右に向かう方向を右方向C、紙面上で右から左に向かう方向を左方向Dとする。さらに、方向A、B、C及びDに垂直に紙面上の奥行き方向に向かう方向を後方向Fとし、後方向Fの反対方向を前方向Eとする。
【0014】
また、圧縮機本体1は、ハウジング2の外周面2aの上下方向両側のそれぞれに、ハウジング2から突出する第一取付部10C及び第二取付部10Dを備えており、第一取付部10C及び第二取付部10Dは、直方体状の形状を有してハウジング2と同じ材料によりハウジング2と一体に形成されている。
【0015】
また、電動圧縮機101は、第一取付部10C及び第二取付部10Dに取り付けられる角筒状をした樹脂製の減衰部材11を有している。そして、1つの減衰部材11が、2つの第一取付部10C及び第二取付部10Dに対して、取り付けられる。
【0016】
減衰部材11は、振動の減衰特性が大きい、すなわち制振性があり、剛性を有する樹脂から形成されている。このような減衰部材11を形成する樹脂には、曲げ弾性率が100MPa(メガパスカル)以上10000MPa以下の材料が使用される。さらに、減衰部材11を形成する樹脂には、例えば、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート、すなわちPBT樹脂)、PVC(塩化ビニル樹脂、すなわちポリ塩化ビニル)、PUR(ポリウレタン)、PTFE(フッ素樹脂)、PF(フェノール樹脂)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド、すなわちナイロン)、ABS(ABS樹脂)、炭素樹脂及びこれらの混合物等を使用することができる。また、減衰部材11を形成する樹脂は、繊維強化プラスチック(FRP)であってもよい。
【0017】
さらに、減衰部材11を形成する樹脂は、振動の減衰特性を示す損失係数が、第一取付部10C及び第二取付部10Dを形成する金属より大きくなっており、例えば、0.01〜1であることが好ましい。なお、例えば、第一取付部10C及び第二取付部10Dを形成する金属の例として挙げたアルミニウム合金の損失係数は、0.0001である。
【0018】
また、図2及び図3を合わせて参照すると、第一取付部10C、第二取付部10D及び減衰部材11の詳細な構成が示されている。
減衰部材11は、直方体状の輪郭を有しており、さらに、長手方向に減衰部材11を貫通する貫通穴11bと、減衰部材11の下方向B側の外表面11a1からその内部に向かって延びて貫通穴11bに連通する第一取付部挿入穴11c及び第二取付部挿入穴11dとを有している。
ここで、貫通穴11bは、締結穴を構成している。
貫通穴11bは、円形状の断面形状を有して形成されている。第一取付部挿入穴11c及び第二取付部挿入穴11dはそれぞれ、第一取付部10C及び第二取付部10Dを挿入可能な矩形状の断面形状を有して形成されている。また、第一取付部挿入穴11c及び第二取付部挿入穴11dは、貫通穴11bと垂直な方向に沿って形成されて貫通穴11bを横切って延び、その先端部11ca及び11daが、貫通穴11bより上方向A側に突出している。
【0019】
また、図3を参照すると、貫通穴11bは、第一取付部挿入穴11cの右方向C側の内表面11ccで第一取付部挿入穴11cに連通して内表面11ccに開口部11b1を形成し、第一取付部挿入穴11cの左方向D側の内表面11cdで第一取付部挿入穴11cに連通して内表面11cdに開口部11b2を形成している。
さらに、第一取付部挿入穴11cの内表面11ccには、開口部11b1の周囲を囲む環状の嵌合突起11e1が、第一取付部挿入穴11cの内側に突出して形成されている。また、第一取付部挿入穴11cの内表面11cdにも、開口部11b2の周囲を囲む環状の嵌合突起11e2が、第一取付部挿入穴11cの内側に突出して形成されている。
また、第二取付部挿入穴11dにおいても、第一取付部挿入穴11cと同様にして、開口部11b3及び11b4、並びに、嵌合突起11f1及び11f2が形成されている。(図2参照)
ここで、嵌合突起11e1、11e2、11f1及び11f2は、係合突起を構成している。
【0020】
また、図1を参照すると、第一取付部10Cは、これを右方向Cから左方向Dに向かって貫通する第一取付穴10Cbを有し、第二取付部10Dは、これを右方向Cから左方向Dに向かって貫通する第二取付穴10Dbを有している。第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbはそれぞれ、円形状の断面形状を有し、その軸方向がハウジング2の円筒軸の方向に対して垂直になるように設けられている。
図3を参照すると、第一取付部10Cの第一取付穴10Cbは、その両端の内周面が、嵌合突起11e1及び11e2の外周面に整合するように形成されている。また、第二取付部10Dの第二取付穴10Dbも、第一取付部10Cの第一取付穴10Cbと同様にして、その両端の内周面が、嵌合突起11f1及び11f2の外周面に整合するように形成されている(図2参照)。
【0021】
また、図2を参照すると、減衰部材11は、左方向D側の端部11g、外表面11a1における第二取付部挿入穴11dの左方向D側に位置する部位、及び、第二取付部挿入穴11dにおける左方向D側の内表面11ddの上にわたり、連続して形成されているシート状の金属膜12を有している。金属膜12は、金属材料を使用して形成されて導電性を有している。なお、金属膜12は、可撓性及び低い剛性を有するように、0.1〜0.5mm程度の厚さで形成されることが好ましい。また、金属膜12は、インサート成形等の樹脂成形方法を使用して、減衰部材11と一体に設けられている。
ここで、金属膜12は、導電部材を構成している。
【0022】
そして、減衰部材11は、その第一取付部挿入穴11c及び第二取付部挿入穴11dのそれぞれに、圧縮機本体1の第一取付部10C及び第二取付部10Dを挿入させることによって、圧縮機本体1に取り付けられる。
図2及び図3を合わせて参照すると、減衰部材11は、その第一取付部挿入穴11cに第一取付部10Cを挿入させて圧縮機本体1に押し付けられると、減衰部材11の嵌合突起11e1及び11e2が、第一取付部10Cの先端部10Caを越えて下方向Bに進み、第一取付部10Cの第一取付穴10Cbの内側に嵌合する。それによって、減衰部材11が第一取付部10Cに対して取り付け、固定される。また、減衰部材11は、その第二取付部挿入穴11dに第二取付部10Dを挿入させて圧縮機本体1に押し付けられることにより、減衰部材11の嵌合突起11f1及び11f2が第二取付部10Dの第二取付穴10Dbの内側に嵌合して、第二取付部10Dに対しても取り付け、固定される。
【0023】
また、減衰部材11が第一取付部10C及び第二取付部10Dに固定された状態では、減衰部材11は、第一取付部10C及び第二取付部10Dを覆うようにして設けられている。このとき、第一取付部10C及び第二取付部10Dは、減衰部材11によって周囲を囲まれて減衰部材11と接触している。しかしながら、第一取付部10Cの先端部10Ca及び第二取付部10Dの先端部10Daはそれぞれ、第一取付部挿入穴11cの先端部11ca及び第二取付部挿入穴11dの先端部11daとの間に間隙を有しており、減衰部材11と接触していない。そして、減衰部材11は、第一取付部10C及び第二取付部10Dに対して、嵌合突起11e1、11e2、11f1及び11f2の嵌合によって位置決めされている。
さらに、第二取付部10Dは、第二取付部挿入穴11dにおいて、金属膜12に当接しており、圧縮機本体1のハウジング2は、金属膜12と電気的に接続されている。
【0024】
一方、図1を参照すると、図示しない車両に搭載され且つ電動圧縮機101が取り付けられるエンジン81には、柱状をした圧縮機取付台座82が形成されている。さらに、圧縮機取付台座82端部の取付面82aには、内側に雌ねじを有する取付用ねじ穴82bが形成されている。
ここで、圧縮機取付台座82は、被取付部を構成している。
【0025】
そして、電動圧縮機101は、減衰部材11を圧縮機取付台座82に固定することによって、エンジン81に取り付けられる。
図2を参照すると、減衰部材11を圧縮機取付台座82に固定する際、減衰部材11の端部11gと圧縮機取付台座82の取付面82aとを当接させ、軸部15aに雄ねじ15a1を有するねじ等の締結具15を、減衰部材11の貫通穴11bに挿入する。さらに、締結具15の軸部15aに、貫通穴11b、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbを貫通させ、締結具15の雄ねじ15a1を、圧縮機取付台座82の取付用ねじ穴82bの雌ねじに螺合させ、締結具15により減衰部材11を圧縮機取付台座82に締め付ける。これによって、電動圧縮機101が圧縮機取付台座82に固定される。
【0026】
なお、締結具15は、金属から形成されている。さらに、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbは、締結具15の軸部15aと間隙を有するように、軸部15aの直径より大きい直径を有している。
【0027】
電動圧縮機101を圧縮機取付台座82に固定した状態では、減衰部材11の右方向C側の端部11hが締結具15の締結頭部15bに当接し、減衰部材11の左方向D側の端部11gが、一部に金属膜12を間に挟んで圧縮機取付台座82の取付面82aに当接している。さらに、第一取付部10Cは、右方向C側及び左方向D側の面で減衰部材11に当接している。また、第二取付部10Dは、一部に金属膜12を間に挟んで、右方向C側及び左方向D側の面で減衰部材11に当接している。このとき、減衰部材11、第一取付部10C及び第二取付部10Dが、締結具15の締め付けによる圧縮力を支持している。
【0028】
さらに、第一取付部10C及び第二取付部10Dは、第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbの直径が締結具15の軸部15aの直径より大きくなっている。また、第一取付部10Cは、第一取付穴10Cbを嵌合突起11e1及び11e2の外周側に嵌合することによって減衰部材11に対して位置決め・固定されており、第二取付部10Dは、第二取付穴10Dbを嵌合突起11f1及び11f2の外周側に嵌合することによって減衰部材11に対して位置決め・固定されている。そして、減衰部材11において、嵌合突起11e1及び11e2のそれぞれの内側に形成された開口部11b1及び11b2は、その直径が第一取付穴10Cbの直径より小さくなっており、開口部11b1及び11b2に連続する貫通穴11bも、その直径が第一取付穴10Cbの直径より小さくなっている。また、減衰部材11において、嵌合突起11f1及び11f2のそれぞれの内側に形成された開口部11b3及び11b4は、その直径が第二取付穴10Dbの直径より小さくなっており、開口部11b3及び11b4に連続する貫通穴11bも、その直径が第二取付穴10Dbの直径より小さくなっている。
【0029】
よって、締結具15の軸部15aは、減衰部材11に対して固定されている第一取付穴10Cbにおいて、第一取付穴10Cbの内側の嵌合突起11e1及び11e2のさらに内側を通り、嵌合突起11e1及び11e2並びに貫通穴11bによって軸方向に垂直な方向の移動が制限され、第一取付部10Cに接触しない。同様に、軸部15aは、減衰部材11に対して固定されている第二取付穴10Dbにおいて、第二取付穴10Dbの内側の嵌合突起11f1及び11f2のさらに内側を通り、嵌合突起11f1及び11f2並びに貫通穴11bによって軸方向に垂直な方向の移動が制限され、第二取付部10Dに接触しない。
【0030】
このため、第一取付部10C及び第二取付部10Dは、減衰部材11と接触しているが、締結具15の軸部15aとは接触しておらず、さらに、締結具15の締結頭部15bとの間には減衰部材11が介在し、また、圧縮機取付台座82との間には減衰部材11が介在しているため、締結具15及び圧縮機取付台座82と接触していない。
また、第二取付部10Dは、金属膜12を介して、圧縮機取付台座82すなわちエンジン81と電気的に接続されている。よって、圧縮機本体1のハウジング2は、金属膜12を介して、エンジン81と電気的に接続されている。
【0031】
次に、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態に係る電動圧縮機101の動作を説明する。
図1を参照すると、電動圧縮機101が起動されると、ハウジング2の内部の図示しない流体圧縮機構3が稼動され、流体圧縮機構3の稼動によりハウジング2が振動する。
【0032】
さらに、図2を参照すると、ハウジング2の振動は、第一取付部10C及び第二取付部10Dから、第一取付部10C及び第二取付部10Dと接触していない締結具15に伝達せずに、減衰部材11に伝達して、振動の減衰特性が大きい減衰部材11の内部で減衰する。また、ハウジング2の振動は第二取付部10Dから金属膜12にも伝達するが、金属膜12は厚さが小さく剛性が低いため、金属膜12に伝達した振動は、金属膜12を通過して減衰部材11に伝達し、減衰部材11の内部で減衰する。このため、ハウジング2の振動は、圧縮機取付台座82へ伝達することが抑制され、それにより、エンジン81、さらには、エンジン81を介して図示しない車両のボディへ伝達することも抑制される。
【0033】
また、減衰部材11は、曲げ弾性率が100MPa(メガパスカル)以上10000MPa以下の樹脂材料から形成されて高い剛性を有しているため、ハウジング2、第一取付部10C及び第二取付部10Dの振動により減衰部材11が変形して、ハウジング2、第一取付部10C及び第二取付部10Dが変位することがない。これにより、ハウジング2の振動の振幅の増大が抑制されている。
また、第一取付部10Cの先端部10Ca及び第二取付部10Dの先端部10Daが、減衰部材11と接触していないため、振動する第一取付部10Cの先端部10Ca及び第二取付部10Dの先端部10Daが減衰部材11に当接することにより生じる音が発生しない。
【0034】
また、圧縮機本体1の内部からハウジング2に電荷が発生した場合、発生した電荷は、第二取付部10Dから金属膜12に流れる。金属膜12に流れた電荷は、金属膜12内を通過して圧縮機取付台座82、すなわちエンジン81に流れる。そして、エンジン81に流れた電荷は、図示しない車両のボディに流れる。よって、金属膜12は、電動圧縮機101のアースとして機能する。
【0035】
このように、この発明に係る電動圧縮機101は、車両のエンジン81の圧縮機取付台座82に取り付けられる。電動圧縮機101は、電力を動力として外部から吸入した流体を圧縮したのち吐出する圧縮機本体1と、圧縮機本体1に設けられ、第一取付穴10Cbを有する第一取付部10Cと、圧縮機本体1に設けられ、第二取付穴10Dbを有する第二取付部10Dと、第一取付部10C及び第二取付部10Dを覆うように設けられて、第二取付部10D及び圧縮機取付台座82の間に介在する減衰部材11であり、貫通穴11bをもち且つ樹脂から形成される減衰部材11と、減衰部材11の貫通穴11b、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbを通って減衰部材11を圧縮機取付台座82に取り付ける締結具15とを備える。
【0036】
これによって、圧縮機本体1が発生する振動は、第一取付部10C及び第二取付部10Dを介して、圧縮機取付台座82に直接伝達することなく減衰部材11に伝達する。伝達した振動は、樹脂製であり振動の減衰特性が大きい減衰部材11によって減衰される。このため、圧縮機本体1から圧縮機取付台座82に伝達する振動が低減される。よって、電動圧縮機101からエンジン81へ振動が伝達することを抑制し、さらに、エンジン81を搭載する車両へ振動が伝達することを抑制し、それにより、車両における共振音を低減することが可能になる。また、減衰部材11は、第一取付部10C及び第二取付部10Dを覆うように設けられる構成を有し、第一取付部10C及び第二取付部10Dに被せるようにして取り付けるだけでよいため、第一取付部10C及び第二取付部10Dへの取付が容易になり、それにより、電動圧縮機101の取付に要するコストを低減することが可能になる。
【0037】
また、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbは、第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbを通る締結具15より大きく、締結具15は、第一取付部10C及び第二取付部10Dと接触することなく減衰部材11の貫通穴11b、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbを通って減衰部材11を圧縮機取付台座82に取り付ける。これによって、締結具15が、第一取付部10C及び第二取付部10Dと接触しないため、圧縮機本体1が発生する振動は、第一取付部10C及び第二取付部10Dから締結具15を介して、圧縮機取付台座82に伝達し難い。よって、締結具15を、振動を伝達し得る金属製とすることができ、それにより、圧縮機取付台座82への電動圧縮機101の取付強度を増大させることが可能になる。
【0038】
特に、第一取付穴10Cbを嵌合突起11e1及び11e2の外周側に嵌合させることによって第一取付部10Cを減衰部材11に対して位置決め・固定し、第二取付穴10Dbを嵌合突起11f1及び11f2の外周側に嵌合させることによって第二取付部10Dを減衰部材11に対して位置決め・固定する。さらに、減衰部材11において、嵌合突起11e1及び11e2のそれぞれの内側に形成された開口部11b1及び11b2の直径を第一取付穴10Cbの直径より小さくし、嵌合突起11f1及び11f2のそれぞれの内側に形成された開口部11b3及び11b4の直径を第二取付穴10Dbの直径より小さくし、開口部11b1、11b2、11b3及び11b4に連続する貫通穴11bの直径を第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbの直径より小さくする。上述の構成によって、締結具15が、第一取付部10C及び第二取付部10Dと接触することなく、貫通穴11b、第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbを通ることを確実にし、且つその状態を保持することができる。
【0039】
また、減衰部材11は、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbに係合して減衰部材11を第一取付部10C及び第二取付部10Dに固定可能な嵌合突起11e1、11e2、11f1及び11f2を有する。これによって、第一取付部10C及び第二取付部10Dへの減衰部材11の固定が容易になるため、電動圧縮機101の取付に要するコストをさらに低減することが可能になる。
【0040】
また、電動圧縮機101は、減衰部材11と一体に設けられて第二取付部10D及び圧縮機取付台座82を電気的に接続し、且つ可撓性及び導電性をもつ金属膜12をさらに備える。減衰部材11と一体に設けられた金属膜12によって、圧縮機本体1及びエンジン81が電気的に接続され、金属膜12が、電動圧縮機101のアースを構成することができる。よって、電動圧縮機101のアースの設置が容易になり、コストを低減することが可能になる。
【0041】
また、減衰部材11は、曲げ弾性率が100メガパスカル以上10000メガパスカル以下の樹脂から形成される。これによって、減衰部材11の剛性が高くなり、さらに、減衰部材11の圧縮機取付台座82への取付剛性が高くなるため、圧縮機本体1の変位が抑制されて、圧縮機本体1の振動の振幅の増大を防ぐことができる。よって、電動圧縮機101からエンジン81に伝達する振動をさらに抑制することが可能になる。
【0042】
また、電動圧縮機101では、減衰部材11と、減衰部材11の内側の金属製の第一取付部10C及び第二取付部10Dとが一体となり、取付足として、締結具15によってエンジン81の圧縮機取付台座82に締結されるため、樹脂のみからなる取付足より取付強度を増大させることが可能になる。
【0043】
また、減衰部材11は、第一取付部10Cの第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dの第二取付穴10Dbに対して、それぞれの両端部に設けられた嵌合突起11e1及び11e2、並びに、嵌合突起11f1及び11f2によって固定されている。つまり、減衰部材11は、第一取付部10C及び第二取付部10Dに対して、それぞれを左右方向両端から挟むようにして、固定されている。従って、締結具15の軸部15aを第一取付穴10Cb及び第二取付穴10Dbに挿通する工程で、軸部15aの先端が第一取付穴10Cb又は第二取付穴10Db内で嵌合突起11e2又は11f2に当たったとしても、減衰部材11が第一取付穴10Cb及び第二取付部10Dから脱落することを防止できる。よって、電動圧縮機101の取付作業効率を向上させることができる。
【0044】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る電動圧縮機102は、実施の形態1の電動圧縮機101の第一取付部10C及び第二取付部10Dを一体にしたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図4を参照すると、実施の形態2に係る電動圧縮機102では、取付部20は、実施の形態1の第一取付部10C及び第二取付部10Dより、左右方向に長く形成されており、1つの減衰部材21が、1つの取付部20に取り付けられる。
減衰部材21は、実施の形態1の減衰部材11と同様にして、円形状の断面形状をもち長手方向に貫通する貫通穴21bを有し、さらに、矩形状の断面形状をもち貫通穴21bに連通する1つの取付部挿入穴21cを有して、形成されている。また、減衰部材21には、取付部挿入穴21cの内部において、貫通穴21bが開口する開口部21b1及び21b2のそれぞれの周囲を囲むようにして、環状の嵌合突起21e1及び21e2が内側に突出して形成されている。
【0046】
また、取付部20は、これを左右方向に貫通する取付穴20bを有しており、取付穴20bは、その両端の内周面が、嵌合突起21e1及び21e2の外周面に整合するように形成されている。
また、シート状の金属膜22が、減衰部材21と一体に設けられ、減衰部材21の左方向D側の端部21g、下方向B側の外表面21a1、及び、取付部挿入穴21cにおける左方向D側の内表面21cd上にわたって連続して延びている。
【0047】
そして、減衰部材21は、その取付部挿入穴21cに取付部20を挿入させて圧縮機本体1に押し付けられ、嵌合突起21e1及び21e2を取付部20の取付穴20bの内側に嵌合させることによって、取付部20に対して取り付け、固定される。
さらに、減衰部材21が取り付けられた圧縮機本体1は、締結具15を減衰部材21の貫通穴21b及び取付部20の取付穴20bに挿入し、締結具15により減衰部材21を圧縮機取付台座82に締め付けることによって、圧縮機取付台座82に固定される。
【0048】
このとき、減衰部材21は、その外側で締結具15の締結頭部15bに当接するとともに、一部に金属膜22を間に挟んで圧縮機取付台座82に当接し、内側の取付部挿入穴21cにおいて、右方向C側及び左方向D側の内表面で取付部20に当接している。そして、減衰部材21及び取付部20が、締結具15の締め付けによる圧縮力を支持している。
【0049】
さらに、取付部20は、取付穴20bの直径が締結具15の軸部15aの直径より大きくなっている。
また、取付部20は、取付穴20bを嵌合突起21e1及び21e2の外周側に嵌合することによって減衰部材21に対して位置決め・固定されている。そして、減衰部材21において、嵌合突起21e1及び21e2のそれぞれの内側に形成された開口部21b1及び21b2は、その直径が取付穴20bの直径より小さくなっており、開口部21b1及び21b2に連続する貫通穴21bも、その直径が取付穴20bの直径より小さくなっている。
【0050】
よって、締結具15の軸部15aは、減衰部材21に対して固定されている取付穴20bにおいて、取付穴20bの内側の嵌合突起21e1及び21e2のさらに内側を通り、嵌合突起21e1及び21e2並びに貫通穴21bによって軸方向に垂直な方向の移動が制限され、取付部20に接触しない。
従って、取付部20は、減衰部材21によって周囲を囲まれて減衰部材21と接触しているが、締結具15の軸部15aとは接触せず、さらに、締結具15の締結頭部15bとの間には減衰部材21が介在し、また、圧縮機取付台座82との間には減衰部材21が介在しているため、締結具15及び圧縮機取付台座82と接触していない。
そして、取付部20の先端部20aは、取付部挿入穴21cとの間に間隙を有している。
【0051】
また、取付部20は、金属膜22を介して、圧縮機取付台座82すなわちエンジン81と電気的に接続されている。よって、圧縮機本体1のハウジング2は、金属膜22を介して、エンジン81と電気的に接続されており、金属膜22は、電動圧縮機102のアースとして機能する。
【0052】
そして、ハウジング2の振動は、取付部20から取付部20と接触していない締結具15に伝達せずに、その一部が、取付部20から剛性が低く厚さの小さい金属膜22を通過して減衰部材21に伝達し、その他が、取付部20から減衰部材21に直接伝達する。減衰部材21に伝達した振動は、その内部で減衰する。このため、ハウジング2の振動は、圧縮機取付台座82へ伝達することが抑制され、それにより、エンジン81、及び図示しない車両のボディへ伝達することも抑制される。
また、この発明の実施の形態2に係る電動圧縮機102のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
このように、実施の形態2における電動圧縮機102によれば、上記実施の形態1の電動圧縮機101と同様な効果が得られる。
また、電動圧縮機102では、取付部20は、実施の形態1の第一取付部10C及び第二取付部10Dより、締結具15の軸方向に長く形成されているため、強度が高くなっている。このため、電動圧縮機102は、実施の形態1の電動圧縮機101より、取付強度を増加させることが可能になる。
【0054】
また、減衰部材21は、取付部20の取付穴20bに対して、その両端部に設けられた嵌合突起21e1及び21e2によって固定されている。つまり、減衰部材21は、取付部20に対して、これを左右方向両端から挟むようにして、固定されている。従って、締結具15の軸部15aを取付穴20bに挿通する工程で、軸部15aの先端が取付穴20b内で嵌合突起21e2に当たったとしても、減衰部材21が取付穴20bから脱落することを防止できる。よって、電動圧縮機102の取付作業効率を向上させることができる。
【0055】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る電動圧縮機103は、実施の形態1の電動圧縮機101の減衰部材11を分割したものであり、第一取付部30C及び第二取付部30Dのそれぞれに、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dを設けたものである。
【0056】
図5を参照すると、実施の形態3に係る電動圧縮機103は、第一取付部30C及び第二取付部30Dを有する取付部30を、ハウジング2と一体に有している。
第一取付部30C及び第二取付部30Dはそれぞれ、取付部30の上方向A側の外表面30a1から突出し、実施の形態1の第一取付部10C及び第二取付部10Dと同様にして形成されている。
【0057】
第一減衰部材31Cは、第一取付部30Cに取り付けられるものであり、実施の形態1の減衰部材11と同様にして、円形状の断面形状をもち左右方向に貫通する第一貫通穴31Cbを有し、さらに、矩形状の断面形状をもち第一貫通穴31Cbに連通する1つの第一取付部挿入穴31Ccを有している。
また、第一取付部挿入穴31Ccの内部において、第一貫通穴31Cbが開口する開口部31Cb1及び31Cb2のそれぞれの周囲を囲むようにして、環状の嵌合突起31Ce1及び31Ce2が内側に突出して形成されている。
また、第二減衰部材31Dは、第二取付部30Dに取り付けられるものであり、第一減衰部材31Cと同様にして形成されている。
【0058】
また、シート状の金属膜32が、第二減衰部材31Dと一体に設けられ、第二減衰部材31Dの左方向D側の端部31Dg、下方向B側の外表面31Da1、及び第二取付部挿入穴31Dcにおける左方向D側の内表面31Dcd上にわたって連続して延びている。
【0059】
そして、第一減衰部材31Cは、その第一取付部挿入穴31Ccに第一取付部30Cを挿入させて圧縮機本体1に押し付けられ、嵌合突起31Ce1及び31Ce2を第一取付部30Cの第一取付穴30Cbの内側に嵌合させることによって、第一取付部30Cに対して取り付け、固定される。このとき、第一減衰部材31Cは、その下方向B側の外表面31Ca1を取付部30の外表面30a1に当接させている。また、第二減衰部材31Dも、第一減衰部材31Cと同様にして、第二取付部30Dに対して取り付け、固定される。このとき、第二減衰部材31Dは、その外表面31Da1を取付部30の外表面30a1に当接させている。
【0060】
さらに、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dが取り付けられた圧縮機本体1を圧縮機取付台座82に固定する際は、締結具15の軸部15aを、第一減衰部材31Cの第一貫通穴31Cb及び第一取付部30Cの第一取付穴30Cbに挿入し、さらに、第二減衰部材31Dの第二貫通穴31Db及び第二取付部30Dの第二取付穴30Dbに挿入する。そして、締結具15の軸部15aの雄ねじを圧縮機取付台座82の取付用ねじ穴82bの雌ねじに螺合させ、締結具15により第一減衰部材31Cを圧縮機取付台座82に対して締め付ける。これによって、圧縮機本体1すなわち電動圧縮機103が圧縮機取付台座82に固定される。
【0061】
このとき、第一減衰部材31Cは、その外側で締結具15の締結頭部15bに当接するとともに、内側の第一取付部挿入穴31Ccにおいて、右方向C側及び左方向D側の内表面で第一取付部30Cに当接している。また、第二減衰部材31Dは、その外側で一部に金属膜32を間に挟んで圧縮機取付台座82に当接するとともに、内側の第二取付部挿入穴31Dcにおいて、右方向C側及び左方向D側の内表面で第二取付部30Dに当接している。さらに、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dは、取付部30の外表面30a1に当接している。そして、第一減衰部材31C、第一取付部30C、第二減衰部材31D及び第二取付部30Dが、締結具15の締め付けによる圧縮力を支持している。
【0062】
さらに、第一取付部30C及び第二取付部30Dは、第一取付穴30Cb及び第二取付穴30Dbの直径が締結具15の軸部15aの直径より大きくなっている。
【0063】
また、第一取付部30Cは、第一取付穴30Cbを嵌合突起31Ce1及び31Ce2の外周側に嵌合することによって第一減衰部材31Cに対して位置決め・固定されている。そして、第一減衰部材31Cにおいて、嵌合突起31Ce1及び31Ce2のそれぞれの内側に形成された開口部31Cb1及び31Cb2は、その直径が第一取付穴30Cbの直径より小さくなっており、開口部31Cb1及び31Cb2に連続する第一貫通穴31Cbも、その直径が第一取付穴30Cbの直径より小さくなっている。
また、第二取付部30Dも、第二取付穴30Dbを嵌合突起31De1及び31De2の外周側に嵌合することによって第二減衰部材31Dに対して位置決め・固定されている。そして、第二減衰部材31Dにおいて、嵌合突起31De1及び31De2のそれぞれの内側に形成された開口部31Db1及び31Db2は、その直径が第二取付穴30Dbの直径より小さくなっており、開口部31Db1及び31Db2に連続する第二貫通穴31Dbも、その直径が第二取付穴30Dbの直径より小さくなっている。
【0064】
よって、締結具15の軸部15aは、第一減衰部材31Cに対して固定されている第一取付穴30Cbにおいて、第一取付穴30Cbの内側の嵌合突起31Ce1及び31Ce2のさらに内側を通り、嵌合突起31Ce1及び31Ce2並びに第一貫通穴31Cbによって軸方向に垂直な方向の移動が制限され、第一取付部30Cに接触しない。同様に、軸部15aは、第二減衰部材31Dに対して固定されている第二取付穴30Dbにおいて、第二取付穴30Dbの内側の嵌合突起31De1及び31De2のさらに内側を通り、嵌合突起31De1及び31De2並びに第二貫通穴31Dbによって軸方向に垂直な方向の移動が制限され、第二取付部30Dに接触しない。
【0065】
従って、第一取付部30Cは、第一減衰部材31Cによって周囲を囲まれて第一減衰部材31Cと接触しているが、締結具15の軸部15aとは接触しておらず、さらに、締結具15の締結頭部15bとの間には第一減衰部材31Cが介在しているため、締結具15と接触していない。
また、第二取付部30Dは、第二減衰部材31Dによって周囲を囲まれて第二減衰部材31Dと接触しているが、締結具15の軸部15aすなわち締結具15とは接触しておらず、さらに、圧縮機取付台座82との間には第二減衰部材31Dが介在しているため、圧縮機取付台座82とも接触していない。
そして、第一取付部30Cの先端部30Ca1は、第一取付部挿入穴31Ccの先端部31Ccaとの間に間隙を有し、第二取付部30Dの先端部30Da1は、第二取付部挿入穴31Dcの先端部31Dcaとの間に間隙を有している。
【0066】
また、取付部30が第二減衰部材31Dの外表面31Da1に当接し、第二取付部30Dが第二減衰部材31Dにおける第二取付部挿入穴31Dcの内表面31Dcdに当接しているため、取付部30及び第二取付部30Dは、金属膜32を介して、圧縮機取付台座82すなわちエンジン81と電気的に接続されている。よって、圧縮機本体1のハウジング2は、金属膜32を介して、エンジン81と電気的に接続されており、金属膜32は、電動圧縮機103のアースとして機能する。
【0067】
そして、ハウジング2の振動は、その一部が、第一取付部30Cに伝達し、第一取付部30Cの振動は、第一取付部30Cと接触していない締結具15に伝達せずに、第一減衰部材31Cに伝達し、第一減衰部材31Cの内部で減衰する。その他のハウジング2の振動は、第二取付部30Dに伝達し、第二取付部30Dの振動は、第二取付部30Dと接触していない締結具15に伝達せずに、その一部が、第二取付部30Dから剛性が低く厚さの小さい金属膜32を通過して第二減衰部材31Dに伝達し、その他が、第二取付部30Dから第二減衰部材31Dに直接伝達する。第二減衰部材31Dに伝達した振動は、その内部で減衰する。このため、ハウジング2の振動は、圧縮機取付台座82へ伝達することが抑制され、それにより、エンジン81、及び図示しない車両のボディへ伝達することも抑制される。
また、この発明の実施の形態3に係る電動圧縮機103のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
このように、実施の形態3における電動圧縮機103によれば、上記実施の形態1の電動圧縮機101と同様な効果が得られる。
また、電動圧縮機103では、第一取付部30C及び第二取付部30Dのそれぞれに対して、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dが設けられている。これによって、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dは、実施の形態1の減衰部材11より、各々を小型にすることができ、さらに、減衰部材全体の樹脂の使用量も減少させることができる。また、取付部の形状を同一にすることによって、第一減衰部材31C及び第二減衰部材31Dはそれぞれ、1種類の形状で全ての取付部に取り付けることができ、汎用性を有するため、取付部の数に合わせて減衰部材の形状を変更する必要がなく、さらに、樹脂部材の成形のための金型を個別に製作する必要もない。よって、コストを低減することが可能になる。
【0069】
また、第一減衰部材31Cは、第一取付部30Cの第一取付穴30Cbに対して、その両端部に設けられた嵌合突起31Ce1及び31Ce2によって固定されている。つまり、第一減衰部材31Cは、第一取付部30Cに対して、左右方向両端から挟むようにして、固定されている。従って、締結具15の軸部15aを第一取付穴30Cbに挿通する工程で、軸部15aの先端が第一取付穴30Cb内で嵌合突起31Ce2に当たったとしても、第一減衰部材31Cが第一取付穴30Cbから脱落することを防止できる。同様に、第二減衰部材31Dは、第二取付部30Dの第二取付穴30Dbに対して、その両端部に設けられた嵌合突起31De1及び31De2によって固定され、第二取付部30Dを左右方向両端から挟むようにして、固定されている。従って、第一取付穴30Cbに挿入された締結具15の軸部15aをさらに第二取付穴30Dbに挿通する工程で、軸部15aの先端が、第二貫通穴31Dbの挿入口周辺で第二減衰部材31Dに当たる、又は第二取付穴30Db内で嵌合突起31De2に当たったとしても、第二減衰部材31Dが第二取付穴30Dbから脱落することを防止できる。よって、電動圧縮機103の取付作業効率を向上させることができる。
【0070】
また、実施の形態1〜3において、締結具15の軸部15aは、減衰部材11、21、31C及び31Dと接触していないが、これに限定されるものでない。減衰部材11、21、31C及び31Dが、軸部15aの周囲と当接するようにしてもよい。これによって、締結具15及び減衰部材11、21、31C及び31Dは、一体となって、軸部15aの軸方向に垂直な方向の強度を増大させることができる。
また、実施の形態1〜3において、嵌合突起11e1、11e2、11f1、11f2、21e1、21e2、31Ce1、31Ce2、31De1及び31De2を環状に形成していたが、これに限定されるものでなく、矩形状、環状若しくは矩形状を分断したもの、又は、環状若しくは矩形状の一部であってもよい。
【0071】
また、実施の形態1〜3において、取付部10C、10D、20、30C及び30Dの取付穴10Cb、10Db、20b、30Cb及び30Dbの断面形状を円形状としていたが、これに限定されるものでない。取付穴10Cb、10Db、20b、30Cb及び30Dbの断面形状は、矩形状、又は、一部が開放した溝状であってもよい。
また、実施の形態1〜3において、締結具15を金属製としていたが、減衰部材11、21、31C及び31Dと同様に、樹脂製としてもよい。締結具15が取付部10C、10D、20、30C及び30Dと接触する場合であっても、圧縮機本体1の振動が、締結具15を介して、エンジン81の圧縮機取付台座82に伝達することを抑制することができる。
【0072】
また、実施の形態1〜3において、金属膜12、22及び32を、減衰部材11、21及び31Dの外表面11a1、21a1及び31Da1に設けていたが、これに限定されるものでなく、貫通穴11b、21b及び31Dbの内側、又は、減衰部材11、21及び31Dの内部に設けてもよい。
【0073】
また、実施の形態1〜3において、電動圧縮機101〜103のアースとして、シート状の金属膜12、22及び32を使用していたが、これに限定されるものでなく、線状、繊維状、又は棒状の金属部材であってもよい。
また、実施の形態1〜3において、取付部10C、10D、20、30C及び30D、並びに、減衰部材11、21、31C及び31Dは、車両に搭載された内燃機関であるエンジン81に取り付けられた電動圧縮機に設けられていたが、これに限定されるものではなく、燃料電池車や電気自動車等において、走行用電動モータに取り付けられた電動圧縮機に設けてもよい。また、本発明を適用可能な電動圧縮機は、冷凍回路の冷媒圧縮機に限定されるものではなく、その他の電動圧縮機にも適用可能であり、例えば車両のエアサスペンション装置に用いられるエア圧縮機や、燃料電池車にあっては、水素又は空気をスタックへ圧送するために用いられるポンプ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0074】
1 圧縮機本体、10C,30C 第一取付部、10Cb,30Cb 第一取付穴、10D,30D 第二取付部、10Db,30Db 第二取付穴、11,21 減衰部材
11b,21b,31Cb,31Db 貫通穴(締結穴)、11e1,11e2,11f1,11f2,21e1,21e2,31Ce1,31Ce2,31De1,31De2 嵌合突起(係合突起)、12,22,32 金属膜(導電部材)、15 締結具、20 取付部、31C 第一減衰部材、31D 第二減衰部材、82 圧縮機取付台座(被取付部)、101,102,103 電動圧縮機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の被取付部に取り付けられる電動圧縮機であって、
電力を動力として外部から吸入した流体を圧縮したのち吐出する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体に設けられ、取付穴を有する取付部と、
前記取付部を覆うように設けられて、前記取付部及び前記被取付部の間に介在する減衰部材であって、締結穴をもち且つ樹脂から形成される減衰部材と、
前記減衰部材の前記締結穴及び前記取付部の前記取付穴を通って前記減衰部材を前記被取付部に取り付ける締結具と
を備える、電動圧縮機。
【請求項2】
前記取付部の前記取付穴は、前記取付穴を通る前記締結具より大きく、
前記締結具は、前記取付部と接触することなく前記減衰部材の前記締結穴及び前記取付部の前記取付穴を通って前記減衰部材を前記被取付部に取り付ける請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記減衰部材は、前記取付部の前記取付穴に係合して前記減衰部材を前記取付部に固定可能な係合突起を有する請求項1または2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記減衰部材と一体に設けられて前記取付部及び前記被取付部を電気的に接続し且つ可撓性及び導電性をもつ導電部材をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記減衰部材は、曲げ弾性率が100メガパスカル以上10000メガパスカル以下の樹脂から形成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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