説明

電動工具用サイドハンドル及び電動工具

【課題】ストッパポールとロック部材との係合部の耐久性を向上させ、ロック部材が偶発的に移動することを低減し、ストッパポールと係合部との係合状態の信頼性を高める電動工具用サイドハンドル及び電動工具用サイドハンドルを装着した電動工具を提供する。
【解決手段】把持部41とグリップ部47とを備え、把持部に、ビットと平行にストッパポールが貫通可能な貫通孔Hを形成し、ストッパポールの側面に形成した被係合部との係合部43Bを備えたロック部材43を、係合位置P1と離間位置P2との間をスライド操作可能且つ付勢手段44により係合位置への付勢状態で収容した電動工具用サイドハンドル40であって、ロック部材を、スライド方向がグリップ部の突出方向に平行となり、係合位置P1がグリップ部側、離間位置P2が前記把持部側となるように設け、ロック部材の少なくとも係合部43Bを金属製とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動工具本体に装着されて、電動工具による加工深さを規制する金属製のストッパポールを有する電動工具用サイドハンドル及び該電動工具用サイドハンドルを装着した電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、ビットが装着される電動工具には、操作性や安全性を向上させるために、操作者が握るグリップ部を有するサイドハンドルが備えられている。このサイドハンドルには、ビットによる加工深さを制限する装置としてストッパポールが、その側面に形成した被係合部に押しボタンを付勢して係合させることで固定されている。すなわち、ストッパポールを用いてビットの前進を制限することにより、被加工材への加工深さを一定にすることができる。
【0003】
また、被加工材に穿孔する深さを調整するために、ストッパポールをその軸線方向へ移動させる際には、グリップ部と直交する方向で工具本体側へ押しボタンを押し込む操作をすることにより、ストッパポールと押しボタンとの係合を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6609860号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電動工具では、上記の押しボタンを一例とするロック部材と、金属製のストッパポールとを係合させる係合部が樹脂によって形成されているものがあった。このような場合には、樹脂の経年劣化によって、前記係合部の強度が低下してしまうことが考えられる。これにより、係合部の耐久性が劣ることが懸念されていた。
【0006】
さらに、特許文献1に開示されているように、上記のグリップ部と直交する方向で工具本体側にロック部材を押し込むことによって、ストッパポールとロック部材との係合を解除する場合には、電動工具を床等に置いた際に、誤って偶発的にロック部材が押し込まれると、ストッパポールと上記の係合部との係合が解除されて、ストッパポールが移動してしまうことも懸念されていた。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、ストッパポールとロック部材との係合部の耐久性を向上させることができると共に、ロック部材が偶発的に移動することを低減し、ストッパポールと係合部との係合状態の信頼性を高めることができる電動工具用サイドハンドル及び該電動工具用サイドハンドルを装着した電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る電動工具用サイドハンドルは、前方へ向けてビットが装着される電動工具の筒状前端部をクランプする把持部と、その把持部に連設されて前記筒状前端部の軸線と直交状に突出するグリップ部と、を備え、前記把持部に、前記ビットと平行にストッパポールが貫通可能な貫通孔を形成すると共に、前記ストッパポールの側面に形成した被係合部との係合部を備えたロック部材を、前記被係合部と前記係合部とが係合する係合位置と前記被係合部から前記係合部が離れる離間位置との間をスライド操作可能且つ付勢手段によって前記係合位置への付勢状態で収容した電動工具用サイドハンドルであって、前記ロック部材を、スライド方向が前記グリップ部の突出方向に平行となり、且つ前記係合位置が前記グリップ部に接近するグリップ部側、前記離間位置が前記把持部に接近する把持部側となるように設ける一方、前記ロック部材の少なくとも前記係合部を金属製としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記グリップ部における前記把持部側の端部にフランジを周設し、前記ロック部材を、前記係合位置で前記フランジに隣接させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ロック部材には、前記貫通孔に貫通させる前記ストッパポールを挟んで前記係合部の形成面と対向し、前記ロック部材のスライド操作に伴って前記ストッパポールにおける前記被係合部の形成側と反対側の側面が摺接する案内面を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記付勢手段を、その軸線が前記貫通孔に貫通させる前記ストッパポールの軸線と直交状に交差する位置に配置されるコイルバネとしたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記把持部には、前記ロック部材の収容部を外部に連通させる連通路を形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明に係る電動工具は、前方へ向けてビットが装着される筒状前端部に、請求項1ないし5のいずれかに記載の電動工具用サイドハンドルを装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る電動工具用サイドハンドル及び請求項6の発明に係る電動工具によれば、ストッパポールの被係合部と係合するロック部材の係合部を金属製としたため、樹脂製の係合部に比べて金属製の係合部の強度を高めることができる。これにより、前記係合部の耐久性を向上させることができる。
さらに、ロック部材を、グリップ部の突出方向と平行にスライドさせて、前記係合位置と前記離間位置との間をスライド操作可能としたため、電動工具を床等に置いた際に、誤って偶発的にグリップ部と直交する方向にロック部材が押されることがあっても、ロック部材が前記離間位置に向けてスライドすることがない。これにより、ロック部材が偶発的に離間位置へ移動することを低減すると共に、ストッパポールと係合部との係合状態の信頼性を高めることができる。
請求項2の発明によれば、ロック部材を、前記係合位置で、グリップ部における把持部側の端部に周設したフランジに隣接させたため、操作者は、グリップ部を握った状態で、ロック部材を操作し易くすることができる。これにより、操作者がロック部材をスライド操作する際の操作性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、ロック部材に形成した案内面に、ストッパポールにおける被係合部の形成側と反対側の側面を摺接させることができるため、ロック部材をスライド操作する際には、案内面を介し、ストッパポールにおける前記反対側の側面に沿ってロック部材を円滑にスライドさせることができる。
加えて、前記反対側の側面に沿ってロック部材を円滑にスライドさせることに伴って、ストッパポールにおける被係合部の形成側の側面も、前記係合部と係合させ易い状態でスライドさせることができる。これにより、ストッパポールと係合部との係合にがたつきが生じることを防止できる。
請求項4の発明によれば、付勢手段として、コイルバネを、その軸線がストッパポールの軸線と直交状に交差する位置に配置したため、コイルバネが、前記ロック部材を前記係合位置へ付勢する際に傾かせることなく円滑にスライドさせる。これにより、ロック部材がストッパポールをこじることを防止できる。
請求項5の発明によれば、ロック部材の収容部を外部に連通させる連通路によって、該収容部に侵入した異物を前記外部に排出し、収容部に異物が入り込んだままの状態を回避することができる。これにより、コイルバネに異物がはさまることを抑えると共に、ロック部材に異物が付着することを抑える。したがって、コイルバネに異物がはさまることが原因となってコイルバネの伸縮動作に支障が生じることを抑制すると共に、ロック部材に異物が付着することが原因となってロック部材の円滑な移動が妨げられることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1のサイドハンドルを装着したハンマドリルの側面図である。
【図2】同サイドハンドルの斜視図である。
【図3】同サイドハンドルの断面図である。
【図4】実施形態2のサイドハンドルを装着したハンマドリルの側面図である。
【図5】同サイドハンドルの斜視図である。
【図6】同サイドハンドルの正面断面図である。
【図7】(a)図は同サイドハンドルの要部縦断面図、(b)図は同サイドハンドルの要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1ないし図3を参照しつつ説明する。図1に示すハンマドリル1は、本体ハウジング10と、ドリルチャック20と、ハンドル30と、サイドハンドル40とを備えている。ハンマドリル1は、本発明の電動工具の一例であり、サイドハンドル40は、本発明の電動工具用サイドハンドルの一例である。
【0017】
本体ハウジング10には、モータや回転伝達機構が内蔵されている。ドリルチャック20は、本体ハウジング10の前端部11から該本体ハウジング10の前方へ突出して設けられている。本体ハウジング10の前端部11は、筒状に形成されている。
【0018】
ドリルチャック20は、本体ハウジング10から前方へ突出する図示しないツールホルダに取り付けられている。ドリルチャック20の前面には、ドリルビット21が着脱自在に取り付けられる。ハンドル30は、本体ハウジング10の後端部から該本体ハウジング10の下方へ延設されている。なお、符号31はスイッチレバーである。
【0019】
図2及び図3に示すように、サイドハンドル40は、把持部41と、グリップ部47とを備えている。把持部41は、スプリング板42と、第1ロック部材43と、コイルバネ44とを備えている。スプリング板42は、金属製であってリング状に形成されている。スプリング板42の両端部には、係合凹部が形成されている。この係合凹部には、ボルトBの頭部B1が係合される。ボルトBのネジ部B2は、グリップ部47に螺合する。これにより、ボルトBを介して、リング状のスプリング板42が、グリップ部47に立設される。スプリング板42の両端部及びボルトBの頭部B1は、カバー部材45に収容されている。リング状空間42Aを上記の前端部11へ嵌め込むことにより、サイドハンドル40がハンマドリル1に装着される。
【0020】
カバー部材45の側方には、ガイド部材46が一体に形成されている。ガイド部材46の内部空間部46Aには、第1ロック部材43が収容されている。コイルバネ44は、やや圧縮された状態で、内部空間部46Aの内壁面と第1ロック部材43との間に装着されている。これにより、常時は、コイルバネ44の弾性力によって、第1ロック部材43がグリップ部47に近づく方向へ付勢される。符号43Aは、第1ロック部材43の操作部である。なお、コイルバネ44は、本発明の付勢手段の一例である。
【0021】
ガイド部材46の上方であってハンマドリル1の前後進方向に対応する面には、ガイド部材46を貫通するガイド孔Hが形成されている。ガイド孔Hの開口部は六角形状とされ、ガイド孔Hには、断面が六角形状で金属製の棒状部材からなるストッパポール2(図1参照。)を、上記のドリルビット21と平行に移動自在に貫通させることができる。なお、ガイド孔Hは、本発明の貫通孔の一例である。
【0022】
上記の第1ロック部材43には、金属製の係合爪部43B及びストッパ部43Cが形成されている。コイルバネ44が、第1ロック部材43をグリップ部47へ近づける方向へ付勢することにより、ストッパポール2の側面の全長に亘って形成されたラック2B(図1参照。)と係合爪部43Bとが係合すると共に、ストッパ部43Cによって、ストッパポールの側面2A(図1参照。)が押さえられる。図1には、ストッパポール2にラック2Bが形成されていることを明確にするため、ドリルビット21の先端側からストッパポール2を正面視した場合に、ストッパポール2の右側面にラック2Bを描いたが、実際には、ドリルビット21の先端側からストッパポール2を正面視した場合に、該ストッパポール2の左側面の全長に亘ってラック2Bが形成されている。なお、金属製の係合爪部43Bは本発明の係合部の一例であり、ストッパポール2のラック2Bは本発明の被係合部の一例である。
【0023】
グリップ部47には、該グリップ部47がカバー部材45及びガイド部材46と接する端部に、円板状のフランジ48が周設されている。これにより、フランジ48を介し、グリップ部47は、把持部41(カバー部材45及びガイド部材46)から連設されている。グリップ部47には、複数の突起47Aが設けられている。図1に示すように、グリップ部47は、上記の前端部11の軸線と直交する方向Yに突出する。
【0024】
また、図2及び図3に示すように、コイルバネ44によって、第1ロック部材43をグリップ部47へ近づける方向へ付勢した位置P1では、第1ロック部材43が、フランジ48に隣接する。このとき、第1ロック部材43の操作部43Aは、フランジ48の半径方向でその外周面と略同じ突出位置に配置される。第1ロック部材43が、フランジ48に隣接することにより、ハンマドリル1の操作者は、グリップ部47を握った状態で、操作部43Aを指で操作し易くすることができる。なお、位置P1は、本発明の係合位置の一例である。
【0025】
次に、操作者が第1ロック部材43をスライド操作して、ストッパポール2をロックする位置を調整する例を説明する。上述したように、常時は、コイルバネ44の弾性力によって、第1ロック部材43が位置P1に配置されている。操作者は、操作部43Aに指を掛けて、前記弾性力に抗し、内部空間部46Aの内壁面に沿って把持部41の上方側(図1、2中の各矢印方向)の位置P2に向けて第1ロック部材43をスライドさせる。これにより、係合爪部43B、ストッパ部43Cが内部空間部46A内の上方へ退避し、ガイド孔Hにストッパポール2を挿通させることが可能になる。操作部43Aをスライドさせる方向は、前端部11の軸線と直交する方向Y(図1参照。)と平行である。
【0026】
続いて操作者は、第1ロック部材43を位置P2に配置させた状態で、図1に示すように、ガイド孔Hにストッパポール2を挿通させて、該ストッパポール2の先端位置を調整する。ストッパポール2の先端位置の調整が終了した後に、操作者が操作部43Aから指を離すと、上記の弾性力によって、第1ロック部材43が位置P1に向けて付勢されると共に、係合爪部43Bが前記ラック2Bと係合し、ストッパ部43Cによって、前記側面2A(図1参照。)が押さえられる。これにより、ストッパポール2の先端位置を所定の位置に調整した上で該ストッパポール2がロックされてガイド孔Hから抜けることを防ぐ。
【0027】
ストッパポール2をロックさせた後に、操作者が再びストッパポール2の先端位置を調整する場合には、上述の如く第1ロック部材43を位置P2に向けてスライドさせる。これにより、係合爪部43B、ストッパ部43Cが、ラック2B、側面2Aからそれぞれ離れるため、ストッパポール2を前端部11の軸線方向における前後に移動させて、ストッパポール2の先端位置を適宜に調整できる。その後、上述の如く係合爪部43Bをラック2Bに係合させると共に、ストッパ部43Cによって、側面2Aを押さえることにより、ストッパポール2をロックさせる。なお、位置P2は本発明の離間位置の一例である。
【0028】
<実施形態1の効果>
本実施形態のハンマドリル1では、ストッパポール2のラック2Bと係合する係合爪部43Bを金属製としたため、該係合爪部43Bを樹脂で成形した場合に比べて、金属製の係合爪部43Bの強度を高めることができる。これにより、係合爪部43Bの耐久性を向上させることができる。
さらに、前記前端部11の軸線と直交する方向Yと平行に、第1ロック部材43をスライドさせて、該第1ロック部材43を、位置P1と位置P2との間をスライドさせることができる。このため、ハンマドリル1を床等に置いた際に、誤って偶発的にグリップ部47と直交する方向に第1ロック部材43が押されることがあっても、第1ロック部材43が位置P2に向けてスライドすることがない。これにより、第1ロック部材43が偶発的に位置P2へ移動することを低減すると共に、ストッパポール2と係合爪部43Bとの係合状態の信頼性を高めることができる。
【0029】
また、上述したように、位置P1では、第1ロック部材43がフランジ48に隣接するため、ハンマドリル1の操作者は、グリップ部47を握った状態で、第1ロック部材43の操作部43Aを指で操作し易くすることができる。これにより、操作者が位置P2に向けて第1ロック部材43をスライド操作させる際の操作性を向上させることができる。
【0030】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図4ないし図7を参照しつつ説明する。ここでは、実施形態1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。図4に示すハンマドリル1Bは、ハンドル30Bと、サイドハンドル40Bとを備えている。ハンドル30Bは、コの字状に形成されて本体ハウジング10と一体となって該本体ハウジング10の後端部に設けらている。
【0031】
図5及び図6に示すように、サイドハンドル40Bは、把持部51と、グリップ部57とを備えている。本実施形態では、実施形態1の第1ロック部材43に代えて、把持部51が、第2ロック部材49を備えている。第2ロック部材49は、金属製の上部スライド部材49Aと樹脂製の下部スライド部材49Bとを上下に重ねて構成した。把持部51では、スプリング板42の両端部を折り曲げて重ね合わせた後に、この重ね合わせた部分にボルト係止孔H2を形成した。ボルト係止孔H2には、ボルトB3のネジ部B4が挿通された後、弾性部材43Eを挟んでボルトB3の頭部B5が係止される。ネジ部B4は、該ネジ部B4に螺合させたナットNによって、グリップ部57に係止される。本実施形態においても、リング状空間42Aを前端部11へ嵌め込むことにより、図4に示すように、サイドハンドル40Bがハンマドリル1Bに装着される。
【0032】
カバー部材45の側方であって、フランジ48から上方へ離れた位置にガイド部材46Bが突設されている。ガイド部材46Bの内部空間部46Cには、第2ロック部材49が収容されている。コイルバネ44は、やや圧縮された状態で、内部空間部46Cの内壁面と上部スライド部材49A(第2ロック部材49)の上方との間に装着されている。常時は、コイルバネ44の弾性力によって、第2ロック部材49がグリップ部57へ近づく方向へ付勢される。符号49Dは、第2ロック部材49の操作部である。また、ガイド部材46Bの中央付近であってハンマドリル1Bの前後進方向に対応する面には、実施形態1と同様のガイド孔Hが形成されている。
【0033】
第2ロック部材49は、図6から理解できるように、その上下位置にかかわらずガイド孔Hと干渉しない空洞部49Eを有する。ストッパポール2は、ガイド孔Hを通して空洞部49Eに入り込む。
【0034】
上部スライド部材49Aでは、ガイド孔Hをまたぐ逆U字状の内壁の内の左側内壁に、金属製の係合凹部49Fが形成されている。加えて、図7の(a)図、(b)図に示すように、ストッパポール2には、係合凹部49F(図6参照。)と対向する第1の側面に、ラック2Cが形成されている。コイルバネ44の弾性力によって、第2ロック部材49が位置P1に付勢されているときは、図6及び図7の(b)図に示すように、ラック2Cと係合凹部49Fとが係合する。加えて、第2ロック部材49が位置P1に付勢されているときは、図7の(a)図に示すように、下部スライド部材49Bの平面方向に設けた突起部Tが、ガイド部材46Bの上下方向に設けた長孔H3に係止する。突起部Tが長孔H3内を前記上下方向に移動可能な範囲で、下部スライド部材49Bは、該上下方向にスライド可能である。
【0035】
一方、上部スライド部材49Aには、ストッパポール2を挟み、左側内壁と対向して、右側内壁49G(図7の(b)図参照。)が位置する。ストッパポール2の第2の側面には、第1の側面とは異なり、ラック2Cが形成されていない(図7の(b)図参照。)。なお、係合凹部49Fは、本発明の係合部の一例であり、ラック2Cは、本発明の被係合部の一例である。上部スライド部材49Aの左側内壁は、本発明の係合部の形成面の一例である。ストッパポール2の第1の側面は、本発明の被係合部の形成側の側面の一例であり、ストッパポール2の第2の側面は、本発明の被係合部の形成側の側面とは反対側の側面の一例である。
【0036】
本実施形態では、図6及び図7の(a)図に示すように、ストッパポール2をガイド孔H内にロックしたときに、コイルバネ44を、その中心軸線L1がストッパポール2の中心軸線L2と直交状に交差する位置に配置した。
【0037】
加えて、図6及び図7の(a)図、(b)図に示すように、ガイド部材46Bには、連通路60が形成されている。連通路60は、内部空間部46Cの開口からガイド部材46Bの外部に繋がり、カバー部材45の傾斜状の側面に沿ってガイド部材46Bの下方に延びている。なお、内部空間部46Cは、本発明のロック部材の収容部である。
【0038】
本実施形態では、以下に説明するようにして、ストッパポール2をロックする位置を調整する。操作者は、操作部49Dを把持部51の上方側(図4中のY方向における上方向)に指で押し上げて、操作部49Dの上面が内部空間部46Cの内壁に当接する位置まで第2ロック部材49をスライドさせ、第2ロック部材49を位置P2に配置させる。これにより、空洞部49Eがガイド孔Hと連通する。
【0039】
その後、操作者は、操作部49Dを指で押さえることを継続し第2ロック部材49を位置P2に配置させた状態で、実施形態1と同様に、ストッパポール2の先端位置を調整する。続いて、操作者が操作部49Dから指を離すと、コイルバネ44によって、位置P1に向けて第2ロック部材49が付勢される。このとき、コイルバネ44は、第2ロック部材49(上部スライド部材49A)を傾かせることなく下方へ円滑にスライドさせる。第2ロック部材49は、その右側内壁49Gがストッパポール2の第2の側面に摺接しながら、位置P1に案内されると共に、左側内壁は、その係合凹部49Fがラック2Cと係合するように案内される。係合凹部49Fがラック2Cと係合することにより、ストッパポール2の先端位置を所定の位置に調整した上で該ストッパポール2がロックされてガイド孔Hから抜けることを防ぐ。なお、右側内壁49Gは、本発明の案内面の一例である。
【0040】
ストッパポール2をロックさせた後に、操作者が再びストッパポール2の先端位置を調整する場合には、上述の如く位置P2まで第2ロック部材49をスライドさせ、ラック2Cを係合凹部49Fから離すと共に、空洞部49Eをガイド孔Hと連通させる。続いて、実施形態1と同様にストッパポール2の先端位置を調整した後に、上述の如く係合凹部49Fをラック2Cと係合させることにより、ストッパポール2をロックさせる。
【0041】
また、ドリルビット21によってコンクリート等に穿孔する際には粉塵が発生し、この粉塵が内部空間部46Cに入り込むことがある。この場合であっても、内部空間部46Cの開口から粉塵が連通路60に導かれて該内部空間部46Cの外部に排出される。連通路60内の粉塵は、自重によって該連通路60の下方へ落下し、ガイド部材46Bの外部に排出される。
【0042】
<実施形態2の効果>
本実施形態のハンマドリル1Bでは、第2ロック部材49の上部スライド部材49Aの右側内壁49Gに、ストッパポール2の第2の側面を摺接させることができるため、第2ロック部材49をスライドさせる際には、右側内壁49Gを介し、前記第2の側面に沿って第2ロック部材49を円滑にスライドさせることができる。
加えて、前記第2の側面に沿って第2ロック部材49を円滑にスライドさせることに伴って、ストッパポール2のラック2Cも、係合凹部49Fと係合させ易い状態でスライドさせることができる。これにより、ストッパポール2と係合凹部49Fとの係合にがたつきが生じることを防止できる。
さらに加えて、ストッパポール2は、上記の左側側壁及び右側側壁49Gに挟まれてロックされるため、ストッパポール2のロック状態を強固にすることができる。これにより、ストッパポール2のロック状態にがたつきが生じることを防止できる。
【0043】
また、上述したように、コイルバネ44は、第2ロック部材49(上部スライド部材49A)を傾かせることなく下方へ円滑にスライドさせる。このため、第2ロック部材49がストッパポール2をこじることを防止できる。
【0044】
さらに、ガイド部材46Bの内部空間部46Cを該ガイド部材46Bの外部と連通させる連通路60によって、内部空間部46Cに入り込んだ粉塵を、ガイド部材46Bの外部に排出し、内部空間部46Cに粉塵が入り込んだままの状態を回避できる。これにより、内部空間部46Cに装着されたコイルバネ44に粉塵がはさまることを抑えると共に、第2ロック部材49に粉塵が付着することを抑える。したがって、コイルバネ44に粉塵がはさまることが原因となってコイルバネ44の伸縮動作に支障が生じることを抑制すると共に、第2ロック部材49に異物が付着することが原因となって第2ロック部材49を円滑にスライドさせることが妨げられるのを抑制できる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができる。上述した実施形態1では、係合爪部43Bを金属製にした例を示したが、これに限定されず、係合爪部43B及びストッパ部43Cが形成された第1ロック部材43全体を金属によって形成してもよい。実施形態2では、金属製の上部スライド部材49Aと樹脂製の下部スライド部材49Bとを上下に重ねて第2ロック部材49を構成したが、これに限定されず、各スライド部材49A、49Bを一体にした金属製のスライド部材によって第2ロック部材49を形成してもよい。
【0046】
また、上述した各実施形態では、各グリップ部47、57の端部に円形状のフランジ48を周設したが、フランジ48の形状を、四角形状等の適宜の形状に変更してもよい。
さらに、上述した各実施形態とは異なり、フランジ48を設けずに、各グリップ部47、57を、その外径寸法がフランジ48の外径寸法と同じ寸法となる円筒形状に変更してサイドハンドルを形成してもよい。これにより、第1ロック部材43の操作部43Aが、円筒形状のグリップ部の外周から外側へ突出することを防止できる。
加えて、上述したハンマドリル1、1B以外のドリル等の電動工具に、上述のサイドハンドル40、40Bを装着してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1、1B・・ハンマドリル、2・・ストッパポール、2B、2C・・ストッパポールのラック、11・・本体ハウジングの前端部、21・・ドリルビット、40、40B・・サイドハンドル、41、51・・把持部、43・・第1ロック部材、43B・・係合爪部、44・・コイルバネ、46C・・ガイド部材の内部空間部、47、57・・グリップ部、48・・フランジ、49・・第2ロック部材、49F・・係合凹部、49G・・右側内壁、60・・連通路、H・・ガイド孔、L1・・コイルバネの中心軸線、L2・・ストッパポールの中心軸線、Y・・本体ハウジングの前端部の軸線と直交する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方へ向けてビットが装着される電動工具の筒状前端部をクランプする把持部と、その把持部に連設されて前記筒状前端部の軸線と直交状に突出するグリップ部と、を備え、前記把持部に、前記ビットと平行にストッパポールが貫通可能な貫通孔を形成すると共に、前記ストッパポールの側面に形成した被係合部との係合部を備えたロック部材を、前記被係合部と前記係合部とが係合する係合位置と前記被係合部から前記係合部が離れる離間位置との間をスライド操作可能且つ付勢手段によって前記係合位置への付勢状態で収容した電動工具用サイドハンドルであって、
前記ロック部材を、スライド方向が前記グリップ部の突出方向に平行となり、且つ前記係合位置が前記グリップ部に接近するグリップ部側、前記離間位置が前記把持部に接近する把持部側となるように設ける一方、
前記ロック部材の少なくとも前記係合部を金属製としたことを特徴とする電動工具用サイドハンドル。
【請求項2】
前記グリップ部における前記把持部側の端部にフランジを周設し、前記ロック部材を、前記係合位置で前記フランジに隣接させたことを特徴とする請求項1に記載の電動工具用サイドハンドル。
【請求項3】
前記ロック部材には、前記貫通孔に貫通させる前記ストッパポールを挟んで前記係合部の形成面と対向し、前記ロック部材のスライド操作に伴って前記ストッパポールにおける前記被係合部の形成側と反対側の側面が摺接する案内面を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具用サイドハンドル。
【請求項4】
前記付勢手段を、その軸線が前記貫通孔に貫通させる前記ストッパポールの軸線と直交状に交差する位置に配置されるコイルバネとしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動工具用サイドハンドル。
【請求項5】
前記把持部には、前記ロック部材の収容部を外部に連通させる連通路を形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動工具用サイドハンドル。
【請求項6】
前方へ向けてビットが装着される筒状前端部に、請求項1ないし5のいずれかに記載の電動工具用サイドハンドルを装着したことを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264532(P2010−264532A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116711(P2009−116711)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】